ピンクの魅せる夢・ストーリー
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ピンクの魅せる夢
プロローグ
夕方
ブルーチーズの家
ドンッ!パンッ!ポンポンポンッ!ガチャガチャ!
シフォンケーキは部屋の外から、家を解体する勢いでトランクに服を詰め込んでいるヌガーを見つめた。その様子に彼は驚いて口が塞がらない。
シフォンケーキ:……ブルーチーズ、彼女どうしたんだ?出掛ける前は普通だったよな?
ブルーチーズ:……えっと……
シフォンケーキ:そうだ、あのウェディングどれすは?彼女の自信作だろ?
ブルーチーズ:ほら、あそこのゴミ箱に……
シフォンケーキ:??!!どういう事だ?出掛ける前は満足そうにしてただろ?
ブルーチーズ:ええ…顧客の言葉で酷くショックを受けたようです。
シフォンケーキ:……ショック?
ブルーチーズ:確か……彼女の作品には愛がない、と言っていたそうです。
シフォンケーキ:愛?!
ブルーチーズ:何と言ったら良いのでしょう……学生時代の青さもあって、情熱的な愛もないと……
(明転)
数時間前
アヴリルの家
美しく飾り付けられた洋室の中、ヌガーは持って来たウェディングドレスを指さし、自信たっぷりに口を開いた。
ヌガー:どうでしょうか!アヴリルさん!これは私の自信作ですよ!
アヴリル:……
ヌガー:ほらーーこのレース、この模様を見てください!貴方にピッタリですよ!
アヴリル:ヌガー。
ヌガー:あら?
アヴリル:貴方のウェディングドレスは、素敵です。
ヌガー:もちろんですよ!
アヴリル:だけど!!!
ヌガー:だけど?
アヴリル:愛がないわーー!!!!
ヌガー:……えっと……愛、愛?
アヴリル:そうですわ!!!例えば、魂の奥深くから生まれた青さ、青春の香り、学生時代の若さを携え、そして情熱が満ちている感じですわ!!!
アヴリル:貴方の作品には、心がないわ!!!
(明転)
シフォンケーキ:何が何だか……そんな訳のわからない話、無視すれば良いだろ。俺からしたら十分に綺麗だったぜ。
ブルーチーズ:ええ……僕も彼女にそう言いましたが……
バンッーー
ヌガーはどこからともなく出してきた制服に着替え、大きなトランクケースを引きずって、勢いよくドアを開けた。
ギラついた彼女の目を見たシフォンケーキはすぐさまブルーチーズの後ろに隠れた。兄である彼さえも彼女の様子に少し気おくれした。
ヌガー:学校!
ストーリー1-2
午前
教室
ヌガーの名前を聞くと、デザイン学院の学院長は二つ返事で特別で彼女の入学を許可した。彼女は楽しそうにスキップしながら教室に入った。そして座った途端、大勢の人に囲まれた。
学生A:ヌガー、貴方は既に有名なデザイナーではないですか?どうしてまたこの学院に来たのですか?
学生B:そうですよ、貴方が先生になっても良いぐらいです、どうして学生に?
ヌガー:ふふっ、私が学びたいのはデザインではなく、恋愛ですよ!
アンジェラ:恋、恋愛?!!!
ヌガー:そっ、そうですよ……
ヌガーは突然の大きな声に驚き、声のする方に視線を送った。声の主である少女の顔はりんごの様に赤くなっていた。周りにいた学生たちはクスクスと笑いながら、コソコソと話し始めた。
ヌガー:(あら?まさか……)
ヌガー:アンジェラさん?えっと……名前は合っていますよね……好きな人がいるんですよね〜そうですよね、きっとそうでしょう〜
アンジェラ:ど、どうしてわかったのですか?!!
ヌガー:ふふっ、相手はどんな人ですか?Aクラスの学生ですか?
アンジェラ:いえ……に、二年生の先輩です、まだ転入して間もない……
ヌガー:どこまで進展していますか?
アンジェラ:えっ……えっと、その……進展しているかどうかわかりませんが、ただ……
(明転)
一週間――
アンジェラ:えーー今週はもう降らないって言ってたのに?どうして今日また……
アンジェラ:さっきまで晴れてたのに……まずい、どうやって帰ろう……
???:どうぞ。
アンジェラ:えっ?先、先輩?!これは貴方の傘ではないですか?私にくれたら、貴方はどうするんですか?
先輩:大丈夫。
先輩:持ってて。
アンジェラ:しかし、こんなに強い雨に濡れてしまったら風邪を引いてしまいますよ。先輩の歌はとても素敵です、風邪を引いてのどがかれたら大変です!
先輩:私の歌を聴いた事があるのか?
アンジェラ:あっ、はい!聴いた事あります!あの時先輩の歌声は、学校中に轟きました!!!先輩の歌が大好きです!
先輩:ありがとう。じゃあ、お先に。
(明転)
アンジェラ:先輩が走って行った時、振り返って微笑んでくれたんです。ほんの少し、ほんの少しだったけれど……でもその瞬間!雨の中の彼の後ろ姿を見ていると、私は突然自分の動悸が早くなっていくのを感じました。もしかしたら、これが胸キュンなのかもしれません!
ヌガー:わー!落ちてしまったのね……それから!それから!!!
アンジェラ:うっ……それから、先輩には会えていません……傘を彼に返してしまったら、もう彼の所に行く理由がなくなってしまいます……
ヌガー:あら?彼はこの学校の学生ではないのですか?
アンジェラ:同じ専攻ではありません、しかも……先輩はもう私の事なんて忘れてるかもしれませんし……
アンジェラ:うわあああ!もし彼の口から私の事なんて覚えていないって聞いてしまったら、きっと立ち直れない……
―――
……
・アンジェラさん、自分に自信を持ってください!
・だけど何もしなかったら、後悔してより立ち直れなくなりますよ!
3・想像なんかのために、現実にある可能性を捨ててはいけませんよ!
―――
ヌガー:決めました!
アンジェラ:えっ?何を決めたんですか?
ヌガー:アンジェラさん、安心してください。私がきっとロマンチックで忘れられない恋愛をさせてあげますよ!
アンジェラ:ほ、本当ですか?
ヌガー:もちろんですよ〜恋愛した事ないですけど、この情熱だけは誰にも負けませんよ!
少女たちが次なる求愛計画に胸を踊らせていた時、教室の隅で、誰かが黙って彼女らを見守っていた。その誰かの目の中に喜びはあるが、多くは失望だった。
???:……君たちの計画が無事成功しますように……
ストーリー1-4
昼
花園
ヌガー:アンジェラは先輩に印象を残せた自信がないって言っていましたよね……なら、その印象を深めましょう!
アンジェラ:しかし、どうすれば……
ヌガー:とても簡単ですよ。ロマンチックな恋愛は、最もロマンチックな出会いから始めなければいけません!
アンジェラ:ロマンチックな、出会い?
ヌガー:昼下がりの図書館、少年少女は運命に導かれ、二人の手は同じ本の上で重なる……
アンジェラ:えっ?!せっ、先輩の手に触れて良いんですか?!!
ヌガー:そして目が合い、心臓の鼓動が加速し、二人の距離は近づき、唇が……
アンジェラ:ちょっと待ってください!!この展開は流石に早すぎませんか!
ヌガー:早いですか?恋愛はいつだってキスから始まるものでしょう?
???:それはお互いの気持ちを確認した後の事だろ!
???:バカ!声が大きい!
ヌガー:あら?何か声が聞こえたような……
ヌガー:或いは!運命の曲がり角で、運命の出会いを!少年は急いで走っていた少女と運命の悪戯によってぶつかり、地面に散らばった書類によって目が合う。少年はしゃがんで優しく少女のために書類を拾い上げ……
アンジェラ:えっと……これは……先輩を怒らせたりしませんか……?
ヌガー:アンジェラさん!雨の中でたった一本しかない傘を貸してくれる方ですよ!こんな小さな事で怒るはずはありませんよ!
アンジェラ:そう、でしょうか……そっ、そうです!!!先輩はとても優しい人です!!!
―――
……
・ふふっ。
・だからきっと大丈夫ですよ!
・でしょう!
―――
???:うわあ……パエリア……彼女の事もう少し気に掛けたらどうだ、完全に小説の読み過ぎでしょ……こんなドラマ見たいなシチュエーションなんて――
パエリア:シーッ!恋に悩む少女の邪魔をしない!
???:でもこのままだと、その女の子が好きな先輩はこの恋愛脳のせいで大変な目に遭うんじゃーー
シフォンケーキ:えっ?お前の方がうるさいだろ!
パエリア:このままだとバレちゃうわ!
シフォンケーキ:えっと……もうバレてるみたい。
シフォンケーキ:あはははは、ヌガー!たまたま!そうだ!たまたま通りかかったんだ!
ヌガー:シフォン!ケーキ!誰が恋愛脳ですって!!!!
シフォンケーキ:うわあ!
目の前の草むらが突然かき分けられ、シフォンケーキは両手を腰にさして怒っているヌガーを見て、驚いて尻餅をついた。
ヌガーはシフォンケーキを思いっきり懲らしめた後、綺麗な目を細めていつも騒がしい青年を見定めた。
ヌガー:正直に言ってください。シフォンケーキ、貴方とパエリアお姉さまは何しにここに来たのですか?
パエリア:……それは……
シフォンケーキ:えっとーー手伝いに来たぜ!!!
慌てふためくシフォンケーキを見て、ヌガーは片方の眉毛を上げた。
ヌガー:手伝いに?
シフォンケーキ:そ、そうだ……恋愛はどんな感情なのかを体験しに学校に来たんだろ!お、俺たちは何か手伝える事はないか見に来たんだ!
ヌガー:なるほど……そうなんですね?
シフォンケーキ:もちろん!!!
ヌガー:ふふっ、アンジェラさん、もっと良い脚本があるみたいですよ〜チンピラから助けるなんてどうでしょう?
シフォンケーキ:えっ……ええっ?!!!
ストーリー1-6
午後
植物園
シフォンケーキ:コホンッ……おっ、お前金を出せ!
ヌガー:ストップ!
シフォンケーキ:……
ヌガー:シフォン!今の貴方はチンピラですよ!囚われの小娘ではありません!もう少し強気で話せないんですか?!!
シフォンケーキ:……でも、俺はチンピラなんてやった事ない……
ヌガー:貴方は演者ですよ!!チンピラも演じられないなんて、演者失格です?!!
シフォンケーキ:は?!誰が演じられないって?この世界でオレよりチンピラが似合う演者はいないぜ!!!
ヌガー:やっぱり、シフォンは煽るのが正解〜!
シフォンケーキ:クソ野郎!止まれ!金を全部出せ!!!
パエリア:誰がクソ野郎だ?!!!
シフォンケーキ:あ?うわ……俺の大切な顔をつねらないでください……こ、これは演技だ!
パエリア:あっ……そうだったわ。
シフォンケーキ:何が「あっ」だ、早く手を離せ……うわーーーいたたたた……
ヌガー:ほら、ふざけてないで、早く演技を続けてください!
シフォンケーキ:偉そうに、お前の番だろ……ゔっ!
シフォンケーキが言い終わる前に、ヌガーは自分の裁縫バサミを取り出した。鋭い刃は空気を切り、シフォンケーキの首に刺さる寸前ピタッと止まった。
ヌガー:やめて!先輩を苛めないで!!
シフォンケーキ:そっ、そんな迫真に演技しなくても!切れてたらどうするんだよ!!!
ヌガー:あら、安心して、ハサミは慣れていますよ!
シフォンケーキ:まったく……でも、アンジェラとその先輩の役は逆じゃないか?普通は男が女を助けるんじゃ?
ヌガー:それはもう古い!斬新じゃないと先輩の印象に残らないですよ!
ヌガー:ところで、アンジェラさん、あの先輩は放課後必ず植物園に来ているのですか?
アンジェラ:はい……これは友だちが教えてくれた事です。安心してください、彼は絶対に私を騙したりしません。
ヌガー:わかりました!この後先輩が来たら、私の真似して演じてくださいね!
アンジェラ:……しかし……本当に、これで良いんですか?
ヌガー:もちろんですよ!アンジェラさん、自分に自信を持ってください!
アンジェラ:しかし……これは先輩を騙している事にはなりませんか?
ヌガー:騙す?
ヌガーは呆気に取られた。彼女にとって、愛情とは「死んでも心変わりしない」、「究極のロマン」という二つの概念しかない。彼女にはわからない、愛情を得るために工夫して、努力する事はどうして騙す事に繋がるのか。
しかし、まだ彼女が困惑の泥沼から這い出るより前に、植物園の門は開いた。
アンジェラ:しまった、先輩が来ました!
―――
えっ?!
・どうしよう、どうしよう?
・では、私たちの計画は……
・隠れますか?
―――
一行が慌てて隠れるか逃げるか迷っていた時、シフォンケーキは理性よりも体が先に動いてしまい、近づいてくる人影に襲い掛かった。
シフォンケーキ:えっと……金、金を出せ!!
先輩:???
シフォンケーキ:……なっ、なんでお前が!!!
ストーリー2-2
午後
植物園
立ち上がったオペラは、突然バネに弾かれたように飛んで行ったシフォンケーキを見て、首を傾げた。
オペラ:何をしているんだ?
ヌガー:……アンジェラさん、貴方が言っていた先輩って……彼の事ですか?
アンジェラ:そうです……
シフォンケーキ:お前なんでここにいるの?!
オペラ:学生の役を演じるため、体験しに来たんだ。
―――
……
・こいつはどうしてどこに行ってもモテるんだ……
・まさかオペラとは…
・クソッ、あの役は俺も演じたかった……
―――
パエリア:……よりによってどうしてこんな鈍感な奴を……
ヌガー:えっと、どう続ければ……
オペラ:???何を?
アンジェラ:もう良いです!
ヌガー:!!
アンジェラ:ヌガー、ありがとうございます。でも……ここまでにしましょう。
ヌガー:アンジェラ……
アンジェラ:先輩!すみません!またご迷惑をお掛けしました!!
オペラ:また?
簡単な二文字だったが、アンジェラの顔を一瞬にして赤く染めた。先輩は以前助けてくれた事を覚えていない様子だった。彼女は突然恥ずかしさで一杯になり、穴があれば今にも入りそうな勢いだった。
アンジェラ:……ごめんなさい!
ヌガー:えっ?アンジェラさん!どこ行くの?!!
ヌガーは俯いて走って行くアンジェラを見てから、まだ茫然としているオペラを見た。言いたい事が多すぎて、逆に言葉に詰まってしまった。彼女は歯を食いしばった後、まずアンジェラを追いかける事を優先した。
(明転)
ヌガー:……一体どこに行ったの……
シフォンケーキが指す方を見たヌガーは、やっとアンジェラの姿を発見した。彼女は一人で湖の畔(ほとり)に座っていた。春先の肌寒さも相まって、後ろ姿だけで彼女の悲しみを感じ取れた。
ヌガー:アンジェラさん!
アンジェラ:……そうですよね、私みたいな人を好きになってくれる訳がないですよね?明るくないし、面白くないし、頭も悪い。こんなダメな私が先輩のような超絶イケメンと恋愛するなんて、妄想も甚だしい!
ヌガー:……アンジェラさん!そんな風に自分を蔑んじゃダメ!貴方も優秀よ!
アンジェラ:……ヌガーみたいな綺麗な女の子に私の気持ちなんてわからない……
ヌガー:私は……
ヌガーがアンジェラの話に反論しようとした時、草むらから人影が飛び出て、真っすぐアンジェラの方へと向かって行った。
???:君も綺麗だ!いや、綺麗とかそういう問題じゃない、俺は今の君が好きだ!!!
アンジェラ:えっ?!わあーー!!
バシャンッーー
ヌガー:アンジェラ!!!
ストーリー2-4
学院
湖の畔
ヌガー:アンジェラ!!!
バシャンッーー
ヌガーが反応前、また水に落ちる音がしたーー先程の少年が湖に飛び込んだのだ。
???:たす……ぶはっ……げない……うっ……泳げな……
ヌガー:えっ?!!!
湖の中で一緒にもがいている二人を見て、ヌガーは更に焦りだした。今にも飛び込もうとした時、突然後ろから駆け寄って来たシフォンケーキによって腕を引っ張られた。
シフォンケーキ:俺が行く!
ヌガー:シフォン?
バシャンッーー
パエリア:……あのバカ!
ヌガー:!!!シフォン!!どうして飛び込んだの?!!貴方も泳げないじゃない?!!!
焦ったヌガーは顔が真っ赤になっていた。助けに行こうとした時、シフォンケーキは既に二人を掴んで岸まで泳いでいた。
シフォンケーキ:早く、彼らを引っ張り上げて……
ヌガーとパエリアは急いでアンジェラとあの少年を岸まで引っ張り上げた。幸い、救出が早かったため、二人は少し水を飲んだだけで、ケガはなかった。
シフォンケーキ:ウッ……さ、寒い……
ヌガー:……
シフォンケーキ:えっと……ごめん!わ、わざとお前が作ってくれた服を汚した訳ではない!!!ヌガー、お、怒らないで……
ヌガー:バカ!そんな事で怒ったりしない!!
シフォンケーキ:えっ?じゃあ……
ヌガー:どうしてこんな時に無茶したの?!!何かあったらどうするの!!!あと!!
シフォンケーキ:まだ、まだあるの……
ヌガー:いつ私に内緒で泳げるようになったの?!!!
シフォンケーキ:えっ?あーこの前、お前が団長と一緒に、二人が水に落ちたら誰を助けるかって聞いて来た時……泳げないって言ったら、お前らめっちゃ怒ってたから……
ヌガー:……
シフォンケーキ:後で考え直したんだ。もし本当に水に落ちたら、俺も一緒に飛び込んで死ぬ訳にはいかないって……泳げるようになったら、二人とも助けられるかなって!
ヌガー:……
シフォンケーキ:こんなに早く役に立つとは思わなかった、水をいっぱい飲んだ甲斐はあったぜ、ははははーーやっぱり現実でもステージの上でも、俺様が一番の主役だぜ!!!
―――
……
・バカ。
・はぁ……本当にどうしようもないひとね!
・貴方ってひとは……
―――
ヌガーは仕方なさそうにため息をついてから、アンジェラの事を思い出し、彼女の状況を確認しに行こうとした。すると彼女が俯いて、何かをぶつぶつとつぶやきながら、考え込んでいるのが見えた。
アンジェラ:……す、好き?
シフォンケーキ:おっ?もうファンになってくれたのか?!へへへっ……そんな大胆な告白は、恥ずかしいぜ……
???:はい!君が好きだ!
シフォンケーキ:えっ?しかも男のファン???
ストーリー2-6
???:アンジェラさん、俺は君が好き、ずっと前から好きだ!ただ、君に伝える勇気がなかった……
アンジェラ:モリス……じゃあ、どうして先輩の居場所を教えてくれたの……
モリス:……君が告白したいのなら、俺は手伝う。だけど、俺は君が自分の事を貶しているのを聞いていられなかった!
アンジェラ:!
モリス:先輩が見えていないだけで、君に長所がない訳じゃない!俺にとって、君は世界で一番優しくて、一番綺麗な女の子だ!
ヌガー:あら〜
シフォンケーキ:なあ、なんでお前が顔を赤くしてるんだ……
ヌガー:こんな純粋で誠実な感情に感動しないでいられないわ?!!!アンジェラさん、見てください!貴方の事をちゃんと見ている人はいます!これは告白ですよ!!貴方の返事は?!!
アンジェラ:えっ?あっ……私は……
シフォンケーキ:ハックション――!
モリス:……
シフォンケーキ:えっと……ごめんなさい、とても寒くて……
ヌガー:……貴方って、雰囲気を壊すのも得意なのですね……
ヌガーはイヤそうな口ぶりで話していたが、ポケットからティッシュを二枚取ってシフォンケーキに渡した。
オペラ:ああ、思い出した。
パエリア:わあ!あんたいつの間に……
オペラ:あの傘は、彼から頼まれて渡した物だ。
アンジェラ:えっ?
モリス:……
オペラ:彼はその後、私からオペラを習っていたが、練習のし過ぎでのどを壊した。
アンジェラ:モリス……
モリス:だ、だって……先輩の歌声が好きだって言ってたから……俺は……
アンジェラ:バカ、私が好きになるのは、本来の貴方でしょう。
モリス:!
アンジェラ:……貴方が、私を、好きなのと、同じ……
モリス:アンジェラ……
少年少女は胸中をあらわにしながら、顔を赤らめていた。その様子を見ていたヌガーたちも微笑ましく思った。
シフォンケーキ:いいいいつになったらかかかか帰れるんだ?
ヌガー:……貴方って本当に……
声まで凍りついていたシフォンケーキを見て、一行はイヤそうな顔をしたが、その場はすぐに笑いに包まれた。
ヌガー:はいはい!もう帰りましょう!
(明転)
パリエア:若い愛情はチョコレートみたい、苦いから甘く感じられる。大切なのは、外見がどんなに派手に包装されているかではなく、甘さを味わう瞬間。その瞬間こそもっとも大切……人生と同じよ。
シフォンケーキ:おや〜まさかパエリアがこんな事を言うなんてな。
―――
……
あんたに言われたくないわ……
当たり前でしょう!
何がまさかよ、あんたよりは賢いわ!
―――
シフォンケーキ:よしっ!じゃあヌガーの問題はどうやって解決したら良いんだ?あれ?ヌガー?
シフォンケーキは振り返って、その場から動かずにいるヌガーを見た。困惑した表情から少しずつ笑顔が深まっていった。
ヌガー:わかった!
パエリア:えっ?待って……何がわかったの?インスピレーションが湧いたの?
スキップしていたヌガーはパエリアの問いかけを聞いて振り返った。優しそうに見つめる一行を見て、嬉しそうに笑った。
ヌガー:ふふっ〜ヒ・ミ・ツ!
ヌガー√宝箱
翌日
アヴリルの家
アヴリル:ええ……
ヌガー:……まだ何か不満な点でも?
アヴリル:ええ…………
ヌガー:……
アヴリル:ヌガー、素晴らしいですわ!これは私が見てきた中で最も完璧なウェディングドレスですわ!
ヌガー:申し訳ございません、引き続き直します……えっ?今なんと……
アヴリル:きっと出来るって信じていたわ!
ヌガー:ははっ、当然ですよ!これは私の最高傑作ですから!
ヌガー:最も基本的な型に、最も基本的な配色を合わせ……素人からするとこれは最もシンプルなデザインだと思われるかもしれませんが。しかし簡単でシンプルな物程、裏に隠されている輝きを表現出来るのです。
ヌガー:恋愛のように、美辞麗句や丹念な計画なんていらない。真心を込めれば、人を感動させる事が出来る……
(明転)
パエリア:Zzzzzz……
パエリア:えっ?ああ、だからあんたの設計図は直せたの?
ヌガー:……もう!私の設計図はとっくに通りましたよ!
パエリア:おおお!おめでとうおめでとう……
ヌガー:もうっ……今居眠りしても良いですけど、この後は絶対眠くなっちゃいけませんよ!
ヌガー:アンジェラさんにとって、恋愛で最も大事な瞬間がやってくるのですから!
アンジェラ:うっ……
ヌガー:緊張しないでください、アンジェラさん、こんなに震えていたら踊れませんよ!
アンジェラ:し、仕方ないじゃないですか、この後モリスと一緒に踊ると思ったら、もう……
パエリア:えっ?既にお互い告白したじゃない?今更何を緊張しているの?
アンジェラ:はい……ですが、パートナーを変えるルールがあるので、モリスが男子の最後尾に並んでいるそうなんです、もし私たち二人会えなかったら……
ヌガー:安心してください、アンジェラさん。パエリアお姉さまはミドガルで一番のダンサーです!彼女のサポートがあれば、貴方とモリスさんはきっとスムーズに踊る事が出来ますよ!
アンジェラ:えっ?しかしどうやって……
パエリア:フッ、あたしに任せて!
数分後ーー
パエリア:弱い弱すぎる!普段運動しないの?七周回っただけで眩暈がするなんて。チェンジ!
学生A:うえっ、クラクラする……ウッ……
学生B:こ、怖い……わあ!やめてください、早すぎます!う”っ……
パエリア:フンッ、こんなもん?つまわらないわ、飽きた、勝手に続けて。
パエリアが颯爽と退場すると、ダンスホールに残った男子はモリス一人だけになった。彼とアンジェラは見つめ合った後、顔を赤らめた。しばらくして、モリスはやっとアンジェラの手を引いた。
ヌガーはダンスホールの中で恥ずかしそうに楽しく踊る二人を眺めていた。ふわふわのドレスですら微笑んでいるように見えた。
ヌガー:わあ〜これが青春〜不器用だけど真摯、いつまでも純真で美しいまま!よしっ!次の目標は……私だけの青春を見つける事!!
パエリア:えっ……
ヌガーのために真実の愛を探す過程で、様々な障害にぶち当たるであろうと考えただけで、パエリアは不安そうに眉間に皺を寄せた。彼女は愛らしい少女のような笑顔を浮かべているヌガーを見て、仕方なさそうに笑った。
大丈夫、どうやったって、幻楽歌劇団のメンバーは全員、この単純で優しい妹分を助けてしまうのだ。
しかも、彼女はヌガーだ、彼女のように頑固なら、彼女に出来てない事なんて……無いのでしょう。
シフォンケーキ√宝箱
夜
ブルーチーズの家
バンッーー
強く閉められたドアの音を聞いたシフォンケーキは無意識に首をすくめ、仕方なさそうにため息をついた。
ブルーチーズ:どうやら、ヌガーは問題を解決する方法を見つけたようですね。
シフォンケーキ:さすが兄妹だけあって、そんな事もわかるのか……
ブルーチーズ:しかし、君はどうしてそんな姿に?
俯いて水浸しになっている服を見て、シフォンケーキは恥ずかしそうに後頭部をかいた。
シフォンケーキ:はははは……話せば長くなる……
ブルーチーズ:まず温かい湯船に浸かって来てください、その後ジンジャースープでも飲んで身体を温めましょう。
シフォンケーキ:そうだな……
(明転)
ジンジャースープを飲んだ後、シフォンケーキはすぐに眠気に襲われた。彼はいつもより早く布団に潜り込み、やがてぐっすりと眠りに落ちた。
シフォンケーキ:スースー
ギーッーー
ヌガーはそっとシフォンケーキの部屋に忍び込み、ベッドのそばにしゃがんで、シフォンケーキの顔を真剣に眺めた。
ヌガー:うん……ぐっすり寝ているようね、起こさないようにしよう……
ヌガー:何をそんなに驚いているのですか?食べられるとでも思ったの?
シフォンケーキ:いや……夜中に寝ないで、何で俺の部屋に来てるんだ……
ヌガー:うっ、何でもないです……でも起きたのなら、私と一緒に来てください!
シフォンケーキ:えっ?どこに?何しに?
ヌガー:私のモデルになってください!
シフォンケーキ:待って、待って!お前がデザインしたのはウェディングドレスだよな?どうしてパエリアじゃなくて俺なんだ?
ヌガー:知らないのですか?夜更しは美容の大敵!パエリアお姉さまの顔にストレスを与えられない!
シフォンケーキ:じゃあ俺の顔にストレスを与えるのは良いのか?!!
ヌガー:早くしてください!間に合いません!貴方しかいないんです!
シフォンケーキ:俺しかいない?ははっ!じゃあしょうがないな〜
(明転)
二人はヌガーの作業部屋でドタバタ作業を続け、設計図が少しずつ完成して、ようやう二人は床に寝っ転がって眠りについた。長い夜はこうして過ぎていった。
シフォンケーキ:スー……主役の座は……俺のだ……はは……
ヌガー:うん……愛情……ふふっ……ロマンチックな……愛情……
ギーッーー
ブルーチーズはお茶とお菓子を持ってそっと部屋に入って来た。彼はヌガーのあどけない寝顔を見て、白いレースを身に纏ったシフォンケーキを見て、最後に彼の背中に隠れている設計図を見た。
ブルーチーズ:おや、これは実に……可愛らしい絵巻ですね。
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