ポン助
Illustrator:夢ノ内
名前 | ポン助 |
---|---|
年齢 | 7歳 |
職業 | 金貸し業 |
- 2021年11月4日追加
- NEW ep.I - Side.Aマップ5(進行度1/NEW時点で125マス/MAP1から255マス*1)課題曲「Pre Paid Pog Punk Panic」クリアで入手。
グンマ市の裏社会で法外な金を貸しては返済しない者を身売りさせることを生業とする極悪人。
ある日、自らの夢を果たす為に島を買う事になるのだが……?
モデルは『あつまれ どうぶつの森』における、たぬきち(ほぼそのまま)である。しかしキャラ自体は元よりもかなり極悪。
また、エピソード中には『賭博黙示録カイジ』のネタも多い(例: ホットプレートの上で土下座させるのはあちらの「焼き土下座」が元ネタ)。
スキル
RANK | 獲得スキルシード | 個数 |
---|---|---|
1 | アタックブレイク | ×5 |
5 | ×1 | |
10 | ×5 | |
15 | ×1 |
- アタックギルティ【NEW】 [A-GUILTY]
- ゲージブースト【NEW】より高い上昇率を持つ代わりにデメリットを負うスキル。
- 強制終了以外のデメリットを持つスキル。AJ狙いのギプスとして使うことはあるかもしれない。
- NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したBOOST系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大99個(GRADE100))。
- GRADE100を超えると、上昇率増加が鈍化(+0.3%→+0.2%)する模様。
- スキルシードは150個以上入手できるが、GRADE150で上昇率増加が打ち止めとなる。
- CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「アタックブレイク」から変更され、効果も変更された。
効果 | |||
---|---|---|---|
ゲージ上昇UP (???.??%) ATTACK以下で追加ダメージ -300 | |||
GRADE | 上昇率 | ||
1 | 170.00% | ||
2 | 170.30% | ||
35 | 180.20% | ||
▼ゲージ7本可能(190%) | |||
68 | 190.10% | ||
100 | 199.70% | ||
▲PARADISE LOST引継ぎ上限 | |||
102 | 200.10% | ||
150~ | 209.70% | ||
推定データ | |||
n (1~100) | 169.70% +(n x 0.30%) | ||
シード+1 | +0.30% | ||
シード+5 | +1.50% | ||
n (100~150) | 179.70% +(n x 0.20%) | ||
シード+1 | +0.20% | ||
シード+5 | +1.00% |
開始時期 | 最大GRADE | 上昇率 | |
---|---|---|---|
NEW+ | 85 | 195.20% (7本) | |
NEW | 145 | 208.70% (7本) | |
~PARADISE× | 244 | 209.70% (7本) | |
2022/9/15時点 |
- アタックブレイク [A-BREAK]
※スコアにマイナスの影響を与える可能性があります。 - ゲージブーストより高い上昇率の代わりにデメリットを負うスキル。
- PARADISE LOSTまでのアタックブレイクと同じ。
- SUN以降、ATTACK時のデメリットが変更された。上昇率は変更されていない。
効果 | ||
---|---|---|
ゲージ上昇UP (???.??%) ATTACK判定がMISSになる |
NEW PLUS以降、各GRADEの上昇率が10%増加した。
GRADE | 上昇率 | ||
---|---|---|---|
1 | 160.00% | ||
2 | 160.30% | ||
▼ゲージ7本可能(190%) | |||
102 | 190.10% | ||
150~ | 199.70% | ||
推定データ | |||
n (1~100) | 159.70% +(n x 0.30%) | ||
n (100~150) | 169.70% +(n x 0.20%) |
- 登場時に入手期間が指定されていないマップで入手できるキャラ。
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | スキル | ||||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
スキル | |||||
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
スキル | |||||
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
「なめたことぬかしとったら、全身の毛、引っ剥がすぞ!」
とあるビルの一室、そこで口調は荒々しいが、まるでドスの利いていない声が響き渡る。
「す、すみません! 必ず来週には! 必ずお金を用意しますので、今回だけはどうか!」
「なにが今回だけや、もう聞き飽きとんねん。借りたもんは返す、そないなこともできんのか、ああ?」
ねこの男が泣きながら、ソファにどっしりと座ったたぬきに土下座をしている。
その後ろにはきつねが控えていた。
だが、そんなことはお構いなしと、たぬきがねこの後頭部を踏みつける。
「だいたい、頭下げてなんとかなるんやったら、警察も金貸しもいらんやろがい」
「まあ、返せへんなら、ワシが働けるとこ紹介したるわ。ちょーっときついかもしれへんけど、ええ稼ぎになるで」
「ま、待ってください! 本当に、今回だけ! これが最後ですからなんとか――」
顔を上げたねこの顔をたぬきが蹴り飛ばす。
あまりの痛さにねこは顔をしかめ、その場にうずくまる。
「あんたに選択肢はない、もう決まったことや」
「そ、そんな……」
「のう、コン沢。今度の宴会で披露しよう思うとった三味線、ええのが手に入りそうやの」
「はい、ポン助社長。いいものが手に入ると思いますよ」
ポン助の後ろに控えていたコン沢が淡々と答えた。
「じゃあ、あとは任せたで」
「い、いやだあああ!」
逃げ出そうとするねこを、事務所の動物たちが取り押さえる。
なんとか逃げ出そうともがくのだが、抵抗も虚しく、ねこは捕らえられてしまう。
「や、やめろ、離せ! 離してくれ! 頼む、許してくれえええ!」
「金は生命より重いんや、よう覚えとけ」
ねこが黒服の手で事務所から引きずり出されていく。
――金貸し屋、ポン助。
法外な金利で金を貸し、返せなくなれば待ってましたとばかりに身売りさせる極悪人。
裏社会で彼の名を知らない者はいない。
「ぎひひ、今回もええカモが釣れてほんまウハウハや。さて、次はどいつが食べごろやさかいな」
「この方などいかがでしょうか」
金を貸したリストを眺めながら、下卑た笑いを漏らすポン助にコン沢が指をさす。
コン沢は僅か2年でポン助の右腕にまで成り上がった出世頭。
金を返せなかった者を処理するのも彼の役目である。
「これでまた手元にぎょうさん金が入ってくるで。あともう少しや、あともうちょいでアレが買える……」
そんなポン助には誰にも話していない、大きな野望があった。
それは――
――ある日、意気揚々と不動産屋に入っていくポン助の姿がそこにはあった。
店主に通された部屋でテーブルに広げられたのは、売出し中の島々。
「調べとった以上に色どりみどりやな。こないな島売っとって誰も買わへんもんなんやな」
「ええ、安い買い物ではありませんからね」
ポン助がお金を貯めてまで買おうとしていたもの。
それは――島だ。
手元には、何かへ投資できるほど潤沢な資金がある。だが、どれもポン助の琴線に触れるものはなかった。
しかし、あるときポン助の目に1つの広告が目に入ったのだ。
「ほんま、あの広告がなかったら、今のワシはおらん言うても過言やないで」
「広告? それが島をお求めになる理由になったのですか?」
「せや! ワシの夢はな、買うた島をリゾート開発して、がっぽがっぽ稼ぐこと! そんで、あの『竜宮城(シーポリス)』すら超えてしまうような、一大リゾート施設を作ったるんや!」
ポン助が見たのは海の近くにあるリゾート施設の広告。それを見た瞬間、ポン助に雷に撃たれたような衝撃が走る。
これや、これしかない、と。
「……っちゅうわけや。なんか手頃に開拓できそうなええ島とかあらへんか?」
「でしたら、こちらなどいかがでしょう」
「ん……こりゃあかんわ、こんな本土から離れた島に誰が好き好んでくるんや。次や次!」
「近場でしたら、この島はおすすめですよ」
「どれどれ……あかんあかん、高すぎる! これじゃ元取り戻すんに何年かかるんや!」
「そうなりますと、あまり……」
そう言いながら店主が広げた島のカタログを見ていると、ポン助が1つに目をつける。
ポン助が手に取ると、そこには彼が求めていた理想の島が載っていたのだ。
「グンマから飛行機で1時間!? イバラキから船使って30分やて!? こ、これでこの値段! コスパがいいとはこのことや! ここにするわ!」
「そ、その島はある問題が――」
「なんや、ワシには売れん言うんかい! ここに広げといて、まさか買い手がついとるとか、なめたこと抜かすんちゃうやろな!」
「い、いえ、そのようなことは!」
「ほんなら決まりやな! こんなええ買いもんができるとは思ってへんかったわ!」
「わ、わかりました。では手続きをしていきましょう……」
「ぎひひ! もうグンマだけやない。将来的にはイバラキからも客を取れる! こんなチャンスが舞い込んでくるなんて、やっぱワシは持っとるたぬきや!」
ポン助はまるで天下でも取ったかのように高笑いをする。
ただ、このときの彼は何も知らなかった。
自分が買った島が、あるいわくつきの場所だということを。
島を購入してから数日後。
ポン助は自家用のクルーザーでその島へと向かっている。
島を改築するため、先にリゾート建設事業を頼んだ会社の面子が島に入っており、その視察が目的だった。
「そういや、不動産屋のやつがなんか言うとったが、なんやったんや、あれ」
クルーザーを走らせる中、目的の島がだんだんと見えてくる。
「やっぱ、いつ見てもええ感じの島やなあ。これはほんまにええ買いもんやったかもしれんで」
ポン助がまっすぐ島へ向かう中、そのクルーザーめがけて水しぶきを上げながら突き進んでくる一団があった。
「フンフン――な、なんや、あれは!?」
「どけどけジジイ~~ッ!」
「さ、サメ!?」
意外、それはサメの一団。
クルーザーを破壊するため、サメが全速力で衝突しようとした瞬間――
クルーザーが空を舞った。
「な、なにい!? クルーザーが飛びやがった!?」
ポン助がクルーザーを、驚いているサメの一団に近づける。
「ほんまやったらこれをあんたらの上に落としてもよかったんやけどな。今回は勘弁しといたるわ」
「な、なんて野郎だ。クレイジーすぎるぜ、このたぬき」
「ところで、ワシのシマで好き勝手しよって、どないなるかわかっとるんやろな?」
「チッ! 一回避けたくらいで粋がってんじゃねえぞジジイ。次はその船に風穴空けてやるから覚えとけ!」
捨て台詞を吐き捨てると、サメの一団が去っていく。
ポン助が大きなため息をついたあと、葉巻に火をつけて、ぽつりとボヤきながら携帯電話を手に取った。
「ワシや。新鮮なかまぼこが食いたいのう……」
島に着いたポン助がクルーザーを島の船着き場に止める。
そのクルーザーを見て、数人の動物たちがポン助の前に整列した。
「ポン助さん、お待ちしておりました!」
「おう、出迎えご苦労さん。さっそく始めとるみたいやな、これから大変や思うけど、チャキチャキ働いてもらうで」
「はい!」
「じゃあ、ワシはビーチで休んどるから、なんか問題あったらそっちおるからな。それと、ええっと……そこの2人、名前なんや?」
ポン助が一列に並んだ中からポメラニアンとトラ柄のねこを指差す。
「ぽ、ポメ太です!」
「トラ吉です!」
「ほんじゃあ、ポメトラ。あとで適当に飲み物とか持ってきてくれるか。キンキンに冷えとるのを頼むで」
「わかりました!」
「よろしゅうな」
ポン助がビーチでくつろいでいると、慌てた様子でポメ太とトラ吉が駆け寄ってきた。
「ぽ、ポン助さ―ん! た、大変なんです!」
「どないしたんや、そない慌てて。玉袋でも蛇に噛まれたか?」
「違いますよ。こいつと安全確認で建設予定地の見回りをしてたら、あっちの方に関係者っぽくない鳥たちが……」
「ガラ悪かったんで間違いないッス!」
「なにい? ここが誰のシマか、わかっとらんみたいやなあ。おう、案内しろ!」
「了解ッス!」
そう言ってポン助を案内しようと前に立つ二人だったが――
「ポメ太、こういう時に指差し安全確認だ」
「わかったぜ、練習の成果見せてやる!」
と、小声でポメ太とトラ吉がボソボソとつぶやきながら、ポン助の前方確認を始めた。
「「足元ヨシ!」」
「行きましょう、ポン助さん!」
「お、おう、変わったヤツらじゃのう……」
ポメ太とトラ吉に現場へと案内されたポン助。
そこで待っていたのは、見るからにガラの悪い鳥たちだった。
「なに見てんだよ、おっさん。オレらは見世物じゃあねえんだぞ」
「そうそう。こちとら長旅で疲れてんだ。用がないならどっか行きやがれ」
ポン助たちを威嚇するように鳥たちが大きな翼を広げて、ばたつかせる。
鳥たちの話を聞いて、ポン助は何かを考え始めた。
「なるほど、長旅っちゅうことは、運び屋の連中か。これだけの数から金取れるようになれば、儲けもんや。ここは下手に出て将来の顧客をゲットしとかんとな」
「なにぶつくさ言ってんだ、おっさん」
「いやいや、休憩中のところ邪魔してすまんなあ」
ポン助はいつもと違い、威圧するのではなく、低く丁寧な言葉をつむぐ。
それはお客の前で最初に見せるポン助のもう1つの顔だった。
「ワシはこの島を持っちょるポン助っちゅうもんなんやけど」
「はあ、この島の持ち主だと?」
「実はここらにごっついリゾート建てよう思とんねん。せやから、出ていけっちゅわへんから、ちょいと他んとこ行ってくれると助かるんやけど」
「おいおい、聞いたかよ。このたぬき、この島を買ったんだとよ!」
「馬鹿じゃねえの、そんなやついるわけねえだろ。証拠見せろよ、証拠!」
「ほ、本当ッス。ポン助さんは、この島のオーナーッスよ!」
渡り鳥たちの会話にポメ太とトラ吉が割って入る。
「バーカ。こんな周りがサメだらけの島を買うやつなんているわけねえだろ」
「俺らみたいな運び屋が休憩するくらいしか使い道がねえよ」
「ああ、あのサメ共かいな。なるほど、不動産屋が言うとったのはあのサメのことやったんやな」
「そういや、今日はサメのやつら見てねえけど」
「サメならワシが追っ払ったで」
ポン助の話を聞いた渡り鳥たちが一斉に笑い始める。
「たぬきなら、もっとうまく化かせよな。そんな冗談、誰が信じるかっての」
「ホントだよ。冗談は顔だけにしとけ、たぬきのおっさん」
そう言いながら渡り鳥の1人がポン助めがけて唾を吐き捨て、飛び立っていってしまった。
「ぽ、ポン助さん、大丈夫ッスか!?」
「……」
ポン助は無言でサングラスを拭くと、懐から葉巻を取り出し、火を付ける。
「あ、あの、ポン助さん……?」
「ふぅ……あれやな、今夜は焼き鳥が食いたいのう……」
そう言いながら、ポン助は携帯電話を取り出して、またどこかへ連絡を入れながら、その場を立ち去る。
ポメ太とトラ吉は、黙ってその後姿を見送ることしかできないでいた。
「焼き鳥……? 筋トレ目当ての俺たちを気遣って高タンパク低カロリーな鶏肉を用意してくれるっていうのか……?」
「うおおおお、マジかあああ! ポン助さん! オレ、レバー大好きなんですよーっ!」
何を勘違いしているのかわからないが、ポメ太とトラ吉は意気揚々とポン助のあとを追いかけるのだった。
イバラキ県沖から約30分ほど離れたある孤島。
渡り鳥が羽を休めるだけの場所だったのは過去の話。
今は多くの人々が安らぎと、娯楽を求めて休日を過ごす、リゾート地となっている。
ポンスケリゾート、通称PSR。
竜宮城(シーポリス)の最新エンタメが陸上でも堪能できると話題になり、そこそこ順調な滑り出し。
人はここを第二の竜宮城(シーポリス)と呼んだ。
「ぎひひ、ほんまぎょうさんの客が来てボロ儲けや。ここに目をつけたワシ、さすがやな!」
監視カメラを通して、施設で遊ぶ多くの客を見て、この施設の支配人であるポン助は高らかに笑う。
その隣にはコン沢の姿もある。彼はこのリゾートの支配人代理として様々なサポートを行っていた。
「この調子で売り上げを伸ばして、それを元手にイバラキ県民向けのレジャー施設も作れば更にガッポガッポや!」
「ええ、まったくです」
ポン助の言葉にコン沢が頷くと同時に事務所の電話が鳴り始めると、それを彼が取る。
「はい……はい……」
「にしても順調すぎて怖いくらいや。でもまあ、これならすぐにでも元手を取り返すことなんて――」
「な、なんですって!?」
「うお!? なんや急に大声出しよってからに!」
コン沢が受話器を置くと、青ざめた様子のコン沢がポン助に向き直る。
コン沢の深刻そうな顔にポン助もただごとではないと悟ったのか、表情が強ばる。
「ポン助さん、実は先ほどの電話は政府の者からで……」
「ちょ、ちょう待て! このリゾートは一から十まで健全な営業しとるで、査察なんて入るような真似は!」
「い、いえ、違います。実はこの島近くの沖で飛行機墜落事故があったらしいのです」
「なんや、ビックリさせんといてくれや。で? その事故となんの関係があるんや?」
「ここを捜索活動の本拠地にすると! しかも、その間の滞在費は一切支払われないと……!」
「なるほど、そんなこ……ダ、ダニィィィ!?」
飛行機事故から数日。
結局、ポン助は世間からのリゾートに対する体裁を気にして、あえなくPSRを救助隊の本拠地にしてしまう。
当然、通常営業を行うことはできず、ポン助は一旦グンマ県の自宅で待機していた。
ポン助は度々テレビから流れてくる事故のニュースを見て、眉をひそめる。
「先日起こった飛行機事故のニュースです。この飛行機はネットで話題のドウブツューバーがチャーターしたもので――」
アナウンサーが言い終わる前にポン助がテレビの電源を切った。
「まったく、迷惑な話や。どこぞの配信者のせいで、ワシの商売あがったりやで」
ポン助はデスクに並べられた多くの書類を前に頭を抱える。
請求やら、多方面からの書類処理を朝から行っているポン助なのだが、その書類が一向に減る気配がない。
「ほんま、参ったわ……救助が終わらない限り営業が再開できん……」
「こういう時のために政府の給付金があるんやが……申請したのがバレたら二度と裏社会で生きてけんからのう……」
裏の世界でそういうことをするのは稼ぎのない無能、日和った金無し、というのがあくまでポン助のイメージだった。
「だいたい、こういうのはコン沢の仕事やろ。あいつは今どこで何をやっとるんや。ワシがこないに苦労しとんのに」
そう言いながらポン助が次の封筒を手に取る。そこには島を買うときに仲介してもらった不動産屋の名前が書いてあった。
「ん? なんや、この封筒。あの不動産屋とのやり取りは全部終わったはずなんやけどな」
不思議そうに首をかしげながらポン助が封筒を開けると、そこには数枚の書類が入っていた。
その書類に目を通していくと――
「な!? こ、これはどういうこっちゃ!?」
その書類は、ポン助が持っている不動産の名義が、全て支配人代理を任せているコン沢に替わったという知らせだった。
「こんなん嘘や! そ、そうや、コン沢に連絡を!」
携帯電話を手に取り、コン沢にかけるポン助だったが、取る気配は一向にない。
「あいつ! とにかく不動産屋に行って確認せな!」
いったい、何が起こっているのか真実を知るため、ポン助は急ぎ、不動産屋へと走るのだった。
不動産屋が何かのミスをした、そうに違いないと思うポン助。
確かめようと入った不動産屋にいたのは――
「コン沢、お前!」
「封筒が今日、届くと聞いていたので。そろそろ来る頃かと思って待っていましたよ」
ソファの上にどっかりと座っているコン沢。
いつもは椅子などには座らず、ポン助の隣に立っていた彼とは違い、堂々と胸を張り、圧倒的な存在感を放っていた。
「コン沢! この書類はいったい、なんなんや!」
ポン助はコン沢に詰め寄りながら、封筒に入っていた書類を見せつける。
「いやぁ、まさかあんなにうまくいくとは! リゾート関係の書類に混ぜただけであっさりとハンコを貰えるなんてねぇ!」
「な、なんやと!?」
「ああ、それとこちらもどうぞ。封筒に入れようと思ったのですが、せっかくなので、手渡ししようと思いまして」
そう言いながらコン沢はポン助に数枚の写真を投げて渡す。
「これは!? サメたちをかまぼこ製造工場勤めに、渡り鳥を焼き鳥屋台の親父に弟子入りさせた写真!?」
「そう、これまでにもたくさんの動物を望んでいない仕事場に斡旋してきた証拠です」
「な、なんで今になってこないなことを!」
「覚えていませんか? 20年前にヨナグニ島へ送られたキツネのことを……」
「キツネ……ヨナグニ島……は!? ま、まさか!」
「覚えていましたか。そのキツネこそ、私の父だ!」
「そ、そんなバカな……」
「これまで貴方の下で働いていたのは全てこのため……そう、これは父の復讐だ!」
復讐、その言葉を聞いてポン助はコン沢を鼻で笑う。
「ふん、あんな金も返さへん落ちこぼれの息子か。それでなんや、こんなもんでワシを脅す気か?」
「自分が置かれた状況をよく理解していないようですね」
「こないな写真で何ができる言うんや。今ならまだ許したる、せやからその契約書を返せえ!」
「まだあります、したんですよね? 給付金申請!」
「な!? え、ええっと、なんのことやろか」
ポン助は口ではあんなことを言いながら、ちゃっかりと給付金申請している。
そう、このたぬき、目先の金に目が眩んでしまっていたのだ。
「いいんですか、バラしちゃっても? このことが知れたらもう二度と裏社会で生きていけないですよ?」
「ま、まさか、そこまで読んで行動を……」
「いいから黙って言うことを聞けぇ!」
「ぐ、ぐぬぬぬ、貴様……!」
「……ですが、私も鬼ではありません。貴方が誠意を見せてくれれば、黙っていて差し上げましょう」
「何をせいっちゅうねん」
「『金は生命よりも重い』でしたっけ?」
コン沢が合図をすると、部屋の奥から巨大なホットプレートが運ばれてくる。
「ふん、お好み焼きでも焼こう言うんか」
「少し違いますね。この上で焼かれるのは貴方です」
「な、なんやと!?」
「このホットプレートの上で誠意を見せてくれれば、物件はお返しいたしますよ」
「誠意、やと……」
「今までたくさん見てきたはずですよ。貴方にお金を借りた人が、貴方の前でしてきたじゃないですか」
「ま、まさか、土下座せい言うんか、この上で!?」
熱い鉄板の上で土下座をすればどうなるか、そんなものは子供でもわかることだった。
明らかに度が過ぎている、そう考えるポン助だったが、しなければ物件は戻ってこない。
「ぐ……ぬ……うぅぅぅ……ぬぅぅぅぅぅ……!」
頭を下げるということだけを見れば、誰にでもできる簡単なもののように見える。しかし、
「するんですか! しないんですか!」
膝を折り曲げ、地にひれ伏すように手をつける。そこには人生のすべてが凝縮されているのだ。
「さあ! さあ!」
「うおお! やったろうやないかあああああ!」
そう意気込んで、ポン助はホットプレートの上に飛び乗る。
だが――
「あつつ! ……って、全然あつうないやんけ!?」
「ええ、もちろん。だって、たぬきが焼ける匂いなんて臭くてたまりませんからね」
「こ、こいつ!」
「ですが、まさか本当に乗るとは思いませんでした。いいですよ、貴方の『金は生命よりも重い』という信念は伝わりました」
「ほ、ほんまか!」
「ええ、私は貴方を許します。別に父は死んだわけじゃないですしね」
そう言って、コン沢が一枚の書類にサインを始め、それをポン助に渡す。
そこに書かれていたのはPSRの所有権譲渡の内容だった。
「……ちょう待て。なんでリゾートだけなんや、ワシの物件はもっとあったやろがい!」
「返すのはリゾートだけですよ。それ以外は全部貰います」
「ダニィ!? 話が違うぞ!」
「なんのことでしょうか。私は“全て”お返ししますとは、一言も言っていませんが?」
「そ、そんな……た、頼む、大切な物件もあるんや、この通りや、返してくれ!」
そう言って、コン沢に土下座をするポン助。
「おやおや、なにをしているんですか。そんなことをしても、返すつもりはありませんよ。それに――」
ポン助に近づいたコン沢が、ニヤリと笑みを浮かべながら、彼の耳元で囁く。
「『頭下げてなんとかなるんやったら、警察も金貸しもいらんやろが』ですよね?」
「ぐっ……」
「ああそうそう、飛行機事故の捜索活動が終わりました。なので、最後の親切で営業再開する旨、掲載しておいてあげましたよ」
「……は?」
「明日からはお客様が一杯来ると思いますよ、予約も何件か来ていたので。……まあ、従業員はポン助さんしかいませんが」
「え?」
次の日。
無事に営業を再開したPSRには大勢のお客が訪れていた。
「おいこら、そこのたぬき、なにやってんだ! まだ注文した料理が来てねえぞ!」
「は、はい、ただいま!」
「こっちもいつになったら道具貸してくれるのよ。書類書いたんだけど!」
「す、すぐにお持ちしますんで!」
そこにはワンオペで働くポン助の姿があった。
このリゾート以外全て失ったポン助は、たった一人でまっとうにこのリゾートをワンオペ経営するしか道はなかったのだ。
「チューチュー!」
「うるっさいわ! あとで水やるからちょっと黙っとれ!」
足元に群がる謎の植物?を蹴飛ばしながら、ポン助は今日もはたらく。
投資した金を回収し、再び裏社会で活動するために。
「絶対にここから這い上がってやるからなぁ~!」