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【白猫】亡國のツバサ Story3

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最終更新者:にゃん

2018/05/31



目次


Story11 完全起動

Story12 決意

Story13ブラザーフッド

Story14 手がかり

最終話 アレス三兄弟




ディラン

ヴィシャス

ノエル

マグリン



TOP↑

story11 完全起動



<――操縦室――>


おい! 何が起こってる!?

わ、わかんない! いきなりゆれはじめて……

『フォーーーーーーン!』

……ねえ、これって、すごくヤバいんじゃないの?

すまん。俺のせいだ。

ヴィシャス!

マグリンにそそのかされ、起動の呪文を教えてしまった。何かしたとしたら、ヤツだ。

なにやってんだよバカ兄!

マジごめん。

ホント、ちょろい次男坊よね。

マグリン……!

魔幻獣は、まもなく完全に起動(・・・・・)するわ。

……どういうことだ。

うふふ……その熱烈な瞳。お姉さん、興奮しちゃう。

ふざけるな!

……何を、したんですか……!

この魔幻獣……アレス流にいえば、フレスベルグね。

起動には二段階あるって、知らなかったでしょ。

何……?

第一段階。外からの起動。心臓を動かし、血液を送る。ようは動くようになるってことよ。

坊やのいうとおり、この鳥ちゃんは輸送用としても使われていたんでしょうね。

だからこそ、中にこんな立派な空間を作った。

…………

でもそれじゃ、魔幻獣の意味はないわ。

そこで第二段階。中からの起動。脳を覚醒させる。つまり、自分で考えて動くようになるの。

この子に武器がないのも当然よ。現に、今までは無かったんだから。

<闇>のソウルは、まさかそのために……?

フレスベルグ自身が、兵器を作り出すってこと……!?

効率的で合理的な運用方法よね。人員と物資を輸送し、その後は兵器化する……

お前の目的は何だ。言え!

これ以上話してる時間はなさそうよ?

『フォーーーーーーン!』

<魔幻獣が、動き出す――!>

ぎにゃー!

……ヴィシャス。戦闘準備。

了解。

…………!

お前たち。一緒に戦ってくれるか?

そのために来たんです!

で、どうする!?

中からぶっ壊してみるってのはどうだ?

あなた、魔幻獣と心中したいの?

お前にはもう騙されない。

……私も、中から破壊するのは危険だと思います。

だとしたら道は一つだ。コイツを外から叩き落とす。

そと……背中ね!わかったわ、やってやろうじゃないの!

……アイリス!アタシが落ちないようにしっかり抱いててね!

私はここにいるわ。戦うのは苦手なの。

ディラン、先に行っててくれ。……ノエルと話したい。

……わかった。



ヴィシャス兄?

あいつは弁解しないだろうから、代わりに俺が言う。

ディランが自分のことを話さなかったのは、その必要がないと思っていたからだ。

どうしてだかわかるか?

……ううん。

本当の家族になりたかったからだ。

お前が生まれた時の、あいつのはしゃぎよう。今でもはっきりと覚えている。

愛されていない? バカを言うな。

アニキは、血がつなかってないからこそ、本当の兄弟になろうとしたんだ。

どこの誰よりも、本物のアニキになろうとしたんだ。

…………!

あいつのやり方は、確かに間違っていたかもしれない。

だが、お前を想う気持ちが違ったことは一度もない。それをよく覚えておけ。

…………


「兄ちゃんな。お前たちには、幸せになってほしいって思ってんだ。」


幸せに……か。



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story12 決意


『フォーーーーーーン!』


<傷ついた魔幻獣が落下する――!>


ぎにゃーーー! 落ちるーーー!

いいぞ、効いてる……!

……おい、あれを見ろ。

!<島が見える――>

もしかして、あの島に落ちるつもり?

お前たち、しっかりつかまってろよ!

あっ! マグリンはどうする!?

あいつなら一人でも何とかなる。

お……落ちるーーーーー!



みんな、大丈夫か!?

次男坊問題なし。

僕も平気だよ。

しぬかと思ったわ!

セットした髪が台無し……

……ほらな。


『フオォォォォォォォン!』


……やっぱ、あれで終わりなわけないよな。

かなり怒ってるぞ。……いいか、ここからが本番だ。

……いけるか? ノエル。

……うん。僕も、心を決めたよ。

ノエル……


みんなで一緒に、あの魔幻獣を倒そう。

僕たちの大事なものを――守ろう。


よくいった!

みんなの力をあわせれば、きっと倒せるわ!


前衛は任せろ。アレス騎士団団長の力を、今こそ見せてやる。

<王の眼>ヴィシャス・アレス。参る……

『フォォォォォォォォン!』



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story13ブラザーフッド



『フォーーーーーーン!』


これでトドメだ。

行くぜ、ノエル!

……うん!











『フオオオオオオオオン!』


<破壊したはずの魔幻獣が――おびただしいソウルを発する――>


なっ……!

なに、これ……

あら、大変。

貴様……

黒の王国は、この魔幻獣をよっぽど調べられたくなかったみたいね。

……ま、まさか……

――自爆か!


<魔幻獣のソウルが、みるみる膨れ上がってゆく。>


どうする? 逃げ場はなさそうよ?

アニキ……

……マグリン。あいつ、まだ動かせると思うか?

え……?

やってみないとわからないけど……多分、できると思うわ。

……ノエル。さっきは、ああいったが……

俺、やっぱり、お前の兄ちゃんでいたいな。

な、なにを……

わがままで、すまねえ。兄として、最後にこれぐらいしかしてやれねえが……

なにをいってんだよ……!

…………

アレスを、頼んだぞ。そして……

幸せになってくれ。


<――>


ディラン!!

止めちゃダメよ。みんなが助かる道は、これしかないわ。

で、でも……!

あの子の決意をムダにするつもり?

……ヴィシャス兄。

わかってる。

…………

ああ、もう!



 ***



よしっ……! 操縦できるぞ! よかった……

『フォォォォォォォォン!』

あっ……! 暴れるな! 飛べ、飛べ……

飛べえぇぇぇぇーーー!


<魔幻獣は、もがきながら、少しずつ、空をのぼっていく――>


元気でな、二人とも。



「うわあぁぁぁぁぁぁぁっ!」

<背中にあいた穴からヴィシャスとノエルが飛び込んで飛び込んできた!


いったあーーーー!

素で鼻血が出てしまった。

……ウ、ウソだろ……?

お前たち、なんでついてきてんだ!

僕だって、わがままな時はあるの!……わかるだろっ!?

ずっと、アニキの背中を見てきたんだから!

お、お前……

……そばに、いてくれるんでしょ? なら、最後まで一緒だよ。

――ディラン兄。

!!

ふ……


『フォーーーーーーン……』


……俺、幸せすぎて、もう死んでもいい。

うむ。まさにそろそろだ。


え?

え?


いや、例えだよ例え。死なないんだろ? 俺たち。

アレッ! そうなのか?

アレッ!? いやお前ら、何か秘策があるから来てくれたんじゃないのか!

……はぁぁぁ!?

違うのかよ!!

最後は手と手を繋いで……とか、そんなノリで。

俺にめばえた希望、どうしてくれんだ!!

…………

探してえぇぇぇぇっ! 何か、何かあるはずだっ!

どこかの国には、<パラシュート>なる脱出装置があると聞いた。

よしそれだ!

あるわけないだろ! 古代兵器なんだから!

――

なんで蹴るんだよ!

蹴れば大体直せる!

直しちゃダメだろバカ兄!

かくなる上は、イチかバチか、飛び降りるしか――


はあ、はあ、はあ……

え……

まったく、世話の焼ける男たちね!

ほら、脱出するわよ!

ガ……ガルーダ!?

4人ならギリ乗れるわ! 時間がない! 早く!

……よし!乗れ、お前たちっ!

やっぱりいい女だ!

<※+●■!▲%?‥………>



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story14 手がかり



ホントに!!もう!!

ダメかと思ったわよ~~~!

よかった……! 本当に、よかったです!


マグリン。助けてくれて礼を言う。

私らしくもないことしちゃったわ。

さて……

……お前の本当の狙いを、今度こそ教えてもらおうか。

いいわ。


私はマフィアのお金を奪ってもないし、賞金首でもない。ましてやバウンティハンターでもない。

私の本当の目的は、空の魔幻獣の破壊よ。

!!

アタシたちと同じだったの……?

あなたたちは見事、私の目的を果たしてくれた。素晴らしい働きよ。

……よく、わからないな。どうして壊したかったの?

理由が必要? どのみち魔幻獣は破壊しなきゃいけないわけだから、何も問題はないでしょ。

……ねえ、お嬢さん?

あ、はい。そう、ですね……

……アイリス?

魔幻獣を完全に起動させた理由は何だ?

気まぐれ。

……どうして、僕たちを助けたの?

それも気まぐれ。

…………

……ま、情報を教えるって約束を守っただけよ。

さんざん騙しておいて何を言っている。

だが、そういうの、俺は嫌いではない!

アレス王国を滅ぼした人物が何者なのか――

そこまでは、私もわからないわ。ただ、見つけ出す糸口はある。

ある国が、秘密裏に魔獣を培養、量産する研究をしていたって話を聞いたの。

ある国って?

ハルモニア王国。

ハルモニア、だと……?

大昔に、アレスとの間で色々あったそうじゃない? 怪しいわよね~。

アニキ。……この話が真実なら、面倒なことになるぞ。

ああ、それと。こーんなウワサも耳にしたの。

現ハルモニア王の子どもが、今はアレスの王族として生きているんですって。

……自分の出生の秘密、あなたはご存じかしらね? ――ディランお兄さん?

……ウソだ。俺は信じないぞ。

あ、あくまでウワサだろ……?

まあね。でも、調べてみる価値はあると思うわよ。

私が教えられるのは、ここまで。仇討ち、せいぜい頑張りなさい。

……最後に、もう一度だけ聞く。お前は何者だ?

ミステリアスビューティー。

じゃあね♪


イイ……

お前、いつか女に泣かされるぞ。

すでに泣かされている。

…………


出生のこと……ディラン兄も、知らなかったの?

親父は教えてくれなかったし、俺も気にしないことにしてた。

……真実がどうであれ、これからも気にしないでいいと思うよ。

ディラン兄は……ディラン兄なんだから。

……ありがとう、ノエル。



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最終話 アレス三兄弟


……それと、僕、謝らなきゃ。ひどいこと言っちゃったから。

本当に……ごめんなさい。

謝らなくちゃいけないのは俺だ。……今まで、すまなかったな。

うん……

……それと。お前は一つ、思い違いをしている。

アレスの後継者はお前だよ、ノエル。

……え?

俺が騎士団長になった時……親父は、俺とヴィシャスに頼み事をしたんだ。

『ノエルは賢く、何より優しい。あの子には、素質がある。――王の素質が』

…………!

『あの子が王の座に就いたその時には、どうか二人で、弟を支えていって欲しい』

今となっては、遺言になっちまったが……

……父さん……

アレスはまだ、終わっちゃいねえ。俺たちが、生きている限り。

国が再び息を吹き返した時……お前は、アレスの王となるんだ。

やれるか?

……うん。頑張るよ。僕、いっぱい、頑張るよ。

誰よりも、優しい王になってみせるよ……!

よくいった。

これにて仲直りだな! よし、ハグだ、ハグをしろ!

ノエルー!

ちょ、ちょっと……恥ずかしいよ……

おーよしよし。おーよしよし。

……ねえディラン兄。やっぱり許さないっていったら、どうする?

えっ!? そ、それは困る……

プレゼントとか買ってくれたら、許してあげる……かもね?

そうなのか! よし、買ってやる! いくらでも買ってやるぞ!

ディラン、あんまり甘やかすな。

(得しちゃった~)

…………

(女を泣かす素質もあるかな)


仲直りはいいけど。これからどうするの? 犯人さがしは続けるんだろうけども……

住むところは無くなっちまったが、まあ、なんとかなるさ。

よかったら、飛行島にくる? アタシたちの家よ。

飛行島?

よくわからんが、居候させてくれるということか?

アンタたちがよければね。ねえ、アイリス。

…………え? そ、そうね。いいと思うわ。

おお、それは助かる!

猫ちゃんと一緒に住むの!? やったー!



<…………>

二人とも、さっきからどうしたの? やけに大人しいけど……

……これでいいのかな?

<アイリス――>

いいのよね?私たちは、正しいことを、してるのよね?

<そう、信じてる。けれど――>



<主人公たちから離れた場所で――

マグリンは、取り出した何かを、天にかざした。>


<◆※…◆!●=>(テネブラー テネブラス インヲカト)

そーれっ。

ごちそうさまでした♪



胸騒ぎがする。……そうでしょう?

<どうしてなのだろう――>






亡國のツバサ -END-


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