【白猫】絶海の侵略者 Story
開催日:2016年3月7日~4月4日 15時59分 |
目次
登場人物
プロローグ
<島は、燃えていた。男は炎の中を走る。>
「………何故だ。」
<焼け落ちた家屋。倒れる人々。>
「いたぞ! 撃て!」
「裏切られたことはあるか?
俺は、信じることに疲れた。どうせ裏切られるなら、何も信じない方がいい。
最後に信じられるのは、己だけ最後に信じられるのは、己だけだ――」
…………
……
「だから俺は――侵略する。」
絶海の侵略者
story1 蒼海少女
<ギルドからの依頼で、主人公はとある島を訪れていた。
目的はこの島に隠された、古代のルーンである。苦難の末、一行は――>
見て! ようやくたどり着いたわ!
<目の前の台座には、光り輝く結晶がはめこまれていた。これが目的のルーンに違いない。>
やったわね。早く持って帰りましょう。
待ち伏せッ!?
ルーンが!
<魔物たちの中を縫って現れた何者かが、ルーンをつかみとった。>
あっ、魔物がルーンを!
魔物じゃないわ! あれは……人!?
<魔物たちが殺到する! 多勢に無勢だ!>
くうー!! こうなったら逃げるわよ! どうにかして包囲網を抜けないと!
??? |
---|
ゆらり。
アンタ、危ないわよ!
こんにちは。ノアといいます。
よろしく、ノアさん。
ゆらゆら~♪
独特な雰囲気の子ね。って……
追いつかれちゃったわ!
こちらの抜け道を、ゆらっとどうそ。
助けてくれるんですか?
助けになれば、素敵なのです。
story2 潜伏せよ
ルーンを持ってったアイツ、一体何なのよ!
魔物を操っていたみたいね。
<主人公たちは、海岸に追い詰められた!>
船と逆方向に出ちゃったわね。
泳ぐのはイヤ!
大丈夫です。そこの崖からふわっと飛び降りるのです。
なんでよう!
…………! 飛び降りましょう!
ちょっ……どうしてっ!! アアアー!!
ゆらゆら~。
チュッチュー!!
<飛び降りた主人公は吸盤のついた触手にキャッチされた!>
たすかったわ!? って……タコ!
ハヤク、ノリコムッチュ! キヅカレナイ ウチニ!
…………
……
<……信じられない。ここは海の中を進む船の中だ!>
こんな乗り物があるなんて!
アルゴノート号は潜水艦なのです。海の中をゆらりと進むのです。
せんすいかん?
??? |
---|
ノア、なぜ部外者を乗せた。
困っているみなさんを助けたのです。
<男は、凄まじい殺気を放っている。>
アンタ……何者?
俺は<侵略者>だ。
悪い奴ね!?
実はいい人なのです。ゆらり~。
なあんだ。
かけつけ一杯、海水はどうだ?
いい人じゃないわ!
お前たち、なぜあの廃墟にいた。
ルーンの回収に来たんです。
ルーンが狙いの冒険家か。……近くの島で降ろしてやる。大人しくしてろ。
なんかムカつくわね。あれ、どうしたのアイリス?
……この船……何か、変な気配……?
…………
……
<潜水艦は、とある島の海岸沿いに浮上した。>
ネモ、ここって無人島みたい、別の島にしてよ。
助けを待つんだな。
魔物がいるわ!
なんとかしろ。
ネモ、冷たいです。
ノア。たいがいにしろ。
ノアは、お助けするです。ゆらゆら~っと。
story3 冒険家と侵略者
そこそこやれるらしいな。
主人公はこうみえても期待の若手よ?
なるほど。じゃあな。
ちょっと待ちなさい、ネモ。
なんだ。
取引よ。
冗談がすぎるぞ。
アタシらは、ルーンを持って帰らないと依頼がパアなの。だから協力してあげるわ。
まさしく猫の手か。
アンタたち、ルーンを奪った奴を追いかけてるんでしょ?
なんでそう思った?
ノアがあの島にいたのって、それが理由でしょ? あの変なのにルーンを奪わせて、アンタらは後を追うってワケね。
頭は働くようだな。食料と水を三日分やろう。
ケチね!
……ネモさん、一つだけお願いがあるんですが。
いってみろ。
…………
……
チュッチュッ!!
<船内には、タコのようなクルーたちがいる。>
……この子なのです。
<透明なカプセルの中に、タコのようなクルーが眠らされている……>
…………チュ。
カプセルの中で、眠らせているのです。
<闇>に、取りつかれている……
……知っているのか。
私達にも、よくわかりません。ただ<闇>は……この世を呪う存在です。
らしいな。
<*×○■!&%$…………>
<アイリスの詠唱が響き渡ると、クルーはカプセルの中で目を覚ます。>
チュッチュー!!
<闇>が消えた……!?
元気になったのです……!
どう?
人が住む島まで、送ってやる。
あら、これ以上寄り道したら、あいつらが追いかけられなくなるわ。
そうなのです。みなさんの力を借りるのです、ネモ。
邪魔だけはするな。
ソウトキマッタラ<ショクリョウ>ヲ<チョウタツ>ニイクッチュ! カンゲイノ<ウタゲ>ッチュー。
story4 海底のディナータイム
<艦内の食堂で、遅めのディナーが始まった。>
今日はご手伝ってくれてどうもです。今日はごちそうなのです。
<呼吸のルーン>って便利ね。水の中で呼吸できるから、海の幸が取り放題。
自給自足なのね。にしても……
チュッチュ、チュッチュー!
タコヤキサラダに、タコヤキ串。タコヤキライス……
我が艦の伝統だ。
タコヤキ、嫌いですか?
チュッチュッチュ!
むぐむぐ。あれ? 変わった味。オイシイけど。
海でとれるもので作ったタコヤキだからな。
ねえ、このタコ……
食えれば問題ない。
ところでネモ。侵略ってどういうこと?
言葉通りだ。俺たちは侵略者。この世界を侵略する。
なんでそんなこと!
知る必要はない。
あるのです。同じタコヤキを食べた仲なのです。
チュッチュー!
……つまらん話だ。
…………
……
……俺は、<連邦>海軍の潜水艦乗りだった。
当時連邦は、帝国と制海権を巡って争っていた。戦時中、俺はある島を守れという任務を受けた。
「艦長、この島は……どうなるのでしょう。」
「ご安心ください。我々が、守り抜いてみせます。」
「ですが……!」
「まだ、我々の艦があります。」
最悪の状況だった。魚雷は残り三発。増援無し。
「くそっ……」
<波間から、少女が顔を出した。>
「ゆらり。」
「…………」
「悲しい顔、してるのです。」
「俺に言ってるのか。」
「悲しい時は、海でゆらゆらするといいのです。」
「海は嫌いだ。」
「だったら、どうしてずっと海を見ていたのです?」
「さあな。」
「……えい。」
「なっ!
何をする。」
「ゆらゆら、するのです。」
「…………」
「…………」
「……………………!」
「ぶはっ……!!」
「悲しく……なくなったですか?」
「……はははは……!」
「……よかったのです!」
――そこはとても、静かな島だった。
story5 海の音が聞こえる
敵の侵攻は一時おさまり、以来俺は、何度か島に立ち寄った。
「いつも島を守ってくれて、ありがとうです。」
「礼などいい。」
「島のみんなも、ゆらっと喜んでいるのです。」
「任務を果たしただけだ。」
「艦長さんは、やさしい人です。」
…………
……
「このままでは、こいつが帝国に奪われる……!
だというのに、潜水艦一隻残して、守備隊は全滅とは……
今はあの若造に賭けるしかない、か……」
…………
……
ネモがお休みの日には、二人でずっと……海辺にいたのです。
「見てください、です。」
「……貝殻か。かわった形だな。」
「耳にあてると、海の音が聞こえるのです。」
「それは、ノアの体が出している音だ。」
「体の中には、海があるのですね。……深いです。」
「海、か……」
「どうして艦長さんは、海が嫌いなのですか?」
「嫌いというか、本当は怖い。潜水艦乗りは、負ければ海で溺れて沈むことになる。」
「溺れたら、ノアが助けるのです。」
「…………ノア。」
<ノアは、制服の袖をつかんだ。>
「…………」ノア
…………
……
「どうして帝国は、この島を?」
「我々には、さっぱり……」
「ならいい。俺たちの仕事は変わらない。……侵略者を討つ。」
「艦長、どうしてそこまでして、……私達の島を?」
「帝国の砲撃で、俺は腕と故郷を失った。俺は六歳だった。あの時は、何もできなかった。」
…………
……
ネモは……いろんなことを教えてくれたのです。
「ノアは、いろんな島にいってみたいのです。」
「島を出たいのか?」
「この島は大好きです。でも、いつかは海の向こうにもゆらりといってみたいのです。」
「いつか……叶うといいな。」
「戦争が終わったら、艦長さんとはお別れなのです。」
「……ああ。」
「寂しいです。」
「……戦争は、終わった方がいい。」
…………
……
俺は心に決めた――命に替えても、守り抜くと。
「艦長、ソナーに感あり!」
「至近弾っ!」
「……沈むわけにはいかない!」
「艦長……? 敵、退いていきます!」
「何だと?」
「味方です!増援だ!」
「ヒャッホー!! ……おや? 揚陸艇? どうして島に接舷を?」
「揚陸艇……だと?」
story6 世界の裏側
俺が見たのは、燃え盛る島だった。島には、兵士たちが大挙していた。
島は<侵略>された。味方であるはずの、連邦の手によって――
「なぜだ……! なぜ連邦がこの島を!」
「反逆者は殺せ!」
「ノア!!」
…………
……
「……島が……燃えてる……」
ノアは、深手を負っていた。
「艦長さん、ごめんなさい。ノアはもう……」
「ノア、しっかりしろ……!」
「艦長さんっ……!!」
「お前は……死なせない!」
…………
……
そんなことが……あったのね。
連邦は、島を砲撃で消し去った。
どうしてそこまで……!
俺はその理由を探すため、軍を抜けた。そして答えにたどり着いた。
理由は、島にあった遺跡だ。そこには<方舟>というものが眠っていた。
なにそれ?
古代の兵器――らしい。
そんなものがあるの……?
どうやらな。連邦は<方舟>を我がものとした。島の住人を犠牲にして。
ずいぶんな連中ね。
チュッチュー!!
クルーのみんなも、連邦に捕まっていたのです。
<カンチョウ>二 タスケテ モラッタッチュ!
こいつらは、連邦の研究施設で実験動物にされていた。
ひどい……!
帝国も似たようなものだ。奴らのやり方は、もっと巧妙だがな。
――
ねえ。アタシらの狙ってたルーンを横取りした奴って、もしかして……
連邦の特務機関。あの島から<方舟>を奪った連中だ。奴らは力のるルーンをかき集めている。
どうしてルーンを?
紋章魔法というものがある。ルーンを組み合わせて改造するという魔法だ。
何をしようっていうの?
方舟を目覚めさせ――――操る力をもったルーンを作り出すつもりらしい。
そうなったら……悲しいことになるのです。
大変な時に乗り合わせたのね。にしてもアンタら、まるで正義の味方みたいだわ。
正義では悪は討てない。だから俺たちは、侵略する。
<カンチョウ>! <ターゲット><ウミノハカバ>二 ハイッタッチュ!
墓場ッ!?
暗礁海域だ。難所だな。
<……>
<光も射さぬ海の底…一つの巨大な船影が行き過ぎる。その船内で――>
「このルーンに何の意味があるか? つまらぬことを聞くものだな。ルーンの機能に意味は無い。
どうせ紋章魔法でルーンの特性を変えるのだ。力のあるルーンならなんでもかまわん。
我々は完全ではない。なぜか? いずれ死ぬからだ。滅びゆくものは不完全だ。
不完全な存在は不要だ。よって――この世界は滅びねばならん!」
story7 復讐か、正義か
<暗礁海域を抜け、一行は火山島に到達した。>
……うっ。
どうしたんですか、ノアさん。
何でも……ないのです。
敵の船影はここで消えた。威力偵察に向かう。
<カンチョウ>ドノニ、ケイレイッチュ!
俺たちが戻らなかったら、そのときは離脱しろ。そしてもう関わるな。
マッテルッチュ。ズット、マッテルッチュ。
……そうか。
一人で行くつもり?
弾除けになりたいのか?
ネモ、それは悪い癖なのです。
自分の身は、自分で守れ。
…………
……
――
行ったみたいです。
あっ! 見て……! ルーンよ!
ルーンが機械につながれてるわ。
こうやって機能を制御しているらしいな。
……呼んでる……
ノア、どうした。
<ノアは、工場の奥へ進んでいく。>
これって……でっかいくらげ?
……違う。記録映像より大きい。
まさか、これが……
<方舟>だ。
その通りです。艦長……!
この大層な仕掛けで<方舟>を操るつもりか。ヤブ医者め。
医師とは仮の姿でして。島では<方舟>研究チームを指揮しておりました。
<ネモは、現れた人影をためらいなく撃つ。だが銃弾は人影をすり抜ける。>
<幻影のルーン>か。
どうして、島の人たちまで……手にかけたのです……!
帝国にべらべらしゃべられても、面倒なんですよ。スパイもいたでしょうしね。
お前たち連邦はいつもそうだ。小さな犠牲は止むを得ないといいながら、弱いものを殺す。
連邦ぅ? あんな無能な連中といっしょにしないでください! 我々はもっと大きなものに仕えているのですよ!
帝国か……? いや、違うな。帝国はお前のようなバカは真っ先に排除する。
我々が仕えているのは、この世界の絶対的な<法則>というべきもの。
<法則>……?
そうです。あの<方舟>であらゆるものを滅ぼせば、彼はきっと喜んでくれる――!
その前にお前を始末する。
いいのですか、艦長。あなただって、この<方舟>を求めていたのでしょう?
俺が?
艦長は、帝国と戦い、連邦を裏切った。全ては復讐のため。そうではありませんか。
連邦も帝国も、なにもかも滅ぼしてしまいましょう。艦長が守ったこの<方舟>で!
汚い口を閉じろ。
いいでしょう。でしたら……<闇>に呑まれなさい!
story8 方舟
<ネモは、無慈悲に工場の施設を破壊していく……!>
ネモ!<方舟>が動いてるわ!
言い忘れておりましたが、こいつはもう目覚めています。一足遅かったですな。
全てを喰らい、永遠に生きる。それが<方舟>だったか。
その通りです。人の時代は終わり、完全なる秩序が復興する。
アルゴノートⅡ! 照準合わせ!
通信など届きませんよ!
<ネモが乗っていた機竜が変形し、ネモの義手と合体一巨大な砲身となった。>
主砲はこいつだ。
<医師と名乗った男は、施設の最深部で嘲笑を浮かべる。>
64層の隔壁と、187のルーンによる魔法防壁。そんな豆鉄砲で!
主砲、発射――
無駄だと……
<ネモの<砲撃>は、施設の防壁とルーンによる障壁を貫いた!>
え、エピタフ様ぁ!!
<医師の立体映像は掻き消えた。>
もう一撃だ。アルゴノートⅡ……あの<方舟>を破壊する!
駄目。
ノア。どけ。
<方舟>は殺せないのです。
どけ。
あれは兵器ではないのです。大昔の人が作った、すべての命を救うための<方舟>なのです。
命を救う……?
<方舟>が呑み込んだものは、永遠に生きるのです。<方舟>の中で。
いずれ来る滅びの時を超えて、永遠に……
お前は……何者だ。
私は<方舟>の使者……<方舟>が今の時代を知るために生み出した、分身なのです。
嘘をついていたのか。
違うのです! 知らされてなかったのです。
<方舟>はどうするつもりだ。
<方舟>は、救いたいのです。人が、世界が滅ぶ前に。
あいつの狙いは、あたったわけだ。
ネモ。聞いて欲しいのです。
俺は撃つ。
私は……<方舟>を止めるのです。まだ人は、やり直せるのです。
<ノアは<方舟>の前に進んだ。>
行くのか。
みんなを助けたいのです。ネモが、私を助けてくれたみたいに。
…………
さよなら、ネモ。
待ってください、ノアさん!
ノアー!!
<ノアの体は<方舟>の中に吸い込まれていった――>
……これでいい。
…………
……
<事件の全貌は公にされなかった。
全てを知るはずの<侵略者>も光射さぬ海底に消えた……>
最終話 錨を上げろ
<動き出した<方舟>は――海底に沈んでいった。ノアと共に。
一行は、潜水艦に戻った。>
ネモ! ノアが……!!
……出航する。もう俺たちにやることはない。
<ネモは、主人公の拳を受け止めた。>
あいつは行った。俺にどうしろと?
あの島で助けた時、ノアは致命傷を負っていた。だが数日で完治した。<方舟>と無関係なはずはない。
わかっていた。こんな終わりになることくらい。
――悲しく……なくなったですか?――
このままでいいの? アンタ、侵略者でしょ!
侵略者……?
――わたしは、いろんな島にいってみたいのです――
ここで好きにやらないで、どうするわけ?
ネモさん……ノアさんを!
――溺れたら、ノアが助けるのです――
ノア……!
……
…………
<機竜アルゴノートⅡは……ネモを乗せて、深海に沈む。>
そうだ、俺は……
好きにやらせてもらう!
<ネモが持っている<呼吸のルーン>のおかげで、水中でも呼吸は可能。
しかし、深海の水圧は、容赦なく侵略者と機竜を苛む。>
<ネモは方舟の中に突入した。全ての命を取り込む方舟は、ネモの体を受け止める。>
……心が、安らいでいく……憎しみも……悲しみも……だが!
これが俺の、侵略だ!
ネモ……!
来い!
主砲発射!
<砲撃は海に風穴を開ける! 機竜と乗り手は全速力で海に開いた道を突き進む!>
振り落とされるなよ!
……<方舟>……さようならです……!
<方舟はゆっくりと沈んでいく。誰の手にも届かぬ、海の底へ。>
…………
……
<ネモは主人公にルーンを投げてよこした。>
確かに<発酵のルーン>です。
こんなものを探してたとはな。
……アンタら、これからも侵略を?
続けるのです。
<ネモは一冊のファイルを手にしている。施設から奪い取ったものらしい。>
ターゲットには、事欠かないからな。
たまには飛行島にも、遊びにきなさいよね!
ああ、そのうち侵略してやる。
…………
……
「ネモ、これからどこにいくのです?」
「終わったと、伝えにいこう。……あの島に。」
「<イカリ>ヲ アゲルッチュ!」
「アルゴノート号、発進!」
絶海の侵略者 -END-
絶海の侵略者 | |
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