「纏いし赫志燬」スマイリー

紹介所のお姉さん「ふーん、ふ、ふ、ふ、ふーん♪　ふんふん……ふふふん！　ふふん！　ふふふーん♪」

？？？「あああ、あの。しゅみ……すみ、ません。ひ、人を探してるんですけど。」

紹介所のお姉さん「あら、紹介所に登録のある人かしら？　名前をうかがっても……、」

レディブル「あああ、ああああののの、えええっと……。」

紹介所のお姉さん「（……やばいわ）」

主人公＆メルク「レディブルさん！」

レディブル「主人公君！　メルクさん！」

レディブル「ダ、ダメだ。ただでさえ初対面の人との距離感がわからないのに。こ、こんな綺麗な女の人に話しかけるなんて……！」

レディブル「も、燃えてしまいそうだよ！」

主人公「し、しっかりしてください！　というか以前より出やすくなっていませんか！？」

レディブル「受け入れてくれる人の安心感が、緊張感を緩めてしまっている……。」

メルク「確かに私たちは平気なのですが、今はまずいのですよー！」

レディブル「ハハハ……！」

主人公「もうだいぶ出てる！　抑えて！　抑えてくださいレディブルさんー！」

紹介所のお姉さん「え、ええっと……。二人の知り合いなのかしら？」

主人公「は、はい！　ちょっと恥ずかしがり屋さんなだけなんで、気にしないでください！」

紹介所のお姉さん「……なんか燃えてなかった？」

メルク「は、恥ずかしくなると、顔が燃えるように熱くなるというのですよ～。」

紹介所のお姉さん「そ、そう？　比喩レベルじゃなくて、ストレートに燃えてた気がするけど……、」

紹介所のお姉さん「まぁ、二人が庇うなら悪い人ではないんでしょうね。」

主人公＆メルク「ほっ……。」

レディブル「すまない……。……やっぱり、信頼は大切なんだね。」

主人公「それをとても実感しています……。」

紹介所のお姉さん「それで、人探し……だったかしら？」

レディブル「あ。そそ、そうなんです……。す、すみません。要領をえなくて……。」

紹介所のお姉さん「気にしてないわ。それで、名前はわかるかしら。」

レディブル「それが……、」

レディブル「……匂いしか、憶えていないんです。」

紹介所のお姉さん「ちょっと騎士団呼んでくるわね。」

主人公「お姉さん、待ってください！　怪しい意味でじゃないです！」

メルク「これには、とてもピュアなヒストリーがあるのですよ！」

紹介所のお姉さん「え～、でも匂いでしょ～？　そこから本当にピュアが出るのかしら～。」

メルク「論より証拠なのです！　レディブルさん、事情の説明をお願いするのです！」

レディブル「そ、そそそ、その……、」

主人公「俺が説明します！」

[場面転換/アヴィコソ]

主人公語り「当時のレディブルさんは、ある理由で誰とも接さず、一人で生活していたんです。」

主人公語り「大事な実験が失敗して、小さい頃からの夢を永遠に閉ざされてしまった。当時はそう思って絶望していた……そうです。」

主人公語り「住む家もなく、ボロ布一枚を纏って、毎日膝を抱えるだけの日々だった……。」

主人公語り「怒りも、悲しみもない。そんな感情を抱けば、自分はまた返信してしまう。それに怯えてただ無感情に生きていた……。」

主人公語り「……そんな時に、声をかけてくれたのが彼女だった。」

？？？「おにいさん。これ、どうぞ。」

[場面転換/紹介所]

紹介所のお姉さん「コミック？　科学の国の娯楽書籍だったかしら。」

レディブル「……はい。これです。」

紹介所のお姉さん「わあ、読み込んでるわね！」

レディブル「これは……、その時に彼女がくれたコミックなんです。」

レディブル「『懐かしのヒーロー大復刻号』。すでに連載が終了したヒーローを特集した一冊。その中に……ビッグハートもいました。」

レディブル「昔読んだ、かっこいいままの姿で……。」

紹介所のお姉さん「……。」

レディブル「……これを読んで、俺は思い出した。俺はその姿に憧れて、人を救える存在になりたいと思ってたんだと。」

レディブル「そしてその気持ちが、再び燃え上がったのを感じた。」

レディブル「俺がヴィジランテとして活動を始めたのは、その時からだ。」

メルク「今に至る第一歩、なのですね。」

レディブル「……ああ。」

レディブル「失敗したとはいえ、俺に宿ったのは力……。それも、始まりは人を救うために求めた力だ。」

レディブル「なら、せめてそれを人助けのために使うことが、俺が裏切った科学と研究所の仲間や出資者さん。そして名を借りたビッグハートへの……、」

レディブル「贖罪になるかと思ったんだ。」

紹介所のお姉さん「……ところどころわからない部分はあるけど、レディブルさんはその日から目標を持つようになれた。ということなのね。」

レディブル「はい。すべては、あの日に俺に声をかけて、コミックと食事を与えてくれたあの子のおかげです。」

レディブル「その出会いがなければきっと俺は、贖罪どころか、再び歩き出すことすらできませんでした。ましてや今のように……、」

レディブル「失敗を犯した俺でも、やり直し、誰かのヒーローになれると知ることもできなかった。今の俺は、彼女との出会いがあってこそなんです。」

レディブル「だから、お礼を言いたいんです。そして彼女に恩を返すことができればと……。」

紹介所のお姉さん「レディブルさん……。」

紹介所のお姉さん「ごめんなさい！　こんなピュアな話に対して、私ったら、あろうことか捕まえてもらおうなんて……、」

レディブル「あ！？　い、いいい、いえ！　ぜんぶ、俺が言葉足らずだったせいで！　だ、だから、ななな、泣かないで……！」

レディブル「ど、どうすれば！？」

主人公「どどうしましょう！」

メルク「主人公さんも、こういうのは苦手なのですよ……。」

紹介所のお姉さん「事情は大体わかったわ、レディブルさん！　つまり、その女の人を探したいのね！」

レディブル「は、はいっ。以前は人と会うのも避けていましたが、今なら……、」

レディブル「でも、手がかりがその人の匂いしかなくて……。」

メルク「気になっていたのですが、本当に顔は見ていないのです？」

レディブル「当時は髪を伸ばし放題で、視界なんてほとんどなかったから……。」

メルク「伸ばし放題なら仕方ないのですよ……。」

主人公「あ、でも声は聴いていたんですよね？　それも手掛かりに……、」

レディブル「しょ、正直、なんて言っていたかも、うろ覚えなんだ。」

レディブル「コミックを読むまではボーっとしていたし。だから、声もあんまり……、ごめん。」

主人公「い、いや、落ち込まないで大丈夫ですよ！？　当時のレディブルさん、大変でしたもんね！」

メルク「むしろ、手がかりがあるだけ万々歳なのです！　すごいのですよ、レディブルさん！」

レディブル「そ、そうだろうか……。」

レディブル「い、いや、その通りだ！　手がかりが何もないよりははるかにマシ！　当時の俺も決して駄目じゃない……！」

レディブル「ポジティブ！　ポジティブシンキングだっ！　ハハハ！　アーハハハハハァ！」

メルク「意気込みはいいのですが、その笑いはまずいのです！」

主人公「お姉さんも急だと驚きますから！」

レディブル「はっ！　そ、そうだった……。」

主人公「え、ええっと、こういうわけなんですけど……。」

紹介所のお姉さん「どういうわけかはわからないけど、とりあえず、わかったと言っておくわ。」

レディブル「それじゃあ、匂いについて教えて！　それだけで特定するのは正直難しいけど……、やれるだけのことはやってみるわ！」

レディブル「あ、ありがとうございます……！」

レディブル「彼女から漂ってきたのは、爽やかで甘酸っぱい……そう。」

レディブル「柑橘系の、香りでした。」

[場面転換/アヴィコソ]

ティマ「ほあっくちょーい！」

ティマ「……？」