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カステラ・エピソード

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カステラのエピソード

カステラは、自分の絵馬に願いを書けば叶うと人を騙し、絵馬を通して希望の力を集めている。この力で黄泉の門を通過して黄泉から出る事を企んでいる。絵馬に願い事を書いた人は、願いが叶うどころか、真逆な結果を得ると言われている。


Ⅰ.願い

夜の帳が下りて、散歩にはちょうどいい時間になった。

暗い路地裏には空洞の目のような提灯が散りばめられている。

油鍋の中で安っぽい食べ物が跳ねていて、食べに来る客は汗の臭いを漂わせながら、逃げ回るネズミやゴミと仲良く過ごしている。


手に持っていたセキチクの香りを嗅ぐと、澄んだ花の香りによって胸に広がるイラつきが少しだけ緩和された。

人間の匂いは、相変わらず嫌いだ。


おや……よく知っている匂いがする。腰に下げた絵馬も僅かに輝いていた。

そうだーーこれは「願い」の匂い。


匂いに導かれるまま角を曲がり、泥を踏み越えると、馬車の中で一人顔を隠して泣いている女を見つけた。

どうやら、彼女が最初の獲物らしい。


「ご婦人……どうして、そんなに悲しんでいるんだ?」

水たまりを踏むと、泥が飛び散った。目の前の弱い人間を怖がらせないため、声を落としながら近づく。


「だっ、誰ですか……?」

馬車の中、容姿端麗な女が怪訝そうに身を縮め、その手には分厚い紙の束が握られている。

近くにいる召使いは煙草を吸っていて、こちらの物音にはまったく気付かない、ただ夜風だけがこの会話を聞いていた。


足元の水たまりには一枚の絵が落ちていた、小さな男の子の笑顔が泥で汚れている。

「ああ、尋ね人……?人を探しているようだな、喜んで手伝うよ」

「よっ、妖怪……まさか、貴方が噂の妖怪ですか?」

「そうだ、どんな願いも叶える妖怪だよ」

私は小さく首を傾げ、穏やかな微笑みを見せた。



夜が更け、黒い雲がまるで秘密を覗きこんでいる月を隠すように星を遮る。


馬車が去っていくのを見て、私は気怠な笑顔を浮かべ、字でいっぱいになった絵馬を腰に付け直した。

「ふふっ……願いが叶いますように」


今日の「散歩」は無事に終わったし、そろそろ戻って休みたいところだ。


「ちょっ……ちょっと待って!」

幼い声が聞こえてきたが、私は足を止めなかった。


さっきから覗いていたこのガキに構う気分じゃなかったから。

人間の匂いに塗れた場所に居すぎたから、早く水浴びがしたい。出来ればセキチクの花びらがたっぷり浮かんだ風呂に浸かりたいものだ。


「待って!よっ、妖怪さん!」

服を引っかられた、思っていたより力が強いみたいだ。

ーー実に頑固なガキだな。


「放せ」

私が顔を顰めて彼を見ると、彼はおずおずと汚れた手を解き、私の服に残した黒い跡を申し訳なさそうに見つめた。


「ごめんなさい……服を汚すつもりじゃ」

ボロい服を着た男の子の声は蚊のようにか細い。身なりは汚いが、匂いはさほど悪くなかった。


服に軽く触れると、汚れは一瞬で消えた。


「す、すごい……」

彼は救世主を見たかのように目を見開いた。その目には……「希望」が満ちている。

「妖怪さん!僕を……僕の妹の願いを一つ叶えてくれませんか?さっき妖怪さんが、あの奥さんに行ったみたいに……」


純粋な希望の力。

私欲や貪婪が一切混じっていない。

私は思わず彼に興味を持った。


「ほお?言ってごらん、妹の願いはなんだ」

「難しいかもしれないんですけど……妹に、月を見せてくれませんか?」


男の子の瞳は澄み切っていて、心細く見えるが強い意志が宿っている。

実に懐かしい……


一瞬だけ意識を彼方へ飛ばしたが、すぐ笑い出してしまった。

「悪いが、この世界に月はないよ。力になれない」

「そう、ですか……」

彼はガッカリした顔で目を伏せた。


「そんな儚い願いなんて忘れてしまえ。妹と自分のために何か食べ物でも買ったらいい」

私は銭袋を残し、振り返ることなく灯りの消えた暗い路地裏に入っていった。


Ⅱ.妖怪

開けっ放しの障子から夕方の風が吹き込む。

私は畳に凭れて、その心地良さに目を細めた。


「おや、最近また良い物語を聞いたのじゃが、きっと貴方の傑作じゃろう」

魅力的な女の声が風に乗って飛んできた。私は小さく笑い、熱を発する絵馬に触れる。

そこにあった甘美な力は、あっという間に私によって吸収された。


「ふふっ、館主はやはり情報通だ。良い話が聞けたようだな」

「面白かったわ……ある絶好調の質屋が突然検挙され、店主夫婦が奉行所まで連れて行かれたそうじゃ」

「ほお、普通の質屋じゃないみたいだな」

「ああ……あそこでは変わった物も高値で売れるそう、例えば……自分の子どもとか」

「利益を得るために、手段を選ばない、実に人間らしい」


「更に面白いのは……告発人はなんと、その夫婦が一番可愛がっていた末っ子だったのじゃ」


「そんな都合の良い話があるかのう?行方不明になったその末っ子は、夫婦が尋ね人の掲示を出してすぐに自分で帰ってきたのじゃ。そして帰って来て早々……両親を告発するとは……ねぇ?」

「そう、これが人間の言う因果応報というやつだろうね。得をする事もあれば、損をする事もあるのだ」


特に興味もなく笑って誤魔化しながら、絵馬の紋様を撫でると、温もりは完全に消えた。

汚れた魂から得たものだが、希望の力は純粋だな。


「因果応報?誰かが正義の名の下に、そう導いたように思うのじゃが」

女はニヤリと笑い、軽く私の肩に触れる。

「ふふっ……館主は、私がそんな余計なお世話をするような者に見えるのか?彼らが何しようと私には関係のない事だ。私は彼らの願いにしか興味はない」

だらだらと手足を伸ばして、目の前の絵馬掛けに絵馬を掛けた。

「時間だ、私は”散歩”に出かけないと。これで失礼する」

「ふふ……まあ良い。もっと興味深い物語を提供してくれるのを楽しみにしている」



酒臭い。食器がぶつかり合う音がすると、残飯はゴミの上に捨てられ、ゴミを漁っていたネズミたちが逃げていった。

いつの間にか、またこの見慣れた街まで足が伸びていた。


腰の絵馬がまた淡い光を放っている。

なら……行ってみよう。


「おいっ!クソガキ、早く隠している金を出せ!」

薄暗い廃屋の中、下品なチンピラたちが貧弱な男の子を取り囲んでいた。


どうやら匂いはここから来ているようだ。


「おいっ、てめぇに言ってんだ!聞こえねぇのかよ!さっさと金を全部出せ!」

チンピラたちは和解が、実に横暴だ。力強く男の子を押し倒した。


「ぼっ……僕は金なんて持ってない……」

聞いたことある声だ。思わず中の様子を見ようと廃屋に近づいた。

ボロい服を着た男の子が抱えている食べ物を守っていた。顔は殴られたせいで汚いが、とても明るい目をしている。


彼か……


「このクソガキ!じゃあ、この食べ物はどこからきたんだ!乞食だけじゃなくて、盗みまでやりはじめたのか?!」


食べ物が衝撃で地面に落ちると、男の子は慌てて拾い上げようとした、だけどチンピラに阻まれる事に。

「金は”妖怪さん”から貰った?ハハッ、じゃあその”妖怪さん”に助けを求めてみろよ?」


安っぽい揚げ物が地面に転がる。土まみれになった上に、チンピラたちに踏み潰された。

「やめて!」


「叫ぶな、うるせぇな!口を閉じろ!そうだ、てめぇの妹みたいに……永遠に黙ってろ、アハハハハッ!」


好き勝手に同類を蹂躙する醜い顔……

いつもながら、苛立ちが止まらない。


「おい、待て……誰だ?……よっ、妖怪!妖怪だ!!!」


黒い雲が消えると、チンピラはついに私の存在に気付いた。

体の震えが止まらない彼らはその場に固まって、逃げる事すらできない。さっきまで高笑いをしていたのに、実に滑稽な表情になった。


私は穏やかな笑みを浮かべながら、手を伸ばし、醜い生き物たちに指を差した。


「ああ、本当にうるさい……黙るべきなのは、貴方たちの方だろう?」


Ⅲ.明月

地面に突っ伏したチンピラたちは負け犬のように呻いている。

腰の銃を抜き、彼らにとどめを刺そうとした時。

細い手がそっと私の腕に抱きついた。

「妖怪さん、い、今の罰でもう十分です……」


怯えているが、男の子の目はまだ澄んだまま毅然としている。

はぁ……どうしてイジメられるのは、いつも善良な人間ばかりなのか。

まぁ、そもそもこんな事に首を突っ込む必要はなかった。

「次はもう助けない」


「うん……彼らはきっと悔い改めると思います!」

私が銃を下ろしたのを見て、彼はほっと息をつきまっすぐな笑顔を見せた。

チンピラたちは赦された事に気付いたのか、すぐに逃げ出した。


男の子に近づくほど絵馬の光が強くなり、その懐かしい感覚に私は思わずため息をつく。

「頑固なガキだ」

「ごめんなさい……妖怪さん、妹の誕生日が近いんです……これは彼女の小さい頃からの願いなんです、忘れろと言われても忘れられません」

彼は俯いて、地面に落ちて原形が留められていない食べ物を拾い上げる。汚れを払っても、食べられそうにないだろう。


「私に願うには代価を払わなければならない。怖くないのか?」


「いえ、わかっているつもりです……この前、妖怪さんに願った女の人は悪い人だったから、妖怪さんがお仕置したんでしょう?」

「ふふっ……私を正義の使者かなんかだと思っているみたいだな。だが……それは違う」

子どもは脅しやすいはず。私は目を細め、危険な笑みを浮かべる。


「いや、妖怪さんは良いひとだ!それに……代価が必要だとしても、妹のためなら、僕はなんでもします!」

一筋縄ではいかないガキは、一番手強いな。

「ふふっ……そこまで言うなら、妹のところへ連れて行け」



古びた小屋はガランとしていて、畳の上にコタツしか置いていない。


「あぁ……あ……」

男の子より幼い女の子は私の裾を掴み、口を開いているが、簡単な音しか出てこなかった。

先天的な失語症らしい。


「玉子、このひとが前に話した妖怪さんだよ!」


玉子はキラキラとした瞳でボーっと私を見る、少し開いた口元からはよだれが垂れている。


「妖怪さん、貴方のことを綺麗だと思っているみたいです。へへっ、彼女貴方の事を気に入ったようですね!」

男の子が無邪気な笑顔を見せると、女の子も笑い出した。


コタツには黄ばんだ紙が何枚もあって、そこには奇妙な落書きがたくさんあった。

四角、丸、三角……

その落書きの下には、いつも二つの小さな後ろ姿も描かれている。


「これ、玉子の描いた月です!玉子は絵を描くのが好きなんです……」

線の歪んだ「絵」を眺めている私を見て、男の子は真剣に説明してくれた。

「これは海苔の月、これは焼き団子の月、これはおにぎりの月、それとこれは……」

「ふふっ、玉子は食べ物が好きなんだな」

「はい、玉子が言っていたんです。お腹が空いている時は何でも美味しいって。月もきっと、そうやって美しいものをもたらしてくれるって」

横で玉子が大きく頷いて、両手を動かしている。

「玉子が、妖怪さんは月を見たことがあるか聞いてます」

「私か……見た事はないし、月に興味もない」


月は、美しいものをもたらすも何も……災いや呪いをもたらすことさえある。


一気に興が冷めて、私は絵馬と銭袋を外しコタツの上に置いた。

「もう行かないと……そうだ、その食べ物はもう食べられないから、新しいものを買うといい」

「えっ?妖怪さん、でも……」


振り返る事なく、私は小屋から出た。

背後で何かが強く光ったようだ。その後すぐに子どもたちの歓声が上がった。


「お兄ちゃん、さっきの絵馬の上で光ったのって、月、なの?……綺麗!」

「えっ、もしかして妖怪さんが描いたのかな……ああ、もう消えちゃった……待って!玉子、玉子話せるようになったのか?!」


暗い夜空の中、いくつもの小さな星だけが淡い光を放っている。私はひたすら前に進んだ。

あれだけの希望の力を消耗したんだ、今日はもっと多くの獲物を見つけなければならないな。


Ⅳ.物語

古びた小屋はガランとしていて、畳の上にコタツしか置いていない。

隙間風が通る壁にはたくさんの拙い絵が貼られていた。歪んだ線、四角、丸、三角……


私の御侍である淳之介の日課は、コタツに突っ伏してこれらの奇妙な形状を描く事だった。

一枚一枚全てに、「月の模様」と注釈されている。


カステラ、見てくれ!これは月が眠っている様子だ!」

描きかけの絵を持ち上げ、無邪気な笑みを浮かべている。


「貴方の月は、どうして眉をひそめているんだ?」

「夢を見ているからだ。この前カステラが寝ていた時みたいにな」

「どうして私を元に月を描いているんだ?」

「うーん……それは、カステラが月みたいだからだ」

「は?それはどういう意味だ?」

「えーと……どういう意味……とにかく、カステラは月みたいなんだ!」

「意味がわからない……まあ、貴方が似てるって言うならそうなんだろう」

「ああ!えへへっ……」


淳之介の目は澄んでいる。その年に似つかわしくない無邪気さが垣間見えた。

しかし人間の間では、これは発育が遅れた象徴であり、愚鈍とも言われる。


だがそんな淳之介は、私が見てきた人間の中でも一番美しい人だった。



「あれがあのバカの妖怪か……」

「シーッ……早く行こう、妖怪は不幸の兆しだ。夜になったらお前ん家に来るぞ」

「フンッ、何を怖がる必要がある……あのバカをイジメてないし、復讐するにしてもあのガキたちにだろ」


購入した食べ物を持って、長屋の間の薄暗い道を歩いていると、くだらない会話が絶え間なく聞こえてきた。

愚かな人間など無視するべきだ。だが彼らはさっき「イジメ」と言ったな……


「イジメ?誰が?」

男の胸倉を掴むと、男は驚いたように目を見開いた。

「違うっ、俺じゃない……俺とは関係ない、隣のガキたちだ……うげっ、いてぇ!」


善良が、虐げられる弱点になるべきではない。

この世界は、こうであるべきではないんだ。


淳之介をイジメた醜い人間たちを踏みつけ、悲鳴を揚げて許しを請い願う姿を見つめていると、淳之介がそっと私の手を取った。


カステラ、私のために悪い事をしちゃいけない……」

彼は首を振り続ける、目は澄んでいて毅然としていたが、憂いと自責の念が滲んでいた。


「彼らは淳之介をイジメた悪党だ」

「もう十分懲らしめた……きっと……悔い改めると思う……」


淳之介の言葉で、私の心はまた情に流された。

私は私の弱さが憎い。食霊として生まれ、力を持ちながらも、大切な人すら守れない。


私でなければ、淳之介は死ななかった。


「月を見に行こうと思うんだ。でもそこには食霊に聞く呪いが掛けられているらしい。だから連れて行けない」

「大丈夫!帰ってきたら月を描いてみせるから。本物の月は絶対綺麗なんだろうな……」


風に吹かれて揺れる書き置きに書かれた歪な字には、興奮や憧れが満ちていた。


しかし、彼が夢見ていた美しい月は、彼に優しい輝きを与えなかった……

「あそこ」には、恨みを持った醜い人間たちが仕掛けた罠……恐ろしい地獄に過ぎなかったのだ。



だからーー今日の私は、もう情に流されない。


「どうした?乞食のガキを襲うよりも、私と取り引きでもしないか?」


「願いをこの絵馬に書くだけで、あらゆるものを手に入れられるよ。富、名声、地位……なんでもだ」

「ほっ……本当か?」

痣だらけのチンピラたちは角で体を震わせている。怯えているくせに、私が手にした絵馬を見つめて貪欲に唾を飲み込んだ。

「いや、まさか……俺たちを呪うつもりか?」

「ふふっ、呪いたかったら、こんな面倒なことはしないさ」

「これ以上ガキをイジメるのを止めたいだけ。それに、貴方たちにとって損はないだろう?」


警戒していた目に熱がこもっていく。私は穏やかに微笑んだ。


「本当に……なんでも手に入れられるのか?」

「絵馬に書けるのならね、何でも叶うよ」



「そうやって……彼らは絵馬にたくさんの願い事を書いていたよ、絵馬の裏にまでね」

蝋燭が数本灯された和室、畳に歪んだ人影が落ちている。私は室内を見回して、淡々と今日の物語を締めくくった。


「そっ、それから……」

女の子たちはお互いを抱きしめ合いながら、好奇心から続きを促してきた。

「もちろん彼らの願いは叶ったよ。さぁ……今日の物語はここまでにしよう」


蝋燭は次々と消え、女の子たちも眠りについた。


Ⅴ.カステラ

薄暗い縁側で、提灯の光がゆらゆらと揺れている。持っている者の足取りがふらついているのだろう。


「バカ!何やってるのよ、前に階段が――ねぇ、気をつけて!」

提灯が床に落ち、あん肝はよろめくが、本能的に腕の中の「少女」を庇うように抱き締めた。

だが予想していた痛みは訪れる事はなかった、彼らは闇から伸びた手によってしっかりと支えられていたのだ。


「ここは暗いし、曲がり角はもっと見え辛い。気をつけるように」

穏やかな男の声は、夜風のように柔らかい。

提灯も拾われ、あん肝に手渡された。


「カ、カステラ、ありがとう……」

「あっ……そうだ、雛子も大丈夫か……」

「フンッ!この雛子様を壊したら、絶対に許さないから!おっ、おいっ、お前こそ大丈夫か?」

あん肝はおずおずと「少女」の体を見て、傷がないことを確認して、ホッとした。

「ご、ごめんなさい……無事で良かった……」

「フンッ!バカ!薬を飲んだばかりでクラクラしているんだから、もっと薬師のところで休むべきだったんだ!」

雛子は文句を言っているが、隠しきれない気遣いが聞こえてくる。


カステラは目を細め、意味深な笑みを浮かべた。

「ああ、薬師の薬か……どうやら彼の研究は近頃あまり進んでいないようだね」

「えっ、研究……?研究ってなんだ?薬師はまた何か変な丸薬を開発しているのか?」

「ふふっ、そのうちわかるよ……それじゃ、お先に失礼する。気をつけて帰ってね」


タッタッ、と足音が遠ざかっていく。華やかな浴衣の模様は、夜に咲く花の様にどこまでも続く闇へと消えていった。


「バカ、カステラってなんだか変だと思わない?」

「そっ、そうかな……百聞館に来たばかりだけど、優しくて良い人だと思う」

「まあ、どうでもいいけど。おいっ!このバカ!そっちじゃない!柱にぶつかるっ!」



薄暗い和室の中、消されたばかりの蝋燭はまだ火花を散らしている。女の子たちは畳に寝転んで、ぐっすりと眠っていた。

音もない暗闇の中に、異様な気配が潜んでいる。


「おや、今日は早いのう、今日の物語が丁度終わったところじゃ」

夜風に絡みつく女性の声が、カステラの耳元をそっと撫で、和室の中で泳いでいる。

「今日も、面白い話をたくさん聞いたのじゃ、ふふっ……」


「館主も、子どもたちにたくさんの面白い話をしたのだろう。恐怖の感情が……まだ一杯残っている」

「ふふっ、まだ吸い切れていないのじゃ、もう少し待っておれ」


冷たい夜風が吹く。窓の外の木の影が、子どもたちの寝顔に映って揺れている。


「そうじゃ、カステラ……前回の話はなかなか良かった。願いだの月だの、子どもたちは興味津々じゃったぞ」

「館主はあの日、客と面会する予定があるから私に代打を任せたのだろう……もしかして、こっそり聞いていたのか?」

「ふふっ、わざとじゃない、面会が早く終わったからじゃ……」

「おや、もう出来上がったみたいだ」


カステラは眠っている子供たちに近づき、俯いて何かを確認している。


「安心しろ。約束通り、彼女たちには十分な恐怖を残した。彼女らが帰ってから、近くにいる人間たちに徐々に伝染するだろう……」

「館主もわざわざありがとうございます。適度の恐怖の方が、より人間の心の中の願望を刺激できる……私たちの計画は、すぐに実現出来るかもしれない」


「当然じゃ……こやつらをここから連れ出せ。私も、休憩しなければ……ふわぁ……おかしい、最近どうしてかいつも寝不足なのじゃ……」



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タイトル FOOD FANTASY フードファンタジー
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  • RPG(ロールプレイング)
ゲーム概要 美食擬人化RPG物語+経営シミュレーションゲーム

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