裁定者 セラフィータ(STORY続き)
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「裁定者 セラフィータ」のSTORY全文が長文になるため、容量の都合で分離したページです。
STORY(EPISODE8以降)
熾烈を極めたゲート攻防戦は、進化したディアナとルナの活躍により、メインフレーム側の勝利に終わった。しかし、激しく消耗した2人は戦闘直後に気を失ってしまう。
彼女たちはジェフティの手によって、中枢防衛拠点『エテメンアンキ』へと運ばれ、修復設備で回復を図るのだった。
「セラフィータ。君もかなりの重症のようだが、供給装置だけで大丈夫か? エネルギーの積載量が多い君では、回復に時間がかかりそうだが……」
彼の指摘は正鵠を射ていたが、今はただ、彼女たちの顔を見守りたい気持ちが勝っていた。
設備に横たえられたディアナとルナを見やる。
2人は穏やかな顔つきで、深い眠りについていた。
「やはり……彼女たちのダメージは、深刻なようですね」
「そうだな。しばらくはここで集中的に診る必要があるだろう」
「ジェフティ、彼女たちの修復を受け入れてくれて、ありがとうございます」
「我々最古は人を護り導かなくてはならないからね。手は尽くさせてもらうさ」
「ありがとうございます。それにしても、彼女たちがいなければ私たちは今頃どうなっていたことか……」
ふと、力を分け与えた記憶が蘇る。
「私は忌み嫌っていたティフォンと同じ所業を、彼女たちに強いてしまったのですね……」
「あの状況では仕方がなかったのだ。思いつめることはない、君のせいではないさ」
ジェフティがそう言い掛けた矢先、突如としてディアナとルナの身体に異常が発生した。
「ぐっ、ああ……っ!」
「うう……あっ……」
「――!? この反応……一体何が!?」
「君の力を受け入れた影響が、ここでの治療を受けて活性化しているのだろう。彼女たちが順応するようにプログラムが書き換えられているんだ。これを乗り越えた時、彼女たちはMIRシリーズとファクトリーの技術、そして君の力を取り入れた、新たな存在へと至るのだ。実に素晴らしいじゃないか」
つまり、その言葉は……。
彼女たちがもう、元の人間には戻れないことを意味していた。
「貴方は……貴方はどうして、そういう物言いしか――」
エテメンアンキに私の声が響こうとした刹那、か細い声が聞こえる。
「――あ、れ……?」
「お姉ちゃん……天使様……」
「2人共……意識が!」
「……」
だけどそれは一瞬のことで、すぐに2人の意識は失われた。
それほどまでに損傷しているのだろう。
「……また、眠ってしまったのですね」
2人の命が喪われていなかった事実が、私を安堵させた。
「彼女たちが完治するにはまだまだ時間がかかる。君もそれまでは傍についているといい」
そう言い残して、ジェフティは去っていった。
私を一人にしてくれたのだろうか。いや、彼にそんな甲斐性は期待できない。
私はポッドの中で横たわる2人の頭をそっと撫でた。
……何故だろう。
自分の力を渡したからだろうか。他の人間よりもずっと、彼女たちのことを愛おしいと感じている。
「無事でいてくれて、本当に良かったです……」
知らない暖かさが、私の中に生まれていた。
ディアナとルナは何度か意識を取り戻したが、いまだほとんどの時間を眠って過ごしている。それだけ大きなダメージを負ったということだろう。
そんな彼女たちの戦果を無駄にしないためにも、私はジェフティとネメシスの襲撃について情報を共有することにした。
「ディアナとルナを助けた時に聞きましたが、どうやら今回の襲撃は、ファクトリー側にも被害が及んでいたようですね」
「そのようだ。どうにも、ネメシスには目的を持って動くものとそうでないものとがいるらしい」
そう言われて、今までの戦闘を振り返っていく。
私が戦ってきたネメシスの中にも、何らかの意思を感じるもの、それとは別に欲望に忠実なもの、その二種がいたのは確かだった。
「ええ。転送ゲートでの攻防に至るまでの奴等の動きには、明確な意思が働いていたように思えます」
「ゲートの破壊というよりは、むしろ私たちを狙っていたとも考えられるだろう……」
「ええ。その可能性は多いにあります」
「ともすれば、ここで私たちがファクトリーへ支援を出せば、その隙にネメシスがメインフレームに攻め入ることも有りうるわけだ」
「つまり、ファクトリーへ向かうこと自体が、罠であると……?」
「そうなるね。折角来てくれた彼女たちには悪いが、今私たちが動くことはできない」
「彼女たちには酷ですが、知らせる必要があるでしょうね……」
「ああ。辛いだろうが、彼女たちには受け止めてもらうしかない」
そうして、私たちはエテメンアンキへと向かった。
久々にディアナとルナに会える。それが少しだけ私の気持ちを弾ませる。
修復設備の中を覗くと、ディアナたちは未だ静かな吐息を立てながら眠っていた。
「まだ全快には時間を要するようだ。それはそうと、セラフィータ」
ジェフティの問いかけるような眼差しと共に言葉を投げかけられる。その声色は、相変わらず平坦だった。
「なんでしょうか?」
「君は隠しているつもりだろうが、依然として傷は癒えきっていないのだろう?」
やはり、すべてを見通す彼の目は誤魔化せないらしい。
「……私も彼女たち同様、万全ではありません。ですが、せめて彼女たちには私の口から説明をしたかったのです」
それが、私なりの責任の取り方だった。
「君の修復が終わった後で、じっくりと話せばいい。だから君は無理をせず、いつネメシスが襲撃してきたとしても対応できるよう、休んでくれ」
ジェフティの指摘はいつも正しい。
そう、これは私の身勝手にすぎないのだ。
「……分かりました。それではしばらくの間、眠りにつきます。彼女たちのことを頼みましたよ、ジェフティ」
「ああ、任せてくれ」
私はエネルギーの回復と戦闘データのアップデートを行うべく、修復設備に横たわった。
今はただ眠ろう。やがて訪れる戦いに向けて、裁きの剣を振るうために。
修復から目覚めた私を待ち構えていたのは、満面の笑みを浮かべたディアナとルナだった。
「セラフィータ様!」
抱きついてきた2人は、泣いていた。
そんな顔をさせてしまってしたことが嬉しくも申し訳なくて、私は一瞬目を伏せる。
「心配を……かけてしまいました。ありがとう、喜んでくれて」
はっきりと目線をあわせて、率直な気持ちを告げる。
それから、彼女たちの頭を優しく撫でた。
くすぐったそうに身じろぎする彼女たちを見て、
(この子たちを救えて、本当によかった……!)
そう思わずにはいられない。
心の底から溢れ出す喜びが、私を満たしていた。
「あの、セラフィータ様、わたしたちとお話しませんか?」
「もちろん、お仕事がなければですけどっ」
「構いませんよ。私も貴女たちと話したいことがたくさんありますから」
「ありがとうございます!」
「やったね、お姉ちゃん!」
「フフ、それではくつろげる場所でお話しましょうか」
彼女たちが笑っていることが、なによりも嬉しい。そう感じてしまうのは、いけないことだろうか。
自問自答しても、答えは出なかった。
それから、僅かではあるが可能な限り彼女たちと同じ時間を共有することにした。
彼女たちの育った環境や、これからしたいこと――屈託なく笑い、話す姿は、私にはない輝きを放っていた。
そんな私たちの姿は、傍から見れば母と娘のような関係だったのかもしれない。
私たちにとっては、時間の経過なんてほんの刹那の出来事に過ぎない。しかし、この陽だまりのように穏やかな時間は、確かに永遠にも感じられたのだ。
この時間がいつまでも続けばいいのに。そんな願いが叶うことはないと分かっていても、私は願わずにいられなかった。
そして、やはり幸せな時間はいつまでも続くわけもなく。
唐突に、終わりを迎えた。
ディアナとルナがファクトリーへと、旅立つ時が来たのである。
私はジェフティと共にファクトリーへ帰還するディアナとルナを見届けるため、転送ゲートへと足を運んだ。
「あっ、セラフィータ様、ジェフティ様!」
私たちの姿を確認した2人が大きく手を振っていた。
「見送りに来てくれたんですか?」
「ええ。貴女たちに渡したいものもありまして……ジェフティ、お願いします」
「ギリギリになってしまってすまないな。君たちにこれを託したい」
そう言うと、ジェフティは広げた掌をディアナとルナの目前に掲げて見せた。
「これは以前に話していた……」
「ああ。このデータは誰にも渡さず、必ずファクトリーまで届けてほしい」
メインフレームの希望を託された彼女たちは、どこか誇らしげに頷くのだった。
「セラフィータ。君も渡したい物があるのだろう?」
「そんな……光栄です!」
「いいんですか? 何もらえるんだろー?」
「これは貴女たちのデータを基に、私が作ったものですが……2人とも、少しジッとしていてくれますか?」
私は2人の手をそっと取り、少しだけ力を込める。
脈動とともに、私から彼女たちへ力が移動していくのがわかった。
「今、貴女たちにFREQ-Vertexの反動を軽減する力を与えました。強力な力ゆえ、完全に消すことはできませんが、その助けになってくれるでしょう」
「私たちにそこまでして頂けるなんて……ありがとうございます!」
「エヘヘ、これでネメシスに襲われても返り討ちにできますね!」
「確かにそうかもしれません。今の貴女たちの力は、ネメシスの器に匹敵するでしょう。だからといって、その力に頼るということは、命を削る諸刃の剣を振るうということ。分かりましたか、ディアナ、ルナ?」
「ハイ……善処します」
「アハハ。わたし、セラフィータ様のことがホントのお母さんのように思えてきました」
ディアナは少し寂しそうに笑うと、話を続けた。
「親の記憶なんて、わたしたちには残ってないですけど、セラフィータ様が本当のお母さんだったら良かったのにな……なんて思います」
儚げなその笑みが、私の胸を強く締めつけた。
「ディアナ……私も、貴女たちのことは娘のように思っていますよ」
「はい! セラフィータ様、一緒に過ごせて幸せでした!」
「さて、そろそろ時間だ。君たちを見送ったら、我々メインフレームは一時的に全ゲートを閉じることとなる。達者でな、2人とも」
「貴女方のこれからに、幸あらんことを」
「では行ってきます! 行こう、お姉ちゃん」
「うん。セラフィータ様、また会える日を楽しみにしてますね!」
こうして、ディアナとルナはファクトリーへ帰還した。
私はその後ろ姿を見送った後、誰にともなく誓う。
心に強く刻み込まれたあの笑顔を、
必ず、護ってみせると――。
――それは、ディアナとルナの旅立ちを見届けてから、わずかな時が経過した頃。
ゲートを閉鎖してから、ネメシスによるメインフレームへの追撃はなく、ただいたずらに時が流れていくかのように思われていた。
しかし、そこへ突如としてネメシスの反応を知らせる連絡が入る。
それは、ジェフティがディアナとルナを見送った際に、密かに彼女たちを見張るために放っていた探査機からもたらされた情報だった。
「このネメシスたちが向かう先は……まさか!」
彼女たちが帰還したファクトリーの基地に、強大な反応を持った器たちが迫っている。
『終焉の奏者テスタメント』と『闘争の女帝エリス』
――いずれも凶悪な力を持つ器である。その戦闘力はアレウスにも引けを取らないだろう。
いくら進化した2人でも、無傷では済まないかもしれない。
「できることなら、飛んで行って貴女たちの力になってあげたい。でも、私の独断でメインフレームを危機に晒すことは、できないのです……」
『わたし、セラフィータ様のことがホントのお母さんのように思えてきました』
『セラフィータ様、一緒に過ごせて幸せでした!』
別れの際に交わしたディアナとルナの言葉がリフレインする。
「ああ……私には願うことしかできません。どうか無事でいてください……」
待ち受ける過酷な運命に負けないようにと、願う。
切なる願いは、ただ虚しく空へと消えていった。