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エンドウ豆羊かん・エピソード

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エンドウ豆羊かんのエピソード

エンドウ豆羊かんは北方出身のツンデレ少女。

明るく、活発で、遊ぶ事が好き。

彼女がいると、場が賑やかになる。

しかし性格が正直で大雑把なため、毒舌な一面も持っている。

彼女と話す人はショックを受けたり、泣くにも泣けず笑うにも笑えなくなる事がある。

Ⅰ.さらばじゃ

夢回谷は奇妙な場所じゃ!


妾は今までかような場所を見た事はない!


春は南から湿っぼい雨が降り注ぎ、太陽は半月昇らぬし、部屋の隅にはきのこが生えおる。


やっと夏が来たかと思えば、東から海風が吹き荒れ、屋根をも飛ばす。


秋になればようやく落ち着くかと思うていたら、西から砂嵐が吹き付けてきて、乾燥してかなわん。


そして、またたく間に冬となった。まあ良い窓の外に広がる真っ白な雪原に妾はもう驚かぬ。


――恵まれていない場所を見た事はあったが、ここまで悪天候を網羅している場所を見た事がない。


妾が世間を渡り歩くようになった初めての年に、凍頂鳥龍茶と共にここを訪れて見聞を深められたのは良かったとは思う。


その凍頂鳥龍茶の言い分というと、


「ここは光耀大陸の中心、ここに住めば一度に天下全ての景色を見る事が出来る、実に愉快」


其奴がこの話をしていた時、膝には湯たんぽ、体も分厚い毛皮に包まれ、そして優雅な動きで熱いお茶を飲んでおった。


しかし、冷たい風が部屋の中に入り込み、其奴が掛けていた眼鏡が曇って、見え辛くなったのに――笑顔を保っておった。


あの滑稽な様子を見て、妾は思わず声を出して笑ったが、次の瞬間妾も冷たい風に吹かれ、一つ身震いをした。


ここは本当に寒すぎるのじゃ!


しかし、凍頂烏龍茶のような皇宮の生活に慣れている者はよくここに住もうと思ったな。


これについては、妾も感服しなければならぬ。


其奴の家は崖の上にある、いつの時代かわからぬ古い寺を改造した物だ。


錦安城の城主が工匠を派遣してきて、一年間の内装工事をして、ようやく人が住める程度になった。


「冬が来る前に工事が終わると思っていたのだが、錦安城の工匠の腕は余の想像よりも劣っていた」

「しょうがないじゃろ!王宮に状況を伝え、王家から専門の者を呼び寄せるつもりか?」

「余は既に退官した、私用でそのような事はできまい」

「それはそうじゃ!」

「しかし、正当な方法で王家の者を借りる事もできる」

「どんな方法じゃ?」

「......」

「もったいぶるでない!どうして妾をジロジロと見ているのじゃ?」

「貴殿が、その方法だ」

「なんと?寒すぎてボケたのか?妾に方法なんぞあるなら、とっくに……待て……凍頂烏龍茶!どういう意味じゃ!」

「ただの冗談だ」

「警告しておく、妾の事を宮中に漏らす事があれば、妾は……」

「何をするのか?」

「例え連れ戻されても、連れ戻される前に其方が北朔でやってきた事を全てロイヤルゼリーに話してやるのじゃ!」

「……」


凍頂烏龍茶は黙った。


其奴は一つため息をつき、足を組んで妾を追い返し始めた。


「貴殿は早く出ていけ、体調が優れないから安静にするよう言われたにもかかわらず、こっそりここに来たことを、冰糖燕窩伝えても良いのだが?」

「おのれ!恩知らずの奴め!」


それ以上何も言わず、あかんべえをして見せ跳び上がって立ち去った。


Ⅱ.雷じゃ

凍頂鳥龍茶の住処から出て、天梯に沿って降りていくと谷に辿り着く。

そここそ今妾が住んでいる場所じゃ。


妾の境遇は其奴よりはましじゃ。


何かと落ち着かない夢回谷にも、結界が張ってある良い場所があるのじゃ。


ここは極端な天候はない、桃源郷とも言える場所じゃが、結界は誰でも通れる訳ではない。


夢回谷の主である冰糖燕窩はここに住んでいて、彼女が認めた霊物しか彼女の領域に入る事は出来ぬ。


彼女の基準というのは、「欲望」の二文字しか教えてくれなかったのじゃ。


無欲の霊物しか彼女の結界を通る事はできぬ。


危ういものじゃ!


一年前、妾は凍頂烏龍茶と共に朔北を離れ、なんやかんやここまでたどり着いた。

妾は暴飲によって怪我を負わされた所、彼女が助けてくれた。


その時から、妾はこの谷での生活を始めた。

共に残ったのは雲夢澤から暴飲事件を解決しに来た君山銀針

しかし凍頂烏龍茶は事件解決後、ここから追い出された。


当然、妾はわかっておる、其奴が追い出されたのは欲望を持っていたせいではない。

純粋にロイヤルゼリーとの因縁があったからじゃ。


ロイヤルゼリー冰糖燕窩の兄じゃ、其奴らは本当によく似ている、縞麗な外見をしていて、口数は多くはない。

当時の事についても誰が悪いなんて話はせんし。


しかしそんな事は関係ない、良し悪しなんぞ美人の前でなんの意味があろう?

妾は自然とロイヤルゼリー冰糖燕窩の味方になったのじゃ!


だが、当時の事について凍頂烏龍茶に非がなければ、其奴はわざわざ遠路遥々退官してまで人探しに来なくてもよかろう。


谷から追い出されても、谷の外にあるボロい寺に残ったりせずともよかろう。

あぁ、自業自得じゃ!


妾だけじゃ、同じ宮中から出た者として、時々其奴の近況を見に行ってあげてるのじゃ。

其奴はあろうことか、妾の情報と引き換えに良い部屋を所望しようとしているじゃと?


「妾がもしまた其奴の事を可哀そうと思う事があるなら、すぐに雷に打たれ、宮中まで連れ戻されよう!」


ゴロゴロピシャーン!


ぼそっと咳きながら谷まで下りた時、突然の雷が近くに落ちた!


妾は驚いて跳び上がってしまった。


さっそく?


遠くないの雪原に、雷で大きな穴が開いていた、一帯が黒焦げになっていた。


妾はまだドキドキしている胸元を撫でながら焦げ臭い匂いに気付いた。


うむ?もしやまた君山銀針が厨房に入ったのじゃろうか?


いや!これは厨房の方ではない、雷で開いた大きな穴の方じゃ!


近づいて見てみると、黒焦げになっている人影が大の字で倒れておった。

震えながら伸びた右手には方位磁石が握られてあった、針は空で光る稲妻と同じテンポで揺れていた。


「すみません……ここは……夢回谷……ですか?」


……少年よ、道を尋ねるにしても、まずその雷を呼び寄せる神器を下ろしたらどうじゃ?


妾は直視できず、目を塞いだ。


ゴロゴロガシャーン――


また一つ大きな雷が落ちた、指と指の隙間から穴底の方を覗いた。

うむ、今回は完全に気絶しおった。


Ⅲ.驚いたのじゃ

やっとの思いで、穴の底に沈んでいた来客を屋敷まで連れて帰った。

布巾で其奴の顔も綺麗にした。


顔を見ると、思わず口笛を吹いてしまった。


妾はやはり見る目がある。

黒焦げになっている時から、縞麗な顔をしておると思っていたのじゃ!


妾は満足げに領いて、ホッと一息つこうと水を飲もうとした時、突然ある声が聞こえて来た。


「エンドウ豆ようかん、主から霊力の薬膳を学んだ、そなたのような無気力症を治すものだ、試してくれ――」

「ブッ!」


口に含んだ水が全て出てしまった。


声の主は入口まで来ていた。

青白い衣を身に纏い、天仙のような出で立ちの其奴は、どうしてか手には変な匂いを発した、訳のわからない物を手に持っていた――彼女が君山銀針じゃ!


「……先程まで厨房にいたのは其方じゃったのか?」

「そうだが」


妾は内心びくびくしながら後ずさり、その薬膳と呼ばれた代物から距離を取りながら、素早く話題を変えた。


「そうじゃ!見よ!表で食霊を拾った!しかも美人じゃ!」

「……拾ったのか?どれ……どうして気絶している?」

「雷に二回も当たってたからじゃ!」

「えっ?」

「そうじゃ!」

「食霊とは言えこのような傷には耐えられまい、命が危ない、このまま見過ごすわけには!」

「君山姉さんの言う通りじゃ!ただ主はおらぬ、どうしたら良いのじゃ?」

「それは……そうだな……」

「じゃあ、その薬膳を試してみようぞ?」


しばらくして。


「うあっ……」


苦しそうな悲鳴によって、机に伏せながら寝ていた妾が起こされた。


妾は目を擦りながら、いつ眠ってしまったのかを思い出そうとしていた、身体がしびれていた。


もしや病気なのか?食霊も病気になる事があるのか?


困惑して、横を見ると、穴の底にいた美人は吐き気を催していた。


妾は水を一杯渡した。


「ほれ、口をゆすぐと良い」

「ありがとう!」


水を飲み干すと、やっと落ち着きを取り戻したようす。


「……命を助けてくれて、本当にありがとう!一体誰が俺に毒を盛ったのか……」

「安心せい!其奴は新たな毒薬の研究に行った、しばらくは其方の所には来ない」

「えっ?」

「チッ、縞麗な顔をしておるのに、おつむは良くなそうじゃな……」

「……何か言った?」

「いや!其方はどこから来たのじゃ?どうして夢回谷に来たのじゃ?」


妾の問いに、彼は真剣な表情を見せた。


「俺は如意巻き、北朔から来たんだ。北朔太后の命令で、夢回谷に来てエンドウ豆ようかん嬢を探しに来た」

「……」

「お嬢さん?お嬢さんの驚きっぷりから見てもしかしてエンドウ豆ようかんと知り合いか?やっぱり、場所は合っているみたいだ!」

「……」

「……お嬢さん?お嬢さんどこに行くんだ?」

「後悔しているのじゃ!毒薬をもう一杯探してこよう!」


妾は笑顔で言い放った。


Ⅳ.年越しじゃ

「んんっーーううっーー」


妾は如意巻きの口を布で塞ぎ、結界境目まで引きずっていった。

君山銀針は小走りで後を追ってきた。


「エンドウ豆ようかん、彼の身体には傷がある、どうしてそんなに怒っているんだ?何か恨みでもあるのなら、傷が癒えてから追い出しても遅くはないだろう!」

「君山姉さん、違うのじゃ!」

呼吸を荒くしながら

「其奴の傷が癒えた日は、妾の命日となるのじゃ!」と答えた。

「それはどういう……」

「其奴を一刀両断にしてやろう!妾が帰れば死が待っていよう、ならば其奴を道連れにしてやろう!」


ゴロゴロと、空では雷鳴が轟き、雷が集まっていた。


「こ、これは何事、早まるな!」


君山銀針は必死で妾を掴んだ。

この時、透き通った燕の鳴き声が雷鳴の間に響いた。


「何をしているのですか?」


妾は一瞬固まり、振り返ると主とロイヤルゼリーが戻っていたのじゃ。

主は赤い紙を抱えていて、それは迎えに来た燕たちによって引き取られていった。


その隣にいるロイヤルゼリーは、いつもの人を寄せ付けない表情を浮かべていたがその両手を見ると。

――左手は大小様々な料理が入った袋を、右手には酒壷が三つ、家庭的な匂いがして、一匹狼のような雰囲気は消え去っていた。


その匂いを嗅いで、妾は思わず睡を呑み込んだ。

――なんて良い匂いなのじゃ!


主はゆっくりと近づいて来た。

妾は背後の者を隠そうとしたが、彼女の威圧に負け、大人しく身体をずらした。


「見るがよい」


主と涙を浮かべていた如意巻きの視線がかちあった。


しばらくして。


「本日は年越しです、訪れた者は全て客人、どうぞお上がりください」



春の雷がゴロゴロと泣いていた、今晩止む事はないじゃろう。


外の雷鳴を聞きながら、しびれた腕を揉んだ。


「エンドウ豆ようかん、どういう事か説明してくれないか」


部屋は人で埋まっていて空も暗くなってきた。

君山銀針は灯りをつけ、全員の視線は妾に集中していた。

これ以上誤魔化せないと感じ、妾はしょうがなく口を開いた。


「主、ロイヤルゼリー、君山姉さんよ、すまない……其方らを編しておった」

「一年前、妾と凍頂烏龍茶がここにやって来た時、あ奴とは旅の途中で知り合ったと嘘をついた……実際はそうではないのじゃ」


妾はこっそりロイヤルゼリーの方を覗き込んだ。

いつもの感情が見えない目が少し動揺を見せ、妾の方に向いていた。

妾は緊張して唾を飲み込んだ。


「では、そなたは誰だ?」


君山銀針は訝し気に尋ねてきた。


「妾の御侍は、北朔の現太后じゃ。妾は彼女が召喚した食霊」

「北朔太后?つまり、そなたは凍頂烏龍茶と同じ、宮中から来たのか?」

「うむ、正確には……」

「こっそり出て来たのでしょう?」


主は妾の代わりに言った。


「すまない、今まで騙してきて……太后にここに居る事がバレてしまえば、きっと妾を連れ戻そうとする……故に、今まで誰にも言えなかったのじゃ……」

「そういう事か。如意巻きはそなたの御侍が遣わせた者だと気付き、勢い余ってあのような事を?」


妾は領いた。


「だがおかしい」


君山銀針は言った。


「そなたは自らの正体を誰にも告げていないのなら、北朔太后はどうしてそなたが夢回谷にいる事を知っていたのか?」

「聞くまでもない、きっと凍頂鳥龍茶じゃ!あ奴は王家の工匠と引き換えに妾の行き先を漏らしたのじゃ!」

「工匠?」

君山銀針は困惑した表情を見せた妾は手をぎゅっと握り締めた。


「それはどうでもよい、とにかくこの仇は必ず討たねばならん!」

「お嬢さん誤解だ、確かに太后の命でここまで来たが、この事は親王とは無関係だ」


この時、ずっと黙っていた如意巻きが口を開いた。

全員一斉に彼の方を向いた。

如意巻きは少し緊張しているのか、深呼吸をし、袖からある物を取り出し妾の目の前まで来て、それを妾に渡した。

妾は本能的にそれを受け取り、手のひらに置いてみると、見覚えのある玉の腕輪であった。


見覚えどころではない、これは御侍がいつも身に付けている物、普通の代物ではない事を知っておる。


妾は突如何かに気付いた。

信じられず、それを自らの腕に通した――腕輪は腕に通した瞬間、光を放った。

霊力を使うと、その腕輪は妾の手の中で一本の鞭となった。


「太后が仰っていた、外で旅をしている君は、ずっと丁度いい武器が足りていなかったと。これは彼女が君に遺した贈り物だ」


妾は顔を上げて、如意巻きの目に浮かぶ悲しみを見た。


「エンドウ豆ようかん、お悔やみ申し上げます。太后は少し前に亡くなられました」


Ⅴ.エンドウ豆羊かん

光耀大陸がまだ統一出来ていない遥か昔、東西南北に四つの大国があった。


大国はそれぞれ青龍、朱雀、白虎、玄武を神として信奉していた。北の北朔王朝は玄武神を祀り、戦力で宗主国の席を勝ち取っていた。


神の力が少しずつ弱まっていくと、光耀大陸の人間は霊族の古法から食霊を召喚する事を覚えた。


その当時、食霊は今よりも遥かに珍しい存在として国宝になっていた。


エンドウ豆ようかんはそんな時代に召喚された。


幸い、彼女は北朔王朝の太后――君太后によって召喚された。


君太后は北朔の将軍一家の出身、父は大将軍であった。


皇帝は大将軍の功績が主を超える事を阻止するため、彼の十四歳の娘を娶った。


十四歳の君が後宮に入った後、家族や身に付けてきた武術などを捨てざるを得なかった。後宮で生きていくためには、外にいた頃の自分を捨て、言葉と行動を慎み、用心深くしなければならない。


君はこの処世術を使い、後宮で数十年の権力闘争の後、最終的に権力を握る太后となった。


ある日、君太后が城壁の近くで散歩をしていた時、外から銅鑼を叩く音が聞こえて来た。太后がこれは何の音かと従者に聞くと、従者はエンドウ豆ようかんを売り歩いている音だと答えた。


太后はその瞬間、後宮の外で生活していた幼い頃の記憶が蘇り、すぐさまその物売りを呼び寄せ、エンドウ豆ようかんを全て買い占めた。


その日、君太后はエンドウ豆ようかんを召喚した。


明るく素直、単純で善良な彼女は、まさに太后が捨てた幼い頃の自分その物であった。


しかし、彼女は他の食霊のように戦闘は得意ではなかった。太后はわかっていた、このような情勢の中、彼女の事を数年は守れても、一生守る事は出来ないと。彼女を守る唯一の方法は、彼女が食霊である事を隠すこと。


そして、彼女は侍女として宮中で太后の傍に寄り添い。その後、養女として迎え入れられ、北朔姫となった。


一年前、エンドウ豆ようかんは後宮での生活に嫌気がさし、凍頂烏龍茶の馬車に乗りこっそりと宮中から逃げ出し、南下し夢回谷に辿り着いた。


君太后は全てを知っていたが、彼女を止める事はしなかった。更にはひそかに凍頂烏龍茶に彼女の面倒を見るよう頼んだ。


一年後、太后が危篤となり、一家の心腹である如意巻きを探し出して、最期の贈り物をーー太后の家に代々伝わる霊器である玉で作られた腕輪を、彼女に贈った。



…………


窓に飾る切り絵を切って、春聯を張って、提灯を掛ける。これはエンドウ豆ようかんが夢回谷で過ごす初めての正月。


「曲がっておる、もう少し左じゃ!マヌケめ!妾がやる!」


彼女は如意巻きをはしごから引きずりおろし、自ら上って赤提灯の位置を正した。


「どうじゃ良いだろう!」


「うん、良いよ」


「……おいっ!もう少し心を込められないのか!」


彼女はぴょんとはしごから跳び下りて、腰に手をあてながら言った。


「妾の御侍がいなくなったのじゃ、どうして其方が妾より悲しい顔をしておる!今日は年越しじゃ!そんな顔をするでない!」


如意巻きは頷いて、無理やりひきつった笑顔を見せた。


エンドウ豆ようかんの御侍が亡くなった事で、夢回谷の者たちは皆彼女が悲しむのではないかと心配していた。


冰糖燕窩は厨房で彼女のために料理を作っていた。君山銀針も手伝っている。



「――何も手伝えてないと良いのじゃが」エンドウ豆ようかんは恐る恐る考えていた。


新しくやってきた如意巻きは半分は客人だが、彼女と共に爆竹の準備や、提灯を飾るのを手伝っていた。


彼は太后の実家から遣わされ、任務は太后を守る事。しかし太后が亡くなった今、彼も無職となった。


エンドウ豆ようかんが冰糖燕窩に相談した所、如意巻きに残ってもらう事となった、冰糖燕窩もそれに反対はいていなかった。


ロイヤルゼリーに関しては、いつも通り口を開いたりはしなかったが、酒壺を一つ持って彼女に渡した。


酒壺を持ち上げている様子に驚き、凍頂烏龍茶との関係に嘘をついてたのがバレて、殴られるのではないかと思い、彼女は頭を抱えていた。


しかし、彼は酒を置いた後黙って去っていった。



エンドウ豆ようかんは皆が思っているより弱くはなかった。


彼女は大雑把に見えるが、生き死にを前にして、意外と思い詰めるタイプではなかった。


「御侍が言っていたのじゃ、楽しく生きてこそ後悔はしないと。彼女の人生は楽しくはなかった、もっと早くに終わらせたいと思っていたのじゃ、人生を終わらせる事こそ解脱じゃ。彼女のために、悲しむ事に自分の時間を掛けられない!」


年越し料理を食べ終えた後、エンドウ豆ようかんは如意巻きを連れて年越しの瞬間を待っていた。


彼女は酒壺を抱えて、少し酔っていて、ふらふらしながら傍の如意巻きと話していた。


「ちゃんとこの件を受け止められたのなら、良かった」


「そう難しい事ではないのじゃ……だが、わからない事もある」


「分からない事って?」


彼女は指折り数えながらーー


ロイヤルゼリーは酒壺を三つ持っていた、一つは妾に、一つは皆で飲み干した、あともう一つある筈なのじゃが、まさか足が付いて逃げてしもうたのか?」


「それは……」


傍の如意巻きはまさか彼女がこんな事で悩んでいるとは思わず、言葉が詰まった。


「其奴は話さぬし、妾も聞くのが怖いのじゃ、本当にわからぬ……」


「……エンドウ豆ようかん?」


エンドウ豆ようかんはぶつぶつとつぶやきながら、目をこすり、如意巻きの傍に倒れて眠った。


この時、山谷の崖の上、龍の鳴き声が二回聞こえて来た。その後、絢爛な花火が空に上がり、山谷全部を照らした。


(あんな高い場所に、どんな人が住んでいて、どんな物語があるんだろうか……)


如意巻きは天を見上げて、そして隣で寝ているエンドウ豆ようかんを見て。


心の中でこれから出会う全ての友人に向かって一言「明けましておめでとう」とつぶやいた。




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タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
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  • RPG(ロールプレイング)
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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