桂兎入懐・ストーリー
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目次 (桂兎入懐・ストーリー)
桂兎入懐
プロローグ
中秋前夜
絶境
月明かりは森の木々のまにまにに降り注ぐ。如意巻きは一人ぼっちで静かな小道に立ち、目の前のわかれ道を見ながら頭を掻いている。
如意巻き:あれ?確かにここは印がついてる記憶があるんですけど、どうしてなくなったんですか?
如意巻き:まあ、適当に選びますか。間違っていたらここに戻って、もう一本の道を歩けばいいです!如意が守ってくれますから、きっとうまくいくでしょう!
胸から如意を取り出し、しっかりと握りしめた如意巻きは自信満々に森の奥へ向かっていった。
数時間後。
如意巻き:……
如意巻き:もうここは6回目ですけど……また道に迷ってしまった?あれ、もしかして、如意の指示を誤解しちゃった?
彼が思いあぐねていると、後ろから狼の吠える声が聞こえた。如意巻きが驚き、振り向いて見ると、黒い影が森の中から飛び出してくる。
如意巻き:うわっ!お、狼が!
「狼」の影さえ見えていない如意巻きは、叫びながら逃げようとするが、時すでに遅し。
パッンーーと「狼」の手が彼の肩を叩いた。
如意巻き:あっ!
???:ガウーーガウーー
如意巻き:え?
想像した通りの痛みはなく、かえって鈴のような笑い声が耳に入った。
???:あははっ、如意巻き、捕まえた!
如意巻き:ふうーーエンドウ豆羊かん、貴方でしたか。びっくりした……
エンドウ豆羊かん:そこまでビビらんでも。古い言葉がある。仰いで……狼に恥じずって!こら、こんな夜中になにをしておるのじゃ?
如意巻き:ちょっと物騒な感じがして、気晴らしに。それに……仰いで天に恥じずっていうのですか。
エンドウ豆羊かん:ポイントはそこじゃない!ポイントは其方がやましいことをした点じゃ!
如意巻き:僕が午後にデザートをひとつ多く食べたことですか。でもそれは貴方が食べきれないから押し付けてきたわけで……やましいことですかね?
エンドウ豆羊かん:違う。其方は妾を呼ばず、ひとりでこっそりと探険をしておる件じゃ。友達甲斐のないやつめ!
如意巻き:探険?ただ外を見に来ただけです……もし本当に危険があれば、友達として、なおさら貴方を呼ぶべきじゃないのでは?
如意巻き:この森は、妙な気配がする……なんだかこの間、夢回谷の伏魔陣が破られた感じと似ています……貴方もあのような怪物に出会いたくないでしょう。
エンドウ豆羊かん:それはそうだけど……ち、違う!どんな怪物でも、妾の手にかかれば一発じゃ!
如意巻き:はいはい。ところで、エンドウ豆羊かん、どうして貴方もこんな夜更けにウロウロしているんですか?
エンドウ豆羊かん:其方が道に迷えば、皆で探しに行かねばならんだろ。故にまえもって其方についてきたわけだ。
如意巻き:僕を尾行していたんですか?
エンドウ豆羊かん:尾行とは聞き捨てならん!友達としてのお世話じゃ!
エンドウ豆羊かん:ここは暗くてつまらん。帰るぞ!
话音未落,黑暗中不知何处又传来的一声低沉嗥叫。(訳:言葉が落ちる前に、暗闇のどこからともなくまた低い遠吠えが聞こえた。)
如意巻き:あはは、エンドウ豆羊かん、僕を甘く見過ぎですよ。同じイタズラに2度も騙されるほどバカじゃない!
エンドウ豆羊かん:バ、バカ。其方はやはりバカじゃ。妾が手前におるのに、どうやって……
如意巻:確かに……
怪物:ゴオーー!
如意巻き:!!!
ストーリー1-2
突然、後ろから吠える声が聞こえてくる。ふたりは顔を見合わせて立ち尽くしている。黒い影に隠れていた怪物はまだ行動していない。その時、遠くから高らかな鶴の鳴き声が夜色の静寂を破った。
如意巻き:松鶴先生
松鶴延年:くっ……あなた達!むやみに動いてはいけません!
松鶴延年は鶴に乗って現れ、着地すると如意巻きとエンドウ豆羊かんを自分の後ろにかばおうとした矢先、あの怪物は草むらに潜って逃げていった。
怪物が姿を消した方向に、なにかがちらっと光ったようにみえる。
エンドウ豆羊かん:あれ?あそこになにかが輝いておるのう?もしかして……
松鶴延年:……
如意巻き:せ、先生、僕らは……
松鶴延年:話は後で。ひとまず帰りましょう。ついて来なさい。
深夜
望松楼
松鶴延年:……ですから、これが経緯なのですか?
如意巻き:はい、先生が来てくれて助かりました。さもないと……
如意巻き:先生、ありがとうございます。……すみません、迷惑をかけてしまいました。
松鶴延年:はぁ、迷惑はいいんですが。おふたりに絶境でなにかあったら、冰糖燕窩に合わせる顔がありませんから。
エンドウ豆羊かん:そんな厳しい顔をするでない。妾らは大丈夫だった。松鶴延年は強大な神通力を持っておる故、顔を見ただけで、怪物は退散したのじゃ!
エンドウ豆羊かんは松鶴延年のそばに飛んでいき、話しながら彼の袖を引っ張る。顔はなにかイタズラを考えているかのようにニヤニヤしている。
エンドウ豆羊かん:そうじゃ、先生!さっき、あの怪物は鏡花池へ向かっていったのじゃな?島主に危険はないのか?
松鶴延年:心配はいりません。玉麒麟に出会っていれば、危険なのはあの怪物のほうでしょう。
エンドウ豆羊かん:じゃが、鏡花池にいる書画は島主のような力を持っておらん。あんな希少な書画が怪物に壊されれば……
松鶴延年:……なるほど。鏡花池の蔵書と画集は仙宿さんが残したものです……私はすぐ……
エンドウ豆羊かん:ど、どうした?早く行くのじゃ!
松鶴延年:貴方は今、先生と呼びましたか?
エンドウ豆羊かん:ああ……なにか問題でも?
松鶴延年:私の記憶が間違っていなければ……貴方は悪いことや嘘をつく時だけ、そう私を呼ぶようですが。
エンドウ豆羊かん:なんと!妾が嘘を?嘘をつけば、か、雷の……天罰を受けることになるぞ!
ガンーー
と話が終わった途端、夜空に銀色の光が輝き、エンドウ豆羊かんの驚き気まずそうな顔を照らした。
如意巻き:ああ、神様の導き……
エンドウ豆羊かん:ちっ、このバカ、どっちの味方なんじゃ!
松鶴延年:……
エンドウ豆羊かん:ただの偶然じゃ!もしかして、如意巻きが引き寄せてきた雷かもしれん!知らんじゃろうが、彼が夢回谷に来たばかりの時はよく雷に打たれていたしのう!
エンドウ豆羊かん:とにかく本当に嘘などついておらん!松鶴延年、早く鏡花池に向かおう。遅くなると書画が紙屑になるぞ!
松鶴延年:……よいでしょう。まぁ、玉麒麟に相談もあるのですが、貴方たちは……
エンドウ豆羊かん:大人しく部屋の中におるから、安心するがよい!
エンドウ豆羊かんは如意巻きを仲間にして保証したり誓ったりした末、ようやく松鶴延年の許しをもらった。ふたりは大人しくここで知らせを待たせることにし、それから黒夜の中へ身を投げた。
―――
エンドウ豆羊かん⋯⋯
・また人を騙したでしょう?
・先生の力になりたいと言い出してないなんて?おかしいですね……
・先生の言ったことは本当ですか?
―――
如意巻き:あの怪物を放っておいて、絶境でなにかされたら、僕らには引き受けられない責任ですね。
エンドウ豆羊かん:もちろんやつを放ってはおかん。だからふたりで行動するのじゃ!
如意巻き:えっ?
エンドウ豆羊かん:あの怪物はどこへ向かうかわかっておる。捕まえに行くぞ!
ストーリー1-4
エンドウ豆羊かん:あの怪物はどこへ向かうかわかっておる。捕まえに行くぞ!
如意巻き:僕らが、怪物を?さっき貴方は怖くて動けなかったのに!
エンドウ豆羊かん:そ、それは反応できなかっただけじゃ。もし事前に覚悟ができていれば、怖くなどない!ただの怪物に過ぎぬ、妾は食霊じゃ!
エンドウ豆羊かん:谷主も、松鶴延年たちも、妾らを子供扱いしておる。本当に悔しい!ちょうど、この機会にあの怪物を捕まえれば、妾の実力を証明できる!
エンドウ豆羊かん:そうすれば、これから谷を出て外に遊びに行きたい時には、誰にも止められん!
如意巻き:……最後は、貴方の本当の目的ですよね……でも、確かにこれまでずっとみんなの世話になってきたし、なにかお返しがしたいですね……
如意巻き:でも途中でなにかあったら、ムリはダメです!逃げられるなら逃げますし、逃げられなくても助けてって大声を出しましょう!
エンドウ豆羊かん:わかっておる。早く行くぞ。遅れると手がかりが雨水に流される!
如意巻き:手がかり?なんの手がかり?
エンドウ豆羊かんは如意巻きを引っ張って部屋を出ながら、説明をする。
エンドウ豆羊かん:さっきあの怪物が逃げ出した時、草むらの中にあるピカピカとする物を見て急に思い出した。あれは今日の昼頃、森の中でデザートを食べて落とした包み紙じゃ。
エンドウ豆羊かん:あの包み紙はグルイラオ産の珍しい物で、ピカピカの金色の粉がついておる。あの怪物はきっと足についておるはずじゃ。そうするとやつの逃げ道に足跡が残る。それを追ってやつを見つけ出すのじゃ!
如意巻き:待って!昼頃に森の中でデザートを?ひとりで?どうりで午後は譲ってくれたわけですね……
エンドウ豆羊かん:も、元々分けようと思っていたが、つい食べてしまって……まあ今のポイントは、雨の前にあの怪物を探し出すことじゃ。急ぐぞ!
如意巻き:それじゃ、この後のデザートは……
エンドウ豆羊かん:絶対半分こじゃ!
と話しながら、ふたりはさっき怪物に出会った森に駆けてきた。森の中を探し回ると、すぐに金色の足跡を見つけた。
如意巻き:本当にあるとは……雨がまだ降っていないうちに、早く追いかけましょう!
エンドウ豆羊かん:よし、この北朔一の韋駄天と言われた足を……キャッ!なにそれ!
追いかけようとすると、いきなり2匹の飛龍に道を遮られた。ふたりは驚いて後ろへ下がる。そして来た者を見てほっとした。
如意巻き:ふぅ、怪物に出会ったと思いきや、親王の天雷と地火でしたか……
凍頂烏龍茶:ふんっ、晴天にいきなり雷が鳴ったわけがわかった。如意巻、貴公がいたからか。
エンドウ豆羊かん:もう、其方とゆっくりと話す時間はない。用事があるから、早くどくのじゃ!
凍頂烏龍茶:用事?こんな遅い時に森の中でなんの用事だ?
如意巻き:えっと、雨が降る前にあのピカピカしているものを……
エンドウ豆羊かん:こ、このバカ。なんで教えるのじゃ!?
如意巻き:あ、聞かれたのでつい……
凍頂烏龍茶:ピカピカしているもの?先程、余はそこの草むらに、この光っている物を拾ったが、貴公の探している物はこれか?
エンドウ豆羊かん:うぅ?どれ?見せろ!
凍頂烏龍茶:余は利用価値のない者とは付き合わん。
エンドウ豆羊かん:火事場泥棒め!
凍頂烏龍茶:必要な物を取るに過ぎない。
エンドウ豆羊かん:チッ、ケチなやつ……わかった。妾が保証する、これからの1ヶ月間は、宮殿のやったことをロイヤルゼリーに教えると脅しをかけん。
凍頂烏龍茶:3ヶ月。
エンドウ豆羊かん:2ヶ月!
凍頂烏龍茶:約束だ。
如意巻き:……このふたり、大人げない……
例のものをエンドウ豆羊かんに渡すと、凍頂烏龍茶は2匹の小龍を収め、満足げに森を出た。如意巻きもピカピカしている物の正体が見たくて、近寄ってくる。
―――
⋯⋯
・うん?柄の刻まれているガラス玉です。
・ガラス玉?特別な柄ですね……
・一ひとつのガラス玉というだけで、怪物とは関係有りませんよね……
―――
エンドウ豆羊かんはガラスの玉をよく見て、顔色が変わった。
エンドウ豆羊かん:あ……あり得ぬ!
ストーリー1-6
エンドウ豆羊かん:あ……あり得ぬ!
如意巻き:どうしました?この玉になにか問題が?
エンドウ豆羊かん:これは妾が白ちゃんに……贈ったプレゼントじゃ。
如意巻き:白ちゃん?
エンドウ豆羊かん:そいつは絶境の森にいる、人の言葉がわかるウサギじゃ。この前森の中をウロウロしておる時偶に出会ったのじゃ……
エンドウ豆羊かん:しかし、それがなぜここに?
如意巻き:もしかすると、思いがけず落としてしまったのかもしれません……ここは白ちゃんのよく出るところですか?
エンドウ豆羊かん:いや……白ちゃんのよく出るところは……しまった!あ、あの怪物の逃げ道の方向じゃ!
如意巻き:えっと……焦らないで、動物はよく危険を感知できますし、さらに白ちゃんはウサギですから、きっと無事ですよ!
―――
⋯⋯
・やっぱり、探しに行かなくてはならん!
・白ちゃんは警戒心はない。もしかして……
・もしその意外があったらどうつもりじゃ!
―――
如意巻き:……わかりました。一緒に探しに行きますから!
雨の夜
森の奥
雨が森の緑鮮やかな葉に飛び散り、カチカチと音を立てる。ふたりの急ぐ足音はある巨大な古樹の前に止まった。
如意巻き:ふう……エンドウ豆羊かん、どうして止まるんですか?
エンドウ豆羊かん:この先は白ちゃんの住まいじゃ。
エンドウ豆羊かんは何年間も生きてきた古樹を指した。如意巻きは彼女の目線を追っていく。古樹の根は周囲の隅々にまで広がっていたが、今この辺りは腐敗の息吹が溢れ、神聖な霊力は少しも感じない。
エンドウ豆羊かん:そんな……古樹は元々神聖な霊力に満ちておったが、今は……
如意巻き:もしかして、あの怪物のせいで……
エンドウ豆羊かん:くそ、絶対捕まえてやる……如意巻き、入ってみるぞ!
如意巻き:うん!
エンドウ豆羊かんは樹の穴に急ぎ足で歩く。如意巻きも後ろについていたが、無意識にそばにある木の茂みの異様さに気づき、足元を止めた。
如意巻き:あれ、おかしい。この周りはどうしてこんなに動物の毛が落ちているでしょう?
エンドウ豆羊かん:短い……白い……こんなにいっぱい……もしかすると白ちゃんの……?白ちゃん!どこにおる!?
この時、彼女の呼びかけに応えているように、穴の中からゴロゴロと声が聞こえてきた。その後、黒い影が穴の中から飛びかかってくる。
怪物:ゴオーー!
エンドウ豆羊かん:!
凍頂烏龍茶:まったく目を離すとこれか、後ろに下がれ……地火。
地火:ガウーー
ストーリー2-2
まだ反応できていないエンドウ豆羊かんは如意巻きに後ろへ引っ張られ、転びそうになる。しっかり立ち止まると、いつの間にか出てきた凍頂烏龍茶が火龍を放し、あの怪物を樹の穴に押し返す。
如意巻き:親王、どうして……
凍頂烏龍茶:ふたりのガキが絶境に迷惑をかけぬように、念のためついて来てみたが、予想通りだな……
如意巻き:い、いえ、僕らではなく、あの怪物が……
エンドウ豆羊かん:あの怪物が白ちゃんを殺したのだ!凍頂烏龍茶、どけ!白ちゃんの仇をとらなければ!
凍頂烏龍茶:どうぞ。
青年は肩をすくめて、火龍を下げさせ、横に退いた。エンドウ豆羊かんは樹の穴へ飛び込もうとして、如意巻きに引き止められる。
―――
⋯⋯
・エンドウ豆羊かん、落ち着いてください!
・落ち着いて、なにか事情があるかもしれません。
・ちょっと変な感じが……待ってください!
―――
エンドウ豆羊かん:なんじゃ?妾を止めるでない!白ちゃん、白ちゃんが……
如意巻き:もし白ちゃんが本当にあの怪物に殺されているなら、貴方を手伝って彼をやっつけてもいい!でも彼の身に本当に変わった感じが。ほらーー
エンドウ豆羊かんがあの怪物をよく見てみると、彼は地面に伏せて頭を下げ、地を掻いて、悔しそうに嗚咽をだしている。
如意巻き:彼は敵意がないようです……
エンドウ豆羊かん:このバカ!やつの可哀想な顔に騙されてはならん!
如意巻き:ただ、彼からなにか手がかりを見つけて、まずは……白ちゃんが本当に殺されたかどうかを確かめないと。
エンドウ豆羊かん:……どうやって?その怪物が言葉がわかって、妾の質問に答えてくれるのか?
如意巻き:そうかもしれない……試させてください。
エンドウ豆羊かん:……
エンドウ豆羊かんが反対しないのを見て、如意巻きは彼女を離した。緊張して唾を飲み込み、怪物へ向かっていった。
如意巻き:こ、こんにちは。如意巻きです。この樹の穴に棲んでいたウサギの友達の友達……
凍頂烏龍茶:怪物どころか、そんな複雑な関係を理解するのは人間でも無理だろう。
如意巻き:コホン……この樹の穴に棲んでいたウサギはどこにいるか知っていますか?も、もし知っていれば、教えてくれますか?
怪物:ゴオ?
如意巻きの話が理解できないように、怪物が首をかしげて、喉から戸惑うような音がした。
エンドウ豆羊かん:もうよいじゃろう。人の言葉はさっぱりわかっておらん!それに、白ちゃんを傷つけてなくとも、いつか災いをもたらす故、早く倒したほうが良い!
如意巻き:も、もう少し待って……ありました!
なにかを思い出したように、如意巻きは慌てて自分の身を探り、それから緑の草を取り出した。
凍頂烏龍茶:それは……なんじゃ?
如意巻き:これが肉食動物が最も嫌がっている霊草です。もしこの怪物が食べれば、彼が白ちゃんを食べていないことと、絶境に大きな被害をもたらさないことを証明できます!ただし……
如意巻き:この霊草は先日碧螺春先生に頼まれて保管しているものです。なくしてしまえば、先生にまたお説教されてしまうでしょう……
如意巻き:まあ、今のところは白ちゃんの安全を確認するのは最優先ですけど!
ようやく決心がついたようで、如意巻きは霊草をあの怪物の前に置いた。最初は警戒してつついていたが、その後迷わずそれを呑み込み、美味しそうに食べた。
如意巻き:食べました!彼は草食動物です。白ちゃんを傷つけるわけがありません!
エンドウ豆羊かん:ならば……白ちゃんはどこに行ったのじゃ?それに入り口の毛はどういうことじゃ……
怪物:ゴオ~
みんなが戸惑っている間、怪物はお腹が一杯になって、楽しく尻尾を振ると、穴へ飛びこんだ。もう一度穴から出てきた時、口の中になにかピカピカしている物を咥えていた。
エンドウ豆羊かん:それは……妾が白ちゃんに贈ったガラス玉!なんで……
話をよそに、あの怪物は木の周りを左右に走り始めた。その姿を見て、エンドウ豆羊かんは固まった。
エンドウ豆羊かん:それは……妾が白ちゃんと遊んでいたゲーム……ひょっとして……
エンドウ豆羊かん:其方は……白ちゃん?
怪物:ゴオ~~
すると、怪物はエンドウ豆羊かんの話が本当にわかったように、頷いて、大人しく地に伏せた。
エンドウ豆羊かんはゆっくりと前に出ると、あの怪物は恐る恐る頭を伸ばして、馴れ馴れしく彼女の手にこすりつけた。
エンドウ豆羊かん:本当に白ちゃんじゃ!良かった、白ちゃん。無事だったとは!
如意巻き:でも……白ちゃんはウサギじゃないんですか?どうしてそんな格好に?!
凍頂烏龍茶:望松楼に行って見よう。この事件は絶境で起こったことだし、博学多才な松鶴延年なら、原因を明らかにできるのだろう。
エンドウ豆羊かん:はい!
ストーリー2-4
望松楼の中で、松鶴延年は片手で古書を持ち、もう片方の手は白ちゃんの頭の上に置き、体の状態を探っているようだ。
松鶴延年:……体内にまだ瘴気が残っているようですね。それに古籍の記載により、今回ウサギが異変した原因は瘴気に侵入されたからでしょう。
如意巻き:瘴気が侵入?
松鶴延年:死体などの不潔の物から放出した瘴気にさらされたせいで、異変を起こしたのかもしれません。
エンドウ豆羊かん:瘴気……聞き覚えが……そうじゃ!
如意巻き:なにか心当たりがありますか?
エンドウ豆羊かん:瘴気とは、夢回谷が何年にもわたり対抗しておるものじゃ。谷の中に不思議な泉があって、かつて谷主はあの泉水に頼り瘴気に晒された多くの人を助けてあげておった!
如意巻き:ということは、あの泉が白ちゃんを回復してくれるかもしれません!
エンドウ豆羊かん:そうじゃ!早速、夢回谷に行って白ちゃんを助けよう!
―――
⋯⋯
・ひとりでは心配ですから、一緒に行きましょう!
・僕を忘れないでください!僕も一緒に!
・もう長くここにいます。僕も夢回谷に戻ってみたいです!
―――
凍頂烏龍茶:そういえば、絶境にしばらく邪魔をしていたな。そろそろ帰る時か……
凍頂烏龍茶:ちょうど、余の代わりに、ふたりは夢回谷に戻って、修繕工事はどこまで進んでいるか、あれら王室の匠人の様子を見てきてもらおう。
松鶴延年:……私は引き止めるべき立場にありませんが……如意巻きの方向音痴は、どうしても安心できません……
松鶴延年:しかし、今の絶境は瘴気が生じ、私が急いで処理に行かないといけません。まさに手が回りません……
凍頂烏龍茶:心配はいらない。天雷と地火を彼らに付き添わせればいい。
エンドウ豆羊かん:いや、天雷は結構じゃ。如意巻きは天然の落雷を引き寄せる神器のようなもの。妾はまだ雷に打たれとうない。
凍頂烏龍茶:好きにしろ。だが……余は利用価値のない人と引き取りはしない。
エンドウ豆羊かん:むむぅ……わかった。3ヶ月でどうじゃ!
松鶴延年:え?3ヶ月ってなんですか?
如意巻き:親王に対する先生の印象を変えたくないので、先生は知らないほうがいいです……
凍頂烏龍茶:ふんっ、地火。ついていけ。
エンドウ豆羊かん:では、出発といくか!
エンドウ豆羊かん:いいニュースを待っておれ!
如意巻き:如意が守ってくれるので、きっとうまくいきます!
夢回谷
山泉
如意巻き:この山泉はすごいですね。谷中の瘴気は全部消えました!
エンドウ豆羊かん:凍頂烏龍茶のやつは匠人をいっぱい囲っておったんだろうな。この数日間で谷を完璧に修繕しておったし、さらに精緻になっておる!
如意巻き:でも……この対のブランコはどういうことですか?怪しいですよ……
エンドウ豆羊かん:そうじゃのう。以前はひとつしかなかったが……凍頂烏龍茶のセンスは本当に微妙じゃ……
地火:ガウーー
エンドウ豆羊かん:……其方のやつ!主を庇う気が強すぎるのではないか?本当のことを言っておるけど!
エンドウ豆羊かん:まぁ、見た目は悪いが、これからはブランコのために人と喧嘩する必要がなくなるな。
如意巻き:夢回谷の者たちで貴方以外、誰がブランコのために喧嘩をしますか……
暴飲王子:こら!クソガキ、俺様のブランコから離れろ!
如意巻き:ほ、本当にブランコのために喧嘩する者がいたのですか……
エンドウ豆羊かん:なんだって?誰のブランコ?
暴飲王子:もちろん俺様の!
エンドウ豆羊かん:はあ、其方ってやつは、鳥なき里の……コウモリになる気か!?ふんっ、一度痛い目に遭わんとわからんようだな!
如意巻き:え!!!
ストーリー2-6
如意巻きひとりに堕神と戦わせる態度を取ったが、堕神が注意を全部如意巻きのところに集中していると、エンドウ豆羊かんも前に出て攻撃を加えた。
すぐに、堕神はふたりの攻撃に敗れた。如意巻きは彼をその場に束縛して、ほっと一息ついた。
如意巻き:ふう……本当に独りで戦うのかと思いました。
エンドウ豆羊かん:なに?妾はそんなことをするものか!これは戦術じゃ!
如意巻き:地火がいるから、一気に堕神を倒せるのに。わざと手間のかかる戦術を使うなんて……
エンドウ豆羊かん:バカもの!地火に手伝ってもらえば、凍頂烏龍茶のケチなやつは絶対報酬を要求してくる!
地火:ガウーー
エンドウ豆羊かん:わかっておる!もう言わん。早く泉のところに行って白ちゃんを助けよう!
葉っぱをかき分け、木立に隠れていた泉が目の前に現れた。底が見えるほど透き通った泉の水は仄かで神聖な力を秘めているようだ。
エンドウ豆羊かん:白ちゃん、早く飲んでみるのじゃ!
ウサギは近寄って、俯いて少し水を飲んだ。それから、その場でぐるぐると2周回って、地に伏せてもう動かない。
如意巻き:白ちゃん!どうしました!?ひょっとしてあの堕神が水に毒を?白ちゃん!死んではいけません!!
エンドウ豆羊かん:そう騒ぐな。これは正常な反応じゃ。谷主が泉で瘴気に感染した患者を治す時も、最初は脱力して気絶するのじゃ。後で目覚めればよい。
如意巻き:なるほど……
エンドウ豆羊かん:でも、白ちゃんが治ったら、またすぐお別れじゃのう……
如意巻き:え?どうして?
エンドウ豆羊かん:バカもん。夢回谷の再建がすめば、絶境から離れる時じゃ。ずっとあそこに泊まるわけにはいかん……
エンドウ豆羊かん:白ちゃんは元々絶境のウサギだし……絶境に送り返すのは当たり前じゃ……
如意巻き:うぅ……もし白ちゃんと別れたくなければ、白ちゃんが僕らと一緒に帰れるように松鶴先生と相談してみませんか?
如意巻き:松鶴先生と麒麟島主は理解がありますし、白ちゃんも貴方のことが気に入っているようです。白ちゃんを連れ帰るのは同意してくれるかもしれませんよ!
如意巻き:でも、ウサギをそのまま連れていくのも……夢回谷にはなにかお礼にできる物はありませんか?
エンドウ豆羊かん:お礼……あはは、わかった!
如意巻き:え?なにかありますか?
エンドウ豆羊かん:早く!如意巻き、手を貸すんじゃ!今からお礼を持って絶境に戻るぞ!
絶境
海岸
霊鶴の知らせを聞くと、松鶴延年は岸辺に駆けてきて待っていた。霧の中にある船がやってきた。エンドウ豆羊かんとウサギを抱えている如意巻きが無事に帰ってきたのを見て、松鶴延年はほっとした。
松鶴延年:無事で良かったです。ただ……
松鶴延年:船に載せられているのは……ブランコ?
エンドウ豆羊かんと如意巻きはよろめいてあのデカいブランコを下ろしたが、松鶴延年は不覚にその上に結ばれている鮮やかな赤い花に目を惹かれた。
如意巻き:そうです。これは先生への、いえ、絶境へのお礼です!
松鶴延年:お礼?
エンドウ豆羊かん:先生!ひとつお願いがあるのじゃ!白ちゃんは絶境のウサギであることは知っておるのじゃが、ここ数日共に過ごし、白ちゃんはもう妾の友達といえよう。だから……あの……
如意巻き:僕らと一緒に白ちゃんを絶境に連れて帰っていいですか?
松鶴延年:それは……
エンドウ豆羊かん:わ、わかっておる。このみっともないブランコとウサギでは釣り合わんが、じゃが……
松鶴延年:勘違いしましたよね。ウサギを惜しんでいるわけじゃありませんよ。貴方達の到来まで、彼も寂しく森に暮らしていました。時々碧螺春の草花を間違えて踏み付け、命に危険を及ぼすかもしれないこの場所で……
松鶴延年:夢回谷は霊気が凝集し、俊秀を育むところだと言われています。あそこで生きることができれば、それもウサギの運命です。ただし……
松鶴延年:絶境に、そんなブランコを置くのは、きょ……許可は……
エンドウ豆羊かん:やっぱり、凍頂烏龍茶のセンスを認めてくれる人はおらんか……
地火:ガウーー
如意巻き:ということは、許可していただけるんですね?麒麟島主にも聞いたほうが良いですか?
松鶴延年:その必要有りません。ウサギのことくらいなら、私が決められます。これからは、ちゃんと世話をしてあげてください。
エンドウ豆羊かん:もちろんじゃ!かたじけない!
碧螺春:それは、どの家の結納品だ?ひとつの……ブランコ?不思議なセンスだね~
碧螺春:うん?ちょうどよかった。この間保管を頼んだ霊草は?
如意巻き:えっと……僕は……その……
碧螺春:なくしたの?
如意巻き:……はい……すみません……
碧螺春:まあ~大丈夫よ。なくすだろうなと思ってたし~
如意巻き:え?どうしてですか?
エンドウ豆羊かん:このバカもん。からかっておるのじゃ!まあ……幸運を……
碧螺春:ふふんっ、中秋の夜に興を添えるために、面白いことは欠かせないよね?今夜、楽しませてちょうだいね~
―――
それは⋯⋯
・わかりました……
・僕が悪かったです。処罰をおねがいします……
・どうか、お手柔らかに……
―――
エンドウ豆羊かん√宝箱
中秋の夜
流觴の亭
高き空より、満月の清々しい輝きが中庭一面に撒き散らされている。各種の味の月餅がテーブルいっぱいに並び、なぞなぞの書いてある一連の赤提灯がぶら下がる。食霊たちは流觴の亭に集まって月見をしたり、言葉遊びをしたり、お茶やお酒を飲んだりして、非常に賑やかな雰囲気だ。
ただひとり、盛り上がる雰囲気の中で、気まずい感じで、居ても立ってもいられない様子のものがいる。
如意巻き:昔に王宮で見たことはありますけど、踊るなんて学んだことはありませんよ……それに……多くの人に見られて……
エンドウ豆羊かん:あ、あははっ。今日の月は丸いのう……
如意巻きは無意識に親友に助けを求めたが、相手は月見に夢中になっていて、彼の呼びかけも聞こえないようだ。さらに……
凍頂烏龍茶:エンドウ豆羊かん、余が夢回谷に設置したブランコを絶境に運び、松鶴延年に贈ろうとしたと聞いたが?
エンドウ豆羊かん:そうじゃ。でも、松鶴延年は其方のセンスが理解できず、ブランコは返された。一体何を考えておった?ブランコを並べるなどと、嫁入りの車列のようで下品じゃ。
凍頂烏龍茶:あれらのブランコは臨時であそこに置いただげだ……しかも、センスというより、貴公は無断に余の物を他人に……
エンドウ豆羊かん:わかっておるのじゃ。これからの3ヶ月はロイヤルゼリーに其方のことを内緒にしてやるから。良いじゃろ?
ロイヤルゼリー:……なにを内緒だって?
凍頂烏龍茶:コホンッ、別に。さあ、一緒に月見をしようではないか。
ロイヤルゼリー:黙れ。
向こうは騒いでいるが、ここには如意巻きが舞台に取り残され、下の人たちに見られている。
碧螺春:なにをぼうっとしている?早く始めよう。
如意巻き:……先生。霊草をなくして僕が悪かったです。こ、今度、お香の試しならいくらでもやります!今日……
如意巻き:僕の手足は不器用ですから、そのなんだか驚鴻羽衣曲本当に無理です……
碧螺春:それは……残念だね。わざと貴方のためにその服を作ってあげたのに。でも…
碧螺春:香りならいくらでも試していいと言ったよね、本当?
如意巻き:もちろんです!踊ること以外なら、なんでもいいです!
碧螺春:ふふん、約束だよ。すっかり楽しんだし、ここまでにしよう。せっかくの中秋節だし、遊びに行っておいで。
如意巻き:ありがとうございます!
エンドウ豆羊かん:はあ……可哀想な如意巻き、自分を簡単に売ってしまうとは……
如意巻き:なにをぶつぶつ言っているのです?助けてくれないなんて、そんなの友達って言えますか。
エンドウ豆羊かん:君子危うきに近寄らず。やっぱり碧螺春には勝てないのう。ほら、月餅を食べるぞ!
エンドウ豆羊かんは如意巻きに席を勧めて、月餅を取ってあげた。白ちゃんも如意巻きの胸に飛び込んで、月餅を食べ始めた。
エンドウ豆羊かん:へへへ、心配はいらん。これは先生が白ちゃんのために特別に作ってくれたニンジン月餅じゃ!
松鶴延年:でも、人間や食霊はその月餅を食べられん。なぜなら、餅の中には草や生の野菜が混じっているからじゃ。
如意巻き:なるほど。もぐっ……
如意巻き:月餅ですよ。盗み食いなんかしていませんよ。こんなにたくさんありますから。
エンドウ豆羊かん:このバカ!今食べたのは白ちゃんの月餅じゃ!さ、さっさと吐き出して!
如意巻き:えっ?ぐっ……
エンドウ豆羊かん:如意巻き!如意巻き!うあっ、このバカもん、死んではならん!
碧螺春:あら、泣く必要はないぞ。安心しろ小娘。彼が本当にひどい病になったら、私の部屋に運び込んで、何日間もお香の治療すれば治るよ~
如意巻き:うぅ……このままのほうがいいです……
松鶴延年:心配する必要はありません。人間と食霊は食べられないといっても、本当に食べたら吐き気や下痢の症状が生じるだけですから、大したことはありません。
エンドウ豆羊かん:ふう……ならよかった……
碧螺春:ん……そういえば、酒は消毒と回復の作用があるよね?いっそのこと、私と飲んでいれば、すぐ回復するかもしれないよ~
如意巻き:え!待ってください、先生。僕は、酒は苦手です!
酒の香りに金秋の馥郁たる木犀の香りが伴い、孤島をゆらゆらと駆け巡る。楽しい笑い声は深夜になっても止まらなかった。
ひとつの月餅に託した思いは月明かりに乗って、万戸に寄せられる。貴方が今どこにいるとしても、私たちが一緒にあの朗々たる明月を見上げれば、同じ気持ちになれる。
如意巻き√宝箱
望松楼
絶境
中秋宴の片づけの後、如意巻きは扉を叩いてから、大きな月餅を望松楼に持ち込んだが、先生は屋根裏の部屋で真剣に絵を描いている様子だ。窓の外から皎々たる月色は部屋の中に降り注ぎ、絵に映っている。
如意巻きは部屋に入っても、松鶴延年はまだ月色に目を凝らしている。
如意巻き:先生、出発する前にお守りを返しに来ました。
如意巻きは胸から精緻に作られて、霊力に満ちているお守りを取り出し、両手で差し上げ、お辞儀をして先生の協力に感謝した。
出発前の夜
如意巻きの部屋
如意巻き:先生?ここに来てなにか用事が?
松鶴延年:おふたりの能力を信じないわけではありませんが、今のところ夢回谷は以前と違います。万が一のためにこのお守りを持ち歩いてください。いざという時に投げ出せば、堕神を驚かせる効果があります。
如意巻き:はい……ありがとうございます!
松鶴延年:よし、余計なことはもう言いません。明日はエンドウ豆羊かんから離れずに、道に迷わないように気をつけるのですよ。
如意巻き:わかりました!
手に渡されたお守りを見て、松鶴延年は首を振り振り向くと如意巻きの胸に押し込んだ。
如意巻き:先生、どうして……
松鶴延年:私は自分のやるべきことをしただけです。大したことはしていません。私の協力がなくても、貴方達は成し遂げるでしょう。よくがんばりましたね。
如意巻き:先生、では、この月餅をぜひ受け取ってください。先生はみんなと飲んだり話したりしていたばかりで、月餅はまだ……
松鶴延年:……わかりました。お気使いありがとう。
松鶴延年は少し恥ずかしがっている如意巻きを見て、微笑みを浮かべた。そして、もう一度筆を手に持ち、美しい月色に向かって絵を描き続ける。
如意巻き:先生、美しい絵ですね……それが流觴の亭ですよね?
松鶴延年:そうです。
如意巻き:みんな入っていますね。えっ、それは白ちゃん!とても似ています!でも……
如意巻き:このふたりは誰でしょうか?見たことがありません。
如意巻きは戸惑いながら、絵の中に松鶴延年と玉麒麟の後ろに、緑の服と青い服を着ている人影を指した。さっきの宴会ではあのふたりはいなかったし、絶境で彼らと出会ったことは一度もない。
松鶴延年:思い浮かべた故人を絵に描いたのです……
松鶴延年は顔を上げて空にかかる明月を見る。年々歳々変わらぬ明月の下には、江海の潮水だけが力強くと流れてゆく。
中秋の佳節、月は当年と同じ月である。引き潮はいつか戻ってくるが、故人は未だに行方不明である。
今この時は、只あの人が長久平安でいるように祈願する。千里離れていたとしても、共に月見の楽しさを味わえるから。
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