アンプルール
Illustrator:小田すずか
名前 | アンプルール(真名:佐々木 優太) |
---|---|
年齢 | 22歳 |
職業 | 新宿区No.1ホスト |
- 2020年8月6日追加
- CRYSTAL ep.Vマップ2(CRYSTAL PLUS時点で225マス/累計380マス)課題曲「迷える薔薇に終わらぬ夜を」クリアで入手。<終了済>
- 入手方法:2021/11/4~12/8開催の「「お風呂上がりの一発でわからせる!」ガチャ」<終了済>
- 担当楽曲は「「迷える薔薇に終わらぬ夜を」」。
『皇帝』の異名を持つ歌舞伎町No.1ホスト。
そんな男のとある日常に密着する。
スキル
RANK | スキル |
---|---|
1 | ファーストスパイク |
5 | |
10 | ラストスパイク |
15 |
include:共通スキル
- ファーストスパイク [NORMAL]
- 序盤に強力なブーストがかかり、その後ブーストが切れダメージ微増へと変化する特殊なスキル。いかに最初のブースト部分でゲージを稼げるかにかかっているが、演奏時間および序盤の密度に左右されるので安定しない。序盤でゲージを稼ぐ以上、増加率も相まってダメージがかさむ点も注意。
- 後半の方が密度が高い譜面が多いと思われるが、1/3経過までのゲージ占有率が約24%以上あれば、初期値でもゲージ5本は可能な模様。+7の場合、1/3経過までのゲージ占有率が1/3以上であれば、ゲージ6本が可能になる。
- +12以降は上昇幅が上がり譜面によっては7本も可能となるが、同時にダメージ増加量も増える。
- 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
- PARADISE ep.Iマップ3(PARADISE時点で累計115マス)クリア
プレイ環境 | 最大 | |
---|---|---|
開始時期 | ガチャ | |
PARADISE× (2021/8/5~) | 無し | +3 |
あり | +7 | |
PARADISE (~2021/8/4) | 無し | +5 |
あり | +11 | |
CRYSTAL | 無し | +7 |
あり | +15 | |
AMAZON | 無し | +7 |
あり | +15 | |
STAR+以前 |
GRADE | 効果 | |
---|---|---|
共通 | 1/3経過まで ゲージ上昇UP (???%)} 1/3経過後から MISS時のダメージが増える (???%) | |
ゲージ上昇UP | ダメージ増加 | |
初期値 | (240%) | (110%) |
+1 | (250%) | (110%) |
+2 | (260%) | (110%) |
+3 | (270%) | (110%) |
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 | ||
+4 | (280%) | (110%) |
+5 | (290%) | (110%) |
+6 | (300%) | (110%) |
+7 | (310%) | (110%) |
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 (2021/8/5以降では未登場) | ||
+8 | (320%) | (110%) |
+9 | (330%) | (110%) |
+10 | (340%) | (110%) |
+11 | (350%) | (110%) |
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 (PARADISE以降では未登場) | ||
+12 | (375%)} | (115%) |
+13 | (400%)} | (120%) |
+14 | (425%)} | (125%) |
+15 | (450%)} | (130%) |
参考理論値:94000(5本+14000/22k)[+3] | ||
参考理論値:98000(5本+18000/22k)[+5] | ||
参考理論値:102000(6本+0/24k)[+7] | ||
参考理論値:110000(6本+8000/24k)[+11] | ||
参考理論値:130000(7本+4000/26k)[+15] | ||
[共通条件:ノーツ分布が均一] |
所有キャラ【 常世のサツキ / 轟雷音 / ダオ・トッテナ(1,5) / アンプルール(1,5) / ポメ太 】
AIRバージョンから、分岐点が1/3に変更されてゲージ上昇率が調整された。ただし、1/3経過後はダメージが微増するようになった。最終的なゲージ上昇率は変更前を上回る。
初期値 | 1/4経過までゲージ上昇UP (280%) 1/4経過後からMISS時のダメージ軽減 (10%) |
---|---|
GRADE UP | ゲージ上昇UP 5%増加(最大295%) |
- ラストスパイク [NORMAL]
- ファーストスパイクのブーストタイミングが終盤になったスキル。ゲージの上昇が後半に寄るのでダメージの影響をやや受けづらい。
そのためかファーストよりもやや重いペナルティを課せられている。(というか前述のメリットが帳消しになるレベルな気もする)
どちらのスキルにせよあまり使い勝手は良く無いが…。 - ファーストスパイクは+12以降から上昇率が加速+ダメージ増加率も増加したため、こちらも同様になると思われる。
- 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
- PARADISE ep.IIIマップ5(PARADISE LOST時点で累計775マス)クリア
プレイ環境 | 最大 | |
---|---|---|
開始時期 | ガチャ | |
PARADISE× (2021/8/5~) | 無し | +3 |
あり | ||
PARADISE (~2021/8/4) | 無し | +5 |
あり | +15 | |
CRYSTAL | 無し | +7 |
あり | +15 | |
AMAZON | 無し | +7 |
あり | +15 | |
STAR+以前 |
GRADE | 効果 | |
---|---|---|
共通 | 2/3経過後からゲージ上昇UP (???%) MISS時のダメージが増える (???%) | |
ゲージ上昇UP | ダメージ増加 | |
初期値 | (240%) | (150%) |
+1 | (250%) | (150%) |
+2 | (260%) | (150%) |
+3 | (270%) | (150%) |
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 (2021/8/5以降では未登場) | ||
+4 | (280%) | (150%) |
+5 | (290%) | (150%) |
+6 | (300%) | (150%) |
+7 | (310%) | (150%) |
+8 | (320%) | (150%) |
+9 | (330%) | (150%) |
+10 | (340%) | (150%) |
+11 | (350%) | (150%) |
+12 | (375%?) | (155%?) |
+13 | (400%?) | (160%?) |
+14 | (425%?) | (165%?) |
+15 | (450%) | (170%) |
参考理論値:94000(5本+14000/22k)[+3] | ||
参考理論値:98000(5本+18000/22k)[+5] | ||
参考理論値:102000(6本+0/24k)[+7] | ||
参考理論値:130000(7本+4000/26k)[+15] | ||
[共通条件:ノーツ分布が均一] |
所有キャラ【 幸野 うさぎ / 少年A / ダオ・トッテナ(10,15) / アンプルール(10,15) / トラ吉 】
AIRバージョンから、ゲージ上昇開始地点が2/3に変更されて上昇率が調整された。さらにデメリットが大幅に軽減された。ゲージ上昇率と開始時間が変化した影響は、曲のノーツ分布に依存する。
初期値 | 3/4経過後からゲージ上昇UP(280%) MISS時のダメージが増える(500%) |
---|---|
GRADE UP | 3/4経過後ゲージ上昇UP 5%増加(最大295%) |
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | Ep.1 | Ep.2 | Ep.3 | スキル | |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
Ep.4 | Ep.5 | Ep.6 | Ep.7 | スキル | |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
Ep.8 | Ep.9 | Ep.10 | Ep.11 | スキル | |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
ここは眠らない街、新宿歌舞伎町。
人間の感情や欲望をつまびらかに暴きだす歓楽街だ。
そんな街の一角に、今最も話題を集めている高級ホストクラブ
『histoire(イストワール)』がある。
ここは、他のホストクラブにはない『歌劇』をコンセプトに打ち立てた事から、今一番の注目を浴びているのだ。
彼は、ローレライの如き美声とアーサー王さながらの王者の風格を備え、『超級覇王究極永遠皇子
(ハイパーアルティメット・エターナルプリンス)』の肩書を持つ。
一目彼を見た者はそのまばゆい煌めきに焼かれ、心をワシ掴みにされてしまうのだ。甘く、濃密な時を過ごしたいと思う女性は数知れず。指名は百年先まで埋まっている。
年商百億円ホストは、伊達ではないのだ。
――早速、店内に入ってみましょう。
「『華力(かりょく)』が違う、出直すがいい!
〈粉砕する神(ドン・ペリニヨンクラッシャー)!〉」
扉に手を掛けようとした瞬間。
激しい爆発が巻き起こり、店の扉が爆発四散する。
ドサリと、何かが落下した音がする。人間だ。
「お前程度の煌めきじゃ、話にならないぜ。アースからの囁きが足りないんじゃないか?」
「く、くそぉぉッ!」
吹き飛ばされた男はボロボロな体で立ち上がり、一目散に逃走した。
――貴方が、アンプルールさんですか?
「見苦しい所を見せてしまったかな。初めまして、俺こそがこの店の頂点にして至高の男」
これは後光なのだろうか。彼が言葉を発した途端、全身が光り輝き始めたのだ。
そう、彼こそが――
「俺の名はアンプルール。イストワールの王者とはこの俺の事さ」
今回は、過酷を極めるホスト業界の中でも、最も熾烈な争いを繰り広げる『イストワール』において燦然とトップに君臨する『アンプルール』という男に迫る――
イストワールのルールとは、至ってシンプルなものである。彼らホストは、指名された女性の卓で『決闘(デュエル)』を行う。
ただそれだけのシンプルなものだ。
決闘といっても、泥臭い殴り合いでも、血生臭い命の奪い合いをする訳でもない。決闘とは即ち、女性への愛の言葉で想いの優劣を競う事を指す。
取材班が店内へ入ると、指名されたアンプルールが卓へと向かっている所だった。
その卓には、既に男が陣取っている。
彼がアンプルールの決闘相手なのだろう。
「ハンッ、皇帝なんて呼ばれて浮かれてるのか? 決闘の時間も守れないとはなあ?」
威勢のいい男が先制で啖呵を切る。
しかし、アンプルールは動じない。
「ん? 君が俺の相手だったのか。すまない、『華力(かりょく)』が低すぎて気づかなかったよ」
既に、戦いは始まっているのだ。
男たちは互いに会釈を交わし、ついに決闘が始まる。
戦端を開いたのは、相手のホストからだ。
「毎日君の笑顔を見ていたい!
〈選別されし大禍(キュヴェ・ボルテックス)〉!」
「最高の俺と一緒なら、お前はもっと輝ける。俺の隣で最高の女になれ!
〈星雲の夜想曲(ノクターン・ネビュラ)〉!」
互いの愛の言霊がぶつかり合う。その奔流から生まれた光が、溢れる愛の美酒
(シャンパン・グラス・ゴーレム)を召喚した。
「「おぉぉぉぉッ!!」」
天高く拳を突き上げた両者の、『華力』と『華力』が衝突する。
ぶつかった力が均衡していたかに見えたのは一瞬だった。
アンプルールの高すぎるバースト『華力』が、相手のゴーレムを粉々に打ち砕く。
「ぐあぁぁぁぁッ!」
その瞬間、衝撃で吹き飛んだ男は、札束をまき散らしながらぐしゃりと地面に激突した。
「こ、これが……皇帝の、力……」
「フッ、『華力』を磨いて出直してきな」
――何が起きたんでしょうか?
「あの光こそが『華力』……俺たちホストにとっては欠かせない力さ。やっぱアンプルールさん、マジ卍!」
周りのホストたちも、一様にアンプルールへ賞賛の言葉を贈っていた。皆が尊敬の念を抱く程に、彼の『華力』は偉大なのだ。
そんな男たちの戦いを、女性客は愉悦に満ちた顔で見下ろしている。
そう、この店はホストの雄姿を眺めると共に、敗者の嫉妬や苦渋に満ちた表情をじっくりと堪能できるのだ。
その中には、いつか地に這いつくばるアンプルールの姿を見たい余りに、足しげく通い続けている者もいる。
だが、そんな欲望が渦巻いている中でも、常勝不敗の男に不安という言葉はない。
――プレッシャーを感じる事はありますか?
「先頭を走る事って、気持ちいいんだよね。常に俺が見る、見せる景色が一番だからさ、そんなの楽しいに決まってる。それに……俺の魅力はまだまだこんなものじゃない。俺はまだ第一形態だからね」
そう告げて、彼は優雅な足取りで次の卓へと向かう。
その面持ちは戦士と呼ぶに相応しい。
彼は、さながら夜のグラディエーターなのである。
本日の営業も終盤に差し掛かっていたが、アンプルール目当ての客は閉店まで絶える事はない。
そんな中、身目麗しい男を同伴させる女が現れた。
「貴方がアンプルールね? この日を待ちわびていたわ。わたくしの霧斗と勝負なさい」
彼は他店でNo.1ホストを務める霧斗(キリト)。どうやら彼女は自分の推しが最強である事を証明したいようだ。
しかし、どんな状況であってもアンプルールは動じない。
「いいだろう。だが、俺の『華力(かりょく)』を全身で浴びて無事で済むと思ってるようじゃ、まだまだかな……」
「減らず口を! やっておしまい霧斗!」
両者が身構え、徐々に空気が張り詰めていく。
戦いの幕が開いた。
「僕の一生を賭けて君に尽くそう。
〈君との愛よ永久に(ブラン・ドミネイション)〉!」
「ああ……わたくしの霧斗。これからも尽くすのよ」
霧斗の言葉に恍惚とした表情を見せる姿を見て、アンプルールは何かを確信したかのように、笑みを浮かべる。
「な、何がおかしいのかしら?」
戸惑いを浮かべる瞳をのぞき込み、すべてを見透かしたようにアンプルールは語り始めた。
「お前は満たされていないんだな。束縛していないと安心できないのか」
「こ、この状況で何を……?」
アンプルールは穏やかな笑みを浮かべながら、人差し指を立てて女性の唇を塞ぐ。
「こっちにおいで。縛り付ける必要のない、極上の愛がある事を君に教えてあげよう」
真正面から彼の瞳を見た女性は、ハートを撃ち抜かれへなへなと座り込んでしまう。そして、ねだるように熱く言葉を漏らした。
「……お、お願いします、アンプルール様……」
「えっ? 嘘でしょ?」
唖然とした表情で、霧斗の口から言葉が漏れた。
「力を見せつけるまでも無かったようだな」
「ふ、ふざけるな! 俺と勝負しろアンプルール!」
激昂する霧斗だったが、アンプルールは指を振るだけで相手にしていない。
「まだ気づかないのか? 彼女はもう、『俺』に堕ちている」
「畜生! このビ●●め! こんな醜態を晒したら店に戻れないだろ!」
*不適切な発言がありましたことを、お詫びいたします。
霧斗の叫びが虚しく響く。看板を背負ったホストが負けるという事は、店の面子に泥を塗る事に等しい。
そうなってしまっては、ケジメとして店を去らなければいけないのだ。
「いつまで吠えてるんだ? お前はただの負け犬だ。己の『華力』を下げる前に帰れ」
霧斗は何も言い返せず去っていった。化けの皮を剥がされた彼を、夜の街が再び迎えいれる事はないだろう。
そんなリスクを負ってでも、挑戦者たちは彼と自らの『華力』を競わずにはいられないのだ。
「……俺はキリトじゃないのかな、やっぱ」
店から出た霧斗は一言呟き、夜の街へと姿を消した。
一日の営業が終了する間際。この店独自のシステム『寵愛(ちょうらぶ)』の時が訪れようとしていた。
『寵愛』とは、担当ホストにその日最も貢献した女性への恩返し――言うなれば、アフターの権利を得る事なのである。
その権利を使って、どう過ごすかは人それぞれだ。
中には恋人のように甘いひと時を望む者もいれば、ただ隣に座りいつもと変わらぬ接客を求める者もいる。
寵愛の座を射止める争いは、ホストの人気が高ければ高い程、より過酷なものとなるのだ。
今宵、アンプルールの寵愛をその手に納めた彼女(31)は、ここぞとばかりにアプローチを仕掛けていく。
「ねえアンプルール。明日はオフよね、このまま私の家に来ない? 2人だけの世界でもっと深く、お互いの事を知り合いましょう?」
彼の首に、足に、淑女は艶やかに指を這わせていく。
そんな誘惑にも彼は微動だにせず、さらりと言葉を紡いだ。
「■■が寄せてくれる好意には感謝しているし、愛してもいるよ。でも、全てを知ってしまうのはつまらなくないかな。お互いに謎を残しておく方が、盛り上がるだろ?」
*プライバシー保護のため、女性の名前は伏せています。
「フフ、そう言うと思っていたわ。それでこそ私が愛する人ね」
それからひとしきり甘美なひと時を満喫した淑女は、アンプルールの元を去っていった。この駆け引きもまた彼の人気を後押ししている事は間違いない。
――『寵愛』が終わった頃、時刻は朝に差し掛かろうとしていた。
ハードな日々を送るアンプルールだったが、彼は疲れなど微塵も感じさせない表情で帰路につく。
これで本日の業務が終了した。
だが、アンプルールの一日はまだ終わった訳では無かったのだ。
ここからは『アンプルール』ではなく、1人の男『佐々木優太』の時間となる。
休日を迎えたアンプルール。
彼は休養も取らず身支度を済ませると、足早に駅へと向かってゆく。
――これからどちらに向かわれるんですか?
「魂が還る場所……そう、いうなれば聖地(サンクチュアリ)かな。」
――本日はプライベートですよね?
「あっ、そうですね。実家です」
新幹線に乗り込み席に着くと、彼はわずかな時間の中で眠りにつくのだった。
2時間にも満たない列車旅が終わる。
最初の目的地は、彼の母が入院している病院だった。
「ただいま母さん。体調はどう? 辛かったら僕を頼ってくれていいんだからね?」
「ありがとね優太……でも頑張る優太に迷惑はかけられないわ。だから、その気持ちだけで十分よ」
彼は、母に何度か東京に引っ越さないかと提案していた。しかし、愛する長野の地と生涯を共にしたい事、何より先立ってしまった夫が眠る地への想いから、すべて断っていたのである。
――立派な方ですね。
「自慢の母ですね。母のそんな姿を見てると、たまらなく愛おしくなるんです。これ程一途に人を愛せるって素晴らしいじゃないですか。今の僕にはできないかな……」
彼は寂しそうに笑う。
初めて等身大の彼を、カメラが捉えた瞬間であった。
次に彼が向かったのは、亡き父の墓参り。妹の優美と共に、動けない母に代って2人がかりで墓の手入れをしていく。
妹の優美は今年で高校を卒業する。彼女は東京の大学に進学するという。その学費は、優太の稼ぎからすべて支払われる予定だ。
――貴女にとって、お兄さんはどんな人?
「私にとってゆうたくんは、兄であり父でもある。そんな感じでしょうか。とても大切な家族なんです」
彼がホスト業界で仕事を続けているのは、ほかならぬ家族のためであったのだ。
それから施設へと戻ってきた2人は、日が暮れるまで家族の時間を過ごそうとしている。
そこへ看護師長の女性が姿を見せた。
「面会時間は終わりなので、本日はお引取り下さい。ましてや撮影だなんて、他の方に迷惑でしょう?」
「せっかく兄さんが東京から来てくれたんです。どうかもう少しだけ……」
「ルールですので。例外を認める訳にはいきません」
壮齢の女性は、銀縁眼鏡のフレームをくいっと上げ、刺すような視線を向けている。鉄の意志を感じずにはいられない。
しかし、なおも引き下がらない優美を後ろへ下がらせると、優太は彼女の前に立ちふさがった。
「な、何ですか貴方!?」
「ルールなのは十分承知しています。でも、どうか後30分だけ家族の時間を過ごさせてはもらえないでしょうか?」
彼の真摯な眼差しに射抜かれた看護師長。
その熱視線は、瞬く間に彼女の氷の心を解かしてしまう。
「あっ……あの、抱い……いえ、好きなだけゆっくりしていってくださ、イヒィ!」
彼女は上ずった声を漏らすと、腰が抜けたのを隠すように、壁を伝って部屋を出ていくのだった。
「良かった。これでまだ一緒にいられるよ」
「アハハ……ゆうたくんの熱視線、相変わらず女の人には凶器だね……」
「それじゃ、家族団らんの時間だよ。っと、その前に……」
こちらへと向かってきた彼は、スタッフに部屋から出ていくよう頼みこんでいる。
「ここまで見せておいてなんですけど、ここからは家族だけの時間という事で、外で待っててもらえると嬉しいです」
2時間程経った頃。
優太と優美が我々の前に姿を現した。
家族と束の間のひと時を満喫した彼は、時折あどけない笑顔を彼女に向けている。
東京へと戻れば、すぐにでも熱狂の空間へと戻る事になるだろう。
だが、そんな彼の背中に疲れは微塵も感じられない。
家族を養うため、止まる訳にはいかないのだ。
この日の営業は、いつもとは何かが違っていた。
その異変を感じ取ったアンプルールも、わずかに表情を強張らせている。
いずれの卓を見ても、イストワールが誇る名うてのホストたちが死屍累々といった惨状で、皆悔しそうに這いつくばっていたのだ。
まるで――『華力(かりょく)』の違いを見せつけられたかのように。
「ようやくお出ましか! 良い御身分だなあ、アンプルール!」
奥のVIP卓で、豪奢なソファーに1人陣取った男が叫ぶ。その男は自信に満ち溢れた表情でアンプルールを見据えていた。
「俺の名はカイザー! お前に俺の名を刻むためにやってきた」
ホストオブホスト、カイザー。
彼もまた、この街で名を馳せる偉大なホストの一人である。
銀髪をオールバックにまとめた男は、アンプルールの前へと歩みを進め、声高らかに宣言する。
「俺と同じ『皇帝』の名を持つ者! 皇帝は1人で十分だって事を分からせてやるぜ! 俺と勝負しろ!」
「ここまで好き勝手にやられたら引き下がる訳にはいかないな。全力で掛かってきな!」
一瞬の閃光。
気付けば、強大な『華力』をまとったカイザーの一撃によって、アンプルールは膝をつかされていた。
「なんて、速さだ……」
「俺のヘネシー・フィストを喰らって、床に顔を付けなかった事だけは褒めてやる。だが、所詮はお前もプロ意識の低い雑種に過ぎなかった訳だ」
「お、俺のプロ意識が、低すぎ……? 俺はこの店一番のホストだ。誰よりも稼いでいる! プロ意識ならそれで十分だろう!?」
抗弁するアンプルールに、カイザーはガラクタを見るような視線を向け、続ける。
「笑止! 醜態を晒しておいてまだそんな減らず口を叩くとはな。いいか、お前に足りないのは女性への感謝の気持ち。俺は俺を選んでくれた女性すべてに感謝の気持ちと愛を届けている。それがお前には感じられないのさ!」
ホストクラブ『クロニクル』の頂点に立つ男は、休日でも太客細客に関わらず指名してくれた女性たちと連絡を取り合っているという。
個人と職業とを区別するアンプルールとは、対照的な存在であった。
「ホストとしての『華力』の違いを理解できたか? 分かったなら、故郷へ帰るんだな。お前にも家族がいるだろう」
一方的にそう告げると、カイザーは高笑いと共に店を去っていく。
その後ろ姿を呆然と見つめるアンプルール。
陰りを帯びた表情と、身体に刻まれた傷が彼の心境を物語っていた。
カイザーとの一件で、イストワールは揺れに揺れた。
アンプルールの敗北で店の存続すら危ぶまれたが、だからといって店を畳む訳にはいかない。店の信頼を回復するには、真摯に客と向き合うしかないのだ。
「アンプルール、身体は大丈夫? 昨日の話、聞いたわよ。私で良かったら相談に乗るから……」
アンプルールの傍らに座っていたのは、先日『寵愛(ちょうらぶ)』の権利を勝ち取った■■さんだ。
*プライバシー保護のため、名前は伏せています。
「……ありがとう、でも俺なら大丈夫さ。それよりごめんね、こんな姿を見せてしまって」
「んんっ、い、良いのよ。貴方のその表情を見られただけでもう……(ああ、お持ち帰りしたい!)」
憂いを帯びた表情に彼女はすっかり魅了されている。
今や彼を心配しているのは彼女だけではない。
数多くの太客たちが、傷ついた皇帝のハートを射止めるチャンスと言わんばかりに狙っているのだ。
そんな中、離れた卓からアンプルールを見つめている者がいた。
「ゆうたくん、ちゃんと仕事してるんだ。よきよき」
アンプルールの実の妹、優美。
彼女は兄の職場が気になって、内緒で職場を調査しに来ていたのだ。
「それにしても……私が思ってたホストクラブと全然違うなあ……ホスト同士で戦ってるし、まぶしい人たちで一杯!」
「あの……アンプルールさんの方ばかり見てないで、俺たちのショーを見て欲しいんだけど……」
「ごめんなさい、私、興味ないので大丈夫です!」
困惑の表情を浮かべる男たちを後目に眺めていると、その視線に目聡く気付いた女が、キッっと睨み返す。そして、スッと立ち上がり真っすぐに向かってきた。
「や、やばっ!」
慌てて身体を椅子の影に隠したものの、時既に遅く。
客と思われる女性は優子の首を掴んで怒鳴りちらす。
「ねえ、さっきからずっとこっち見て、何か用!?」
「あ、あの……ええっと……」
「今はわたくしが彼を独り占めする時間なの。邪魔をしないでくれるかしら?」
ドスの効いた■■さんの声は、妖艶な雰囲気など欠片も感じない。
女の戦いに土足で入り込めば牙を剥かれる事は必定。
夢のようなひと時を邪魔した者は、手痛い仕返しを受けるのだ。
「も、もう貴女の事は見ませんからっ!」
「私ではなく、アンプルールよっ!」
何を言っても今の■■さんに釈明の言葉は届かない。
返答に困っていた優美だったが、そこへ直ぐさま
アンプルールが割って入った。
「■■さん? 急にどうし……って、お、お前!」
「ど、どういうご関係なのかしら!?」
「ごめん、少しだけ席を外してもいいかな? この埋め合わせは後でさせて貰うから。お願いだ」
熱い眼差しを向けられては、彼女も怒りの矛を収めざるを得ない。
「んっ! あ、貴方がそう言うのなら……。私を満足させてくれるまで、返さないわよ?」
去っていく彼女に、優美は「さすがの熱視線だ」とつぶやく。危ない目にあったというのに、懲りていない妹へと向かって、アンプルールは母親のようにたしなめるのだった。
「勘弁してよ。なんで優美がここにいるんだい?」
「いいじゃない。大学へ進学する前に、住む場所を探しておきたかったんだもん」
「住む……場所!? 一人暮らしする気なのかい? そんな事、お兄ちゃん絶対に許さないよ! 優美はお兄ちゃんと一緒に暮らすんだ!」
「イヤよ! ゆうたくんと住んでる事が知れたらどうなると思う? 死屍累々よ! 屍山血河よ!? 友達なんて連れてこられないじゃない!」
お互いに一歩も譲ろうとはしない。
そんな所も含めて、この兄妹からは血のつながりの深さがしっかりと感じられた。
「っと、こんな所見られたらマズい。いいかい、この話は後でゆっくり話そう、分かった?」
「望む所よ!」
大急ぎで妹を店から追い出したアンプルール。
まだ誰も見た事のない彼の表情を見ることができた顧客たちは、この2日間を
『祝福の日(ディエス・ベネディクトス)』として、語り継いだという。
陽が沈みかけた頃。
アンプルールは優美とショッピングからの帰り道、河川敷を歩いていた。
昨夜の事など、何処吹く風といった彼女だったが、一方でアンプルールは複雑な表情を浮かべている。
彼の胸中は、どう彼女の1人暮らしを諦めさせるかでさぞ悶々としている事だろう。
無言で先頭を歩くアンプルールに代わって、優美は口火を切った。
「ねえ、まったく話そうとしないけど、私の1人暮らしを認めてくれたって事でいいんだよね?」
「……散々考えたけど、無理だよ。僕には受け入れられない」
兄の答えはいつまで経っても変わらない。
「どうしたらオーケーしてくれるの? 私、ゆうたくんとは険悪な仲になりたくない。辛いのは分かるよ、でも私だって……」
苦悶の表情を浮かべていた兄は、遮るようにしてついに心情を吐き出していく。
「……そもそも料理もできない優美の代わりにずっとご飯を作ってきたのは誰だい? 僕だよね。この前実家に帰った時に見たんだ、台所のゴミ山の数々を。あの地獄を東京でも再現する気か? 優美は悪魔召喚師なのか!? お兄ちゃんは心配だよ!」
放たれてしまった言葉。
そこに傷つける意志など微塵もなかった。
だが時すでに遅く、優美は眼に大粒の涙を浮かべて叫ぶのだっだ。
「酷い……下手っぴだけど、わ……私だって頑張ってるもん。もういいよ、勝手に部屋も探すし、バイトして家賃も自分で払うから……! もう放っといて!」
「ゆ、優美! 待ってくれ! さっきの事は謝る、だからちょっと、もうちょっとだけ僕の話を……!」
その時だった。
どうにか引き止めようとしていた彼の言葉を掻き消すように。
ひときわ大きな声が辺りに響き渡った。
「その手を離せ! スケコマシ野郎!」
いったいどこから現れ、いつからそこにいたのか。
2人の前に姿を現したのは、キングオブホスト『カイザー』。
小高い土手に立っていた彼は、高く飛び上がり2人の前に着地してみせる。
そして、アンプルールの手を振りほどくと、彼女を守るように割って入り、すかさず手の甲に口付けを交わしてしまった。
「大丈夫だったかいお嬢さん。この変態野郎は俺に任せて逃げるんだ」
突如現れた闖入者。
優美は未だ状況が呑み込めず、戸惑いの色を浮かべている。
「アンプルール、お前にはプロ意識が足りねえとつくづく思っていたが、まさか女性を大事に扱わないゴミクズ野郎だったとはな! 失望したぞ!」
この場でお前のホスト稼業に引導を渡す、と告げるカイザー。しかし、カイザーが妹に対して行った所業を目の当たりにした彼に、その声は届いてはいない。
アンプルールは怒りのあまり、赤黒い光を全身から奔らせていた。
「……よぉぉく分かったぜ、お前のプロ意識って奴をな。このクソナンパ野郎があぁぁぁッ!!」
「誰がナンパ野郎だ、俺は紳士的な対応を……って、聞いちゃいねえか。来いよ、お前の性根、叩き直してやる!」
偶然の再会。
国家の皇帝と皇帝が出会えば、戦争は不可避。
互いの『華力(かりょく)』を掛けた決闘が始まろうとしていた。
「ヘネシィィ・フィストォォ!!」
「クリュッグ・ナックルッッ!!」
『華力(かりょく)』と『華力』のぶつかり合いが、大気を揺らす。
その余波は凄まじく、衝撃は大地を駆け、地表がめくれ上がる程であった。
河原沿いで繰り広げられていた争いは、増々加熱していく。それはマッシュアップにも似た作用を引き起こし、互いの『華力』を高め合うようであった。
「ハハッ! やるじゃねえかアンプルール。それがお前の本気って訳か!」
「ああ! 分からせてやるよ『華力』の違いをな!」
増大する互いの『華力』は、今まさに拮抗している。
であれば、男たちがやる事はひとつしかない。
「「煌めけッ! もっと! もっとだッ! もっと煌めけぇぇぇぇぇッッ!!!」」
――どちらが上かを証明する事。
2人は同時に拳を天に突き上げ、黄金の輝きを纏った溢れる愛の美酒(シャンパン・グラス・ゴーレム)を召喚する。
「「俺は!」」
「「お前をッ!」」
「「超えて魅せる!!」」
2人は同時に踏み込んで、渾身の華力を解き放ち――
「――もう止めてッ!!」
拳が交わうその間際。
激流にも負けない澄んだ声が響く。優美だ。
彼女のひと声で2人は拳を振り上げたまま振り返る。
「優美!? 何で止め、痛ッ!」
「ハハ、無様だな、アンプ、つぁぁッ!」
そして、困惑する2人にバチンッと平手打ちを喰らわせたのだ。
「私の兄を、これ以上傷つけないでッ!!」
「……へ? 兄、さん?」
状況を飲み込めていない様子のカイザー。
優美の怒りの矛先は、すぐさま兄へと向けられた。
「ゆうたくんもゆうたくんよ! 気持ちは嬉しいよ。でも、私だっていつまでもゆうたくんに甘えていられないから。それでも認めてくれないなら、もう二度と口聞いてあげないんだから! 私、先に帰る! じゃあね!」
「そんな!? ま、待ってくれよ優美、おい!」
アンプルールは大急ぎで彼女の後を追う。
1人その場に残されたカイザーは、真っ赤に燃え上がった頬をさすりながら、東に沈む陽を呆然と眺めていた。
――先走ってしまいましたね。
「う、うるせえ! アイツの妹だなんて分かるかよ。いや、それよりもあの一発。俺のハートに、ズンと来たぜ……」
彼の表情は妙に清々しい。
その眼差しは、遠ざかっていく優美の背中へと熱く注がれているのだった。
夕暮れの河川敷で、あわや絶交という危機から脱したアンプルール。彼は気持ちを新たに営業を再開した。
傷心の彼を癒そうと気合いを入れて来店した淑女たちは、いつも通りに戻っている彼を見て、皆戸惑いの色を浮かべる。しかし、成長した彼の笑顔にたちまち射抜かれ、恍惚とした表情で卓を去っていくのだった。
――妹さんとは和解できたんですね。
「ええ。あの後2人で話し合って、優美の意見を尊重する事にしたよ。これが成長するって事か……ああ、すまない今カメラは寄せないでくれ」
彼の目尻から伝う涙を、カメラは逃さなかった。
しんみりとした雰囲気に包まれる中、そんな空気を一変させる怒号が店内を駆け巡る。
「アンプルール! この前の続きをしに来たぞ!」
『クロニクル』のトップホスト、カイザーだ。
その姿を捉えたアンプルールは、応じるように声高らかに宣言する。
「よく来てくれたなカイザー。みんな! 今日は俺とカイザーの一夜限りのデュエルを披露しよう!」
突然の出来事に色めき立つ観衆。
店中を期待に満ちた空気が、支配していた。
カイザーの眼前に立ちふさがったアンプルールは、開口一番に言い放つ。
「俺は今まで自分の目的のためだけにホストを演じていた。だが、この男の『女性の幸せがすべて』という考えに胸を打たれ、そして気付いたんだ。俺はなんて甘い男だったんだろう、と」
客もスタッフも、固唾をのんで彼の言葉を待つ。
「そして、俺はようやく理解したんだ。俺は俺の大切な家族なしには輝く事はできないって」
「ようやく理解したか。お前に欠けていたモノ、すなわち『愛』。俺の愛は、女性の幸せのためにある。お前の愛は、家族への愛だ。さあ、どちらの愛が上か決めようじゃないか」
両者の考えの根底は同じ方向を向いている。
しかし、決して交わる事はない。
そして、その譲れないもののために。
「「――勝つのは、俺だッ!!」」
それ故に意地を張り合うのだ。
どちらがより優れているのか。
どちらの愛がより崇高なのか。
『華力(かりょく)』の違いを見せつけるために。
「唸れ、俺の愛! 全てを飲み込んで!
〈翆色の薔薇(エスメラルダ・ダイナミック)〉!」
「光溢れる丘で、愛を語らおう
〈大いなる神の威光(ドン・ペリニョン・ルミエール)〉!」
両者の拳から放たれた『華力』は、無数の軌道を描いて降り注ぐ。
「俺との絆は永遠に、色褪せる事はない
〈華やぐ天国の扉(ペリエ・オールヘブン)〉!」
アンプルールは次々に大技を繰り出すも、矢継ぎ早に展開された光のカーテンによって防がれてしまう。実力は恐ろしい程に拮抗している。
勝負を見守っていた淑女たちは、その光景に魅了されてへたり込み、中には絶頂を迎えてしまうものもいた。他のホストたちもまた、世紀の一戦を前に拳を強く握り締める事しかできないでいる。
「正直嬉しいぜ! これほど楽しませてくれるとは思ってもみなかった!」
「カイザー、お前には感謝してるよ。だが、俺を正した事でお前の勝ち目は消えた。万に一つもな!」
「何!?」
「想いの強さが『華力』の煌めきに直結するのなら、俺の家族への想いの強さは誰にも負けないって事だ。つまり、深く愛する俺の愛に、お前の広く浅い愛じゃ、届かないんだよッ!!」
両手を広げたアンプルールから湧き上がった閃光。
それは一瞬でカイザーを包みこんでいき――
「アースが、俺の煌めきが、奴を倒せと光って叫ぶ! 喰らえェェェッ!
〈虹色の誓い、煌めきと共に(ロデレール・エクスプロージョン)〉!!」
「――ッ!?」
ガードすらできない閃光の渦が、カイザーを瞬時に焼き尽くす。
「女たちのところへ戻るんだァーッ!!」
光の瞬きが収束したのは、時間にしてみれば1分にも満たない僅かなもの。
だが、連鎖的に巻き起こった爆発的な煌めきは、カイザーを吹き飛ばし、観衆を悦楽の至高天へと昇華させる。
イストワールそのものを木っ端微塵に粉砕していたのだった。
すべてが吹き飛び、瓦礫だらけとなった空間で、アンプルールだけが1人立っている。
そして、アンプルールは勝利を噛みしめるように、握った拳を天高く突き上げた。
「――これが、俺の『華力』だ」
「俺が……魅せられる、とは……今こそ……お前は、本物の、キング……」
半裸のカイザーは最後にそう言い残し、大地に倒れ伏した。
安らかに眠るその顔には、一片の悔いもみられない。
今、ホスト界の真の王者が決した瞬間であった。
――1カ月後。
朝早く身支度を済ませたアンプルールは、改札口の前にいた。
彼は、8時ちょうどのあずさ2号で長野へと帰るのだ。
東京の地を離れる事を決めたのは、頂上決戦直後の事。
彼はなんと、その場であっさりと引退を宣言し、愛する母を支えたいと言ってのけたのだ。
「ゆうたくん、お母さんの事よろしくね」
「うん。今度は僕が母さんを守っていくから、優美は安心して勉強に励んでね」
「ありがとう。でも本当に良いの? 私が1人暮らしする事、あれだけ反対してたのに」
見送りに来た優美は、兄と衝突した事を気に病んでいたようだ。しかし、そんな不安など一笑に付して、優太は穏やかに微笑んで見せる。
「気づいたんだ。信頼して遠くから見守る事もまた、愛なんだって」
「ゆうたくん……私、約束する。絶対に兄さんを悲しませるような事はしないって。大学を卒業したら、私も長野に帰るからね」
雪解けを感じさせる、春の陽だまりのような2人の笑顔。
だがそんな雰囲気を台無しにするように、銀髪の男が姿を現した。
「俺に挨拶も無しに帰ろうとはな! とんだ愛弟子だぜ!」
「カイザー!? っておい、俺がいつお前の弟子になったんだよ」
カイザーはズンズンと突き進み、優太の前に立つ。
そして、唐突に優太をきつく抱きしめたのだ。
「……うっ、く、苦しい。何をする気だ!」
「これは俺なりの激励だ。まあ、お前なら何処でもやっていけるだろうが。まあそれはそれとして……お前に聞きたい事がある」
「おい、耳元で甘く囁くのはやめろ!」
突き飛ばされたカイザーは気にする事もなく続ける。
「なあアンプルール、こんな俺でも愛を捧げたい人にどう想いを伝えるか悩む時があるんだ。それでも想いを伝えるには、何て言えばいいと思う?」
唐突な質問にやや面食らう優太だったが、即座にアンプルールに気持ちを切り替えて即答した。
「決まってるだろ。『愛してる』の一言だ」
「やっぱりそうだよな! 流石は俺が認めた唯一の男!」
そう叫んだカイザーは、ヨシ! と気合を入れて優美へと振り返り――
「優美さん! 俺はあの河原でもらった一発が忘れられないんだ! こんな感情は初めてだ、これは愛に違いない! だから! 俺は君をあいッ、」
「眼中にない! どっか行けェェェッ
(ヴーヴ・クリコ・エクスターミネイション)!!」
愛の言葉を紡ぎきる事もなく、カイザーは空の彼方へと吹き飛んでいった。
優美の背中から発せられた光。その光は、白金(プラチナ)に輝く高貴さに満ち溢れていた。
「アンペラトリス(女帝)、か……」
「え、ゆうたくん何か言った?」
「あはは、血は争えないと思ってね」
ふと見上げた西の空。
寒空の下、澄んだ空気の冷たさが本格的な冬の訪れを告げている。
輝かしい栄光を捨て、新たな地に臨む優太。
決意に満ちたその顔に、迷いなど、無い。
『次回予告』
――失われた華力(かりょく)!
「何故だ……俺が華力を使えない!?」
――アンプルールの前に立ちはだかる新たな敵!
「いくぞ! 『最大華力(フルパワー)』100%中の100%!!!」
――最愛の女をかけた、涙のデュエル!
「優美さんは俺が頂いていく。お前を倒してなあ!」
――長野(ザ・ロング・フィールド)で巻き起こる新たな戦い!
――王の聖杯を手にするのは誰だ!?
「アンプルール? 奴はもう終わったよ」
「いいえ! 優太くんは、必ず帰ってくる! だって――」
「ああ。俺は……いや、俺こそがアンプルールだ!」
――『華力』を賭けた争いは続く。
ToBeContinued
チュウニズム大戦
レーベル | 難易度 | スコア | |
---|---|---|---|
スキル名/効果/備考 | |||
●リレイ | MASTER | 0 / 390 / 780 | |
レーベルブレイク(●■♠ミス) | |||
次のプレイヤーの●、■、♠の COMBO/CHAINは、MISSとなる。 | |||
備考:●リレイ/■メタヴ/♠アニマ |
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92020年10月03日 01:21 ID:k6pvi16b一目見たときから思ってた「DAIGOさんかな?」
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82020年09月03日 16:21 ID:b4yn5q3c勝手に続くなwww
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22020年08月06日 23:54 ID:ln584e46もうほとんど接客業じゃなくて草
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12020年08月06日 20:31 ID:c8d111mzキリトじゃないのかな、俺はで草