【百鬼異聞録】「秘境奇縁」ストーリーまとめ【イベントストーリー】
序幕
輝く桃花、魅惑的なそよ風。妖怪たちは酒を飲みながら談笑している。まるでここで全ての悩みを捨て去り、時間さえも忘れたようだ。 「パッ——」 拍手の音は島の岸辺から聞こえてくる。 音は波のように広がっていく。 微かな動きなのに、一瞬で島全体に伝わったようだ。 遊んでいた妖怪たちはまるで術に掛けられたかのように、その場で固まってしまった。 大きな島は一瞬にして、水の流れる音しかなくなった。 白沢 『ひと時の喜びを享受してもいいが、本当に過去を忘れ、ここに留まると、酒に酔って目が眩むだけでは済まなくなる。』 彼女の金色の瞳に流れる光が見え隠れ、風もないのに袖が震えている。 彼女を中心に、空中に舞う桃の花びらは溶けたかのように霧散して煙になり、島を何重も囲んだ。 霧は深く濃厚であり、まるで実体があるようだ。 島中に満開した桃の花は見え隠れており、以前のように明るくて華やかではなくなった。代わりに危険で妖しげな雰囲気が増えている。 化け狸 『これは……あれ?ここでどれぐらいの時間を過ごしたんじゃ!?』 妖怪たちは夢から醒めたばかりかのように、島に上がってから今まで経験したことを思い出す…… |
初醒
妖怪たちは元々島の爛漫な野花に心酔し、一種に島に上がってピクニックをしただけだった。 しかし、いつの間にか妖怪たちは本当に過去のことを忘れ始め、一杯また一杯お酒を飲み、島に留まった。 青行灯 『花見を十分に楽しんだ後、蜃気楼に戻ると思っていたが、こんなに長く待つとは思わんなんだ。』 青行灯 『百聞館が開業してから、こんな寂れたことは一度もなかった。』 青行燈はのんびりと白沢の傍から歩いてきた。その唇はまだその淡い笑みを帯びているが、目の中に幾分の心配がある。 桃の精 『ここの桃の花は何や変どす。うちの店にいる子はこんな桃の花おへんよ……』 犬神 『まさか不注意で正気を失うとは……修行が足りないようだな……』 大天狗 『さきほど舞っている桃の花が、なぜ霧になった?風でも吹き飛ばせない……まさか力が足りないのか!?』 妖刀姫 『……少しだけど、ここにも血の匂いがするようだ。』 藤姫 『この霧……夢のようであり夢ではないような感覚、何か以前白沢さんが閉じ込められた場所と少し似ているよね?』 白沢は眉をひそめ、手中の書簡を軽く敲いた。 白沢 『あの時我を閉じ込めた者の行方はまだわからない。』 白沢 『使命はまだ果たせず、主に顔向けできないと思い、適当に余生を過ごすための場所を探した。』 白沢 『この前島の近くに来たとき、何か気づいたけど、陣の目の欠片だと思った。』 白沢 『しかしここまで航海してきたから、きっと何か因果があると思い、干渉しなかった。』 白沢 『今になって考えると、今回の事件はそう簡単なものではないかもしれない。』 青行灯 『そういうことなら、まずは船に戻り、次のことを相談……』 焦った声が妖怪たちの話を遮った。 猫又 『五丸と三つ目を見た者はいないか?』 猫又 『先に猫又屋に戻ったのか!?』 確かに、色々な妖怪たちの中から、2匹の姿が見えない—— いつもどこかでこっそり怠けているが、仕事は必ず真面目にこなす子猫。 そして、身体は小さいが、いつもあっちこっちで冒険と探索に出かける、無限の勇気と活力があるような子猫。 藤姫 『放っておけないね……』 白沢は少し考えたあと、少し前へ進んだ。 白沢 『この霧は蓬莱の霧と似ているかもしれない。我はここで皆さんのために幻境を駆除する、それで少しは正気を保つことができるだろう。』 白沢 『島は桃の花に覆われ、何重もの霧に囲まれている。おそらく島の中では因果が混乱し、機運が乱れている。』 白沢 『何があろうと、今回の目的は子猫を連れ戻すことだ。』 白沢 『あまり長居すると、命を失うことになる……』 |
騒動
花びらが再び霧になると、元々知り尽くした小道も、どこへ向いているのかわからなくなる。 感覚からすると、歩いた距離は島自体の大きさを遥かに超えている。 しかし、道が続いているので、それに沿って進むしかない。 もう一度曲がると、小道は2つの高い石の間を通り、その先に微かに明るい陽の光が見える。 隙間を通り抜けた後—— ??? 『きゃあ!』 幼い声が響いた。 妖怪たちは急いで身を乗り出すと、それはみんながよく知っている猫妖怪ではなく、毛がふわふわで、曲がっている尻尾を持つ子犬だった。 子犬の妖怪 『ぶつかって、すみません。あのう、どちら様ですか?』 赤黄の毛皮、白い豆の眉毛、手に小さな木刀を持っている——子犬を見ると、みんなは思わず犬神に振り向いた。 犬神 『えええ??』 犬神 『なんだ?わしは知らんぞ。』 妖怪たち 『じーー』 子犬の妖怪 『え?お前の毛色は私と同じだな。まさか……母上が言った、私たち家族を捨てて、家を出て行った父上なのか?!』 妖怪たち 『じーー』 犬神 『そんなことがあるかーー!』 みんなの混乱は、老人の出現によってやっと収まった。 少し曲がったもみあげ、笠をかけたまま、背中の鞘に無造作に剣が入っている。淡い笑みを帯びているが、威厳がある顔立ち。 ???(犬神・歴戦) 『騒ぎがあると聞いて確認しに来たが、これはどうしたことか?』 |
妖怪たちは来た意図を説明した。子犬の「父親」の疑いもようやく晴れた。 茅葺き小屋の中に座っているみんなは、初めて白沢の言っていた「因果混乱」の意味を少し理解するようになった。 ???(犬神・歴戦) 『なるほど……』 ???(犬神・歴戦) 『わしのほかに、もう一人の「犬神」がいて、別の場所でまったく違う人生を送っているとは……』 犬神 『うむ……わしも、「自分」と会話する日が来るとは思わなかった。』 子犬の妖怪 『え……でもそうなると……犬神師匠と私たちは、みんな「間違った」存在なのか……』 隣の青行燈は小さい妖怪の頭を撫でた。 青行灯 『見聞と物語に是非もあるまい。』 青行灯 『同じく記述された存在なら……そうだな、こういう見聞を「外伝」とでも言っておこう。』 青行灯 『すでに記載されている物語と違うが、これも語る価値があると思う。』 子犬はわかったようでわからないようだが、隣にいる老人は大らかに笑いながら、客人たちにお茶を淹れた。 ???(犬神・歴戦) 『「外伝」か?面白い。』 ???(犬神・歴戦) 『異郷の者たちよ、ここの生活を邪魔さえしなければ、こいつらにおぬしたちの案内役をさせよう。』 ???(犬神・歴戦) 『まだ幼いが、わしの道場で育てた子供たちだ。迷子になった子たちを早めに見つけるのに役立つだろう。』 ???(犬神・歴戦) 『しかし、その前に……おぬしたちの言った「百聞かるた」というものを、わしにも教えてくだされ。』 |
衝突
子犬の妖怪・黄 『百聞かるた……へへ、本当に面白いね。』 子犬の妖怪・黒 『どうやってより多くのカードを集めればいいのか……』 子犬の妖怪・白 『おい!ちゃんと客人の道案内をしろ!』 同行の仲間にふわふわな子犬が3匹増えた。霧は彼たちにまったく影響がないようだ。というより、彼たちにとって霧は最初から存在しないかのようだ。 しかし、いずれにしても、道に詳しい案内役のおかげで、だいぶ楽になった。 子犬の妖怪・白 『彼たちの無礼を許してください。弟たちは遊びたがりだけど、仕事を真面目にこなすいい子たちです。』 頭である白犬は礼儀正しく、なんでもてきぱきとやりこなせる。 青行燈は「兄貴の心得」について話している一条を見て、口元が思わず上がってしまう。 子犬の妖怪・黄 『あ!そうだ。この近くにお姉さんがいるよ。』 子犬の妖怪・黄 『今日は会えるかな。』 子犬の妖怪・黒 『お姉さんは非常に綺麗だけど、あまり話しかけてくれない……』 子犬の妖怪・黒 『いつかお姉さんの刀に触れさせてくれないかな。ちょうカッコイイんだ!でも、いつも断られてしまう。』 妖刀姫 『刀?』 子犬の妖怪・黒 『うん!とても綺麗で、大きな刀だよ!』 その時、鋭い殺意が空から伝わってきた。 「キン——」という音がした。みんなが反応する前に、妖刀姫は刀を構え、冷たい光を放つもう一本の長い刀を防いだ。 妖刀姫 『桃の花の幻術が解けたあと、ずっと微かな殺意を感じていた。あなたのだったのね。』 ???(妖刀姫・呪刃) 『うん。なるほど。確かに似ている……ならば、ここで土に帰ってもらおう……』 ???(妖刀姫・呪刃) 『すべてを失う道を歩む前に……』 ???(妖刀姫・呪刃) 『せめて私たちであの刀を……』 妖刀姫と似た顔を持つ少女は誰かと話しているように呟いている。 彼女の動きに会わせて柔らかい布が軽く上がる。その一挙手一投足が、まるで軽く舞い上がる蝶のようだ。 妖刀姫は刀を構えたまま、神経を研ぎ澄まし、腕にひそかに力を入れ、相手に隙さえあれば刀を振りに出るつもりだ。 その少女は長い刀を手に握り、何かを呟いた後、顔色が急に変わり、妖力が溢れ出た。そして、その体は刀と一つになった。 2人は一つの瞬間を待っている。手中の妖刀で相手の首を取る瞬間を。 濃い霧の中で、一つの枯れ葉が地に落ちた瞬間、2人は同時に相手に向かっていく—— 青行灯 『はい、そこまで!』 灯火の輝きが2人の動きを止めた。 青行灯 『蜃気楼の範囲内じゃないが、あたいがここにいる限り、やはり蜃気楼のルールに従ってもらう。』 2匹の犬妖怪は相次いで出てきて、かるた机を運んできて、その上にカードを置いた。 青行灯 『デッキを貸してあげる。あとでちゃんと返すんだな。』 2人の少女は揃って首を傾げ、目に迷いが満ちている。 青行灯 『よし、まずはちゃんと意思疎通をしよう。』 |
激戦
???(大天狗・鋼風) 『我が領地に踏み入れたのは誰だ?』 威厳のある声が梢から響いた。 何もない森の中に、突然いくつかの人影が降りた。 鎧を着た天狗たちは冷たい目で来客を見つめる。周りは恐いほどに静かになっている。まるで嵐の前の静けさのようだ。 1匹や2匹の妖怪なら、話し合いや戦闘でなんとかなる。しかし、明らかに布陣をしている多数の妖怪に対して、 いくら味方に強い妖怪がいようとも、蜃気楼のみんなは軽率な行動を取りたくない。 対峙を破ったのは、小さな犬の吠える声だった。 子犬の妖怪・黒 『悪い者じゃないよ!』 子犬の妖怪・黄 『おまえたちが私たちの手伝いの邪魔をしているんだよ!』 子犬の妖怪・黒 『犬神師匠が手伝えと言ったんだ!』 木刀を腰に掛けている子犬たちは激怒し、空に向いて抗議している。 ???(大天狗・鋼風) 『……』 ???(大天狗・鋼風) 『なるほど。正義の行いを邪魔したら、こちらの方が失礼になるということか。』 強い風とともに、武将の恰好をした大妖怪が地面に降りた。 彼の漆黒な翼は鋼の刃のようだ。その身は常に暴風を纏っている。 ???(大天狗・鋼風) 『義のためなら、この大天狗も一肌脱ぐぞ。』 妖怪たちの感謝の言葉を待たずに、目の前にいる普段のイメージと少し違う大天狗は話題を変えた。 ???(大天狗・鋼風) 『時に、皆の者は我が傘下に入り、共に正義のために戦ってくれぬか?』 ???(大天狗・鋼風) 『天下の全ての地に清明をもたらすために、有志の者は必要不可欠だ。』 ???(大天狗・鋼風) 『どうだろう?』 妖怪たち 『……』 ???(大天狗・鋼風) 『謙遜する必要はない。皆の者は力ある者と見た。』 ???(大天狗・鋼風) 『きっと我が王道に心酔しただろう。さあ、我らとともに!』 子犬の妖怪・黒 『でも、犬神師匠はそっちに入るつもりはないよ。』 あまりにも明らかな反論に、天狗たちの大将は一瞬唖然とした。しかし、彼はすぐ立て直し、大きな声で言った。 ???(大天狗・鋼風) 『志はそれぞれだ。他人を強制するのも、正義にもとる行為。』 ???(大天狗・鋼風) 『しかし、我が願いを貫くために、この世の使える力を全て集め、何事でも頂点に立つのもまた道理!』 大天狗 『何事でも頂点に立つ?』 同じような傲慢で冷たい声が人群れから聞こえてくる。 大天狗 『我は大義のために、全てを犠牲にしても力を求めている。お前は、何事でも頂点に立つと言ったな?』 ???(大天狗・鋼風) 『その通りだ。それとも、法術で我に勝つ自信があるのか?』 「パッ——」とカードが並んだ。これぞ名士の流儀だ。 大天狗 『この力、お前はどう対応する?』 |
幽境
紆余曲折した小道それでも前へと、霧の最奥へ向かう。 霧は解けないほど濃くなっている。見渡す限り、白い景色が続いている。 前方が目標のゴールかもしれないと知りながら、霧がここまで濃くなると、これ以上進めないだろう。 淡い青色の提灯が上下に浮かび、眩しい光を放っている。 青行灯 『灯の光が道を照らせるかわからない。あたいの店をいつも訪れている小さなお客さんたちを早く返してくれよ。』 淡い灯が浮遊し、小さなエリアを照らす。 どんな灯火を入れ、どんな芯を使えば、その輝きは厚い霧を通り抜けられるだろう? 周りの妖怪たちは騒いでいる。霧に閉じ込められた蜃気楼のみんなは戸惑っている。霧が見えない島の妖怪も成す術がない。 異なる叙述と所見が重なり合い、異なる軌跡で動く物語は、ここで交わる。 青行燈はあの日に百聞館で白沢と交わした会話を思い出した。 百鬼の所見は百聞と化し、カードに記され、航海する船から船へと伝わっていく。 この力は借り物だけど、もう少しわがままに使っても、あの方は気にしないだろ。 なぜなら…… 青行灯 『誰でも、ハッピーエンドが見たいだろう?』 青い灯火の光が浮かび、空白のカードは淡い光に照らされる。これまでの見聞が火の光から微かに再現し始める。まるで流れる絵巻のようだ。 笑いや悩みの断片は選別と抽出を経て、最後に空白のカードに落ちる。 カードの絵は再描画され、見聞は描き直される。メラメラと燃える火の光は夢幻のような影を落とし、カードを作る人の体もそれと呼応するかのように、微かな変化が起こった。 髪端で結んだ黒髪は滝のように散開した。無数のカードたちは製作者の心に応えるように、胡蝶のように飛び回る。 |
繭破り
前編
灯火が明るく輝き、火の光が激しく揺れている。 ???(青行燈・輝火) 『物語には必ず耳を傾ける者、立ち会う者、記録する者がいる。』 ???(青行燈・輝火) 『紙に落として初めて、叙述は「物語」になる。』 この地に来て、子猫を見つけられず、何重もの霧があるこの状況にみんなは居ても立ってもいられなかった。 青行燈の指先は微かな光に纏われ、一枚のカードが声に応じて前へ出て、淡い幻影が映し出される。 白沢の助力か、はたまた島の法陣の継続時間が長くて陣の目が緩くなったのか…… まるで彼女の言葉に呼応するかのように、島が微かに揺らいだ。 霧は少しずつ薄れていき、三つ目と五丸の居場所への道が現れた。 浮いている灯の中で、火の光が燃え上がっている。光と影が一つまた一つの画面を組み立て、カードに焼き付ける。 ???(青行燈・輝火) 『こんな小さな小細工は、許容範囲でしょう?』 空中を飛んでいるカードは沈黙を保ったまま、カードに新しい絵が浮かんできた。 |
後編
濃い霧が散っていき、小道の終点は、根が交差し、冠が空を覆い尽くせるような大きな樹へ向かっている。 桃の樹の根のところで、2匹の子猫が静かに眠っている。時々「出勤しなくていい」「料理がうまい」などの寝言が聞こえてくる。 無我夢中ではしゃいだ後、少し休憩しているようだ。 その身の上には、誰かが掛けた真紅のローブがある。 |
蜃気楼の妖怪たちは最後に一人も欠けずに船に戻った。 島に住んでいる、異なる軌跡を歩んでいた妖怪たちも再び自分たちの日常に戻った。 しかし、短い交わりは確実に痕跡を残し、見えない運命の大きな流れに印をつけた。 百聞館で、そのローブは静かに机の上に置いてある。 青行灯 『布の材質から見ると、あなたの着ていたものと少し似ているね。』 白沢 『ああ。』 白沢 『もしかしたら、あの方士は、今でも不老不死と時間を操る夢をあきらめていないかもしれないね。』 青行灯 『これからどうするつもり?』 白沢 『もし方士と出会ったら、覚悟しないと。』 白沢 『我の話は置いとくとして、新しい見聞が入ってくることはそちらにとっても都合がいいだろう。』 青行灯 『新しい見聞ができるのはいいけど、古い友人が傷つくのも見たくないのよ?』 白沢 『お気遣いどうも。じゃあ、必要な時に小細工でもして、我を助けてくれよ?』 |
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