【黒ウィズ】パメラ・ホーク
パメラ・ホーク |
本能と力が支配する世界――
強者が弱者を屈服させることが正義とされる、弱肉強食の世界。
それを、パメラは疑問に感じていなかった。そういうものだと、当たり前のように思ってきた。
彼女は領主の娘として生まれた。竜人と契約した祖先が、力ずくで勝ち取った領だ。
領民たちは頭を垂れ、自ずと税を捧げていた。
パメラの一族には祖先の得た竜力が受け継がれており、決してかなわないと知っているからだ。
弱者がこの世界で生きていくには、強者におもねるしかない。
祖先は、苦難の果てにこの力を得たのだ。
強くあるために努力をした者が、そうでない弱者を屈服させるのは当然の権利であり、正当な財産だ。
祖先の努力は、祖先の遺してくれた力は、パメラの誇りだった。
街に降りると、領民たちは幼いパメラにも一様に頭を下げた。なんとも気分の良いことだった。
パメラは同年代の子らに混じり、意気揚々と彼らに命令を下しながら存分に遊ぶのが好きだった。
特に、セーナという少女がお気に入りだった。いつもパメラの後ろについてきて、パメラが望めばいつでも遊び相手になってくれた。
ある日、いつものように遊び場に向かうと、セーナの姿がなかった。
他の遊び仲間に問いかけると、彼らは重々しい□調で答えた。
「セーナは……もう来ません」
「な――なぜだ? 私は、そんな命令は出しておらんぞ!」
「命令されても、来られないんです。セーナは……遠いところへ行ってし
まったから」
セーナの父は乱暴な遊び人で、金がなくなるたびセーナの母にせびりに来ていた。
そしてついにセーナの家の金が尽き、父は強引にセーナを連れて街を出たのだと言う。
どこかでセーナを売りさばき、その金で遊び暮らすつもりなのだろう。
みな、そうわかっていた。しかし止められなかった。セーナの父親は強かったから。
その話を聞いて――パメラは愕然として理解していた。
か弱いセーナは、ひどい未来が待っているとわかっていても、強者たる父親に抵抗さえできなかった。それがこの世界の理だからだ。
今、パメラは初めて、この世界のありように恐怖を覚えていた。「セーナの身になって考える」ということができたからだった。これまで得意になっていた自分を刺し殺したくなるほどの、猛烈な慙愧の念がパメラを襲っていた。
その後、パメラは矢のごとくセーナの父を追い、圧倒的な力を以ってセーナを奪った。
そして、泣きじゃくるセーナを胸に抱き、決意の叫びを上げた。
「私は……私は、あんな強者にはならない!
なるものか……なってたまるものか! おまえを悲しませるような強者などに……!」
* * *
――十数年の時が経ち、パメラは旅に出た。見聞を広めたいと思ったのだった。
鎧をまとい、槍を携え屋敷を出るパメラは、見送る侍女に穏やかに笑いかけた。
「行ってくる。留守を頼むぞ、セーナ」
「お帰りをお待ちしております――パメラさま」
侍女となったセーナは、心からの笑顔で応えた。
強者と弱者。しいたげる者としいたげられるべき者。
その関係にありながら、ふたりの間には、確かに分かちがたい絆があった。
フルネーム | 声優 | 登場日 |
---|---|---|
アデレード・シラー | Lynn | |
イニュー・リェル | 愛美 | |
リティカ・パス | 原紗友里 | |
ザハール・サハロフ | 田所陽向 | |
ミネバ・クロード | 明坂聡美 | |
ザッハ・クロード | ||
アリューゼ・ヴェローナ | ||
レガート・クロード | ||
星竜デネブ | ||
セト・バハムート | ||
邪竜ドグマ | ||
アーリア・バハムート | ||
アマイヤ | 五十嵐裕美 | |
ラギカ・バルシス | ||
アレンティノ | ||
ナフィーヤ・ロドム | ||
ケルク=ナダ | ||
アニマ・アウローラ | 明坂聡美 | |
ゾラスヴィルク | ||
ミーレン・ドーソン | 愛美 | |
イケル・ロートレック | 小林裕介 | |
炎竜レツィーユ | ||
パメラ・ホーク | ||
バス・ラシュール | ||
スーチャ・ヨゥン | ||
イェルノー・ケラス | ||
雷竜ゲドゥザ | ||
水竜ジャスクス | ||
ガンボ・スヴォラク | ||
シェオ | ||
ルウガ |