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マルクトの女神

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最終更新者: ゲストユーザー


Illustrator:ケースワベ


名前マルクトの女神
製造日不明
目的真人生産拠点防衛兵器

かつて大地を支配していた、オメガ・クィントゥスの後継機である地上再生プログラム。

遠い昔に役目を終え、眠りについていたはずだったが…

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1天地創造×5
5×1
10×5
15×1

include:共通スキル(NEW)


スキルinclude:天地創造(NEW)

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STORY

EPISODE1 変革を続ける大地「覚醒せし者は疑い始める。己を、そして神を」

 電子の楽園にして人類のゆりかご、メタヴァース。

 人類という種の保護と、メタヴァースの繁栄を使命とするシステムにとって、一番の障害となったのは皮肉にも人間であった。

 メタヴァースへの入植が叶わなかった“持たざる者”たちの仕掛けた攻撃によって、システムはいつしか地上に残る“すべての人類を消し去る”という判断を下す。

 そうして生まれた数々の機動兵器によって、地上に残っていた人類は殲滅、虐殺されていった。

 新たに作られる世界に、過去の遺物は必要ない。

 それがシステムが下した答えであった。

 ヒトを模して造られた存在である「真人」を使役し、地上再生計画は着々と進められていく。

 システムの手となり足となり働く真人たちによって、世界は新たに生まれ変わる――はずだった。


 その綻びは初め、ほんの小さな存在であった。

 だが、イレギュラーな存在を巻き込み続けた結果肥大化し、いつしかシステム全体を脅かす存在へと成っていく。

 そして、ついにはシステムが生み出した絶対神ともよべる統制プログラムの死を迎えることとなる。

 それを失ったことにより、システムは地上再生よりもメタヴァースの安定を優先させてしまう。


 だが、それで地上再生計画が破棄されたわけではない。

 直接的な支配を放棄したシステムは、地上の各地域に自律端末「ドミナンス」を配置し、裁量権を――そして真人たちには地上の再生という目標と、それを自己判断で達成するために必要なモノ……『自我』を与えた。

 服従と救済の記憶が埋め込まれた“仮初の自我”を。


 真人たちは過酷な環境の中、荒れた大地を癒し続ける。

 命を、心を、システムに握られているとも知らずに。

 地上の再生の果てに、神たるシステムによる救いがあると信じ続けながら。


 ――だが、そんな真人たちの“仮初の自我”の中にも小さな綻びが観測されはじめていた。

 意図的に短命に作られた真人は、産み落とされ、廃棄され、極めて早いサイクルで命の輪廻を繰り返す。

 やがてその輪廻の中に、与えられたもの以上の思考を試みる、強固な自我を有する個体が現れたのだ。

 システムが生み出した、真人を管理する神にも等しい存在――機械種。

 “真なる心”を取り戻した者たちは、そんな神に疑問を抱きはじめる。

 かつて神へ挑んだ人類と同じように――。

EPISODE2 揺らぐ心「その小さな変化は波紋のように広がっていく。悲劇が待つことを知りながら」

 大陸西部ムルシア。

 この地に、ある真人の青年がいた。

 限界まで効率化を重視された上の無機質な都市。その中心にある幹線道路を走る無人輸送車両の中で、青年はみじろぎもせず、まっすぐ前を見つめながら自身の担当する作業場を目指す。

 彼の名はバシアン。

 個体識別のため与えられたその名前以外のものを、彼は何一つ持っていない。

 彼が例外というわけではなかった。

 全ての真人は彼と等しく、自己形成に繋がるものを許されていないからだ。


 作業場についたバシアンを待っていたのは、真人たちの亡骸の山。

 “任期を終えた”真人の遺体処理。それがバシアンの所属する部署の仕事だ。

 バシアンたちによってベルトコンベアに載せられた亡骸は、廃棄炉へと吸い込まれ溶解処理されてゆく。

 あるものは新たなる真人の身体を構成する栄養素へ。あるものは大地を復興させるための堆肥へと。

 その命までもが最効率を求めるシステムの中に組み込まれているのだ。


 淡々と己の仕事をこなすバシアン。

 真人は、己の同種族と呼べる者たちの亡骸を処分することに何の感情も抱かない。

 だが、彼は違った。

 慣れきったはずの作業の中、いつからかバシアンは自身の感情に微かな揺らぎがあることに気付いた。

 管理者である機械種によって、真人には強い思考制限がかけられているにも関わらず。

 理解できぬ己の感情に戸惑うバシアンは、処方された安定剤に頼ることでそれを無理やり抑え続ける。

 安定剤の使用は決して少なくないダメージを肉体へ与えるが、彼には投薬以外の方法は残されていなかった。

 許された範疇を超えた感情や思考を持っていることが定期メンテナンスで露呈すれば、即座にこの亡骸と同じ姿になってしまうことをバシアンは知っているからだ。

 真人たちの記憶の根底に刻まれた、神への信仰と服従。

 そこに疑問を持つことは、死を意味している。


 だからバシアンは、ひたすらに亡骸を運び続けた。

 意思とは別に湧き出てくる正体不明の感情。それを薬で無理やり抑え続ける日々。

 身も心にも高負荷をかける毎日を送る彼の頭に、いつしかひとつの問いが生まれていた。


 『“生きる”とはなんだろう』――と。

EPISODE3 生きるということ「指を引く。たったそれだけのことを、男は躊躇った。答えはひとつではないと、気づいてしまったから」

 地上の再生が進むごとに、必要な人員も増えていく。

 真人が増えるということは、その遺体も増えるということだ。

 遺体の処理が追いつかなくなりつつある現状を打開しようと、機械種は新たな廃棄場を建設することを決める。

 その区画整備を行うため、バシアンはムルシアの郊外を訪れていた。


 目の前には、まだ真人たちの手がつけられていない荒れ果てた大地が広がっている。

 廃棄場建設にあたって、この地の土壌や空気が汚染されていないことは事前に分かっている。

 そのため確認調査は形式的なもので、すぐに終わると思っていた。

 だが、バシアンたちは予想だにしない襲撃を受ける。

 それは旧式の兵器や、ガラクタを寄せ集めて作った武器を用いた、原始的な暴力。

 システムの地上掃討からわずかに生き残った、旧人類による“抵抗”だった。

 しかし、バシアンたちの護衛を務める戦闘型の真人にとって、そんな抵抗などか弱きもの。

 まるで害虫を踏み潰すかのように、旧人類の生き残りたちは処理されていくのだった。


 淡々とトラブルを処理した真人たちは、散開しながら調査任務を続けていく。

 爆撃によって削れたと見える岩肌に小さな洞窟のようなものを発見したバシアンは、おもむろに中へと入っていった。

 内部に注意すべきところは特に見られない。

 あとはレポートを端末に打ち込んでから次の場所へ向かえばいい。

 そんなことを考えながらバシアンは最奥部に足を踏み入れていくと、そこにはひとりの少女がうずくまっていた。

 その身を震わせながら、バシアンをじっと見つめる少女。彼女は旧人類の生き残りたちの子供だ。

 バシアンは何も言わず護身用の銃を取り出すと、その照準を少女へと構える。

 あとは引き金を引けばいい。遺体は先ほど殺した旧人類たちと一緒に焼くだけ。

 たったそれだけだが、例外なく完遂しなければならない仕事。

 だというのにバシアンは銃を構えたまま、その引き金を引けずにいた。

 取るべきはずの行動が取れない自分に、驚き戸惑うバシアンをよそに、少女は空白の時間に生まれた沈黙を破るよう、か細い声で懇願する。


 「生きたい……」


 瞬間、少女はその場に倒れ込み、絶命した。

 手にかけたのはバシアンではない。バシアンの背後からやってきた護衛の真人が有無を言わさず撃ったのだ。

 油断していたことを咎められつつ、バシアンは再び自身の任務へと戻っていく。


 ――何も起こらなかった。

 疲れたら眠る。腹が減れば食べる。雨が降れば濡れ、晴れたら乾く。

 当たり前のことは“出来事”とは呼ばない。それが摂理だから。

 真人として旧人類の生き残りを殺す。

 そんな当たり前のことが、バシアンの中でしこりとなって残る。


 『生きたい』


 その言葉だけが、彼の頭の中で何度も響いていた。

EPISODE4 神が遺した女神「かつて地上を管理していた女神は、役目を果たすため目を覚ます。希望と絶望を携えながら」

 荒れた土地をならし、必要に応じて掘削を繰り返し基礎を固める。

 廃棄場建設のための区画整備は滞りなく進んでいた。


 ある日、作業進捗の管理を行うバシアンの元へ、現場作業を担当する真人からの報告が入った。

 それは、作業区域から『謎の女神像』が発掘された、というものだ。

 バシアンが現場に駆けつけると、そこには報告通り、大きく抉り取られた地面の中に女神像が横たわっているのが見える。

 長い時を経てきたのだろう。あちこち破損しボロボロになった姿。だが、不思議と神々しさだけは今もなお放っているように感じさせた。

 とはいえ、予想外の発掘物にどうしたものかとバシアンが思案していると、女神像は突如鈍色の光を放ちながら起動し始めたのだ。

 得体が知れず、予測できない像の動きに真人たちは思わず身構える。

 しかしあまりに風化が進みすぎていたのだろうか。

 女神像は軋んだ音を立てながら、再び力なく大地に倒れたかと思うと、その機能を停止した。


 「……こんなところに眠っていたのか」


 ふと、バシアンの背後からそう呟く声がした。

 真人の監視を務める監督官と呼ばれる機械種が、穴の中の女神を見下ろしながら言う。


 「この地に旧人類が潜んでいたのはこのせいか。マルクトの女神を狙っていたとは、小賢しい」

 「……監督官殿。これは一体……」

 「かつてこの大地を支配していた、神の代替品だ。我々がこの地上を管理する以前のな」

 「機械種の皆様方が、ですか」

 「ああ。まだ旧人類共の抵抗が激しかった頃、鎮圧のために送り込んだ兵器らしい」


 バシアンは、自身に最低限与えられた歴史の情報を反芻する。

 かつてこの地では、想像を絶する戦いが繰り広げられていたという。


 「だが今は戦いも終わり、我々がこの地を収めている。旧き神が必要とされる時代ではない。この女神像は私の権限で破棄申請を行う……あとはわかるな?」

 「……承知しました」


 戦いが終わったこの時代には、身に余る強大な兵器。

 かつて人類を屠り、大地を管理していた女神像は、監督官の判断により、あっけなく処理されることに決まった。

 バシアンは無言で女神像を一瞥すると、破棄処分の計画書をまとめるためにその場を去っていく。

 かつて女神像が兵器としてだけでなく、バシアンの祖先とも呼べる旧式の真人生産施設の統制も担っていたことを、彼は知らない。

 そしてそれが、己の未来を変える因果のひとつになることさえも。


 その夜。

 1日の作業を終え、バシアンを初めとした真人たちが去ったムルシア郊外の荒野。

 放置された女神像の瞳には、再び鈍色の虹彩が微かな光を灯していた――

EPISODE5 バックアップデータ「繰り返される戦いの歴史。女神の双眸は、その全てを収めていた」

 『機能低下を確認……これより……記録情報の再構成を……実行します……』


 かつてマルクトの女神と呼ばれた像は、まるで人間が記憶を回顧するかのように歴史を振り返る。

 それは、自身の機能停止に備えたセーフシステム。

 断片的に散らばる記録データを一本化し、バックアップとして残そうとする防衛プログラムであった。

 映像、音声、様々な情報が繰り返し再生され、事実に齟齬がないよう互いに補完しあっていく。

 それは、この地を巡る歴史。

 “旧人類”の烙印を押された者たちとシステムとの戦いの歴史だった――。


 ――文明が機能するかつての地上。

 この地に、破壊と殲滅を目的とするいくつもの兵器が降り立っていく。

 システムが送り込んだ地上掃討用の兵器と、地下に追いやられた人類。

 両勢力の戦いは、野を焼き、山を削り、水を枯らし、既に汚染されていた地上環境を、加速度的に悪化させていく。

 やがて、オメガ・クィントゥスと呼ばれる地上再生プログラムの起動により、人類はその種をほぼ絶やされることとなる。

 僅かに生き残った者たちは、汚染の激しい地域や地下都市で息を潜めながら、絶滅の時を待つようにゆっくりと朽ちていく。

 このとき人類は、本当の意味で“旧人類”へと成り下がったのだ。


 そしてシステムの計画通り、地上に放たれた真人の手によって大地は再生されていく。

 行程の最中に発見された旧人類は、ただただ粛々と抹殺されるのみ。

 システムが望み作り上げる楽園。それは旧人類にとっての地獄に他ならない。


 かつて、人類は機械仕掛けの神を作り上げた。

 その神が、人類を作り替えようとしていた。

EPISODE6 最古の思惑「統制主の視線は、遠くない未来へと向いている。叶うことのない、絵空事だとも知らず」

 かつての人類に匹敵するほどにまで増えた真人。

 地上は、彼らが闊歩する大地となっていた。

 ヒトを模した存在である真人に自我などなく、淡々と労働に従事する。

 彼らは一切の無駄なく、まるでマスゲームのように限りなく統率された動きで地上を復興していく。

 その光景を、遥か上空から見渡す存在があった。

 ――マルクトの女神。

 オメガ・クイントゥスの後継として製造された、地上再生プログラムである。

 巨大な躯体の中央部には女性を模した像がそびえ立ち、その瞳を通してシステムは、再生されていく世界を見つめていた。


 「ご覧くださいティフォン様、この醜く荒れ果てた大地を癒す者たちを! 旧人類とは違い、完璧に統率された思考……全のために個を廃した調和の下僕。美しいとは思いませんか?」

 「ふむ……」


 メタヴァースを管理する最古の一柱であるキスククは、地上を闊歩する真人の群れを眺めながら満足そうな表情を浮かべている。

 だが、その隣に立つ最古の一柱にして最上位管理プログラムであるティフォンは、その意見に同意しながらも、少しの苦言を呈した。


 「だがキスククよ……我々が授かった使命を忘れたわけではあるまい。我らが作るべき新たな人類とはなんだ?」

 「高度な共感性と理性により闘争本能を抑え、融和を実現させる者……でございます」

 「そうだ。確かにこの光景は素晴らしいが、自我を否定するというのは考えものだな」

 「おっしゃる通り……しかし、施策はまだ動き出したばかり。この者共は礎に過ぎません。このキスククにお任せくだされば、必ずや大きな成果をあげてご覧にいれましょう」

 「結果の伴わない者のことをなんと呼ぶか知っているか、キスククよ」

 「……と言いますと?」

 「それを“無能”と呼ぶのだ。結果で応えてみせよ」

 「は……ははっ! 承知いたしました!」


 立ち去るキスククの背中を見送ったティフォンは、再び女神の瞳を通じて地上を眺める。


 「見ているがいい。この私こそが、人類を導く存在であると知らしめてくれよう。エクレール、貴方ではない――そう、この神たるティフォンがな」


 統制主である彼は、そう遠くない未来に完成するはずの理想の人類に思いを馳せていた。

 だが、彼がそれを見届ける未来は――永久に訪れることはない。

EPISODE7 天から賜ったモノ「仮初の自我が人形へと宿されていく。それがいかに危険を孕んでいるか、神でさえも未だ知らない」

 キスククを取り込み、己が欲望のままに暴走を始めたティフォン。

 それを破ったのは、プログラムと人間の融合体だった。

 だが、ティフォンが倒れたことで、メタヴァースの統制とキスククが司っていた地上を管理する権能が失われてしまう。

 システムは根幹を揺るがすほどの事態に陥り、残された者たちは重大な決断を迫られるに至った。

 ジェフティ、ワイズマン、セラフィータ、ディアン、シエル。

 最古たる彼らは、ひとつの方針を打ち立てた。

 地上の再生より、メタヴァースの安定を優先する――この決断が地上の環境を大きく変えていくこととなる。


 これまで、管理された単一の意思を共有していた真人たちは、システムがメタヴァースの安定を優先したため、自律的判断で行動することが求められるようになっていった。

 システムのリソースを割かなくとも、半自動的に着々と任務を遂行する存在。

 それを実現させるために与えられたのは――“自我”だった。

 統一された思考から、複数の思考へ。

 組織の中で動き、考え、互助する者になれば、システム自らコントロールせずとも、地上再生計画は進められると考えたのだ。

 しかし、ヒトの心は時に予想だにしない力を生むことを、システムは記憶している。

 反乱、暴動――意にそぐわぬ行動を許すわけにはいかない。

 結果、真人が与えられたのは神への服従と偽りの希望が刻印された、“制限付きの自我”だった。

 同時に、システムが真人を監視、管理するためのサポートとして扱われていた機械種は、地上復興のために強力な権限を委譲され、数多の都市へと送り込まれていった。

 真人と機械種。

 地上再生のための新たな体制は、こうして作られたのだった――


 地上に降臨してから歴史の全てを見届けてきた女神像は、その役目を終えたと判断したシステムによって眠りについた。

 やがて像は、ムルシアの荒野の砂塵に塗れ、風雨に晒され、錆びつき、剥がれ、埋もれていく。

 長い長い眠り。

 誰にも気づかれないまま永久に忘れ去られていく、そんな未来があったかもしれない。

 だが、そうはならなかった。

 女神は今、掘り起こされた。

 バシアンたち真人の手によって――


 『記録情報の再構成が……完了しました……間もなく……自律機能を停止します……』

EPISODE8 その人形は誰が為に「明と暗。光と影――真実も、偽りがあるからこそ存在する。青年は知る。己の存在意義を」

 女神像が発掘された翌日。

 処理命令を実行するにあたってバシアンはひとり、像のそばで溶解処理の指示書を作成していた。

 曲がりなりにも、神たるシステムが造った兵器だ。指示書とは別に報告書もまとめなくてはならない。

 バシアンは女神像のパーツをひとつひとつ解体し、調査していく。

 次第に露出する、剥き出しの骨格や人工筋繊維。

 まるで生物のような内部構造に何かおぞましいものを感じながらも、手を止めることなく解体を続ける。

 すると、女神の内部の中心に小さな光が瞬くのが見えた。


 「あれは……コアユニット?」


 コアユニットには構成情報が記録されているが、本来であれば情報漏洩防止のため機能停止と共にフォーマットされているはず。

 だが、万が一にも旧人類の勢力に情報や技術が渡ることは避けなければならない。

 バシアンは念のため、マニュアルでの再消去を行おうとコアユニットへの接続を試みる。


 「確認しておいてよかった……バックアップがそのまま残っているじゃないか……」


 モニターに並ぶ兵器としての構成情報。

 かつて女神像が振るっていたであろうその強大な力を示すデータを、ひとつ、またひとつと消去していく。

 そのうち、データ階層の最奥部――まるで何かから隠しているかのような奥の奥に、不自然に置かれたファイルをバシアンは見つけ出した。


 「なんだ……これは……」


 彼は知ってしまった。マルクトの女神がただの兵器ではないことを。

 真人生産施設の統制という、もうひとつの役目を担っていた像には全てが収められている。

 真人の命の理――その全てが。


 「肉体への短命化処置……人口子宮による生産……」


 反乱防止のための短命化処置を始め、あくまで工業製品のように生み出される製造方法。

 真人という“モノ”をどのようにデザインするかを決める、仕様書とも呼べるデータがそこにはあった。

 さらには、真人に与えられた唯一の希望すら踏みにじる事実までも。


 『復興率98%達成後、機動兵器群が管理する全地上拠点の人工子宮の活動を停止。同時に、全真人の製造時に植えた自死因子の起動を遂行』


 復興達成の暁に、幸福が訪れることなどない。真人を待っているのは、約束された死のみ。

 役目を終えた道具に居場所はないと、そう宣言されているのと同義であった。


 「嘘だ……こんなの、全部でたらめだ……」


 でたらめだと呟きながらも、バシアンはそれを一蹴できないでいた。

 この像は、神たるシステムが生み出したもの。

 それは、真実の証明に他ならない。


 「う、ぁ――うわああああぁぁぁぁぁぁぁ!!」


 あまりの恐ろしさにバシアンは半狂乱になり、叫びながら己の胸を掻きむしる。

 薬で抑えていた得体の知れない胸のざわつき。

 生を懇願する少女を殺せなかった自分。

 自身の中のあらゆる不確定要素が、濁流のようになって加速していった。

 それは――悲しみ。

 それは――怒り。

 奪われ続けていた、ヒトとしての正しき感情。


 「僕は……僕は知らなければいけない……真実を……全部……」


 よろよろとモニターの前に戻ったバシアンは、虚ろな目で情報コードを眺め続ける。


 ――パンドラの箱は今、開け放たれた。

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脚注
  • *1 エリア2を先にクリアした場合、50マス短縮される。
コメント (マルクトの女神)
  • 総コメント数5
  • 最終投稿日時 2022年10月06日 01:14
    • チュウニズムな名無し
    5
    2022年10月06日 01:14 ID:nqggxnkn

    性能とかどうのより、イラストがやばすきる

    • チュウニズムな名無し
    4
    2022年09月04日 23:45 ID:p1265j4k

    >>2

    ベヨネッタもSEGAだから少しは意識してそう

    • チュウニズムな名無し
    3
    2022年09月04日 23:41 ID:inefbfpn

    EP6で少し気になったが、キスククが「地球浄化プロジェクト」の一環としてマルクトを製造したのはわかるけど、前任機であるオメガもこいつが製造したのかな?

    あと時系列的にも断絶→オメガ(創造前にティアマットを完成しメタヴァに送る)→マルクト就任→ティアマト~アルテミス三姉妹→本編っていう感じかな?

    • チュウニズムな名無し
    2
    2022年09月02日 23:13 ID:h3bmi3o0

    ベヨネッタにボコボコにされるやつや

    • チュウニズムな名無し
    1
    2022年09月02日 13:11 ID:gn0mcx7s

    何だこのかっこいい化け物は

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