【白猫】メインストーリー 第08章 ~宿命と記憶の眠る島~ 前編
2015/03/31
目次
プロローグ
ここは……学術都市<スキエンティア>か……
島の地下に広がる、旧王朝時代の遺跡に研究者たちが集い、集落を作り、町を経て、巨大な都市になったという……
なにかしら、この反応は……?
……ルーンドライバーは、所有者の進むべき道を指し示すもの……
これまでは、<大いなるルーン>の在り処へと導いてくれていたが……
胸騒ぎがするな……
主人公よ。私は飛行島を、いつでも飛び発てるようにしておく。
何かあったら、すぐに戻ってくるのだ。
ゆめゆめ、気をつけるのだぞ……
フキツなこと言い残していっちゃうんだから……
心配してくれてるのよ。二人とも、いつも以上に、気をつけて進もう。
……<大いなるルーン>……
それを七つ集めて、<約束の地>へとたどり着けば――
――真実がわかるはずだから――!
メインストーリー 第8章
~宿命と記憶の眠る島~
story1 新たな島の新たな出会い
しかし、なんなのかしらね、コレのこの状態は…… ?
それは!?
え!?
お前たち、もしや……カイルを知っていないか!?
ちょちょちょ、だれよアンタ? いきなりなんなの!
聞いている!
たしかにこれは、彼がカイルさんより譲り受けたものです。
私はアイリス。あなたは? どうしてカイルさんを?
申し遅れた。俺はエクス。この島に住む剣士だ。
――俺は以前、カイルとチームを組んでいた。
それを渡して、あいつはいまどこでなにをしている?
……カイルさんは……
どうした? ……旅疲れか。ならば街へ案内しよう。
カイルにそれを託されたほどだ。君たちは、悪ではないのだろう。ついてきてくれ。
もうあんな先に……思い込みの激しそうなタイプね。
……カイルさんとチーム……ここはカイルさんの出身島なのかな?
……そういやアタシたち、あんまり知らないわね、カイルのこと。
この島を周ってれば、いろいろ聞けるんじゃない?
(……でも……
この島に、大いなるルーンがあるとしたら……
カイルさんはどうして、アストラ島に……?)
アイリスー! エクスが見えなくなっちゃうよー!
! うん! いまいくわ!
story2 三人のチーム
遅かったな。
すごい数の魔獣……これ全部アンタが……殺したの?
そうだ。闇に染まった獣は、全て斬る。
迷いは無用。剣が鈍る間に、こちらが食い殺されるかもしれん。
……そうだけど……
お前、名はなんという?
「」
主人公か。冒険家らしい名前だな。
エクスも冒険家なの?
ああ。俺が初めてチームを組んだ相手が、カイルだった。
ちょっとぉ~! あたしもでしょ~!
さも二人だったみたいに言って! あたしたち、三人でチームだったじゃない! エクス!
そうだったかな、マキナ。
ひっどぉ~い! 忘れる? ふつうゥ~?
三人……カイルさんと……
この人たちは?
カイルに会ったことがあるそうだ。あいつのルーンドライバーも持っている。
ええっ? ホントホント?
わあ~! なつかしいなぁ! あたしたち三人が、初めての冒険で見つけたのよね!
そうだったな。俺もカイルも、あのときは緊張していたものだ。
あたしもアガってたのよ?
そうだったか? 記憶にないな。
もお~! だれがあんたたちのケガを治したと思ってるのよ~
仲が良いんですね、二人とも。
どこが!
……ふふふ。楽しかったんでしょうね、カイルさんと三人で……
……まあ、ね! ね、知りたい? カイルのこと?
ええ、ぜひ、いろいろ教えてください。
いいよいいよ! じゃあさ、まずは街ヘレッツゴー!
最初から向かっている。
も~! いいじゃんそれなら、『おー!』ってノればさ~?
断る。
もぉ~……
……ふふふ。
……なんだかさ、よかったね! そう思わない? 主人公!
――♪
story3 学術都市スキエンティア
おっきな街ねえ~!
この島にはいろんな施設があってね。
たくさんの学生が通う魔法学園、研究者や賢者の集う魔術院、あらゆる書物が揃った図書館……
ほへ~……
そもそもここには、頭でっかちな人たちが地下遺跡を研究するための住居があっただけらしいんだけど。
便利な発見や発明があったら、それを広める必要があるでしょ?
交通や流通が発達して、それに携わる人たちが来て、様々な設備も建てて。
知識の悪用を防ぐため、防備も整えられた。傭兵や冒険家も集まる。
そんなこんなで、こ~んなにおおきくなっちゃったってわけ!
へぇ~!
この島出身だから、カイルさんは知識が豊富だったんですね。
あいつは……特別だよ。あたし、魔法学園ではカイルの先輩だったんだけど……
たった一年で追い越されたの。飛び級して、風のように卒業したのよ、あいつ……
カイルったら、そんなに頭良かったんだ……
良いどころではない。何万冊という図書館の書物も、ほとんど読破しただろう。
うひゃ~……! 目が回りそう……
カイルは瞬く間にあらゆる知識を吸収した。
そして冒険家となり、俺たちとチームを組んだ。
エクスはそのとき初めてカイルに会ったの?
いや。あいつとは、物心つく前からの馴染みさ。
へぇ! じゃあじゃあ、いろんなことを知ってるんでしょうね!
不思議な奴だったからな。あいつの全てを、知っているとは言えない。
わかってるってばそんなこと! だれでもそ~ゆ~もんだから。
じゃあみんな! 魔法学園からさ、周ってみない? 他の人からも、カイルのことを聞けるしさ。
あ! あの、私たち、大いなるルーンを探しているのですが……
この島の大いなるルーンは<英知のルーン>だ。それが必要なのか?
ええ……七つ集めると、<約束の地>への扉が開く……
……そこへいくのが、私たちの目的ですから。
……似たようなことを、カイルも言っていたな。
<約束の地>へ行ってどうする?
……きっと、そこには、全ての真実が――
――わかりません。そんな気がする、だけなのですが…………
…………
……わかった。協力しよう。……だが……
どうしたの?
英知のルーンは、その在り処は知れているが、手に入れられる保証はない。
……どういうこと?
そのうちわかるからさ! いまはまず、街を周ろうよ!
ね? いいよね、アイリスゥ?
そうね。焦ることないものね。
それじゃあ! アタシ、まずはおいしいもの食べたい!
この島のメシはまずいぞ。
えっ!?
味など二の次の、研究者たちばかりだからな。
ふげぇ~……
story4 マキナのガイド
ぴゃ~ん! ここが魔法学園デェ~ス!
ほへ~。おっきな建物~。
ジェラルド・アイレンベルク理事長をはじめ、優秀な教授陣と、熱心な学生魔道士たちがいるわ。
他の島へ飛び出す卒業生も多いから、あなたたちの知り合いにも、いるかもしれないわね。
では! いざ学食へ!
まずいぞ。
もう……それより、だれかにカイルさんの話を聞いてみましょうよ?
じゃあ……ねえ、そこのあなた!
はい?
あたし、ここの卒業生なんだけどさ。
あ、どうも。何か用ですか?
~ん、いまどきのコってのはクールよねぇ……
カイル、って知ってる?
カイル……? ああ、在学中に、<最果ての地序説>を書いたとかって。
そうそう!
でも、あれは塗り替えられましたし。
え?
<最果て>の<約束の地>という記述が、ある文献から見つかったそうで。
<最果ての地>ではなく、正しくは<約束の地>らしいですよ。
もっとも、単語だけの話ですが。それ以外の推察は、まだカイル先輩の説が最有力です。
<大いなるルーン>を全て集めると、道が開ける。その鍵は、飛行島だっていう。
この話ってさ、カイルの他にもだれか言ってたよねえ?
そうだ! バロンだ! バロンも言ってた!
バロンさんって何者なのかしらね。
バロンはホント、よくわかんないからねぇ。気にするだけムダかもねぇ。
しゃべる猫ちゃん……? 何かの実験で生まれた新生物ですか?
失敬ね! そんなわけないでしょ!
そう……もしそうだったら、私も欲しかったのに……
まったく! こんな、オンリーワンのプリティレディをつかまえて、失礼しちゃうわ!
ごめんね猫ちゃん。もう行っていいですか?
え、あ、うん。ありがとね。
とまあ、こんなカンジ! どう? わかったでしょ、カイルのすごさが。
あいつは魔法学園でも優秀だった。
魔法学園『でも』?
冒険家となってからもな。あいつが駆け出しだった時期など、ほんの一瞬。
すぐに、新進気鋭の冒険家として、名が売れたのさ。
てことはアンタもでしょ? 同じチームなんだから。
俺はカイルほど売れなかった。己の未熟も感じていたし、この島で腕を磨く道を選んだ。
だから、飛行島を探すというあいつと、一緒に行かなかったのさ。
……そうだったんですね。
じゃあ、次行ってみよー!
次はどこの学食?
じゃなくて、今度は図書館!
カイルの話うんぬんもそうだけど、あそこはこの島一番の名所だからね! 一回見といて損はないよ!
やれやれ。ガイド気取りだな。
いいじゃない! この島や、島の人たちをもっと知ってもらいたいもの!
余計なお世話じゃないか、主人公たちに聞いたか?
そんなわけないもの! ねェ?
ふふ、よろしくお願いします。
ほらほら! エクスも、つまんなそうな顔しないで、楽しくいこーよ!
やれやれ…………
……!
story5 リブリ国立図書館
ぴゃ~ん! ここが国立図書館リブリです!
ぶりぶり?
ノオ~! リ・ブ・リ! ここには、世界中の知識が集まっているのです!
知識でハラはふくれぬ。
どんぶりを出せ!
もう、キャトラったら……グルメ旅行で来たんじゃないのよ? ええっ!?
ええっ!?
ええっ!?
えぇっ!?
えぇっ!?
ちょいちょいお二人サァン、おどろき合戦してないでさ。やるでしょ? カイルの聞き込み。
! カイル……と言いましたか!?
へ? 言ったけど?
カイルさまは……あの方は、いまどちらに?
えっと、居場所はね、わかんなくて……
ハァ、喋る猫ちゃん不思議。そんなことより、あの方にお会いしたら、お伝えして頂きたいことが……
……あら? あなた、冒険家かしら?
……あなたも中々ね……
?
でもダメ! 私には、カイルさまが……! でも行方は知れないし……!
ごめんなさい! 気持ちを整理させる、時間をください!
?
え~、いまの出来事からもわかると~り……
カイルは女性に大人気だったの巻。
雰囲気のある奴だったしな。名が売れ始めてからは、特に激しかった。
カイルの唯一の欠点だったね! 誰にでも愛想良くて、八方美人でさ!
そんなことはなかったと思うが。
どこかの馬の骨よりも、チームの仲間の方が大事じゃない!? ねえ!?
むふふ……これはつまりマキナってば、カイルのこと……
もう、図書館はおしまいおしまい! 次にいきましょ!
……冒険家…………カイルさん……!
story6 魔術院トゥッリス
えぴゃ~ん! ここが魔術院トゥッリスです!
まほー学園と何が違うの?
ここには、魔法を駆使する魔道士じゃなくて、知識や理論にのめり込む人ばっかりいるの。
つまり魔術院は、強大な軍事力というわけではない……と?
その通りだ。警護は専ら、傭兵や冒険家の仕事。
お? エクスではないか、久しぶりじゃのう。
だれだ?
おい! 老人より記憶力が悪いとはどういうことじゃ!
一度、お前たちのチームに依頼をしたじゃろうが。まあええわい。
……カイルが見えんが、どうしたんじゃ?
カイルなら、随分前に島を出た。
ふぇふぇ、そうじゃったか。ずぅっと研究室にこもっとったからのぅ……
……んん!?
あの……なにか?
ちょっと! ジロジロ見すぎよ!
なんじゃっ!? 喋るカワイイ猫ちゃんじゃと!? 見とるのは服じゃ、装飾じゃ!
服が……? なんでしょう?
……そのリボンといい……数万年前に滅んだという、天空大陸の巫女に特徴が酷似しとるようじゃが……
!
それに胸の宝石は、原初の時期に、ほんの数個だけ存在したという――
――なんじゃったかのう?
あら……
研究室のどこかにある本の、どこかの箇所にはもうちょっと書かれておったかもしれんが……気になるなら探してみるか?
どのくらい時間かかる?
さぁのぅ……本ちゅーても、何百冊とあるからのぅ……
!そうじゃ! 本で思い出した! あの文献のあそこに……!
悪いの、もう行かねば!
アララ……おトシの割にお速い足で。
と、こ~んな風に、へんくつな賢者が魔術院にはたくさんいるわけ。
どうするアイリス? ダメ元で、もっと調べてみる?
そうね、時間があったら、帰りにまた寄ってみましょ。
帰り?
おーいなるるーん!
アラヤダ! アタシってば失念してた、ごめ~ん。
さあ! <英知のルーン>だっけ? 取りに向かいましょ~!
では行こう。この都市の地下遺跡、その奥に英知のルーンはある。
その力で、ここには知識がたくさんなのよね。
そう。だが、不思議に思わなかったか?
なぜ、遺跡の真上に住む必要があったのかと。中には魔物もいるというのに。
そういえばたしかにそうね……どうして?
英知のルーンは、存在し、力を与えてくれたのだが、手にした者はいないのだ。
もしお前たちが手に入れられたならば、文句を言う者はいないだろう。
手に入れられれば、ネェ……
story7 地下に広がる古代遺跡へ
都市の地下に広がる遺跡は、旧王朝時代の物。
数多の賢者たちが何十年も調査しているが、その全てが把握されているわけではない。
……懐かしいな。三人で初めてここに潜ったとき……
それまで封じられていた扉をカイルが開き、そこでルーンドライバーを見つけたのだ。
そっか、じゃあコレ、エクスとマキナには大事な思い出の品なんだね……
そうだけど、気にしないでよ! あなたたちが持ってて全然いいからね?
はい……ありがとうございます。
それにいまでは、その技術も解析され、レプリカも存在する。
それもアイツの功績ってわけ。ニクイよねェ~。
では、慎重に進むぞ。
何をきっかけに、どんな仕掛けが動き出すかわからないからな。
……!
story8 エクスの過去……
はっ!
このあたりの敵はこれで終わりか。
……相変わらず情け容赦ないわね。相手、魔物だけどさ……
当然よ。エクスは両親を闇に殺されてるからねェ。
えっ!?
いいよね言っちゃって?
構わん。事実だし、昔のことだ。俺から話そう。
微かに残る記憶では、俺の家は裕福だった。
両親は、俺が幼い頃、近隣に発生した魔物を討伐するため、傭兵たちを雇った。
意気高く出陣した傭兵たちは、数刻後、戻ってきた。だが――
――彼らは返り討ちにあい、闇に心を侵されていたのだ。
……!
闇に染まり、魔獣のようになった傭兵たちは、両親を殺し、家を焼いた。
俺は瓦疎の下敷きになったことが幸いし、全身にひどい火傷を負ったものの、一命をとりとめた。
…………
その後、俺は孤児院でカイルに出会った。剣士となり、冒険家になった。
あ、あ~! そ~んな空気にならないで! ただのフコージマンだから!
こいつ、いまではコンナンなんだから、同情なんて、なァ~ンもいらないから!
まあ、いらないな。こう見えて、いまが楽しい。
それなら、少しは救われる……わね……
うん……
だが、闇への恨みはある。俺は全ての闇のものを、殺す。それを諌められる筋合いはない。
…………
はいは~い! お・い・と・い・テ! 先に進みましょ~!?
…………
主人公……大丈夫よ。……あなたは違うもの……
story9 小さな追跡者
……つけられているな。
えっ!?
そこっ!
<意表をついて放ったマキナの火球が柱を直撃する!>
うわあっ!?
あれ、子供だ。
いきなり何をするんだ! 危ないじゃないか!
外してあげたでしょ。あんた名前は? こんなとこで何してんのよ?
僕はリュート、冒険家だ。
あんたみたいな子供があんたみたいな子供が冒険家なわけないでしょ。ライセンスが下りるわけないわ。
僕は、カイルさんみたいな偉大な冒険家になるんだ!
無理だ。去れ。
百年早いわ。帰って。
ふ、二人とも……?
帰るもんか! なあ、あんた!
?
街であんたを見かけたんだ! 冒険家なんだろ? 僕を仲間に入れてくれよ!
相手にするな。ゆくぞ。
ええ、先を急ぎましょ。
ちょちょっと、二人とも!? そんなに邪険にしなくっても……
こんなところに、置き去りにしちゃ危ないのに……
ナメるな! 僕は冒険家だぞ!
ハイハイ、わかりました。ここは危ないから、アタシたちについといで。
アタシはキャトラ。アイリスと、主人公よ。
主人公……それがあんたの名か……
?
ホラ、いくわよ。用事が済んだら連れて帰ってあげるから
うるさい、だれがあんたたちの助けなんか!
あっ! 一人じゃ危険よ!
……いちゃった……
ほっといて、いきましょ。
キャトラ?
と、見せかけてよ。三歩歩いて立ち止まるの。
え?
で、チロリと、見ないフリして後ろを見てみて?
!
<……少し離れた柱の陰から、リュートの頭がはみ出している。>
ね? しらんぷりして進んじゃいましょ。
……それが良さそうね。
story10 冒険の一幕
遅いぞ。
はやいわよっ~。
情けない。それでよくカイルに認められたな。
まあいい。先行し、次の地点の魔物を排除しておく。
ここで少し休んでから、ついてきてくれ。ゆくぞ、マキナ。
ええ~!? あたしもォ~?
当然だ。働け。
もぉ~、ヒトづかい荒いんだからァ~。
さて……
たき火しよっと!
魔物いるし!
キャトラ?
(うしろうしろ。ついてきてるから)
(なるほど)
火の近くが安全だ!
♪
<主人公は手早く周囲の枯れ木を集めると、隙間を確保しつつ積み上げ――
懐から火口箱を取り出して、手際よく着火した。>
ふっー、ふぅーっ、ふーっ……
<空気を送られ、火は一段と燃え上がった。これで消える心配はないだろう。>
慣れたもんね、二人とも。
お、おう、こんなところで会うなんて、き、奇遇だな。お、た、たき火か?
アンタもあたってく?
ま、まあ、どーしてま、まあ、どーしてもって言うんなら……
どーしても、とは、言わなかったらどーするぅ?
う……
いじわるはだめよ、キャトラ。まだ子供なんだから。
僕を子供扱いするな!
するわ!
キャトラ! もう! リューちゃんも、意地張らない! おいで!
りゅ……!
……はい。
いい子ね。
なあ、主人公。火を着けるの上手いな。
ま、冒険家として当然のたしなみよね!
ねー主人公、アタシおなか空いちゃった。お願い、いつものつくってー。
<主人公は剣を清潔な布で拭き、たき火でさっと炙る。
ポーチからパンを出し、剣に乗せる。その横に、ふた切れの燻製肉を並べる。>
はい。
<燻製肉の上に、アイリスが摘んできた野草をちぎってふりかける。
そのまま剣を焚き火にかざす。パンと肉の焼ける香ばしい匂いが漂ってくる――
軽く肉を焦がし、パンの上に乗せる。――出来上がりだ!>
♪
わ~い! これこれ、コレよ~!
…………
はい、はんぶんこ。
え、いや、僕は、そんな……
遠慮しなくていいって、リューちゃん。
……うん、ありがとう……
……おいしいっ!
♪
こんな簡単に……すごいなやっぱり、冒険家って……!
ほら、冷めないうちに、リュートくん。
うん!
story11 リュート、その師
餌づけって効果絶大ねえ。
なんだよ?
なに当たり前のようについてきてんのよ?
僕は冒険家だ! 遺跡くらい、毎日だって探索していいはずだ!
リュートくん、おうちの人は? 心配してないかしら?
僕に家族はいない。カイルさんと同じ、天涯孤独だ。
……そうなの。
……ねえ、リュートくんは、どうして冒険家になりたいの?
叶えたい夢があるんだ。
夢?
カイルさんと<約束の地>を見つけるんだ。
…………
短い間だったけど、僕は、カイルさんと暮らしてたんだ。そのときに槍も習った。
カイルさんは、冒険家になったら、一緒に<約束の地>を探そう、って誘ってくれたんだ。
……そうだったのね。
僕でも強くなれる。カイルさんはそう言って、これをくれたんだ。
?
僕の宝物だ。<覚醒のルーン>ってカイルさんは言ってた。
これがいつか、力になってくれるだろう、って、僕にくれたんだ。
カイルさんの期待に、応えなきゃいけないんだ。毎日特訓だってしてる。
僕は早くカイルさんの力になりたい。二人で<約束の地>にいくんだ。
カイルさんの夢は、僕の夢でもあるんだ……
……リュートくん……
だから主人公、僕をつれてって。
僕に、冒険家の心得をいろいろと教えてよ!
……うん。主人公……うん。主人公、教えてあげましょうよ。
……それが出来るのは、私たちだけなんだから……
え?
さあさあ、いくわよ! しゃべってるだけじゃ、腕は上がらないわ!
おう! 槍はカイルさん直伝だ、足手まといにはならないよ!
story12 《英知のルーン》
……荷物がくっついて来ているな。
僕は荷物じゃない!
ま、しょうがないわねェ。
二人ともどうしたの? ここになんかあるの?
見えるだろう? あれが英知のルーンだ。
え!?
<鎮座する<英知のルーン>は、淡い光に包まれ、静かに宙を漂っている――>
やった♪ もーらいっ――
待て。
ふぎゃっ!? 空中で首根っこ掴まないでぇっ! グン! ってなったぁ!
エクスに感謝しなよ。止められてなきや死ンでたよ。
しんっ――! ……よ、よかったなあ、キャトラ。
結界に守られているおかげで、誰も<英知のルーン>には触れられないのだ。
そ、そうだったのね……
でも、近くにいれば力の恩恵は受けられるわけ。だから、街はここに発展したのよ。
…………
?
<アイリスが進み出ると、結界の光が仄かに反応する――>
<*×○■!&%$…………>
!
結界が、弱まっていく……?
…………
あ、アイリス……
思わず体が動いて……
取れちゃったね、英知のルーン……
す、すごい……!
……認められたということなのだろう。ならば、持つてゆくがいい。
いいの!?
いーよいーよ。もうさ、地上の発展とソレは、あんまり関係ないだろーから。
それなら……
やったー! 今回こそ、<大いなるルーン>を手に入れたぁ~!
……不思議な力だな。
……はい。自分も、なにかに動かされているような感じで……
……もしかすると、あの扉もアイリスなら……
扉、って……?
……かもね。よし、いっちゃおー!
どこへ?
遺跡の最深部だ。カイルさえ開けられなかった扉が、そこにはある……
!
story13 朽ち果てし太古の……
この扉の封印は、未だ解かれていない。研究されてはいるのだがな。
おそらく何かの<鍵>が、必要らしくて。カイルでもお手上げだったの。
だが、あの結界を解いた、アイリスならば――
これ……?
アイリスの胸の宝石に、反応してる……?
開くのか……!
すっごォ~ィ……!<白く眩しい光の中、扉の開く重々しい音が響いた。
――やがて光が収まると、そこには――>
へえ~、扉の奥は、ずいぶんだだっぴろい――
――こ、これって……!?
……飛行……島……!
え!? これが……飛行島!? こんなとこにあったの!?
いいえ……古びているけど…………もっと、これは…………まるで……戦艦……
この島にも、飛行島があったって言うの……?
どうして……? それなら、カイルさんは……?
見つけられなかったから……? そんなことって……?
アイリス!
え!?
呆けている場合か、アイリス! そんなヤツじゃなかっただろうl
エクスさん……ごめんなさい……
<>
……なんだっ!? 主人公、敵が!
!
どうやら、これを守っていた魔物たちが目覚めたようね……
主人公……ねえ、どうして……? どうしてここに……!?
あ、アイリス、落ち着いて!
すごく……嫌な感じ……! 胸が……どろどろして
……!
うぅ……!!
くっ……! 来るなら来い! この槍で貫いてやる!
この魔物の数はまずいな……! 主人公。
アイリスを守れるか? それとも……俺が守るか?
!
ふん。それならば、しっかり守ってみせろ!
story14 目覚めし力
くっ……!
どんなときでも、諦めちゃ駄目だ! そう教わった!
リューちゃん、無茶しないで!
でやあぁぁぁっ!
やるじゃないの!
魔物の一角が崩れたわ! 突破しましょう!
よし、抜けられる! お前たち、早くしろ!
いっそいでェ~!
ああっ!
リューちゃん!
平気だ! 魔物を倒してすぐ後を追う!
振り返るな!
!!
…………
……
――『振り返るな』と、リュートは言った――
――カイルも言った。それを聞き入れた結果が――
「……振り返るなよ、主人公。」
……
主人公……!?
――もう一度その言葉に従うなんて――
クソくらえだ!
主人公……! すごい、どうしちゃったの……!
<――どこからか、力が流れ込んでくる……?>
主人公!?
……ありがとう、助かった……
――きゃあっ!?
アイリス!
!!
<――アイリスが危ない!
そう思った瞬間――!>
覚醒のルーンが……!?
え!? 主人公に反応してるの?
<膨大なエネルギーが身の内で炸裂する!>
主人公……ありがとう……
ぼ、僕がもらった覚醒のルーンなのに!
アララ、主人公の方が、力が必要だったのかしらね。
(……これを予期して、カイルがこの子に持たせていたなんて…………ないわよね……)
! わわっ、まだまだ新手がガンガンくるわけねぇ!
……
――みんなを、アイリスを、守らなくては――
――守らなくては!
story15 闇に向けられる剣
主人公、すごい力だ……! これが覚醒のルーンの力……?
ちょっと! ホントにどうしたのよ、主人公!
――守る。
――――敵を倒して。
――憎い、敵を倒して。
強くなったのはわかったからぁ! もういいでしょ!
――アイリスを襲う者が。アイリスを守れない自分が憎い――
アイリスは無事だから! アンタのそんな姿、これ以上見たくないわよ!
――憎い、憎い、憎い――
――心の隅から、黒が広がる――
全てを侵す――
主人公!
主人公!
<*×○■!&%$…………>
!!
……おち、つい…………うぅっ……!
アイリス!
もー、バカバカバカ! どうしてアイリスに無理させるの!
そんなことをアイリスが望んだの!
……いいえ、キャトラ……主人公が、守ってくれたのは、嬉しいの……
悪いのは主人公じゃない……弱い、私なの……
アイリス……でも……
主人公は、悪くない……
悪いのは私……
いや。違う。
え!?
さっきの気配は紛れもなく闇。闇は悪。つまり――
こいつは悪だ!
!
え……!?
<>
エクス! ちょっと、やめてよ! どうしたのよ!
見ただろう! こいつは邪悪だ!
漆黒に染まった髪、おぞましい瘴気……! 闇の一族の者だったか!
俺たちをだまし、英知のルーンが狙いだったのか!
やめてエクス! ちがうの!
!!
くっ……! この剣を受け止めるとは……! その力、危険すぎる……!
マキナ! エクスを止めて!
……そういうことだったのね……
マキナ?
はぁっ!
!!
やめてよぉー!
おかしいと思ってたのよ……! ルーンドライバーも、カイルから奪ったのね……!
カイルをどうしたの! まさか――
殺したの!?
!
ちがう、そうじゃないの!
だったらここにカイルを連れて来てみなさいよ!
それは……!
出来ないの!? どうしてよ! どーしてなのよォー!?
カイルさんは、闇に――
やめろマキナ。議論は無駄だ。全員グルに違いない……!
そんな!?
許さんぞ……! 闇の手先め……!
……待って、話を聞いてあげ――
うるさい!
あぅっ!
リューちゃん!
芝居はよせ。闇が他者を労るなど――
このガキも、闇の一味か……?
!
今よ、主人公! その子供が気を引いてるうちに逃げるわよ!
……!?
アイリス!?
早く……!
やはりな! 己が生き延びるため、弱者を見殺しにする!
……! さあ! 早く!
逃がさんぞ、貴様ら……!
この島を生きて出られると思うなっ!!
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