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烏雲托月・エピソード

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最終更新者: 名無し

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烏雲托月のエピソード

御侍には心を許しているが、ほかの人間や食霊に対しては、近づきがたい不穏なオーラを漂わせている。若く見えるが実は…


Ⅰ 新生

昼を過ぎたばかりだけど、空はどんよりとした雲に覆われていた。まばらな雨が新しく建てられた墓石の上に落ちても、柔らかすぎて水しぶきも起こせない。

君の死を何回見てきたのかはもう覚えていない。しかしこの不幸な運命はやはり私が君にもたらしたのだろうか?



「彼女があの人の食霊なのか?」

「そうだ。あの人が彼女を召喚してから、ずっと不運が続いている。まるで呪いみたいだ……」

「あの人はどうやって死んだんだ?」

「彼女が心配で暴雨の中を探しに行ったって聞いたぜ。あの人はずっと病弱でな。今回は結核に感染して数日も持たずに死んだってよ」

「わからねえな。あいつ本当に食霊なのか?まさか堕神や幽霊とかじゃないだろうな?」

「しっ!声を抑えろ……彼女に聞かれたら、お前まで死ぬぞ?」


こんな呟きは、君が死ぬたびに聞こえてくる。これが原因でよく鬼や魔女とみなされ、一部の人間に敵視されてきた。

でも大丈夫。もう慣れた。この別れは、君がもう一度私のそばに戻ってくる事でもある。



手の中の月の卵がそっと震えて、墓石から少し霊力を吸い出して結びつける。

「……再び生まれ変わった。今回はヒレイナにいるのか」


いつもみたいに、目の前の墓石の下には、もう私の愛する君はいない。新しく生まれ変わった君とは……もうすぐ会える。


Ⅱ 守護

1回、10回、100回……これが何回目の輪廻なのかはもう覚えていない……


初めて契約を結んだあの日から、君は私の最も大事な人になった。

今まで私が諦めなかったのは、君が私に教えたこの感情が支えてくれてきたから。――それは愛。


私達にとって、それはとても短くて、まるでいつも別れを意味しているようだった。

幸いなことに、毎回私は再び君を見つけられる――。


ヒレイナの大通りで人ごみを通り抜けると、友人と遊んでいる君を見つけた。

前回の死から六、七年が過ぎた。今の君はまだ子供で、天真爛漫な笑みに満ちている。

今回の君は以前のどの君に似ているのか。私は考えはじめた。


私を守るために堕神に飲み込まれた勇敢な君か?

それとも今際の際に私に笑顔でいてほしいと言ってくれた優しい君か?

……


しかしどの思い出も、君の死に際しか思い出せない。そう思うと、穏やかな気持ちが乱れた。

「お姉ちゃん、僕を見ているの?」

「……気にしないで」

「う、うん……」

君は遊びに戻ったけど、時々私の方を気にしていた。

これは私達の間の、まだ絶つことがなかった感情の絆で、私が君を見つけるための唯一の手がかりだ。


ここからは待てばいい。君ともう一度契約するまで、私は必ず君を守る。

だから、早く大きくなってくれ。


Ⅲ 心の蟠り

再び召喚された時、君はもう大人になっていた。私を見た瞬間に表した喜びの感情が、私に以前の無数の気持ちを思い出させた。


「……今回は、少しは長くいられるんでしょうか?」

「え?長くとは?」

「……何でもありません。」

私は君に笑顔を見せたいけど。でも、内心はずっと静かだった。


「これからいっしょに頑張ろう。ん?そういえば何か見覚えが有るような感じがする。俺たち初対面だよな?」

「……そうですよ?」

今回、君は私達の過去を思い出せるのでしょうか?


「う……すまん。俺の考えすぎかもしれない」

「大丈夫……もう慣れました。」

「でも、綺麗な目だな……まるで他人の全てを見抜けるような目をしている」

そう、私は予見できる。君はやがて無数の墓石の中の1つになる。でもこのような確定した未来を前にしても、私は何もできない。


「コッホン、おしゃべりはここまでにして、今日から俺のそばに居て色々と手伝ってくれ。わからない事があれば他の食霊に聞いてくれれば、すぐに馴染めるはずだ」


でもだからこそ、今の時間をより大切にするべきだ。


あれから1年、2年……時間が静かに流れ去る。でも「その日」の到来を待つ私は重たい焦燥に囚われ続けた。


Ⅳ 往復

陰雨の中。

私は庭に座って、静かに軒から流れる水滴が階段のそばにある青石に落ちる様を見つめる。それはまるであの時の墓石のよう……

私は頑張ってそれを思い出さないようにして、代わりに美しい出来事を思い出そうとするが、どうもぼんやりしていてうまく思い出せない。


「よ、随分長くここにじっと座ってたが、こんな天気が好きなのか?」

「いいえ」

「お……じゃあ好きなものはあるか?」

「……!」


思い出が再び湧き上がってきた。そうだ、毎回毎回、君がこうやって私に問うことから全てが始まる。


かけらのようだが、私ははっきりと覚えている。君が初めてこれを私に聞いた時の恥ずかしそうな様子を。

どれだけの時間が経っても、これだけは変わることがなかった。


私が好きなのは君だ……。でも心の中の思いを告げたら、恐らくまた君は死を迎えることになるだろう。


「俺はもっと君の事を知りたい。君は口数は少ないけど、毎回俺を見ている。まるで俺から声をかけられるの待ってるようだ。俺の勘違いかもしれないけど、確認したくてね。」


「結局始まってしまったのね…」

「何がだい?」

「終わりの始まりが」

それは私のあこがれであり、来ないで欲しいと切望する物だ。


「始まりか……全ての事に始まりはある。始まりがあれば終わりもある」

「そのような終わりは、永遠に来なければいいのに。」

「終わりは必ずくる。でも、君が心配している終わりじゃないかもしれないだろう?」

「私が心配している終わりじゃない……?」

「俺達に未来がある限り、すばらしい終わりは必ず存在する。今の俺たちにとって、それが幸せな結末だと期待してもいい。それと同時にきっと幸せな新しい始まりだ。まるで暗闇の中の光のように」

「光……」

「そうだ、今の俺たちのようにな!」


そうだった、君はいつもこんな風に前向きで、未来に対して希望を抱いていた。


「すまないな。わけがわからない綺麗事を言って」

いいえ、君の言葉はすべて私の心の中に刻み込みたい。君が私のそばにいれば、私は君が言う光が見える。その光がずっと存在して消えなければどれだけいいのだろう。


「ふ~、もうこんな時間か。俺は出かけなければならない。えっと、勝手なことかもしれないが、烏雲托月、帰ったら答えをくれないか?」


「答え?」

君は説明せずにただ笑っていた。陰雨の中で、君はまるで朝陽を浴びているように出かけた。


……………


そして二度と帰ってこなかった。


やはりこんな結末になった。


幸せというものは、恐らく永遠に私の元にはやってこないのだろう。

目の前に淡い希望が現れるたびに、死が訪れる。

涙にはもう価値がない。

感覚が麻痺して、悲しみすら感じられなくなった。


1回、10回、100回、1000回……いったい何回繰り返したのか、もう覚えていない。

君が言うその幸せな終わりは、その光は、一体いつになったら見えるのだろう?


Ⅴ 烏雲托月

ここはヒレイナ。

「お!おおおおおおおお!」

とあるレストランから頭が痛くなるような叫び声が聞こえた。

その声を聞いて、すぐ1人の白髪の少年と1人の小さくて可愛らしい少女が慌てて入ってきた。


「おい!お客たちは堕神が出現したかと騒ぎ出したぞ。いったいなにしている!?」

「御侍様うるさい!ご飯を作ってる時は静かに」

「お、悪い。ライス、イキ、こっちに来て私が新しく召喚した食霊を見てくれ!」

「食霊?わあ、この人全身真っ黒。どういうこと?」

「これは……?」

黒衣の娘はゆっくりと目を開いて、ぼんやりと召喚者に目を向けた。


「また会ったのか……今回は、少しは長くいれるんでしょうか?」

「え?何が長く?」

「……何でもない」

「アホか。食霊には過去の記憶がある事を忘れたのか?」

「そうだった、忘れていた。いろいろあったようだな」

「思い出す価値のない事だ。今、君がここにいればそれでいい」

「なるほど一理あるな。ところで、君のその目は本当に……」

「……」

「コッホン!そんな恥ずかしい事を言っても仕方がない……。とにかく、私達のチームはまだまだ大きくならなければならない。君の力も大切だ。私と一緒に未来を作ろう!」

「恥ずかしい事言っちゃって。」

白髪の少年が嫌そうな顔をして、二人はまた騒ぎ出した。


黒衣の娘は静かにそれを見て、その人が言った言葉を呟いた。

「……未来を……作る。」



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コメント (烏雲托月・エピソード)
  • 総コメント数1
  • 最終投稿日時 2019年01月11日 22:03
    • ななしの投稿者
    1
    2019年01月11日 22:03 ID:m787clra

    ページ名間違ってませんか? 鳥(とり)じゃなくて烏(からす)では?

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