ミネストローネ・エピソード
◀ エピソードまとめへ戻る
◀ ミネストローネへ戻る
ミネストローネのエピソード
ミネストローネが呼び出されて間もないころ、御侍(ユーザー御侍ではない別の御侍)によって地下組織に実験体として売られた。その後実験室から逃げ出せたが、彼は負の感情と共存する怪物に改造されていた。追われ続け、復讐心で支配されていた。
強い生存欲を持っている。毎日悪夢にうなされていても、自ら死を選ぶ事はない。
心身共、常に苦痛に苛まされている。しかし、彼はいつも笑顔を取り繕い、他人には苦痛や弱さを決して見せないようにしている。だがその笑顔は強張って歪んでいると、彼は気付かない。
Ⅰ.裏切り
シチリはグルイラオ南部海域にある観光島。
人間にとってそこは天国の島だが、オレにとってはもっとも憎むべき、忌々しい場所だ。
オレに付き纏う罪と悪は、全てここで生まれた。例えそこが風光明媚に見えたとしても、その土はとっくの昔から悪によって浸透されている。そこはこの世で悪の花を育てるのに最適な場所だと、オレは誰よりも確信している。
勿論、現実はオレの予想通りの展開になった。
悪の花の種を持ってここに帰ってからすぐ、全ての人間が未だかつてない悪夢に苛まれた。オレは自分の名誉にかけて誓う。オレは悪の花を持って、色んな所を旅してきた。しかし、この土地でだけ、この偏食な妖精植物は美味にありつけたような貪欲な顔を見せた。
善人のフリをしているヤツらは、オレが最も残忍な手段でヤツらを苦しめたと喚き、オレに判決を下した。フン、とんだ笑い話だ。
ヤツらの心に悪が宿っているからこそ、深淵はヤツらを覗いているのではないか?
この道理を、オレより分かるヤツはいない。
オレがこんな完璧な判断が出来るようになったのは、かなり大きな代価を払ったからだ。
オレも最初は純粋で愚かな食霊だった。他の食霊と同じように、オレを召喚したアイツの後にひたすら付き従った。親しみを込めて、恭しく「御侍」と呼び、アイツに忠誠を誓い、喜んでアイツと共に世界中のどこにでも行こうと尽くした。
何度も何度も、オレは大小様々な堕神を殺し、ヤツらの鮮血を大地に撒いた。同時に、自分も傷だらけになっていた。
しかし、戦いが終わると、アイツはオレに掛けるのはいつもこの言葉だけ――
「ミネストローネ、動きが遅すぎる。そんなんじゃ、永遠に最高値の堕神を倒せないぞ」
話が終わると、アイツはオレに山のように積み重なっている堕神の死体を持たせた。町の掲示板のところに送り、地元の料理人ギルドの担当者に受け渡し、何袋の金貨と交換した。
最初、アイツは低レベルな話術でオレを騙そうとした。実は世界を救う夢があるとか、その前に衣食問題を解決しなければと言った。
その後、オレがどんなに嫌がっても、勝手に御侍から離れる事が出来ないと気付かれ、アイツは遂に本性を現した。オレを使ってより多くの金を稼ぐ事だけを考えた。
アイツに利用されるのは心底嫌だったが、何十年しか生きられないと考えれば我慢出来た。それに、シチリ島は閑古鳥が鳴くほど貧乏で、料理御侍はアイツ一人だけ。島全体の収入は、ほぼオレらの堕神狩りで維持していたから、アイツに利用されているのは気に留めない事にした。
……オレの逆鱗に触れるまでは。
その日を、オレは永遠に忘れない。
オレはいつものように島から出て堕神を斬り、一袋の金貨を持ってシチリ島に戻った。しかし、オレを待っていたのは罠だった。
罠を仕掛けたのは、見た事もない黒いローブを着ている人間の集団だった。ヤツらがオレを見る目付きを、オレはよく知っている――今まで狩られようとしていた堕神を見るオレのそれと、同じ目付きをだった。
窮地に追い込まれた獣を見る目付きがオレに降り注がれ、気持ち悪いと思った。
しかし、オレは戦いから帰ってきたばかりで、しかも傷を負っていた。残った僅かな力ではどうにもならなかった。
オレは必死に足掻いて逃げようとした。その時オレの心の中では、まだアイツを「仲間」と認識し、ほんの少しの幻想を抱いていた。
こんなに多くの金を稼いで来た事に免じて、オレを救うべきじゃないのか?
ところが、オレが振り返ると、オレから視線を逸らすアイツがいた。
その時、オレは全部わかったんだ。
この罠は、この狩りは、アイツが許可した事だと。もしかしたら、事前に準備されていた可能性だって。ハッ、オレはアイツが助けてくれると期待までして!
オレは怒り、もがき、大声で叫んだ。どうしてオレにそんな事をするのかと問いただした。
アイツはオドオドしながら、人の後ろに隠れ、オレにこう言った――この黒いローブを着た連中は国都から来た者だと。ヤツらはグルイラオの強い食霊たちを探しに来ていて、その食霊たちに「集団訓練」をさせようとしていると。
「彼らと一緒に行けば、もっと強くなれるよ。グルイラオにとっても良い話じゃないか」
そんな子供だまし、誰が信じるか?
アイツに、あの得体の知れないヤツらと、一体どんな取引をしたのかと問い詰めたが、アイツは口を割らなかった。
結局、黒いローブのヤツらの首領がオレに真実を教えてくれた。オレの「良き」御侍は、オレをヤツらに売りさばき、グルイラオ王室のシチリ島への将来投資を引き換えたと――これはこの島の人々全員の決定であると。
こんな割りの良い取引はないだろうなっ!
オレは振り返って埠頭の周囲を見た。シチリ島の住民がちらほらと立っていて、オレを盗み見ていた。見知った人々は、それはもう良い顔をしていた。
「ママ、ミネストローネをどこに連れ――」
ある子どもが思わず口走った。
次の瞬間、子どもの母親は素早くその子の口を押えた。
彼女はその子の話を遮り、同時にオレが人間に対する最後の善意も断ち切った。
黒いローブのヤツらに連れられて島を離れている間、オレはもう無駄な質問をする事を止めた。
オレはオレを裏切った人間たちに目を向けて、アイツらの顔を一人ずつ覚えた。
いつか、アイツらがオレにした仕打ちを、必ず全部返してやる……
Ⅱ
編集中
Ⅲ
編集中
Ⅳ
編集中
Ⅴ
編集中
◀ エピソードまとめへ戻る
◀ ミネストローネへ戻る
Discord
御侍様同士で交流しましょう。管理人代理が管理するコミュニティサーバーです
参加する