天王洲 なずな／襲来のシンセ研編

　イロドリミドリのリズムギター担当。

　包み込むように柔らかな雰囲気と暖かな演奏でみんなを支える、イロドリミドリの素敵なお母さん！

　ギタークラフトを営むおうちの影響で培った豊かな感受性の持ち主で、オリジナル曲の作詞などにも活躍。

　悩みや葛藤を抱えるメンバーには優しく寄り添ってその心を解きほぐす、みんなの心のオアシス的存在。

　クリエイティブな感性が豊かで、その対象は手芸・衣装作り・自作で愛用のうさギターのようなものづくりから、落語・コント・お茶の趣味と、至って多彩。

　一方運動は苦手で、動きもおっとりとしているけど、思慮深くて、相手を第一に思う性格の持ち主。

　初め七々瀬と対立してしまった時も真っ先に撫子をかばうなど、軽音全体のお母さんになりつつある？

　夏合宿の帰りの車中でも芹菜に打ち明けた、なずなの思い。

　それは、今使っている思い出深いＵＳＡギターを、卒業の際に軽音部室に寄贈し、置いていくということ。

　軽音同好会の立ち上げの顛末で、部活に入ってくる後輩のことを意識し始めたなずなは、部活として校内に広く演奏を披露する機会が増えれば、今まで体験したことのない音楽に興味を惹かれてくる生徒もいるかも、という考えに至る。

　ＵＳＡギターには、そんな偶然の出会いを大事にしてくれた未来の部員のための一本になって欲しい…と思っているようだ。

　ギタークラフトの技術があるなずなにとって、彼女のギターは世界にこれしかない、お手製の一本。

　そんな一本を部室に残していく、という決心は、なずなの中でどれほどこの部活が大きいか、を示していると言っても、きっと過言ではないだろう。

　ふじばかまちゃん？のラップ、すごかったね…

　本格的な人がラップやってるところ、私生まれて初めて、あんな間近で見たかも。

　滑舌もすごいし、あれって即興でやってるんだよね？

　…で、あの子が触れてた、学園フェスの時の話。

　私も久しぶりに思い出しながら、アンサーしてみようと思って、かれこれ何時間か机に向かってみたけど…

　ラップのリリックって、難しいね…

　内容もそうだけど、伝え方とか、言葉の選び方とか、あとはもちろん、韻の踏み方とかね。

　本格的な人が書いてるみたいにかっこよくするには、ものすご～い色々工夫とか、慣れみたいなものもいるっぽくて。

　私が書くと、リズムダジャレ、みたくなっちゃうし…

　うーん、勉強になります。

　今なんて、もうあんまり時間がかかってしまって、何て言われたかもちょっとうろ覚えになってきちゃった。

　ごめんなさい、もう少し修行に励みます…

　ちょっと聞きたいことがあって、教室を覗いてみたりしたんだけど、カバンや上着もなくて。

　クラスの人に聞いてみたけど、やっぱりお休みしてたみたい。

　そういえばこの間の定例会も、調子が悪いって言って欠席してたもんね。

　七々瀬さん、トレーニングしてる割に体、あんまり強くないのかな。

　本人がどう思ってるか分からないから、詳しく聞いたことはないけど…

　復学したとはいえ、そんなに万全な体調、ってことではないのかも、って。

　…病気とかなら、後に引いちゃうものもあると思うし、七々瀬さんが去年どんな状態だったか…なんて、あまり不躾に知りたいとは思わない。

　ただ、本人が語ってくれないと、励ましたり、支えたり、そんなこともできないから。

　七々瀬さんって、そういうところがね。

　うーん…一匹狼、的？　とでも言えばいいのかな。

　最近はまた軽音も賑やかになったし、みんなと一緒にいることが多いからかな。

　学校から一人で帰る道で、なんだか急に、今までのことを思い出してたのね。

　去年の学園フェスは、バンド始めてすぐだったし…

　今みたいにみんなで集まって曲を作るなんて、やったこともなかったから、少しバタバタしてたよね。

　ハナミナちゃんは、ちょうど今が同じ感じなのかな？って、このところの様子を見てると思うかも。

　今年は仲間もたくさん増えて、その分楽しいこともいっぱいになった気がするよね。

　もちろん、困ることとか悩むことも、もしかすると前より増えたかもだけど。

　今、またみんなで同じ方を向いて、エンジン全開で進めるようになって…

　ふっと後ろを振り返った時に、たくさんの足跡が見えたような気がしたのね。

　不思議と、急に嬉しくなって、涙が出ちゃったな。