【黒ウィズ】ゲドゥザ
雷竜ゲドゥザ |
竜とは、この本能と力がすべてを支配する世界の体現のごとき存在だった。
本能のままに生き、喰らい、大いなる力を以って数多の弱者を屈服させる。
雷竜ゲドゥザもまた、そんな竜の1頭として生きてきた。
さらなる戦いを求めて世界をさすらっていたゲドゥザは、ある人間の老夫婦と出会った。
彼らは手練れの宝石細工師であり、原石を巧みに研磨し、飾りつけて、見事な装飾品へと仕立て上げるすべに長けていた。
竜とは元来、宝物の類を好むものである。ゲドゥザは老夫婦の腕前を気に入り、自分のために見事な装飾品をこしらえるよう脅した。
「畏れながら、竜どの。かように怖いお顔をされていては、手が震えてノミが撃てませぬ」
「どうか落ち着かれますよう。ささ、こちらの地酒はいかがかな」
老夫婦は、竜に脅されているというのに、始終にこにことしていた。
酒を勧められては呑まぬわけにはいかなかった。竜は酒の類も好むのである。
かりそめの人の身に変化し、ちびちびと酒を味わいながら夫婦の作業を待った。
夫婦は培った技術のすべてを費やし、鬼気迫るほどの集中力を見せた。
そのさまは霊妙なる儀式のようですらあった。ゲドゥザは思わず見入っていた。
やがて、ゲドゥザのための宝飾の腕輪が完成した。
あまりに見事な出来栄えに、竜は思わず唸った。素晴らしい、という言葉ですら足りなかった。
あの作業のさまを見れば、凄まじい、と形容するしかなかった。
ふつふつと、己の内に湧き上がる感情があるのに、ゲドゥザは気づいていた。
「俺にも、できるだろうか」気づけば、おそるおそる問うていた。
「貴様たちのように……こうも見事な品を生み出すことができるだろうか」
それからゲドゥザは、夫婦の細工の業を習い始めた。
極限の集中を以って原石を加工し、金銀を編んで精緻な意匠と織りなしていく。
すべてを打ち砕く戦いの業とは対極の行いに、ゲドゥザは本気で熱中した。
老夫婦は、にこにことゲドゥザに業を伝授し、ゲドゥザもいつしか笑みで応じていた。
――ある時。
旅の途中、腰の悪い老夫婦の代わりに川から水を汲んできたゲドゥザは目を見張った。
武装した一団が老夫婦を取り囲み、短剣を突きつけていた。
先頭に立つ男が、ぎらつく眼でゲドゥザに言った。
「貴様がゲドゥザか。この夫婦の命が惜しければ、俺と契約し、力を授けよ」
「下劣な……なぜ堂々と俺に挑まぬ!」
「力さえ手に入ればそれでいい」男は冷笑した。「この世界ではそれがすべてだ」
男の瞳には、狂おしいほどの力への渇望があった。
それはかつて、ゲドゥザにも宿っていたはずのものだった。
いつしか、自分のなかのそれが跡形もなく消え去っていることを、ゲドゥザは自覚した。
「……承知した。契約をしてやろう。だから彼らを離すがいい――」
深く嘆息しながら、ゲドゥザは答えた。
視線は男の足元に向いていた。男は、夫婦が落とした見事な装飾品を、無造作に踏みにじっていた。
力だけに焦がれ、美しきものに感銘を受けることのない男の姿に、ゲドゥザはあわれみすら抱いていた。
* * *
――数百年の時を経て、ゲドゥザは男の子孫と迦遁することになる。
あの男とは違い、ただ強くあることを嫌って、真なる強さを求める少女。
彼女の魂に、あの老夫婦の業を見た時のような鮮烈な感嘆を覚えたゲドゥザは、ある試練を課すのだった――
フルネーム | 声優 | 登場日 |
---|---|---|
アデレード・シラー | Lynn | |
イニュー・リェル | 愛美 | |
リティカ・パス | 原紗友里 | |
ザハール・サハロフ | 田所陽向 | |
ミネバ・クロード | 明坂聡美 | |
ザッハ・クロード | ||
アリューゼ・ヴェローナ | ||
レガート・クロード | ||
星竜デネブ | ||
セト・バハムート | ||
邪竜ドグマ | ||
アーリア・バハムート | ||
アマイヤ | 五十嵐裕美 | |
ラギカ・バルシス | ||
アレンティノ | ||
ナフィーヤ・ロドム | ||
ケルク=ナダ | ||
アニマ・アウローラ | 明坂聡美 | |
ゾラスヴィルク | ||
ミーレン・ドーソン | 愛美 | |
イケル・ロートレック | 小林裕介 | |
炎竜レツィーユ | ||
パメラ・ホーク | ||
バス・ラシュール | ||
スーチャ・ヨゥン | ||
イェルノー・ケラス | ||
雷竜ゲドゥザ | ||
水竜ジャスクス | ||
ガンボ・スヴォラク | ||
シェオ | ||
ルウガ |