知雲 ひばり
Illustrator:富士やま
名前 | 知雲 ひばり(ちうん ひばり) |
---|---|
年齢 | 12歳 |
職業 | 江戸時代のアイドル |
- 2020年9月17日追加
- CRYSTAL ep.VIマップ1クリアで入手。<終了済>
- 入手方法:2021/9/2~10/6開催の「「ハイスクールセカンドシンドローム」ガチャ」<終了済>
- 対応楽曲は「ちゅんちゅちゅチューン」。
知雲 ひばり【 通常 / 湯上りライブ】
江戸時代に活躍していたというアイドル。
※CRYSTAL ep.VIのSTORYの元ネタは、ここで掲載できないもしくは掲載難易度15のものが多数なので、気になったら各自で調べてください。愛(ピュア)と音ゲーとは
江戸アイドル【 知雲 ひばり / 伊賀崎ノ楠子 / 天稲荷 コテツ】
甘ったるい声とサディスティックな眼差しで妖しくファンを「わからせる」。
- CRYSTAL ep.VI各EPISODEタイトル
アダ○ト美少女ゲームの名称が元ネタになっている。それ以上はいけない。
- (中略)その姿はさながらチェインメイルに身を包んだ騎士……。
主にアイドルの現場にたまに出没する推しのグッズで重装備をしたオタクのこと。ラブライブのものが知られ、厄介オタクの代名詞とされることが多い。
- いわゆる全オタク界のTO集団でござるwwwおっとwww拙者『TO』などと、つい専門用語がwww
TOはトップオタク、つまりそのアイドルのオタクの中で権威のあるオタクのこと。
専門用語がの下りの元ネタは「オウフwwwいわゆるストレートな質問キタコレですねwww」から始まる涼宮ハルヒオタクのコピペから。
- ハッ!? これはもしや、肉の芽の仕業ンゴ!?
肉の芽はジョジョの奇妙な冒険の第3部、スターダストクルセイダースに登場する寄生生物でDIOの体の細胞から生み出された物。
これを植え付けられた人間はDIOの命令に逆らえなくなり、物理的に引きはがそうとすれば剥がそうとした人間の脳に移ろうとする上に、吸血鬼の体の一部なので波紋で殺せるがそうすると寄生されている人の脳にまで波紋が到達したり溶けた体が脳に直撃するなど除去するにも一苦労する代物。
DIOはこれを使って花京院やポルナレフを洗脳して手先にしていた。
- 伝わると思っていたネタが通じなかった時……それはオタクが一番ダメージを受ける瞬間でもある。
止めてくれ、その術はオレに効く
- 耳によく残る求人の曲を流す、あのトラック、 『オータク、オタク、オータク、廃人! オータク、オタク、限界勢!』
主に都心部でよく見かけるバで始まるあの女性向け求人サイトの宣伝トラック。余談だが、あのCMソングはリミックスコンテストが公式で行われており、Laur氏やETIA.氏が入賞している。
- なろう運転だッ!! どかないと異世界転生させちゃうぞっ!
小説投稿サイト「小説家になろう」のいわゆる「異世界転生もの」ではトラック事故で死んだ主人公が異世界に飛ばされるという描写が半ばお決まりになっており、とある統計ではトラック事故が通常の自動車事故と区別されて分類されるぐらいには多い。
物によっては主人公を選んだ超常的な存在が異世界に連れてくるためにトラックを送り込んでくる作品すら存在している。
- まだハイクは読みたくないデース!
Twitterで連載されている小説「ニンジャスレイヤー」より。
主人公・ニンジャスレイヤーの決めゼリフに「ハイクを詠め」というものがある。この場合のハイクとは一般的な俳句ではなく「辞世の句」を指す。なお、実際の意味合いとしては「念仏でも唱えてろ」とほぼ同義であるためか、ハイクを詠む者はそんなに多くない。一応現実の俳句同様に五・七・五のテンポは守られているが、季語という概念は存在しない。けど字余りという概念はある
- 不注意からか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。 次はジダンのジョウケンを提示してくるはずデス!
男性向けビデオ作品のあらすじに登場する一文。一時期プロモーションツイートなどのリプ欄に改変したコピペを吊るすことがブームになっていた。
- ジャパンの古い動画で見たデス!
上述の男性向けビデオは2000年ごろに発売されたものなので、ストーリー掲載時点で20年前と古い作品となる。
- とっくにお姉さんのライフは0よ!
ずっと俺のターン!のアレ。詳細はなるがちゃんなぎにいよいよえれー目にあわされる話を参照されたし。
- わからせる
相手に力の差などを理解させ、負かし、身の程をわきまえさせること(pixiv百科事典より引用)。
ただし、本来の用途ではわからされるのはひばりの方。
- 許してください! 何でもしますから!
ん?
スキル
RANK | スキル |
---|---|
1 | 判定掌握・零式 |
5 | |
10 | |
15 |
スキルinclude:判定掌握・零式
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | Ep.1 | Ep.2 | Ep.3 | スキル | |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
Ep.4 | Ep.5 | Ep.6 | Ep.7 | スキル | |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
Ep.8 | Ep.9 | Ep.10 | Ep.11 | スキル | |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
前回の活動記録!
ハイ! みなさんオハコンバンチハ~!
天っ才美少女冒険家イングリットちゃんデ~ス!
グランパから貰い受けたクリスタルスカルの謎を解き明かすため、はるばるジャパンにやって来たデ~ス。
クリスタルスカルの導きのまま、ジャパンを奔走するワタシは、ある日鬼蝮ユリアに出会ったデス!
ユリアにクリスタルスカルが反応していることに気がついたワタシは、スカルを持たせるためにあらゆる手段を使って接近を試みたデス!
そうしたらユリアはワタシを快く受け入れてくれて、無事にクリスタルスカルを手渡すことに成功したデスよ!
ででぇーーーん! しかぁしその時!
クリスタルスカルが割れ、黒い手のようなものがユリアを襲ったデス!
何もできずにいたワタシをユリアは助けてくれて、気づいた時にはわた……わた……?
とにかく! 知らない街に居たデス!
しかも! 空には大きな島のようなものが!
魔大陸は本当にあったんデス……!
これはえらいことデスよ……!
そして、興奮さめやらないワタシの前に、新井桃子とユリアの妹である鬼蝮アイリ。
2人のアイドルが姿を現したデス。
魔大陸に捕らわれてしまったユリアを助けるために、ワタシたちはアイリの不思議な力で魔大陸へと乗り込むことになったデス!
浮かび上がったアキバの謎を解き明かし、ユリアを助けだす大冒険が、今始まる!
お楽しみは、これからデ~ス!
紆余曲折あり関東上空に浮上したアキバ。
魔大陸とも呼ばれるその端っこに、鬼蝮アイリ、新井桃子、イングリット・オーリック・コーネルの3人は、アイリの不思議な力により、無事着陸に成功していた。
「うわぁ……ホントに浮いてるンゴ……ヒエッ……」
「本当にこれちゃった……」
「ここが魔大陸……ワクワクするデス! 必ず謎を解き明かして、ユリアたちを助けるデスよ!」
半ば放心状態のアイリと桃子をよそに、イングリットは1人未知なる大地に向けカメラを回す。
目の前に広がるはアキバと呼ばれていた街並み。
それは今でも変わらないのだが、目に映るものすべてが、アニメやゲームといった作品のポスターで埋め尽くされていた。
「Oh……目がカチカチするデ~ス……」
「これはっ……永遠の闇に葬られし禁忌の貼札……!」
「えっと……なんて? でもこれ……プレミアものから最新のものまで……カルメリっちゃえば億万長者も夢じゃないんじゃ……?」
現在のアキバでよく見かけるポスターはもちろん、過去のレアものや、これから出るであろう新作のものまである。
膨大な情報量に、3人はただ圧倒されていた。
どうやら街中がそうなっているようで、初めは興奮気味だったものの、徐々に異常さを実感していく。
「それにしても、端っこがこんなってことは、中心部はもっと酷いことになってるんじゃ……?」
ちょうど駅前の方へと走っていくオタクが見えて、3人はその後を追う。
ボソリと呟いた桃子の不安はある意味的中していた。
「なんじゃこりゃぁあ!?」
街の中心部――秋葉原駅前。
駅前のシンボルとしても有名なUGXの巨大モニターには、桃子ですら見たことがない3人組のアイドルが映し出されていた。
街を包むBGMもやや古風な印象を受け、オタクの最先端を行く普段のアキバからは、少々違和感を覚えるものである。
だが、それだけではなかった。
というよりも……、問題はそこではなかった。
秋葉原駅前広場。巨大モニターの前に集まっているオタクたちに、アイリたちは度肝を抜かれることとなる。
オタクたちは、3人のアイドルのデフォルメイラストが描かれた法被に身を包み、頭には彼女らを象徴する黄色、水色、赤色のいずれかのはちまきを巻いていた。
両手には、頭に巻いたはちまきと同色の光る棒が握られている。
信じられないことに、その中には全身を缶バッジで埋め尽くし、まるで堅牢な鎧が如く着込んでいるツワモノまでいた。その姿はさながらチェインメイルに身を包んだ騎士……。
そしてそのオタクたちは、皆一様にモニターに向かい、両手の光る棒を用いた舞踊――オタクダンスを披露しているのだった。
「……な、なんデ~ス、これは……?」
「うーん、この……さすがの桃子さんも草は生やせないっすわ……」
「お、お姉ちゃん、本当に大丈夫かな……?」
三者三様、目の前に広がる光景になんとも言えない表情を浮かべる。
これはいったいなんなのだろうかと。
その答えを得るためにはあの異様な光景へと向かわねばならないのだが、誰一人として、足を前に進めようとはしなかった。
かと思いきや、意を決したようにイングリットがその中へと飛び込んでいく。
「ちょ!? 何やってんの!」
「未知がワタシを呼んでるデ~ス!」
どうやら好奇心が勝ったらしく、桃子の静止も聞かずにひとつの集団へと駆け寄った。
桃子とアイリも、仕方なくその後に続く。
「ハイ! YOUは何しにアキハバラへ? というか、これはなんデス?」
「おっととwwwまたもや新参者でござるな?wwwドプフォwwwいや、失敬失敬www拙者もまた新参故、同士が増えて喜びがコポォwww」
「ござる!? 拙者!? もしや……ジャパニーズサムライ!?」
「えっと……違うよ? ただのオタクだよ?」
桃子のツッコミに、オタクたちは
「フォカヌポゥwww」と吹き出した。
オタク1「ただのオタクではござらんよwww」
オタク2「拙者たちは救世主によって選ばれたオタクwww」
オタク3「世界をパリピから解放するための聖戦に参加が許された、いわゆる全オタク界のTO集団でござるwwwおっとwww拙者『TO』などと、つい専門用語がwww」
「てぃーおー?」
オタクの言葉は難しいのだろう。1ミリも理解できていない様子のイングリットは小首を傾げる。
その時、広場全体がこれまで以上の歓声に包まれた。
耳をつんざくオタクの歓声に、3人は思わず耳を塞ぐ。
あまりの声量に、地面――いや、浮遊島と化したアキバが揺れているような錯覚さえする。
何が起こったのかと周囲を見回すアイリ。
たった今会話をしていたオタクを含め、オタクたちはUGXのモニターに熱い視線を送っているようだった。
同じようにモニターへと視線を移すと、アイリは表情を引きつらせながら指をさす。
「あの、2人とも……あれ……」
アイリの声は周囲の歓声でかき消されてしまっていたが、桃子とイングリットは指さされた方へと顔を向けた。
モニターを見た桃子はアイリと同じように顔を引きつらせ、逆にイングリットは、何が起こるのかと瞳を輝かせている。
2人を引かせたそのモニターには、軽快だが古風な音楽が流れ、逆光を浴びながら仁王立ちをしている3人のアイドルの姿が映し出されていた。
「星空に舞う夜雀お姫様! 知雲ひばりチュン!」
まず明かりがついて姿があらわになったのは、雀を思わせる衣装を身に纏う少女。
甘ったるく可愛さ溢れる声に、気怠げそうで人を小馬鹿にしているような眼差し。
周りの黄色の法被を着ているオタクたちが、踏みつけてくれだの、わからせてくれだの叫んでいる。
彼女のファンはきっとそういう人種なのだろう。桃子は心の中で、そっと距離を置いた。
「ドルオタ忍法食らうにゃん! 伊賀崎ノ楠子(いがさきのなんこ)にゃ~ん!」
続いて現れたのは、ネコミミに露出過多の衣装を着ている少女。
見ただけでわかるオタクに媚びたようなその出で立ちと猫なで声は、青色の法被を着たオタクたちを盛り上がらせた。
「コンコン、ヨシワラトップアイドル! 天稲荷(あまいなり)コテツじゃ!」
最後にセンターを務める、キツネの耳に巫女装束の少女。
清楚な雰囲気を醸し出しつつ、キツく釣り上がり睨んでいるような視線。
そして高圧的な口調を受けて、赤い法被を着たオタクたちが地にひれ伏し拝み始めていた。
「我らは過去、パリピとの抗争に敗れ、志半ばでこの世を去った……。しかし、なんの因果か、我らは再びこの世に舞い戻ってきた!」
「今こそ、我らオタクがパリピよりも優れていることを証明し、救われる時にゃーん!」
「オタクどもよ立て! 羨ましさを怒りに変えて、立てよ! オタクどもよ! 我らオタクこそ選ばれた民であることを忘れるな! チュンチューーン!」
「イエス!! ユアマジェスティ!!」
コテツたち3人の演説に、広場のオタクたちが雄叫びを上げる。
「オタクの熱量、地をも震わす……すごいデス!」
「ぐうかわ……いや、関心してる場合じゃ……」
「あっ、お姉ちゃん!?」
「どこ!? どこデス!?」
オタクたちの熱気に圧されていると、アイリが突如大きな声を上げる。
コテツたち3人が映るモニターの隅。
そこには、アイリの姉である鬼蝮ユリアの姿が小さく映っていた。
ユリアだけではない。
彼女と一緒に居たアイドル、津久井シズノと観音寺にこる。さらにはなぜか葉和とれびと八咫烏鋼太郎の姿まであった。
5人は気を失っているのか、微動だにしない。
いや、唯一1人だけ、痙攣しているかのようにビクンビクンと身体を震わせているため、4人はと言った方が正しいのかもしれない。
「ユリアたち、助けないとデース。でも、いったいどこに……」
「お姉ちゃ……オホン。我が姉君はおそらく、あの禍々しき闇の建造物に居るはず……」
「えっと……UGXね。可能性としてはありえるンゴねぇ……」
アイリが指さしたのは、巨大モニターのある建物――UGX。
他に向かう宛てもないのだ。少しでも可能性があるのなら、向かうしかない。
「それにしてもこのオタクども、熱狂具合がなんだか操られているような……ハッ!? これはもしや、肉の芽の仕業ンゴ!?」
「肉の……」
「芽……? お肉がなるデス?」
「なん……だと……?」
アイリとイングリットの反応に、桃子は思わず足を止めて目を見開いた。
伝わると思っていたネタが通じなかった時……それはオタクが一番ダメージを受ける瞬間でもある。
もっとも、2人は桃子と年齢が少し離れているため、仕方ない部分もあるのだが。
1人のオタクの心に決して浅くはない傷を刻みながら、3人はオタクをかき分けて、モニターの最前……ではなく、UGXの内部へと向かうのだった。
どうにかUGXへと近づくことができた3人。
しかし、内部へ入るための扉は、完全武装(痛法被+はちまき+光る棒)したオタクによって守られているようだった。
「むむむ……なかなか手強いデ~ス……」
「あのような雑兵、我が力の前に跪かせてくれる」
「まぁまぁ、そのよくわかんない力はいざという時のために取っておいた方がいいって」
オーディンステッキを振るおうとするアイリを、桃子は手のひらをひらひらとさせながら諭す。
「では、我が眷属桃子よ。何か妙案でもあるのか?」
「あれ、私いつの間に眷属に? 可愛い女の子の眷属になるのに断る理由はないけど……まぁ、それは置いといて、どうすっかねぇ」
アイリのよくわからない魔法の力。それは一応本物なのだろう。3人が空に浮かぶアキバに上陸できているのがその証拠である。
だが、その力が無尽蔵に使えると考えるのは危険だ。きっと使用回数を超えるか、アイリの精神力の数値がゼロになれば使えなくなってしまう。
そのため、桃子はアイリの力の行使を止めたのだが、かといって他に打開策は思いついてはいなかった。
「ん? あれは……」
そんな中、桃子は路上に停まっていた1台の派手な装飾が施されているトラックを発見した。
耳によく残る求人の曲を流す、あのトラックである。
桃子は2人を連れてトラックに近づく。幸いにもキーは入ったままで運転できそうだ。
「バニ……アイスのトラックデス?」
「なんと面妖な。我が眷属桃子、説明せよ」
「2人はそのまま純粋無垢でいてね……」
知らなくても生きていけることもあれば、知るには早すぎることだってあるのだ。
清らかな少女でいて欲しいと遠い目をする桃子に、中学生2人は首を傾げる。
「ここはきっと治外法権……これで強行突破するンゴ!」
「すごいデス! モモコ、運転できるデスか!」
「モチのロンよ! ペーパーだけど」
その言葉の意味を、アイリとイングリットは十分に理解することはできなかったかもしれない。
だが、これはヤバいと本能が危機を察知していた。
「っしゃいくぞおらー! つっこむぞ、つかまれッ! なろう運転だッ!! どかないと異世界転生させちゃうぞっ!」
「ギャーッ! まだハイクは読みたくないデース!」
踏み込むアクセル。
ギュインとタイヤがシャウトし、トラックは猛スピードで走り出す。
『オータク、オタク、オータク、廃人! オータク、オタク、限界勢!』
「うわっ、歌まで変わってる!?」
ついでと言わんばかりに流れ出した曲は、メロディこそ同じだが、桃子の耳には聞き慣れない歌詞だった。
「あれ、この曲どこかで?」
「アイリちゃん! お願いだから綺麗なままでいて!」
「モモコ! 前! 前デ~ス!?」
「あぇ?」
一瞬の余所見が命取り。
UGXの入口へと正面から突っ込もうとしていたトラック。しかしその直前、不注意からか、不幸にも黒塗りの高級車に追突してしまう。
「こっ、これは……やべえよやべえよ……デース……」
3人に怪我がなかったのは幸いだった。
だが、イングリットが何かに慄いていると、ボコボコに凹んだ黒塗りの高級車から、スーツを着たガラの悪そうなオタクが出てきた。
オタクだとわかるのは、身に纏うそのスーツが、天稲荷コテツのイラストが描かれている痛スーツだったからである。
「やっぱり! ジャパンの古い動画で見たデス! 次はジダンのジョウケンを提示してくるはずデス!」
「あぁもう滅茶苦茶だよ……まさか金髪美少女にまで魔の手が伸びていたなんて……仕方ない」
「む、我が眷属桃子よ。どこへ行く」
「お望み通り、ジダンしてやんよォ!」
2人にサムズアップしてトラックから降りた桃子は、ズカズカとスーツのオタクへと近づいていく。
そして、オタクが何か言葉を発したその瞬間――
「ドラァッ!」
鳩尾に強烈なヘッドバッドを食らわせ、オタクを一撃で沈めていた。
「あ、あわわ……」
「Oh……これは一発レッドカードデース……」
突然の強行に出た桃子を眺め、アイリとイングリットは互いに身を寄せ震わせる。
「そっか、最初からこうすれば良かったンゴねぇ」
何はともあれ、ひとつの危機を脱した3人。
勢いそのままに入口を警備するオタクも桃子の頭で倒し、見事潜入を果たすのだった。
UGXの建物内部にも当然ながら警備オタクは居た。
だが、立ちはだかるオタクはすべて、桃子の強烈な頭突きによって地に伏せることとなった。
「おかしい、私はこんな武闘派ではなかったはずなのに……自宅警備の経験が活きたか……?」
数々のオタクの屍を乗り越え、3人はついにUGXの総合管理事務所へとたどり着く。
そこで待ち構えていたのは、浮遊したアキバを支配しているアイドル3人組であった。
「待っておったぞ」
「あ、アナタたちは……どなたデ~ス……?」
決め顔で構えていた3人組は、イングリットの言葉にズッコケる。
ジェネレーションギャップを感じさせるリアクションに、桃子は1人遠い目をしていた。
「さ、さっき放送で名乗ったばかりにゃーん!?」
「いいではないですか、楠子お姉さま。今一度名乗りを上げるチュン!」
「そういうことじゃ、楠子。二度と我らの名を忘れぬよう、脳髄にまで刻み込ませるのじゃ!」
パチンと指を鳴らすコテツ。
その瞬間、部屋の明かりが消えると、先程外のモニターで見たように、バックライトが3人を照らす。
そして、少し古風な甲高い曲が流れると、順番に明かりがついていき、それぞれが見栄を切る。
「星空に舞う夜雀お姫様! 知雲ひばりチュン!」
「ドルオタ忍法食らうにゃん! 伊賀崎ノ楠子にゃ~ん!」
「コンコン、ヨシワラトップアイドル! 天稲荷コテツじゃ!」
「おぉ~!」
それぞれがポーズを決め、イングリットは目を輝かせ興奮したような面持ちで拍手を贈った。
「えっと……拍手してる場合じゃないからね?」
「おっと、そうデス! 目的はなんなのデス!」
「我らは現代より遥か昔――そう、江戸と呼ばれた時代に名を馳せたアイドルじゃ!」
「ΩΩΩ<な、なんだってー!?」
コテツの言葉に、驚愕を露わにする3人。
これまでの時代錯誤に感じていた演出はそれが原因だったのかと、桃子はようやく合点がいった。
「なんの因果か現世に蘇っての。これはきっと、神の啓示! あの時の無念を晴らすのじゃと!」
「どうにもわからないけど、いったい何をするつもり?」
「パリピから迫害され、細々と生きるしかなかったオタクを救済する! それが我らの悲願! 全人類を巨大サイコ兵器『オタク・ハイロウ』によって洗脳し、オタクにするのじゃ!!」
3人の脳裏に、建物の外に居たオタクたちが浮かぶ。
桃子は半分冗談で「肉の芽による洗脳」なんてことを言ったのだが、あながち間違いではなかったようだ。
「オタクが生きやすい、オタクのためだけの世界を作る。おぬしらにとっても、悪い話ではないじゃろ?」
「わたしたちは、敵対関係ではないはずですわ」
「つまり拙者たちに協力するにゃん!」
オタクの生きやすい世界。
それは3人の耳にも心地よい言葉だった。
昔ほどではないにしろ、未だオタクは肩身が狭い思いをしている。
アイリの姉であるユリアも、東京全土をアキバ化し、少しでもオタクが受け入れられるようにと活動しているのだから。
しかし……
「強制的なオタク化はさすがになぁ……」
「デース……」
桃子とイングリットは難色を示し、アイリはオーディンステッキをコテツたちに向ける。
「貴様らの企みに興味はない。親愛なる我が姉君、返してもらうぞ」
「協力はせぬか……よかろう。しかし、ユリアたちは『オタク・ハイロウ』の動力そのもの。返すわけにはいかぬ」
「そして、おぬしらも返さないにゃん!」
楠子が合図を出したその刹那、部屋の出入口から、
「ジョルジュwww」や「デュブッフwww」と、様々な笑い方をした黒子がわらわらと現れた。
「囲まれちゃったデス!?」
「かくなる上は、我が眷属桃子よ。汝の頭で、我らに仇為すものを血祭りにするのだ!」
「ファッ!? とっくにお姉さんのライフは0よ! これ以上頭突きしたら脳細胞壊れるンゴ!? 頭が悪くなっちゃう!」
などと話している内に、なんの戦力も持たないアイリたちは為す術もなく汚らわしい黒子たちに拘束されてしまった。
「嫌がっても無駄にゃ……。自分から求めるくらい、気持ちよくさせてあげるにゃッ!」
そして、恍惚とした表情で身体をくねらせる楠子に、3人は顔を青ざめさせるのだった。
江戸アイドルに捕まってしまったアイリたちは、その親衛隊の手によって、とあるビジネスホテルに連れてこられていた。
どうやら、どこかの部屋に閉じ込めようとしているらしい。
「ここって、安眠を提供することで有名なビジホじゃん。まさかこんな形で来ることになろうとは」
ビジネスホテルを見ながら若干浮足立った桃子の隣で、目に涙を浮かべたアイリが黒子に連れられてゆく。
「そんなこと言ってる場合ですか! どうするんですか、これから!」
「どうするってもねぇ……」
捕らえられて余裕がなくなっているのか、素の喋り方でアイリが喚く。
ちなみに逃げ出すことは当然ながら試みた。
だが、オタクと言えど腐っても成人男性。しかも1人や2人ではなく数も居る。
か弱い女の子たちに、突破できるはずもない。
そうして入れられた一室には、まさかの先客が居た。
「あれ~、可愛い子たちが来たよ、鋼ちゃん」
「んお゛おぉっ♥ きちゃう゛ぅっんっ♥ かわいぃこぉっ、きちゃぅぅぅ~~♥ あ゛あぁおぉぉぉぉ~~っ♥♥」
部屋の中には、少女が2人――いや、ふんわり柔らかい雰囲気の少女と、少女と疑ってしまうほどに可愛らしい少年が居た。
少年は人見知りなのか恥ずかしいのか、頬を赤らめてビクビクと震えている。
「他にも捕まっている人が居たデスね」
「あっ! 葉和とれびさんと八咫烏鋼太郎さん、ですよね!」
「知っているのかアイリちゃん」
「はい……あっ、うむ。親愛なる我が姉君、ユリアの眷属である」
「ユリアちゃんの妹ちゃんかぁ~。はじめまして~」
「お゛おんっ♥ これからよろしくおにゃがいっ♥ おにゃがいひまひゅうぅ~っ♥♥」
5人が簡単に自己紹介を済ませると、とれびがどうして自分たちがここに居るのかを話し始めた。
「って言ってもよくわからないんだ~。愚民のみなさんのためになることをしろ~って言われたけど★」
「それじゃあ、お姉ちゃんがどこに居るのかは……」
「ごめんね~、とれびにもわからないんだ」
「しらに゛ゃぃっ! 鋼太郎、しらにゃいしゅぎてっ! わからなくなっち゛ゃうぅぅぅっー♥」
姉の行方がわかるかと期待を膨らませていたアイリだったが、とれびの言葉に顔を俯かせる。
そんなアイリに、鋼太郎が慰めの声をかけた。
「お゛っ♥ らめぇぇっ♥ い゛っしょにぃぃっ♥ ぴっ♥ ぴぃぃしゅすゆゅぅぅぅぅっ♥♥」
「ひっ……!? あ、ありがとうございます?」
「コタロー、優しいデス!」
「……ホントか?」
桃子がそんな光景を眺めていると、部屋の扉が開かれ、「デュフフwww」と静かに笑いながらオタクが現れた。
「お勤めの時間でござるよwww」
突然言い渡された「お勤め」に、桃子は真っ青になる。
「ま、まさか、外にうじゃうじゃいるオタクの前に連れ出されて、あんなことやこんな……」
「ほお゛お゛おぉぉん゛おぉぉっ♥ み゛んなのま゛えでっ♥ ばんじゃいしちゃう♥ ぱんにゃんに゛ゃんじゃんじゃいぃぃぃっ♥♥」
思わず呟かれた桃子の言葉に、鋼太郎は爪先立ちで身体を震わせた。
いったい、何が待ち受けているのだろうか。
不安を煽られながらも、5人はただ、暗い無機質な通路を進むしかなかった。
ビジネスホテルから連れ出された5人は、全面ガラス張りの車に詰め込まれた。
「やっぱりこれはウスイホンみたいな展開に!?」
などという桃子の心配は杞憂のようで、一行を乗せた車は『tripletsアキハバラ』なるライブハウスに到着した。
「お前たちには、ここでライブをしてもらうでござるwww」
どうやらオタクの言う「お勤め」とは、オタクたちに向けてライブを披露するということらしい。
想像していたよりも、酷いことをさせられるわけではないと安心した5人。
中へ入ると、既にライブは始まっているようだ。オタクの大きな歓声が聞こえてくる。
「ほぅら、オジサマ。もっと大きな声は出せないんですのー? なっさけないですわねぇ」
5人が舞台袖からステージを覗くと、そこに立っていたのは江戸の黄色いアイドル、知雲ひばりだった。
人を蔑み、小馬鹿にしたような甲高い声が、ライブハウスに響き渡る。
「うおおお!wwwひばりちゃぁぁぁん!www」
「わからされるでござる!wwwメスガキにわからされるでござるぅっ!?www」
オタクたちは、そんなひばりに向かって一心不乱に光る棒を振り続けていた。
「ふふっ、それでは次の曲! 最後の一滴、しおっしおになるまで絞り尽くしてあげますわぁっ!」
さらに盛り上がりを見せるひばりのライブステージに、一同は目が離せなくなっていた。
「あの子のステージ、なんだかすごいデース……!」
「ふりふりしてて、ちっこ可愛いね~★」
「いやぁ、さすがにぐうかわでしょ……私もわからされそう」
そんな時だった。
ライブハウスが――いや、アキバ全体が、大きく揺れだしたのは。
どよめく一同の中で、ひばりは手を広げ天を仰ぎ、恍惚とした表情で言葉を紡ぐ。
「エネルギーが溜まり、ついに照射されたんですわ!『オタク・ウェーブ』が!」
「ΩΩΩΩΩ<な、なんだってー!?」
「さあ変わりますわよ、世界が! 地上オタク作戦の開幕ですわ!」
ライブ中のひばりが、高らかに宣言する。
桃子は慌ててトイッターを開くと、そこには恐るべき光景が待ち構えていた。
桃子が開いたトイッターのタイムラインには、『オタク・ウェーブ』が照射されてしまったであろう場所の話題で溢れ返っていた。
「うわ……なぁにこれぇ……」
スマホの画面に顔を引きつらせた桃子を見て、他の4人も画面を覗く。
タイムラインを追っていくとわかる。
まず拾えた情報は、千葉県の有名な娯楽施設が餌食になってしまったらしいということだ。
『マスコットキャラクターの衣装ってこんなに小さかったっけwwwもうただの布じゃんwww』
『目の前のカップルが急にンゴンゴ言い始めてワロタンゴwww』
呟きと同時に投稿されている画像や動画には、パリピ御用達の娯楽施設がオタク色に染められている光景が広がっていた。
『本日のパレードで悲しい出来事がありました。長文になりますが、拡散してくださると幸いです』
挙句の果てには、椅子やシートを広げてパレードを最前で見ようと争い始めたという、メモ帳のスクショが貼られ、お気持ちが表明されていた。
さらに追ってみると、次はお台場が標的となっていたようだ。
リア充のデートスポットだったはずの遊園地では、アニメや特撮の真似事のようなことをしている画像や動画が流れてくる。
他にも、一角獣をモチーフにした等身大フィギュアを大きな円陣を組んで囲み、サイリウムを振り回してオタクダンスを踊る始末。
自由の象徴とされていた像はどうしてしまったのか、ライオンの顔を胸にあしらった金色のロボット像に造り変えられ、天高く黄金のハンマーを掲げていた。
元々オタクだったものには強制オタク化はあまり効果はなかったようで、突然の周囲のオタク化に困惑しているような呟きが流れている。
だが、それもすぐに順応してしまったのか、オタクが増えたことを喜ぶ呟きや、大喜利を始めたオタクの呟きで溢れかえっていた。
一部分とはいえ、一瞬で世界の有り様を変えてしまった『オタク・ハイロウ』。
その威力を目の当たりにして、5人は戦慄するのだった。
「本当に強制的にオタクになってるデス……これは恐ろしいことデスよ」
「これじゃあ、本当に全人類がオタクになっちゃう!?」
またもや素の喋り方に戻ってしまうアイリ。
地上のオタク化は、それほどまでに衝撃的だったのだろう。
「げに恐ろしいのはここからじゃあ……!」
「ど、どういうことデス、老師!?」
クワッと両目を大きく見開いて、桃子は言う。
「強制的なオタク化はニワカを量産する……オタクの冬が来るぞ……!」
「冬如き、我が黙示録の炎ですべてを焼き尽くしてくれるわ!」
「えっと……いや、そういうことじゃないんよ! ニワカオタクの出現はオタク界隈にダメージ大きいんだって!」
ニワカオタクの得意とする技のひとつに、『シッタカブリ』というものがある。
コンテンツの歴史だったり、その過程で生まれたネタをさも以前から知っているかのように、かつ、間違って披露してしまうことを指す。
そういったニワカオタクは、コサンオタクからは煙たがられ、シンザンオタクからも避けられがちである。
数だけは多く声も大きいので影響力は侮れず、界隈を左右する力を持っていると言っても過言ではないのだ。
そしてニワカオタクたちはコンテンツを貪り、3ヶ月後には別のコンテンツへと移ってゆく。彼らの歩いた後にはイナゴに食い尽くされた田畑同様、コンテンツの荒野が広がるのだ。
「とにかく、まずはここから脱出しないとデス!」
「とはいえ素直にライブしても、解放してくれるとは思えないンゴ……まさにツンだ、デレない」
出入り口には「デュフフwww」と不敵に笑う筋肉モリモリマッチョマンの変態オタクが居るため、強行突破も難しいだろう。
「それじゃあ、ひばりちゃんにお願いしてみるのはどう? 逃して~って★」
「許してください! 何でもしますから! ってやつデスね!」
「ん? いや何でもはいかんでしょ、何でもは」
そんな3人の話を聞いていたアイリは、ふんと鼻で笑う。
「我は気高き暗黒魔道士であるぞ。下手に出るなど論外。逆に愚民たちを洗脳し返してくれよう!」
「あっ、それも面白そうだね~!」
「どっちが悪役かこれもうわかんねぇな」
ツッコミに回った桃子が頭を抱えていると、鋼太郎が控えめにその存在をアピールしてきた。
「み゛っ♥ みんなでっ♥ しあわせだぶるぴぃぃしゅすりゅぅぅぅぅっっ♥」
「コタローもやる気満々みたいデス!」
「とれびたちのライブで愚民さんをメロメロにしちゃお★!」
とれびとイングリットの2人に褒められた鋼太郎は、嬉しさのあまり顔を真っ赤に染める。
「作戦会議は終わりまして?」
逃げ出す算段を話し合っているところに、今しがたライブを終えたひばりがやってくる。
艶やかな肌にじんわりと汗が浮んだその姿に、思わず涎が流れそうになる一同であったが、ひばりから冷ややかな、勝ち誇ったような強気な視線を注がれたことにより、皆はたじろいでしまった。
「次はあなたたちの番ですわ。せいぜい気張って盛り上げてくださいまし! チューンチュンチュン!」
「ププ……変な笑い方デース」
「あ゛?」
思わず口に出してしまったイングリットを、ひばりが鋭く睨み返す。
そんな2人にアイリはすかさず割って入った。
「そこで見ているがいい。そして震えよ! 我らアキバの守護者による狂乱の宴の始まりだ!」
「ぐっぬぬ……いい気になっていられるのも今のうちですわ! 立てないほど痛めつけて、慰み者の刑にしてやるチュン! 謝っても許さないチュン!」
ひばりの叫びを背中に受けつつ、それを無視しながら5人はステージへと向かう。
今回限りのドリームユニット。
魅惑のライブが今、始まる。
ステージに躍り出た5人を待ち受けるのは、既にひばりのライブによって出来上がっているオタクたち。
会場はアウェー。ユニットも一度も合わせたことのない即席だ。
だがしかし、それでも彼女らは1人を除きプロと元プロのアイドル。
アイリをセンターにそれぞれの持ち味を出したことによって、オタクたちを大いに沸かせていた。
唯一アイドルとしての活動をしていなかったイングリットも、持ち前の性格からか、オタクたちに笑顔を振りまき、パフォーマンスにもついていけていた。
「なんでござるかこれは!www」
「個性がぶつかり合ってバラバラなのに、目が離せないですぞぉーっ!www」
「ふーん……やるじゃん」
即座にフリに対応するオタクや、逆に高まりすぎて地蔵になるオタク。果ては後方で腕を組み彼氏面をするオタクまで現れる始末。
こういう時のオタクの適応性は凄まじいのである。
アウェーであったはずの空間は、完全にステージ上の5人のアイドルが掌握していた。
「次でこの宴も終焉。声を張り上げるのだ!」
ついに最後の曲が流れてアイリが煽ると、オタクのボルテージは最高潮に達する。
しかしその瞬間、舞台袖からひばりが飛び出した。
「チューンチュンチュン! 待っていましたわ! この瞬間をっ!」
会場を縦横無尽に飛び回るひばりに、訓練されたオタクたちは追いかけるようにフロアを走り回った。
そして、ひばりの持つマイクに、オタクたちのオーラのようなものが集まっていく。
そのマイクを掲げると、やがてひばりの衣装はきらびやかに輝いていった。
「さぁ、大の大人とは思えないくらい情けない声で喘いで、わたしを満足させてくださいまし!」
「ヴォイ! ヴォイ!」
「全然聞こえませんわ~? わたしに届けなさい、もっと声を張り上げるのですわ!」
「ウォーッ! ヴォーッ!! ヴォーッ!!!」
アイリたちのライブで高まっていたはずのオタクのほとんどが、ひばりに向かって叫びを上げ始めた。
「完全に流れ持ってかれたンゴ……あぁ、私もわからされそう」
「桃ちゃん、しっかり~!」
「拙者たちがまだ居ますぞ! アイリ様たちを応援するでござる!」
そんな中でも、アイリたちを応援するオタクたちは存在した。
いつの間にかオタクたちは、アイリ派とひばり派の2つに綺麗に分かれ混沌を極めていた。
火花を散らす両陣営は、やがてフロアでウォール・オブ・デスを引き起こす。
肉と肉が激しくぶつかり合い、汗と涙がライブハウスに飛び散った。
地獄もかくやといった光景である。
「そんなっ……愚民たちが争うなんて……!」
応援してくれていたオタクたちが争い合う。
その光景は、アイリたちには辛い光景であった。
だが、ひばりは宙を舞いながらほくそ笑む。
「争え……争うのですわ……! そしてそのエネルギーで、わたしたちの悲願を果たすのですわー!! チューンチュンチュン!」
「これは逆にチャンス! アイリちゃん、私らに味方してるオタクたちを強化するンゴ!」
「えぇっ!?」
突拍子もない桃子の提案に、アイリは素で驚きの声を上げた。
「こっちのオタクを強化して、あっちのオタクを蹴散らす。阿鼻叫喚の間に私らはとんずら。完璧っしょこれ」
「な、なるほど……少し心苦しいですが……ハッ! いいだろう我が眷属桃子よ、貴様の策に乗ろうではないか」
少しでも逃げられる可能性があるのならと、アイリはオーディンスタッフをオタクたちに向けた。
「我らを守る勇敢なる戦士たちに力を与えよ! ダーク・パワー!!」
アイリの声がライブハウスに響き、アイリ派オタクたちの身体が紫色の闇の光に包まれた。
「フォーッ!?wwwバフキタコレ!!!www」
禁断の暗黒魔法によって強化されたアイリ派オタクたち。その力は絶大で、ひばり派オタクたちを文字通り吹き飛ばす。
「チュン!? 何が起こったんで――ヴェッ!?」
余裕の表情で宙に佇んでいたひばりは、突然のことに狼狽する。
その一瞬の動揺が災いし、吹き飛ばされてきたオタクに巻き込まれ、客席へと落下してしまった。
「チャンスデース!」
「わわっ、はしれはしれ~★」
客席に落ちたひばりを見て、5人はそそくさとライブハウスの外へと走り出す。それを視界の端で捉えていたひばりは、追いかけようと身体を起こした。
「に、逃しませんわっ……ヒェッ!?」
しかし、ひばりは暴走したわからせオタクによって取り囲まれてしまっていた。
本来なら洗脳し自在に操れるはずのオタク。
だが今は、暗黒魔法で彼らの闘争本能が刺激され、暴走状態にあった。
「こっ、これはwwwウスイホンによくある展開でござるwww」
「ウォッホォオオオッwww」
「はい勝ちでござる~~~www(大人は生意気な子供なんかに負けないため)」
オタクたちの汗にまみれた手がひばりに伸びる。
「や、やめなさいっ! それ以上近づいたら、許しませんわよっ! ひぃっ!? か、堪忍してぇぇ」
「ひばり! 目を閉じるにゃん!」
魔の手がひばりに触れようとしたその瞬間、どこからともなく聞こえてきた声に、ひばりは反射的に目を閉じた。
「ドルオタ忍法、大閃光の術!」
オタクたちの目の前に、いくつもの棒が降り注ぐ。
パキッと小気味良い音を鳴らしたそれは、オタクたちの視界を眩いオレンジ色の光で塗り潰した。
「アバーッ!?www眩しいでござる!!www」
「め、目がぁ~! 目がぁ~でござるッ!?www」
バタバタとその場に倒れるオタクたち。
いったい何が起きたのか。
確認しようとひばりが目を開けた時には、気づかぬ内にライブハウスの屋上へと移動していた。
「ひばり、大丈夫にゃん?」
声をかけられて、ようやくひばりは今の状況を理解する。
オタクに襲われそうになったところを、姉のように慕う楠子に助けられたのだと。
緊張が解けたのか、ひばりは瞳に涙を溜めると楠子の胸にしがみついた。
「おねぇさまぁん! どうか、どうかひばりの無念を晴らしてくださいませぇ~!」
「んにゃ゛ンッフフ……ひとまず、コテツのところに戻るにゃん」
楠子はそう言うと、ひばりをお姫様抱っこしたまま、跳び上がる。
楠子の腕の中で、安心しきって目を閉じるひばり。
そんなひばりを抱えながら、楠子は恍惚とした表情を浮かべる。
「にゃふふ……次は拙者が相手になるにゃん」
幼女の温もり、柔らかさ、そして甘い香りを堪能しながら、楠子はコテツの待つ場所へと向かうのだった。
チュウニズム大戦
レーベル | 難易度 | スコア | |
---|---|---|---|
スキル名/効果/備考 | |||
♥グミン | BASIC | 0 / 100 / 200 | |
レーベルターボ(♥■◆♣チェイン) | |||
自分と次のプレイヤーは、出すカードが♥、■、 ◆、♣でCOMBOした時、CHAINとなる。 | |||
備考:♥グミン/■メタヴ/◆ジェネ/♣イロド |
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チュウニズムな名無し
162021年02月09日 17:52 ID:hsg6xjfi自由の女神がガオガイガーになるの好き
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チュウニズムな名無し
152020年11月11日 16:11 ID:lmv7d8abSEGA…流石にそっち方面まで媚び売っちゃいけないよ(戒め)
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チュウニズムな名無し
142020年09月24日 08:44 ID:c1t0ghnq筋肉モリモリマッチョマンの変態はおそらくコマンドーにある台詞では
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チュウニズムな名無し
132020年09月23日 14:18 ID:i9akk27t何気にSTAR以降皆勤賞な黒塗りの高級車
(STAR:暁 凶香、AMAZON:ダオ・トッテナ)
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
112020年09月23日 05:05 ID:csdx1ie2一角獣をモチーフにした等身大フィギュア(全高19.7m)
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
82020年09月19日 13:30 ID:cmlase3w(大人は生意気な子供になんか負けないため)すき
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チュウニズムな名無し
72020年09月19日 08:32 ID:eku7or68ジダンって元サッカー選手のジダンの方じゃねえか!!
その前のハイクを詠むとかあからさまに忍殺だしもう世界観わかんねえなこれ