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スパイジェントルマン・ストーリー

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スパイジェントルマン

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プロローグ

梅雨九日 早朝

竹煙質屋


 雨続きだった日々が終わり、久しぶりに太陽が顔を覗かせた。

 竹煙質屋の前では、魚香肉糸がそろそろ戻るであろうボスの帰りをひとりで待っている。

 そこに溜息をついて北京ダックが帰ってた。表情はいつも通り、悩まし気なしかめっ面である。


魚香肉糸:どうしたの?相変わらず悩みは尽きないって顔ね。

北京ダック:……心配性なのですよ。あの者たちのことを考えると、夜も眠れません。

魚香肉糸:夜は寝た方がいいと思うけど?

北京ダック:揚げ足取りは結構。そなたも知っての通り、吾は彼らの国を滅ぼしたのです。報復は当然のことでしょう。

北京ダック:だが、吾は彼らを完全に消すことはできなかった……残党が集まって何やら画策しているらしいという噂も尽きない。

魚香肉糸:……北京ダック、焦りは禁物よ。彼らは一朝一夕で根絶できる相手ではないわ。

北京ダック:わかっています。けれど、不安は拭えません。何か良からぬことが起きる気がします……。

魚香肉糸:……


 そんなボスに魚香肉糸は困り果てしまう。どうしたらよいだろうか……。

 魚香肉糸は、仲間に北京ダックのことを相談した。その結果、彼女は何通かの手紙を送ることにした。

 良い返事が来ると良いが……と魚香肉糸は思った。

 それから数日後——魚香肉糸北京ダックの執務室へのドアを勢いよく開け放つ。


魚香肉糸:ダック!大変よ!

北京ダック:おや。どうしました?そんなに慌てて。

魚香肉糸:……貴方の読みは当たったわ。奴ら、ナイフラストで何か密謀しているみたいなの。

北京ダック:ナイフラストですか?何故そんなところに……彼らの拠点は光耀大陸だった筈です。

魚香肉糸ビールから密告があったわ。今、彼らの近くに潜伏しているみたいなの。

北京ダック:……なるほど。吾はすぐにここを発ちます。ビールにすぐ連絡を。吾が行くまでうかつに動かないように、と。

魚香肉糸:伝えておくわ。それと貴方の服、ナイフラストでは目立つから、着替えた方が良いと思うの。

魚香肉糸:ほら、見て!新しい服を用意したの。アヒルの子たちとお揃いよ。可愛いでしょう?

北京ダック:そなた……さてはこの事態を、楽しんでいますね?確かに、子らは可愛く仕上がっていますけれど。


 北京ダックは文句を言いつつも、魚香肉糸の言う通りにした。今の服は、隠密行動には向かないだろうと思ったからだ。


魚香肉糸:(……目立つことに無頓着だからね、うちのボスは。着替えてくれて良かったわ)

北京ダック:ふむ……サイズもピッタリです。魚香肉糸、どうもありがとうございます。

魚香肉糸:お礼はいいわ。はい、あなたの荷物よ。必要なものは、入れてあるから。

魚香肉糸:ナイフラストへの道は、最近とても危険みたいね。夜は堕神がたくさん出るみたいだから、気を付けて。

北京ダック:吾は大丈夫です。安心して待っていてください。では、行ってきます。


 魚香肉糸は竹煙質屋を去る北京ダックを見送った。それから、後ろで同じように見送りをしたメンバーたちに振り返る。


魚香肉糸:皆!準備はできてる?私たちも出発するわよ。ボスより早く、ナイフラストに着かないといけないしね。

焼餅:ヤー!準備OKだっ!!

酸梅湯:うむ……北京ダックが怒らないと良いが……。

魚香肉糸:何かあったら私が何とかします。さぁ、早く行きましょう!


ストーリー 1-2

梅雨九日 午後

竹林の中


麻辣ザリガニ:ナイフラストか……チッ。

北京ダック:(あれは麻辣ザリガニ……何故ここに?)

麻辣ザリガニ:誰だ?!

麻辣ザリガニ:む、北京ダック!てめぇが何故ここにいる?!

北京ダック:私がここにいる理由を、何故そなたに教える必要が?

麻辣ザリガニ:……ハッ!すかしやがって!

麻辣ザリガニ:てめぇと話してる暇はねぇ……俺様は忙しいんだ!


 麻辣ザリガニは、北京ダックをジロリと一睨し、踵を返して去っていった。


北京ダック:(ふむ、麻辣ザリガニのことは気になりますが……それよりも、今は『彼ら』のことを調べねば)


 北京ダックは目的を思い出し、再び歩き出す。するとまた麻辣ザリガニと遭遇してしまう。


麻辣ザリガニ:おい!てめぇ、俺様の後をつけやがったな!


 その言葉に、北京ダックは眉をひそめた。


北京ダック:(もしや……彼もナイフラストに行くのでしょうか?)

北京ダック:いえ、偶然同じ方向だっただけです。吾は先を急ぎます故、失礼。

麻辣ザリガニ:てめぇ!……くそっ!今は時間がねぇ!てめぇを殺るのは、残りカスを片づけた後だ!覚悟しとけ!


───

(残り滓? もしや……彼と私の目的は同じ?)

・<選択肢・上>目的地が同じかどうか麻辣ザリガニに尋ねる。 北京ダック+15

・<選択肢・中>麻辣ザリガニの反応を待つ。 北京ダック+5

・<選択肢・下>質問はせず、一人でナイフラストに向かう。 麻辣ザリガニ+5

───


麻辣ザリガニ:ふん……まさかてめぇもナイフラストに?

北京ダック:(この反応……なるほど。ビールは、私にだけ『彼ら』の情報を伝えた訳ではないようですね)

北京ダック:そなたも、ビールから聞きましたか?

麻辣ザリガニ:ああ。食霊に手を出そうとした奴らが生きていると聞いたら、見逃す訳にはいかねぇ。

北京ダック:彼らを倒すのは吾ですよ。そなたは手出し無用です。

麻辣ザリガニ:ハッ!何故俺様がてめぇの言うことを大人しく聞かねばならない?

北京ダック:彼らは吾のターゲットです。吾がしっかりと代価を払わせます。

麻辣ザリガニ:人類は俺様の敵だ。敵は全員ぶっ潰す。

北京ダック麻辣ザリガニ……!

麻辣ザリガニ:……北京ダック、てめぇはそんな恰好して、いったいどこに行くつもりだ?

北京ダック:……

麻辣ザリガニ:……おい!どこに行く!?俺様の話はまだ終わっていないぞ!

北京ダック:吾にはそなたと戯れている時間はありません。失礼。

麻辣ザリガニ:……てめぇ、待ちやがれ!話を聞け!

北京ダック:まだ何か?

麻辣ザリガニ:今回限りだが、俺様と協力しないか?

北京ダック:協力?

麻辣ザリガニ:俺様はてめぇを気に入らねぇが、奴らはもっと気に入らねぇ!取りこぼした奴らを放っておけるか!

北京ダック:(ふむ……この誘いに乗っかるべきか否か。彼は確かに以前よりは落ち着いているようだが……)

麻辣ザリガニ:ハッ!俺様の協力がそんなに嬉しいのか? 黙ってないで、何とか言いやがれ!

北京ダック:(……前言撤回です。彼はやはり以前と変わらず、迷惑な存在ですね)


ストーリー 1-4

梅雨十二日 晩

光耀大陸辺境


 日が暮れて、北京ダックは焚火を用意し、酒を片手にその前に腰を卸した。

 共に長い道のりを歩いてきた麻辣ザリガニは、一瞬躊躇するも、北京ダックの向かいに座り、酒を手に取った。


北京ダック:……

麻辣ザリガニ:……

北京ダック:……

麻辣ザリガニ:……おい、北京ダック。何か話せ。

北京ダック:はて、吾にはそなたと話したいことなどありませんが。

麻辣ザリガニ:ハッ!気が合うな、俺様にもないぜ!だが、この沈黙はうっとおしいんだよ!何とかしやがれ!

北京ダック:まったく我儘ですね……では質問を。この先、『彼ら』はどう動くと思いますか?

麻辣ザリガニ:……フンッ!

北京ダック:(……吾は何故、この男と行動を共にしているのか--眩暈がしてきました)

住民:だ、誰か!助けてくれぇっ!

暴食:ギャギャギャーッ!!

北京ダック:(この声は……堕神?!)


 北京ダックは緊張した面持ちで声のした方向を見た。

 灌木の群れがざわめくと同時に、一人の男が飛び出してくる。その背後には巨大な堕神がいる。


住民:た、助けて!助けてください!


その声に、北京ダックは脇に置いていた銃に手を伸ばした。

 そして麻辣ザリガニに視線を向ける。しかし、彼は動こうともせず、悠然と酒を飲み始めていた。


───

(このような事態になっているのに彼はなぜ、まったく関心を示さないのか……そもそも何故ここにいる?)

・<選択肢・上>戸惑いはあるが、人を助ける方が先だ。 北京ダック+5

・<選択肢・中>胡散臭すぎるので、傍観することにしよう。 麻辣ザリガニ+15

・<選択肢・下>怪しすぎる……様子を見ようか。 北京ダック+15

───


 堕神から逃げてきた男は、北京ダック麻辣ザリガニを見つけ、救世主を見かけたかのごとく喜んて駆け寄ってきた。

 巨大な堕神が三人に向かって飛び掛かってくる。嘔吐を催す臭いを巻き散らし、巨大な触手を振りかざした。


暴食:ギャギャギャーッ!!

麻辣ザリガニ:………てめぇ、なにしやがる!俺様の酒がひっくり返ったぞ!?

麻辣ザリガニ:クソ堕神がっ!死にやがれっ!!


 それは一瞬の出来事だった。怒りに満ちた麻辣ザリガニは、その鋏を一振りして、あっさりと堕神を倒してしまった。

 北京ダックは唖然とし、手の中のパイプを回しながら呟いた。


北京ダック:そなたが、まさか人間を保護するとは……。

麻辣ザリガニ:ふざけるな!俺様は人間を助けたわけじゃねぇ!

北京ダック:人間に牙を向けないのなら……吾はあなたと争わずに済みます。これからもそのようにあってほしいですね。

麻辣ザリガニ:クソッ、てめぇのことは俺様がいつか殺してやる……!


ストーリー 1-6

梅雨十三日 早朝

ナイフラスト辺境

 

 慌ただしい夜が明け、北京ダック麻辣ザリガニは再び目的地へと歩き出した。

 その後ろから、麻辣ザリガニに助けられた男が付いてきている。溜息をついて、北京ダックが言った。


北京ダック:何故ついてきますか?昨晩は吾が宥めましたが、あの様子では、彼は本当にそなたを殺すかもしれませんよ?

住民:……私はナイフラストに大事な用事があるのです。お願いします、邪魔はしません。同行させてください。

北京ダック:このエリアは危険区域で、商隊と言えども通り抜けるには、料理御侍の護衛が必要です。何故ひとりでここに?

麻辣ザリガニ:そんな質問、するだけ野暮だぜ。仲間に見捨てられたんだろ。逃げるための人質にされたのかもな、ククッ!

住民:違います!私たちは堕神に襲われて、方々に逃げただけです……仲間を見捨てるような真似はしません!

麻辣ザリガニ:だったら何故まだここにいる?仲間に見捨てられたんだよ、てめぇは。

住民:違う……彼は--

麻辣ザリガニ:黙れ!後をついてきたら殺す!


 麻辣ザリガニは腕を振って、両手の鋏に巨大な炎を立ち昇らせる。驚いた男は震え上がって少し離れた岩陰へと身を隠した。


北京ダック麻辣ザリガニ、やめなさいっ!

麻辣ザリガニ:ふん。てめぇが俺様を止める理由はかわからねぇが……いいぜ?あいつを連れていこうか、ナイフラストに。


───

物分かりがいいですね、麻辣ザリガニ。何故ですか?

・<選択肢・上>気が向いただけだ、理由なんてねぇ! 麻辣ザリガニ+5

・<選択肢・中>ナイフラストで仲間を見つけられず失望したあいつの顔はきっと愉快だぞ? 麻辣ザリガニ+15

・<選択肢・下>あのクソ人間は怪しすぎる! 傍に置いて観察するぜ。 北京ダック+15

───


 北京ダックは、何故麻辣ザリガニが大人しく引き下がったのかわからず、首を傾げる。


北京ダック:(何故あっさり諦めたのでしょう?ザリガニらしくないですね)

麻辣ザリガニ:そんな驚くことか?ただあいつが『奴ら』と関係があるかもしれないと思っただけだ。

北京ダック:彼を餌に一網打尽にしようと……?ふむ、何故あの人間が『彼ら』と関係があると思いました?

麻辣ザリガニ:ただの直感だ。てめぇはともかく、俺様に救いを求めるのはおかしいだろうが。この鋏が目に入らねぇのか?

北京ダック:助かりたい一心だったのかもしれませんよ。


 北京ダック麻辣ザリガニの凶悪な鋏を見て、溜息をついた。


北京ダック:その鋏を見たら、普通の人間でないことはすぐにわかりますから。

麻辣ザリガニ:……お前だってあいつを怪しいと思ってるんだろう?何を躊躇っている?

北京ダック:……

麻辣ザリガニ:どうした?まだ人間は良い存在だと主張するか?いい加減目を覚ませ、北京ダック

北京ダック:吾は寝てなどおりませんが?

麻辣ザリガニ:じゃあ賭けるか?この人間がいい奴か悪い奴か。

北京ダック:賭ける……?

麻辣ザリガニ:てめぇが勝ったら、俺様は金輪際人間に手を出さない。どうだ?

北京ダック:もし吾が負けたら?

麻辣ザリガニ:今後、俺様が人間をどうしようと、口出しをするな。

北京ダック:……


ストーリー 2-2


 麻辣ザリガニは愉悦な笑みを浮かべ、北京ダックを見た。


麻辣ザリガニ:ハッ!あいつが信じられないか?それとも、やっぱり人間は信じるに値しないと認めるか!?

北京ダック:そなたは、彼が悪人だと確信しているのですか?

麻辣ザリガニ:人間の本性なんてそんなもんだ。説明なんて必要ないだろ。それで、どうなんだ。賭けはするのか?

北京ダック:この賭けの合理性を、もう一度考えたいですね。

麻辣ザリガニ:ふん、勝手にしろ。


 北京ダックはまだ唐突に現れた男のことを測りかねていた。だからここは『待つ』のが得策だと考える。


北京ダック:もしもし!吾たちもナイフラストに行きます。そなたも一緒に行きましょう!彼のことは私が見ています!

住民:えっ?!ほ、本当ですか?ありがとうございます!よかった!これで無事に家族に会えます!

北京ダック:そなたは家族とはぐれたのですか?

住民:いえ、家族はもうナイフラストにいます。私はこれから仲間と共に彼らの元へと行く予定でした……。

北京ダック:今、お仲間はどちらに?途中まで一緒だったのでは?

住民:……

麻辣ザリガニ:ハッ!北京ダック、酷なこと聞くなよ。こいつは見捨てられたのさ。

住民:つぶってないぞ!変な言いがかりつけないでくれ!

麻辣ザリガニ:おや?

住民:お、お願いです!私を貴方たちと一緒に連れていってください!

麻辣ザリガニ:……

北京ダック:どうしました、麻辣ザリガニ。彼を信じる気になりましたか?

麻辣ザリガニ:ふん、俺様の言葉に二言はねぇよ。だが、こいつが俺様を騙してる可能性は一ミリだって減ってねぇ!


───

吾は……そなたの賭けには乗りません。

・<選択肢・上>吾らの諍いに他人を巻き込むのは良くない。 北京ダック+15

・<選択肢・中>この人間を信用できない。 麻辣ザリガニ+5

・<選択肢・下>このような冗談のような賭けをせずとも、遅かれ早かれ吾らの決着はつく。 麻辣ザリガニ+15

───


麻辣ザリガニ:てめぇもこいつが信用できねぇんだろ?だから賭けに乗れないんだな?

北京ダック:人間には良い者、悪い者がいます。その上で私は人間を信じたい。間違いなく、一部の者は善良な人間ですからね。

麻辣ザリガニ:……やっぱり、俺様はてめぇが気に入らねぇ。

北京ダック:お互い様ですよ。

住民:あの……貴方たちはもしかして、私のせいで喧嘩をしているのですか?

麻辣ザリガニ:誰がてめぇのせいで喧嘩してるって!?

北京ダック:そうです。吾らは友人として一緒にいる訳ではありませんから、諍いなど日常茶飯事。ご心配なく。

住民:友人ではない?でも、貴方たちはとても仲良さそうに見えます--はっ!?もしや恋人同士とか……!?

北京ダック:……

麻辣ザリガニ:……

住民:いたたっ!冗談ですよ、本気で怒らないでください!


ストーリー 2-4

梅雨十三日 昼

ナイフラスト辺境


 日が暮れて--北京ダック麻辣ザリガニは、本日新たに同行者となった人間と共に、焚火を囲って座っていた。


住民:あ、あのう……何か話しませんか?無言で見つめ合っているのは、とても怖いです……。

麻辣ザリガニ:ふん、人間なんぞと話すことは何もない。

住民:えーと……

北京ダック:この者のことは気にしないでください。それより、吾はそなたに聞きたいことがあります。

住民:な、なんでしょう?

北京ダック:そなたはわざと堕神を私たちの傍に引き寄せましたね?

住民:……

北京ダック:その反応--やはり、意図的でしたか。できれば理由を知りたいのですね。

住民:も、申し訳ありませんっ。

北京ダック:なぜ謝るのです?

住民:私は、然るお方とここまで来ました。その方は、たくさんいる堕神にひどく怒っていて……

北京ダック:遭遇した堕神を全て倒しましたか?

住民:はい。彼は堕神を貴方がたに差し向けるように言って、そのまま他の堕神を倒しにいきました。

住民:……私ひとりではあんな堕神には対抗できず-ー結果として貴方たちに堕神を差し向けることに……!


 北京ダック麻辣ザリガニに目を向ける。彼は口端をあげて、歪つな笑みを浮かべていた。

 北京ダック麻辣ザリガニから視線を逸らし、冷静になるためにわざとらしく咳払いをした。


───

今回の件は、そなたのせいではありません。

・<選択肢・上>吾も同じ立場なら、同様の選択をしたでしょう。 北京ダック+5

・<選択肢・中>止むを得ない選択は、真実の心を表すものではない。 北京ダック+15

・<選択肢・下>彼は生き延びるための方法を模索したに過ぎない。 麻辣ザリガニ+15

───


住民:けれど、堕神を連れてきたのは間違いなく私です。あの大人のお酒の彼は、幾度となく私を助けてくれました。

北京ダック:大人のお酒……?

住民:あ、そうだ!機会があれば、貴方たち二人に美味しいお酒を奢らせてください!是非お礼をしたいです!

北京ダック:ふむ、そのときはありがたくご馳走になりましょう。

住民:貴方たちは、私の命を救ってくれました。これくらい、当然のことです!

北京ダック:そなたは、どうです?

麻辣ザリガニ:俺様は人間からの施しなんぞ受けねぇ!

住民:えっと……あの……

北京ダック:大丈夫ですよ、彼はただ拗ねているだけですから。

住民:そ、そうですか……良かったです。


ストーリー 2-6

梅雨十四日 朝

ナイフラスト


翌日。三人は朝早くから、ナイフラストを目指して歩いた。

数時間経たないうちに城壁を超え、ナイフラストの町に着く。その瞬間、麻辣ザリガニが長い溜息をついた。


北京ダック:さすがのそなたも疲れましたか。

麻辣ザリガニ:チッ……!普段ならこの程度で疲れることなんぞねぇのに……!てめぇとのせいだ!

北京ダック:それは吾も同じこと。やはりそなたとは相容れません。

麻辣ザリガニ:それと……てめぇはいつまでついてきやがるんだ!?もうナイフラストに着いたぞ!

住民:す、すみません!そ、その、私は最後にもう一度、貴方たちにお礼を申し上げたいのです……!

麻辣ザリガニ:黙れっ!礼なんかいらねぇ!

住民:……

北京ダック:彼のことはお気になさらず。早く家族のところへ行ってください。

住民:ありがとうございます!家族にもあなたたちのことは伝えます!

北京ダック:では、吾たちはこの辺で。そなたも早く家族の元へ。

住民:は、はい……!本当にいろいろとありがとうございました!この先も、お気をつけて!

北京ダック:ご縁があればまたお会いしましょう。

住民:はい。そのときはよろしくお願いします!

麻辣ザリガニ:おい!北京ダック、もう行くぞっ!

北京ダック:わかりましたよ。まったくせっかちな男ですね。では、また。


 北京ダックは軽く会釈をし、優雅な足取りで麻辣ザリガニの後を追いかけた。

 そんな二人の背中を、男は溜息混じりに見ている。すると、その背後からマントに身を包んだ男が現れた。


???:お疲れ様でした。お待ちしておりました。

住民:すみません……!いろいろありましたが、貴方のおかげで、やっと私もここまで辿り着けました……!

???:いえいえ、すべては神のお導き。聖主様と御侍様がずっとあなたを待っていますよ。


 そしてふたりは、談笑をしながら目的地へと向かった。


梅雨十四日 午後

ナイフラストのとある大衆酒場


 北京ダック麻辣ザリガニは『邪教の拠点』と噂されている酒場の入り口で警戒しながら様子を見ていた。


───

(……さて、どうしましょうか)

・<選択肢・上>麻辣ザリガニに先に入ってもらう。 麻辣ザリガニ+15

・<選択肢・中>自らドアを開けて真っ先に入る。 北京ダック+15

・<選択肢・下>じゃんけんで決める。 麻辣ザリガニ+5

───


そのときだった。急にドアが開き、中から破裂音が響いた。

 パチッ--

 その音に驚いた北京ダックの目に、カラフルな紙テープが宙を舞う様子が映った。


ビール:Surprise!


北京ダック√ 宝箱


 北京ダックは唖然とする。そんな彼の前に、笑顔のビールが立っている。彼は、酒がなみなみと注がれたグラスを持っていた。

 ――カチン!

 グラスがぶつかり合う軽快な音に北京ダックは、やっと我に返った。


ビール:Surprise!

北京ダックビール……これはいったい……?

ビール:はっははは!サプライズだと言ったろう?ほら、しかめっ面はやめたまえ! 

北京ダックビール、早く情報を寄越しなさい!『彼ら』を放ってはおけません!

ビール:落ち着き給え、北京ダック。あの手紙は君をここへ呼ぶための招待状さ。ここに『敵』はいないさ!

北京ダック:そなたは何を言っている?ここはいったい--


 ビールは無言で奥にあるテーブルを顎で示す。そこには、焼餅タンフールー魚香肉糸やその他竹煙質屋のメンツが座っており、北京ダックに手を振っている。

 更に舞台の上では、激しいロックに頭を振って、豆花兄弟が音楽を奏でながら歌を歌って盛り上がっている。


北京ダック:……そなたたち--


 ビール北京ダックの手を取り、魚香肉糸たちが盛り上がる席へと導いた。


ビール:笑顔を忘れた君のために、僕たちはパーティーを企画しました。今日は敵のことは忘れ、愉しみましょう!

北京ダック:敵がいるよりはよほどマシですが……完全にやられましたね。見事に騙されましたよ。

ビール:フフ。今日は大切な仲間と笑顔で過ごしてください。君の笑顔は、みんなを笑顔にしますからね!


麻辣ザリガニ√ 宝箱


ビール:Surprise!


 麻辣ザリガニは大きな破裂音に驚き、腕を振り上げた。そして、両手の鋏に巨大な炎を立ち昇らせた。


ビール:Stop!僕は敵じゃない。落ち着いて!

麻辣ザリガニビール!?てめぇ、こそこそ何してやがる!

ビール:はっははは!そんな怒った顔をしていては駄目だ。これからパーティーが始まります。仏頂面はなしですよ!

麻辣ザリガニ:パーティーだと……?


 ビールは舞台の上に注意を向ける。そこには、ロックを歌いながら音楽に酔いしれる豆花兄弟の姿があった。

 その舞台を見て、辣条魚香肉糸や竹煙質屋の面々と一緒に騒いでいる姿が目に入る。


麻辣ザリガニ:豆花兄弟めっ!!俺様を騙したな!

ビール:はっははは!まぁまぁ落ち着いて。彼らは君を思って仕組んだのですよ。

麻辣ザリガニ:……てめぇの話は、あいつらをぶっ飛ばしてから聞いてやる。

ビール:だから、落ち着いて。彼らはいつも仏頂面の君に笑ってほしかっただけですよ。

麻辣ザリガニ:……

ビール甘い豆花焼餅たちから今回の話を聞いて、みんなで話し合って決めたんだ。

麻辣ザリガニ:……なるほど。全員同罪、ってことだな……?

ビール:僕もダックと君の二人旅を提案したよ!きっとふたりなら楽しい旅行になるだろうと思ったからさ!

ビール:とてもGreatな計画だと思わないかい?ダックと君が旅をして、最後は仲間と大騒ぎさ!はっははは!

麻辣ザリガニ:……黙れ。てめぇは重罪だ。この場で直ちに焼き殺す。覚悟しな!

ビール:ま、待て、麻辣ザリガニ!話を……あっ!北京ダック、君までキセルを構えて……!ぼ、僕は話し合いを要求する……!うわぁああああっ!


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