華夜の祭礼・ストーリー
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目次 (華夜の祭礼・ストーリー)
極楽
序章ー極楽
赤い柵が建物の中の人をさえぎっている。土瓶蒸しが杯をあげる。酒を飲んだために、彼の顔が淡い赤になった。彼は軽く杯を振って眉を担ぎ、窓辺に座って満開の桜を眺めている純米大吟醸を見た。
土瓶蒸し「大吟醸、他の人たちがあんさんが前より元気になったと言ってはりましたよ?」
純米大吟醸「ほう?そう見えるでありんすか?」
土瓶蒸し「昔のあんさんなら、そのような顔は絶対しない。」
純米大吟醸「そうでありんすか……」
土瓶蒸し「そういえば、あの小さな飼い魚はどこにいはるんですか?」
純米大吟醸「たぶんまたあちきの影に潜んでいるでありんしょう~」
土瓶蒸し「まあ、あんさんは飲み続けていてください。私はお姫様のところへまだ用事があるから、お先に失礼。」
純米大吟醸「オヤオヤ、そこまで姫様のことに関心があるなら、あちきの嫉妬心が起こるかもしりんせんよ~」
土瓶蒸し「私のために嫉妬してくれるなら、結構嬉しいですね。」
純米大吟醸「フン、一寸逃れだけは上手でありんすね。」
土瓶蒸しが離れた。窓辺に座っている純米大吟醸は窓辺から離れない。彼は静かな空をじっと見て恍惚になった。
純米大吟醸「……前より……元気か……ふぅー……。」
これは遥か遥か昔のこと。あの時の人類は、まだ知らなかった。彼らが近い将来「魑魅魍魎」に支配され、日常の安寧を失うことを。
あの頃の純米大吟醸は、まだ何もせずに時を過ごしている「極楽」の店主。
あの日目の前に浮かんだ月は、ずっと前から人間の世界から消えていて、不老不死の「妖怪」たちの記憶の中にしか存在しなかった。
純米大吟醸(アラ…………夢か……)
草履を履いた子供たちは倒れている人を容赦なく蹴っていた。
あの人の体は汚くて、じめじめしている。普段なら、純米大吟醸は決して彼のそばに近寄らない。しかしあの闇に煌めく瞳は純米大吟醸の好奇心を起こした。
純米大吟醸「おい?ぬしたちよ、何をしている?」
きれいな声がすぐ子どもたちの行動を止めた。彼らは振り返って、後ろにいた優しい月光に染まる青年を見る。
鯖の一夜干し「ウウ……」
純米大吟醸「ねえ、あちきとちょっと取引をしないかい?この飴とこの人を交換したいのだけど……」
子どもたちは飴を見ると、少し迷った後すぐ自分の「おもちゃ」を放した。飴を取り、逃げる様子はまるで純米大吟醸が後悔することを怯えているみたい。
純米大吟醸は青年の前でしゃがんで、指を伸ばして彼の頬を突いた。
純米大吟醸「人間にとって、ぬしは「妖怪」のような存在でしょう。どうしてそこまで子どもたちにいじめられたでありんすか。」
鯖の一夜干し「ウ――ゴホ――」
純米大吟醸「……怪我が酷すぎて、もうすぐ死ぬでありんすよ。」
鯖の一夜干し「助けて……お願い……」
純米大吟醸「所詮つまらない世界、なぜまだ生きたいのでありんすか?」
鯖の一夜干し「……フ……ゴホ……助けて……お願い……」
純米大吟醸「もしかして、頑張ったら何か面白いことがあると思っているでありんすか?或いは他の理由がありんす?教えてくれれば、助けてあげられるかもしれないでありんすよ。」
鯖の一夜干し「頑張れば……外に……何があるかわかる。頑張れば……いいことが……」
純米大吟醸「……」
答えを聞いた純米大吟醸が少し驚いた。
歌舞伎町の変わらない生活はいつも彼を張り合いのない気持ちにする。あの嘘に騙され続けた女も、あの男の言葉で彼を信用しなくなった。
長い間、純米大吟醸は面白くないと感じていた。まるで自分が空っぽの殻にすぎないかのように、機械的で起伏のない日々を過ごしていた。
この目の前の、狼狽している男の顔には傷口と散乱した髪しか見えない。しかし彼の瞳から、純米大吟醸が見たことのない光が見えた。歌舞伎町に住んでいる人間の目からは見たことのない光だ。
純米大吟醸(きれい……)
純米大吟醸「……それなら、頑張りなんし。もし最後まで頑張れたら、是非あちきにいいことがあるか否か教えてくんなまし~」
鯖の一夜干し「大吟醸様!大吟醸様!もう朝ですから、窓辺で寝ないで起きてください。」
純米大吟醸が自分の記憶から呼び起こされた。彼がじっとして鯖の一夜干しを見る。この遠い昔のことはほとんど彼の記憶の底に封じられていた。
純米大吟醸にとって、この記憶は大した記憶ではない。この後、彼は自分の霊力で救ったこの食霊の姿さえ忘れていた。
鯖の一夜干し「大吟醸様?」
純米大吟醸は鯖の一夜干しの顔をジロジロ見ると、あの煌めく瞳を思い出した。
鯖の一夜干し「……大吟醸?どうしましたか?」
純米大吟醸「鯖、今日は何かいいことがあったんでありんすか?」
第一章ー飲み仲間
大吟醸の飲み仲間か?、或いは旧友か?
夜の桜はそよ風に従ってぐるぐる回って杯の中で淡く波瀾を揺り起こす。繊細な指先が杯の底を軽く触る動きと派手な外観がはっきりと異なっている。その姿は意外にも幾分のんびりしている感じがある。
口元に沿って流れるお酒は鎖骨で少し止まって、幾重の華衣に流れると一本の清く浅い跡を残した。
桜のような美青年が桜の木に寄りかかるが、桜の花に自分の美しさを遮られてはいない。彼が微かに顔を上げる。目付きはほろ酔いしたような感じがある。
突然、影から誰かの姿が現れる。
鯖の一夜干し「月が見えました。」
純米大吟醸「……うん?」
若い忍びは青年の落ちたガウンを引き直す。そして、前の言葉を冷静に繰り返す。
鯖の一夜干し「月が見えました。」
純米大吟醸「来たからにはここまで来なんし。一人で飲む酒は少しつまらないでありんす~」
青年のそばに立つ鯖の一夜干しはいつものように迅速に命令を実行しなかった。彼は眉をひそめている。いつも変わらない表情はいつになく、明らかに嫌を示している。
純米大吟醸「……鯖?」
純米大吟醸「フフ、どうしてそんな顔を?」
純米大吟醸の突いてきた指を避け、鯖の一夜干しは酒瓶を取って大吟醸の杯に酒を注ぐ。
鯖の一夜干し「あの人は、危ない。」
純米大吟醸「フン~」
鯖の一夜干し「……彼と私達は長い間付き合っていますが、彼は自分の目的を少しも漏らしたことがありません。私達は本当に彼と協力し続けるのですか?」
純米大吟醸「目的など……本当に重要なものでありんすか?」
鯖の一夜干し「……しかし……」
純米大吟醸「このくだらない鏡の世界を面白くしてさえくれるなら、これくらいの危険は安い代償でありんす。」
月見団子「そして、君も大吟醸をそばで支えているのでしょう。」
穏やかな微笑む声が二人の後ろから響いた。危険に気づいた鯖の一夜干しがその瞬間、緊張した。純米大吟醸も鯖の一夜干しの姿を見ると笑った。
純米大吟醸「そうでありんすよ、ぬしがあちきのそばにいるから……ええ!なぜ走るか……」
月見団子「彼は恥ずかしがり屋さんです。からかうのはやっぱりやめましょうよ。」
純米大吟醸「からかったのはあちきだけではないでありんしょう。アラ、それは何でありんす?」
いつも何も持たない月見団子は、今回小さいとっくりを持って来た。酒を嗜む人なら、遠い距離でもその芳醇を嗅ぎつけることができる。
月見団子「今回は僕が奢る番だ。さもないとあの人魚ちゃんから文句が出るよ。」
純米大吟醸はさっきのだらだらした様子から一転し、すぐ月見団子の隣に行った。彼が酒の香りを嗅いだ際に、さっきの酔いが消えた。そして目は夜の灯火のように明るくなった。
純米大吟醸「これはこれは、どこから手に入れたか?あちきでもこのような珍品あまり見たことないでありんす。」
月見団子は純米大吟醸にとっくりを渡す。青年がとっくりを抱いて顔をもふもふとほころばせている姿は、まるで天に登る極楽にいるような様子だ。
月見団子「八岐さんのところで手に入れたやつです。彼の島でいい酒がいっぱいできたのだけど、彼があまり好きではない。だから持って来た。」
純米大吟醸「彼のところにある物は確かすべて祭式用具でありんす。ぬしは神様を怒らせて業果を受けるのが怖くないのでありんすか?」
月見団子は純米大吟醸の皮肉に返事せず、ただ酒杯に酒を注ぐ。酒杯の中に真っ暗の空が映っている。目をつぶって、口元を笑わせている彼の表情はますます他の人が読み取れない寒さを混じえている。
純米大吟醸は月見団子の手元の酒杯を奪う。冴える酒が青年の口に流れる。そして口から溢れ出た酒も青年の華服で拭われた。純米大吟醸の笑いが恣意的に、艶かしくなる。まるで地獄の束縛を振りほどいた悪鬼みたい。
純米大吟醸「業果?誰の?あのおかしな神様かい?奴は最初からあちきに天罰を与えていたでありんしょう?」
第二章-夜の話
夜桜の下の囁き。
厚い雲は空を遮る。雲の移動とともに、空もますます暗くなる。
鯖の一夜干しは嫌な顔で歩き、顔が少しふわふわ、ニコニコしている月見団子を見送った。
月見団子「では、人魚ちゃん、また会いましょう。」
鯖の一夜干し「……」
月見団子「その表情全く変わりませんねぇ、そこまで私のことが嫌いですか?一応当時の君を正しい道へ導いてあげたでしょう。」
振り返って「極楽」に戻った鯖の一夜干しを見て、月見団子は「やれやれ」と首を横に振って去っていく。
店に戻った鯖の一夜干しは物憂げに赤い柵に俯せて、行きかう人の流れを眺める。純米大吟醸が上機嫌であの人たちに手を振っている。この様子を見た鯖の一夜干しは仕方なくため息をついた。
鯖の一夜干し「今は、まだ陽射しがある。」
純米大吟醸「鯖、ほら、もうこんな時間だけど、どうしてこんなに人が少ないでありんす……」
今は暮方の頃、空も暗くなっている。本来は客たちが店に集まって賑やかな時間のはずが、人が極めて少ない。
鯖の一夜干し「「百鬼夜行」が始まってから、人間のお客様の数が減ってしまいました。」
純米大吟醸「何だい?お客様が減少するとあちきと一緒に暮らせなくなることを恐れているでありんす?」
既に純米大吟醸の皮肉に慣れた鯖の一夜干しはまた一瞬ぼーっとしていたが、すぐ冷静さを取り戻した。彼は外の人を見ると眉をひそめた。
鯖の一夜干し「ただ……一つだけのことが理解不能。」
純米大吟醸「何のことでありんすか?」
鯖の一夜干し「「極楽」の経営が影響を受けても、彼との協力を続けていることについて、本当に意図がわかりません。」
純米大吟醸「おい……鯖……」
鯖の一夜干し「うん?」
純米大吟醸「質問がありんすが、正直に答えておくんなんし~」
純米大吟醸の体はまだ柵に寄り掛かっている。ほろ酔いして笑っている。誰も彼の媚びるような目つきを拒めない。
鯖の一夜干し(……僕が質問しているでしょう……)
鯖の一夜干し「……うん。」
純米大吟醸が仰向けになって、雲に遮られる暗い空を見る。しかし今の真面目な態度は、鯖の一夜干しが見たことがなかったものだ。
純米大吟醸「鯖よ、もしあちきが空の雲が欲しくなったら、ぬしは取ってくれるかい?」
鯖の一夜干し「…………これは……」
純米大吟醸「くれる?」
鯖の一夜干し「……はい。」
色好い返事をもらった。純米大吟醸は飴をもらった子どものように嬉しくなると、首を傾げてそばにいる鯖の一夜干しを見る。
純米大吟醸「じゃ……もしある日、あちきがこの「金魚鉢」を壊したら……」
鯖の一夜干し「……たくさん人が死にます……」
純米大吟醸「そうそう、たくさん人が死ぬ。では、ぬしはあちきを助けてくれるかい?」
鯖の一夜干し「……本当に、ご希望ですか?」
純米大吟醸「うん、これはあちきが、今最もやりたいことだ。」
鯖の一夜干し「では、代償に問わず、僕は大吟醸の望みを叶えます。」
純米大吟醸は自分の前に膝をついている鯖の一夜干しを見ると、珍しくぼーっとしていた。また急に笑い声が出る。
純米大吟醸「ハハハ――」
鯖の一夜干し「……?」
鯖の一夜干しは純米大吟醸が笑っている理由がわからなかったが、それでも彼を引っ張ってあげる。
立ち上がる力がない純米大吟醸はよろよろした後、しっかり立った。手元のキセルで鯖の一夜干しのあごを軽く持ち上げる。この一つ笑いもない真面目な顔、鯖の一夜干しでも慣れない。
純米大吟醸「鯖よ……時々、あちきでもぬしのことを読み取れなくなる。」
純米大吟醸「大吟醸の要求なら、全部従います。」
純米大吟醸「ぬしはあちきの最も忠誠心のある刀だ。しかしその忠誠心は、いつまで続くか?」
第三章-酔い醒め
半分夢、半分覚め。
また夜だ。町の灯の光が暗い空を赤く染めてしまった。
この「極楽」に出入りする者たちの影は、一般人のようではない。ある物はくつろいでしっぽを揺する。ある物は蠕動の触手を招く。最も普通に見える者は、何歩か歩いた後、自分の長い髪の上に座って、地面から飛んで去った。
鯖の一夜干しは純米大吟醸の影からゆっくり姿を現わす。一緒に姿を現わしたもう一つの物は、匂いが変な迎え酒だ。
この迎え酒の匂いを嗅いだ瞬間、純米大吟醸の本来の得意げな表情が可哀そうになった。
彼は自分の長所を生かすのが得意な男だ。
ただ……一部の人にはあまり効かない。
鯖の一夜干し「迎え酒でございます。」
純米大吟醸「…………グェ――気持ち悪い!飲みたくないでありんす。」
鯖の一夜干し「大吟醸が召し上がらないから、ご気分が悪くなったのでございます。」
純米大吟醸「ぬしはあちきの酒量を信じないのか?」
鯖の一夜干し「いいえ、しかしあそこの方々の量も浅いものでございません。」
純米大吟醸「…………鯖、これは月見が教えてくれたものか?」
鯖の一夜干し「あなたが言ったのです。もう少し彼に習ってもらいたいものです。いつまでもそんなに無口でいないでください。早く飲んでください、もうすぐ冷めますから。」
純米大吟醸「飲まぬ――グ――!!!」
やっと大吟醸にあの匂いが変な迎え酒を飲ませられた。鯖の一夜干しはほっとした。彼は机の上に悪酔いして暴れたりしている純米大吟醸を無視して、散乱した酒杯を片付ける。
純米大吟醸「ぬしのココロは全然痛くないのか!あちきはぬしらのためにここまで働いたために、このように力尽きたのに!」
鯖の一夜干し「人をからかう回数を減らせば、大変楽になると考えます。」
純米大吟醸「フン……あんな奴ら、誰でも面倒くさい。神社と八岐はともかく、あの輝夜姫を守るクソうさぎのことも厄介だ。」
鯖の一夜干しはうさぎの折り紙を碁盤に置いた。隣にはまだ何匹ものかわいい動物の折り紙がある。
鯖の一夜干し「僕に任せてもいいのに。」
純米大吟醸「あちきの目的はあ奴らを殲滅することではない。そしてそうするなら、全然面白くない。」
鯖の一夜干し「……」
純米大吟醸「ハハハハ!!!その顔!」
鯖の一夜干し「面白くなる代償が大吟醸の身の安全なら、高すぎです。」
純米大吟醸「けど、充分な混乱がなければ、この「金魚鉢」を壊すことができぬ。」
鯖の一夜干し「……」
純米大吟醸はあまり鯖の一夜干しの暗黙を気にしなかった。彼はゆっくりと立ち上がって、窓のそばに行って、真っ暗な空を見上げている。
純米大吟醸「そうでありんすね……輝夜姫はもうあちきと離れて久しい。いよいよ彼女をこの空に帰らせる。」
第四章ー刃の光
振るう刃、冷たい光。
酒のお陰かもしれない、純米大吟醸が珍しく未明の前に寝てしまった。部屋を出た鯖の一夜干しは扉を閉めてすぐに、武器を握って後ろの招かれざる客を襲う。だが相手が彼の攻撃を止めた。
鯖の一夜干し「……どうしてまだここにいる?」
月見団子「突然用事を思い出したから戻りました。しかしお二人は何かを相談していたみたい……」
鯖の一夜干し「どれくらい聞こえた?」
月見団子「鯖さんは僕がどれくらい聞いたと思います?」
鯖の一夜干し「……」
月見団子「人魚ちゃん、どうしていつも僕にそんな不機嫌な顔を見せるんですか?いつ君を怒らせることをしましたか?それなら、僕が謝り~」
鯖の一夜干し「そこまで強い実力を身につけたのに、なぜ弱い姿で偽装して他の人に守られることを求める?」
月見団子「誰かに守ってもらいたいなんて、私言ったことないですよね。」
鯖の一夜干し「……」
鯖の一夜干しは自分の武器を取りに戻った。そして冷たい視線で目の前のいつも穏やかな微笑みをする男を見ている。
鯖の一夜干しはずっと、月見団子に初めて会った日のことを覚えている。あの頃の、謎の感情と打診のため、自身の不安が鋭い攻撃になる。
当たったら、致命的でないにしても、確実に酷い怪我になる。
鯖の一夜干し(!!!)
月見団子「久しぶりですね。やはり君は強い。」
鯖の一夜干し「……どうやって避けた?」
月見団子「運がいいだけです。」
鯖の一夜干し「一体何をするつもりだ?」
月見団子「私が何をしたいではなく、君らは何をしたい、だ。僕が君らを助けてあげるでしょうね。」
そして次何回と試したが、鯖の一夜干し自慢の奇襲は全部無駄になった。
そしてこのような斬り合いは、鯖の一夜干しが月見団子を憚る原因になる。
鯖の一夜干し「「極楽」は準備中だから、帰ってくれ。」
月見団子「わかりました。しかし大吟醸に一つの言伝をお願いします。」
鯖の一夜干し「……?」
月見団子「僕の望みは、あの明るい月だけだ。」
鯖の一夜干し「…………明るい月?」
月見団子「大吟醸は知っているよ。」
これまでとは違い、月見団子は鯖の一夜干しをからかわないまま去っていった。鯖の一夜干しは彼の後ろ影を見ながらさっきの言葉の意味を考える。しかし最後まで結論が出なかった。
部屋に戻ってみると、眠っていたはずの純米大吟醸がゆっくりとテーブルのそばに座っていて、歌舞伎町の子供たちの間で流行っている本を読んでいた。
純米大吟醸「むかしむかし、月という名の巫女がいました。」
鯖の一夜干し「……月ですか?」
純米大吟醸「月は山で隠居生活をしていました。ある日突然、世界は赤い炎にのみ込まれ、月は命を捧げて衆生を救ってくれました。巫女の死に神は激怒し、生き物全員に有罪の審判を下し、罪を犯した人々を永遠に離れられない無間地獄に閉じ込めました。」
鯖の一夜干し「……」
純米大吟醸「今は……月を見たことがない人も多いでありんしょう。鯖、ぬしもまた月を見たいか?」
第五章ー初見
初見の頃。
体が痛い、そして温度も耐えにくい。
鯖の一夜干しはまだ覚えている。自分はまだあの乱戦の中にいる。だが今は昔の頃に戻った。
彼がまだ人類に「人魚」や「妖怪」など呼ばれていた頃。あの空にいる耀かしい丸いものを何度か見たことがある。
彼はここから離れたい。この抑圧された場所から離れ、より広い海に行きたい。
けど、この大陸は落ちた月に呪われた。伝説によると月がない夜は、誰もここから離れない。
また月が登る夜だ。また大きな波にさらわれて陸に帰ってきた。霊力が限界になった。彼を見つけた子どもたちも嫌悪感のために彼を殴る。
彼は災難の象徴である「人魚」だ。
鯖の一夜干し(僕は……まだ死んでは……いけない……)
突然、誰かが月の光を踏んで来た。その目はきれいだが、あまり光がない。
鯖の一夜干し(……助……けて……)
自分の呼びかけが聞こえたのか、その人はゆっくりとゆっくりと自分の前に来て、そっとしゃがんだ。
鯖の一夜干しは目の前の人を見る。この美しい青年が何を言っているのかはっきり聞こえなかった。しかし青年の体から同じ「化け物」の気配を感じた。そのため鯖の一夜干しは震えながら手を伸ばす。
鯖の一夜干し「助けて……お願い……」
純米大吟醸「所詮つまらない世界、なぜまだ生きたいのでありんすか?」
青年が無慈悲な台詞を言う。けど鯖の一夜干しはこの言葉から彼の微妙な気持ちが聞こえた。
彼は本当にこの世界は何も面白くないと思っているのだ。
純米大吟醸「もしかして、頑張ったら何か面白いことがあると思っているでありんすか?或いは他の理由がありんす?教えてくれれば、助けてあげられるかもしれないでありんすよ。」
なぜか、このような目に直面して、鯖の一夜干しは初めて本音を吐いた。
鯖の一夜干し「頑張れば……外に……何があるかわかる。頑張れば……いいことが……」
その青年は長い間何も喋らなかった。鯖の一夜干しは彼が去ったと思った。急にあのきれいな声が再び聞こえた。彼がもう一度顔を上げると、もともとは何の輝きもなかった目が驚くほど光を現した。
純米大吟醸(きれい……)
純米大吟醸「……それなら、頑張りなんし。もし最後まで頑張れたら、是非あちきにいいことがあるか否か教えてくんなまし~」
指先から暖かい力が自分の体に伝わる。崩れそうな霊体も霊力回復のお陰で少し戻った。鯖の一夜干しはやっと立ち上がる力を身につけた。顔を上げてあの自分を救ってくれた人を見たい。しかしもう目の前には、明るくないが、光のやさしい月しかない。
それからずいぶん経った、あの月が急に空から落ちた。二度と現れなかった。鯖の一夜干しも自分の目標を失った。
彼はあてもなく歩いている。突然、あの青年の目を思い出した。
鯖の一夜干し(彼は……どうなったか……)
どうして歌舞伎町に来たのか鯖の一夜干しはわからない。ただいつの間にか歌舞伎町に来ていた。ここでは人間でも「妖怪」でも、ほのかなおしろいの匂いを帯びた柔らかな肢体が情熱的に湧き上がり、濃厚な香気が酒の濃さを混ぜている。全てがこの少し涼しい夜に得体の知れない焦りを与えている。
急に、夜の桜を挟んでいる風がこの来い香りを吹き散らした。声がこの刻に全て止まった。
赤い階段を降りている人は、あの青年だ。鯖の一夜干しが彼の姿をじろじろ見ている。
……彼は、一体何に出会ったのか?今の姿はあの夜の月のように耀かしいが、あの頃よりもっと寂しい。
月見団子「どうです?私は間違っていないでしょう。あの日海から戻った後、彼はまるで別人になった。「人魚」さん?」
鯖の一夜干しは夢から覚めた。体の傷口もさっきの激しい動きのせいで引き裂かれた。痛みのせいか、或いは夢に現れるあの笑顔のせいかわからないが、たくさん生汗が出た。
よく考えれば、歌舞伎町に来たのも、月見団子が村に突然現れた男こそ新たな歌舞伎町の花魁だと言ったからだ。
純米大吟醸に会った後、彼に過去の自分が望んだことを言った。話を聞いた純米大吟醸はこの少し怖い計画を決めた……
自分の意志で純米大吟醸を支えているが、この図られた感じのため、月見団子に対して、鯖の一夜干しは警戒心を持っている。
月見団子「あ、起きましたか?傷はまだ治っていません。そんなに興奮しないでください。」
第六章ー怪我
体の傷口は勲章ですか?
月見団子「まあ、酷すぎる怪我ではない。人間じゃないんだから、二、三日休めば治る。」
鯖の一夜干しは隣の男を警戒しながら、彼の笑顔を見ると、何回か後ろの武器を持ち出したくなった。
月見団子「人魚ちゃん、怪我はまだ治っていないんだから、興奮しないでください。」
鯖の一夜干し「っチ――」
月見団子「ほら、傷口がまた開いた。でも目が覚めたら、大したことはないはずです。」
純米大吟醸「ご迷惑おかけして申し訳ないでありんすね。」
月見団子「どういたしまして。しかし私がここにいたら、彼はちゃんと休まないと思います。では、失礼。」
純米大吟醸「うん、今度酒を奢る。」
純米大吟醸は月見団子を見送った。今の彼の顔は珍しく強張っている、さらに少し怒っているみたい。」
でも次の一秒で、いつもの笑顔に戻った。そのまま鯖の一夜干しを見るが、目に楽しさが見えない。
鯖の一夜干し「……大、大吟醸……?」
純米大吟醸「うん?」
鯖の一夜干し「……あの……怒ってますか?」
純米大吟醸「今は非常に大変がっつり怒っている。」
鯖の一夜干し「……」
鯖の一夜干しは言葉で自分の気持ちを表すことが苦手、純米大吟醸の話を聞いたら、さらに何を言うべきかわからない。
大吟醸は小さな卓と清酒を運んできた。彼は酒杯を鯖の一夜干しの手元に置く。そのニコニコしている様子を見て、鯖の一夜干しは再び生汗が出た。
鯖の一夜干し「僕……」
純米大吟醸「ぬしはあちきのためなら何でもしてくれると言ったでありんしょう。では、この酒を飲みなんし~」
鯖の一夜干し「……グ。」
辛い酒が鯖の一夜干しの喉に流れた、お酒に弱い彼は死ぬほど苦しんでいた。
純米大吟醸「どうしたでありんす?あの頃は侍従としてあちきのそばで支えたいと言っていたでありんしょう。」
鯖の一夜干し「……」
純米大吟醸「ではなぜそんなに死に急ぐ?後悔したでありんすか?」
鯖の一夜干し「そのような考えはございません!ゴホゴホゴホ……」
純米大吟醸「止まるな、飲み続けて~」
鯖の一夜干し「……」
鯖の一夜干しは酒を飲み干した。酔いの調子が乗った彼は立ち上がった大吟醸を引き留める。
鯖の一夜干し「ち……違う……」
大吟醸は不機嫌な顔して、ゆっくりと鯖の一夜干しの前にしゃがみ込んで、彼の顔を力いっぱい押さえつける。
純米大吟醸「あちきが欲しいのは、これくらいのことのために自分の命を賭ける愚か者ではなく、あちきのそばに立って、一緒にもっと面白い世界を見てくれる奴だ。こんなことがまた起こるようなら、あの冷たい海に戻りんしょう。」
鯖の一夜干し「僕……」
純米大吟醸「覚えてくんなまし、ぬしはあちきの人だ。死ぬ時でも、あちきのそばで死ぬことしか許さない。こんな小さなことで、ぬしが消えることは決して許さない。」
鯖の一夜干し「……はい!」
第七章ー忠誠心
理解できない忠誠と信頼。
赤い月がなくとも、空は妖しい力で紅葉のような鮮やかな赤色に染まる。夜桜も淡い紅色に輝いている。
人間たちは扉の後ろに隠れる。やんちゃな子でも自分の親に目と口を遮られて、静かにさせられる。
灯の影が重ねられ、下駄が地面を叩き、さくさくとした音を鳴らしている。気品高い神輿から降りた人の袴が長い。そして狐の尾が見える。
全ての人、或いは「妖怪」は華麗な仮面を被っている。
全員異物、筆頭無し、それは強い者が勝者であるため。
強い力を身につける異物たちは人類のように知恵と計略で互いを排斥し合う必要がない。ここでの尊さはただ一つ、力だ。
勝利すると、次の「夜行」までこの主のいない土地を支配できる。
異物こそ、自分の欲望を隠す必要がない。
鯖の一夜干しも自分の「人魚」仮面を被って乱戦に参加した。規定によって、仮面を被らない人を襲うことは禁止されている。
純米大吟醸はゆっくりと酒を池に注ぐ。そして現れた波紋を観察する。
月見団子「彼一人で行かせるなんて、本当に大丈夫ですか?」
純米大吟醸「ぬしもあの小僧一人で行かせたでありんしょう。」
月見団子「明太子の生命力は強い、そして雲丹も見守っている。しかし……あの人魚ちゃんがこの乱戦で死んでも、あの計画はまだ続けますか?」
純米大吟醸「あちきは、ありえないことあまり考えたくないでありんすから。」
月見団子「ホオ?そんなに自信をお持ちですか?」
純米大吟醸「あちきのそばにいたいなら、こんな小さなことでは死なないでありんしょう。」
月見団子「小さなこと?……これさえ小さいことなのですね。まだ何か大きなことがあるのですか?」
純米大吟醸「今のこの金魚鉢の中では、見えない会えないなんて当たり前でありんしょう。小さな金魚鉢では、大きなことがないのは当然でありんす。」
月見団子「あなたはいつも私に何を求めていますか?、また……お二人は他人に何を求めていますか?」
特殊な「鰭(ひれ)」で戦場の影、土、壁の中を通り抜ける鯖の一夜干しの姿を純米大吟醸が見ると、手元の酒杯を持ち上げる。この酒杯は精巧であるものの、杯の底に一尾の小さな黒い魚が彫られている。その魚は酒を注がなければ見えない。
純米大吟醸「それは重要なことでありんすか?あ奴はあちきに忠誠を誓う、あちきはあ奴のことを信じる。あちきらの望みは、もっと面白い世界にすぎない。」
月見団子は珍しくあっけにとられていた。手元の酒杯を置いて、疑惑的に純米大吟醸に尋ねる。
月見団子「大吟醸、教えてください、この全ては彼のためですか?自分のためですか?」
純米大吟醸「シー……面白くなるなら、誰のためにもなるでありんす。」
月見団子「ハハハハハ!おっしゃる通りです。計画がうまく行けば、誰のためにもなる!」
月見団子「しかし貴方の人魚ちゃんはずっと僕を狂人だと言っていた。僕に比べ、お二人の方がもっと狂人だと思いますね。」
第八章-鳥籠
鳥籠で構築された世界。
桜の島の歌舞伎町は、夜しかないところだ。
ここの夜はいつも色とりどりのランプに暖かさと曖昧さが映る。だが「百鬼夜行」が始まって以来、ここはかつてのようなにぎわいがなくなった。
「極楽」は例外の店だ。他の店の営業状況が悪化しても、「極楽」だけはまだ大人気だ。
ただ、来店客たちは普通の人ではないようだ。
他の客を見送った後も、月見団子はまだ大吟醸の店に座って酒を飲んでいる。
純米大吟醸「今日はあの小僧は来ないのか?」
月見団子「明太子?昨日またタコわさびと喧嘩しましてね、そして僕の収集した絵を汚しました。今は庭で吊られて反省しています。」
純米大吟醸「あ奴はぬしのボスではないでありんすか?」
月見団子「ボスこそ、よい手本を示さなければならない。」
純米大吟醸「ナンバー2のぬしの方が本当に厳しいでありんすね。」
月見団子「人魚ちゃんはどこです?また僕を避けてるんですか?」
純米大吟醸「あ奴には仕事をさせた、しからずばまたぬしを襲い掛かっていた。」
月見団子「やれやれ、昔のことまだ恨みを抱いているんですか?2人は気が合うのに。」
純米大吟醸「このように思い出したように、時々あちきを訪ねてきて酒を飲むのもわざとでありんすよね?」
月見団子「間違えないようにしてください。やっといい飲み仲間を見つけた、だからお邪魔するのです。」
純米大吟醸は月見団子の笑顔を見ると、何も言えずに彼に酒を注ぐ。
月見団子が彼を利用していることに対して、彼はあまり気にしていない。
何といっても、ここは歌舞伎町、老若男女誰でも他の人を騙して利用するところだ。逆に……月見団子の策で自分の信頼できる仲間を連れて来てくれたことに対して、少しながら感謝な気持ちが生じていた。
月見団子「貴方たちが出会ったのは僕の計算の結果。彼が貴方のそばに残ったことも僕の想定内だ。でも、彼が本当に貴方を主様として扱うとは思わなかった。だから僕はずっと気になっていた。あの普通を超えた忠誠心は、一体何なのですか?」
純米大吟醸「シー――ぬしに教えらりんせん、これはあちきにプライバシーだ。」
純米大吟醸はやや得意げに自分の酒杯を回しながら、あの日のことを回想すると、そっと笑った。
鯖の一夜干し「あの、もし、この鳥籠の外に、もっとよい、もっと面白い世界が存在すれば……貴方は、もっと楽しく笑うことができますか??」
純米大吟醸「……そうできるならば、代償がいくらでも、あちきは絶対に鳥籠の外の世界を見にいくでありんしょう。」
鯖の一夜干しは少し驚いて純米大吟醸を見る。この何にも興味がない青年はこんな言葉を言うと思わなかった。青年は手を高く持ち上げる。鯖の一夜干しは青年の指の隙から明るい空が見えた。青年の笑顔は月より明るくなった。
純米大吟醸「もしそんな日が本当に来たら、ぬし……あちきと一緒に見にいかない?」
鯖の一夜干し「……な、何を?」
純米大吟醸「鳥籠の外の世界だ。きっとこの鳥籠より面白いでありんしょう……」
終章ー世界
この世界に面する時に、何を求めるべきだ?
桜の島には、数え切れないほどの伝説がある。
例えば、人類の力を超えた「妖怪」と「化け物」。
例えば、その「妖怪」を支配する「陰陽師」。
例えば……
たまに、空から優しく大陸を照らす「輝夜姫」。
しかし、ある日地に落ちた「輝夜姫」はこの大陸に呪いを残した。
月が再び空に現れた時だけ、この大陸の人たちはここから離れることができる。一方、月と共に現れるのは、大きな風と波だ。
そして離れた人たちは、神様の罰を受けて、二度とこの大陸には戻れない。
全ての人々はこれをただの古い伝説として考えている。
神社の可憐な神鏡が裂けた、その瞬間、暗空から無数の雷が落ちた。土地がバラバラになった。
いくつかの人影がゆっくりと神社を出てきた。彼らの顔は冷ややかだったり、薄い笑みをしている。
純米大吟醸「フー――けっこう疲れたでありんすな、さすが……神様の罰だ。」
月見団子「ええ、これはただの始まり、今から後悔しても遅くはないです。」
純米大吟醸「ヘエ――どうしてぬしはあちきが中途半端な人と思うでありんすか?怒るわよ~」
明らかに月見団子は隣の二人が後悔したとは思っていない。彼はやや仰向けになり、消えた月を見ると、狩衣に潜んでいる手を握り締めた。
月見団子「……これは一個目。」
純米大吟醸「一個目か……」
純米大吟醸も仰向けになって、あの雷から下がって、桜の島のルールを破った人たちを罰する空を見る。
月見団子「どうです、一個目でもやばい奴が出ました。お口に合いますか?」
純米大吟醸「ふふ、こうでなければ。あんまり手を抜いたら、つまらんでありんすね。ここから出られなければ、この籠を壊してしまえばいい。これは鯖が教えてくれたことだ……ねえ?」
純米大吟醸は返事をもらえなかった。彼は振り返って自分の後ろに立っている鯖の一夜干しを見る。
純米大吟醸「……もしもし?鯖?」
鯖の一夜干しは引き裂かれそうな海を見る。あの遠い海で、彼らの見たこともない陸地が現れた。しかし稲妻が落ちた後再び消えてしまった。不思議なことに、眩しい稲妻の中でも彼は目を離さなかった。
鯖の一夜干し「グウ?!」
鯖の一夜干しはやっと純米大吟醸が笑って彼をデコピンしたことに気がついた。
純米大吟醸「もう驚いたか?これから、きっともっと面白いことがぬしを待っているぞ。」
鯖の一夜干し「……はい!」
歌舞伎町
庭の一隅
竹の庭。
豪雨が止んだ後の晴れだ。鹿威(ししおど)しの音が飛び石の間に響く。夕方は一日中最も清閑な時のはずが、この庭は大変忙しい。
少し暗い赤の雲が風とともに遠いところへ行く。月見団子は温かいお茶を持っている。そばで砂糖をかけた団子がいくつか並べられている。
他の人たちは忙しく何かを準備しているが、彼だけは離れた所で別のことをしている。
何かに気づいた月見団子は、三色団子を持って労働中の人たちの所へ行く。
月見団子「お兄さん方、少し休憩してはいかがでしょうか?」
職人「月見さんこそ、疲れたら大変ですよ。今回の花火大会絶対勝って見せます!旦那さんの顔を潰してはいけません。」
月見団子(……ただ花火を上げるだけでしょう、顔を潰すことと何の関係がある?)
月見団子「……わかりました。では頑張って下さいね。」
職人「ご安心ください!!!おい!お前たち、サボるな!絶対に最高の花火を作ってあの壺に入り込んでいるタコ野郎に目に物見せてやる!」
月見団子(……他の人も君たちのボスのように頭悪い奴だと思いますか?)
月見団子は長いため息をつくと、部屋に戻って最近の報告をまとめる。
桜の島の昼が非常に短い。またたく間に空が真っ暗になった。
月見団子は机の上に置いた蝋燭を灯した。蝋燭の明かりがほやの花柄を通して、雲隠れの月の姿を映した。
月見団子はこの光の中で仕事をする。だが急に、誰かが駆け込んだ。
職人「月見さん!大変だ!」
その声を聞いてびっくりした月見団子は、月の絵に黒い墨のかたまりをこぼした。
月見団子「……え、何が大変なんですか?」
職人「月見さん――あの、また旦那があの壺に入り込んでいる奴と喧嘩しています!」
月見団子「……」
職人「本当だよ!」
月見団子「やれやれ、これで何回目ですか?まだ相手を噛み殺してはいませんでしたか?」
職人「何?月見さん今何て言いましたか?」
つい本音を吐いた月見団子は少し緊張した。
月見団子「ゴホ!いいえ、何でもないです。早く僕を連れて行ってください。」
職人「はい、こちらです!!!」
逢魔之时
赤い夜、いざ逢魔の刻。
魑魅魍魎、百鬼夜行、いわゆる逢魔が刻だ。
すべての人間は部屋の扉を閉じている。部屋が少し明るい。たまに好奇心を持つ子どもが外のことを盗み見することがある。
桜の島の夜が長くなるにつれて、夜のとばりが訪れると、たまに怪しい煙が歌舞伎町に蔓延する。
ここに集まるのは、闇に潜んで魂を喰う目の持ち主だ。彼の普通の人とは違う姿は、歌舞伎町に神秘的な色をあげる。さらに昔のにぎやかだった花魁遊街に取って代わられてきた。
伝説によると、逢魔が刻に煙と共に現れる「人」は、「人類」が持たない力を身につけている。
子ども「お兄さん!逢魔が刻に出かければ、「あの奴」たちに喰われるよ!」
まだ何歩も出ていないのに、月見団子の袖は扉の隙間から出てきた小さな手に握られた。
月見団子「……オ?」
子どもはうなずいていた。表情は月見団子への心配でいっぱいだ。
カコ――カコ――
遠くないところから下駄の音がなる。町から最後の灯の光が消えてしまった。扉の隙から盗み見る人もしっかり閉じる。
月見団子は振り返って、扉の後ろに隠れて、怖くて丸くなっている子どもを見る。
月見団子「そんなに怖がってるのに、どうして僕に声をかけたんですか?」
子ども「「あの奴」たちにお兄さんを食べられたくない!お兄さんは弱そうだから。」
月見団子「「あの奴」?」
子ども「うん!母さんが「あの奴」たちの名前を直接呼ぶのはダメだと言ってたことがある。さもないと彼らは声に合わせて探して来る。お兄さん早く入って。」
月見団子は子どもの好意を拒まない、彼に部屋に引きずられてしっかりと扉を閉めた。それと月見団子は子どもの頭を撫でてあげた。
月見団子「どうして「あの奴」たちが怖いんですか?」
子ども「僕が母さんの言うことを聞かないと、「あの奴」たちは僕を捕まえて食べに来る。あいつらは子どもを食べることが大好きだから!」
月見団子は面白いことを思い出したようで、腹の皮が捩れるほど笑った。子どもは、自分の言ったことを彼が信じてくれてないと思った。説明が引き続く。
子ども「本当だよ!母さんは月と昼があいつらに食べられたと言ってた!あいつらはまず月を食べた、そして少しずつ昼を食べてしまった。だから昼が短くなる。あの……僕は月の様子がわからない……でもおばあちゃんは月はとってもきれいだったと言ってたことがあるよ!」
月見団子は子供の真剣な表情を見るとはっとした。子どもが彼の袖を振るに至って、やっと気がついた。
カコ――カコ――
ただ彼が話しだす前に、近づく足音が彼を押しとどめた。彼は穏やかな笑顔を見せて、子供の髪を再びかき乱した。
月見団子「月は本当にきれいだよ。」
子ども「うん?」
子どもは月見団子の話の意味が理解できない。月見団子が急に子供の目の前で扉を開けた。子供が驚いた。
子ども「!お、お兄さん!何をしてるの!早く閉じて!」
月見団子が仮面を被る。深い霧に揺られている灯火の下ではこの簡単なうさぎ仮面は妖しく見える。後ろの影を見た子供がびっくりして後ろに下がって、地面に座り込んでしまった。
月見団子の後ろに赤い目がいる。子どもは扉の隙から盗み見たことがある。ただ一回の盗み見だったのに、彼は大いに驚いて、一ヶ月もの間ちゃんと眠れなかった。月見団子は地面に座っている子どもに優しい笑顔を見せる。しかし今の彼にとっては、この笑顔からは恐怖しか感じられない。
月見団子「僕は月を取り返す。」
月見団子は触れていなかったが、扉が自動的に閉じた。地面に座っている子供が大きく口を開けて、ぼんやりと彼の離れた方向を見ている。屋内から女の声が聞こえた。
子どもの母「次郎――また盗み見る!悪夢を見たいのかい?早く寝な!」
子ども「……母さん、僕、彼らが見えた……」
子どもの母「バカなことを言ってないで、早く寝な!あれは見ることができるものじゃないだろう?」
歌舞伎町
歌舞伎町の昼
伝説の「百鬼夜行」の日を除いて、歌舞伎町は至って普通な町だ。
外の世界から想像されているほどではない。昼が短いといっても、人々は昼のうちに用事を終えたいため、町に出る人が多い。
子どもは友だちと遊び戯れる、隣人同士は世間話をする、そして……
うな丼「えええ!!!おい――やめて!水をまくなんて酷すぎるでござろう!豚骨ラーメン!!おい――」
水をまかれて、外に逃げたばかりのうな丼は足を跳ねて店内の豚骨ラーメンを見る。
豚骨ラーメン「食い逃げ、そして茶碗ば洗えば半分ば壊す。どっちが酷すぎると思う?今日はお金ば払わないなら、飯ば食べるな!」
うな丼「チェ――お主のために拙者が何人のチンピラを追い払ったと思う?――ウワ――また水をまくか!アア――申し訳ございません……え?」
水を避けているうな丼は後ろの人の足を踏んだ。きれいな靴にすぐ半分の足跡が残された。彼は振り返って、月見団子だと気づいた。
うな丼「ア――お主は!軍師殿だ!!!!お主もこの町に住んでいるのか!!!!!」
月見団子「……う、鰻丼ですか。どうして貴方がここに……将軍は……」
「将軍」と聞いた鰻丼の表情は少し固くなったが、すぐ笑顔になって月見団子に抱きついた。
月見団子「そういえば、本当に久しぶりですね。しかし君がここにいるなら、さっきの懐かしい声はもしかして……」
豚骨ラーメンが鰻丼に抱かれている人を見ると、同じく驚いて目を丸くした。
豚骨ラーメン「……軍師しゃん?あんたもここにうったいか?!」
月見団子「さっきは気のせいだと思いましたが、本当に豚骨ラーメンだとは思いませんでした。」
旧友に会った豚骨ラーメンは珍しく嬉しくなった、顔も少し柔らかくなった。
豚骨ラーメン「お元気にしとったとよか?あそこから離れた後、みんなと連絡ば断たれとった……」
月見団子「まあまあですね、普通の仕事で暮らしています。」
豚骨ラーメン「それは何より!さあ、一緒に一杯ば飲もうよ?」
月見団子「今日はちょっと……他の友人と一緒に桜を見ながら酒を飲む約束をしてしまいました。豚骨ラーメンも一緒に来るなら大歓迎です。」
豚骨ラーメン「う……うちは店番しなくちゃ、今度は一緒に飲もう。酒の用意はうちに任しぇんしゃい。」
月見団子「わかりました。では、お先に失礼。」
ただこの笑顔は長続きしなかった。豚骨ラーメンは店に入りたい鰻丼を捕まえた。
豚骨ラーメン「あんた、店に入ったっちゃよかて言うたか?――」
ラーメン屋
小さいなラーメン屋
うな丼「やあ――お主、そうしてまで乱暴したいか!」
店への進入に失敗した鰻丼が豚骨ラーメンに外へ引き捨てられた。地面に座る鰻丼は少々きまりが悪そうに月見団子を見る。
月見団子「……大丈夫ですか?お二人は……どうしたのですか?……」
うな丼「あまり大したことではない。ただ茶碗を洗う時に、茶碗6個、皿3枚を壊しただけだ。後で新しいのを買ってやるつもりでござったのに。」
月見団子「なるほど。」
うな丼「まあ、そんなことどうでもいい。誰と酒を飲みに行くのか?拙者を連れて行ってくれ。」
月見団子はしょうがなく鰻丼の笑顔を見ると、首を縦に振って同意した。
――「極楽」。歌舞伎町で最も有名な店にして、最もよい酒を持つ店。
値段も最も高い。
いつでも貧乏している鰻丼は少し不安になる。
怖々に他の客を観察すると、再び月見団子を見る。
月見団子はまた真っ白だ。億万長者のような財力があるようには見えない。
うな丼「軍師殿、今逃げればまだ間に合う!この店の値段が高いのは有名だ!何枚の皿を洗ったら飲食費が稼げると思うか?」
月見団子「大丈夫、今日は飲み放題です。おごってくれる人がいますから。」
うな丼「飲み放題?ここの酒一本、豚骨ラーメンの店の何か月分もの報酬に当たる!」
月見団子「大丈夫、今日は……」
月見団子の話はまだ終わっていなかったが、外の声に邪魔された。二人が振り向くと、あまり姿を見せない「極楽」店主が見えた。
緩んだガウンが彼の腕にかかっている。息を吐くと、薄い煙が彼の体のそばをゆらゆらと巻き、彼の艶やかな外見におぼろげな美感を感じさせた。
彼は人をからかう笑いを持って、一人の男の側に歩いてきて、男を下の階に送り、店の入り口まで見送った。
純米大吟醸「では、また今度~」
その男の馬車が出発した後、純米大吟醸は振り向いて、店内の人を無視して、月見団子を発見した。
うな丼「うお!あの方、店主殿がこっちに向かって来た!確かこの「極楽」の店主殿でござろう!えええ!なんと!!――」
旧友
旧友との飲み会
鰻丼の驚きの目に、純米大吟醸は直接彼らのそばに行った。顔にはまぶしいほどの笑みが浮かんでいる。
純米大吟醸「アラアラ、今日は何か御用ですか?もしかしてあちきのために?~」
うな丼「拙者?ん?んんん?!!!軍師殿?!!!!」
純米大吟醸と月見団子の間に挟まれる鰻丼は驚いた目でうそ!うそ!と見回している。月見団子は少しも恥ずかし気なく、平和的に普通の友人と話すようにしている。
他の客に見せたくないため、大吟醸は二人を連れて、「極楽」の裏庭に案内した。「極楽」の裏庭に一本の巨大な桜がある。大吟醸にとってはどう使えば良いかわからないものだが、月見団子が来る度に、いつも満開している。
うな丼「さすが軍師殿!こんな凄い友人がいるとは!!!そして酒のセンスも良いな!」
純米大吟醸「ほら、これこそあちきの正しい扱い方でありんす。この月見団子は「まあまあだな」としか言わない。つまらぬ奴だわ!」
うな丼「ハーッハーッハー、店主殿は拙者と気がよく合うのお!これからこの道で店主殿に迷惑をかけるやからがいたら、拙者の名前を言ってくれればいい。」
純米大吟醸「では、これからもよろしくね~」
鰻丼は純米大吟醸の「引き止め」を聞いても、酒を飲み続けながら月見団子との過去を語る。月見団子はため息をつくことしかできない。
月見団子も一杯飲むと、顔が少し赤くなった。いっぱい喋った鰻丼は既に飲み潰れたため、彼も前より少し緊張が緩んでいた。
純米大吟醸「面白いよね、ぬしの友だち。」
月見団子「ええ。」
月見団子のうわの空の返事を聞いた純米大吟醸は微かに口をとがらした。彼は月見団子が真っ暗な空を仰ぎ見る様子を見ると、再び一杯を飲む。
月見団子にとって芳醇な酒は水のようなものであり、飲みが止まったことがない。三人の中で彼が飲んだ量は最も多いが、酔いは最も浅い。彼は振り向いて、今日よく「話のわかる」、彼を邪魔しなかった純米大吟醸を見る。
月見団子「どうしましたか?何かいいことあったみたいですね。」
話を聞いた純米大吟醸が月見団子にずるい笑顔を見せた。目尻がかすかに曲がって頭を揺り動かす姿は少し子どもっぽさすら感じさえた。
純米大吟醸「あのね、この世にはいつでも艶かしい、けど脆く壊されやすいことに耽ける人がいる。だからあのような姿を見せたら、彼はあちきのために全ての問題を解決してくれるものだ。お願いさえいらんよ~」
月見団子「……本当に、悪質な人だ。」
純米大吟醸「ぬしの借金もこんな人たちから稼いだものだよ~」
月見団子「……」
純米大吟醸「ハハハ、気にしないで気にしないで、さあ~どんどん飲みなさい!」
月
分かた友。まだ望んでいる全て
酒を三回ついで回って、月見団子はほろ酔い機嫌になってふらふらと立ち上がった。
純米大吟醸「え――もう帰りたいでありんす?――」
月見団子「これ以上は無理です。」
純米大吟醸「ではこの「極楽」で一泊するのはいかがでありんしょう?空き部屋がいっぱいよ!」
月見団子は純米大吟醸のそばの影を見ると、優しい笑顔から皮肉的な表情に変わった。
月見団子「宿泊なんて大したことではありません。しかしあの人魚ちゃんの前で酔って寝たら、殺される可能性が高いと思うので。」
純米大吟醸「うちの鯖はそんなに乱暴な人ではないよ~」
月見団子「私は騙されやすいお客さんではない。帰ります。あの人魚ちゃんはいつも私に対して警戒心を持っていて疲れないのでしょうか?」
純米大吟醸の笑顔が少し固くなった、そして無実な表情で月見団子を見る。声も少しつらそうなものになった。
純米大吟醸「あちきはただの弱い商売人だ。少しくらい防衛手段を持つのは仕方ないでありんしょう。」
純米大吟醸の返事を気にしなかった月見団子は地面で寝ている鰻丼を引き起こして、一緒に「極楽」から出ていった。後ろの純米大吟醸は勝手に陰に潜んでいる者に話しかける。
純米大吟醸「あのね……言ったでありんしょ、そんなに緊張しなくても大丈夫でありんす。」
鯖の一夜干し「……彼は危険すぎますから。」
純米大吟醸「ねえ、あちきの話をちゃんと聞きなさいよ、いい飲みチャンスなのに。まあまあ、あちきは酔った、部屋に抱いて帰って!」
鯖の一夜干し「…………」
純米大吟醸「その顔、どういう意味?。あちきは酔った、本当に酔った!」
鯖の一夜干し「はい。」
豚骨ラーメンの店の外。
ドンドン――
豚骨ラーメン「すみましぇん、もう閉店したったいよ――また明日いらっしゃって下さい。」
月見団子「ア、すみません、僕です。」
豚骨ラーメン「軍師しゃん?すぐ行きるとね。」
慌ただしい足音とともに頭を洗ったばかりの豚骨ラーメンは店の扉を開いた。しかし強い酒臭いにおいを嗅いだ彼女は少し眉をひそめた。
うな丼「げっぷ――拙者……まだいける――」
豚骨ラーメン「…………どんくらい飲みたったい?」
月見団子「しばらく注意していませんでしたが、相当飲みすぎています。彼の住所が分かりませんから、豚骨ラーメンにお願いするしかありません。」
豚骨ラーメン「……どうして外で飲んで死ななかったか?ありがとう、軍師しゃん。」
文句を言った豚骨ラーメンは月見団子から鰻丼を受け取った。月見団子が豚骨ラーメンに別れを告げると、彼女は月見団子の名を呼んだ。
前と異なる語り口を聞いた月見団子は振り向くと、顔が少し冷たく、なおかつよそよそしく警戒する豚骨ラーメンの顔が見えた。
豚骨ラーメン「アンタが「逢魔が刻、百鬼夜行」の噂ば立てる理由はわからんが、うちでもこんバカでも、ただ平和な日々の中で暮らしたいだけだ。うちはアンタの争いに参加しゅるつもりはない。お願い、昔のお情けで、うちば巻き込まないで。」
月見団子「何を言っています?噂?あれは勝手に伝えられたものです。」
豚骨ラーメン「それならばあまり問題はない。さもないとうちはこん手で貴殿ば斬り殺しかねない。」
月見団子「……」
豚骨ラーメン「軍師しゃん……前からずっと聞きたかったこつばいが、いったい何が欲しいんばいか?」
月見団子「私の望みは、最初から最後まで、あの明るい月だけだ。」
百鬼
百鬼招来
また百鬼夜行の時だ。扉を閉じることだけが人類が自分達を守るためには最も良い、そして唯一の方法だ。
人類が戦々恐々と夜明けを待っている時は、「化け物」、「妖怪」のような異物たちの感情が最も高い頃だ。
明太子「てめぇ――タコわさび!!!!お前?!誰のことをちびっ子と言ったんだ?!!」
中華海草「あの――明太子様、怒らないでお願いします。タコわさびはわざとじゃないんです――!」
云丹「クソタコわさび!!!逃げるな!!!もう一回言ってみろ?!!」
云丹「あぁん?!」
中華海草「雲丹姉さん、姉さん!落ち着いてください!!ここは「極楽」!歌舞伎町!休戦区ですよ!」
いなり寿司「ふふ、相変わらず仲良しだな~」
云丹「どこから俺様があのクソ野郎と仲良しに見えたか?」
明太子「んなことどうでもいい!!!タコわさび!!すぐ止まれ!!!」
正門から入ったばかりの月見団子が明太子の一撃を喰って、顔が真っ黒になった。この瞬間に、全員が死んだように黙った。さっきからずっといらいらしている雲丹でさえもその勢いを失った。
月見団子「……」
明太子「月、月見……いつ……来たんだ……」
月見団子「ボス、この「極楽」は休戦区でしょう?」
明太子「……」
云丹「は、はい!」
月見団子「ちょっと相談したいことがあります。」
云丹「は、はい……」
純米大吟醸「ごめんね、鯖が少し怪我したから、彼に薬を飲ませてて遅くなりんした、ごめんね、お待たせし……ん……し……た。」
なじみのある声とともに、全員の視線が月見団子から純米大吟醸に移った。
純米大吟醸「教えて……あちきの正門は何があったか?」
ほとんど一瞬に、全員が無意識的に、こっそり逃げ出そうとしていた明太子を指さす。
明太子「!!!!!お前ら――!!」
純米大吟醸「明太子さん、前回、崇月に貸したお金は、まだ返金していなかったよね……」
明太子「俺一人のせいじゃねよ!!タコわさび!!あいつ――え?あいつはどこ?クソタコわさび、また缶に入り込んだか!!!出てくれ!」
???「ZZZZ――」
明太子「また寝たふりをしているのか?!!!」
純米大吟醸「では、明太子さん、慰謝料と返金の話をしんしょう……」
悲鳴とともに、純米大吟醸は清々しい気分で鯖の一夜干しの部屋に戻った。
鯖の一夜干し「…………何が起きましたか?」
純米大吟醸「何でもない、少し金を稼いだだけでありんすぇ。ほら、薬を続けて、アーン――」
鯖の一夜干し「…………やめてお願いします!!!自分でできますから!!」
その時、外で盗み見している雲丹、いなり寿司たちが柱に縛り付けられてる鯖の一夜干しの様子を見て、同情して首を横に振った。
いなり寿司「……サクサク、人魚ちゃんも大変だな。」
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