「秘宝求む紺青」ナヴィシュカ

ナヴィシュカ「よーし、しゅっぱーつ！」

主人公「うぐぐ……！」

ナヴィシュカ「あれ？　まだ出発できない？　おっけ。もう１度いっくよー。」

ナヴィシュカ「よーし、しゅっぱーつ！」

主人公「うぐぐ……！」

主人公「ぐはっ……。」

ナヴィシュカ「あ、あれ？大丈夫、主人公！？」

主人公「だ、大丈夫だ……。でも、ごめん、今の俺の筋肉じゃ、ナヴィシュカのイカダを動かせない……。」

ナヴィシュカ「そっかあ、やっぱり風がないと無理かあ。」

主人公「というか、ずっと言いたかったんだけど、イカダって陸では動かないんじゃ……。」

ナヴィシュカ「ふふーん、あたしのイカダは特別製だから、陸でも浮くことができるの！」

主人公「特別製？」

ナヴィシュカ「そう、特別製！柱に石がついてるでしょ？」

主人公「あ、本当だ。」

ナヴィシュカ「イカダを動かすときはこれがぴかーって光って陸でも浮くことができるの！」

主人公「おお、なんて便利なんだ！」

ナヴィシュカ「ただ、風がないとまったく動かないんだけどね！」

主人公「それってわりと致命的なんじゃ……、」

ナヴィシュカ「ふふーん、大丈夫！そんな時のために、あたしには仲間がいるから！」

主人公「仲間？ナヴィシュカは１人で旅をしてるんじゃないのか？」

ナヴィシュカ「違うよ。あたしにはヴァンバトっていう仲間がいるの。」

ナヴィシュカ「ヴァンバトはすごいんだよ。あたしにはできないことがなんでもできるし……、」

ナヴィシュカ「何より風がないときは魔道具の団扇で風を起こしてくれる！　いてくれて便利！　役立つ存在！」

主人公「言い方……。」

ナヴィシュカ「なあんてね。冗談冗談。ヴァンバトはあたしのヒーローなんだもん。一緒にいてくれて、本当にありがたいって思ってて……、」

ナヴィシュカ「ん？」

主人公「どうした、ナヴィシュカ？」

ナヴィシュカ「あそこにいるお姉さん、なんだか困ってるみたいだなあって。」

ナヴィシュカ「ちょっと声かけてくるね！」

主人公「えっ！？　ま、待ってくれ、ナヴィシュカ。俺も行くよ。」

村のお姉さん「この辺にあるって思ったんだけど……、どうしよう、どこにもない……。」

ナヴィシュカ「あの、お姉さん。困ってるならお手伝いするよ！」

村のお姉さん「え？」

ナヴィシュカ「お姉さん、何かを落としたのかなーって思ったんだけど、違う？」

村のお姉さん「えっ、どうしてわかったの？」

ナヴィシュカ「ふふーん、それは下を向いてずっとうろうろしてたから！簡単なことだよー！」

主人公「はあ、はあ……やっと追いついた……。ナヴィシュカ、足がはやいな……。」

ナヴィシュカ「主人公が遅いんだよー。」

主人公「いや、ナヴィシュカがはやすぎるんだと思うぞ！？」

ナヴィシュカ「そうかな？それよりお姉さん、大事なものをなくしたのなら言って。あたし、探し物は得意なの。」

村のお姉さん「そうなの？それじゃあ、手伝ってもらえるかしら……。」

ナヴィシュカ「もちろん！」

村のお姉さん「ありがとう。実は、彼からもらった指輪を落としてしまって……。」

村のお姉さん「この辺で落としたと思ったんだけど、どこにもないの。」

ナヴィシュカ「ふーむ……。」

主人公「指輪、ですか。俺も探すのを手伝います。」

村のお姉さん「あら、本当？それは助かる……、」

ナヴィシュカ「お姉さーん、指輪ってこれ？」

主人公＆村のお姉さん「えっ！？」

村のお姉さん「そ、そう、これだわ！でも、どうしてこんなにはやく見つけられたの？」

ナヴィシュカ「うーん、冒険家の能力ってやつ？あたし、一応宝探しが仕事だから。」

主人公「す、すごいな、ナヴィシュカ。」

村のお姉さん「そうだったのね。本当にありがとう！何かお礼を……、」

村の少年「うわーん！ぼくのおもちゃ、どこにいっちゃったの……！」

パン屋のおやじ「俺の大事な商売道具、なくしちまった……！」

村の少女「あれっ、わたしのお人形がない……！？」

ナヴィシュカ「はっ。失くしものを探す声が聞こえる……！」

村のお姉さん「えっ、お礼は……！？」

「あたしが勝手にやったことだから、気にしないでー！」

主人公「ナヴィシュカ、待ってくれー！イカダも置いて行ってるし……！ひとまず落ち着いてくれ……！」

ナヴィシュカ「いやー、みんなの失くしもの、見つかってよかったね！」

主人公「ナヴィシュカはすごいな。あっという間に失くしものを全部見つけて……！みんな喜んでたぞ。」

ナヴィシュカ「うーん、あたしは、自分ができることをしただけだから。」

主人公「そんない謙遜するなよ。ナヴィシュカは本当に探し物が得意なんだな。宝探しが仕事って言うのも納得したよ。」

ナヴィシュカ「……。」

主人公「ん？　どうしたんだ、ナヴィシュカ。」

ナヴィシュカ「あたしはねー、主人公。確かに人の探し物を探すのは得意なの。でも……、」

ナヴィシュカ「でも、自分が本当に見つけたいって思ってるものはいっつも自分じゃ見つけられないの。」

主人公「そうなのか？さっきはあんなにはやく、みんなの失くしものを見つけてたけど……。」

ナヴィシュカ「うーん、あれは自分のじゃなかったからね。何度も探したけど、やっぱり自分が探してるものは見つけられないんだ。」

主人公「そうだったのか。」

ナヴィシュカ「でもその代わり、相棒のヴァンバトが、あたしの探し物を見つけてくれるの！」

ナヴィシュカ「だから、あたしにとってヴァンバトはヒーローなんだよ。」

主人公「ヒーロー、か。すごく頼りにしてるんだな、そのヴァンバトさんって人のこと。」

ナヴィシュカ「ふふーん。あったりまえでしょ。」

ナヴィシュカ「ヴァンバトはね、小さな頃、あたしが大事にしてたブレスレットを失くしちゃった時……、」

ナヴィシュカ「誰よりもはやくブレスレットを見つけてくれたの。」

ナヴィシュカ「それだけじゃない。初めて宝探しに出かけた時に、あたしがうっかり地図をなくしちゃって。」

ナヴィシュカ「それを見つけてきてくれたのもヴァンバトだった。」

主人公「へえ……！すごいんだな。ヴァンバトさんって。」

ナヴィシュカ「そう。すごいの、ヴァンバトは。」

ナヴィシュカ「だからきっと、今探してる宝もヴァンバトとなら見つけられるって、あたし、信じてるんだ。」

主人公「えっと、ナヴィシュカとヴァンバトさんが探してる宝って……？」

ナヴィシュカ「名前はリコルニル。この世界のどこかにあるって言われてる、伝説の宝剣だよ。」

主人公「リコルニル……、初めて聞く名前だな。常夏の国では有名な宝なのか？」

ナヴィシュカ「そうだね。でも、何人もの人がリコルニルを探したけど見つからなくて……、」

ナヴィシュカ「本当はないんじゃないかとも言われてるんだ。でもあたしは、ヴァンバトとなら見つけられるって、信じてる。」

ナヴィシュカ「だってヴァンバトは、あたしのヒーローだから。」

主人公「そっか。ナヴィシュカにとってヴァンバトさんはすごく大切な存在なんだってよくわかったよ。」

ナヴィシュカ「そう。ヴァンバトは、あたしの何より大事な相棒。」

ナヴィシュカ「あたしが探さなくても、絶対隣にいてくれる、唯一無二の、宝物みたいな人なんだ。」