ニア・ユーディット
通常 | 神聖なる依代 |
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Illustrator:MIYA*KI
名前 | ニア・ユーディット |
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年齢 | 20歳(再生後7年) |
職業 | 第二次帰還種の衛士 |
- 2022年2月17日追加
- NEW ep.Ⅲマップ5(進行度1/NEW時点で405マス/累計1315マス*1)課題曲「Strange Love」クリアで入手。
- トランスフォームすることで「神聖なる依代ニア・ユーディット」へと名前とグラフィックが変化する。
第二次帰還種の衛士にして、かつてミスラ・テルセーラの友人だった少女。
自らの思想と友人の理想論で決別してしまった少女は、友人を護るために全ての『真人』達を滅ぼす決意をした……。
スキル
RANK | 獲得スキルシード | 個数 |
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1 | 天地創造 | ×5 |
5 | ×1 | |
10 | ×5 | |
15 | ×1 |
include:共通スキル(NEW)
スキルinclude:天地創造(NEW)
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | スキル | ||||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
スキル | |||||
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
スキル | |||||
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
旧き人類の手によって荒廃した地上は、長い歳月をかけ、真人の手で清められてきた。
だが、ようやく人が住めるほどに回復したかに見えた地上に、突如新たな人類――帰還種が戻ってきたことで状況は一変する。
生存権を巡る争いにより、大地は再び戦火に包まれていった。
そのさなか、地上に人類を送りこんだシステムは、第一次帰還種レナ・イシュメイルからフィードバックされた情報を受けて、帰還種を安全な場所で再生させることにした。
真人の支配が及んでいない、大陸の極東地域を拠点にし、帰還種は地上にゆっくりと根付いていく。
ニア・ユーディットは、そんな帰還種の一人である。
彼女は西方地域の惨状に強い危機感を抱いていた。
このまま真人たちを野放しにしていたら、その魔の手は確実に極東地域へ伸び、我々を滅ぼすだろう、と。
指導者エイハヴや聖女バテシバ――次々と台頭してくる真人の支配者たち。
彼らは機械種が持ちかけた和平交渉や救済策に応じず、穏健派の同胞すらたやすく手に掛けてきた。
そんな野蛮なものたちから、人類を、ひいては地上を守るには、真人自体をこの世界から抹消してしまうのが一番の近道である。
極論といわれても構わない。
そう結論付けたニアが戦線に身を投じていくのは、当然の成り行きだったのだ。
私(わたくし)は、多くの帰還種と共にメーネ様の下で育てられました。
「バテシバ戦役」を生き抜いたメーネ様は、ありとあらゆることに長けていて、誰もが皆彼女に憧れの念を抱いていました。
私もその一人です。
彼女からは様々なことを学びました。
限定状況下における戦闘や諜報活動、そして真人との絶滅戦争を回避するための方策。
戦争を経験したメーネ様の慧眼さは、さすがとしか言いようがないものでした。
ある一点をのぞいては。
『私は、帰還種と真人が手を取り合い、一緒に生きていく未来があると思っているわ』
それは、彼女が真人に対して深い理解を示していることでした。
彼女がそこまで入れこむようになった切っ掛けは、最期まで彼女と共に戦った真人の影響なのでしょう。
親友のミスラは、いたく感動しているようでしたが、そんなこと、私には到底受け入れられないものでした。
だって、大地の浄化を目的に造られただけだというのに、勝手に所有権は自分たちにあると喧伝しているのですから。
それなのに、ミスラときたら。
メーネ様の考えに感化された挙句、あろうことか真人を含めたすべてのものが笑顔でいられる世界にしたいと、そう言ったのです。
思えば、あの瞬間から私とミスラの間に亀裂が生じてしまったのかもしれません。
それを決定づけたのが、私たちの街を突然襲った爆破事件でした。
メーネ様を消し去るためだけに、多くの命を奪い、破壊してしまったのです。
首謀者の特定には至っていませんが、こんなことをするのは真人以外にあり得ません。
胸を焼き尽くすほどの激しい怒りの炎が、私の胸を駆け上ったのは、今更言うまでもないでしょう。
ミスラは、愛するものを深く傷つけられたのに、それでもまだそんな夢物語が叶うと信じきっている。
現実はどこまでも私たちに厳しく、果てしなく冷たいというのに。
「フ……」
それでも貴女は笑っていられるのでしょうね。
貴女は、自分のことなんて何ひとつ見ていないもの。
……ねえ、気づいてるかしら?
貴女の隣を歩けるものは、誰もいないってことを。
だから、私にできることはひとつしかないの。
私の手で、真人をすべて葬ってしまえばいい。
その上で貴女を好きなだけ飛び回らせてあげるわ。
これが貴女を護る、最善で最良の一手。
すべてが終わった世界で、再会できることを祈っているわ。
ミスラ・テルセーラ。
かつてバテシバの軍勢に攻め落とされたペルセスコロニーには、一個大隊が攻めてきたところでまったく揺るがないような強大な防衛線が構築されていました。
これだけの力を備えていながら、何故ここの指揮官は西方地域の支配を進めないのでしょう。
指揮官を任されているエヴァ・ドミナンスⅩⅢという機械種は、私に会うなりこう言ったのです。
「私は今すぐ攻め入るつもりはありません。前任者は事を急ぐあまり、バテシバの前に敗れました。それが多くの同胞を失うきっかけになってしまったのです」
「……このまま静観を続けると仰るのですか?」
「ええ。彼らの寿命は短い。ならば、いたずらに攻める必要はどこにもないでしょう?」
「そうですか……」
……ふん。手ぬるいのよ。
生かさず殺さず、じわじわといたぶるようなやり方は到底賛同できはしない。
最前線を任されている指揮官がこんな体たらくでは、守れるものも守れなくて当然ね。
悠長に事を構えていれば、取り返しがつかなくなる。そうなる前に動き出さなくては――
エヴァ様との面会を早々に切り上げた私は、その足で訓練場へ向かう。
そこでなら、私と志を同じとする仲間に出会えると思ったから。
訓練場についた私は、辺りを見回して直ぐに、同志を見つけられた。
その方々は、訓練場の中でもひときわ異彩を放っていたのです。
「クカカ! どうした! この身体にかすり傷ひとつ負わせられんのか!」
4本の腕に武器を持ち、同時に複数の兵と戦闘をくり広げている機械種――アイザック・ドミナンスⅤⅢ。
彼こそが、バテシバ戦役で多くの真人を葬り去った英雄なのです。
「――クソ、ここまでいいように扱われるとは。さすがに元将軍殿は伊達ではないな」
「あの自在に動く腕、かなり厄介だなアニキ。次は戦法を変えて――」
「待て、マードゥク。おい、そこの女。何をこそこそ見ている?」
「……ッ。失礼しました、私はニア・ユーディット。真人を駆逐し、この争いに終止符を打つべく、衛士に志願した帰還種です」
「ほう……?」
「へー、アニキと“同じ”なんだな」
その時、会話を遮るように足音が響く。
「フム……」
「……アイザック様!?」
「ほう……その目つき、その志。貴様からは確かな意思を感じるぞ、ニア・ユーディット!」
「ハッ、光栄です!」
敬礼した私の前に、ふとアイザック様の手が差し伸べられる。
「よかろう……貴様の身は我が部隊が預かる。アンシャール、マードゥク! ニアを案内してやれ!」
2人は直ぐに返事をすると、私を案内してくれたのでした。
それから私たちは、アイザック様指揮下の遊撃軍として立ち上がることになったのです。
機械種の元指揮官、アイザックの下で任務をこなすことになったニア。
真人の前線基地を破壊していく中で、アンシャールとマードゥクも自身と同じような考えを抱いていることを知るのだった。
哨戒任務につく予定だったニアは、ふとアイザックに呼び止められ、共に防衛網の西にあるカラージュコロニー付近へ向かうことになる。
アイザックが言うには、その近辺で所属不明の船が目撃されたというのだ。
「不確定な情報だが、カスピ大地溝帯に不穏分子が密かに集まっているという噂もある」
「では、その所属不明機が不穏分子と繋がっているのを考慮して、ウィアマリスを起動させたのですね」
「そのとおり。このウィアマリスの目に見通せぬものなど、何ひとつないからな。クカカ……」
ニアがアイザックと共に搭乗したのは、索敵能力と戦闘能力を両立させた、戦術級索敵殲滅型機動兵器――『ウィアマリス』。
レーダーをドーム状の装甲で覆っただけでなく、機体に対衝撃シールドまで搭載した、動く城塞とでも言うべき船だった。
ニアが広域の索敵を開始してしばらくすると、反応を示すマーカーが複数点灯する。
「アイザック様、カスピ大地溝帯付近で反応がありました。どうやら機械種と真人が戦闘していたようです」
「動きは?」
「完全に沈黙しています。現地へ向かいますか?」
「不確定要素は潰すに限る。奴らが搭乗者を鹵獲した可能性も考慮せねばならんからな」
「鹵獲……ですか?」
「帰還種もそこまでは知らされておらぬか。真人の奴らは、鹵獲した機械種や帰還種を研究の道具として使っているのだ。現にイオニアで再生された第一次帰還者は、そのほとんどが殺害され鹵獲されている」
「な……っ、まさか……」
思いもよらぬ事実を聞き、ニアは言い知れぬ不安に身体を小さく震わせる。
「私たち帰還種の身体を……」
「ああ、肉の一片に至るまでな」
すると、アイザックはとあるデータをモニターに映し出した。
「――っ!? うっ……」
そこにあったのは、もはや人の原型すら取り留めていない、“何か”の姿。
こみ上げてくるものを必死にこらえながら、ニアはソレから目をそらさず見つめ続ける。
「これは真人の研究所を襲撃した際に入手した。奴らは帰還種の身体を研究し、寿命の改善を図っていたのだ。クカカ……所詮は無駄なあがきよ」
「許せない……こんな……」
その時、データに釘付けになっているニアの肩に、アイザックの手が置かれた。
「っ!?」
機械の身体は無機質で硬く、どこまでも冷たい。
まるでこちら側の熱まで奪ってしまうような――。
寒気を感じたニアは、いつの間にか横にいたアイザックを見やる。赤く怪しく光るその瞳には、驚愕の色を浮かべたままの自身の顔が反射していた。
「このような非道を、貴様は許せると思うか?」
「許せ、ません……絶対に許してなるものか……。真人は早く、滅ぼさなくては……」
「クカカ、そうだ、しっかりと目に焼きつけておけ」
ニアの姿に、満足そうにアイザックは頷いた。
戦闘があった地点に到着したニアたち。
眼下に広がる廃墟には、煙を上げるエアロクラフトや複数の戦闘艇の残骸が転がり――その中に、いくつかの熱源反応を示す船が一隻とまっていた。
それを確認したニアは、不明機へと呼びかける。
『こちらはアイザック将軍旗下の遊撃部隊だ。そこの戦闘艇の搭乗者よ、直ちに応答せよ。繰り返す、直ちに応答せよ』
やはり、答えはない。
『もう一度繰り返します。そこの搭乗者よ、直ちに応答せよ! 応答しなければ――』
だが、聞こえてきたのは、緊張した空気には似つかわしくない、弾むような声。
『ニア! わたしだよ! ミスラ・テルセーラ!』
「え――――ミスラ? なんで……?」
袂を分かったはずの少女を前に、ニアは困惑の色を隠せないでいた。
機械種の戦闘艇に登場していたのは、決別したはずの親友ミスラ・テルセーラだった。
突然の状況に言葉を失ってしまったニア。
そこへ間髪を入れずにミスラがまくし立てた。
『こんなところで会えるなんて嬉しいわ! でも、どうして貴女がその船に乗っているのかしら?』
久しぶりの再会に喜びの声をあげるミスラとは対照的に、ニアの心にもたげてきたのは心を凍らすような冷たい感情と――同時に、ミスラと再会したことで純粋に喜びそうになっていた自分への、怒りの念だった。
それを認識した途端、ニアは当たり散らすように叫ぶ。
「何故貴女が、真人の――」
「貴様ッ!! ソロ・モーニアァァァッ!!」
ニアの叫びを打ち消すほどの大きな声が響く。
ミスラとのやり取りを静観していたアイザックがある“もの”を視界に捉えた途端に、ニアを押しのけ割って入ってきたのだ。
威嚇するように身体を振るって、アイザックが吼える。
「反応を辿ってみれば、よもやこのような場所で真人の王子に出くわすとはな!」
アイザックは、かつて捕らえた真人から独自に真人の王子「ソロ・モーニア」の情報を入手していた。
それ以来、兼ねてより真人を目の仇のように思うアイザックにとって、ソロ・モーニアの捕獲・殺害は最重要項目のひとつに数えられている。
『な、なんで俺のことを……』
『えっ、ソロって王子様だったんだ! メーネが読んでくれた本で聞いたことがあるよ!』
「クカカ、自らやってくるとはなッ! ミスラ・テルセーラよ、直ちにそやつを引き渡せッ!」
アイザックの要求を受け入れられるわけもない。
当然の反応をソロは示した。
『んなことはどうでもいいんだよ! 俺は、下らない争いになんて関わりたくない! 戦争なんか、やりたい奴らだけで勝手にやってればいいんだよ!』
『ハハッ、言うじゃねぇか。もっとぶつけてやんなぁ! ソロ!』
『もう、2人で煽ってどうするのよ……!』
「愚かな真人風情が! 貴様には十分な利用価値がある。それが例え、亡骸であってもなッ!」
「火に油を注ぐ」を体現したかのようなその応酬に、アイザックは更に怒りを募らせていく。
そして、4本の腕を振り乱し、高らかに宣言した。
「従わぬのなら、一向に構わんッ! 貴様ら諸共、処分するだけのことッ!」
よもやそのような事態にまで発展するとは思っていなかったニアにとって、アイザックの発言は青天の霹靂にも等しいものだった。
「なっ……アイザック様! ミスラは帰還種です。それでは我々の目的が――」
「知らぬッ! 大願成就のためには、その程度の犠牲はいとわぬ! これは千載一遇の好機なのだッ!」
「アイザック様ッ――」
一方的に通信を切ったアイザックは、そのままウィアマリスのインターフェースを展開、艦載砲の発射シークエンスに入った。
「この一撃が、地上制圧への足掛かりとなるのだァァァッ!!」
ミスラを乗せた戦闘艇へと、砲塔が向けられる。
ニアが選ぶのは、友の命か種の未来。
しかし、天秤の針はどちらにも傾くことはなかった。
アイザックの怒りを代弁するかのように、ウィアマリスの砲塔が唸りをあげる。
アプス大地溝帯に広がる廃墟の中を駆ける戦闘艇は、レーザーを巧みに回避していく。
いつまでも攻撃が当たらないことに苛立ちを隠そうともせず、アイザックはコンソールを叩く腕に力を入れる。
「クカカ、中々やるようだが、所詮は無駄なあがき!大人しく沈めッ!!」
シールドを展開しながら爆進するウィアマリスは、立ち並ぶ廃墟をものともせずに蹴散らしていく。
「おやめください、アイザック様、帰還種を殺してしまえば――」
「たわけッ! 真人の王子はここで叩き潰すッ!その機会をみすみす逃すなどあり得ぬッ!!」
ニアはウィアマリスの火器管制システムを展開し、その場でできる限りの細工を施していく。
(今更この状況を止めるのは難しい……せめて、ミスラの乗る船が撃墜を回避さえできれば……)
出力を抑え、狙いをわずかにずらしてしまえばいい。
そうすれば、わずかでも友の命を守れると信じて。
(こんなところで、貴女を失いたくない……!)
一方、アイザックは戦闘艇をあぶりだすため、全エネルギーを放出せんと艦載砲の一斉掃射を敢行する。
狙いもろくに定めない無差別なレーザーが降り注ぎ、廃墟は見る影もなく崩れ去っていく。
やがて粉塵の中から浮かび上がる戦闘艇の影。
隠れる場所もなくなった標的へ、この瞬間を待っていたと言わんばかりにアイザックは叫んだ。
「滅びるがいい! ソロ・モーニアァァッ!!」
「……ミスラ……」
ウィアマリスの主砲が、狙いを定める。
(お願い、間に合って……!)
一縷の望みをかけ、ニアは最後のコードを入力する。
それと同時に、主砲が火を吹いた。
大地溝帯を揺らすほどの衝撃が駆け抜ける。瞬く間に周囲の地形は、元の形も分からないほどに根こそぎえぐり取られてしまった。
「クカカカカ!! 討ち取ってやったぞ!! このアイザックがなぁ!!」
主砲が通った後には、何も残されてはいない。
その光景を勝利と確信したアイザックは、喜びに打ち震えながら喝采の声をあげる。
――画面に表示されている反応があるとも知らずに。
それは、遥か上空にあった。
何事もなかったかのように悠然と。
あたかも初めからそこにいたかのように。
きっと、自分が細工をするまでもなく、彼女はこの未来を描いていたのだろう。
そう感じたニアは、自然と家族の顔を思い浮かべた。
「――ふっ」
笑みがこぼれたニアの胸中に、諦めとも羨望ともつかぬ感情がこみ上げる。その視線はただ、空を舞う少女へと注がれていた。
「ああ、貴女は……そうやっていとも簡単に……、私を飛び越えてしまうのね……」
一瞬の煌めきが瞬いた直後、ウィアマリスを激しい衝撃が襲った。そして、それに呼応するかのように内部からは爆発がまき起こり――
ニアは意識が途切れる間際に、パネルを小さく操作する。
それが合図であったかのように、ニアの意識はぷつりと途絶えた。
ソロとミスラが放った攻撃によって、動力部を損傷したウィアマリスは、制御もままならずに地表へと墜落した。
爆発は収まったが、機体はもはや使い物にならないほどに至る所がひしゃげ、砕け散っている。
その時、辛うじて原型を留めていた装甲が、内側から勢いよく弾け飛んだ。
その中からゆっくりと姿を現したのは、所々身体のパーツが煤(すす)けているアイザックと、その4本の腕でしっかりと抱き抱えられたニアだった。
爆発を免れていたのか、その身体には傷ひとつない。
意識が途切れる瞬間、ニアは緊急用の防護システムを起動させていたからだ。
アイザックはそのままウィアマリスの残骸を蹴って地面に降り立つと、意識のないニアを柔らかい砂地に横たえる。
生存を確認すると、アイザックは空を見上げた。
雲ひとつない空に、わずかに見える黒い影。
その先にあるのは、もはや肉眼では捉えられないくらいに小さくなった戦闘艇だった。
「おのれ……これで終わったと、努々(ゆめゆめ)思うな……」
執念に燃えるアイザックの言葉を、ニアはまどろむ意識の中で聞く。
「――アイ……ザック、様…………」
「じきにアンシャールとマードゥクがやって来る。それまでの辛抱だ、ニア・ユーディット」
それだけを告げると、アイザックは踵を返し、戦闘艇が向かった方角へと歩を進める。
ニアには、そんなアイザックがとても人間らしく思えた。
――
――――
「――う、ここ……はッ、ぐぅっ……」
「ニア、まだ動くんじゃねえ」
身体に走る痛みに呻き、ニアは意識を取り戻す。
何故ここに貴方たちが? という表情をしていたせいか、アンシャールは簡潔に経緯を説明してくれた。
アイザックから連絡を受けたアンシャールたちは、急いでニアの救助に駆けつけたと言う。
肝心のアイザックは、既に真人たちを追って北へ向かったとのことだった。
「そう、だったの……ありがとう。私たちも、すぐにアイザック様の後を……うっ……」
「おい、まだ安静にしてろ。下手に動いて悪化したら元も子もねぇだろうが」
身体を起こそうとするニアを制止し、マードゥクは鉄くずになったウィアマリスに目を向けた。
「にしても……何があったんだ、これ?」
「ウィアマリスを破壊できるものなど、そうそういるものではない。となれば、自ずと見えてくる」
「アニキー、俺にも分かるように教えてくれよ」
ニアは朧気ながら記憶をたぐり寄せる。
ミスラの音素兵器に穿たれる前に、もうひとつ、別の光が瞬いていたことを。
「どうして真人が……音素兵器を……」
「ニア、どうかしたか?」
「いえ、なんでもありません。それより、私たちもアイザック様の下へ向かいましょう」
「やめとけって。一度帰ってちゃんと看てもらった方がいいぜ?」
「いいえ、これぐらい……私のことより、ミスラと、あの真人を……追わ、なくては――」
「やれやれだな。マードゥク、頼んだぞ」
「あいよ」
爆発を受けた後遺症で体温の調整が上手くいっていなかったニアは、痛みに耐えられずに再び意識を失った。
まどろむ意識の中で、真人の少年の顔がよぎる。
――ソロ・モーニア。
彼がミスラを騙して何をしようとしているのかは、まだ分からない。
だが、ニアには確信めいた予感があった。
いつかソロは、自分たちの道を阻むと。
そう、だからこそ――
「私の世界に、貴方はいらない」
ニアを連れて帰投したマードゥクとアンシャールは、ペルセスコロニーがどこか物々しい気配に包まれていることに気付く。
駆け足気味で動き回る兵たちに、アンシャールが何か察したのを見て、マードゥクは神妙な面持ちで語りかける。
「いよいよだな、アニキ」
「ああ、より一層気を引き締めなければな」
それから数時間後。
治療を終えて目を覚ましたニアを待っていたのは、真人の部隊が防衛網近辺の基地に集まりつつあるという報せだった。
意識を失っている間に状況が進んでいたことに驚き、ニアは急ぎ司令部のエヴァを訪ねてこれまでの経緯を報告する。
「その件については既に聞き及んでいます。離反者ミスラとその仲間は、アイザックに一任しました。今は来たる日に備えて防備を固めるのです」
「ですが――」
エヴァは穏やかな手つきでニアの言葉を遮った。
「報告によれば、真人は3体。その程度では大局は揺るぎません」
「……くっ」
それ以上の話は意味をなさない。
そう結論づけたニアは、司令部を後にした。
すると、通路にはアンシャールとにやけ顔のマードゥクが待ち構えていた。
ニアは嘆息すると、若干の苛立ちをこめながら問う。
「……何かしら?」
「シシ、わっかり易い顔してるぜ……なぁアニキ!」
「フッ……」
「そんなこと、言われるまでもありませんっ!」
「わりぃわりぃ、で、どうするんだ?」
マードゥクは焚きつけるように問いかける。
その表情は、もう答えなど分かっているとでも言いたげな顔つきだった。
「当然、離反者は保護します。その上で、共に行動している真人たちは始末する。ただそれだけのことです」
「ハッ、そうこなくっちゃなぁ!」
「元より我らは遊撃軍。ならば――」
マードゥクとアンシャールは、互いの拳を突き合わせ気合を入れる。
ニアも同調するように2人に視線を送り、首肯した。
(ミスラ、待っていて。貴女が望む世界は、私が作ってあげるから。フフ、フフフ――)
ニアの口元がゆっくりと弧を描く。
遠い地にいる少女へと、想いを馳せるように。
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
152022年08月08日 11:49 ID:i454zv54帰還種ってレナもミスラもチート武器持ってるみたいだけどもしかしてこの子は左手にある十字架っぽいやつが武器だったりするのかな
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92022年04月10日 08:12 ID:f1u5qzs5よく見るとレオタ見せ衣装…ほう、大したものですね…
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82022年04月07日 18:56 ID:qhhxryypトランスフォームこんな感じでした
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チュウニズムな名無し