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【百鬼異聞録】「桃源郷」ストーリーまとめ【イベントストーリー】

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▶「桃源郷」イベント詳細

章1 秘聞1

宮殿の中で、踊り子が踊りを披露していた。
踊り子は優雅に、軽やかに扇子を振り、衣の裾がひらひらと舞い、その姿はとても魅力的だ。そして織物を投げた後、地面に落ちた織物は次々と淡いお香に変わり、宮殿の中で消えていった。床の上に残されたのは黄色い豆と、宮殿の中心に立つある人物だけだった。
その人物は手品を変えた。すると地面に散りばめられた黄色い豆が飛び跳ねて、次々と集まっていき、そして花となった。
彼はその花を手にして、前に投げる。
琅琊子
『いけ。』
花は突然スズメに変わり、羽ばたきながら、まっすぐに皇帝の方へ飛んでいった。
それを見た周囲の人々は皆驚いていたが、皇帝は動じずに座っていた。
帝王
『……』
スズメがちょうど酒樽の上に止まると、皇帝はスズメを掴み、力強く握りしめた。
するとスズメはお香のように消え、黄色い豆になった。
琅琊子を皇帝に献上した大臣はこれを見て、慌てて琅琊子のそばまで行き、激しく頭を地面に打ち付けた。
大臣
『陛下!どうかお許しを!』
大臣は頭を上げることができず、震えながら皇帝の言葉を待っていた。
しかし皇帝はそんな大臣に目もくれず、ただ手の中の黄色い豆を見つめていた。二本の指でそれを掴んで指先でこすり合わせると、黄色い豆の外殻が徐々に剥がれ落ち、中に隠されていた黄金が現れた。それを見て、皇帝は大いに喜んだ。
帝王
『豆を撒くと兵士を作り出す、石すら金に変える。良い、実に良い!ハハハ、褒美を与えよ!』
絹織物が琅琊子と大臣の前に差し出された。
大臣はようやく頭を上げた。
その褒美を贈る者は得意げな顔で、絹織物の一角を軽やかに持ち上げると、そこには整然と並んでいる金銀があった。
血と混じった汗が大臣の額から膝に落ちる。
大臣
『ありがとうございます!』
ドンっという音とともに、宮殿の床にまた血の跡がついた。
琅琊子の顔にも笑みが浮かぶ。そして彼は一礼した。
琅琊子
『ありがとうございます。』
琅琊子は満面の笑顔なのに喜びが感じられない。自分に感謝の言葉を述べているのに感謝の気持ちが伝わってこない。さっきの跪いたりはい回ったりしていた術士たちよりも、皇帝はそんな彼に興味をそそられた。
皇帝は黄金を拾い上げた。
帝王
『これは……幻術の類いか?』
琅琊子が返答するよりさきに、大臣が返事をした。
大臣
『幻術の類いでございます!』
琅琊子は自覚していた。さっきのは単なる幻術に過ぎない。彼がそれを認めたら詐欺の罪に問われるし、認めなかった場合でも詐欺の罪に問われる。
何も言わない琅琊子を見て、皇帝は信じ込む。
帝王
『我の傍らにいることを許そう。』
大臣
『ありがとうございます。』
扉が外から施錠されると、足の力が抜けて琅琊子は床に座り込んだ。黄色い豆、織物、糸、お香が床にころがる。足の震えがまだ止まらない。
琅琊子
『やばい……やばいよやばいよ。』
琅琊子
『真面目にやるべきじゃなかった。』
琅琊子
『いや…真面目にやってよかった……と言うべきか。』
琅琊子
『……』
琅琊子
『……とりあえず、生き延びたな。』
彼は自分を慰め終わると、目の前の部屋を見渡し始めた。広大な部屋には宝がいっぱいで、下層に置かれた多くの古い宝物が押しつぶされていた。
琅琊子は部屋を見回りながら、奥へと進んでいく。奥に進むほど光が暗くなり、ほこりと腐った匂いが強くなっていく。
琅琊子
『誰かいる?ケホッ、ケホッ。』
琅琊子
『……』
琅琊子は部屋の奥の光に気付いた。
邪魔なものをどかし、奥へと進む。そして彼が見たのは——
破れた硝子だった。光が外から入り、巨大な金色の籠に当たっていた。
籠の中にいるのは、干からびた孔雀の死体だった。
他の視線はその割れて黒く変色したくちばしに止まった。
彼は自分の運命を悟った。
ここから逃げなきゃ

章2 秘聞1

神獣白沢は千年もの間、国を守っていた。
討伐に出て、国を治めていた皇帝も年を取った。
ある夜、皇帝は夢の中でとある雲に乗ってやってきた仙人と出会った。その仙人は、白髪は風になびき、肌は雪のように白く、首は長く頬骨が高い、五穀を食べたことがない雰囲気を醸し出し、雲に包まれていた。
皇帝は礼儀を以て迎えた。何処から来たのか、天下で起きた事などの質問をした。一つ一つ確かめたあと、ようやく自分のことを言い出した。
皇帝
『我々は神獣の庇護を受けたおかげで、人々が幸せにくらしていて、繁栄している。しかし心配することが二つある。』
皇帝
『一つ、神獣はどんなに人間を愛しても、所詮は人間ではない。もしこの力を手に入れられたら、後世に恵を与えるのは私になる。』
皇帝
『二つ、私は帝王の身分ではあるが、肉体は一般の人間と変わらず、神獣のような寿命がなければ、どうやってこの国のために尽くせるのだろうか?』
皇帝の言葉を聞いた仙人は、皇帝がよく知っている人物を指で描いた。
仙人
『この人ならあなたの悩みを解決できるだろ。』
そう言い終わると、帝王は夢から目覚めた。寝宮の中の香はもう燃え尽きていて、空気の中にはまだ香りが漂っていた。
彼は数日前に閣から取り出した仙山雲図を見つめた。その雲の下は微か光っていて、よく見ると人の顔のように見えた。
帝王は立ち上り、仙山雲図の側に来た。木から非常に淡い、嗅いだことのない香りが漂っていた。彼は手を伸ばして仙山雲図に触れると、光る粉末が指先についた。
皇帝
『……夜明珠?』
皇帝
『はっ、ははははは!良い!』
皇帝
『遥かなる仙境とはこのことか。』
翌日の朝、皇帝は宮殿に琅琊子を招き、方法を尋ねた。
琅琊子は皇帝を海辺へと誘う。
海辺に着くと、突如霧が現れた。
皇帝
『こ……これは!?』
空には立派な楼閣。広大なる城郭、青い海原の上にそびえ立つ奇岩。
初めて見る蜃気楼に驚かされた皇帝は、それを仙境だと思い込み、中に入って自分のものにしようとした。だが、皇帝である自身がどうしてもそこへたどりつけないという真実を知り、自分の小ささを思い知らされた。
そして、あの国を守っている神獣白沢を思い出し、焦り始めた。
皇帝
『琅琊子。』
琅琊子
『はい。』
皇帝
『お前の王は、神獣の力もなければ、神獣よりも長生きできない。この国を永遠に繁栄させる方法はないのか?』
琅琊子
『神獣の力を掌握するのは極めて難しいと思います。しかし陛下のためならばわたくしは試してみたい所存です。』
琅琊子
『わたくしは仙丹道術を日々研究し、神獣の力も学んでいます。』
琅琊子
『そのため、正しい方法を使えば、人間でも神獣の力を手に入れられると断言できます。』
琅琊子
『そして、神獣が万物を知っているのは、彼女が因果を繋げているからです。』
琅琊子
『陛下がもし因果を操ることができれば、寿命を延ばすことも不可能ではありません。』
皇帝
『よかろう。黄金と食料と船をやろう。我のために不老不死の術を探すのだ。』
琅琊子
『かしこまりました。』
皇帝は精巧な箱を懐から持ち出し、琅琊子に渡した。
その箱を開けるときらきらとした夜明珠が琅琊子の目に映った。
皇帝
『これもくれてやる。』

章3 秘聞1

琅琊子は船に乗り海に出た。四方を遊歴し、身を隠す場所を探し続けた。
士卒
『琅琊子殿、皇帝陛下からの伝言です。』
琅琊子
『はい。』
村長
『琅琊子とやら、皇帝陛下からの伝言です。』
琅琊子
『はい。』
女の子
『琅琊子さん、皇帝陛下からの伝言です。』
琅琊子
『はい。』
どこへ行っても、皇帝から伝言が届く。
起源が迫りくる中、琅琊子は絶望した。彼はやがて故郷に戻る決意を固め、皇帝に裁いてもらおうとした。
突然の嵐に襲われ、船は方向を失った。
琅琊子はついに諦めた。船室に戻って横たわり、目を閉じて船が漂うままに身を任せ、死を覚悟した。
目覚めると、嵐は止み、太陽が出た。船はどうやらある島に流れ着いたようだ。
琅琊子
『ここは?』
島は豊かで、珍しい花や果物があちこちにあるが、人は誰一人見当たらない。
琅琊子はこの光景にひかれて、島の奥へと進む。島の奥には山があり、その山の上に宮殿が建てられていた。そして宮殿の奥に仙人が座っていた。
仙人
『これはこれは!』
突然の来客を見て、仙人は大いに喜んだ。
琅琊子を宮殿の中へと誘い、あらゆる珍味で彼をもてなした。そして、彼にいくつか質問した。
仙人
『今はなんの時代だ?』
仙人
『今は何時だ?』
仙人
『今の皇帝は誰だ?』
琅琊子はすべての質問に答えた。
そして、琅琊子は世間話で仙人を大いに楽しませた。
しばらく酒を飲むと、琅琊子は突然ため息をついた。
琅琊子
『あーあ、とても残念だよ。』
仙人
『なにがだ?』
琅琊子
『白沢の力を陛下に捧げると誓ったけど、どうもその約束を果たせそうにない。』
琅琊子
『はぁ……今は自分の身を守ることさえ難しい。でなければ、もっとあなたと話せたのに。』
琅琊子
『どうしたらいいか……』
苦悩する琅琊子を見て、仙人は大笑いして、再び彼に一杯の酒を恵んだ。
琅琊子が目覚めたときには、すでに船の中にいた。ほろ酔いしていて、頭の中には一つの呪文しか覚えていなかった。
甲板に来ると、船はいつの間にか蓬莱島に止まっていた。

章4 秘聞1

天地が開かれた時、万物ははじめて天命と理を知り、生き生きとしていた。
世界から隔絶された場所、雲を突き抜ける山の上に、白沢という名の異獣がいた。
琅琊子
『この山、高いな……』
山のふもとで琅琊子は目を細めて山の頂を見上げ、呟いた。
準備が整った後、琅琊子は敬虔な態度で一歩進むたびに一拝しながら山を登り、山頂に着いてから大礼を行い、山に登ったわけを白沢に説明した。
琅琊子
『僕が言ったように、陛下は日頃の感謝の意を込めて、海上であなたの住処を用意しました。』
白沢は長年人間と生活していたので、特に疑わなかった。
白沢
『うん。案内してくれ。』
船が蓬莱島についた。
蓬莱は栄えていて、田畑と水路があり、山の中には煌びやかな金の家がある。
白沢
『ここか?』
琅琊子
『ここだ。』
白沢が階段に登ると、琅琊子が呪文を唱え始めた。
白沢
『!!?』
島中に張り巡らされ呪文が法陣となった。入念に作られた法陣は規模が大きく、さすがの白沢もすぐに抗うことができなかった。
しかし白沢は神獣、やがて彼と戦った。
海が鳴り、波が高まり、一瞬天地ですら驚かされた。
白沢
『どこでこの法陣を知った?』
琅琊子
『力をくれるなら、この陣を止めてやるよ。』
白沢
『……そなたの力では無理だ。』
琅琊子
『……』
琅琊子
『頼む。』
琅琊子
『あなたは神獣だ。力も無限にある、その力を僕にも分けてくれよ。僕だって……僕だって生きたいんだよ!』
結局、琅琊子の法陣は白沢に破られ、神獣の力を奪うことは叶わなかった。
しかし白沢も法陣に囚われ、やむを得ず自分の神獣の力を障壁に変え、琅琊子を止めるのと同時に自分を封印した。
白沢は法陣を破ろうとしたが、法陣はすでに完成され、しかも彼女自身の力も混ざっていた。
自分の左手で右手と戦えないのと同じ、白沢もこの檻から抜け出せずにいた。
白沢
『……』
白沢
『まあいい、幸い住処は良さげのようだし、少し休んでまた……』
そう言って白沢は金の家の扉を開けると、顔色が悪くなった。なぜなら、目の前に荒れ地が広がっていたからだ。
白沢
『……あの方士め。』

章5 秘聞1

蓬莱の一件のあと、白沢は囚われの身となり、琅琊子の作戦は失敗に終った。
故郷に帰る勇気がない彼は、船に乗って東へと行き、助けてくれる仙人を探し出そうとした。
数日かけて探しても見つからず、船の食糧もほとんど尽きてしまった。彼は自分の終わりが近いことを悟った。
幸いにもまだ美味しい酒がある。そんな酒を心ゆくまで楽しんで、ひどく酔っ払って、寝床に倒れた。
ここは夢の中。
琅琊子は夢の中で秘境に入り、とある少女と出会った。
少女は小さく少し痩せていて、ボロボロの服を着ていた。紐の結び目は少し緩んでいて、ずいぶん苦労した様子だった。
琅琊子はわずかに残った食料を全部彼女にあげた。
琅琊子
『持っていけ。どうせあの仙人を見つけ出さないと僕は……』
琅琊子
『死ぬしかないんだから……』
少女は琅琊子にお礼を言った後、また何か言おうとしたが、琅琊子には理解できなかった。
返事する間もなく、海上の太陽によって目覚めた。船は既に方丈島に止まっていた。
琅琊子は大喜びで船から降り、声を高らかに宮殿へと走っていた。そして、宮殿の前に到着した。
宮殿の扉を開くと、そこには仙人などいなかった。彼の目に映ったのは背が八尺あり、凶悪な目をした妖怪だった。
妖怪
『なんだ?この仙人の顔を忘れたのか?』
琅琊子
『妖……妖怪!!』
腰が抜けた。地面に這いつくばって一歩も動けなかった。そんな琅琊子を見て妖怪は大笑いした。
妖怪
『ははははは!』
妖怪
『俺に用があるそうだな。まあ座れ座れ、礼儀がなってないやつめ!』
妖怪
『心配するな、食べたりせんぞ。頼みがあってだな。』
琅琊子は震えながら口を動かしたが、まったく言葉にならなかった。
妖怪
『あ?なんだって?』
妖怪はわざと聞こえないふりして、琅琊子に近づいていく。
琅琊子はさらに怖くなり、思い切って目を閉じたが、その妖怪は彼の耳元に近づいてこう言った。
妖怪
『童男童女を百人連れてこい。』
妖怪
『連れてきたらお前は晴れて自由の身だ。それとも今ここで死ぬか?』
言い終わると、宮殿の門が閉ざされた。琅琊子が我に返った時、この方丈島が妖怪で溢れていることに気づいた。島中のあらゆる目がじっと琅琊子を見つめていた。
琅琊子は慌てて船に逃げ戻り、帆を張って出発した。
とっくに死を覚悟した決意はいつの間にか消え、ただ生きたいという欲望が彼を動かす。
どうせ死ぬなら、やるしかない。

章5 秘聞2

ここは夢の中。
天地は広大な海の中に包まれていて、文字が流れてぶつかり合い、霊気が流れている。
脳が目の前の景色を理解する前に、泣き声が聞こえてきた。
振り返ると、砂浜にいた。日差しが温かく、海面は穏やかだ。
少し痩せている少女が裸足で、岩に座っている。
少女はボロボロの服を着ていた。紐の結び目は少し緩んでいて、ずいぶん苦労した様子だった。
琅琊子
『あなたは誰?』
言霊
『(じー)-(じー)』
琅琊子
『ここはどこだ?』
琅琊子
『……』
琅琊子
『ぼ……僕は死んだのか?』
少女の目の奥には、警戒心が満ちている。近づいたら痛い目にあう雰囲気を漂わせている。
琅琊子はそのまま去ろうとしたが、何かを思いついたのか、少女をじっと見つめだした。
2人はしばらくにらみ合ったが、言霊は目を真っ赤にしてにらんだ末、ついに諦めて、目をこすり始めた。
琅琊子は彼女が諦めたのを見て、まぶたに貼っていた紙をはがし、得意顔をした。
言霊
『!!?』
言霊は驚きを通り越して怒り出したが、琅琊子は疲れ切った笑顔でそれに対抗した。
決していい笑顔とは言えない、むしろ恐怖すら感じられる笑顔だ。
言霊
『!!!』
琅琊子は言霊の反応見て、さっきの質問を続けた。
琅琊子
『僕は死んだのか?』
言霊は頭を横に振った。
琅琊子
『そうか……』
彼は周囲を見回した後、太陽の方を見て考え込む。
琅琊子
『どうやら僕は違う場所に来てしまったようだ。』
そう言って彼は、くるりと回って歩き始めた。そしたら、背後から音が聞こえた。
ぐぅ……ぐるる……
琅琊子
『……』
言霊
『……』
琅琊子は振り返り、食料を探しながら言霊の前に戻ってきた。
琅琊子
『持っていけ。どうせあの仙人を見つけ出さないと僕は……』
琅琊子
『死ぬしかないんだから……』
彼女は半信半疑で食べ物を口にすると、口の中に甘い香りが広がった。
一瞬にして、腹の中で煮えるような感覚が和らぎ、奇妙な満足感が湧き上がる。
言霊
『その……ありがとう。』
少女は琅琊子にお礼を言った後、また何か言おうとしたが、琅琊子は返答する間もなく、消えてしまった。
言霊は夢の中から覚めた。
ぐぅ……ぐるる……
腹から声が聞こえる。
言霊
『これが……お腹が空いたということか……』
創世から初めて、彼女は空腹というものを感じた。
彼女は今、人々の言う悪神となってしまった。信仰の力を失った言霊の力はとても弱い。
真言の力との繋がりもだんだん弱くなっていた。
言霊
『ちっ……めんどくさい。』
言霊
『悪神にならなければ、こんなことには……』
言霊
『こんな……』
ぐぅ……ぐるる……
「悪神」の顔が赤くなり、勝手に怒りだした。
言霊
『お腹が空くなんて、これじゃ普通の生霊と同じじゃない!』
彼女はスッと立ち上がり、お腹から響く声とともに旅を続けた。

章6 秘聞1

琅琊子は跪きながら、不老不死の薬を皇帝に捧げていた。
琅琊子
『この薬は神獣白沢の精気で作られたものです。そして神獣は現在わたくしによって蓬莱島に閉じ込められています。』
琅琊子
『この不老不死の薬を一気に飲んではいけません。一般人の身体では耐えられない代物のため、徐々に服用して、全てを吸収する必要があります。』
不老不死の薬を手に、皇帝は喜んでいた。
琅琊子はその様子を見て、頭を床につけて大声で叫んだ。
琅琊子
『ありがとうございます!』
皇帝
『……』
皇帝
『頼み事でもあるのか?』
琅琊子
『はい、陛下。不老不死の薬を探す連中、鮫龍に出会いました。その力は白沢の百倍以上にも及びます。もしもその力を皇帝陛下に捧げることができるのでしたら……』
皇帝
『勝算はあるのか?』
琅琊子は頭を横に振った。
琅琊子
『七割しか……ですが……』
自身の話に興味をなくした皇帝を見て、琅琊子は口を閉じた。
帝王は不老不死の薬をじっくりと観察し、それを飲んだ。すると全身から生命力が溢れ出ていることを感じ、笑顔を浮かべた。その様子を見て琅琊子は急いで話を続けた。
琅琊子
『童男と童女の尿があれば、あるいは……』
皇帝
『なんだねそれは?』
琅琊子
『子供は陽が盛んな体質で、蛟龍は陰を極めし邪悪なものです。毒を以て毒を制す、新鮮な童子の尿は法陣を作るのに最も有効なものです。』
琅琊子
『童男と童女の尿があれば、必ずや蛟龍を陛下に捧げられることでしょう。』
皇帝
『よかろう!』
琅琊子
『ありがとうございます!』
琅琊子が百の船を率いて、海へと出る。
方丈島に向かいながら、しょっちゅう船を止めていた。
残された時間がどんどんなくなっていく。彼は一日中船首に立ち、指を折りながら星を占い、月を見て、ブツブツとつぶやきながら何かを考えていた。
昼になると、彼は船首に立って、太陽を見上げる。
琅琊子
『なあ、あれって不老不死の薬に似てない?』
夜になると、彼は船首に立って、月を見下す。
琅琊子
『こうやって海に手を突っ込むとき、月だってすくってやれるんだぜ?』
助手
『無理無理。』
琅琊子
『ははははは、やってみないとだろ?』
助手
『無理だよ、船長!ははははは!』
琅琊子
『見ろよ……この月を……』
琅琊子
『目の前にあるようだろう?』
船はただただ海の上を漂っていた。元々残りわずかな時間がさらに減っていく。
その日、彼はいつものように船首に立っていた。
突如として、霧が現れた。
空中で巨大な船が現れ、船には楼閣が載っており、楽しい声や笑い声が聞こえてくる。普通の蜃気楼とはわけが違う。
なんの反応もない周りを見て、琅琊子は空中にある船を指差して言った。
琅琊子
『あれが見えないのか?』
背が高い船乗りは頭を横に振った。
琅琊子
『あれが聞こえないのか?』
背が低い船乗りは頭を横に振った。
琅琊子はすべて察した。自分は妖怪になったと、報いを受けたと。
琅琊子
『はぁ……』
琅琊子はぼんやりと頭を上げた。目標を失った喪失感とホッとした安心感が同時に彼を襲った。
船から子供たちの声が聞こえてくる。
琅琊子
『どっかの島でこいつらを逃がすか……』
琅琊子がそう思っていた次の瞬間、隣の助手が恐ろしい顔で彼を指して叫んだ。
助手
『よ……妖怪だあああ!!!』
琅琊子
『なっ!!?』
嫌な予感がした琅琊子は、体中の血が冷え切り、慌てて船室に入り、鏡で顔を映すと、自分の体が静かに変化していることに気づいた。
扉の外の船乗りが助手の言葉に乗せられ、次々と武器を取って船室を囲み、琅琊子が出てくるのを待っていた。
琅琊子は右手で鏡を握り、左手で変化しつつある自分の体をなでる。これは彼が考えもしなかった事態だ。
琅琊子
『ふふ。』
琅琊子
『とっくに気付くべきだった。』
琅琊子
『はっ、ははははは!』
泣き声のような笑い声が部屋の中から聞こえ、助手の言葉を裏付けることになった。扉を叩く音がますます大きくなっていく。
殺すか。
扉の向こうの人間たちが迫りくる中、琅琊子は殺意を抱く。
彼は絶望の中、ふと窓越しの蜃気楼を見た。
すると風に吹かれた呪符が窓をすり抜けて、彼の額に貼り付いた。
琅琊子
『?』
彼は呪符をはがして鏡を見ると、なんと人間の姿に戻っていたのだ。
琅琊子
『……』
扉が徐々に開いていき、琅琊子が中から出てきた。周りの人々が彼を取り囲んで、熟視した。
背が低い船乗り
『人間じゃないかよお!?』
背が高い船乗り
『どこにいるんだよその妖怪ってのよお?』
琅琊子は「また酒を飲んで酔っぱらったのか?」と助手をきびしく叱った。
人々の大笑いの声の中で
船はさらに深い場所へと進んでいった。
隔絶された仙境、桃源郷を聞いたことがあるか。
桃源郷の中で、行き来したり種をまき耕作したりしている男女が百人もいるという……
良い田畑と美しい池があり、鶏と犬の鳴き声が聞こえる……
時知らず。

章6 秘聞2

蜃気楼にて。
青行燈
『さっきなにをしたの?』
一目連(霊音)
『なに、風がさわがしくて、我の風符を何枚か吹き飛ばしただけさ。』
そう言い終わると、彼は龍の頭を優しく撫で、海面を急いで通り過ぎる船を見続けた。その眼差しには優しさがにじみ出ていた。
青行燈は彼の様子を見て、何となくなにかを察した。ため息をつき、静かにこう言った。
青行燈
『この世界は陰と陽の原則によって成り立っていて、すべての人はそれぞれ定められた運命や寿命を持っている。』
青行燈
『本当にこれでよかったの?』
一目連
『我の信者は……』
一目連は驚いて、言い訳を変えた。
一目連
『かつて我の信者だった者たちの中で、善を追い求める者たちがいた。』
一目連
『彼らは不平等な仕打ちを受けた時、いつも「善人には天が助け、悪人には天が罰を与える」という言葉で自分たちを慰めていた。』
一目連
『館主はこの「天」をなんと解釈する?』
青行燈
『天意だ。すなわち陰陽の理。言ってしまえばその人の運命。』
一目連
『しかし人間はあまりにも小さい。我はその一人一人の運命を覗くことはできない。』
一目連
『たとえ苦しみをたくさん受けても、その苦しみを良しとしない。』
一目連
『そして、いわゆる天意はやがて願いへと変わる。これも一種の、神への祈りだと思わないか?』
一目連
『神として祈りに応えることが、陰陽の理に背くことになるのかな?』
一目連
『人間として、人間に手を差し伸べることも、運命と言えるんじゃないのかな?』
青行燈は笑顔を浮かべた。
青行燈
『世界で語り継がれることわざや物語には、先人たちの智慧が詰まっている。』
青行燈
『もしかしたら、あんたのように慈悲深い神や妖怪がずっと人々を守ってきたのかもしれないね。』
青行燈
『だからそういう言葉が代々受け継がれていたでしょうね。』
それから二人は、だんだん海の奥に消えゆく船を静かに見届けた。
見届けたあと、青行燈は百聞館に戻ろうとした。
別れを告げる際に、彼女はふと何かを思い出した。
青行燈
『そういえば、あんたは変わっていないようだね。』
一目連
『なんの話だ?』
話をしている間に、青行燈の目の前にいる人間が徐々に消えていき、妖怪の姿へと変わっていく。
青行燈
『いいえ。ただ故人を見たような気がしただけよ。』
青行燈
『あんたのように慈悲深い神様をね。』

章7 秘聞1

数年後
蜃気楼に新しい妖怪がやってきた。
蜃気楼の上で、花火が華やかに輝いている。
彼の幻術は大いに人気を博した。
三つ目
『これは……幻術の類いか?』
琅琊子
『幻術だよ!』

章7 秘聞2

三つの陣の目を破って、島の亡魂を駆逐した後。
蜃気楼、白沢、青行燈、青坊主・塵境、判官・墨浮かせ、季と孔雀明王は島の中心にある洞窟の前に集まった。
桃の花が輝いていて、春風が吹いている。
ここの桃の木には赤い木札が飾られていて、風が吹くと、木札がぶつかって澄んだ音を立てる。
桃林にやってきた一行は、突然目眩に襲われた。
青坊主・塵境
『敵の術中にはまったようだ。』
桃の精・落英
『安心しとぉくれやす。ただの酒の香りどすえ。』
孔雀明王
『何者だ。』
とある人影が桃の木から現れた。
宝蓮の禅杖を持ち上げて攻撃しようとしてきた青坊主・塵境を見て、桃花妖・落英はびっくりして跳ねた。
桃の精・落英
『ちょちょちょちょ!!』
桃の精・落英
『うちの桃林に無断で入ってきて、ついでにうちを打ち取ろうとせんといておくれやす。』
桃の精・落英
『それに……うちが設置した法陣をやぶったのはあんたらどすなぁ?』
白沢
『あの亡魂を作り出したのはそなたなのか?』
桃の精・落英
『そらちゃいますけど……』
桃の精・落英
『そやけどあの亡魂をまもる法陣を作ったのはうちどす!』

『まもる……ね。』

『彼らは今、生きることもできず、成仏することもできない。そして法陣を作って彼らをこの島に縛り付けた。』

『これのどこがまもるっていうの?』
桃の精・落英
『うぅ……彼らは元々死ぬ予定の人たちどすえ?』
桃の精・落英
『琅琊子が不老不死の薬でやっと彼らの命を救ったんどす。』
桃の精・落英
『彼が不老不死の術を見つけたら、彼らを元に戻せるんどすえ。』
白沢
『やはりあの方士か。』
その言葉を聞いて、桃花妖・落英はようやく白沢に気づき、慌てて胸の中から絵を取り出した白沢と見比べた。
桃の精・落英
『あんたやったのどすなぁ!どうぞ中へ!琅琊子が中でお待ちしとります。』

章7 秘聞3

宮殿はきらきらと輝いていた。
宮殿内では大きくそびえ立つ、すこし醜い塵外方士像が立っていた。
その隅っこのかなり散らばっているところで、琅琊子が丹炉の前で頭を掻いていた。
来客にまったく気づいていない。
桃の精・落英
『琅琊子さん、伝言どす。』
琅琊子
『はい!』
琅琊子は慌てて立ち上がり、顔を上げて白沢を見ると、大喜びした。
琅琊子
『白沢さま!』
白沢
『……』
琅琊子は白沢たちを見回りながら、ずっと口の中で何かブツブツ言っていた。
琅琊子
『やった!やった!僕の作戦は完璧だ!』
青行燈
『作戦?』
琅琊子はニヤリと笑い、自分の上着を大きく開けた。
上着の内側に蜃気楼の乗船券がぎっしりとぶら下がっていた。
影はふとなにかに気付いた。

『あー!三つ目が言ってた蜃気楼の周りでうろうろして他人の乗船券を見せる妖怪って琅琊子だったのか!』
青行燈
『自分の乗船券じゃないと蜃気楼に乗れないもんね。』
青行燈
『なぜ乗船券を集めているの?』
皆の驚く様子を見て、琅琊子は頭を振りながら、少し得意げに話し始めた。
琅琊子
『蜃気楼はまるで駅を乗せた船のようで、言うなれば移動する駅でしょうか。』
琅琊子
『とある場所に着くと、そこに少しの間だけ留まり、乗客が降りたり乗ったりするわけだ。』
琅琊子
『動けない動かない駅と違って、蜃気楼は常に移動している。』
琅琊子
『言い換えれば次の駅の乗船券を持った人が、次の「駅」になるってわけだ。』
琅琊子
『それに気付いた僕はある作戦を立てたんだ。』
琅琊子
『船に乗って、各地の妖怪から乗船券を買うこと。』
琅琊子は少し間を置いて、乗船券をそっとなでた。
琅琊子
『そしたらさ、蜃気楼の次の駅は僕で、その次も僕、その次の次の駅も僕になるってわけ!』
琅琊子
『たとえ蜃気楼がそこに止まらなくても、最終的には僕のところにいきつくわけ!』
琅琊子が大笑いした後、すぐに笑顔を引っ込めて、真剣な表情で白沢を見つめた。
琅琊子
『けど……』
琅琊子
『あなたたちに一目で見破らないよう、役に立たない目くらましとか色々勉強したんだよ?それで島に霧を仕掛けたんだ。』
喋っていくうちに、だんだんとやりきれない口調になった。
琅琊子
『それに……蜃気楼が迷わないように、桃の精・落英の陣の眼に三本の赤く光る光の柱を設置したんだよ?』
琅琊子
『わけがわからないほど、妙に人をひきつけられるっていうか……』

『……』
白沢
『ふん。小賢しい。』
琅琊子
『へへっ。それでも、あなたは来てくれたじゃないか!』
白沢は彼をにらみつけた。
白沢が爆発寸前の様子を見て、琅琊子は慌てて謝る。
琅琊子
『あなたに頼みがあって、仕方なくやったんだ。』
琅琊子
『頼むよ、その力を僕に教えてくれよ。どうしてもその力が必要なんだ。』
白沢の目つきは冷ややかだった。
白沢
『そなたはそれだけのために、こんな手間がかかることをしたのか?』
琅琊子
『はい。』
白沢
『神様を招くのは簡単だが、送るのは難しいということを知らないようだな。』
白沢
『そなたは我をあんなに長く蓬莱に閉じ込めておいて、もし我がそなたに恨みを抱くことになったどうするつもりだったんだ?』
白沢
『もし我がそなたに全く関係のない術を教えたら、どうするつもりだったんだ?』
琅琊子
『……』
これは教えてくれる流れになると予感した琅琊子は、笑顔でいっぱいになった。
琅琊子
『その力を教えてくれるなら、全然関係のない術でも構わないよ!』
白沢は心の底から呆れた。
白沢
『百年前、我は言ったはずだ。この術は誰にも教えられぬと。諦めろ。』
白沢たちがここから去ろうとしているのを見て、琅琊子は急いで走り出て、白沢の前に跪いた。
琅琊子
『いかないでくれ!』
琅琊子
『ならばせめて……せめて頭をなでなでしてくれ!』
琅琊子
『そしたら、もう二度とあなたたちに迷惑をかけないと約束するから!』

『随分変わった要求だな。』
琅琊子は胸の中から黄ばんだ本を取り出して、慌ててページをめくり、最後のページを読み始めた。
琅琊子
『……仙人が頭を撫でると、永遠の命を手に入れられる……』
琅琊子
『僕の不老不死の薬はあとなでなでで完成するんだ。』
琅琊子
『不老不死の薬を作り出せば、あの亡魂たちを成仏させることができ、そしてこの桃源郷は真の意味で完成されるのだ!』
黙っている白沢たちを見て、琅琊子は何かを察したのか、桃の精・落英の方へと振り向いた。
桃の精・落英
『成仏されたわ?』
琅琊子は信じられないという顔で白沢を見つめた。
琅琊子
『全部……成仏されたの?』
皆が頷く。
琅琊子は泣き出した。
琅琊子
『うわあああああ。僕の……僕の友たちを挨拶もなしに全部成仏させたのおおお?』
孔雀明王
『それで本来の計画では、わたしたちをどうやって桃源郷に入れるつもりだった?』
青坊主・塵境
『友たちはなかなか手強かったぞ。』
判官・墨浮かせ
『陰陽と輪廻転生の理を乱すとは、許せないな。』

『生命を空殻の中に閉じ込められ、魂はとっくに去ってしまった彼らは生きることも、死ぬこともできない。それのどこがお友だちなの?』

『むかつく。』
琅琊子は泣き続けた。
白沢はもううんざりしたのか、手を伸ばして琅琊子の頭を軽く撫でた。
琅琊子は一瞬びっくりしたが、やがて笑顔になり、なんども感謝の言葉を述べた。

『今後こんな薬はもう作るなよ?』
皆が宮殿から出ようとした時、後ろから急に琅琊子の声がした。
琅琊子
『僕も、僕も船に乗っていいかな!?』
何も言わないみんなを見て、琅琊子は黙って彼らについていった。
白沢は何を思い出したのか、後ろに振り向いた。
白沢
『そういえば、そなたはどうやってこの薬を作ったんだ?』
琅琊子は上着を引っ張り上げて、淡々と笑った。
白沢
『そなたって人は……』
白沢たちはずっと桃源郷の外で待っていた蜃気楼に戻った。
船の汽笛が鳴ったその瞬間、元々絡み合っていた運命の糸が徐々に解けていき、分かれてしまった。
交錯する因果、往復する輪廻が徐々にはっきりとなっていく。
因果が混じり合う中で、白沢は琅琊子の未来を見てしまった……


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タイトル 百鬼異聞録~妖怪カードバトル〜
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ゲーム概要 「陰陽師本格幻想RPG」の世界観をベースとした痛快カードゲーム!最新バージョン「夢幻の繁花」リリース!

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