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ラトーナ・ヘイズ

最終更新日時 :
1人が閲覧中
作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


通常秩序の離反者

Illustrator:コダマ


名前ラトーナ・ヘイズ
年齢23歳
職業国家安全保障局所属
身分上級執行官
  • 2021年1月21日追加
  • PARADISE ep.I マップ5クリアで入手。<終了済>
  • 入手方法:2022/10/13~ カードメイカーの「CHUNITHM PARADISE」ガチャで入手。
  • 対応楽曲は「Yume no hajimari」。
  • 専用スキル「ヴァーテックス・レイ」を装備することで「秩序の離反者 ラトーナ」へと名前とグラフィックが変化する。

国家安全保障局に所属する誇り高き執行官。

市民、そしてを守るため、日々危険な任務へと赴く。

スキル

RANKスキル
1ジャッジメント
5
10ヴァーテックス・レイ
15

include:共通スキル


  • ジャッジメント [HARD]
  • 該当マップ最初の汎用即死系スキルとして登場することが多い。強制終了のリスクと共に大きなゲージ増加率を得る。主にゲージ6本を狙う時に使われる。所有者3名以上いる場合、育てれば7本狙いも不可能ではない。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
  • PARADISE ep.Iマップ5(PARADISE時点で累計505マス)クリア
  • AIRバージョンで仕様変更はされていない。所有者は増えた。PLUS以前は理論値近くでなければゲージ6本に届かなかったため、5本を安定して狙うスキルとして使われていた。
    ※STAR PLUSで弱体化された、という噂が流れていたようですが、仕様変更されていません。
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+1
あり+5
PARADISE
(~2021/8/4)
無し+1
あり+7
CRYSTAL無し+1
あり+7
AMAZON無し+3
あり+7
STAR+以前
GRADE効果
共通MISS判定20回で強制終了
初期値ゲージ上昇UP (195%)
+1〃 (200%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
+2〃 (205%)
+3〃 (210%)
+4〃 (215%)
+5〃 (220%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+6〃 (225%)
+7〃 (230%)
理論値:120000(6本+18000/24k)[+1]
理論値:126000(7本+0/26k)[+3]
理論値:132000(7本+6000/26k)[+5]
理論値:138000(7本+12000/26k)[+7]

所有キャラ【 ブリランテ / シリウス / オールドブルー / ラトーナ (全員1,5) 】


  • ヴァーテックス・レイ [ABSOLUTE] ※専用スキル
  • 破滅への謀略の亜種。精度が高ければ初期値から8本が可能。GRADE[+1]のとき、意図的にカウントを調整することで9本+AJは理論上可能だが、そこまでするとアルテマヴォルテックスと同じリスクを背負ってしまう。
  • 強制終了条件が同じで、JUSTICE以下が40回未満のときの効果が同じ汎用スキルに英霊の魂がある。
    ヴァーテックス・レイは強制終了とゲージ上昇UPの効果が消滅するタイミングが一致するので、使用感を変えることなくゲージの安定感を増やしたいなら選択肢に入るか。
GRADE効果
共通JUSTICE以下でカウント [-1]
[0]で強制終了
(※初期カウント50)
初期値ゲージ上昇UP (255%)
カウント[10]以下でさらに
ゲージ上昇UP (300%)
+1〃 (265%)

〃(310%)
参考理論値:159000(8本+7000/28k)
[条件:カウント[11]以上]

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ランクテーブル

12345
スキルEP.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 クロスロード「戦いの終着点を知る者などどこにもいない。この道がどこに続くかなんて、知らないように」

 人類の進化――それがもたらすものは、決して輝かしい未来ばかりではない。

 もはや何がきっかけだったのかさえ忘れてしまう程、長く続く激しい戦争。

 戦争による世界各地での急速な軍事力の拡大は、技術発展に副次的に貢献したが、それが幸福をもたらしたわけではなかった。

 進化と引き換えに、地球環境は取り返しの付かない程醜く汚染されていく。

 死の大地は確実に地球を蝕んでいき、気づけば地球は“生命の楽園”と呼ぶには程遠い星となっていた。

 それに伴い、人類に“短命化”という遺伝子異常が顕著に表れはじめる。

 進化の果てに迎える未来がどのような形になるのか。


 その岐路に立たされてから、半世紀の時が過ぎていた。

 

 長く続く戦争は、大地だけでなく国家をも衰退させる。

 弱体した国家になり替わり、人々の生活を支えたのは“兵器屋”である企業だった。

 やがて、国と国が争っていた戦争は、国家と企業の戦いへと変貌していく。

 そしてその結末は、国家の完全なる形骸化と、企業による支配体制の確立というものであった。

 実質的に戦いに敗れ、古き権力体制のみが残された国家。

 それは、やがて人類が地上を捨てる前の瞬きのような。

 短い時代の出来事であった。

EPISODE2 守護の象徴「子供の頃から大切なものを守る力が欲しかった。だから、今の仕事は私の夢そのものなの」

 国家になり替わって実質的に地球を支配し始めた企業、その潤沢な資本と最先端の技術を享受する人類。

 企業の手で世界のルールがより合理的に作り変えられていく中、各地では不可解な事件が続発していた。

 時代の転換期には多少の混乱がつきものといえ、その発生件数は異常な数であった。


 「また子供が失踪しただと……クソッ、いまだに手がかりさえ掴めないとはな」

 「はい……その上、担当していたラケルまで行方不明に……」

 「これは神隠しなんかじゃない、どこかに必ず犯人がいるはずだ……ラトーナ・ヘイズ、只今の時刻をもって前任ラケルの任を引き継ぎ、事件の調査を命じる」

 「はっ!」


 国家に残された権力のひとつである、市民の治安を守る国家安全保障局。

 そこに所属する若き執行官ラトーナ・ヘイズは、新たな任務に燃えていた。

 半年程前から中枢都市で相次ぐ、少年少女を狙った失踪事件。

 犯行件数に比べ不自然な程情報が集まらないこの事件を、ラトーナの同僚であるラケルは捜査チームから離れ単独で追っていた。だが、そのラケルまでもが行方不明となっている。

 不安に怯える市民を安心させるためにも、必ず犯人の尻尾を掴んでみせる。

 ラトーナは、そう決意していた。


 「ただいまぁ」

 「おかえりなさい、ラトーナおばちゃん!」


 1日の仕事を終えて帰宅したラトーナに、幼い少女が飛びついた。


 「おばちゃん……じゃなくて、お姉さんでしょ。セーレ」

 「今日ね、みんなの顔を絵に描いたの! ほら、おばちゃんもいるよ!」

 「また……まあいいわ。ありがとう、よく描けてるわね」


 幼少からの夢であった国家安全保障局の執行官となったラトーナは、初年度より中枢都市の管轄に配属される事となる。

 中枢都市には以前より姉夫婦の一家が暮らしていたため、こうして下宿させてもらっているのだった。


 「あら、おかえりなさい。夕食はどうする?」

 「ただいま、姉さん。食事か……今日はいいや」

 「しっかり食べなきゃダメじゃない。ただでさえ体力勝負のお仕事なのに」

 「お昼を摂るのが遅かっただけから、心配しないで」


 笑顔で答えたが、それは強がりだった。

 失踪事件を担当しているのはラトーナひとりではないが、これ程大きな事件を任されるのは初めての事。

 端的にいうと、ラトーナは緊張していた。


 「それにしても、ラトーナが本当に執行官になったなんて。夢って叶うものなのね」

 「姉さんってば。そのセリフ何回言うのよ。それに、これでも主席で入局してるんだけど……」

 「主席かどうかなんて関係ないわ。ねえラトーナ、危険を感じたらすぐに逃げるのよ。お仕事なんて関係ない。死んでしまったら終わりだもの」

 「……危険と分かって就いた仕事だから、逃げる

なんて出来ないよ。でも、絶対死なないから。

安心して」


 自身を案じてくれる姉の言葉に、胸が温かくなる。

 同時に、一連の事件で行方不明になった人達の事を思う。

 彼らにも家族がいたかもしれない。その家族はいったいどういう気持ちで帰りを待ち続けているのだろうか。


 「おばちゃん、ヒーローごっこしよ! 私が正義の味方で、おばちゃんが悪の科学者ね!」


 感傷に浸っていたラトーナに、突然セーレがのしかかった。

 わんぱくすぎた行動に、母からのお小言が飛ぶ。


 「ちょっとセーレ! いきなり飛びかかるのはやめなさいって言ってるでしょ! ラトーナが困ってるじゃない」

 「ええー、だって遊びたいんだもん……」

 「まったくこの子は本当にお転婆なんだから。ラトーナの小さい頃そっくり」


 言われて、ラトーナは昔の自分を思い返す。

 確かに小さい頃は無茶ばかりして、しょっちゅう怪我をしていた。

 そう答えようとして姉を見ると、先程までとは打って変わって真剣な眼差しがラトーナに向けられていた。


 「……ねえ、ラトーナ。最近“もしも、将来この子が危険な目にあったり争いに巻き込まれたりしたらどうしよう”なんて事ばかり考えちゃうの。世界はずっと不安定だし、これ以上ひどい未来が待っていたら、って……」


 その言葉に、堂々とした面持ちでラトーナは答える。

 それは、家族として。

 そして国家安全保障局の執行官としての、心からの言葉だった。


 「私が守るよ。セーレも、姉さんも、お義兄さんも。みんなみんな、必ず守るから」

EPISODE3 遺した物と残した者「ラケルがここまで掴んでいたなんて……。だとすると彼女は……いえ、まだ諦めるのは早いわ」

 犯行現場、目撃情報、痕跡。何1つ残されない謎の失踪事件。

 手がかりがあまりに少ないため、できる事といえば聞き込みなどの地道な調査くらいだが、調査を続けてもやはりそれらしい成果はあげられない。

 せめてラケルが何か掴んでいてくれれば――。

 そう考えたラトーナは両手をかざしてHUD〈ヘッドアップディスプレイ〉を立ち上げると、ラケルのブリーフィングフォルダにアクセスを試みる。

 しかし、ロックがかかっていて中を見る事は出来ず、エラーを示すメッセージがラトーナの瞳に反射するだけだった。


 「執行官の情報データは本来ロックがかけられず、共有できるはずなのに……」


 闇雲に聞き込みをしても効果は薄い。こうしている間にも次々と被害者が増えていく。

 何か効率的な捜査方法はないかと局のデスクで思考を巡らせるラトーナの元に、同僚の執行官がやってきた。


 「よう、ラトーナ。お前に手紙が届いてるぜ。俺、“手紙”なんて時代がかったモノ生まれて初めて見たよ」


 そう言って手渡されたのは、ひとつの封筒。

 差出人の名前はない。

 訝しみながらも封を開けると、便箋が一枚入っていた。


 『1025

  332-76』


 そこに記されていたのは羅列された数字が2行だけ。

 2行目の数字にラトーナはピンと来る。332は国家安全保障局の局員共通登録ナンバーだ。

 データベースにアクセスすると、数字はラケルの登録ナンバーだった事が判明した。

 すぐさまラトーナは、手紙を渡してくれた同僚に声をかける。


 「ねえ、ラケルの住居ってどこだったか知ってる?」

 「あー、あいつは局の宿舎暮らしだったはずだぜ。でも、そんな事聞いてどうすんだ?」

 「ううん、なんでもないの。ありがとう」


 それだけ言うと、飛び出していくラトーナ。

 ――これはラケルからのメッセージだ。

 確信するラトーナは、ラケルの住んでいた宿舎へと向かった。


 「1025……ここね」


 『1025』とだけ書かれたプレートが貼り付けられた扉。

 その扉の前に立つラトーナは銃の引き金に指をかけながら、ゆっくりとドアノブを回す。


 (開いている……)


 警戒しながら侵入するも、中には誰もいない。

 銃をしまったラトーナは部屋中を物色すると、デスクの天板の裏に数字が彫られている事に気付く。

 その数字をラケルのブリーフィングフォルダへ入力すると、ロックの外れる効果音が小さく鳴った。


 (ここまでするなんて……ラケルは何を恐れていたの?)


 訝しむラトーナであったが、フォルダの中身を読むと“そこまでする理由”をすぐに理解する。

 ラケルが残した資料には、衝撃的な情報が記されていた。


 少年少女の失踪事件。その黒幕は、世界を牛耳る企業連合体の中心である巨大企業『KHD』。

 KHDは人類救済を名目に少年少女を攫い、凶悪な人体実験を繰り返している。

 その実行部隊は、今や国軍とその立場が入れ替わった企業の軍部が行っている。

 ラケルの残した資料を要約すると、こう記されていた。


 三文ゴシップのような荒唐無稽な内容であったが、あれ程までに警戒していたラケルの行動を鑑みると笑う事は出来ない。

 ラトーナは散文的に残された他のメモもかき集めると自分のフォルダにコピーし、資料をまとめ始める。

 発生現場、被害者のプロフィール、KHDの動き――。

 パズルが埋まるかのように、何かが見え始めたその時。ラトーナの元へ上司からのコールが入った。


 「ラトーナか。すまんが、今すぐ捜査を中止してくれ」

 「なぜですか?」

 「“上からのお達し”。言えるのはそれだけだ」


 ――しまった!

 慌てて自分の管理するデータフォルダを開くが遅かった。

 全てのファイルは閲覧規制が施され、ラトーナ自身もアクセスを禁じられてしまっている。


 (これ程の早さで危険なデータを察知し、超上位権限でアクセス規制を行使できる存在……)


 荒唐無稽だった話に、俄然現実感が湧いてくる。

 一連の事象は、そう思わせる程の不自然さに満ちていた。

EPISODE4 開けてはいけない箱「私の推理が正しかったかは、まだ分からない。でもこの場所は危険だって……本能で分かる」

 黒幕がいかに強大な存在であろうが、一連の重大犯罪を見逃すわけにはいかない。

 捜査中止を命じられたはずのラトーナはそれを無視し、中枢都市のスラム地区へと単独で潜入する。


 「資料にはもうアクセスできないけれど、頭の中に入ってる。中枢都市全体に及ぶ事件の中、逆に発生件数が異様に少ないスラム……必ず何かあるわ」


 スラムでは国民登録を済ませていない無戸籍児が多く、データベースで把握しきれないのが現状だ。

 そのため、一見すると被害が少ないように見えるが、被害が表面化していないだけではないのか。そうラトーナは踏んでいてた。


 中枢都市の開発計画から取り残された、前時代の面影を色濃く残す細い道を歩いていると、ふと路地の壁の一部がぼんやりと緑色に光った。


 (非常用誘導灯……危険警報なんて出ていないのに……)


 誘導灯は、ラトーナの進むペースに合わせて次々と道の先を照らしていく。


 (私をどこかへ導いているかのよう……)


 やがて運搬用コンテナボックスの前までやってくると、誘導灯の光は消えた。

 ラトーナは恐る恐るコンテナの扉を開くと、そこには荷物などひとつもなく、くり抜かれた床から続く地下への階段があった。

 ゆっくりと階段を降りて先を伺うと、先に続く暗い通路が広がっている。

 どこまで続いているのかはわからないが、足音の反射からそれなりに長い事が判明できた。

 ラトーナは、単独潜入の叱責を受ける覚悟で局の上司へとコールする。


 「スラム地区で不審な場所を発見。一連の事件と関係があるものと思われます。座標を送るので応援お願いします」

 「……ふん、命令違反の処罰は後だ。すぐに送る。いいか、応援が到着するまでそこを動くんじゃないぞ」


 ――通信を終えたその時。

 暗い通路の先で、闇の中に子供の影がチラリと見えた。

 ラトーナは驚きながらも、優しく声をかける。


 「こんなところでどうしたの? ここは危ないから、そばにいらっしゃい」


 子供の影は返事をせず、道の先へと駆け出してしまう。


 「ち、ちょっと待って! そっちへ行っちゃダメよ!」


 この場所は、危険な香りがする。

 何か事件が起こる前に子供を保護しなくては。

 ラトーナは、子供を追って走り出した。

 応援など、待ってはいられない。

EPISODE5 鈍色の身体「そんな……人の身体を一撃でなんて……! あれが人間? 人智を超えているわ!」

 子供の姿を追って通路を抜けると、そこには広い部屋があった。

 充満する冷えた空気と、そこらじゅうを無機質な機械で覆われたその部屋は、何かの実験施設を思わせる。


 「どこへ行ったの? 聞こえていたら返事をしてちょうだい!」


 問いかけに答える者はいない。

 辺りに散乱する様々な処置装置には、ドス黒く変色した血がこびりついている。

 漂う血の匂いに、ラトーナはむせ返りそうになる。


 (この部屋は一体……それにあの子は……? 私は……本当に子供の姿を見たの?)


 異様な空気が包む部屋の調査を続けると、ベッドの影に遺体が転がっているのを発見した。

 血の気の引いた顔色の遺体は腐敗が進んでおり、皮膚が削がれ剥き出しになった半身は――機械化されている。


 「動くな!!」


 背後から突然そう浴びせられ、ビクリと体を震わせるラトーナ。

 ゆっくりと振り返ると、同僚の執行官が銃を構えていた。


 「なんだ、ラトーナか……」

 「驚いた。早かったわね……って、あなた一人なの?」

 「俺は近くを巡回していたからな。応援部隊もすぐに到着する」

 「分かったわ。この部屋、やはり“何か”ある。例の失踪事件と関係しているはず」

 「ああ、ひでえ匂いだぜ……胃の中の昼飯が逆流しそう――」


 瞬間、執行官の頭部が下顎だけ残して吹き飛んだ。

 背後には、鈍い輝きを放つ機械を纏った身体の大男が立っている。

 その腕に付着しているのは――執行官の脳漿。

 突然の事態にラトーナの思考回路は一瞬停止するが、すぐに気を取り返すと部屋の奥の扉を蹴破った。


 (あの腕力、そしてあの姿……確実に人間じゃない!)


 ゆっくりと追ってくる大男から逃れるようにラトーナは走る。

 不気味な地下施設の、奥の奥へと。

EPISODE6 閃光爆裂「規格外の威力はあの化け物に対して効果はあった。でもこんな力、私じゃ扱いきれない……」

 蟻の巣のように、いくつかに枝分かれした構造の地下施設。

 追っ手から逃げるラトーナが辿り着いたのは、だだっ広い白亜の部屋だった。

 地下施設の最深部。この先に、出口は無い。


 入り口の扉を閉じて鍵をかける。

 一瞬だけほっとしたのも束の間、強烈な死臭が鼻腔を刺激してラトーナは嘔吐しかけてしまう。

 部屋の中には、絶命してからまだ間もないと見られる子供の遺体が、あちこちに散乱していた。


 「ひどい……こんな事……完全に狂ってる……」


 その時、散乱する遺体の中のひとつが、ピクリと身を震わせた。

 恐怖で息を飲むラトーナに、“ソレ”は語りかける。


 「もう……時間がない……子供達を……助け、て……」


 “ソレ”は子供の遺体ではなく、人間を模した造形の、機械の身体をした何かだった。

 ラトーナは、先程の大男が脳裏をよぎり警戒するも、「子供を助けて」という言葉が引っかかり、ゆっくりと歩み寄る。


 「あなたは誰? その身体は……?」


 淡く光る瞳を弱々しく点滅させている“機械の身体”は、震える腕を上げて手にしていた銃をラトーナに渡す。

 ラトーナがそれを受け取ると、途端に“機械の身体”はがっくりとうなだれ、機能を停止させた。


 「こんな銃、市場で見た事ないわ……それに、確かにこの機械は“助けて”って……」


 ラトーナの呟きは、外から扉を叩く轟音で掻き消された。

 もう逃げ道はどこにもない。あの機械の身体を持つ大男の手にかかってしまえば、惨たらしく死ぬ事は間違いないだろう。

 あまりの恐怖にガタガタと震えだす身体を押さえながら、ラトーナは先刻渡された銃を扉に向かって構える。

 すると、突如中空にHUDが起動され、メッセージと共にアナウンスが流れ始める。


 『適応率“優”……禁圧、解除』


 カチリとロックが外れる音がしたと同時に、蹴破られた扉の向こうに大男が姿を現した。

 それを視認したラトーナは、ためらう事なく引き金を引く。

 瞬間、真っ白な光が手元で爆発したかと思うと、ラトーナの身体は後方へ吹き飛び白亜の壁に叩きつけられた。

 あまりの衝撃に肩と手首が砕けたラトーナは、激痛に顔を歪ませながらも現状を確認しようと目を開ける。

 視線の先には、あの大男。その胸に開いた穴には、向こう側の景色が映っている。

 大男はグラグラと身体揺らしバランスを崩すと、ゆっくりと膝をつき完全にその機能を停止させた。


 (なんて……威力なの……)


 危機は回避できたが、自身も甚大なダメージを負ってしまった。

 白濁していく意識を奮い立たせるように、動く方の手で自分の足を叩く。


 (まだダメ……こんな所で……)


 だが、必死の抵抗も虚しく。

 ラトーナは一人意識を失った。

EPISODE7 背中を吊る糸の先「追われる立場になった私は走り出す。行き先なんて……どこにもないけれど」

 目が覚めると、そこは病室だった。

 一定のリズムを刻む心電図の音と、腕に巻かれた包帯。

 痛みはほとんどない。砕けた骨は、再生治療により修復されているようだ。


 ラトーナが目覚めたという知らせを受けてやってきた上司は、その後の顛末を語った。

 応援に駆けつけた安全保障局の突入部隊により施設は確保され、最深部で倒れているラトーナを回収。

 調査の結果、確かにあの場所は非合法な研究施設であった。

 だが、放置されて長い年月が経っており、スラムのゴロツキ共の根城になっていたという。


 「待ってください。では、あの子供の遺体の山と大男は!?」

 「……そんなものはどこにも無かったぞ」

 「私は確かに見たんです! 事実、仲間が一人殺されているんですよ!?」

 「……なあ、ラトーナ。きっと悪い夢でも見たんじゃないか? 崩落に巻き込まれたんだ。まだ錯乱しているんだろう」


 そうなだめる上司の瞳に、光はない。

 「しばらくゆっくり休め」と言い残すと、病室から去っていく。

 何か冷たいものを背筋に感じたラトーナは、傷が完治していない身体のままベッドを抜け出した。

 回収されたラトーナの私物がまとめられたバッグを掴む。

 中には、あの銃も入っている。


 (あれは私の見間違いでも、夢でもない。それは……この銃がここにある事が証明しているわ)


 ――あの上司は何かを隠している。そして、この失踪事件はもっと大きな闇がある。

 そう確信するラトーナが、まずは身支度を整えようと家に帰ると、血相を変えた姉が出迎えた。


 「ああ、ラトーナ! あなたに何があったの!? さっきまでKHDの軍の方があなたを探しにいらっしゃってたのよ!」

 「ッ!?」


 瞬間、ラトーナの脳内シナプスが急激に活性化する。


 ――ラケルの調査記録に書いてあった、“子供の肉体を使った人体実験”。

 あの地下施設にいた、機械の身体を持った何か。

 そして、巨大な権力を持つ企業KHD。


 ――私は“都合の悪いものを見た”存在なんだ……捕まったら確実に消されるだろう。

 ここにいては家族に被害が及んでしまう。すぐに離れないと!


 「……姉さん。きっとすぐに戻るから、心配しないでね」

 「ラトーナ!? 待って、どこに行くの!?」


 姉の声に振り返る事なく、ラトーナは駆けだした。

 KHDの関係者は危険だ。いや、一般市民にも内通者がいるかもしれない。

 人目を避けて街の中を縫うように、ラトーナは走り続ける。

 やがて姉の家から十分な距離が離れた頃。レンガの壁に挟まれた細い裏路地に辿り着いた。

 近くに人の気配はない。

 立ち止まり、息を吐いて呼吸を整えていると、ラトーナの通信端末にコールが入る。

 発信者は――『不明』。

 恐怖と不信感を抱きつつも、ラトーナは通信を許可した。

 じっと押し黙って、こちらから発声する事はしない。相手の出方を見る。

 数巡の間の後に、聞き覚えのある声が警告を発した。


 『今すぐそこから逃げて』


 それは「子供を助けて」とラトーナに銃を託した、あの“機械人”の声だった。

 だがあの時、確実に機能停止――死んだはず。


 ――あなたはどこまで知っているの?

 何から逃げればいいの?


 ラトーナがそう言いかけた時、目の前のレンガ造りの壁が吹き飛んだ。

 鈍く光る機械の身体と、人外の腕力を持った巨躯。

 地下で倒したはずのあの大男が、土埃の中に立っていた。

EPISODE8 権力と逃走「この世界はKHDに支配されている。逃げ場はなくても……私は走り続けてみせるわ」

 「そこから逃げろ」と言われても、一体どこに逃げればいいのか。

 中枢都市の中に、KHDの息がかかってない場所は、そう多くはない。

 再び大男に追われる羽目になったラトーナは、走りながらも中枢都市全体を頭の中でイメージする。

 思い浮かんだのは、自身の職場である国家安全保障局。

 だが、病院で話した上司のあの口ぶり。高い確率で、すでにKHDからの圧がかかっているだろう。


 (でも……いくらKHDとはいえ、局全体を丸め込む事なんて不可能なはず)


 共に任務に当たってきた同僚達。彼等ならきっと自分を保護してくれる。

 そう考えたラトーナは、急転換して進行方向を変えると、最も早く裏路地から抜ける道を選んで走っていく。

 やがて、薄暗い路地を抜けると、太陽にまばゆく照らされる大きな幹線道路が見えた。その道をまっすぐ進めば、安全保障局は目と鼻の先だ。

 だが、ラトーナはすぐに元来た裏路地へと身を隠した。

 片側5車線の大きな道路には、不自然な程走行車が見当たらない。

 先を伺うと、KHDの治安維持部隊が道路を封鎖していた。

 中枢都市の中心を渡す、幹線道路を封鎖する程の事態。

 標的は――ラトーナ・ヘイズ。


 この道はもう使えない。かといって、大男が追ってきている道に引き返すわけにもいかない。

 ラトーナは路地にあるゴミコンテナに足をかけると、思い切り跳躍しビルの非常階段の柵を掴んだ。

 そのままよじ登って2階分程駆け上がると、さらに隣の建物の屋上へと飛び移る。

 屋上からまた別の屋上へ。むき出しになった室外機やパイプを華麗に躱しながら、飛ぶように走る。

 道がないなら飛べばいい。それがラトーナのとった選択であった。


 封鎖された正面を諦め、安全保障局の裏側に続く路地へ。

 本来大回りするルートを、空中から突っ切る形で辿り着いたラトーナ。

 うまく撒けたのか、大男の気配は感じられず、路地の先にKHDの部隊もいない。

 潜り込むなら今――。

 ラトーナが意を決したその時だった。


 ――Rrrrrrrr


 突如、古めかしいコール音がその場に鳴り響く。

 音の出所は、もはや化石扱いされつつある公衆通信端末。

 その構造上、“あちらからコールされる事”は基本的にない。

 明らかにイレギュラーな状況だが、ラトーナの表情に困惑の色はもう無かった。

 ずしりと重量のある受話器を取る。


 『出てくれてありがとう。ラトーナ・ヘイズ』

 「また“あなた”ね。聞きたい事が山程あるのだけど」

 『……残念だけど、それに答える時間はないの。保障局に向かってはダメ。もうすでに奴等の手に落ちているわ』

 「なら、どこへ向かえばいいの。行くなと言うからには何か案があるんでしょうね」

 『これから私が指示する……ああっ、そんな! もうここまで来ていたなんて!!」

 「どうしたの!? 何があっ――」


 言い終える前に感じた、首筋への冷たい感触。

 直後、眼前の視界はドロドロに溶け始め、天地の感覚は曖昧になっていく。

 その場に立つ事さえも苦戦するラトーナの足が、ふわりと宙に浮いたかと思うと、空に浮かぶ地面に叩きつけられる。

 端から見れば転倒しただけなのだが、ラトーナにとっては物理法則が滅茶苦茶になったようにしか感じられない。

 倒れたまま、それ以上身体を動かす事が出来ず、ゆっくりと意識は遠のいていく。

 ラトーナの虚ろな目に最後に映ったのは、機械仕掛けになった何者かの足だけだった。

EPISODE9 メモリーダイブ「刻まれ、剥がされ、折られ、奪われ。壊れる子供……壊れる私……」

 磔にされたラトーナに、医療用機械がゆっくりと近づいてくる。

 丁寧にはがされる皮膚、脊髄、大脳に細い針が当てられると微弱な刺激が加えられ、己の意思とは関係なく身体は笑い、悲しむ。

 機械の力により、様々な感情が思いとは裏腹に湧き上がってゆく。


 『ママ! パパ! 痛いよ!! 助けてぇぇぇぇ!!!!』


 施設の中に響く絶叫。それは、ラトーナのものではない。

 過去に実験を施された、“少女”のものだった。


 ――これは、ラトーナ自身の体験ではない。

 あの地下施設に誘拐された少年少女達が、己の肉体に施された実験の瞬間。その記録を元に作られた擬似現実空間だ。

 ラトーナの頭に取り付けられているHMD〈ヘッドマウントディスプレイ〉が、広く一般的に使われているKHD製の民生品とは比べ物にならない程のリアリティを、ラトーナの脳に直接植えつけていく。

 少年、少女、夥しい数の子供達の断末魔。そして邪悪な人体改造。

 細切れにした身体を補填する機械と掛け合わせ、ブロック遊びをするように命を弄ぶシーンが。

 まるでラトーナが本当に経験した事のように、次から次へと無限に再生されていく。

 トライ、エラー、トライ、エラー、トライ、エラー、エラー、エラー、エラー。

 繰り返される破壊と創造。擬似現実空間の中で、何度も壊される自身の(子供達の)肉体。

 気の遠くなるような地獄の中で、その心までもが壊れてしまいそうになったその時。

 ラトーナは自身の名前を呼ぶ声に気付く。


 「目を覚まして、ラトーナ。ここは擬似現実世界。感じている痛みは、あなたのものじゃないわ」


 女性の声がするが、眼前にはマスクを被った男の研究員が二人だけ。

 女性などどこにもいない。口を動かし声を発しているのは、“ラトーナ自身”だった。


 「今回のは“私の記憶”。自分のデータなら何とかクラッキングできそうだったから、この時を待っていたの。遅くなってごめんなさい」


 ラトーナの脳で再生されるデータに忍び込んだ声の主は、ラトーナの身体を介してコンタクトを取ってきた。

 この語り口をラトーナは知っている。銃を渡し、何度も助言をしてきたあの“機械人”だ。


 「ほら、研究員がせわしなく動き出したでしょう? これから私は“機械の身体”に改造されるはずよ。それが“私の記憶”だから」

 (あなたの……記憶……)


 何に使う物なのかさえ予想も出来ない機材の数々を準備し始める研究員。彼等はラトーナの“独り言”に、誰一人反応しない。

 ここは、あくまでも擬似現実空間であるからだ。再生されている光景はあくまでデータでしかない。


 「こうやって心を壊しながら人体改造するのが奴等のやり方。後々反逆を起こされないためにね。そしてそれは今、“現実世界のあなた”にも施されつつある」


 擬似現実と現実。痛みを始めとする感覚は切り離されて感じる事は出来ないが、今まさにラトーナの機械化が進んでいる最中だと言う。


 「今ならまだ間に合う。あなたの心があなたのものじゃなくなる前ならば。少しの間、私が奴等のプログラムに穴を開けるわ。その隙に目覚めるの」

 (あなたは一体何者なの……?)

 「……私は、もう自分が何だったのか分からないの。完全に壊されてしまったから。ただ使命感だけが亡霊になって、ネットワークの中に生き残ったウイルスのようなもの」

 (使命……)

 「さあ、もう時間がないわ。全身に力を込めて動かしてみて。現実とのリンクは済ませてあるわ。お願い、彼らを止めて……」


 ラトーナは言われた通り力を込める。

 未だ感覚はないが、彼女の言う事を信じて電気信号を脳から全身へと送り続けると、少しずつではあるが全身への触覚が戻り始めた。

 自身の身体が何かに拘束されているらしい事を、触覚だけで理解するラトーナ。

 ラトーナは一息置くと、ラストスパートとばかりに唸り声をあげ、咆哮へと変化させる。

 同時に、目の前にいる擬似現実世界の研究員が零した言葉が微かに聞こえた。


 『成年体とは珍しいな。被験者名は……ラケル・シープ――』


 「ぉぉぉぉぉおおおおおおお!!!!」


 ラトーナの叫びと共に、現実世界の身体を押さえつけていた拘束具がブチブチと切り離されていく。

 意識は現実世界へ完全に戻ってきている。処置台から降り、まっすぐに立つラトーナ。

 彼女は、自分の身体の異変に否が応でも気づかされていた。

 一見すると人の腕と変わらない見た目だが、その中身はすべて置き換えられている。

 胴体は本来の肉体を残してはいるが、あくまでベースに過ぎない。ほとんどの箇所は機械に覆われている。

 “処置”は、終わっていた。


 「私の身体、機械にされてしまったのね……でも――」


 異変を察知した戦闘用の機械人達が次々と雪崩れ込んでくる。

 傍に置いてあった“銃”を手に取ったラトーナは、その集団と対峙して叫ぶ。


 「心はまだ、私の元にある!!」

EPISODE10 一撃に悲しみをこめて「私を恨んでも構わない。もう、救えなかったの。せめて……呪いをこの手で解いてあげるね」

 『音素臨界加速装置……適応率“優”……禁圧、解除』


 ロックが外れたと同時に引き金を引くと、銃から撃ち放たれた光が次々と機械人達に致命傷を与えていく。

 以前は、桁外れた威力を押さえきれず負傷してしまったラトーナだったが、今は反動をその腕で受け止めながら使いこなしていた。


 (やはり、機械化されて身体能力が強化されている。この身体ならば……!)


 ラトーナ相手に機械人では歯が立たないと悟った研究員達は、慌てふためきながら飛び出そうとする。

 部屋の扉に手をかけて表に出た瞬間。突如研究員の身体は肉の塊と化し、廊下の壁にこびりついた。

 入れ違いに部屋へ侵入してきたのは、見慣れたあの大男。

 隣には、半身が改造された小柄な機械人の兵士が立っていた。


 (あれは……あの時の子供……?)


 ラトーナが地下施設へと足を踏み入れるきっかけとなった、子供の影。

 なぜか目の前にいる小柄な機械人と重なって見え、ラトーナは首を振る。


 (あの日、私を導いていたのはもしかして……いえ、今となってはもうどうする事もできないわ。私は、私のやるべき事をするだけだから)


 ラトーナが銃を構える。

 悲しそうに、だが力強く輝くラトーナの瞳に呼応するように、銃はその形態を変化させていく。

 反応した機械人達が走りだす。銃の危険性を味わっているからか、発射される前に片をつけるつもりのようだ。

 だが、それよりも早く銃は応える。


 『適応体検出……禁圧、臨界』


 機械人達も元は罪のない人間だった。

 文字通り、嫌という程その瞬間を見てきたラトーナには分かる。

 だからせめて、精一杯の慈悲の心で――


 「……ごめんね」


 目も開けられない程のまばゆい光が、部屋を、機械人を、施設そのものを包み込む。

 臨界点まで出力を上げた銃が放った光はこの日、KHDの地下実験施設を完全に破壊した――。


 瓦礫を押し除けて、ラトーナは地上に這い上がった。

 この先、己の肉体を隠しながらKHDと戦う。そう決意していたラトーナの眼前に広がっていたのは、変わり果てた中枢都市の姿。

 巨大な人面のように見える異質な兵器が空を埋めつくし、繰り返し地上へ爆撃を続けている。

 あちこちであがる火柱が都市を炎で包み、人々はただひたすらに当てもなく逃げ回っていた。

 そこには、KHDが提唱する“楽園”などどこにもない。


 「何てこと……私は一体どれだけの間拘束されていたの!?」


 ラトーナが囚われている間、地上では歴史の大転換期という言葉では言い表せない程の事件が起こっていた。

 絶望の眼差しで燃える中枢都市を見つめるラトーナ。

 だが、ラトーナには守るべきものがある。混乱から家族を救わなければ。


 「姉さん。約束、守るから」


 そう呟いて、ラトーナは炎の中へと走り出した。

EPISODE11 macchina「約束、守れなかった。だけど諦めてはいない。きっとまた会えるよね。私の大切な家族達」

 あれから数年後。

 断絶の破壊神とオメガ・クィントゥスによって、人類の元へ殲滅という審判が下される。

 まるでビデオゲームのように地球はリセットされ、ごくわずかに生き残った者を除いて人間は地上から消え去った。


 そして、さらに月日は流れ――

 地上には“真人”たる合成人間が闊歩し、いつか来る人類の復活のため、傷ついた大地を再興させようとしている。

 そんな“人ならざる者”の様子を、機械都市の超高層ビルの屋上から見つめる一人の女性の姿があった。


 「真人……KHDが作り出した“機械人”の……成れの果て……」


 ラトーナが戦った機械人は、あくまでもプロトタイプであった。

 機械人を生み出す技術力を基礎とし、先進バイオテクノロジーを複合させた素体にアップデートを繰り返す。

 こうして生まれた合成人間である真人は、今や溢れる程の数が地上で活動している。

 この歴史は一体誰の思惑で動かされているのか。

 全容を、ラトーナは知る由もない。

 だが、地下施設で見た光景は今でも脳裏にこびりついている。

 どんな理由があろうと、ラトーナにとって真人は相容れられるものではない。

 

 人体改造を施されていたラトーナは、あの日落とされた神の鉄槌にも耐え、生き延びていた。

 ラトーナの姉であるアスティア。その家族――ジーン、セーレ。

 3人を見つける事は最後まで出来なかった。

 そして、多くの人間が入植した“メタヴァース”と呼ばれる電子空間に行く事も出来ず、いつ来るかも分からぬ機械の身体の最期を待ち、ラトーナはただ一人孤独に過ごしていた。

 ――否、一人ではなかった。


 『……そろそろ行くんでしょう?』


 ラトーナの腰にぶら下がった銃が問いかける。

 あの日、“亡霊となった機械人”は、ネットワークを介して銃へと乗り移った。

 以来、二人は行動を共にしている。

 大き過ぎる犠牲の元に生まれた忌まわしき真人を滅ぼすため。

 そして、再び家族と再開するために。


 「ええ。もうここに用は無いわ」

 『……今度の人、良い人達だといいわね』

 「こんな世界に生き残ってる人間なんて、どこかおかしい人しかいないと思うけど」


 機械種により大地の片隅へと追い込まれながらも生き残り、息を潜める“古き人類”。

 彼等は“人類と機械との戦い”を引き起こすため、最高のタイミングをジッと伺っている。

 利害の一致するラトーナ達が、彼等に助力するのに理由はいらなかった。


 『長い旅になりそうね』

 「時間だけはあるわ。焦らず行きましょう」


 失った物の多くは、もう取り戻す事はできない。

 だが、どんな状況に置かれても人間としての尊厳を“守り続ける”という、ラトーナの精神。

 その高貴な精神は、絶える事なく脈々と受け継がれていく。

 それは、季節も時も、次元さえも超えた――

 遠く離れた電子の世界まで。

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コメント (ラトーナ・ヘイズ)
  • 総コメント数9
  • 最終投稿日時 2021年02月23日 12:41
    • チュウニズムな名無し
    9
    2021年02月23日 12:41 ID:r190z6y8

    >>1

    正直デスジャの立場が危うい

    パニと同じ伸び方ならこれ以降は鈍化するはず

    • チュウニズムな名無し
    8
    2021年02月16日 03:11 ID:td4sw59f

    セーレにとってのラトーナは叔母にあたるわけか...

    ラトーナ、セーレ、そして恐らく末裔のセラフィナ、この一族は争いに巻き込まれる運命にあるのか...

    • チュウニズムな名無し
    7
    2021年02月06日 11:09 ID:kt85erg7

    ドミネーターにしか見えん

    • チュウニズムな名無し
    6
    2021年02月02日 04:01 ID:tnox6pwb

    ヴァーテックス・レイ+1

    (265% 310% 他は変わらず)

    性能は英霊の魂の完全上位互換。

    ゲージ上限が8本以下の時にjカウントスキルを使いたい場合は英霊の魂が有効なのだが、専用スキルになるとイベントマップでキャラボーナスを付けられないため、用途は英霊よりも限定される。

    • チュウニズムな名無し
    5
    2021年01月25日 23:42 ID:ea847dk5

    断絶の破壊神めちゃくちゃ久しぶりに出てきたな

    • チュウニズムな名無し
    4
    2021年01月23日 23:10 ID:hjp2uzdz

    >>1

    全員揃ったら現実的に狙えますね。7 本。

    • チュウニズムな名無し
    3
    2021年01月22日 08:25 ID:h70q8bz9

    映画版バイオハザードのアリスみたいだな……特に後半

    作品が好きな自分からしてみればラトーナさんの話は所々に連想させられるものが鏤められてあって心が動かされるものがある。キャラクターデザインも最高にかっこいいの極みなので大好きですありがとうございました。

    • チュウニズムな名無し
    2
    2021年01月22日 00:34 ID:sf63twz3

    KHD(コハD)?

    • チュウニズムな名無し
    1
    2021年01月21日 22:57 ID:psfkxvst

    ジャッジメントの強化ですが、+5%が継続されたまま230%まで上がるのを確認しました

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