老虎菜・エピソード
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老虎菜のエピソード
お腹がいっぱいだととても楽しそうにしているけど、腹ペコの場合は頭が良くなるが破壊力も格段に上がる。笑いながら怒鳴るため、怖い人だと誤解されることがある。でも実際は自分の仲間を守りたいだけ、お腹が満たされている時は良い子。
Ⅰ.軍営
山頂に燃え盛る烽火が、万里にまで伸びている。
城壁は東西に伸び、まるで巨人の体のように、光耀大陸を風雨から守っている。
「なあ、老虎菜(らおふーつぁい)、何故食霊のお前はこんなところに駐屯しているんだ?」
テントの中はお酒の香りが漂い、騒がしい声が聞こえてきて振り返ると、軍服姿の仲間たちが賑やかに談笑しているのが目に入った。
「俺の御侍が、俺に崑崙宮に入って欲しいと言ったからだ」
「お前の御侍……ああ、そうか!玉京のあの有名な武術師範、厳公のことだろう?!」
「まあ、ここにいれば満腹になれるし、お前らのような仲間もいてくれるし、気に入ってんだ」
「あはははっ!さすが老虎菜だ。俺と同じ事を思ってんだな!」
それに何よりも、家を食いつぶしちまう心配がないのがいい!
……その言葉をやはり飲み込む事にした。
頭領の耳に入ると、食事を減らされてしまうかもしれないし。
釜の上のお酒がうっすらと湯気を立たせている、俺は皿の上の鶏モモ肉をむしゃむしゃと食べ続けながら、考えはどこか遠くへと飛んだ……
「あいつ、今日もご飯を8杯も食べたのか?このままだと、そのうち武館を食いつぶされちまうぞ」
「そうだ、まさに怪物だよ。知らない人なら、餓鬼に取り憑かれたと思うくらいのバケモンだ」
「食霊って変だなぁ、どうして厳公があんなやつを飼わなければならないんだよ」
キツイ言葉が部屋の中から聞こえてきた。俺は腕の中の食糧の袋をぎゅっと握りしめ、喪失感に襲われた。
人間と体質が違うとわかっていても、自分をどうしても制御出来ない。
それは単に食べ物が魅力的というだけでなく、体の中に未知なる深淵が食べ物で満たされていなければ、力を抑えられないんだ。
「噂話など聞かなくていい。人より食べられるだけだ。気にする事はない」
「軍営に入ったらわかるが、その時はもっとたくさん摂らないといけないんだ。だから、今のうちに武術の練習をしておくんだぞ」
御侍の言葉がまだ耳元で響いている。彼は有名な将軍だったが、負傷したため、玉京に戻った後、武館を開き、国を守ることを貫いた。
その後、俺は本当に彼の希望通り、軍営に入った。
ここの兵士たちは俺と同じようにたくさん食べる。だから俺を嫌がることもないし、噂話もしない。俺に拳法の教えを請う事だってあるんだ。
俺はすぐに彼らと仲良くなった。この純粋な感情が、当初の鬱屈や不愉快を全て忘れさせてくれた。
戦場や狼煙を除けば、あとは彼らと稀に見る平穏な日々を過ごしていた。
そんな事を考えていると、突然肩に力強い腕が置かれ、お酒の匂いの混じった聞き覚えのある笑い声が耳に飛び込んできた。
この青年は泰と言って、軍営での俺の一番の相棒だった。
「虎ちゃんよ、また何考えてたんだ?食べないと、美味しいもん全部食べられちゃうぞ」
「なっ……!ちょっとボッーとしただけなのに、もう全然残ってないじゃん……」
「老虎菜、こっち来いよ!遠慮すんな、まだたくさんあるぞ!」
俺は再び賑やかな輪に入った。共に戦ってきた仲間が騒ぐ姿に、何故だかわからないが、ふと言い知れぬ感動を覚えた。
Ⅱ.事変
星がまばらな空、風は静かだった。
俺はいつものように、決められたルートを巡回して見張りをしていた。
白虎神君が世を継いでから、玉京は長らく平和な日々が続いている。崑崙宮は長年玉京の外に駐在し、外敵を退散させる以外は大きな動きはない。
この平和が長く続くのが一番いい。
御侍が言ったように、軍人とは、ただ人を殺して世界を征服するのでなく、いつか人を守り、天下を救うためにある。
俺は歩き続けたが、次の瞬間、どうしようもなく奇妙な感覚が背後を横切った……
どこか未知の場所からの監視の目に晒されているような、不思議な感覚だ。しかし、それは一瞬の内に消えてしまった。
またあの感覚だ……これは初めてじゃない。
固唾を飲んで辺りを見回したが、周囲にはどこまでも続く荒野とら遠くのテントからわずかに見える星明かりしか見えない。
錯覚なのだろうか。もしかして、何等かの夜行性の動物かもしれない……
しばらく待ってみたが、何の動きもない。
もしかしたら、本当に気のせいかもしれない。夕食に飲んだお酒のせいで幻覚が見えているのかも。
俺は頭を振って、不気味さを振り払った。
静かな日々が続き、この小さな出来事もすぐに忘れ去られた。
しかし一方で、王都からの食料が少なくなっていることに薄々気付いてしまった。
ついに俺は、食料を運んでいた農夫を呼び止めてしまった。だけど、彼は難しい顔をしていた。
「あぁ……今年は実りがあまりよくない、町からの供給も厳しいから、わしらにも、どうにもならないんだわ……」
彼らも巻き込まれた人に過ぎない。これ以上質問しても無駄だと気付いた。
しかし、夜が更けるにつれて、俺は寝返りが止まらなくなった。
昼間は何個の饅頭しか食べられなかった、早く寝れば空腹をしのげると思っていたが、それが裏目に出てしまったのだ……
腹が減ったな……
周囲のいびきの声が次第に大きくなっていったが、それによって俺の中の苛立ちの炎が燃え上がった。
まるで無数の蟻が体中を這いずり回っているかのように、俺は寝返りを打ち、ふとテントの隙間から黒い影が通り過ぎるのを目にした。
その男は灯火を持っていないし、軍営の人にも見えない……
俺は迷わず、息を整え、彼の後を追って城門まで行った。
黒装束の男が城壁の根元でたむろしているのが見えたが、その動きは非常に怪しかった。
俺は密かに力を蓄え、彼が反応した時には、既に俺によって地面に縫い付けられていた。
「お前は何者だ?城門の前で何をコソコソと……おいっ!」
俺が話し終える前に、地面には血だまりが広がった。まさかその場で自殺してしまうとは。
この事故の後、崑崙宮はより厳重に警備されるようになったが、不審人物はいなくなった。
食糧の減少を除けば、昔のようないつもの日々が戻った。
農夫は疲れた体を引きずって、やはり不作が原因だと教えてくれた。
彼も日に日に背中が曲がっていき、衰弱しているのが、俺たちにもよくわかった。
あの日、食料の荷車はいくら待っても来なかった。
心配と不安が火のように陣営に広がり、陣営の外で待っている人や、急いで町に戻って事情を聞こうとする人さえいた。
みんな知っているんだ。この裏にある真相こそが今の混乱の元凶だと。
しかし、軍令は絶対だ。町に戻る命令が下されていないのなら、誰も駐屯地から出ることは許されない。
時間が止まったようだ。どのくらい時間が経ったのかわからない。遠くから遅く、だけど力んだような車輪の音が風に乗って聞こえてきた。
しかし、現れたのは残されたわずかな食料と、ボロボロになった農夫の姿だった。
「一体何が起きたんだ?!どうしてそんな事に……」
「町で……疫病と飢饉が起こって……人がたくさん死んだ……」
「軍の食料も、奪われ……これしか、残っていない……」
「でも……あんたたちは……食べないと……都を守れないんだろう……」
農夫の弱々しい声がみんなの耳に届いた。その細い体は今にも散り散りになってしまう砂のようだった。
「息子よ……妻よ……わしも……もうすぐ……そっちに……」
その言葉はやがて冷たい風の中に消えていき、周囲は静寂に包まれた。
俺の心も締め付けられるように握りつぶされ、長い間、何も言えなかった。
Ⅲ.奇襲
気候も涼しくなってきたが、俺たちは相変わらず玉京の外に留まっていた。
農夫のことは触れないという暗黙の了解があったが、誰もが都にいる友人や家族のことを心配していた。
まだ町に戻る指令は出ておらず、軍営全体が沈んでいた。
あれほど元気だった仲間たちが顔をしかめているのを見ると、ますます不安になった。
更に、軍営にも疫病が流行り始め、薬草の運搬が死者の数に追いつかない程になっていた。
食料の蓄えもほとんど限界に近づき、俺は毎日狩りに出かけたが、それでも焼け石に水だった。
一方で、あの黒装束の男たちは再び現れ、俺たちを激しく攻撃してきた。
外患、内憂、兵糧攻め、軍営はまるで将棋倒しのように崩れていった。
火花が散る中、俺は数少ない穀物を薄い粥にして、仲間たち一人ずつに配った。
「虎よ……ここ数日食べていないだろう。この粥をやるよ!」
泰は心配そうに視線を送ってくれた。でも、俺はその薄い香りを嗅がないようにして、しっかりと頭を振った。
「俺は元々食霊だから、食べなくても大丈夫 」
粥の匂いが漂ってくる。言い終わる前に、頭の中が混乱し始めた。
ダメだ……!ここで暴走なんてしたら……
「――いいからさっさと食え!俺はパトロールに行ってくる!」
俺はそう言いながら立ち上がり、急いで軍営の外へ逃げた。
タッタッタッ――
手のひらはとっくに自分の爪で血が滲んだ、体内を駆け巡るパワーは、まるで内蔵を駆け巡る炎のようだった。
手足からは制御不能の霊力が噴出し、荒地を凹ませていた。俺は歩みを速め、ようやく人気のない場所を見つけた。
脈が燃えるように熱くなり、朦朧とする意識の中、鼻先に嗅いだことのある匂いを感じた。
その時、口の中は苦味と草の匂いでいっぱいになった。
思いがけず、草が空腹感を打ち消してくれて、俺の正気も徐々に戻ってきた。
空腹時にこのような状態になることを、仲間たちには内緒にしていた。
この状態で彼らを傷つけてしまったら、俺は自分を許せなかったと思う。
しかし、干し草に頼ったところで、完全に制御できる訳じゃない。間違って仲間たちを傷つけないように、俺は仕方なく深夜の見張りの仕事を引き受けた。
軍営の過酷な状況は続き、苦難と絶望が崑崙宮を蔓延っている。
例年より更に早い冬の到来で、このままでは俺も身が持たなくなる……
「ぎゅるるる」と勝手に鳴るお腹。トラたちが心配そうに近づいてくる、俺はその頭を撫でながら、冷たく渇いた枯れ草を飲み込み続けた。
晩冬になったら、枯れ草も残っていないだろうな……
そんな事を考えていると、突然後ろからガサゴソと足音がした。
甘くてしょっぱい香りと、聞き覚えのある声が重なる。泰と数人の仲間が食べ物を持ってやってきたのだ。
「虎ちゃん、みんながイノシシを捕まえてきた。少しでも食べろ。毎日ここを守っているんだ。腹が減っているはずだ」
「だけど……ダメだ……俺に構うなお前ら自分で食べろ!」
「知らないのか?もう人はあまり残っていないんだ……昨日、黒装束の男たちが襲撃を仕掛けてきて、多くの仲間が……」
「今、俺たちを率いてここを守り続けてられるのはお前だけなんだ。黒装束の男たちは、まだ近くで待ち伏せしているはずだ。だから、お前も体力を補充しておけ」
「そうだ、亡くなったみんなもお前が自分の分を食べることを望んでいるはずだ……」
思いがけない悪い知らせに、俺はショックを受けた。
死の知らせばかりで感覚が麻痺していたと思っていたが、今度は悲しみが襲ってきた。
皿の上の料理はまだ熱かったが、手に取るととても重く、飲み込んでも口の中に苦味しか広がらない。
「心配すんな!残りのみんなは俺が守るから!必ず連れて帰ってやる……」
俺は拳を握ったが、その言葉を言い終わる前に、猛烈な眩暈に襲われた……
視界はすぐ暗闇に包まれ、微かに、自分が地面に落ちる音だけが聞こえた……
Ⅳ.企み
「彼に薬入りの食べ物を食べさせた。言われた通り捕まえたし、約束通り家族に会わせてくれ!」
「そうだ!家族に会わせてくれるって約束しただろう!」
「ハハッ、私たちが会わせたくない訳ではない。町の人々は餓死したか、戦死したか、はたまた命からがら逃げて行ったかのどちらかだ。お前らの家族をどう探せばいいと言うんだ?」
「……クソッ!この野郎!」
断続的な騒音が聞こえてきて、柔らかくてあたたかい感触が頬を伝う。
ぼんやりと目を開けると、周りには灰色の牢獄が広がり、トラたちが不安そうに俺の周りを歩き回っているのが見えた。
俺は痛む額をさすりながら、顔を上げた。鉄格子の前に、仲間たちの他に黒装束の男たちがいた。
「我々はすでに玉京に侵入した。白虎神君はお前らの世話はおろか、自分の身を守ることさえできないだろう!お前らはここで大人しく死を待つがよい!ハハハッ!」
気絶している間に聞いていた話が、少しずつ繋がってきた。
そうか、あの野郎どもか、みんなを利用して、こんな事をしたのか……!
一瞬にして怒りがこみ上げ、拳を振りかざしたが、腕の力が弱っていて振り上げられない。
腕や手首だけじゃない、全身から力が抜けていくような感覚に襲われた……
どうして?
俺の動きはすぐに彼らの注意を引き、男たちの笑顔はますます狂っていった。
「思ったより早く目が覚めたな、さすが食霊だ。でも、動けないだろう?お前の素敵な仲間たちのおかげだ」
「黙れ!乱世の中、お腹を満たし、家族を見つけることが彼らの最大の願いだって俺は知っている。しかし、お前、よくもそれを利用しやがって……クソッ!」
「俺たちは生死を共にする兄弟だった、それだけは決して忘れない!」
「虎ちゃん……」
「老虎菜……俺たち……」
「ああ、なんて仲間思いなんだ……そうだ、取引をしようじゃないか?」
「お前が我々に加わってくれたら、お前の仲間たちを全員解放してあげよう。そうでなければ……隣に独房はたくさんある……長い間空腹だったんだろう?腹いっぱい食べたいんじゃないか?」
黒装束の男はゆっくりと歩み寄ってきた、俺は歯を食いしばり、彼の卑劣で醜い口をすぐに叩き割る衝動を抑えることで精一杯だった。
「崑崙宮は神君の軍隊だ、俺が反乱軍に加わることは有り得ない。手を出すなら俺にしろ、彼らを傷つけるな!」
「チッ、それじゃあ、どれだけ耐えられるか、見てやろう!」
男は袖をなびかせ、俺たちはこうして幽閉された。
地下牢の暗闇の中、どれほどの時間が経ったのかわからない。兄弟たちは一人ずつ地面に倒れ、俺の飢えもどんどん広がって行った。
手足が震える。俺は拳を握りしめ、荒れ狂う力を抑えようとしたが、まるで火に蝕まれるように動けなくなった。
意識が混濁してきた。外で馬の蹄の音が聞こえる。そして殺気と怒号が……
その後、虎の咆哮と噛みつきで周りの景色が粉々に砕け散り、視界には限りない緋色だけしか残らない。
心の中で響いているのはたった一言――「すべてを殺せ!」
突然、何の前触れもなく独房の扉が開かれた。
そこにぼんやりとした白い人影が立っているのが見えた。
俺は何も考えず、彼に拳を突きつけた。
しかし、次の瞬間、咆哮が鼓膜を貫き、墨の塊のような獣が俺に襲い掛かってきた。
周囲は突然の静寂に包まれ、最後に覚えているのは、全てを完全に飲み込む無限の暗い光だった……
Ⅴ.老虎菜
長い廊下で、小さな女の子は分厚い書物を手に取り、囁いた――
「……白虎神君退位の際、反乱軍が神君討伐の名目で玉京を襲い、都に混乱をもたらした……」
「……崑崙宮も反乱軍に攻撃されたが、勇敢な南翎神君のおかげで、援軍が到着し、反乱を鎮圧した……」
「……玉京の奪還に成功し、南翎神君はついに王位を継承した……」
ギシッ――
餅米蓮根(もちごめれんこん)は本を読みながら、厨房の扉をそっと押し開けた。そこに入る前に、既に焜炉の下に隠れている、燃えるような赤い人影が見えた。
その者は、両腕いっぱいの食べ物を、嬉しそうに食べていた。
「老虎菜兄様……!また盗み食いですか……!」
「ゴホッ、ちょっと腹の足しにしているだけだ!」
老虎菜は頬を膨らませながらそう答えた。もう慣れているとはいえ、餅米蓮根はどうしようもなさそうにため息をついた。
彼女は本を置き、つま先立ちになり、反対側の鍋の蓋を持ち上げて、そっと言った。
「老虎菜兄様が食べているのは昨日の残り物ですよ、こちらにある方が私が多めに用意したものです」
「食べられるもんなら、なんでもいい!ところで、蓮根ちゃん、ここに来る途中……」
「老虎菜!また、盗み食いに来たのか?」
話終える前に、入口に蛇腹きゅうりが現れた。
「もう見つかったのか……今度は別の場所を探さないと……」
「何をまたブツブツ言っているんだ、この後は春の最初の授業だ!この前みたいに一年生を一時間以上も待たせないように」
「おお!わかってるって!今回はやらかさないから!じゃあ、行ってくるぞ!」
「待て!まずはそこ豚足を下ろして口を拭け……おいっ!そんなに早く走るな……!」
老虎菜は満足そうに唇を舐めながら、苛立っている蛇腹きゅうりをあっという間に置き去りにし、元気な足取りで校舎に到着した。
そして玄関前の東屋の下で、見覚えのある顔がふと老虎菜の目に止まった――
あたたかな風が、古い記憶の巻物を広げる。
「泰……」
老虎菜の声に、子どもを連れた質素な服を着た男が震えた。
目が合うと、熱い涙が彼の目を満たした。
「虎ちゃん……」
男は自分がかつて付けた名前を信じられないような表情で口にした、青年は当時と同じように熱意と活力で答えてくれた。
「まだ生きてたのか、良かった!目が覚めたら書院に連れて行かれて、その後牢屋に戻ってみたけど、もうお前らの姿はなかったから……俺はてっきり……」
「あの時、お前が謎の男に連れ去られた後、援軍が来てくれたんだ。でも、俺たちは悔やんだ、二度お前の行方を聞く勇気がなかった……本当に、申し訳なかった……」
男は後悔でいっぱいだった、涙で襟が汚れたが、老虎菜は明るく笑った。
「お前らを責めたことは一度だってないし、あの時言った言葉は本心だ。お前らは一人だった俺とは違って……家族がいる。でも、今なら、お前ら気持ちをもっとわかるようになった気がするよ」
「そうか……それで、今の生活はどうだ?」
男は目の前の老虎菜を見て、錯覚か、その目に澄んだ朝日のような明るい輝きが見えた。
「天下は平和だし、食べ物もたくさんあるし、新しい友だちもたくさんできた。そして書院で、人々に武術を教えている。俺の力を伝えることで、より多くの人々が大切な人を守れるようになるだろう」
「こんなに幸せな生活、俺は大好きだ!」
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