「牡丹雪の銃士」ミュエル

ミュエル「……。」

メルク「……。」

ミュエル「……。」

メルク「……。」

ミュエル「……。」

メルク「あ、あの、ミュエルさん……？」

ミュエル「ん～……？」

メルク「どうしてさっきから、私のことをじーっと見てくるのです……？」

ミュエル「……。」

ミュエル「……迷惑だっぺかぁ？」

メルク「そういうわけではないのですよ！ただ、理由を知りたかっただけで……、」

メルク「も、もしかして、瓶の中に変なものが混じったりしているのです？」

ミュエル「ん～……。そんなことないっぺよぉ……。メルクちゃんは、いつも通り綺麗だっぺぇ……。」

メルク「は、はぁ。ありがとう、なのですよ……？」

ミュエル「……。」

メルク「……。」

ミュエル「……メルクちゃん。」

メルク「は、はいなのですよ！」

ミュエル「どうやったら、メルクちゃんを、ぎゅう……って、できるっぺかなぁ……？」

メルク「ぎゅう……なのです？」

ミュエル「んだぁ……。こう、腕で抱えて、ぎゅう……って。」

メルク「もしかして、ハグのことなのです？」

ミュエル「んだぁ、それぇ……。メルクちゃん、物知りだっぺなぁ……。」

メルク「みゅふふ、それほどでも、なのですよ！」

メルク「でも、どうして急にハグなのです？」

ミュエル「ん～……。メルクちゃん、そうしたら元気でるだろうなぁって、そう思ったっぺよぉ……。」

メルク「みゅ……？私は今も元気なのですよ？」

ミュエル「……ほんとにぃ？」

メルク「ほ、本当なのですよ……？」

ミュエル「……すごぉい。」

メルク「みゅ！？あ、ありがとうなのですよ……。」

ミュエル「記憶喪失なのに、ぎゅうしなくても平気だなんて……、メルクちゃん、つえぇっぺなぁ……。」

メルク「記憶喪失……？それがハグと関係あるのです？」

ミュエル「んだぁ……。おらは、おっとうにぎゅうってしてもらうまで、記憶喪失なの、怖かったからぁ……。」

メルク「あっ……。そうだったのですよ。」

メルク「ミュエルさんも、私と同じで記憶喪失なのですね。」

ミュエル「んだぁ……。今日初めて、主人公くんに、メルクちゃんも同じだって、教えてもらったっぺ……。」

ミュエル「ふふふ……おらたち、記憶喪失仲間だっぺなぁ……。」

メルク「みゅふふ、そうなのですよ！世にも珍しい繋がりなのです！」

メルク「たしかミュエルさんは、辺境の雪山で行き倒れていたところを、辺境調査隊の隊長さんに拾われたと聞いたのですよ。」

ミュエル「んだぁ……。よく覚えていてくれたあぁ……。嬉しいっぺ……。」

ミュエル「気が付いたら、ひとりで吹雪の中にいて……、帰り道も、何にも思い出せなくて……、寒くて、寂しくて、怖くて……、」

ミュエル「そうやって、震えてたところを、調査に来ていたおっとうが見つけてくれて、助けてくれたっぺよぉ……。」

メルク「えっと、前から気になっていたのですが、おっとう……って、隊長さんのことなのです？」

ミュエル「んだぁ……。こっちでは、おとうさん……って、呼ぶんだっぺなぁ……？」

メルク「みゅう……。なぜ、隊長さんがお父さんなのです？」

ミュエル「ん～……。おっとうが、おらを娘だって言ってくれたからかなぁ……？」

ミュエル「救出されて、茫然としていたおらを、ぎゅう……ってして、そう言ってくれたっぺ……。」

ミュエル「その時に、自分が記憶喪失であることも、怖くなくなったっぺ……。」

ミュエル「これから、この人と一緒に、埋めていけるんだぁって、そう思えたから……、」

メルク「……優しい隊長さん、じゃなくて、お父さんなのですね。」

ミュエル「んだぁ……。おらには勿体ねぇぐらい立派な人だっぺ……。いつかおらも、あんな人になりたいっぺ……。」

メルク「みゅ！もしかして、私をハグしようとしてくれたのも……、」

ミュエル「おっとうなら、きっとそうするだろうと思ったっぺ……。」

ミュエル「それに、おらも、放っておけなかったっぺ……。同じ境遇の子がいるなら、少しでも助けになりたいと思ったっぺよぉ……。」

ミュエル「んだども、メルクちゃんはつえぇからなぁ……。ぎゅうをする必要なんて、ないみたいだっぺ……。」

メルク「……。」

メルク「……ミュエルさん。」

ミュエル「ん～……？」

メルク「少しだけ、ぎゅうっとしてもらってもいいのです？」

メルク「ミュエルさんの話を聞いていたら、なんだかハグをしてもらいたい気持ちになったのですよ！だから、迷惑でなければお願いしたい……、」

ミュエル「ぎゅう～……！」

メルク「みゅわ！い、いきなりなのです！？」

ミュエル「ふふふ……。そっかぁ、瓶ごとならぎゅうって出来るっぺなぁ……。メルクたｙんはひんやりしてて気持ちいいっぺ……。」

メルク「それは私の温度というより、瓶の温度だと思うのですよ……。えっと、冷たくはないのです？」

ミュエル「ふふん……。おらは雪の国の生まれだっぺよぉ……？これぐらい、なんてことないっぺ……。」

ミュエル「それにメルクちゃんは暖かいっぺ。心配はいらねぇっぺよぉ……。」

メルク「みゅ、みゅう……、」

ミュエル「ふふふ……。これでもう安心だっぺなぁ……。寂しくなっても、おらがぎゅうってしてあげるっぺ……。」

メルク「みゅふふ、それはとてもありがたいのですよ！」

ミュエル「ん～……。」

メルク「……本当にまた、ぎゅうってしてもらってもいいのです？」

ミュエル「……。」

ミュエル「ふふふ……。勿論だっぺ……。」