初生の火・ストーリー
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初生の火
1.新しいプロジェクト
或る日のペリゴール研究所
AO-1研究室
ワッフル:霊力の曲線は高温になると一気に下がる……この理論からすると、炎を操る食霊はどうなっちゃうの?
ワッフル:先生から与えられた命題は道理があわないのよね。もしや、私の公式の使い方が間違ってる!?
ワッフル:……あああ、頭が痛いよ~! 誰か助けてぇっ!
研究室では、ワッフルが自身よりもはるかに高い本の山に腹ばいになって寝そべり、筆を振るっていた。
その時、文書を抱えた白トリュフがドアを押して入ってきた。
ワッフル:先生から与えられた命題はきっと問題ないわよね、だったら使える計算ツールはもう……
ワッフル:これをもうちょっと試してみようかなぁ……?
ワッフル:熱量の公式パラメータ条件を少し変えてみよう……。
ワッフル:ひゃぅっ!! 先生?
白トリュフ:……あなたには補聴器が必要なようね。
ワッフル:えっと、あはは……、先生お帰りぃ~。
白トリュフ:何の研究をしているの? 難しい課題は与えていなかった筈よ?
白トリュフは懐から薄片状の器具を取り出し、ワッフルの草稿上に落とした。すると、機械の電子音が草稿の内容を語り始めた。
白トリュフ:……高温の曲線? これは何の研究かしら?
ワッフル:先生がくれた課題はもう終わったので、その基礎を元に更なる謎に迫っておりました!
白トリュフ:そう……『今度はもっと難しい課題を与えよ』との訴えと受け取って良いですか?
ワッフル:はい! 更に言えば、経費の予算ももっと上乗せできたら良いんですけど……。
白トリュフ:……。
ワッフル:何これ……? んんっ……霊力で操る武器を作るための設計案と理論の概要……?
ワッフル:先生はもしや、食霊用の武器を作るおつもりですか? それとも、神器を改良するとか……?
白トリュフ:いいえ、食霊用の武器を人間でも使える武器――霊力武器を作りたいのです。
ワッフル:えっ?
2.難しい課題
或る日のペリゴール研究所
AO-1研究室
ワッフル:ちょ、ちょっと待ってください……先生は今、何と仰いました?
ワッフル:『人間が使える霊力武器を作る』と仰いましたか?
白トリュフ:はい、何か問題がありますか?
ワッフル:……私が思うところ。ええと、
ワッフル:料理御侍が食霊の武器を使っても、堕神にダメージを与えることはできないって結論は既に出てますよね?
白トリュフ:ええ。だからわたしたちは、人間も活用できる霊力武器を作りたいのです。
ワッフル:う~ん……これなかなか実現は難しいかと。関わる部署が多すぎます。
白トリュフ:また、このプロジェクトは開発期間が二ヶ月です。その間に一つは使える試作品を開発せねばなりません。
ワッフル:二ヶ月……? それはあまりにも短いですね。
白トリュフ:簡単な課題をいらないといいましたね? もしやワッフルにはこの課題は難しすぎましたか?
白トリュフ:それでしたら、このまま個人的な研究を続けてください。また別の学生を呼びます。
ワッフル:……ち、違います! 先生、ちょっと待ってください!
ワッフル:私はこの課題を難しいとは言ってませんよ? 問題があるとしたら経費が足りないかもしれないことです。
白トリュフ:この課題の審査官はわたしです。経費については上限は設けません。
ワッフル:……わ、私がやります! 期間は二ヶ月ですね?
白トリュフ:そうです! では次の課題の方向を決めましょう。あなたの意見をどうぞ。
ワッフル:……先生は朝早くからですか?
白トリュフ:賭け……ですか?
ワッフル:な、なんでもないです! ちょっと見てみます。
ワッフル:んー……冷兵器と火器どちらにするか……?
ワッフル:先生はどちらを選ぶ傾向がありますか?
白トリュフ:私は火器を選ぶ傾向があります。
ワッフル:先生とは逆に、冷兵器のほうが実現しやすいと思います。うーん……私の考えは間違っていますか?
白トリュフ:ふふっ! ワッフルさん、初めてあなたと協力して課題を研究した時に何を教えたか覚えていますか?
白トリュフ:あなたはあなたより上の立ち場の人にすぐ従ってしまう傾向があります。研究は己との戦いですよ?
白トリュフ:では明日の朝、課題に対するあなたの考えを教えてください。楽しみにしていますよ!
ワッフル:……は、はいっ!
3.課題を与える
翌日の早朝 ペリゴール研究所
AO-1研究室
白トリュフ:冷兵器のエッチング難易度、量産効率……ん? 霊力の保存率はまだあるみたいね。
白トリュフは目を閉じて、机を指で叩きながら、ワッフルが用意したプロジェクト報告書に目を通した。
ワッフル:先生……先生はどう思いますか?
白トリュフ:そうね。理工学者の報告書としてはよくできています。
白トリュフは茶碗を手に取り、軽く一口すすった。
ワッフル:それは、どういう意味でしょうか?
白トリュフ:あなたは現実的な要素を無視しすぎています。
白トリュフ:……量産効率についての考えが書かれていますが、実践効果を考えていますか?
ワッフル:実践効果ですか?
白トリュフ:人間には霊力保存の問題があります。また堕神には、霊力以外でもダメージを与えることが可能です。
白トリュフ:この点から、冷兵器と火器はどちらが戦局に影響を与えると思いますか?
白トリュフ:そして、冷兵器に霊力を蓄えるエッチング装置の製造を考えたとき、現状の工場では量産が追い付かず、精度も低いものとなります。よって、コア部分は手作りがメインとなるでしょう。
白トリュフ:……。
白トリュフは一気にまくしたて、ワッフルの報告の欠陥を一つ一つ明らかにしていく。
ワッフル:あー……さすが先生。あっぱれです……。
ワッフルは完敗の意を示し、白トリュフから報告書を受け取った。
ワッフル:では先生。火器はどこから手をつけた方が良いでしょうか? アドバイスを頂けたら助かります。
白トリュフ:食霊を連れて、武器を探し出して、研究をしましょう。
ワッフル:先生はこのような実験をしたことはありますか?
白トリュフ:ありません。
ワッフル:えっ?
白トリュフ:だからあなたが探さなくてはなりません。
ワッフル:はい?
白トリュフ:早速行きましょう。唯一のヒントはサタンカフェです。
白トリュフ:それと、あなたに資金の上限は設けませんが、部下や他の機関に協力を仰いではいけません。
ワッフル:な、なぜですか?!
白トリュフ:課題の難易度を上げる、という先生からの優しさです。それを望まれていましたよね?
ワッフル:ちょっと待って、先生!?
白トリュフ:早く行きなさい。時間は二か月しかありませんよ。
ワッフル:は……はい。わかりました。
4.来書
翌日の昼過ぎ
白トリュフ私設研究室
白トリュフは課題の文書を片づけてから、小さな体をソファーに落とした。
白トリュフ:キルトさん、手紙を持ってきて……キルトさん?
白トリュフは手紙を受け取り、封を開け、便箋に一息吹きかける。すると、文字が浮き上がってきた。
ドーナツ:お久しぶりです、白トリュフ。以前はお世話になりました、ドーナツです。
ドーナツ:この前会ったのはいつでしたでしょうか? 変わらず元気でいらっしゃれば何よりです。
ドーナツ:本題に入りましょう。
ドーナツ:さて、今回の手紙ですが、私は現在、あなたにお聞きした武器研究と開発について確認したくございます。
ドーナツ:人間は私たちにはない大きな可能性を秘めており、我々はそんな彼らの手助けをしたいと考えております。
ドーナツ:神恩軍の拠点は、順調に建設されております。支援リストの物資も全部受け取りました。
ドーナツ:この特別なときに、我が神恩軍を助けてくださって、ありがとうございます。改めてお礼を言わせてください。
ドーナツ:ですので、我らの手が必要なときは、いつでもお声がけください。喜んで馳せ参じますので!
ドーナツ:PS:お姉さんの黒トリュフにもよろしくお伝えください。あなたに神のご加護がありますように……。
白トリュフはため息をついて、かつて会ったドーナツの姿を瞼の裏に思い描く。
白トリュフ:あなたはいつもそう……無邪気で、道理を弁えずに真っすぐで――だから、唐突なのよね。
白トリュフ:まあ、聞いてあげましょう。他ならぬ、ドーナツからのお願いですからね。
――
翌日の昼過ぎ
グルイラオのサタンカフェ
コーヒー:依頼? ……確かにサタンカフェでは仕事を請け負っておりますが、君はどこでそれを聞きました?
ワッフルは名前を言いかけ、コホンと咳き込んだ。まだ彼らのことはよくわからない。慎重に振舞わなければ。
ワッフル:――私も食霊ですから。ここのお話は聞き及んでおります。
コーヒー:……そうですか。どなたかのご紹介かと思いました。あまり、単身で乗り込んで来られる方は少ないので。
ワッフル:(あ……圧縮ビスケットの言ってた通りだ! 先に連絡してから来たら良かったかな?)
ワッフル:(ま、でも話は聞いてくれそうだし問題ないかな♪ 何かあったら部下たちに頼ればいいもんね~!)
5.変な依頼
翌日の昼過ぎ
グルイラオのサタンカフェ
コーヒー:銃器を借りたいと? 銃の扱いは厳重に管理されていますので手に入れるのは難しいかと……。
ワッフル:んん……私は、食霊用の銃器や神器など霊力で操る銃器の研究をしてまして。
コーヒー:食霊の銃器を研究……?
コーヒー:それは……いったい、どのような?
ワッフル:食霊の武器を人間が使えるようにする実験です。成功したら、人間が食霊に頼り切りにならなくなります。
コーヒー:それは……また、いろんな可能性を秘めたプロジェクトですね。
コーヒー:ただ私には、霊力の銃器を用意できる伝手はなくて。君の手伝いは難しいでしょう。
そのとき、ドアが開き、風鈴の音が響く。紅茶が玄関を開けて入ってきたからだ。
紅茶が座ると、その横にワッフルが駆け寄ってきて、しゃがみこんだ。
紅茶:な、何……?
コーヒー:えっと、彼女は……。
ワッフル:こんにちは、お姉さん! 私、ワッフルと申します。お姉さんの銃、ちょっとだけ見せてくれませんか?
コーヒー:あっ……!
紅茶:うん? いいけど……。
紅茶は、言われるままに腰に下げたフリント銃を渡した。コーヒーはそんな紅茶を見て、頭を押さえて項垂れた。
ワッフル:これは完璧な天然符文! 持ち主の霊力を取り込んで、堕神を殺傷する霊能弾を迅速に作れる……!!
ワッフル:わわわっ! この構造は……この原理は……!!
紅茶の銃を、ワッフルは我を忘れて熱心に観察する。銃の隅々まで細かく触って、その形状を確認している。
コーヒー:彼女は、サタンカフェに霊力銃を貸してほしいと依頼しに来たのです。
紅茶:銃を……? いったい、何をするつもり?
コーヒー:実験に使うと。どうやら彼女は、ペリゴール研究所の一員のようです。
紅茶:へぇ……?
コーヒー:ペリゴール研究所は、食霊たちが集まって、科学研究をしている組織です。
紅茶:どんな人たちなの?
コーヒー:優秀ではありますが、変わり者の集まりですね。ただ、一般の人は彼らの頼みを断れませんね。
紅茶:何故? 力ずくで従わせようとするとか?
紅茶はチラリと横目でワッフルを見るが、目を輝かせているワッフルは、いかにも人畜無害そうに見える。
コーヒー:いいえ、お金でねじ伏せるのですよ。権力もありますしね、タチの悪い集団ですよ。
6.無言
翌日の昼過ぎ
グルイラオのサタンカフェ
コーヒー:彼女に銃を貸すのですか? 事故につながったら……?
紅茶:何か問題が?
コーヒー:そのフリント銃は君の神器です。貸してしまったら君が困ります。
紅茶:コーヒー……私はね、ちょっとだけ賭けをしたくなったのかもしれない。
コーヒー:賭け……ですか?
紅茶:私は、思い出に縛られたくない……それは貴方も同じよね?
コーヒー:……なぜ急に、そんなことを?
紅茶:彼女は……ペリゴール研究所は、私たちの考えもしない大胆なことをしようとしています。
紅茶:食霊の武器を量産して、人類のために使う……そんなこと、私も貴方も想像すらしたことないでしょ?
コーヒー:そうですね。なんとも仰々しい話ですから。
紅茶:どうかしら、それは神のみぞ知ることかもしれないけど……でも、きっと大丈夫でしょ。
紅茶:こんなに真っ直ぐに明るい未来を夢見ているんだもの。私は、そんな彼女に賭けたいわ。
――
また或る日のペリゴール研究所
屋外爆破実験A区
ワッフルが空を見上げたと同時に、大きな爆発音が辺りに響き渡った。
ワッフル:ふふっ! チャージ臨界値を見つけちゃった♪
ワッフル:私ってば、本当に天才だよね! あははっ!
白トリュフ:ワッフルー! A区は全部あなたのせいで焼け野原ですよ! 理論的に計算してから実験しなさい!
ワッフル:先生、いいところに! ここを見てください! ピストル内部のエッチング模様が霊力を帯びてくると……!
白トリュフ:……。
白トリュフ:ワッフル、ストップ! 紅茶さんが来ました。そろそろ銃を返してほしいとのことです。
白トリュフ:そ、その反応……まさか。失くした、とか……? あ、あれは紅茶さんの神器ですよ!?
白トリュフ:その反応……まさか、冗談――ですよね?
ワッフル:銃は実験室のどこかにあるかと! 私は探しに行くのであとのことは先生、よろしくお願いしまーす♪
白トリュフ:……。
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