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恐怖の遊園地・ストーリー

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恐怖の遊園地

ティアラの名もなき辺境の街に佇む、廃墟となった遊園地。

そこは今、人攫いの怪物が巣食う遊園地として恐れられていた…… 

真相を確かめるべく、訪れた彼らに待ち受けるものとは……?!

目次 (恐怖の遊園地・ストーリー)

メインストーリー

第一章-荒れ果てた遊園地

物語 荒廃した遊園地には、恐ろしい噂が囁かれていた。

 何かが駆けてくる音が聞こえる。足音はどんどん大きくなり、やがて、少女がつんのめりながら扉を開け、飛び込んできた。大きく息を切らせながらピザカッサータを見つめるその目が、ギラリと光った。

ある日

旅館

チーズ「例の情報、手に入れちゃったかも!!」

ピザ「んーと、何のはなし?」

チーズ「街のはずれの遊園地が閉園してから……恐ろしいことが起こるようになったの。」

カッサータ「ふーん。どんな。」

チーズ「変ちくりんな怪物が出たーっ!とか、夜中になるとすすり泣く声が……とか。あっ、それから、入ってしまうと二度と外に出られないんだって。」

ピザ「なーんだ。よくある話ばっかじゃん!さてはチーズ、怪談の読み過ぎだな?」

チーズ「ふん!ともかく…… 噂によれば、奇妙な怪物は何匹もいて、堕神に似ているような似ていないような、感じなんだって。」

カッサータ「奇妙な…怪物?」

チーズ「そう。しかもね、人を沢山さらってるらしいんだ。前にこっそり中に入った子供たちが戻ってこないっていうの。」

ピザ「奇妙な怪物……まさか…」

チーズ「ねぇ、行ってみようよ。なんだか嫌な予感がする……それに、「あいつ」と関係あるような気がするの。」

ピザ「……」

カッサータ「そんな怖い顔すんなよ、ピザ。」

カッサータ(奴のこととなると、やっぱりピザ、おかしくなっちまうな…)

ピザ「はは、なに、ちょっとボーっとしちまっただけさ……それも所詮は噂話なんだろ?」

ピザ「まっ、面白そうだし、ついてってやってもいいぜ!っていうか…… お前ひとりで行って、もし何か危ないことでもあって……」

カッサータ「最後なんか言ったか?」

チーズ「じーーーーっ… なに。料理されたいの?」

ピザ「いやいやいや… そうじゃなくって…」

チーズ「ふん!女の子の勘はすごいんだから!」

カッサータ「おいピザ。「女の子だったんだ~」って表情やめろよ。」

ピザカッサータ!!な、なに言ってんだよ?!」

チーズ「なあに?誰が女の子じゃないって?ん?!」

ピザ「おい!いててて!わかった、わかった、チーズほど可愛い子はそういないって…」

チーズ「チーちゃんがせっかく真面目に「あいつ」の話をしてるっていうのに。」

ピザ「わかったわかった、オレが悪かった!」

チーズ「奴のせいで、チーちゃん達、王国を出なきゃいけなくなったんだよ。」

ピザ「そうさ!でもそうでもなかったら、オレたち、こうして一緒になんて、いられなかっただろ…。悪いことだけじゃなかったと、思うしかないさ。」

チーズ「甘い!まったく。あの時のこと忘れたの?二人とも犯人扱いされたんだよ!」

ピザ「言っただろ?オレもカッサータも、たまたま現場に居合わせたもんだから、誤解されちまっただけだって。」

チーズ「だから!「あいつ」を捕まえれば一件落着でしょ!ほらほら、行くよ!」

ピザ「それとこれとは…」

カッサータ「わかった、わかった。じゃ、ちょっくら見にいってみようぜ?奴であろうが、その怪物であろうが、このままにはしておけない。そうだろ?」

チーズ「そ!そういうこと!早く来ないと置いてっちゃうぞー!」

 チーズは気だるげに伸びをすると、部屋を出ていった。後ろをついて歩く二人が小声で何やら話している。

カッサータ「……チーズのこと、心配か?…それとも奴のことか?」

ピザ「なんだよ、オレが何か心配してるように見えるか?ははは…」

カッサータ「なに考えてるかくらい、わかってるさ…無理してんだろ。大丈夫だ、俺がついている。」ピザ「ああ、そんなの…わかってるさ…同じことは繰り返しやしないよ。」

ピザ「あーあ、またカッサータに心配されちゃった。」

ピザ「ってか遊園地、意外と楽しかったりしてな。」

チーズ「ちょっとちょっと!アンタたち早くついてきなさいっ!」

ピザ「ああ、今行く!」

 チーズの入手した情報をもとに、三人は噂の遊園地にやってきた。

ピザ「わ~~~こりゃ随分怪しげだ!」

チーズ「廃園したみたいね。」

 かつて人々と時間を共にしたアトラクションは埃にまみれ、さびれている。

 風に揺られ、老朽化した機械が歯の浮くような音を発した。なんとも不気味な空気だ。


第二章-巨大な怪物

物語 遊園地の入口に現れた怪物の正体は……

 巨大な観覧車は冷たい風にさらされ、ギシギシと気持ちの悪い音を立てている。

 それらは月光に照らされ、まるで怪物のような影を映し出している。

 錆びたゲートには、しぼんだ風船が吊り下がっていた。

 近くにあるぼろぼろのベンチには、綿の飛び出たクマのぬいぐるみが捨てられている。

 ただならぬおぞましい気配が、三人を取り囲んでいるようだった。

その日の午後

噂の遊園地の入り口

 三人は遊園地の入口に立った。

 錆びだらけの鉄門の脇には、閉園のお知らせが貼られている。

チーズ「「エ…エデン遊園地は都合により本日より営業停止とし…」」

カッサータ「「再開時期は…未定です」?」

 突然何者かが、トントンとチーズの肩をたたいた。

チーズ「わっ!」

カッサータ「何者!?」

住民「おっと、落ち着いてください。怪しい者ではありません。」

ピザ「お前… オレたちになんか用か?」

住民「一言だけ、伝えておこうと思いましてね…… 遊園地に入ろうとしているなら、諦めたほうがいいですよ。」

ピザ「なぜだ?」

住民「やはり、ご存知ないんですね……ここ、閉園はしたものの、アトラクションはずっと残ってるんで、こっそり中に入った人がいるんです。でも、戻ってこなかったんです。」

チーズ「えっ!そんな……」

住民「それでも行くというなら、あなた達の勝手ですが…」

 男が立ち去ろうとしたその時。奇妙な怪物が、勢いよく鉄門を飛び越え、チーズに向かって落下してきた!

ピザ「なんだ!?」

ピザチーズっ!危ないっ!」

 ピザはとっさにチーズの前に立ちはだかり、怪物に反撃をくらわすと、怪物は向きをかえ、先ほどの男に向かっていった。

住民「わあああああああああ!」

チーズ「あ、オジサン!!」

 怪物は男を捕まえたかと思うと、こちらが反応する隙も与えず、さっと遊園地の中へと去り、叫び声が遠ざかって行った。

カッサータ「ちっ、こりや、面倒だぞ。」

チーズ「ね、ねぇ…ピザカッサータ!」

カッサータ「さっきまでは、ピザの言う通りだと思ってたが、こうなると入らないわけにはいかないな。」

ピザ「ちきしょう!!追いかけるぞ!」

 三人は怪物を追って、遊園地に乗り込んでいった。日が暮れるにはまだ早いはずだが、夜の帳に包まれた遊園地は三人を飲み込み、怪しい光をちらつかせた。


第三章ー開かれし扉

物語 鏡の迷宮に、奇妙な笑い声が響いている。

 遊園地の中――

 ピザたちは一目散に怪物を追いかけた。怪物はギョロリと振り返ると不適な笑みを浮かべ、大きなテントの中にさっと消えていった。

ピザ「ここは… なんだ?」

 彼らの目に映ったのは鏡で覆われた建物。三人は互いに顔を見合わせると、すぐに中へと入っていった。

カッサータ「ふぅ、随分逃げ足が速いな。」

チーズ「はぁ、はぁ、…… もうだめ。追いつけない。」

ピザ「大丈夫、この中にいる限り、逃げられないさ。ええと…何ていうんだっけ?そういうの。」

カッサータ「袋のネズミか?」

ピザ「それだ、それ!」

 ピザは元気よく拳を振り上げ、一歩前に踏み出した。すると、自分そっくりの影にぶつかった。

ドンっ!

ピザ「わ!いててててて…」

 おかしな音に気付いたチーズはすぐに駆け寄ったが、眼の前の光景に気づきハッと息をのんだ。

チーズ「こ、これって…あたし達が、いっぱい…?」

ピザ「くっそぉ、きっとあの怪物の仕業だ!」

カッサータ「おいおい…鏡の間を知らないのか?」

ピザ「かがみ?」

 ピザは手を伸ばしてあたりを触り、ようやく大きな鏡に気付いたが、見覚えのない影がさっと映ったように見えた。

ピザ「なに!!!」

カッサータ「大丈夫ですか?」

ピザ「さっき…こどもの影が映ったような気がした。」

チーズ「こども?どこどこ?錯覚じゃないの?」

カッサータ「シっ!足音がする…」

 突然、気味の悪い笑い声が響いた。

男の子「へへへ、新入りだ~~~~」

女の子「やった~~~はやくぅ、いっしょにあそぼ~」

男の子「はやく、はやく~~」

ピザ「誰!?」

カッサータ「誰だ!出てこい!」

チーズ「なんだか…こどもみたいだったけど…」

ピザ「みろ!いったとおりだろ!」

チーズ「いっつも嘘ばっかりついてるからよ。」男の子「おにいちゃん、はやく一緒にあそぼうよ~あそんでくれたらここから出してあげるよ~~」

女の子「でないと、だしてあげないから~」

男の子「だしてあげないよ~」

カッサータ「こんなガラスごときで、俺たちを閉じ込めようってか?そんなら!」

 カッサータが武器を横にさっと降ると、鼓膜をつんざくような甲高い音が鳴り響いた。

キーーーン!!

 鏡は、カッサータの予想に反してキズ一つなかった。

ピザカッサータ…… お前、鏡も割れなくなっちゃったのか?」

カッサータ「お前もやってみろ。ここは…何かの力で守られているな。おそらく、あの怪物か、ほかの誰かの仕業か、いずれにしても厄介だぜ。」

 三人は顔をみあわせ、辺りの気配に集中した。カッサータピザも普段のだらしない面影はみじんもなかった。

ピザ「おーい!どうすれば出してくれるんだ?」

男の子「へへへ、それはね、いっしょにあそんでくれたら~~だしてあげてもいいよ~」

女の子「でられないっていったでしょ~はやくおいでよ~」 さっきまでこっそり後ろについていた影が、奇妙な子供の声が止まると共にいなくなった。

ピザ「君たちのお誘いもいいけど、オレたちには時間がないんだ!」

カッサータ「とりあえず、出口をさがしてみるか。」

 三人は迷宮の中をしばらくさまよっていたが、ピザが突然、飛び上がり、カッサータの後ろに隠れた。

ピザ「うううわぁ!!カッサータ!!あいつら…幽霊みたいだ!!!さっきなにか影がそっと通り過ぎて行った!!」

チーズ「へへへ…チーちゃんでした!」

 チーズが一枚の鏡の後ろから顔を出し、舌をだした。

ピザ「あれ?チーズ、いつの間に…ったく、驚かすなよ~」

カッサータ「おい、慰めてやりたいのはやまやまだが、お前、マフラー引っ張り過ぎだ、窒息させる気か。」

ピザ「あ!す、すまんすまん。」

 こどもの声は絶えず迷宮内に響いていた。ピザたちは段々と方向を見失っていく感覚に襲われた。

 何やら人影がついてきていることには気づいていたが、さっと振返ってみても、そこには誰もいない廊下だけがみえるのだ。

チーズ「疲れちゃったなー。こんなあてもなく歩いていてもどうにもならないよぉ。」

ピザ「いっそのこと寝ちまおうか!目が覚めた時にはもう出口かもしれないぞ。」

チーズ「もう、楽観的過ぎだよ~。そういうとこ、羨ましいというか、心配というか…」

ピザ「沈んでたって、なんにもならないだろ?」

カッサータ「だからってここで寝るのも考えもんだぜ。何もできないってなら、とりあえずあのガキどもの言うとおりにしてみるか?」

チーズ「…そうするしかないみたいね。」


第四章-こどもたちとの約束

物語 「約束だよ」

 ピザカッサータチーズは迷宮の中をさんざん歩いてやっと、目の前の風景に見覚えがあることにピザが気付いた。

ピザ「ここ、さっき通ったところじゃないか?」

チーズ「結局ずっと同じところを歩いてたってことね。」

カッサータ「シっ!」

 それまで黙っていたカッサータが突然立ち止まり、ピザチーズに目で相図を送った。そしてそっと目の前の鏡に近づく、いきなり鏡を推した。すると、鏡は音もなく開いた。

 ということは?この鏡が…扉なのか?

カッサータ「大体こんな仕掛けだろうと思ったぜ…見てみろよ。」

 扉の向こうでは、さっきのこどもが仰天の面持ちでこちらを見つめていた。ふと我にかえると、そのまま逃げ出そうとした。

ピザ「逃がすかっ!」

 ピザはさっと追いつき、子供を捕まえた。

チーズ「駄目でしょ、お嬢ちゃん。約束は守らないと、悪い子は叱られるわよぉ!」

女の子「ちがうよ!わたし悪い子じゃない!ただ遊びたかっただけ…だって、長い間、だれも遊んでくれなかったから…ええーーーん…」

ピザ「ちょ、ちょっと!泣くなって…じゃ、じゃあもう一回あそぼっか!かくれんぼしよう!」

チーズ「何言ってんの!」

ピザ「わかった、わかった!わかってるって、今は他にやるべきことが…」

 ピザの真面目な目に戻ったが、こどもはまだ泣き声をあげていた。

女の子「わたし、悪い子じゃないもん…ええええん…お仕置きしないで!」

チーズ「わかったわかったわ。悪い子じゃない、ね、いい子だから約束どおり、外に出して。」

女の子「うん!わたし、いいこだから!同じ間違いは繰り返さないよ。つかまっちゃったし、私が外まで案内してあげる!」

 女の子が手で合図すると、仲間の子どもたちは頷き、再び迷宮の中に戻って行った。ピザたち三人は案内の女の子の後について行き、目の前は段々と明るくなってきた。

チーズ「ねぇ、なんだか鏡が少なくなった気がしない?」

カッサータ「ああ、観覧車にも大分近づいてきた。」

 左右の鏡も徐々に一列になり、目の前も開け始め、鏡でゆがめられた風景が消えて、ようやく出口が見えた。

ピザ「ふぅ…やっと、出口がみえたな。目がおかしくなるかと思ったぜ。」

女の子「わたしは、ここまでね。今度またあそんでね!」

 女の子がまだ言い終わるか終わらないうちに、突然、キーンとした気味の悪い笑い声が響き渡った。

女の子「ひっ!」

 一体何の笑い声なのかもわからないでいる時、案内してくれた女の子はまるで物凄く恐ろしいものでも見たかのように、叫び声をあげて鏡の迷宮に駆け戻り、頭を抱えて隅で震えていた。

女の子「やめて、やめてぇ。ピエロさん、もうおてんばしません。言うこと聞きますから、遊園地にこっそり入ったりしませんから、捕まえないで。やめて…」

第五章-こどもたちの願い

物語 彷徨うこどもたちの願い。

 三人の一斉攻撃にも、怪物は弱る様子もなく、三人がチャージを完了し、いざ再び攻撃しようとしたその時、怪物はキーンと耳に刺さるような叫び声をあげ、三人は耐えきれず耳を覆った。

 が、怪物は興味を失ったかのように、突然傍らへ飛び跳ねると、闇の中へと消えていった。

 チーズは、震えながら迷宮の出口に隠れている子供を体でかばった。女の子の仲間たちは駆け出してくると、女の子の手をしっかり握った。

カッサータ「ちぇっ、勝ち目がないと逃げやがったか?」

チーズ「大丈夫、大丈夫、もう行ったよ…」

女の子「ううう…」

チーズ「いい子ね、ねぇ、お姉ちゃんに、どうして捕まったのか教えてくれる?」

女の子「ううう…」

男の子「ぼ…ぼくがおしえてあげる…。ピエロさんはきっと、僕たちが勝手に入ってきたから起こってるんだ。ピエロさん、前はとってもやさしかったんだよ…うううぇ~ん…」

チーズ「ピエロさん?」

 チーズは驚き止まない子供たちを慰めていた。一方、さっきまで怪物のいたところにはキラキラ光る丸いコインが落ちていた。カッサータピザは互いに不可解の色を見せながら、顔を見合わせた。

カッサータ「なんだ、これは…」

ピザ「わからない…さっきのあの怪物のからだから落ちたんじゃないか。あの子供にきいてみよう。お、チーズ、何か聞き出せたか?」

チーズ「うん、あの子が言うには、サーカスの団長のピエロがこの遊園地の主人らしいよ。あの子たちは、遊園地が閉園になってから、こっそり入ってきちゃって、それでピエロが随分怒って、捕まえて懲らしめようとしているんだって。」

ピザ「でも、だったらなんでここを離れようとしないんだ?」

チーズ「あの子たちがいうには、試してみたけど、なぜか出られないらしいよ。ピエロが許してくれていないからだって、子供たちは思ってる。」

ピザ(ここに縛り付けられている霊か?…まだあんなに小さいのに…はぁ…)

ピザ「じゃ、これからどうっすか?あの怪物も逃げちまったが。」

男の子「ねぇねぇ、おにいちゃんたちは、ピエロさんを探しにいくの?」

ピザ「そうだよ。キミ達、ピエロさんの居場所、知ってる?」

女の子「…ピエロさんは…多分、お友達の手品師さんのところだよ。」

ピザ「手品師?」

男の子「手品師さんはいつもティーカップの近くで、マジックを見せてくれるんだ。おにいちゃんたち、あそこ行くの?危ないよ…」

チーズ「うん、でもピエロさん、罪のない人を連れて行っちゃったから。おにいちゃんとおねえちゃん、その人を助けなきゃならないんだ。」

ピザ「あ、そうだ。君たち、これ、なにか知ってる?」

 ピザはポケットから、さっき拾ったばかりのコインを取り出し、しゃがんで二人の子供に見せた。

女の子「あ、これ…遊園地のコインよ。遊園地にはガチャガチャがあってね。たからものがい~ぱっいあるの!」

ピザ「宝物?」

男の子「そう!宝物、い~~ぱっいだよ!」

ピザ「面白くなってきたな。」

ピザ「――そうそう、後でピエロさんに会ったら、もう怒らないでってつたえておくよ。そうすれば、キミたちもここから出られるだろう?」

女の子「ほ、ほんとう?…ありがとう、おにんちゃん、おねえちゃん!気を付けてね!」

ピザ「うん!」

 子供たちは鏡の迷宮へと戻り、入口から顔を出して用心深く三人に手を振った。女の子が顔を引っ込めると、真っ黒だった出口が七色の光を反射する鏡で閉じられた。

ピザ「…行くぞ、ティーカップだ。」

チーズピザったら、何だって急にやる気出したのかな?さっきまであんなにこわがってたのに…)


第六章-マジックショー

物語 サーカス団のトップ手品師が魅せるマジックショー。

 鏡の迷宮の中では全くわからなかったが、三人は外に出て初めて、空が重く、一点の曇りもない黒色で覆われ、ほんの数個の星さえも注意してみなければよくわからないほどだった。

 どうにも拭い難い重苦しい空気が満ちていた。

チーズ「さっきは昼を過ぎたばかりだったわよね。チーちゃんたち、そんなに長く、中にいた?これじゃ、もう夜みたい。」

ピザ「あ!オレたちまさか、マジで異次元に来ちまったか!」

ピザ(今んとこ、奴の影も形もないが、まさか奴と関係ないよな)

カッサータ「着いたぞ!あれがティーカップだ。」

 三人の目の前には一角獣が軽快なリズムで走り、色とりどりのティーカップがゆったりと回り、汽車が汽笛を鳴らす、どの遊園地でも見るような光景が広がっていた。

 真っ白なハトが空を旋回しながら飛び回っていたが、かと思うと、ゆっくりとティーカップの真ん中におりてきた。

 ピザはうずくまり、地面をゆったりと歩くハトたちに手を伸ばす。

ピザ「チッチッチッチッチッ。」

チーズ「何やってるの?」

ピザ「可愛いと思わないか?」

カッサータ「昨日は旅館の主んとこのジョーンが可愛いとか言ってたな。」

チーズ「あ!そういえば、昨日、チーちゃんにくれるはずだった食べ物、ジョーンに食べさせちゃったでしょ。」

ピザ「なんで知ってんだよ?!」

カッサータ「こっちを見んなよ。俺は何もいってねぇよ。」

 紅い風船が地面からゆっくりと膨らみ、段々と大きくなっていった。一匹のハトが風船のてっぺんに泊まり、くちばしで今にも割れんばかりの風船をつついた――

パンっ!

ピザ「うっわぁ!びっくりしたぁ…なんだ、ハトか。スゲーな。」

カッサータ「だ、だ、だ、だからぁ、マフラー、引っ張んなって。ごほっごほっ…」

ピザ「あ、だ、大丈夫か!カッサータ…」

チーズ「アンタたち…先が思いやられるんだけど…」

 風船が割れた瞬間、無数のキラキラした破片が空中に飛び散り、流星のように線を描いた。飛び散った破片を追っていくと、視線の先の風船のあった位置に、突然手品師姿の人間が現れた。

 手品師は気味の悪い仮面をかぶり、白い手袋をした手を高く上げ、指を鳴らした。その響きと共に、まだ地についていない破片はまるで指揮に従うかのように、手品師の指の動きに合わせて空中でリズミカルに揺れていた。

ピザ「面白そうじゃないか!教わりたいな!」

チーズ「まったく、ただ目立ちたいだけでしょ。」

チーズ「あ――」

 指先が空中に小さな輪を描くと、手品師の意志のまま、破片が二人にかばわれているはずのチーズを取り巻いた。

カッサータチーズ、大丈夫か!」

チーズ「来ちゃ駄目!うううう――!」

カッサータ「まずい!はやく引き出さないと!」

 ピザカッサータチーズを破片の取り巻きから助け出すのも待たず、またもや高いキレのいい音と共に、風が吹きおこり、二人は腕で目を守らずにはいられなかった。再び目を開けた時には、後ろにいたはずのチーズの姿はもうそこにはなかった。

ピザチーズ?!」

カッサータピザ!危ない!焦るな!」

 カッサータは飛び出そうとするピザを引き留め、重い表情で、仮面をつけた手品師に視線を向ける。

手品師「Ladies and gentlemen!ようこそエデン遊園地へ!人生で最も素晴らしい一日をお楽しみください!本日マジックショーをご覧に入れる手品師でございます。」

手品師「マジックはそれを知らない人にとってはごまかし、まやかしかもしれません。ましてや詐欺だという人もいます。」

 手品師はそう語りながら、何もなかった手のひらに白いハトを出して見せ、真っ白な、可愛らしいハトは肩、そして頭へと静かに上っていく。

手品師「しかし、最高の境地に達したマジックは何と呼ばれるか、ご存知ですか?」

ピザ「…魔法か?」

手品師「Bingo!その通りです。魔法――マジックの最高境地、それは魔法です!」

手品師「魔術の原理を追求する術も、隠されたカラクリを知る術もなくなった時、マジックはもうマジックでなく、魔法に替わるのです。」

ピザ(この手品師、一体何を言ってやがるんだ?!畜生、チーズを一体どこに隠しやがった!)

カッサータ「それじゃ、教えてくれないか?俺たちのお姫様をどこにやったんだい?」

ピザ「ん?…お姫様?」

カッサータ「あ、そうだった、忘れてた。お前もお姫様だったなぁ~~。」

ピザ「こんな時に…からかうんじゃない!」

カッサータ「わかったわかった。…ところで手品師さん、こいつが泣きださないうちに早く答えてくれないかなぁ。」

 既に武器を構え手品師に向けるカッサータを前に、手品師は笑みをこぼした。

 ハトが次々とその腕を埋め尽くし、カッサータの脅しにはお構いなしだ。

手品師「そう焦らないでください!まだ私の質問が済んでいませんよ。では、魔法の最高境地は一体なんでしょう?」

 手品師はピザカッサータに満足いく答えなど期待しておらず、両手の親指を中指に擦ってキレのいい音を鳴らすと、肩にいた白いハトがことごとく落ちていった。

 まるでプラスチックのおもちゃの様に地面に落ちていき、鈍い音をたてた。羽一本動かさずに。それをただただ眺めていた手品師は首をひねったが、その角度から見る仮面の笑顔はことさら不気味であった。

ピザ「魔法の最高境地だって?」

 手品師は器用に指先を合わせ、10本の指で一つの三角形を作りだす。

手品師「ああああ…幻に真実を、苦痛に喜びを与え賜え…」

 そして両手を荒々しく広げた途端、地面に落ちていた白いハトが突然羽をはばたかせ、空中に舞い上がった。

手品師「終結に再生を与えたまえ!」

ピザ(「終結に再生を」か…奴もそう言っていたな。本当に、お前と関係あるっていうのか…)

 遠くへと飛んでいく白いハトはゆっくりと隊列を成し、不気味な深紅と白い色が絡まり合って、鳥肌の立つような渦をつくり、まるで空間さえも歪んでいくようだった。

ピザ「うっ!!!」

カッサータ「うっ!」

 ピザカッサータは目の前の光景を疑わずにはいられなかった。白いハトたちは彼らの目の前でそのまま歪み続け、一匹の不明な奇怪な怪物に変化した。

 しかし次の瞬間、その奇怪な塊となった生物は、空中で風船のように破裂し、夢から醒ますような大きな音を立てた。何の痕跡も残っていない地面を前に、二人はただただ沈黙するしかなかった。

 悪夢のような光景を目の当たりにし、背中に冷や汗をかいていた。

ピザ「これは…夢でもみていたか…」

カッサータ「……」

 手品師は悪魔にとらわれたような二人をそのままに、両側に手を広げると、それまで静かに止まっていたティーカップが大きな音を立て始めた。

手品師「今日ここに来て下さったからには、ティーカップのマジックをご覧に入れましょう。魔法とは言えないまでも、このマジックで私は一回たりとも気を抜いたことはありませんよ。」

 そういったかと思うと、重たいティーカップがコンクリートの束縛を脱し、宙に浮かびあがった。行方のわからなくなっていたチーズも突然手品師の後ろに浮かびあがった。

チーズ「うう!?」

ピザ「彼女を放せ!!」

カッサータ「落ち着け、ピザ。」

 ティーカップは空中で位置を変えながら、物凄いスピードで残影を残しながら動いていた。もがくチーズもそのうちの一つのカップにつかまってしまったが、一体何色のカップにつかまっているのかさえも分からない。

ピザカッサータ、放せって!!チーズがまだ下にいるんだ!」

カッサータ「お前こそ、武器をしまえ!チーズに怪我させる気か!」

ピザ「うっ!」

 手品師はピザカッサータの攻撃をうまくわかわして飛び上がると、傍らのメリーゴーランドのてっぺんに立った。そして両手を開き、まるで観客の拍手を仰ぐようなしぐさをして見せた。

手品師「それでは、この世界を回転させてご覧にいれましょう!観客の皆様、御姫様は一体どのカップの下にいるか、当ててみてください!」

ピザチーズ!!!」

カッサータチーズ!」

手品師「正解すれば、あなた方のお姫様は戻ってきますよ!不正解の場合は、私の言うことを聞いて頂きますよ~~。」

 カッサータは武器でピザの前を遮り、その表情はいつになく冷静だった。

カッサータ「お前を打ち負かしさえすれば、チーズは同じように戻ってくるさ。」

手品師「まぁまぁまぁ、そんなことしたら、あなた方の可愛いお姫様がどこにいったか分からないじゃないですか。」

カッサータ「……」

手品師「さぁ、当ててみてください。時間もありませんよ~。」

 そう言い終わったかと思うと、奇妙なピエロ型の砂時計が手品師の傍らに現れた。


第七章-予期せぬ襲撃

物語 再び現れた巨大な怪物。襲われたのは……?

 手品師の傍らの砂時計の最後の一粒が今落ちようとしていた。雨の様に汗を滴らせる二人はほぼすべてのカップをひっくり返していたが、今だチーズの影形もない。

 焦るピザは汗を拭いた。

カッサータ「いない!」

カッサータ「ここにもいない!ピザ、お前の方は?」

ピザ「こっちも駄目だ、これが最後の一つだ!」

ピザチーズ、一体どこへ消えたんだ!」

 ピザカッサータはどのカップの下にもチーズを見つけ出すことができなかった。二人はさっと顔をあげ、メリーゴーランドのてっぺんにゆったり座り、お茶を飲む手品師をみやった。

手品師「あらあらあら、まだお気づきになりませんかぁ~~」

ピザ「何をだ?!」

手品師「そもそもあなたがたのお姫さま、カップの下になんて、いないんですよ~~」

ピザ「お前!!」

手品師「最初に申し上げたでしょう。魔術は、詐欺だって。ただ魔術が騙すのはあなた方の目に過ぎませんけどね。」

カッサータ「一体俺たちに何をさせたいんだ?」

手品師「簡単なことです。エデンから出て行って頂きたい。そして二度と来ないで頂きたいのです!エデンの秘密を探ろうなどとなさらなければ、お姫様はお返ししますよ。」

ピザ「な、…なに?ここを出ていく、そんな簡単なことでいいのか?」

カッサータ「どうやら人には言えない秘密があるようだな。では、どうして俺たちを追い出すのか、聞かせてもらえるかな?」

手品師「それはあなた方が知る必要のないことですよ。」

カッサータ「それなら申し訳ないが、ここを出ていくわけにはいかないな。子供たちに約束したんでね。面倒を解決して、ちゃんと成仏させてあげるって。」

 手品師に考える暇も与えず、カッサータの言葉が切れるやいなや、あの見覚えある怪物が物凄い異臭を放ちながら襲ってきた。しかし誰もが思いもよらなかったことに、怪物が襲ったのは、なんと親友であるはずの手品師だった。

 一瞬で手品師は怪物に突き飛ばされてしまった。

手品師「なぜ…団長…」

ピザ「団長?あの子たちはピエロが団長だって…」

 この時の手品師はさっきまでの偉そうな態度とは別人のように打って変わり、ピザカッサータに向かって慌てて大声で叫んだ。

手品師「はやく逃げて下さい!あなた方のお姫様は足元の石板の箱の中にいます!お姫様を連れてここを離れて下さい、もう二度とここへ戻って来てはいけません!!!はやく!!!」

 カッサータが足元のタイルを剥がすと、隠し箱の中に閉じ込められていたチーズは上半身を破片が絡ませている銀の糸で巻かれ、身動きが取れず、慌てて足で箱の壁をけり出てくるしかなかった。二人を見ると、チーズはふぅっと長い溜め息をついた。

ピザチーズ、大丈夫か?!」

チーズ「ええ、平気平気、これしきのことチーちゃんにはどうってことないわ~」

ピザ「危ない!」

 あの怪物が手を伸ばし、ピザに向かってきた。ピザは片手でチーズを引っ張り、自身は振り返る暇がなかった。カッサータが攻撃を遮ろうとしたその時、手品師が突然ピザの背後に現れ、ピエロの攻撃をまともに受けた。

ピザ「なぜだ、なぜオレたちを守ろうとする?」

チーズピザ?どうしたの?その背中!!!」

手品師「はやく!早く逃げないと、手遅れになる!」

ピザ(駄目だ、あいつに聞きたいことがある。あの手品師はきっと何かをかくしてる!)

カッサータ「あんたに、聞きたいことがあるんだ!」

ピエロ「だ、だれ、誰一人として逃がさないぞ。だめだ…僕のショーを見るんだ!この裏切り者、裏切り者!逃がしては駄目だ…これまでも、皆、お前が…この裏切りもの…」

手品師「罪のない人をこれ以上傷つけてはいけません。団長…私が悪いんです…私が責任を取ります。だから、彼らを逃がしてやってください!」

 団長の腕が手品師の体を貫こうとしていたその時、大きな衝突の後、すてに目を閉じ覚悟を決めていた手品師は驚いた様子で目を見開いた。

 そこにはカッサータが自分の武器を盾に手品師の前に立っていた。カッサータは口元の血を拭きながら、ことさら自信満々に笑った。

カッサータ「こんな風に訳も分からないまま終わらせるなんてナシだぜ。それに、借りを作るのは、俺たち嫌いなもんでね。」

ピザ「そうさ!まずはこいつをやっちまってからゆっくり話を聞くとしようぜ。」

手品師「あなた達…」

カッサータ「そうさ、アンタには今、死んでもらっちゃ困るんでね!さぁ、邪魔だ!チーズ、こいつをちょっとどこかに隠しておいてくれ!」


第八章-手品師の親友

物語 巨大な怪物の正体とは。

 強大な怪物も数人の攻撃を受けてどうやら疲れてきたようだ。振り返りもせず、遠ざかって行った。三人が追撃しようとすると、既にかなり弱り切っていた手品師が彼らの前に立ちはだかった。

ピザ「おい!アンタ、さっきあいつに殺されそうになったんだぜ。」

手品師「わかっています…でも、それは彼の本心じゃありません。昔なら、絶対こんなことしませんでした。」

ピザ「昔だって?」

手品師「僕たちがいけないんです…僕たちが彼をあんな風にしてしまった…」

手品師「もし僕が無理やり彼をこの世界に連れ戻さなければ、今みたいな怪物になってしまうこともなかった…遊園地もこんな風にはならなかった…」

手品師「だから、僕はどうなろうと、ここで彼を守っていたいんです。彼の代わりに彼が大好きだった遊園地を守っていてやりたいです。」

ピザ「ちょっと待て!アンタは…アンタたちがアイツを怪物にしたって言うのか?」

手品師「ばかげた願い事のせいで、こんな悲しい結果を招いてしまったんです。僕は触れてはいけないタブーに触れてしまった、神にしかできないようなことをしようとして、だから罰をうけたのです。」

手品師「そのことは、もう話すのはよしましょう。どうか早くここを離れて下さい。ここはあなた方の世界じゃない、あなた方の来る世界じゃないんです。今出ていけば、間に合います。」

チーズ「だから、まどろっこしいやり方で、チーちゃんのこと、閉じ込めたのね。驚かしたのも、チーちゃんたちを逃がす為?!」

手品師「あなた達は面白半分で来たんでしょう?地獄のような光景を目の当たりにすれば、大体の人が言うとおりにここを離れる。あなた達も…僕の言う通り、はやくここを離れて下さい。」

 この時、手品師だけてなく、カッサータチーズも気づいていた。ピザの顔からさっきまでの気楽な表情が消え、空の色とも相まって何とも暗く恐ろしくさえ見えていることに。

ピザ「手品師さん、教えてください。そのタブーって、誰がアンタにおしえたんだい…」

手品師「…手品師は種明かしはしないものです。知りすぎると、不幸なだけですから。」

ピザ「そいつは眼鏡をかけて、可笑しなマークの付いたスーツケースを持った、自称商人っていう奴じゃなかったかい?」

手品師「それは…」

ピザ「そいつは、ウェルテルって名乗った、そうだろ?」

手品師「!!!!!」

 ピザは胸元のポケットから小さな精緻に造られたペンダントトップを取り出した。それは双頭の蛇が絡み合った、かなり異様なデザインだった。カッサータは片方の手を指が青ざれるほどきつく、ぎゅっと握りしめた。

 手品師はジッとだまったまま、その奇妙なペンダントトップを見つめ、下唇を噛み、何か葛藤している様子だった。長く息を吐きだすと、突然肩を落とし、その強壮な体には似合わず、殊の外つかれた様子になった。

手品師「僕について来て下さい…そのことは、あなただけにお話しします。」

チーズ「え?!なになに?何をそんな、チーちゃん達には聞かせられないっていうの?」

 ピザはついてこようとするチーズカッサータを制止して、一人で手品師と近くの隅へ行った。こんなにも神妙なピザチーズは初めて見た気がした。

チーズピザ、チーちゃんに一体何を隠しているの?ウィスキーと何か関係が?なぜ、私、何も知らない気がしてならないのかしら?)

カッサータ「一人で行かせよう。」

チーズ「でも……」

カッサータ「大丈夫、何をしようったって、俺がついてるんだから。」

 ピザは手品師について暗がりに行き、話の続きを始めた。

ピザ「手品師さん…教えてくれ。アンタにそのことを告げた男は、今どこだ?」

手品師「もうとっくの昔に出て行ってしまいました。団長がこんな風になってしまって、彼を探したんですが、もういなくなっていたんです。」

ピザ「アンタ達が団長を復活させた方法は、そいつが教えたんだろう。錬金術と言う、技術だ。」

手品師「ええ、彼から聞きました。しかし、すべては、私が報いを受けるべきなんです。僕が団長をあんな風にしてしまった。彼もきっと苦しんでいる…」

ピザ「手品師さん、アンタのせいじゃねぇよ。あいつがあんたを利用したんだ。オレが必ず、見つけ出して見せる。アンタ達の為に、そしてオレ自身のために…」

手品師「あなたも何か助けを求めたことが?」

ピザ「話し出すと、長くなるんだが、いずれにしても必ず責任はとらせるさ。」

ピザ「そうそう、で、アンタは奴がどこに行ったか、知ってるか?」

手品師「…おそらく南の方へいったとしか…。」

ピザ「有難う。」

手品師「――ちょ、ちょっと待ってください!助けて頂きたいことが!」

ピザ「何だ?」

手品師「団長を元に戻してくれませんか?」

ピザ「元にもどす?」

手品師「ええ、その人が言っていました。団長の、生前叶えられなかった願いへの執念を利用して、団長の魂をこの世界へ呼び戻すんだと。」

ピザ「だから、今の団長は自分の願いをかなえるために、通りかかった人を捕まえているのか?」

手品師「ええ、以前遊園地改装の為に、大きな借金をしましてね。私たちも団長と一緒に頑張って返していたのですが、団長は歳も歳でしたから、最後のショーを終えたらゆっくり休んでもらおうと思っていたんです。」

手品師「それが思いがけず、ショーの当日、事故がおこって…」

手品師「だから、お願いです。団長のショーを見に行ってやってください。それが団長の執念です。同時に、私たちの願いでもあるんです。」

ピザ(たった一つのたわいもない願いの為に、ここをこんな地獄に変えてしまうなんて。ウィスキー、オレは絶対、お前に自分のやったことのケリをつけてもらうぞ。)

ピザ「――わかった。でも願いを叶えた後…たぶん…」

手品師「有難うございます!わかっています。でも、あんな悲しい姿でこの世に留まることの方が、ずっと悲劇です。団長も、私たちも、だれも好き好んでこんな風になりたいとは思っていなかったんですから。」

手品師「お願いします。私たちにケリを付けさせてください。」

ピザ「ちょっと、止めてくれ、頭をあげて。わかった。願いを叶えてやる。」

手品師「もしよろしければ…最後にこのエデンで存分に遊んで行って頂けますか?ここは素晴らしいところですよ。今ご覧になってる姿とは全然違うんです。あ…お願いのし過ぎでしょうか?」

ピザ「いや!随分遊園地も来ていなかったし、こっちが御礼をいいたいくらいだよ。そうだ…そうだ…あの団長に連れてこられた運の悪い奴は今どこに?」

 二人のところに戻ってきた時のピザに、重苦しかった表情はなく、また笑顔が戻っていた。

ピザ「約束するよ、アンタの友達をきっと連れ戻してやる。」

団長「ええ、有難うございます。団長は多分サーカスのテントの中にいます…ここからお化け屋敷を抜けると、テントが見えてきます。」

カッサータ「アンタは一緒に行かないのかい?」

手品師「私は…まだやることがあるので。」

カッサータ「…そうか。ま、アンタの好きなようにするといい。ピザチーズ、行くぞ。」

ピザ(ウィスキーの情報は手に入らなかったけど、いずれにしても手がかりはあったな。が、今はともかく、あの人たちの願いをかなえてやろう…)

ピザ「さぁさぁさぁ!!お化け屋敷に出発だ!!!」

第九章-トロッココース

物語 道は塞がれた。唯一残された方法とは……?

 三人は手品師の指差した方向へと進んでいった。だが道は大きな石に阻まれ、動かそうとしたが、動かせなかった。お化け屋敷に直接続く道はここしかないと言うのに。

チーズ「どうしよう?道がふさがってるよ。」

ピザ「あっちに他に道がないか見てみよう!」

チーズ「何だってあんなに急いでいるのかな?」

カッサータ「…なんか面白いものでも見つけたいんだろう。」

チーズ「あ…なにやってるんだろう?」

カッサータ「ううん……何か面白いものでも見つけたんだろう。飛び跳ねてるみたいだ。」

チーズ「あれ、なんかどこかで見たことある気がするのはなぜ?」

カッサータ「うううん…旅館のご主人のところの…」

チーズ「――ジョーン!ぷはははは…」

ピザ「全部聞こえてるぞ!!!オレのどこがゴールデンレトリバーだってんだ!」

チーズ「どこもかしこもだよぉう~~」

ピザ「犬じゃねぇよ…おい、カッサータ!人の頭を撫でるんじゃない!」

カッサータ「ハイハイ…思わず手が出ちゃってね…」

チーズ「いい子いい子ぉ~~~なんだってこんなに早く戻ってきたの?」

ピザ「旗を取りに来たんだよ。さっき石を動かして、持っていくの忘れたんだ。それがまさか、オレの悪口をいってたとは!今度はほんとに行ってくるぞ!また悪口言うんじゃないぞ!」

チーズ「わかった、わかったぁ、はやくいきなよぉ。」

しばらく経って

トロッココースターの入口

ピザ「おい――こっちにこいよ!!!どう行けばいいかわかったぞ!」

 チーズカッサータは急いでピザのいる方へ向かった。ピザは洞窟のような穴の入口を指さし、興奮した様子で二人を見た。

ピザ「このトロッコに乗っていこう。降りたらお化け屋敷がもうすぐそこだ!」

カッサータ「ううん……随分暗そうだな。しかもこの遊園地、廃園になってだいぶたつだろう、動くのか?」

ピザ「動くさ!!さっき見に行ったんだ!元電源を入れたら、トロッコが動いたんだ!」

カッサータ「…お前、なんだか興奮してるみたいだけど。」

ピザ「そ、そんなこと!てか、早くいこうぜ!」

チーズ「自分が遊びたいだけだよ。」

カッサータ「同感。」

ピザ「おい!!!聞こえてるぞ!」

 自分の決心を証明するかのように、ピザは足早に真っ暗な洞窟の中へと入っていった。カッサータチーズは顔を見合わせ、クスッと笑ってからようやく、少々ご機嫌斜めのピザについて行った。

 ピザは元電源を入れ、しばらく経つと洞窟の中にセピア色の明りが着いた。決して心地の良くない電波音のあと、小さなトロッコがギシギシと音をさせながら、乗車口のホームにやってきた。

 この小さなトロッコは乗ってしまうと動かすことはできない。つまり、誰か一人が元電顕のところで操作しなければならない。このうちの誰か一人が、この危険な場所で、仲間から離れなければならないのだ。

カッサータ「じゃあ、俺が操作するよ。出口で集合ってのはどうだ?」

ピザ「反対!」

チーズ「チーちゃんも反対!こんな危険なところに一人残せないよ!」

カッサータ「じゃ、どうするってんだ」

 全員で頭を悩ましているちょうどその時、可笑しな格好をした人の群れが、洞窟の中から出てきた。服についているマークからして、おそらく遊園地のキャストだろう。

キャスト①「お客様、この遊園地で一番有名なアメージングショーを観に行くのでしょう!どうぞ!素晴らしいショーをお楽しみ頂く前に、是非こちらの同じく有名な、最もスリルあるアトラクション、トロッココースターをお楽しみ下さい!」

 キャストたちはどうすればよいかわからずにいる三人を取り囲む。悪意はないながら、少々熱が有り余り過ぎているキャストらを前に、カッサータは武器を上に持ち上げ、間違って彼らを傷つけないようにするほどだった。

カッサータ「ちょちょちょ!!気を付けろって!!!武器だって!危ないって!刺さるぞ!離れろ!」

ピザ「うわ!オレの旗を引っ張るな!!!」

 人だかりの中から一本の手が伸びたかと思うと、三人を小さなトロッコへと押しやった。混乱の中にありながら、スキを見て安全ベルトまで締めてくれた。

ゴットン――!

ピザ「ちょちょちょ、待てって!!何すんだよ!!放せって!」

 激しい衝突音と共に、トロッコのドアががっしりと閉まった。

キャスト②「何をするって!?勿論私たち自慢のトロッココースターを楽しんで頂くんですよ!!!!!」

 あがく間もなく、小さなトロッコは動き出した時の慣性で大きく揺れた。三人は思わず手すりにつかまり、しっかり座るしかなかった。

キャスト②「ジャジャジャジャーン!トロッココースターが間もなく出発しま~す!手すりにしっかりおつかまりになり、外に顔を出さないようにお願い致します!」

 奇妙な笑顔を浮かべたキャストがスイッチの前に立ち、大きく手を挙げて、三人が慌てて叫び声をあげるのも気に掛けず、力いっぱいスイッチを押した。

キャスト①「へへへへ!お客様、どうぞスリルたっぷりの旅をお楽しみください!」

ピザ「おいおいおい!待て!まだ聞きたいことがあるっつってんだろーーーーーーーー!」

 トロッコは慣性の法則で転がってしまった三人には全く構うことなく、ギシギシと音をさせながら、どんどんスピードを上げ、深い洞窟の中に飛び込んでいった。

 ぱっと手すりを掴んだ三人はトロッコにぶるんぶるんと揺られ、チーズは全身の力をこめたものの、あっちからこっちへと振り回されるのを止めることは出来なかった。

チーズ「うぁぁぁぁ!!!!たすけて!!!!!」

ピザ「ヤッホー――いけ~~~!!!」

カッサータピザ、落ち着いて座っててくれ、うーーーいててててーーー」

グォー―ーン――

 彼らの祈りが届いたのか、トロッコが長ったらしい余韻を響かせながら、ようやく止まった。

 カッサータは安全ベルトを外してトロッコを降り、調べてみると一枚のビニールが車輪に絡まっていた。

カッサータ「ふうぅ、ったく…ようやくとまったな。あれ…こりゃなんだ?」

 カッサータは車輪に絡まっていたビニールをはぎ取り、トロッコの周りを一周して緊急制御装置のスイッチを見つけた。

カッサータ「歩いてでるか?それとも…トロッコにまた乗って出るか?スイッチとハンドブレーキがあるようだから、ぶかりそうになったら、止めることもできるぞ。」

ピザ「歩くとしたら大分かかりそうだな。トロッコで行こうぜ。面白いしさ。」

カッサータ「…本当にトロッコ好きなんだな。」

ピザ「ちがうさ!!!時間の節約だ!

カッサータ「わかったわかった、じゃ、出発するか―ー!」


第十章-終点

物語 深い洞窟の先で、彼らを待ち受けるもの。

 トロッコは慣性に従い、一気に暗闇に包まれる洞窟の中へと入っていく。洞窟に入ったばかりの頃の狼狽ぶりに比べ、トロッコの前方に座るピザは少々異様に興奮し、片手を高く上げて飛び跳ねている。

 チーズは一番最後にトロッコから降りた。トロッコの縁にぶつけた肩をもみながら大きく一息つき、イラっとした目で、満面の興奮を隠さないピザをにらむ。

チーズ「いたたたたたたぁ…ったく、この線路、揺れ過ぎじゃない、まったくなんだって私が一番奥なの。」

カッサータ「俺はピザを守んなきゃだし、ピザチーズを守んなきゃだろが。」

ピザ「おい!オレのせいだってか?!」

カッサータ「そうさ~俺一人じゃ、分身術じゃあるまいし、どうやって2人とも守れっていうのさ?」

チーズ「ふん!ピザの隣に座りたいってだけのくせに!」

ピザ「わかった、わかった、喧嘩すんなって。オレは楽しかったぜ!もう一回乗るか?もう一回乗ろうぜ!今度はオレが隣に座ればいいだろぉ!さ、いこう、いこう!」

カッサータ「すまないが、キミの提案は却下だ、許したまえ。」

チーズ「賛成。」

チーズ「ねぇ、何の為に来たか、覚えてる?門の所で捕まった、あの運の悪い人、一体どこなの??」

カッサータ「俺が思うに、覚えてないだろうな。ま、それが俺たちの愛するピザだからな、ま、よしってことで。」

チーズ「それもそっか。」

チーズ(そうやって甘やかすから、あんななの)

 ちょうどその時、恭しく待ち構えていたキャストが駆け寄ってきた。

キャスト①「おおおおおお!お客様、お着きですか!どうぞ!!次はどちらにいかれるんですか!!当園で一番人気のサーカス団アメージングショーにいかれるんでしょう!」

カッサータ「ちょっと、あんた達、ここのキャストさんですか?」

キャスト①「ええ、その通りです。お客様!何か御用でしょうか?」

カッサータ「本当、しつこいな。そんなにアメージングショーを観てほしいのか?」

カッサータ「サーカス団の団長、遊園地の園長、そうか――ピエロか!」 そういうと、カッサータは持っていた武器を手のひらで回し、横殴りに半円を描くと、冷たい光を放つ刃先を呆気にとられたキャストに向けた。

カッサータ「おいおいおい、そんな驚いた顔をして、怖がるなよ。結局、この物語の筋で行けば、お前は倒されるべき悪者だろ。」

 もともとおびえていたはずのスタッフの笑顔は不気味な光を放ち、その姿も変わって、最後にはあの見慣れた怪物の姿となった。

ピエロ「へへへへ!」

ピザチーズ!はやくオレの後ろに隠れて!」

カッサータ「こいよ!」

ピエロ「へへへへへ!!」


第十一章-お化け屋敷へ

物語 蝋燭を持って、訪ねよう。

 度重なる攻撃でも自分をどうすることもできない三人を見て、怪物は嘲笑を浮かべ、巨大な砂ぼこりを巻き上げた。三人が目の前の砂ぼこりをはらい、咳をしながら目を開けると、怪物の姿はとっくに消えていた。

カッサータ「無事だった?」

チーズ「チーちゃんは大丈夫…ゴホっ…ゴホっ…ピザは?」

カッサータ「あそこだよ。」

ピザ「だれか、来てくれ、うっ―ーちょっと引っ張ってくれ。」

 一通りドタバタがおさまると。

ピザ「このままこの世界とおさらばかと思った…」

カッサータ「これしきの砂ぼこりでオサラバかなんてことより、俺はいったいどうしたら砂山の中にもぐりこめるのか知りたいね。ほら、ごちゃごちゃ言わず、出てこいよ!」

ピザ「ああ。わかったよ……」

 カッサータピザに手を貸してやり、上に引き上げてやった。怪物が去った方向を見て、カッサータは眉をひそめた。

ピザ「何見てんだ?」

カッサータ「何だか、奴、毎回力を出し切っていないような…まるで…」

ピザ「まるでどこかに引き寄せようとしてるって?」

カッサータ「お前もそう思うか?」

ピザ「はい。」

ピザ(そう思うってより…どうしてそうするのか、知ってるってのが本当だが…はぁ、かわいそうな団長と団員達よ…)

チーズ「ねぇ、ということは、まだ追っていかなきゃってこと?罠じゃないかしら?」

 カッサータチーズにじいっと見つめられたピザは遠く怪物の去った方向を眺めた。その口元には薄い、やさしささえ湛えた笑みがうかんだ。

ピザ「ま、そう考えすぎんな。もしかしたら、ただ自慢の遊園地で存分に遊んでもらいたいだけなのかもしれないぞ。いこう!お化け屋敷だ!!!!」

チーズ「ちょっと!なになにぃ??こんな簡単にまた出発?待ち伏せでもされてたらどうするのよ!ちょっと、ちゃんと説明しなさいよ!!!」

カッサータ「ここまで来たら、行くしかないだろ。もしかしたら、本当に面白いことがおこるかもしれないぜ。」

チーズカッサータ、なんでアンタまでついてくのよ!!」

チーズ「ちょっと!!待ってってば!!!」


第十二章-古城にて

物語 

 ピザはこの遊園地に入ってきたばかりの頃の神妙な様子を改め、輝かんばかりの笑顔で胸を張り、この小さなチームの先頭を歩く。

チーズ「もし空の色がこんなんじゃなかったら、本当に遊園地に遊びに来たって勘違いしそうだわ。」

ピザ「え?」

チーズ「いえいえ、気にしないで、どうぞ続けて。」

 そう歩きもしないうちに、三人は陰気な古城の前までたどり着いた。

ピザ「うう…本当に入るのか…?」

カッサータ「入ろうぜ!折角遊園地に来たのに、お化け屋敷とばすって手はないだろう!」

チーズ「さっきまで一番楽しそうにしてたのは誰さんだったかしらねぇ~行くわよ!」

ピザ「わっ――心の準備もさせてくれねぇってか!」

カッサータ「大丈夫大丈夫、チーズさえ怖がってないのに、大の男がなにしてる、いくぞ!」

ピザ「アーーー!なんでお前まで!!!押すんじゃねぇよ!自分で入るさ!」

 城の中に入ると、シューシューとどこからともなく音が聞こえてくる。それは明らかに、敢えて音を立てないようにしている音だ。無駄な努力だ。

お化け屋敷のキャスト①「さぁ、気合入れて!折角三名もお客様が来たんだからな!たっぷり度肝を抜いてやるぞ!」

お化け屋敷のキャスト②「おおお!」

チーズ「わ…度肝を抜いてやるですって…まぁ、楽しみね?」

ピザ「楽しみ、楽しみだよ。チーズ、その、フォークをオレにむけるの、やめてもらっていいかな?」

カッサータ「ある意味、誰かさんの様子を拝めるのは、確かに面白いな。俺もちょっと楽しみだな。」

ピザ「お、おい、黙れよ!オレは度肝なんて抜かれやしねぇぞ!」

お化け屋敷のキャスト①「おい、お前ら、もうちょっと静かに!」

お化け屋敷のキャスト②「ううう…明らかにあんたが音をたてたんじゃなか…」

お化け屋敷のキャスト①「口答えするな!ま、いい、折角のお客さんだ、急ごう!俺たちの思いを届けるんだ!」

 固まってこそこそ話し合っていた「幽霊」たちは、なんとも言えない表情で後ろに立つ三人に全く気付いていなかった。

チーズ「…全部、聞こえちゃった…」

カッサータ「…全部、聞こえたな…」

お化け屋敷のキャスト①「俺の顔に米粒でもついてるのか?!さっさと動け!あん?」

お化け屋敷のキャスト①「……あんた達は?いつ入ってきたんだ!!!」

ピザ「もうだいぶ前からだよ。」

お化け屋敷のキャスト①「ああああああーーー!完璧な計画だったのに!どうしてくれるんだ!!」

ピザ「キミ達…今から準備したらどうだ。オレ達はもうちょっとしたらまたくるってのは?」

お化け屋敷のキャスト①「いいですよ、いいですよ、そうしましょう!!」

 まるで煙かのように城の奥へと消えていったキャストを眺め、入口に立つ三人はやれやれと首をふらずにはいられなかった。

チーズ「見てたらなんだか、急に緊張してきちゃったわ…はぁ…」

第十三章-団長との再会

物語 古城から逃げ出した彼らが目にしたもの。

 「幽霊」たちの至れり尽くせりのVIP待遇のお陰で、くたくたになるまで始終驚かされまくったピザは真っ先にお化け屋敷から得てきた。そして、最後に驚かしてきたカッサータにプンプンになりながら何回もパンチをくらわす。

カッサータ「イテテテテ、俺が悪かったって!」

チーズ「はぁ……」

 カッサータは両手を頭の後ろにやり、最後を歩き、その武器で門のところにおいてある大きな人形をつついた。

カッサータ「おい…もういくぞ、まだ出てこないのかい?」

 その大きな人形はぶるっとわずかに震えたかと思うと、まんまるの目がぎょろっとカッサータを盗み見たかと思うと、またぱっと元に戻した。

カッサータ「……目が動いたの、見えてるんだが…。」

ピザ「本当に、行っちゃうぞ。いいのかな?今出てこないと、もうチャンスないぞぉ!」

 人形はわずかに震えだし、ピザカッサータが再三わざとらしく立ち去ろうとする足音に、突然その気ぐるみがバッと避けた。

ピエロ「ぼおおおんっ!!!!」

ピザ「そう来なくっちゃ!よし、来いよ!!!」


第十四章-招待状

物語 その怪物は精緻な装飾が施された招待状を残していった。

 ピザ達三人は、遠くへと走り去る団長をすぐに追いかけることはせず、眉をひそめながら、戦いの中で無意識のうちに落としたように懸命に見せかけようとした、あるものを見ていた。

ピザ「ぷっーーーー!」

カッサータピザ、わかるが、笑わんように我慢してくれ。」

チーズ「…こうまでされると、演技に付き合わないのもなんだか可哀そうになってきたわ。」

カッサータ「なんだかんだ言って、こんなに頑張ってるしな…」

チーズ「チーちゃんは、嫌よ。それに、もう遠くへいった?団長からのプレゼント、拾ってもいいんじゃない?!」

ピザ「よし!もう行ったぞ!もう我慢できないや!」

 団長が完全に立ち去ったのを確認し、三人は団長があれこれ手を尽くしてわざわざ落としていったものに駆け寄った。

 それはとても精巧につくられた招待状だった。透かし彫り模様のきれいな封筒の中にカードが一枚入っている。

カッサータ「今晩…19:30、サーカス団アメージングショー、是非皆様のお越しをお待ちしております。また、ご来場の際には正装でお越しください。」

 三人は顔を見合わせ、思わずそろって笑みをこぼした。

カッサータ「観に行くか?」

ピザ「勿論さ!この為に来たんじゃないか!」カッサータ(…アメージングショーの為に?そうか、手品師の頼み事って、このことか?)


メインストーリー第十五章-アメージングショー

物語 エデン遊園地の名物ショーが、始まろうとしている。

 ピザ達は招待状を手に今は美しくライトアップされたテントにやってきた。

 ピザは自分とカッサータチーズの、昼間の先頭で埃と土まみれになった顔を眺め、招待状の「正装でお越しください」の一言に思わず眉を顰める。

ピザ「ううん…どうしたもんかな。」

???「「どうしたもんかな」とは、どうされたんですか?偉大な手品師の手助けは必要ですか、そこの紳士お二人と可愛らしいお嬢様。」

ピザ「わぁ!驚いたなーー手品師さん、何だってここに?来ないって、言ってなかったか?!」

手品師「…魔法が教えてくれたのです、あなた方が私を必要としていると。だから、こうしてやってきました!ピザ様、何かお悩みですか?何かお手伝いしましょうか?」

ピザ「この招待状に正装で来るように書いてあるんだけど、オレ達、正装なんて持ってきてないんだよ。」

ピザ(おや…オレ、オレはピザって名前だって、言ったっけな?…カッサータがオレを呼んだのを、聞いてたのかもな)

手品師「ああ、そんなことでしたらお安い御用ですよ。皆様は今晩のショーの貴賓様ですから!団長が皆様にピッタリのお洋服と貴賓席をご用意しておりますよ。」

 三人は少々訝し気に手品師を見つめたが、手品師はそれには構うことなく、ポケットからびっくりするほど大きな紅い布を取り出し、ピザをすっぽりと覆ってしまった。

ピザ「うっわぁ!!!!」

カッサータピザ!」

手品師「シっ!」

チーズ「あら!何をしようっていうの、ピザに着替えさせてるのかしら」

 再び現れたピザは華やかなスカート姿。傍らで少々焦っていたチーズカッサータは途端に面白がり始める。

カッサータ「ううん…よく似合ってるな!」

チーズ「わぁ!今度からチーちゃんのスカート、着せてあげるわ!なんだかとっても似合ってるわよ!」

 うつむき自分の衣装に気付いたピザは腹立たしい様子で手品師を見ると、何もいい終わらないうちに再び赤い布に覆われた。

チーズ「手品師さん!今度はバニーガールでお願い!きっととっても似合うわ!」

カッサータチーズ!」

 チーズはぺっと舌を出し、大人しく黙った。が、チーズも思いもしなかったことには…。

カッサータ「俺は猫の方が似合うと思うな。」

 ピザは赤い布の中でなにやらゴソゴソともがき、布がでこぼこと動く。しばらくして、それも収まった。

 手品師はパッと勢いよく、布を外すと、二人は期待満々に前に出る。しかしピザの衣装に二人は棒立ちになってしまった。

 衣装替えのマジックに盛り上がっていた雰囲気も一気に氷りつく。

 ピザも驚いて自分の来ている服を眺め、一体何事かを確かめようとしたとき、その身に着けたあまりにも見慣れすぎた服に、沈黙の淵に落ちた。

チーズ「あ!こ、これ!ピザが王国にいた時の――」

 チーズはしまったと慌てて手で口を押えた。カッサータは少し心配そうにピザを眺める。

 ピザは無理やり笑顔を作り、口を開く。

ピザ「これは…懐かしいな…どこで見つけたんだい?」

 本来、喜ばせようとしていた手品師は三人の硬い表情に、気まずそうに頭を掻いた。

手品師「これは…その、ある滅亡した国の王族の服で、以前、団長がオークションで競り落として、ショーの衣装として皆に着せていたんです。きれいでしょう。団長は差し上げると言っていますよ。」

ピザ「そうだったのか…そう…有難う。」

手品師「何か失礼なことをしましたか…その…他のマジックもご覧に入れようと思っていのですが…やめておきましょう。お二人もどうぞお好きな服を選んでお着替えください。ショーが間もなく始まります。」

 確かに二人もさっきの一幕でピザをからかう気も失せてしまった。一人ずつキャンピングカーの中に入り、それぞれかなりきちっとした正装に着替えた。

 一方、外で待っていたピザは自分の服を眺め、気もそぞろとなり、チーズがひらひらと裾の揺れる可愛らしいドレス姿で現れてやっと、気を取り直した。

カッサータ「俺たちのお姫様ったら、マジ可愛い~!なっ?!」

 考え事で気もそぞろ、無防備だったピザは、カッサータに肘でつつかれ、慌てて何度もうなずいた。

ピザチーズ!最っ高ぅにかわいい!」

 チーズが得意げにきれいなラインの下顎を少し上げると、2人の男性は真摯らしく腕を腰にやり、チーズをエスコートする。

 重苦しくなっていた空気もこうしてやっとやわらぎ、手品師に連れられ、三人はサーカスの入口へと入っていった。

 中に入ると、それはそれは聞きなれた声が響いた。

手品師「ようこそお越しくださいました!エデンサーカス団の最高峰、多くのお客様たちの憧れ、アメージングショーが只今より始まります。皆様どうぞしっかりとあなただけに捧げる驚きの連続の一夜をお楽しみください!」

 挨拶が終わった瞬間、入口両側の吹き出し口から火が噴き出し、斜めに伸びた炎はきれいな「X」字形を描き出した。

 黒光りするレースのドレスを着た骸骨2人がつま先立ちで優雅なリズムにのって躍り出てきたが、持ち上げる動作の後、当たり一面指の骨が散らばった。

ピザ「わぁ!!!見てみろよ、空中飛行だ!!…あれ!?でも何だってあの人、半分なんだ?!!」

カッサータピザ、、、何度も行ってるが、マフラーを引っ張るな、マジで死んじまう。」

ピザ「お、ああ、すまん…」

チーズ(この二人、ほんと飽きないわねぇ~チーちゃんのこと、忘れていやしない?)

 真っ赤に燃える炎の中から一匹の勇敢な雄ライオンが飛び出してくる。ライオンは飛び上がったかと思うと一気に火の輪をくぐり、真っ赤な大きな口を開け、吠えたかと思うと、蛇のような二つに割れた舌が見えた。

ピザチーズ!!見て見て!!ライオンのあの舌!!」

チーズ「見たわよ!アンタ、興奮するのはいいけど、叩かないでよ!カッサータ!ちゃんとピザのこと、見ててよ!」

カッサータ「俺には手に負えないな。」

 全くありえない様な、驚きの、そして奇妙なショーは休む間もなく続く。激しい太鼓の音が響いた後、すべての出演者が奥に引っ込み、テントは途端に薄暗くなった。そして、スポットライトがテント上方のケーブルを照らしだす。

手品師「只今より!我がサーカス団で最も有名な、抱腹絶倒間違いなし、そしてスリル満点の空中ショーを団長よりご披露致します!」

 一晩追いかけ、探し回ってきた団長がスポットライトに映し出される。一輪車にまたがり、ケーブルの上を行ったり来たりしながら、手ではボールを回し続けている。

 超絶した技に、観客は大きな笑いとたっぷりのスリルを楽しんだ。ショーの最後に団長は、空中ケーブルの真ん中に立ち、三人に向かって深くお辞儀をした。

 顔をあげたまま、ショーを見続けていた三人は、今高く空中に立っている団長に心からの拍手を送る。拍手と共に、ピエロのスポットライトで大きくなった影は、徐々にゆがみ、変化していき、最後には最初に見た時のあの恐ろしい姿に戻ってしまった。

チーズ「本当に素晴らしいショーだったね…こんな風に終わってしまうのが何だか惜しく思えてきちゃった…。」

カッサータ「でも、どんないい夢も、いつかは冷めるもんさ。こんな悪夢ならなおさらだよ。彼らもそろそろこの悪夢から醒めないとな。」

ピザ「最後のショーも終わった。観客は少なかったけど、でも、願いはかなっただろ。オレたちが見送ってやるよ。」


最終章-幕が閉じるとき

物語 日の光が再びこの遊園地を包み込み、彼らは笑顔で別れを告げる。

 歪んだ怪物は空中から落ち、ゆっくりとさっきまで情熱一杯に演技していた団長の姿に戻っていった。団長は胸を押さえ、真っ黒な血を口から吐き出していた。

 そして、それまで周りに隠れていた団員たちも皆一気に駆け出してきた。既にあの狂気が消えうせ、地面に横たわる団長を囲み、涙を流す。

キャスト①「団長!」

ピエロ「私がいなくなっても…君たちに…ここを…頼んだぞ…」

お化け屋敷のキャスト①「団長、もう何も言わないでください…ううう…」

ピエロ「あんな姿になってしまって、どんなに君たちを傷つけたか…それでもこうして…私に付き合ってくれて…有難う…本当に、ありがとう…」

ピエロ「子供たちは…」

男の子「…ピ、ピエロさん…ぼくたち、もう逃げたりしないよ…」

ピエロ「いいや、私が悪いんだよ…ごめんな…すまん…まだこんなに小さいのに…私は一体何を…何てことをしてしまったんだ…」

女の子「いいの…ピエロさん、ピエロさんはそんな人じゃないってわかってるよ…泣かないで…」

ピエロ「ごめんなさい…」

ピエロ「それから…私の親友…」

手品師「……」

ピエロ「私の為に君がどんなに力をつくしたか…そして、どんなに後悔しているか、よくわかっているよ。「恨んでる」なんて言ってしまったけど、本心じゃない。君のような親友を持てて、私は本当に誇りにおもっている。」

ピザチーズ、泣かないで…」

チーズ「うう…泣いてなんかないもん!」

ピザ「わかったわかった、泣いてないね。」

カッサータ「おい、お前ら!こういう時は静かにしてろ。」

 ピザチーズカッサータの三人はテントの隅に静かに控えていた。このショーの最後を飾るのは彼らだ。

 弱りきった団長はやわらかい、優しい笑顔を浮かべ、キャスト全員を一人一人呼び、もう遅れに遅れてしまった詫びと名残惜しさを―ー丁寧に伝えた。

 全く変化のなかった空は突然明るくなり、早朝の日差しがいつの間にかボロボロのサーカステントに射し込んできた。

 もう自力でなかなか動くことの出来なくなった団長は手品師に支えられて立ち上がり、テントの入り口に立っていた三人にお辞儀をした。

ピエロ「有難う…私を暗闇から救ってくれた…」

ピザ「御礼なら、アンタの友達に言えよ。彼らがいなかったら、アンタ、もしかしたらずっと暗闇で彷徨ってた。」

ピエロ「有難う…有難う…私のショーを最後まで観てくれて、有難う。この遊園地はすぐに本当の姿にもどる。早く…ここを離れて…。」

チーズ「団長…これからどうするの?」

ピエロ「こんなになってしまって、一体どこに行けると言うのです?…私たちはもう長くここに居過ぎました。離れるべき時が来たのです。」

カッサータチーズ…よせよ。これも彼らにとっちゃ、幸せなんだから。帰ろう。」

チーズ「…わかった。」

 サーカスのテントはまるで朝の光で火を点けられたかのように、ピザカッサータチーズを守るようにしてすべてを焼き尽くそうとするテントから抜け出し、団長は子供たちを連れて、静かに燃え上がる炎の中で彼らに手を振り別れを告げた。

 三人は慌てふためきながら火から逃れ、ピザはしりもちをついて大きく肩を揺らす。

カッサータ「ふぅ…これで一件落着だな…二人とも、大丈夫か。」

チーズ「うん…大丈夫。でも…あの団長に捕まった人…一体…どこに?」

 カッサータは足元に視線をやる。その時、ピザは腕で日差しを避けながら、ことさら愉快そうに笑っていて、チーズもハッと気づいたかのように、ピザを見やった。

チーズ「ちょっと!アンタ、いつから知ってたの!」

ピザ「ひぃみつぅ~!」

チーズ「なにぃ!逃げるんじゃない!!教えなさいよ!!」

 カッサータは、さっきまで息で肩を揺らしていたのに、またドタバタ騒ぎ出した二人を見て、ため息をつく。慌てて足を速め、二人に追いついた。

カッサータ「お前ら、疲れねぇのかよぉ!待てって!」

ピザカッサータ、助けて!チーズ、また殴ってくる!」

カッサータ「こんな時だけ、俺に頼るんだから、ったくぅ~。」

 チーズカッサータピザの後についてまたティーラップまで戻ってきた。明るくライトアップされていたはずの遊園地も蜘蛛の巣や埃に覆われ、ピザはやっとのことで一枚のタイルを見つけ、何とか取り外すと、そこには最初に遭った時に捕まった、罪のない、運の悪い男が横たわっていた。

チーズ「あら!!こんなところに!」

カッサータ「こんなところにつかまってたのか。」

ピザ「へへへ、ようやく見つけたぞ。」

 箱で気持ちよさそうに寝ている通りすがりの傍らにしゃがみこんだピザは、男を思いっきりつついてみる。

ピザ「おい。起きろ。」

住民「ああ??…ぼくは…ええと、ここはどこだ…」

ピザ「おい!よく聞け!帰ったら、周りの人に伝えるんだ。この遊園地は今後人をさらったりしないってな。ただ遊びに来てほしかっただけなんだ…あんなことをしたのは、本心からじゃない…」

ピザ「できれば、再建できるといいんだが…」

住民「あ?な、なに?!!!」

ピザ「いずれにしろ、そう周りに伝えればいいんだよ!じゃ、オレ達はこれで!」

住民「あ???ちょっと、アンタたちは一体誰なんだよ!」

 ピザは男の質問に答えることなく、カッサータチーズを連れて立ち去った。彼にとって、この遊園地の秘密は、永遠に闇の中に留めておくのが一番なのだ。

 三人は来た時より古びてしまった遊園地からゆっくりと立ち去った。後ろから轟音がして振り向くと、それまでしっかり立っていたはずの観覧車やトロッココースターが皆、崩れていった。

 まるですべてが遊園地の秘密と同様、葬り去られるかのようだった。

チーズ「あのオジサンがどこにいるか、手品師が教えてくれたの?」

ピザ「ああ、やっと気づいたのか?ほら、カッサータはとっくに気づいてたぞ。」

チーズ「あ…やっぱり…でもなんで知ってたのに、助け出さなかったの?」

ピザ「隠れてもらった方が、安全だろうがぁ~しかも、オレもあのオッサンが最初に言ってた遊園地がどんなもんか、見てみたかったしな。」

チーズピザ、なんだって急に沈みこんじゃったのかしら?)

ピザ「それに、遊ばなきゃそんだろ。案の定…期待どおりだったじゃないか!エデン遊園地――SAIKO~~!」

チーズ「そうね…ただ、残念ね…奴の情報は得られなかったわ…もし情報も得られてたら、完璧な結末!」

ピザ「うん…そうだな…」

ピザ(手掛かりはつかんだ。あとは、いつか絶対、見つけてやる。)

 チーズは、ピザの表情に冷たく陰湿なものが浮かんだに気付き、何か聞こうとしたが、カッサータに腕を引っ張られ、止められてしまった。

カッサータ「…ちょっと、静かにさせてやろうぜ。」

 チーズは静かに首を横に振るカッサータと拳をぎゅっと握りしめるピザに、少し心配そうな表情を浮かべた。

 どんどんと遠ざかる三人は誰一人気付いていなかったが、あの何が何だかわかっていなかったはずの通りすがりの男はこの時、サーカステントの廃墟跡の真ん中で、何やら探し物をしているようだった。そして突然、あたり一面の空間が歪み始めた。

 通り須賀利の男はほっとしたかのように、手を伸ばしてその空間に触れ、うすい布をはぎ取ると、なんとそこから手品師が出てきた。

住民「まったく、あなた様も今回はどうも手が込みすぎでは…奴らを引き寄せるだけでなく、更に…少々やりすぎではないですかね…へへへ…」

手品師「ご苦労だったな。望みはきちんとかなえてやる。」

住民「そりゃどうも、有難うございますぅ~」

手品師「しかし、まぁ、いつまで経ってもお前はまだ純粋に過ぎるなぁ、ピザ。次に会うのが、たのしみだよ。」

サブクエスト

①鏡の迷宮

1.幼き子の願い

物語 ピサたち三人はこどもの日記を拾った。

チーズピザ――足元!」

ピザ「あ? どうした? メモ――――うわあ!」

 迷宮で歪んだ像を映し出す鏡は、かがんでものを拾うピザの姿を更に右岸で写し、暗黒の闇のなか、ほんの少しの光が彼らの周りに集まっていた。ピザは体を起こすと、その目線に鏡に映る変形した像が移り、驚きのあまり叫び声をあげた。

チーズ「ど、どうしたの???」

カッサータ「鏡に映った自分に驚いたんだろ――ピザ、まず、マフラーを放してくれないかな。」

チーズ「なんだぁ、そんなことぉ! 鏡、面白いのに~~」

ピザ「いや、なんかさっきの子供が見えた気がして……」

カッサータ「何処に子供が? 見間違いだろう。」

チーズ「自分の目がおかしいのよ、言い訳すんじゃないのぅ! はやく、それ、なんて書いてあるの?!」

ピザ「わかったから、急かすなよ――今見るから!」

ピザ「わぁ、これは! 子供の日記だな?」

チーズピザの書いた字みたいね!」

ピザ「そんなに近づくなって! オレはこんな子供っぽい字書かないぞ!」

カッサータ「わかったわかった、じゃれてないで、俺が読むよ。」

カッサータ「「8月19日、今日ママにサーカスみたいっていったら、だめっていわれた。ピエロさんが出られなくなったから、サーカス団はおしまいになったって。ピエロさん、どうしちゃったんだろう? サーカスがまた始まったら、ママにつれて行ってもらおう!」」

ピザ「ここのピエロ、随分人気があったんだな。」

チーズ「チーちゃんも見たいぃ~」

ピザチーズは、やっぱりガキだね。」

チーズ「アンタだって見たいくせに!」

ピザ「ああ、それは確かだけど、でもオレは大人だぜ!」

カッサータ「二人ともガキじゃねぇか……」


2.最初の約束

物語 ピザたち三人はこどもたちが回していたメモを見つけた。

 パンっ!

ピザ「イテ――――!」

チーズピザ、アンタまた鏡にぶつかったの!」

ピザ「この通路の鏡、まったく見分けがつかないよ、どれが通路で、どれが鏡何だか!」

カッサータ「よしよし、俺がさすってやるよ。」

ピザ「優しくしろよ、カッサータ――」

チーズ「アンタたち……いいわ、チーちゃんが先頭よ。」

チーズ「あら、鏡に何だってまたメモが?」

カッサータ「誰が張り付けたんだろう?」

チーズ「チーちゃんが知るわけないでしょ! どれどれ――」

チーズピザ! そっちじゃないわ! そっちは鏡!」

ピザ「ああ――――」

カッサータ「その字、左右反対だってわかんなかったのか?」

ピザ「こんな暗がりじゃ、そんなのわかんねぇよ!」

チーズ「また言いわけぇ――ほら、カッサータなんてちゃんと鏡を見分けてるわよ。」

カッサータ「静かに! 何が書いてあるか読ませてくれ――」

カッサータ「「あした一緒にサーカスに行こう! ママには内緒、こっそりいこうね……ピエロさん、きっと病気なんだ、だからサーカスしまっちゃったんだ。ピエロさん、前に風船でどうやってワンちゃん作るか教えてくれるっていってたんだ。絶対おしえてもらうもん!」」

チーズ「これがあの子供たちがここに来た理由ってわけね……」

ピザ「そういえば――――カッサータも風船で犬つくれたよな?」

カッサータ「あ? 出来ねぇよ。」

ピザ「ちっ、つかえねぇな。」

チーズ「ちっ、つかえねぇな。」

カッサータ「何が「つかえない」んだよ?」

ピザ「オレたちも風船の犬、欲しかったなぁ!」


3.遊園地潜入

物語 迷宮の中のこどもたちは、どうやって遊園地に入ったのだろう。

カッサータ「君たち、どうやって入ってきたんだい? ここの門は、閉園した後、完全にロックされていただろう?」

女の子「内緒で教えてあげるね、遊園地の壁に穴が空いてるの、そこをくぐって入ってきたんだぁ!」

ピザ「まさに犬っころだな――――ははは!」

チーズ「ちょっと、汚い言葉使わないでよ!」

ピザ「何がいけないんだよ。」

カッサータ「そうさ、何がいけないんだ~お前もまえに、犬みたいにくぐって――」

ピザカッサータっ!」

カッサータ「ははは、冗談だよ。まだ質問が終わってないぞ。」

ピザ「そうそう、本題、本題にもどるぞ。キミたち、いつ入ってきたんだい?」

女の子「へへへ、夜こっそり入ってきたにきまってるでしょお~」

男の子「ママがピエロさんに会いに来ちゃ駄目だって、だからママに内緒でね。」

女の子「入ってきたら、すぐピエロさんにあったよ。」

男の子「そう、ピエロさんに会った。」

ピザ「それで?」

男の子「それで、その後はここにいるよ!」


4.悪い子にはお仕置き

物語 ピエロさん、どうしてお仕置きするの?

チーズ「なぜここにいるの?」

ピザ「そうだよな。遊園地にはこの迷宮だけがあるわけじゃないし。どうだ、一緒に外で遊ぼうじゃないか。」

女の子「でも、ワタシたち、迷宮の中にいなきゃ……」

男の子「でられないの……」

カッサータ「なぜ、出られないんだ?」

男の子「だってピエロさんが、悪い子は言う事きかないと、おしおきするって。」

女の子「悪い子は、迷宮から離れちゃいけないの。」

男の子「ここに残って、お仕置きうけなきゃいけないの!」

女の子「だから……でられないの……」

チーズ「なんですって? つまり、ピエロさんがここに君たちを閉じ込めてるってこと?」

ピザ「キミ達、当時、何が起こったか覚えてる?」

女の子「ううん、覚えてない、うううえええん……」


5.こどもたちのおしゃべり

物語 こどもたちにとっての、ピエロさん。

ピザ「こっちかな……」

カッサータ「こっちだよ。勝手に先にいくな。」

 パンっ!

ピザ「イテテ……」

カッサータ「だから言わんこっちゃない!」

チーズ「しっ……何か聞こえない?」

カッサータ「そうだな、なんか音がする……近づいてみよう。」

女の子「……ピエロさん、昨日来た時もまたあやまったの?」

男の子「うん……昨日は怖くなかった。」

女の子「ピエロさん、前みたいに優しかったり、すごくこわかったり……」

男の子「ずっと優しいピエロさんでいてくれたらいいのに。」

女の子「今のピエロさんじゃなければいいのに……」

ピザ「ピエロさん、なんだかおかしいな……」

チーズ「コロコロ変わって、ピザみたいね。」

チーズ「おバカさんかと思ったら、時々もっと大バカさんになるわ。」

ピザ「おい!」


6.急がなきゃ

物語 はやくはやく、ピエロさんのショーが始まっちゃう。

チーズピザ、後ろ見て――」

ピザ「今度こそ、騙されるか!」

カッサータピザ、今度は、チーズのいうこと、マジだ。」

ピザ「あ――――うわぁ!」

女の子「へへ。」

カッサータ「マフラー! マフラー! く、苦しい!」

チーズピザ、はやく手を放しなさい!」

ピザ「びっくりした……なんだって、突然出てくるんだよ!!!」

女の子「おにいちゃんたちも、ピエロさんにつかまったの?」

ピザ「え?」

女の子「はやくはやく、でないとピエロさんのショーが始まっちゃうよ。」

チーズ「何をいいてるのかしら、この子……」

女の子「え? ピエロさんにつかまって、ショーを観に来たんじゃないの?」

カッサータ「ピエロさん、いつもそうしてるの?」

女の子「わ、わ、わ、わたし、わかんない、何もわかんない!」

ピザ「ちょっとちょっと! 行くなって! ちゃんと説明しろ!」

チーズ「何で逃げるのかしら……」

カッサータ「口を滑らしたと思ったんだろう。」


7.ゲームへのご招待

物語 こどもたちは、三人にあるお願いをする。

ピザ「コツを掴めば、この迷宮の中を歩くのも、なんてことないな。」

チーズ「うっわああああ、ピザから、いっがいな言葉きいちゃった。」

カッサータ「こんな当たり前のこと、ピザが理解できるなんて、不思議としかいいようがないな。」

チーズ「ほんとぉ。」

ピザ「おい! お前ら、言い過ぎだぞ1」

女の子「もう行っちゃうの……」

男の子「ねぇ、さみしいよ……もうちょっと遊んでよ。」

女の子「もうちょっと遊んで……」

男の子「あそんでよ!」

ピザ「ああ……」

チーズ「ああ……」

カッサータ「なんだ、胸が痛むか?」

ピザ「ああ……」

チーズ「ねぇ……ちょっとだけ、いいんじゃない?」

ピザチーズがそういうんなら、なぁ……」

カッサータ「全く……仕方ないな、好きにしろよ。」


8.スクラップ

物語 古い新聞記事に載っていた、サーカス団団長の姿。

カッサータ「この新聞紙は……」

ピザ「ん? この写真、遊園地の入り口か?」

チーズ「サーカスショーで事故、団長が高所より落下し死亡、観客らは自発的に哀悼の……」

カッサータ「サーカス団長の死因についての記事か……」

ピザ「いや、その後に……これが原因でこの遊園地は閉園になったって書いてる。」

チーズ「勿体ないな……」

カッサータ「しかも団長はお客さんからの人気だけでなく、キャストにも随分好かれてたからね。帰って来てほしいんだろうね。」

ピザ「皆の気持ち、わかるな……」

チーズ「でも、死んでしまった人はやっぱり生き返れないわ。いくらそう願ったとしても……」

カッサータ「……」

カッサータ「まぁまぁ、新聞の記事くらいで悲しんでもしょうがない。さっさと出口を見つけちまおうぜ。」


9.小さな悪戯

物語 チーズからピザへ、愛の悪戯?

ピザ「何だか肩が重いんだが、錯覚かな?」

カッサータ「子供の霊は、かくれんぼする時、相手の背中に隠れるって言うぞ。絶対見つかんないようにな。」

ピザ「あ??? 脅かすんじゃねぇよ。」

カッサータ「脅かしてなんかないぞ。そう聞いたんだからな。それに、本当かもしれないぞ。」

チーズ「へへへ……」

カッサータ「うん?」

 チーズカッサータに指で「しっ」と合図し、突然飛び上がると、ピザの背中に飛びついた。

ピザ「うわああああ――――! なんだ! 本当に霊に取りつかれたか!」

チーズ「ハハハハ!」

ピザチーズ! もう! おりてくれよ!」

チーズ「いやよぉ、降りるもんですかぁ。あ~歩き疲れたぁ。」

ピザ「嘘つけ!」

カッサータ「ううう~ん……俺は信じるぞ。」

ピザカッサータ!!!!」

カッサータ「ははははは!」

②ティーカップ

10.古びた手紙

物語 ある人物がしたためた、キャストへの一通の手紙。

 ピザが焦った様子でティーカップをひっくり返していると、突然一つのカップの下から、手紙が出てきた。宙にたたずむ手品師は、彼の動作に気付いていなかった。

ピザ(何か手掛かりかもしれない…見てみるか)

 それは古びた一通の手紙。

「エデン遊園地のキャスト一同へ

 こんにちは、私は団長の古い友人ですが、もうしばらく会っていませんでした。最近になって、団長が不幸にも亡くなったと聞き、悲しみに耐えません。

 このように申し上げては大変唐突とは思いますが、私はいろいろな土地を回っている中で、ある不思議な術を学びました。その術でもしかしたら、皆さんの愛する団長をこの世界に連れ戻すことができるかもしれません。

 勿論、見も知らぬ人間を信用しろ、というのは難しいと承知しています。しかし、団長に戻ってきてほしいという気持ちは、私も同じです。

 私はすぐに今住んでいるところから出発します。この手紙をお読みになっている時には、恐らく、もう街の近くまで来ていると思います。

 もし、団長を呼び戻す決心をされたのなら、是非、街のホテルに私を訪ねに来て下さい。私はそこで10日間お待ちしています。お返事をお待ちしています。

 8月20日 団長の親友より」

 手紙を読み終わったピザはそれを手にしっかり握りしめると、顔色が一気に変わった。別のところでカップをひっくり返していたカッサータさえも気づくほどだった。

カッサータピザ!どうした、大丈夫か!?」

ピザ(これは、まだ言わない方がいいな。もう少し情報を集めて確認してからにしよう。ウィスキー…お前なのか…)

ピザ「あ?いや、何でもない、虫だ!」

カッサータ「ほんとに大丈夫か?」

ピザ「ああ、大丈夫だよ!オマエも急げ、チーズが待ってるぞ!」

カッサータ(本当に大丈夫かな…)

カッサータ「わかった、何かあれば、俺を呼びな!」

ピザ「ああ!」


11.見知らぬ日記

物語 カッサータは日記を拾ったが、ピザに見せようとはしなかった。

カッサータ(これはなんだ?)

カッサータ(ん…日記か?)

 カッサータは日記かと思われる切れ端を握りながら、心臓がドクドク速まるのを感じた。何かよくないことがおこるような気がしてならない。

 胸元に手を当てながら、むこうでカップを懸命にひっくり返すピザを一目確認すると、気付かれないようにピザから見えないところに移動した。

カッサータ(まずは奴の情報かどうか確認してから、ピザに話すことにしよう)

カッサータ(この字、あの子供たちの字ではなさそうだ。大人の字らしい。)

「8月24日 曇り

 団長が私たちのもとを去って7日になる。団長の古い友人だと自称する人から手紙をもらった。そいつは団長を私達のもとに返す方法をしっているらしい。

 手紙は直接私のところに届いたから、他の皆は知らない。

 迷いに迷ったが、結局、このことは誰にも言っていない。

 ホテルにも行った。入口で長いことうろうろしていた。その人物を見かけたが、眼鏡をかけ、テーブルの脇にバッグを置き、信頼できそうだった。

 結局、我慢できず、ドアを押して、ホテルに入った。

 とても人当たりのいい男だった。そして、その方法とやらを詳しく丁寧に説明してくれた。その誠意ある様子に、私は騙しているとは思わなかった。迷いに迷った挙句、私は彼を遊園地につれてくることにした。

 その男が習得したというその技術はとても複雑で、一人では到底できるものではない。そこで私が、助手になった。」

カッサータ(団長を彼らの元に戻す術?ということは…団長はその術のせいで怪物になっちまったのか?でも、駄目だ、まずは確認しないと、ピザに教えるわけにはいかない。)


12.怪物の覚醒

物語 手品師が語る、団長の目覚め。

ピザ「団長はなぜこんな風になってしまったんだ?」

手品師「なぜあなたに教えなければならないのです?」

ピザ「ある男の仕業じゃないのか?」

手品師「…それは…あなたには関係ないことでしょう。」

ピザ「団長を生き返らそうとして、失敗した。だから、あんな風になったんじゃないのか?」

手品師「一体何をおっしゃりたいのですか?」

ピザ「知ってることをしゃべっちまったらどうだい?オレのほうにも、アンタが知りたい情報があるかもしれないぜ。例えば…どうしたら、団長がもとにもどるか、とかな。」

手品師「…あの時、団長は確かに目覚めました。しかも、随分と若返って。私達を助けてくれたその男が言うには、術の副作用とやらで、体の状態はかつて一番ピークだったころにとどまってしまうらしいのです。」

手品師「しかしいくらもしないうちに、目覚めたはずの団長が…全く私たちのことを認識できていないことに気付きました。」

ピザ「目が覚めて、団長は今みたいな怪物になっちまったのか?」

手品師「そうです。全く…私たちのことなど全く見分けのつかない、怪物です。団長は何の備えもない私達を攻撃し、私たちには反撃の余地もありませんでした。」

ピザ(ウィスキー!またお前か!またなのか!一体どれだけ他人をもてあそべば気が済むんだ!)

ピザ「で、…その男は?」

手品師「当時、混乱していて、私はそこまで気が回りませんでした。私が彼のことを思い出した時には、もう姿は見えず、一通の伝言だけが残されていたんです。」

手品師「伝言には、この実験場にはもう何の用もないから、立ち去る、幸運を祈る、とありました。」


13.手品師の日記

物語 実験は失敗に終わった。しかしそれが、始まりだった。

カッサータ(一体この遊園地で何が起こったと言うんだ?行き交うキャストも皆、おかしな奴ばかりじゃないか。)

カッサータ(これはなんだ?)

 カッサータは道に落ちていた日記を拾った。

カッサータ(これは…手品師の日記か…)

3年前

手品師の部屋

手品師「どうしてだ…どうしてこうなってしまったんだ…!!!」

手品師「団長はなぜ、私たちのことがわからないんだ!なぜ怪物などになってしまったんだ!!!」

手品師は絡む足元にかまうことなく、客室に飛び込み、部屋を一回り見渡した。清潔なテーブル、その上には一通のメッセージが残されていた。

「今回はやはり失敗してしまった。この実験場にもう用はない。立ち去らせてもらう。親愛なる助手殿、楽しかった。また会えることを楽しみにしている。」

 手品師は怒りを込め、思いっきりテーブルをたたき、外の煉獄のごとき光景を見ながら、硬く拳を握った。

手品師「あああああーーーーー!!!!!」

手品師(全部私が悪いんだ…あんな男を連れてきてしまった!もし私があの男を連れて来さえしなかったら、団長も安らかに眠り、仲間たちも理性を失った団長に危害を与えられることなんてなかったのに!)

 随分と経ち、手品師はようやく落ち着きを取り戻した。部屋の中を見回すと、この小さな部屋には当時あの男が研究に使っていた本や資料が沢山残っていた。

手品師「大丈夫だ、私はまだ大丈夫だ!まだ方法がある!あの男が残した資料を研究すれば、皆を呼び戻せるかもしれない!私は出来る!きっとできる!」

現在

ティーカップ

 日記を読み終えたカッサータは硬い表情で手品師を見上げ、武器をぎゅっと握りしめた。

カッサータ「手品師さんよ、本当にそれでいいのか?」

手品師「…何のことです?おっしゃってることが、分かりませんね!」

カッサータ「守りたい人…か?どうやらアンタも俺も同じみてぇだな。何としても守りたいものが有るんだ。」

手品師「もう時間がありませんよ!」

カッサータ「はんっ、何だ、逆ギレかよ。」


14.手品師の日記2

物語 手品師の体をなげうった実験。

 とらわれたチーズは箱の中でもがき続けていた。激しく揺れたかと思うと、一枚の紙が蓋の上から舞い落ちてきた。

 さっきまでもがいていたチーズも動きを止め、隙間から差し込む弱い光を頼りに、懸命に中身を読んでみる。

チーズ(これは…何かの研究報告?いえ、ちがう、日記?いえ、それも違う、まずは見てみることにしましょ。)

3年前

手品師の部屋

 薄暗い明りの下で、手品師は懸命に研究に励んでいた。突然ペンを置いた手品師は、字で埋まった紙を持ち上げた。

手品師「完成した!これで皆を救うことができる!あの男のもってる公式が一部欠けてはいるが、皆が戻ってきても、団長みたいな力を持つことはないだろう。もしかしたら、理性も保てるかもしれない!」

 しばらく興奮冷めやらぬ様子だった手品師はようやく紙を置くと、眉をひそめた。

手品師(でも…私は…あの男と違ってた人で実験することが出来ない…いや、まてよ、できるぞ!自分の体で実験すればいいんだ!)

数か月後

手品師(これは…成功したのか…?)

現在

ティーカップ

チーズ(これって…何をしたっていうの?あら、二匹の蛇の紋様…どこかで見たような気がするわ)

チーズ(もう、でも今はそれどころじゃないわ!ピザ!!カッサータ!!早く見つけてよ!!ばかぁぁ!!)

ピザ「ハックション!」

カッサータ「ハックション!」

ピザ「ううん…きっとチーズが怒ってるんだな…」

カッサータ「ごちゃごちゃ言ってないで、はやく探せ!」


15.落ちた仮面

物語 仮面の下の素顔。

ピザカッサータ、どうする、チーズ、見つかんねぇ!」

カッサータ「慌てるなっ、きっと見つかる!」

 二人はゆったりお茶を飲む手品師を見上げた。カッサータピザは顔を見合わせ、するとピザは怒り狂ったフリをし、近くのカップを蹴り飛ばした。一方、カッサータは音もなく手品師の視界の死角へと位置を移していく。

 手品師がピザの動きに視線を奪われている間に、カッサータはつま先を蹴り上げ飛び上がると、まだ気づかずにいる手品師へと武器を振り下ろす。

手品師「ぐっ!」

 手品師は何とかカッサータの攻撃をかわしたものの、勢いで仮面が落ち、その何とも美しい顔をあらわにした。だが手品師の青白い顔はいかにも今すぐに息絶えそうな青ざめ方だった。

ピザ「お、おまえ、なんで…!」

 手品師は手で顔を覆うと、すぐに仮面を拾って被った。そうしてやっと落ち着いた様子に戻った。

手品師「バカな考えは起こさない方が身のためですよ。堅実にお姫様を探すのが一番です。」

 カッサータは問い詰めようとするピザを制止する。

ピザ「なんで止めんだよ!アイツ、明らかに―――」

カッサータ「わかってるさ、どういうことかくらい。でも今はチーズが先だ!時間がない、はやくチーズを探して、追及はその後だ!」


16.奇妙な臭い

物語 閉じ込められたチーズのもとに突然ある臭いが漂う。

 壁をけるのにも疲れてしまったチーズは、今度は箱の中の臭いに不機嫌そうに鼻に皺を寄せる。

チーズ(ったく、もう、カビ生えてるんだわ、きっと。ひどいにおい)

チーズ(ううん…臭いといえば…)

少し前

ティーカップ

 銀色の破片に囲まれたチーズはとっさにまずいっ、と感じた。ピザにつかまろうと手を伸ばそうとしたが、破片はまるで鎖のようにチーズを縛りつけた。

チーズ(まずいわ!二人に教えなきゃ!)

チーズ「来ちゃ駄目ぇぇ!うううううーーー!」

 チーズは自分の体が浮き上がるのを感じた。するとどこからともなく、オーデコロンのきつい香りがしてきた。

チーズ(な…なにこの臭い、きつすぎるでしょ。一体どれだけ掛けたのよ…)

チーズ(いや、違うわ!コロンの他にも何かの臭いが混ざってる!)

チーズ(うううん…金属?硫黄?嗅いだことのない臭い…もうちょっと近づけば…ん?…これってコロンで体の臭いを消してるってことね?)

 チーズが臭いに気をとられているうちに、その体は勢いよく下に落ち、そのまま今の箱の中に閉じ込められてしまった。

ピザチーズ!!!チーズを放せ!!」

カッサータ「落ち着け、ピザ。」

ピザカッサータ、放せって!!チーズがまだ下にいるんだ!」

現在

タイルの下

 箱の中のチーズにも外の音は聞こえていた。大方の状況はわかる中、チーズはイライラしながら体を動かし、何とか縛りを解こうとしていた。

チーズ(このバカどもぉ!チーちゃん様はここだっつぅの!!!さっさと見つけろやい!!)


17.愚直な方法

物語 人を探す簡単でまぬけな方法は喉が痛くなるまで叫ぶこと。

 チーズは箱の中で身動きできないまま、頭の上から伝わる轟音を聞きながら、深くため息をつくしかない。

チーズ(このバカどもめ、何だってそんな焦ってるのよ!普段はこんなバカじゃないのに…チーちゃんの為にバカなことすんじゃないわよ!冷静になって!きっと見つけられるから!)

ピザチーズチーズ、一体どこだ!?聞こえたら、返事してくれ!」

チーズ(声出せればとっくの昔にだしてるっつぅの!ピザのばかぁ!ばかぁ!)

カッサータピザ、お前バカか、もし声出せてんなら、とっくの昔にチーズだって叫んでるよ。」

ピザ「おい!オマエ、どっちの味方だ!」

カッサータ「わかったわかった、怒るなって。早く見つけようぜ、な?」

ピザ「ふん、チーズに免じて許してやるよ!」

カッサータ「はぁぁ…」

チーズ(うえぇぇ…ん、生きて二人に会えるのかなぁ?)

???「チっ、ここは狭いな。縮こまってんのもつらいぜ。もっと報酬上げてもらわなきゃ、やってらんないぜ。」

チーズ(え?一体誰の声かしら…?)

ピザチーズ!心配するな!きっと助けてやる!」

カッサータピザ、もう叫ぶんじゃねぇよ。喉やられるぜ。」

チーズ(なんだか、二人は期待できなそうだわ…はぁ…)


18.ハトも凶暴

物語 ハトに追いかけられつつかれるピザ

ピザ「うえぇーー!!!なんで下にもこんな沢山ハトがいるんだ!!」

カッサータ「いいじゃないか、お前、むかしハト飼いたがってたろ。」

ピザ「でも今は追われてんだよ!!」

カッサータ「―――だからぁ、なんでお前逃げるんだよ?」

ピザ「向かってくるんだから、逃げずにはいられないだろ!!」

カッサータ「じゃ、今逃げるのやめてみろよ!!」

ピザ「オオオオオ、オレ、止まれねぇ!うえぇーーカッサータ、助けて!」

カッサータ「だからぁ、とまれって!!追いつけねぇよ!!!」

ピザ「止まれねぇよ!!」

カッサータピザ、おまえ馬鹿か!!!!!!」

ピザカッサータ、はやく奴らを止めてくれ!」

カッサータ「お前が止まれば、止まるっつってんだろ!」

ピザ「オオオオオ、オレ―――」

チーズ(はぁ…本当に、助けてもらえるのかしら…ここで待ってるの、まだおぼえてんのかしら…)

③トロッココースター

19.紙上の写真

物語 捕えられた詐欺師とは......。

チーズ「イタタタターーー!アンタ達、はやく立ちなさいよ!」

カッサータピザ、大丈夫か?」

ピザチーズ、大丈夫か?」

チーズ(もう、この二人ときたら…もういいわ、こっちの方がイライラでどうにかなりそう。)

 チーズは口元をイラっとピクつかせながら、トロッコから飛び降りた。トロッコを一周見回すと、石が線路に突っかかっているのに気付いた。

チーズ「ねぇー―ーなぜ止まったかわかったわ!さぁ、再出発?ん?何みてるの?」

 ピザカッサータは鉱洞の薄明りの中、二人輪になりピザの手の中に有るものを懸命に読んでいた。

ピザ「これは…新聞のようだけど、他には?」

カッサータ「どうやら破られたものみたいだ。」

チーズ「アンタ達、何みてるの?チーちゃんにも見せて!何これ、古びて、字がはっきりしないわ。重大詐欺事件を…何件も犯した…容疑…者を…一名逮捕…」

ピザ「ん!―――見てみろよ!カッサータ、この写真!」

カッサータ「これは…あの手品師じゃないか?詐欺師だったのか??」

チーズ「なんでわかんのよ?あの手品師、ずっと仮面つけてるじゃない!」

ピザ「いや、さっき手品師に奇襲かけた時に、仮面が落ちたんだよ。これ、あいつで間違いないよ…」

チーズ「ということは…ほんとにあの手品師…」

カッサータ「ああ…」

20.手品師の気持ち

物語 団長への思いと、その理由。

カッサータ「シッーー前を見ろ!」

 ピザチーズカッサータの指差した方向を見ると、幾つかの人影が線路の一角で何やら話し合いをしている。

キャスト(赤)「これでどう!」

キャスト(青)「ダメダメ、隠れてるのが丸見えだ!」

キャスト(赤)「うえぇん、難しいな!手品師さんは、ほんと、すごいな…」

キャスト(青)「そうだろ。お前は入社が遅かったから知らないだろうけど、あの人はウルトラ級にーーすごいんだ!もしあの人が…」

 カッサータはキャストの一人の肩に手を置き、「親しみやすげな、融和的な」笑顔を浮かべた。

カッサータ「みなさんのお話、聞かせてもらってもかまわないかな?」

キャスト(赤)「うわぁ!!こいつはヤバいぞ!!」

カッサータ「お?そんな風にいわれるの、初めてだなぁ~~」

 カッサータは額の青筋をぴくぴくさせ、指をバキバキとならす。

ピザカッサータ、そっちはどうだ?」

カッサータ「2人のいい奴がいろいろ教えてくれるってよぉ~~」

ピザ「マジか?!」

カッサータ「ほら、さっさと吐け!」

チーズ「ううん、これからは怒らせないようにしよっと。」

キャスト(赤)「うえええん、言います、言います。手品師さんは昔、知らない人間はいないほど、有名な詐欺師だったんです。出所してから、行くところがなくて、それを団長が引き留めてあげたんです。」

ピザ「へぇ―――!通りであんなに団長を大切にしてるんだな…」

キャスト(赤)「ええ…団長は優秀な詐欺師なら、観衆の目を楽しませることができると言って、それであの人はサーカスに入ってからマジックを学んだんです。どんな難しいマジックも修得して、物凄い人気者になったんですよ!」

カッサータ「そうだったのか…で、他には?」

キャスト(赤)「ありません、全部話しました!」

 三人はトロッコに乗り、先へと進んだ。

キャスト(青)「お前、もっと大事なこと、話してねぇだろ…」

キャスト(赤)「ふん!脅しなんてクソくらえだ!」

21. 団長の思いやり

物語 皆がここに残る理由。

チーズ「どうしてまた止まったのかしら、ピザ、このトロッコ壊れてるんじゃない?」

ピザカッサータ、これ、壊れてんじゃねぇか?」

カッサータ「ったく、わかったよ。俺が見てくる。チっ、車輪が壊れたみたいだ。どうする?歩いていくか?」

キャスト(赤)「はいはいはい!お任せください!」

 数人のキャストが工具箱を抱えて駆け寄ってきて、手際よく修理を始める。キャストに邪魔もの扱いされた三人は顔を見合わせ、傍らに大人しく座っていた。

チーズ「ねぇ、そういえば、アンタ達、どうしてここにきたの?遊園地が募集してたの?」

キャスト(赤)「いいえ、私たちは皆帰るところがないんです。それを団長が引き留めてくれて、そうでなかったらとっくに凍死か、飢え死にしていたでしょうね。」

チーズ「皆ですって?!」

キャスト(赤)「ええ、私たちのような一般キャストから、手品師さんも、皆団長さんが連れてきたんですよ。ここは家みたいなもんです、私たちにとってはね。」

チーズ「じゃあ、きっと団長さんに感謝してるのね。」

キャスト(赤)「それは当然ですよ。私たちの命は団長が救ってくれたんです。団長は私たちに生き続ける勇気だけでなく、家まで与えてくれました。」

ピザ「この遊園地は、アンタ達の生活を支えるためにできた、って訳か?」

キャスト(赤)「サーカス団の収入を皆の生活に当てるだけでなく、団長は借金までしてこの遊園地を建てて、お客さんを惹きつけて来たんです。ようやく借金も返し終わって…これからって時に…。それなのに、ご覧になったでしょう。この遊園地はもう…昔みたいににぎやかにもどってくれたら…たった一人のお客さんでもいいのに…」

チーズ「うう……」

キャスト(赤)「よしっ!直りましたよ!どうぞ存分にお楽しみください!」

ピザ「サンキュー!!じゃっ、出発進行――!」

カッサータピザの様子からすると…手品師がさっきピザに話してたのはこのことか。道理で回り道してでもこっちを通りたがったんだ。)

22.カッサータ再び日記を拾う

物語 遊園地に残された多額の借金。

カッサータ「待て!」

 カッサータがブレーキを引くとトロッコはゆっくりと止まった。ピザチーズカッサータが走っていく後ろ姿を見送っていたが、戻ってきた時、手には一枚の紙の破片が握られていた。

チーズ「これは…建材って書いてありますが…」

カッサータ「俺もわからん。さっき偶然見つけたんだ。この遊園地は謎が多すぎる。手掛かりは多いに越したことないだろ。」

ピザ「これ…なんだか日記みたいだぞ。」

チーズ「『…一日も早く遊園地の改装費用の借金を返そうと、団長はずっと難度の高いショーをやり続け、体はもう悲鳴を上げていた。もし手品師さんがいなかったら、危うく何度も空中から落下するところだった。』」

ピザ「『ようやく、皆で頑張ったかいもあり、借金を全部返し終えた。団長も僕たちのお願いを聞き入れ…』」

カッサータ「『…最後の公演を終えたら、表舞台からは身を引くと、決心してくれた…』」

チーズ「まさにその最後の公演で、団長は…」

ピザ「そんな、悲しむなよ、チーズ。オレたち、皆の願いをかなえてやったろ?いこう。」

23.落石撤去

物語 道をふさいだ石。

チーズ「うえぇん――石に阻まれちゃったわぇ、どうしよう、ねぇ?」

カッサータ「どうするって、どかすしかねぇだろ。」

ピザ「うっ…随分重てぇな…」

キャスト(赤)「はいはいはい!お任せください!」

チーズ「まぁ、良かった、来てくれて!こんなに沢山じゃ、一体いつになったら全部どけられるかわかりゃしなかったわ。ありがとぉ!!」

キャスト(青)「いえいえ、当然のことですよ。団長の願いを叶える為なら、皆の遊園地の為なら、僕らは全力を尽くしますよ。」

チーズ「……あなた達、本当に団長のことが大好きなのね。なのになぜ、団長のそばにいてあげないの?」

キャスト(赤)「そりゃ、僕たちだって、一緒にいたいけど…団長、目を覚ましてから、僕らのこと、分からなくなってしまったから。手品師さんが近寄らない方がいいって。でももし願いが叶ったら、団長も嬉しさの余り、僕たちのこと思い出すんじゃないかって思っているんです。」

ピザ「アンタらの気持ちを知ったら、団長もきっと感動するだろうな!」

キャスト(青)「本当ですか?」

ピザ「決まってるだろ、オレが保証してやるよ!」

24.後遺症

物語 後遺症の由来。

チーズは突然何かに気付いたように、ブレーキをかけ、トロッコから飛び降りた。ピザカッサータは顔を見合わせ、急いで後を追った。

チーズ「あの、大丈夫ですか?」

キャスト(青)「大丈夫、大丈夫、有難う。ちょっと手足が効かなくなって、動けないだけのことです。なぁに、ちょっと横になっていればすぐによくなりますよ。」

ピザ「手足が効かない?何処か悪いんじゃないですか?医者に診せなくて大丈夫ですか?」

キャスト(青)「病気じゃないんですよ、治りません。」

カッサータ「なぜ、治らないなんてことを言うんです?」

キャスト(青)「あの時、団長が怪物になってしまって、手品師さんがまた僕たちを呼び覚ましてくれたおかげで、僕らは今こうしてここに残ることができたんです。」

チーズ「じゃあ、手品師さんに治してもらってらどうですか?」

キャスト(青)「手品師さんも、試してみてはくれたんですが、うまくいかなくて…きっと僕らがこんなことになってしまった後遺症でしょう。」

ピザ「じゃ、どうすれば…?何か他に方法はないんですか……?」

キャスト(青)「手品師さんも手を尽くしてくれているんです。でも…わかるんです。皆、一時的に理性を失うことが出てきて…おそらく、、失敗だったのでしょう。」

チーズ「私達に何かできること、ありますか?」

キャスト(青)「団長を―――頼みます。」

25.「手品師」の噂

物語 手品師の身の噂。

線路が途切れてしまった為、これ以上進めなくなったトロッコを、ピザカッサータはそれぞれ片方ずつ持ち上げ、二人で何とかもう一本の線路にのせた。いざ乗ろうとした時、チーズが傍らにふせて細い尻尾を振りながら、何かを見ていた。

キャスト(赤)「バカを言うな!手品師さんに彼女なんかいるもんか!」

キャスト(青)「男だよ!」

キャスト(赤)「そんなわけないだろう!彼氏だってあり得ない!イケメンのこの俺様にだって彼氏いなんだぞ!」

キャスト(青)「その男が手品師さんの彼氏だなんて一言もいってないだろう!ただ手品師さんとよく一緒に何かひそひそやってる男がいる、って言っただけだ。俺たちの知らない奴だよ。」

キャスト(赤)「彼氏じゃないなら、二人で何をしているんだ?」

キャスト(青)「知るかよ!」

キャスト(赤)「ちぇっ…ビックニュースでも聞けるかと思ってたのに。」

キャスト(青)「お前!お前が吐かせたんだろうが!」

ピザ「おいっ!チーズ、何やってんだ?」

チーズ「わっーー!ピザ、脅かさないでよ!」

カッサータチーズ、何を盗み聞きしてるんだ?」

チーズ「なんでもないわ、ただのうわさ話。走れそう?」

カッサータ「ああ、行くぞ。」

26.「手品師」の影

物語 三人が見かけたのは、果たして手品師だろうか。

最前列に立ったチーズは両手を腰に当てた。三人は分かれ道を前に、そろって口をつぐんだ。

一秒もあったかなかったか、カッサータは突然一方の道に向かって走り出し、訳のわからぬピザチーズは一瞬の遅れをとって追いついた。

???「……」

ピザ「どうした、カッサータ?」

カッサータ「なんだか、手品師がいたような。」

ピザ「そういわれてみれば、オレもさっき追っかけてきたとき、奴のマントを見た気がする。」

カッサータ「ああ、でも何だって俺たちを避けるんだ?」

チーズ「ちょっとちょっと、手品師がきてるっていうの?」

ピザ「ああ、チーズも見かけたか?」

チーズは眉間にしわを寄せ、鼻で思いっきり息をすうと、何か臭いをかいでいるような様子を見せた。

チーズ「いないわ。いないって確信できるわ。」

カッサータ「なんでだ?」

チーズ「私、さっき、奴のオーデコロンの臭いをかいだの。あのきつさじゃ、もし奴が本当に来てたとしたら、私がわからないわけないわ。」

ピザ「そうか…チーズは鼻がよく聞くからな。とすると、オレ達の見間違いか?」

カッサータ「(だが、あれは絶対奴だ…こんなちょっとの間に、風呂でもはいったか?いや、だとしてもこんなに速く追いつくはずがない。)」

チーズ「アンタ達、何よ、その顔!私のこと、信じられないっていうの?」

ピザ「いやいや!そんなわけないだろ!」

27.チーズの失敗

物語 うっかりブレーキレバーを倒してしまったチーズ

チーズ「ああああーーー!!!!なんだってまた止まるの!!!」

ピザ「落ち着け、落ち着けって!」

カッサータ「はぁ…こんな短い距離で、一体何回止まれば気が済むっていうんだ。」

ピザ「おいおい、こんな時にあおるなよ。」

チーズ「どうだっていいから、今度は一体何が問題なのよぉぉぉぉ!」

ピザ「うううん……」

チーズ「どうしたのよ?ちょっと、だから何の問題なの?車輪?石が道をふさいでる?それともまた紙切れでもみつけた??!!」

ピザ「ああ……チーズ、お前が知らぬ間にブレーキ倒しちゃったんだよ。」

チーズ「……」

カッサータ「……」

ピザ「……」

チーズピザ!!さっきはただ笑いをこらえてたのね!!!!」

ピザ「いやいや、そんなことないよ。うわあああ、お姫様、やめてください!!!カッサータ、助けてくれ!!」

カッサータ「女の子を怒らせるとこうなるんだよ。思い知っておかないとな。」

ピザ「助けてぇええええーーー!!」

④お化け屋敷

28.キャストの日記

物語 女の子の空中ショー

ピザ「ふー、ふぅ。……ここならお化けはいないようだな。」

チーズピザ、走るの速すぎよ、もっとゆっくり走ってよ!」

ピザ「ゆ、幽霊は?」

カッサータ「今のところ、いないみたいね。」

ピザ「ああ、やっと一息つける……」

チーズ「──ねぇ!ちょっと見て!ここにも日記があるわよ!」

カッサータ「おや、このにっきは写真付きか…キャストの日記らしいな。」

チーズ「???どうしてわかるの!」

カッサータ「勿論、そう書いてあるからに決まってるだろ。」

ピザ「日記になんて書いてあるんだ?」


カッサータは写真と日記をピザに手渡した。写真に写っているのは体のラインが目立つ服装をした女の子で、顔の大きな青あざがどうしても人目をひいてしまう。


ピザは視線を日記に戻す。


「9月1日

やった、やったわ!家出っ子の私もここに来て3年、やっと団長に空中ショーを教えてもらえることになったわ。なにもかもこの日の為にやってきたんだから!


危険だって、構いやしないわ。この顔の青あざに驚きの声をあげるのではなく、観客が私のショーに喝采を浴びせてくれさえすれば、死んだって、悔いはないわ!」


チーズ「随分強い子ね……」

カッサータ「そうだな、同感。」

お化け屋敷のキャスト(布)「ううう〜〜〜〜〜〜ああああおおおお〜〜〜」

ピザ「!!追ってきたぞ!逃げるぞ!」



29.キャストの日記2

物語 踊り出す男の子たち。

カッサータ「え?この写真……」

ピザ「???なんだ、カッサータ、なんで急に止まるんだ?」

カッサータ「見てみろよ、この写真にうつってるバレーダンサー、男じゃないか?」

チーズ「どれどれ───あ、本当だわ!」

ピザ「わ、スカートの衣装着てやがるぜ!男がスカートなんてよ…」

チーズ「あら、写真の裏になんか貼ってある。」


「団長、嘲笑う事も、追い出しもせず、こんなきれいな衣装で踊らせてくれて有難う。僕たち、きっとすばらしいショーをみせて、恩返しするから。」


カッサータ「スカートはいて踊るのが好きな男か?」

ピザ「サーカスの団長、ほんと、随分いい人だな……」

カッサータ「こんなふうに表舞台でおどるなんて、相当勇気がいるな。」

チーズ「そうよね…ピザは絶対スカート履いて踊る勇気なんてないものね!」

ピザ「オレは勇気がないんじゃない!スカートなんて履きたくねぇよ!」

チーズ「あらーーー」

カッサータ「あらーーー」

ピザ「信じねえなら、勝手にしろよ!行くぞ!」



30.ライオンと飼育員

物語 かわいそうなライオン。

チーズ「しっ……何か話し声が聞こえる、ここよ、ピザ静かに。」

ピザ「なんだって俺だけに注意するんだよ。」

カッサータ「しっ───!」


お化け屋敷のキャスト(布)「今日もまたライオンに餌やってないのか!」

お化け屋敷のキャスト(馬)「すすすすすみません!今すぐやります!」

お化け屋敷のキャスト(布)「待て!お客さんをおもてなししてからだ!」

お化け屋敷のキャスト(馬)「はい!」

お化け屋敷のキャスト(布)「ったく、飼育員だろ、ちゃんと面倒みてやれ。あいつも可哀そうなんだ。」

お化け屋敷のキャスト(馬)「はい、お話はきいたことが…サーカスの動物たちは皆、以前はものすごくお腹をすかせていたって!」

お化け屋敷のキャスト(布)「わかってるならちゃんと面倒みてやれ!昔、別のサーカスにいた時はいつもお腹を空かせていて、ちょっと盗み食いをしようとしたら、叩き殺されそうになったんだ。団長がお金を出して、何とか助けだしたのも、そんな目に二度と会わないようにだろうが!」

お化け屋敷のキャスト(馬)「はい!ちゃんと面倒見ます!」


チーズ「ライオン、かわいそうね…。」

ピザ「おかしいな。遊園地はこんなにぼろぼろなのに、ライオンなんてまだいたか?」

カッサータ「知るかよ。いずれにしろ、サーカスに行けばわかるだろ。」

チーズ「じゃ、はやくいきましょう!」



31.キャスト大喧嘩

物語 喧嘩を始めたキャストたち。一体どうしたのだろう。

ピザ「おやおや?ちょっと聞いてみろよ、なんか、喧嘩してるみたいだぞ。」

チーズ「こんな時に喧嘩?あたしたちを驚かすんじゃなかったの?」

カッサータ「まったくだらしないキャストだな…」


お化け屋敷のキャスト(布)「ーーおまえなんかさっさと死んじまえ!」

お化け屋敷のキャスト(馬)「とっくに死んでるよ!」

お化け屋敷のキャスト(布)「あ、そうだった…俺らはとうの昔に死んでたんだっけ。」

お化け屋敷のキャスト(馬)「団長が目をさましていらい…」

お化け屋敷のキャスト(布)「団長がおかしくなっちゃった!オレ達全員、殺されちまったああああああ!」

お化け屋敷のキャスト(馬)「落ち着けって!でも今はこうやって生きてるじゃないか!」

お化け屋敷のキャスト(布)「そうだな、オレ達まだ動いてるものな。仕事仕事、なっ!」

お化け屋敷のキャスト(馬)「おお!」


チーズ「???一体、どういうことなの!」

ピザ「まったくわからん…」

カッサータ「でもまぁ、面白いじゃないか。」



32.キャストが泣いている

物語 頭を悩ます泣き声。

カッサータ「んん?さっきのあの部屋……」

チーズカッサータ、どうしたの?」

カッサータ「あの部屋で、だれかが泣いているような。」

ピザ「そ、そんな…おどかそうとしてるんだろ。」

カッサータ「そうとは思えんが…行ってみよう。」

お化け屋敷のキャスト(布)「うううう…怪物だ、俺はやっぱりあの怪物だ。」

お化け屋敷のキャスト(馬)「おい…泣くなよぉ。俺まで泣きたくなっちまったじゃねぇか。お、俺たち、怪物になっちまったけど、我を忘れた団長に比べりゃ、ずっとマシだろ。」

お化け屋敷のキャスト(布)「で、でも…そんなこといったって、やっぱり怪物だ。…団長さえ、団長さえ…」

お化け屋敷のキャスト(馬)「団長、もう謝っただろ!団長だって、殺そうと思って俺たちを殺したんじゃない…あんなにいいひとだったんだ…俺たち、団長を責めちゃいけないよ。」

お化け屋敷のキャスト(布)「ううううう…」

お化け屋敷のキャスト(馬)「うう…泣くなって、俺まで泣きたいよ。いやっ、泣いちまってるじゃねぇか!お客さんを楽しませなきゃならねぇってのに!なくなって!うええん…」

ピザ「邪魔しないで、戻るか…。」

カッサータ「同感。」

チーズ「…チーちゃんも同感。」


33.時間がない!

物語 ショーまで時間がない。

チーズ「わあーーー!!!!!放して!!!!」

ピザ「そいつを捕まえろ!チーズのスカートを引っ張ってやがる!!!!!」

カッサータ「女の子に手を出すなんて、シバかれたいのか?」

お化け屋敷のキャスト(布)「すみません!!わざとじゃないんです!!でももう時間がないんです!!!!」

カッサータ「何がだ?」

お化け屋敷のキャスト(布)「団長はますます自分をコントロールできなくなって、理性を保っていられる時間が益々短くなり、今はもうほとんどショーのことしか覚えていないんです。もし、もしショーを観てくれる人がいなかったら、なにもかも、ひとつ残らず忘れてしまう…」

チーズ「うん…そういう事なら、まっ、いいか…」

ピザ「だからって、女のスカートを掴んでいいはずないだろ!!やっちまえ!!!」

お化け屋敷のキャスト(布)「わ!たすけて!!」

34.落ちていたブローチ

物語 見覚えのあるブローチ。

ピザ「ああああ!!!やべぇ、マジでこえぇ———!!!!!」

お化け屋敷のキャスト「あ!」

チーズピザピザどうしたの?さっきの叫び声はなに?」

ピザ「オ、オレ、ゆ、幽霊見ちまった!」

カッサータ「キャストに合っただけだよ…いや、待て、あれはーー!」

 カッサータピザがぶつかったキャストの足元に見覚えのあるブローチを見つけた。銅製の二つ頭の蛇が一本の柱に絡みついている――ウィスキーの紋章だ。

 ピザもそのブローチに気付き、さっと顔色を変える。さっきまでの驚きは雲のように散り去ってしまった。

ピザ「どこで手に入れたんだ?!」

お化け屋敷のキャスト(馬)「こ…これは手品師さんの部屋で見つけたんです。これが何か?」

チーズ「ねぇねぇ?どうしたの???」

カッサータ「いや、何でもない、ただ…少し急ごうか。」

ピザ「同感。さっさと行こうぜ。」

チーズ「ちょっと二人とも…ねぇ!ピザ!そんなに急がないでよ!待ってってば―――」

35.キャストの本心

物語 団長の願いは、叶うのだろうか。

カッサータ「おい!」

お化け屋敷のキャスト(布)「え?わ!なんで見つかったんだ?う…う…俺はもう首だ…」

チーズ「…この人いったい何なの?なんでこんなに泣き虫なのかしら?」

ピザ「おいおい、泣くなよ。聞きたいことがあるんだ。」

お化け屋敷のキャスト(布)「な、なんですか?」

カッサータ「アンタとアンタの仲間はみんな、団長にこんな姿にさせられたのか?」

お化け屋敷のキャスト(布)「は、はい…」

ピザ「じゃ、恨んでるか?」

お化け屋敷のキャスト(布)「そ、それは…恨んだこともありました。でも団長は何と言っても団長です。団長がいなかったら、私たちもあの日まで…生きてこれなかった!だから…」

カッサータ「だから、団長をたすけてあげたい、か?」

お化け屋敷のキャスト(布)「えぇ…団長の願いを叶えてあげたいんです。そうすれば、安心してこの世を離れられるでしょう。団長だってそもそも私たちの為に…」

チーズ「そんなこと言わないで、団長もアンタ達をせめてなんかいないぞ。」

お化け屋敷のキャスト(布)「本当にそう思いますか?」

チーズ「当然でしょ!団長のこと、信じなさい、昔のままの団長だよ!」


36.吸血コウモリ

物語 真っ暗なお化け屋敷でピザが見たもの。

ピザ「なぁ…この道、どんどん暗くなってる気がしないか?」

カッサータ「そうだな、道の先も真っ暗だ。」

ピザ「先に進まないほうがいいだろう!」

チーズ「ねぇ、二人とも、何かきこえない?」

カッサータ「うん?なんの音だ?」

チーズ「翼をはためかせる音…みたい!ねぇ、こんなに暗いし、もしかしてコウモリとか?降り立った途端、吸血鬼に変身!なぁんてね。」

ピザ「チチチチチーズ!脅かすな!きゅっ、吸血鬼だって!」

カッサータ「お前、食霊だろ。吸血鬼なんか、怖がる必要ないだろ。」

ピザ「そうさ、吸血鬼もオレの血は吸えないぜ!」

 一匹のコウモリが頭上をかすめ、ピザは驚きのあまり飛び上がった。

ピザ「コウモリ!吸血鬼か!やっぱり道を変えよう!」

チーズ「ハハハ!おバカなんだから。」

カッサータ「おいおい、笑ってるばあいじゃないだろ。追いつこうぜ、出ないとどっかにいっちまう。」

チーズ「わかったわ。」


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