シマッチ
【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN )】【マップ一覧( NEW / SUN )】
Illustrator:夢ノ内
名前 | シマッチ |
---|---|
年齢 | 2歳 |
職業 | ドウブツューバー |
- 2021年11月4日追加
- NEW ep.I - Side.Bマップ7(進行度1/NEW時点で215マス/累計585マス*1)課題曲「Fantasm」クリアで入手。
ドウブツューバーとして活躍しているシマリスの少女。
配信100回記念として島巡りをする事になったのだが……?
STORY自体はゲーム『ピクミン』(チューピー→ピクミン)と『どうぶつの森』(木を揺らすと家具が出るシステム)を合わせたパロディーとなっている。
スキル
- アタックギルティ【NEW】 [A-GUILTY]
- ゲージブースト【NEW】より高い上昇率を持つ代わりにデメリットを負うスキル。
- 強制終了以外のデメリットを持つスキル。AJ狙いのギプスとして使うことはあるかもしれない。
- NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したBOOST系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大99個(GRADE100))。
- GRADE100を超えると、上昇率増加が鈍化(+0.3%→+0.2%)する模様。
- スキルシードは150個以上入手できるが、GRADE150で上昇率増加が打ち止めとなる。
- CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「アタックブレイク」から変更され、効果も変更された。
効果 | |||
---|---|---|---|
ゲージ上昇UP (???.??%) ATTACK以下で追加ダメージ -300 | |||
GRADE | 上昇率 | ||
1 | 170.00% | ||
2 | 170.30% | ||
35 | 180.20% | ||
▼ゲージ7本可能(190%) | |||
68 | 190.10% | ||
100 | 199.70% | ||
▲PARADISE LOST引継ぎ上限 | |||
102 | 200.10% | ||
150~ | 209.70% | ||
推定データ | |||
n (1~100) | 169.70% +(n x 0.30%) | ||
シード+1 | +0.30% | ||
シード+5 | +1.50% | ||
n (100~150) | 179.70% +(n x 0.20%) | ||
シード+1 | +0.20% | ||
シード+5 | +1.00% |
開始時期 | 最大GRADE | 上昇率 | |
---|---|---|---|
NEW+ | 85 | 195.20% (7本) | |
NEW | 145 | 208.70% (7本) | |
~PARADISE× | 244 | 209.70% (7本) | |
2022/9/15時点 |
- アタックブレイク [A-BREAK]
※スコアにマイナスの影響を与える可能性があります。 - ゲージブーストより高い上昇率の代わりにデメリットを負うスキル。
- PARADISE LOSTまでのアタックブレイクと同じ。
- SUN以降、ATTACK時のデメリットが変更された。上昇率は変更されていない。
効果 | ||
---|---|---|
ゲージ上昇UP (???.??%) ATTACK判定がMISSになる |
NEW PLUS以降、各GRADEの上昇率が10%増加した。
GRADE | 上昇率 | ||
---|---|---|---|
1 | 160.00% | ||
2 | 160.30% | ||
▼ゲージ7本可能(190%) | |||
102 | 190.10% | ||
150~ | 199.70% | ||
推定データ | |||
n (1~100) | 159.70% +(n x 0.30%) | ||
n (100~150) | 169.70% +(n x 0.20%) |
- 登場時に入手期間が指定されていないマップで入手できるキャラ。
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | スキル | ||||
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
スキル | |||||
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
スキル | |||||
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
グンマ県近郊のとある飛行場。
アタシは撮影用の機材をセットして、自分と飛行機が画角内に入るように調整をする。
「……うん、こんな感じかな! ヨーーーシ、やるぞーーー!」
画面を操作し、配信開始のボタンを押す。
そして、アタシは画面の向こうにいるリスナーたちに向けて笑顔を振りまいた。
「ヤホー、みんな元気かなーー! シマッチのしましまちゃんねる、はっじめるよーーー!!」
配信を開始すると同時に、コメント欄がものすごい勢いで流れていくのが見える。
これはコメントを追うのも一苦労だね。
「今日はなんと皆さんにお知らせだよーーー! なな、なんと、今回の放送でしましまちゃんねる、100回を迎えちゃいました! パチパチパチ!」
8の拍手コメントと、それに合わせて8が並んだ投げ銭がどんどんリスナーから送られてきている。
最初は登録者数二桁もいかない弱小ドウブツューバーだったアタシが今では七桁の登録者数を誇っていた。
「いやー、本当に短かったような、長かったような。これもみんな、リスナーさんたちのおかげだよ、ありがとーーー! というわけで、今回は百回記念特別企画! しましまちゃんねるの名前にかけて島巡りをしていくよーーー!」
島巡り? どういうこと? というコメントが流れる中、もしかして後ろのやつが、というコメントが見えてきた。
「さてさて、みんなもチラチラ見えて気になってると思うけど、その島巡り、とっておきのもので巡っていくんだよ! って、もう見えちゃってるか! ばばーん! そう、なんとなんと、この日のために貯めに貯めて飛行機をチャーターしちゃったんだよ!」
マジかw、嘘だろw、となかなかのリアクションに思わずニヤリと笑ってしまいそうになる。
「みんなが心配なのもわかるよ。でも大丈夫! 今回借りたのはチョー格安の飛行機だからね! しかもチョー優秀な運転AI付きだから、チョー安全! ではさっそく! 飛行機に乗り込んで出発するよーー!……あ、ちょっと電波悪くなって、飛び飛びになっちゃったら、ごめんね」
そう言って、アタシは飛行機に乗り込んだ。
――そして飛行場を出て、数十分後。
AIのナビによると今はイバラキ上空を飛行機が飛んでいるらしい。
「最初の島はどんな場所なのかな。みんなはどんな場所がいいと思う?」
そんなとりとめのない会話をリスナーさんたちと繰り返していると、なにか焦げ臭い匂いが漂ってきた。
「あれれ、なんの匂いだろ? それになんだか窓の外黒い煙が上がってるけど、どこか火事なのかな?」
そんなことを言っていると、エンジン見てエンジンブーン、というコメントが流れてきていた。
「エンジン? ……うわあ、すごいよ、見て! エンジンが燃えてる! チョーカッコイイ!」
カメラでその様子を撮って配信に乗せる。
きっとみんな喜んで見てくれてるだろうな、と思ってたけど……早く逃げて、パラシュート、ってコメントの嵐になっていた。
「え? こういう演出じゃないの? 逃げるって言われても、ここ空だしなー。AIさん、どうすればいい?」
と、アタシがAIさんに声をかけるが――
「ピーガガガガガ……」
「ありゃりゃ、AIさんの調子が悪いみたい。まあ、こんな日もあるよねー」
コメントには本当に大丈夫?と心配するものが流れてくるけど、アタシは全然気にしていなかった。
「そうだ、ちょっと絵が寂しくなってきたら運転席に座ってみよっか? ダイジョーブ、ダイジョーブ。ハンドルは握らないよ、だって免許持ってないもん」
アタシの席から移動して運転席に移る。
思ったとおり、ここからの絵はとびきりグーッド。
「ほら見て、運転席からの景色ってすごいね。景色がどんどん流れていくし、落ちてく感じ最高じゃない?」
飛行機が落ちていく、落ちていく、落ちて……。
「あれ、もう着陸?」
そう思った次の瞬間、飛行機はダイナミックに着陸した。
――聞こえてくるさざ波の音で目が覚める。
いつの間に眠ってしまっていたのか、横になっていた身体を起こす。
「う、うーん……あれ? なにしてたんだっけ?」
辺りを見回すとまったく見覚えがないどこかの浜辺。
「確か、飛行機に乗っていたはずなんだけどなー」
そう思って、改めて周りを見てみると、そこには胴体が真っ二つに割れた飛行機が煙を上げて転がっていた。
「ま、まさか、飛行機が墜落した!? な、な……」
なんて決定的瞬間を配信しちゃったの、アタシ!?
すごい、これは再生数バク上がりの予感!
アタシは近くに落ちていたカメラを確認すると、配信が止まってしまっていることに気づく。
慌てて中身を確認すると、なんとか不時着する直前までは配信ができていたようでホッとした。
「うーん……アタシ、もしかして遭難しちゃった?」
人の気配はまったくしないし、誰かが住んでるような家も見当たらない。これはつまり……。
「遭難はしちゃったけど動画のネタになりそうだし、まいっか! とりあえず、島を探索しなきゃ!」
飛行機が不時着した無人島。
アタシは今、その中を一人で果敢に探索していた!
「うん、動画の詳細にはこんな感じの文章を入れればいいかな」
カメラで動画を撮りながら、アタシは他に誰かいないかを確かめるため、島を探索している。
あまり大きな島では無いようで、一時間も歩いていないのに、島の反対側についていた。
「うーん、誰もいないな。本当に無人島なのかも」
反対側へ来る途中、家はもちろん、誰かとすれ違うことすらなかった。
ここは本当に無人島なのかもしれない。
そう思いながら、浜辺を見渡していると、奇妙な植物の葉っぱが生えているのが見えた。
「あ、これなんだか食べれそう。偉い人が茹でればなんでも食べられるって言ってたし、平気だよねー!」
持って帰ろうと、植物を引っこ抜こうとするけど、なかなか固くて抜くことができない。
「こんのおおお!」
思いっきり体重をかけると、植物が抜けた勢いで尻もちをついてしまう。
「いたた……でも、食料とったどー!」
高らかに手に持った植物を掲げると、視界に入ってきたのは植物とは言い難いなにかだった。
「チュー?」
「なにこれー!?」
アタシが引っこ抜いた謎の植物。
それは島で独自の進化を遂げた、よく分からない生物だったのだ。
「よくわかんないけど、これ生きてるのかな?」
「チューチュー!」
「チューって鳴くなら、これねずみさんだね!」
「チュチュー!」
「あれ、首振ってるってことは違うの? じゃあ……チューチューなくから君たちは今日からチューピー!」
「チュー♪」
「ハハ、気にいってくれたみたい!」
掲げたチューピーを下に降ろすと、アタシの足元をくるくる回り始める。
「なんだろ? ……は!? これ噂の刷り込みってやつだ! アタシ、この子の親になっちゃったかも!」
チューチューと鳴きながら、相変わらずアタシの足元にいるチューピー。
間違いなくこれは刷り込みされちゃった感じだ。
「ん? あの葉っぱもチューピーと同じような……よし、あれも引っこ抜こう!」
そこからは早かった。アタシは次から次へとチューピーを引っこ抜いては、次を引っこ抜き。
チューピーたちも何故か引っこ抜くのを手伝ってくれて、その数はどんどん増えていった。
「うん! このあたりにいたのはこれで全部だね!」
アタシの足元にチューチューと鳴くチューピーが三十匹いて、それぞれ色が違うみたい。
「赤に黄色、青……うーん、そのままだとかっこ悪いから、いい名前をあげたいな」
「チュー?」
「決めた! 赤がマゼンタ、青はシアン、黄色は……イエローでいいや!」
「チュチュー!」
「気にいってくれたみたい。これにけってーい!」
そして、その中でも特別なチューピーが一匹いる。
他の子は葉っぱなのに、なぜか花を咲かせていた。
「チュッチュ」
「君だけ花が咲いてるんだね! じゃあ、君にだけ特別に名前をあげようかな!」
「チュー!」
「と思ったけど面倒だし、花咲(はなさか)チューピーで!」
「チュチュ!?」
「それじゃあ、仲間もできたことだし。森探索に向けて、しゅっぱーつ!」
アタシは動画を撮りながら、チューピーたちの先陣を切って森の中へどんどん進んでいく。
「みんなも声あげてー! 元気よく行こうよー!」
「チュー!」
意気揚々と森の中へ入ってきたのはいいが、ちょうどいいネタになるようなものは転がっていない。
なにかこう、起きたほうがいいんだけど。
「そうだ! なにかで見たことがあるけど、こういう木って蹴るとモノが落ちてくるんだよね!」
「チュチュ!?」
「ちゃいやあああ!」
アタシは近くにあった木に向かってドロップキックを叩き込む。
すると、木は大きく揺れ、上から立派な木製の椅子が降ってきた。
「見て見て、すごーい! 木の上から椅子が降ってきたよー!」
「チュー!」
「きっと誰かが空から捨てていったんだね。でも、おかげでたくさん家具が手に入るかも!」
このままたくさんの家具を手に入れようと、アタシは次々と木を蹴っていく。
すると、次々とテーブルや、ベッド、缶詰やお菓子と盛りだくさん。
お金も降ってきたけど、ここじゃ役に立たないな。
「これを持って帰れば快適に過ごせるねー!」
「チュー!」
「みんな、運ぶの手伝ってー!」
「チュッチュー!」
チューピーたちは落っこちてきた物を器用に数匹で協力しながら、持ち上げる。
たくさん仲間になってくれたおかげで、たくさんの家具も簡単に運べて便利だな。
「よーし、帰るよー!」
「チューチュー!」
とにかく、これでアタシたちの家を作らなくちゃね。
こんなに種類があるなら、適当に屋根になるような場所を作れば、快適に過ごせるかも。
「アタシのレイアウトセンスを爆発させてあげる!」
ついに完成したマイハウス。
考えに考えたこのレイアウトはしっかりと動画に収めてある。
でもこれで満足、というわけにはいかず、引き続き遭難生活中のアタシとチューピーたち。
狼煙を上げて助けを呼ぼうとしたり、浜辺にSOSを書いてみたり、通りがかった船に手を振ったりしたよ。
でも、どれも効果なし。
というか、絵的に映えないからそのへんの下りは全部カットで。
「助けこないねー。こういうのって本当に誰も見つけてくれないんだー」
アタシもこの島の生活に慣れてきて、もうみんな達人レベル。
なんとか島とか言って、この島をアタシたちで開拓していくのもありかもしれない。
視聴率どれくらい取れるかな。
「それにしても、ここ来てからだいぶ経つなー」
そう言いながら、木に掘られた正の字に一画を付け加える。
完成してるのが一つと、途中のが三つだから、ここに来て八日くらい経ってるってことだよね。
「火を起こすのも慣れてきたね。ほら、見ててー!」
そう言って、チューピーたちに見えるよう、アタシは手持ちの道具でぱぱっと火の種を使って焚き火を作る。
「ほら! なにかの本で火の起こし方を見たんだけどあれを覚えててよかったー!」
「チュチュー!」
植物っぽいから火を怖がるかと思ったけど、そんなことはなくて、近場で暖を取るくらいなら平気みたい。
アタシの行動にコメントするのはチューピーだけ。
全部動画は撮ってるけど、やっぱり生の反応を見たいな。
「あー、生配信したいよー!」
カメラで撮影ができても、配信をするためにはネットにつながらなきゃ意味がない。
「はぁ……こんな無人島でそんなことができるわけないよねー。何度見たって圏外のままだし」
そう思いながら、スマホを見てみる。
相変わらずアンテナが一本しか立っていない。
「……え? あ、アンテナが立ってる!?」
見間違いかと思ってもう一度、確認してみると、間違いなく圏外ではなく、アンテナの表示が出ていた。
つまりここには電波が来ているということ。
「や、やったよー! ほら、見て見て! ちゃんと電波が入ってる。これで配信できる! やったーー!」
「チュー?」
あまりの嬉しさに画面をチューピーに見せたけど、なにを見せられているのかわからない、といった感じで首を傾げている。
「とにかく、これで配信ができる。早く準備しよ!」
カメラで画面を確認しながら、ちょうど家とチューピーたちが映るように調整していく。
逸る気持ちを抑えながら、久しぶりの配信に向けて準備を整えた。
「よーし、これでいける!」
配信用のアプリを立ち上げて、アタシはカメラの前に立ち、配信ボタンを押した。
「みんなー、やっほーーー! 本当に久しぶりー! シマッチだよー!」
配信開始と同時にどんどんリスナーたちが集まってくる。そして、無事だったんだ、心配してたよ、などのコメントが溢れるように流れ出す。
「心配掛けちゃってごめんねー! アタシはこの通り元気いっぱいだよーーー!」
よかった、などの安堵のコメントが流れる中、その植物はなに? というコメントも流れてくる。
「今は島でサバイバル生活をやってるんだけど。な、なんと、この島で仲間ができました! この子たちでーす!」
バーンと、アタシは足元にいるチューピーたちをカメラを操作して、アップで映す。
「この子たちはチューピーっていうんだよー。みんなよろしくねー!」
「チューチュー!」
「紹介も終わったところで、今日はアタシのサバイバル生活をみんなに届けたいと思いまーす! あっ、そうそう。この島ってなんだか電波が入りにくいみたいで、配信途切れちゃうかもしれないけど、そこは許してねー!」
やっとできた生配信にいつもよりテンションアップで進めていく。
アタシがやることに全部コメントが返ってくる、こんなに嬉しいことはない。
「ちょっと長くなったけど、今日の配信はここまでにしようかな。みんなが心配してくれてたのが分かって、嬉しかったよー!」
「明日も配信するから、みんな見に来て! それじゃまたねー! ほら、チューピーたちも!」
「チューチュー!」
アタシはチューピーたちとカメラに手を振りながら、スマホを操作して配信を止める。
長くなってしまったけど、やりたくてもやれなかった配信が久しぶりにできて、超大満足だった。
「はあ、この配信をやりきったあとの充実感! たまんなーーーい! 超イイネ! サイコー!」
「チュチュー!」
チューピーたちも楽しかったのか、はしゃいでいるように見える。
新しい配信の相棒もできたし、これから登録者数がぐんぐん上がっていくに違いない。
今から明日の配信が楽しみで仕方なかった。
アタシたちの生活は食料や物にも恵まれていた。
それになにより、配信もできる状況というのはアタシにとってなにも不満はなかった。
そう、今日この日までは……。
「……この中に犯人がいる!」
アタシはチューピーたちを集めて、緊急会議を行っていた。もちろん、配信中。
「仲間を疑うなんてこと、アタシはしたくない。でも、これ事実なんだよね」
コメントはなんだなんだと、今なにが起きているのか気になってしょうがない様子。
アタシはコメントを確認しながら、いつも食料を入れていた袋を取り出す。
「今朝、食料の残りを確認しようとしたら中身がなくなっていたんだよね……」
深刻な雰囲気にチューピーもいつもよりおとなしい。
「この島にはアタシたち以外、誰もいない……つまり、犯人はこの中にいる!」
ビシッ! とここ一番のキメ顔でキメ台詞を放つ。
今アタシは最高にかっこいいに違いない。
チューピーたちの表情もいつもより強張っているように見える。
このまま犯人を見つけよう……と思ったところで、コメントにとある一文を見つけてしまった。
「え? チューピーってご飯食べるのか?」
言われてみれば確かにチューピーたちはお水さえあげていれば、満足そうにしていた。
というか、今までなにかを食べている姿なんて見たことがない。
「そ、そんな、この中に犯人がいないということは、この島のどこかに誰かがいるってこと!?」
今まで考えたことなかったが、広くない島とはいえ、どこかに誰かが隠れるには十分ではある。
つまり、ここにはアタシの知らない誰かがいるということだ。
「よし! みんなで犯人を探しに行こう!」
「チューチュー!」
アタシが森へ行こうとすると、花咲チューピーがアタシのズボンの裾を引っ張り始める。
「アタシを止めようとしてくれてるの? ありがと、でもアタシは行かなきゃいけないの!」
「チュー!」
違う、というふうに首を振る花咲チューピー。
すると数匹の花咲チューピーが一つの袋をアタシのところへ持ってくる。
「あれ、その袋……って、これ食料が入ってる!? すごい、どこで見つけてきたの! これで食糧問題解決だよー!」
「チュチュ!?」
「というか、花咲いてるチューピーって一匹だった気がするけど……まあいっか。植物なんだから花も咲くよね!」
「チュチュー……」
「チューピーが食料を見つけてきてくれたみたい。これでなんとかなるよ。心配してくれたみんな、ありがとー!」
いや違う、そうじゃないとコメントが流れてくる。
なにが違うんだろう、食料が見つかったんだから、喜ぶところだと思うんだけど。
食料の袋間違えてたんじゃ、というコメントもある。
「え? アタシが食料の袋を間違えてた? またまたー、そんなことあるわけないじゃーん!」
と思ったけど、チューピーたちが持ってきた袋には昨日まで入っていた食料と同じものが入っている。
これは間違いない。
「つ、つまり、犯人は……チューピー! そう、袋の場所をたくみに入れ替えてアタシを混乱させようとしたんだね!」
「チュチュー!」
「もー、いつのまに配信慣れしちゃったの。アタシにネタを提供してくれるなんて!」
「チュー!」
「ちょっとお騒がせ配信になっちゃったけど、チューピーたちは初心者だから、みんな大目に見てあげてねー! さあ、食料も戻ってきたし、ご飯にしよー!」
誰かと一緒に配信するときはこういうトラブルはつきものだよね。
でも、チューピーには先輩ドウブツューバーとして、いろいろ仕込む必要があるかも。
「次の配信までに勉強しようね!」
「チュー……」
サバイバル生活から二週間が過ぎた。
助けは当然のように来ず、配信と動画の数だけがどんどん増えていく。
当然、サバイバル生活で絵になる配信なんて限られていて、そろそろネタが乏しくなってきていた。
これは新しいネタが必要になってくる。
……そこでアタシは考えた。
「アタシ、この島を脱出しようと思うの!」
「チュチュ?」
「島からの脱出といえば? そう、イカダだね! というわけで、今日はイカダ作りをしていくよー!」
「チュー?」
「イカダを作るにはまずは丸太が必要だよね。みんな、丸太を探しに行くよー!」
森の中に木はたくさんあるから丸太もたくさんあるに違いない。それに重たくても運んでくれるチューピーがいれば、なんとでもなる。
とにかく、丸太を見つけなきゃ。
「丸太を探しに、レッツゴー!」
「チュー!」
……と、でかけてみたけど丸太なんて見つからない。
「こんなに木があるのになんで丸太がないのー!?」
ささっと丸太を確保してイカダを作る予定だったのにこんなの想定していなかった。
このままじゃ、イカダ作りの配信ができない。
「みんな、どうしよー! 丸太が見つからない! これじゃあ、最高のイカダが作れないよー!」
なんとかコメントの知恵を借りようとみんなに助けを求める。
すると、木を切ればいいじゃないかというコメントがちらほらと流れてきた。
「えー!? で、でも、切っちゃっていいの? そんな映像を配信しちゃってBANされないかなー?」
最近はそういう規制も厳しいって聞くからちょっと怖くもある。
でも、コメントでそれくらいなら大丈夫というものが多数流れてきていた。
「みんなのコメント信じるからね! チューピー、さっき木を蹴って手に入れたノコギリで木を切るよ!」
「チュチュー!」
アタシたち、主にチューピーが頑張ってくれたお陰でイカダを作るだけの丸太はすぐに確保できた。
「これだけあれば、アタシたち全員で乗れるイカダを作れるね。大人数だから大きいの作らなきゃ!」
「チュー?」
あとはこれを浜辺に運んで組み立てるだけ。
「みんな! 丸太は持ったかなー! よーし、浜辺までいくよー!」
チューピーたちが丸太を難なく持ち上げる姿は本当に頼もしい。
コメントもチューピー頑張ってー、と応援コメントが次々と流れてくる。
「ほんとに頼もしい相棒を持てて幸せだなー!」
アタシもチューピーたちの先導をしつつ、応援を続けた。
シマッチも頑張れ、ってコメントも来てるけど、アタシは応援を頑張ると決めたから、これでオッケー。
「さあ、相棒たち。もう一踏ん張り、頑張ろうね!」
「チューチュー!」
やっと手に入れた丸太。それを使ってこの島を脱出するためのイカダを作ることになった。
もちろん、イカダの作り方なんて知らないから、ネットで調べながら作るんだけど。
まあ、道具も揃えてあるし、みんなで協力すればすぐできるよね。
そして、材料を運び終えたアタシたちは早速、チューピーたちと力を合わせてイカダを作っていく。
でも、そんなに簡単な話ではなかった。
「このロープどうやって結べばいいの!? 難しすぎるよー!」
「チュー……」
「ごめんね、みんな。さっきから映像ほとんど動いてないみたいに見えるけど、結ぶのチョー大変なんだー」
こうしたほうがいい、というコメントを参考にしながら進めているけど、これが全然うまくいかない。
「なになに……チューピーにもやらせてみたら? どうなんだろう、できる?」
「チュー!」
チューピーがロープを持つと器用に結び始め……うん、さすがにできないか。
「チュー……」
「あとちょっとだったよ、もう一回やってみよ!」
「チュー!」
ああでもない、こうでもないと言いながらイカダ作りを進めていく。
その間もリスナーさんたちからのコメントが流れて、応援コメントやアドバイスも飛び交う。
四苦八苦しながらも、リスナーとチューピーたちの力を借りて、アタシはついにやり遂げた。
「や、やったー、イカダの完成だー! みんな、見えてる? アタシたちが作ったイカダだよー!」
完成したイカダを前にものすごい達成感に包まれる。
あとはこれでこの島を脱出するだけ。食料と水を運べばそれでオッケーのはず。
最近はチューピーのファンも増えてきたから、アタシのチャンネルもまだまだ伸びるはず。
「島から出たあともやることがたくさんあるし、楽しみだなー」
そして、とうとう島から脱出する時がきた。
みんなで作ったイカダはちゃんと海に浮かんだし、ちょこっとだけ動かしたけど、沈む気配はない。
旅に必要なものも入れたし、あとは出港するだけだ。
「出発するときは動画にしようかな。島から出ていく絵がほしいし、一回イカダを出したらカメラを回収して……」
島からの脱出なんていう、最高の絵を撮ろうと思い、アタシはさっそく録画を開始した。
「ついにこの瞬間が来たよー! これからイカダに乗って、この島から脱出するぞー!」
「食料もチューピー用の水も積み込んだし準備万端。あとは出港するだけ! さあ、行くよ。チューピー、イカダに乗り込めー!」
そう声をかけるが、チューピーたちはいつものようなリアクションを返してくれない。
それどころか、イカダに乗ろうとすらしなかった。
「あれ? どうしたの、なんだか元気がないね?」
仕方ないからチューピーを抱えてイカダに乗せようとするけど――
「チュチュ!?」
「う、うわあ!?」
チューピーが暴れて、すぐに振りほどかれてしまう。
「え? な、なんで!? あ、イカダが壊れないか心配なんだね。大丈夫、みんなで作ったイカダが壊れるわけないよ。ほら!」
アタシは海に浮かべたイカダの上で何度もジャンプをして、大丈夫だよアピールをする。
しかし、チューピーたちはイカダへ乗ろうとしない。
「ほ、ほら、早く乗って! 乗らなきゃここから出られないよ!」
何度も何度も呼びかけても、チューピーは動こうとしない。
「もしかして、この島から出られないの?」
イカダも完成してあとは島を出るだけ。
……そのはずだったのに、まさかこんな状況になるなんて思ってもみなかった。
アタシがチューピーたちをイカダに乗せようとしても乗ってくれないどころか抵抗されてしまう。
「どうしよー、なんでそんなに乗りたがらないの?」
「チュー……」
どこか寂しそうにしているチューピーたち。
ここを離れられない理由がなにか……と考えた瞬間、アタシはなんとなくわかった。
「そっか、ここはみんなの家なんだね……」
この島はチューピーたちにとって大切な家なんだ。
だから、出ようとしないし、出たくなかったのかもしれない。
「そっか。本当は一緒に来てほしいけど、ダメだよね……」
チューピーとはここでお別れ。
そう思うと、悲しさと寂しさがこみ上げてくる。
今までここで過ごしてきた日々がどれだけ楽しかったかがわかった。
でも、アタシも家に帰らなきゃいけない。
ここにずっといるわけにはいかないんだよね。
「ねえ、チューピー。そのカメラ、使い方わかる?」
「チュチュ!」
チューピーが答えると、アタシの真似をしているのかカメラを操作して、録画を始めた。
「うん。使い方がわかるなら、それみんなにあげる! 大切に使ってね!」
「チュー?」
「だからね、今度アタシがこの島に遊びに来るまで、たくさんの動画を撮っておいて」
「今度来たとき、アタシとみんなのチャンネルを作って、アタシたちで配信やるんだからねー!」
チューピーたちならきっと面白い動画を撮るに違いない、そう思った。
それにもうチャンネルの名前は考えてある。
きっと、チューピーたちも喜んでくれるはず。
「そうだ! アタシが出発するところ撮って! このまま生配信しちゃうから!」
アタシはスマホを操作して、ライブ用のアプリを立ち上げる。これでチューピーたちが撮っている姿が見れるはず。
「みんな、配信見えてるかな? 今日はちょっと特別な配信をするよ。な、なんと、今日のカメラマンはチューピーたちなんだー!」
すぐにリスナーが増え、ついにカメラマンになったかチューピー頑張れ、というコメントが流れ始める。
「ちょっと映像が揺れちゃうけどご愛嬌ってことで」
「チュチュー!」
「それで今日はもう一つお知らせがあるの。イカダが完成して島を出ることになったけど、チューピーたちは一緒に来られないんだ……ここがみんなのお家だから仕方ないよね……」
お別れなのかー、とリスナーたちもチューピーとの別れを寂しがっているみたい。
「でも、アタシは帰らなきゃいけないから……これから出発するね。チューピー、イカダを押して!」
「チュー……」
アタシはチューピーたちにお願いしてイカダを押してもらう。イカダは海に浮かび、アタシはオールを漕いでだんだんと島から離れていく。
「ちゃんと撮れてるかな。チューピーたちは初心者だから撮れてなくても仕方ないよね……」
アタシはチューピーたちがどうカメラで撮っているか確認しようとするけど、なんだか視界がぼやけて映像が見えない。
「あはは、ダメだなー。配信中に泣いちゃうなんて、こんなの放送事故だよ……」
だが、ドウブツューバーたるもの、配信してるのに泣いてるだけなんて絶対にダメだ。
アタシは顔を上げて、泣きながらチューピーたちに全力で手を振る。
すると、綿のようなものが飛んでくるのが見えた。
「これって……」
それは、チューピーたちがいる方向から飛んでくる。
「なんか、たんぽぽの綿みたいできれい……そっか、みんながアタシを見送ってくれてるんだね!」
「チューチューチュー!」
「絶対に、また会いに来るからー!」
チューピーたちも小さな手をブンブンと振り回しながら答えてくれている。
アタシは絶対にまた来る。
チューピーたちと配信をするために。
それから島を脱出したアタシはイカダで漂流している中、通りがかった船に助けられた。
そこでアタシは今まで撮りためてきた動画を上げながら、動画に寄せられたコメントを見ていく。
チューピーたちとの別れが寂しい、また一緒に配信してほしい、といったコメントが多くて、なんだか自分のことみたいに嬉しくなったのを覚えてる。
シマッチなんか落ち着いたかも、なんてコメントもあったけど、島の生活でアタシも成長したのかな。
「あっ、このコメント、イイヨが多いなー!」
そこにはこう書かれていた。
『てか、遭難してたんなら配信で助け呼べばよかったんじゃねw』
島を脱出してから数日後――
アタシは無人島から配信を続けた猛者として、ドウブツューバーの中でもかなり有名人になっている。
あれからあの島を探そうとしたけど、地図にも載っていない無人島を探すのは無理だと言われて半ば諦めていた。
でも、ある日、いつものように配信をしていると、とあるコメントが流れてくる。
『前にいったPSRって島でチューピーっぽい植物を見たけど、あれって本物かな』
――そして、アタシは今この場所にやって来た。
「ヤホー、みんな元気かなーー! シマッチとチューピーのしまちゅーちゃんねる、はっじめるよーーー!!」
「チュー!」