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ヨナ・ライゼ

最終更新日時 :
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作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


通常閃光の射手

Illustrator:巌井崚


名前ヨナ・ライゼ
年齢素体年齢21歳
職業衛士(ガーディアン)

イベントinclude:開催日(オリジナルNEW+)

  • 専用スキル「SHOOTING DRiVE」を装備することで「閃光の射手 ヨナ」へと名前とグラフィックが変化する。

衛士として働く女性。

ヨナ・ライゼ【 通常 / ラストバケーション

新たに下された任務は、とある一人の少女の護衛であった。


チュウニペンギン/ボクノリレイションのストーリーによると、ペンデュラム・ライゼの子孫とのこと。

スキル

RANKスキル
1ゲージブースト
5
10SHOOTING DRiVE
15

include:共通スキル


  • ゲージブースト [NORMAL]
  • ゲージ5本狙いの中では特にシンプルな効果のスキル。ただし筐体内だけでは余裕がそれほどない上に入手まで遠い、あるいはノルマが重いので5本狙いは他のスキルの方が良い。長らく6本には届かない状態が続いていたが、AMAZONで6本も不可能ではなくなった。ただし+9以降における増加分は1%なので、AJレベルの精度が必要。おそらく限界突破の証との兼ね合いだと思われる。このスキルで6本取れるなら、他のスキルで6本以上を狙った方が良い。
  • 筐体内の入手方法(2021/9/16時点):
  • PARADISE ep.IIIマップ6(PARADISE LOST時点で累計1130マス)クリア
  • PARADISE ep.VIマップ2(PARADISE LOST時点で累計350マス)クリア
  • AIRバージョンで仕様変更はされていない。PLUS以前からゲージ5本狙いでよく使われるスキルだった。
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+3
あり+7
PARADISE
(~2021/8/4)
無し+3
あり+13
CRYSTAL無し+5
あり+13
AMAZON無し+5
あり+13
STAR+以前
GRADE効果
初期値ゲージ上昇UP (130%)
+1〃 (135%)
+2〃 (140%)
+3〃 (145%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
+4〃 (150%)
+5〃 (155%)
+6〃 (160%)
+7〃 (165%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+8〃 (170%)
+9(171%)
+10(172%)
+11(173%)
+12(174%)
+13(175%)
理論値:87000(5本+7000/22k)[+3]
理論値:93000(5本+13000/22k)[+5]
理論値:99000(5本+19000/22k)[+7]
理論値:103800(6本+1800/24k)[+11]
推定理論値:105000(6本+3000/24k)[+13]

所有キャラ【 シズマ(1,5) / フィーネ(1,5) / ディース / アーリア(1,5) / ヨナ(1,5) / ギデオン(1,5) 】


  • SHOOTING DRiVE [ABSOLUTE] ※専用スキル
  • コンボエクステンド・フォルテに即死効果がついたもの。
  • ボーナス値は+1でもフォルテの+5相当なので、既にフォルテを十分に育成している場合は下位互換に過ぎない。まだフォルテを持っていないプレイヤーにとっては、筐体で入手できる強力なコンボエクステンド系スキルとして有効に使えるだろう。
GRADE効果
共通MISS判定10回で強制終了
初期値250コンボごとにボーナス +12000
+1〃 +12500
ゲージ10本必要条件:3000ノーツ
GRADE・ゲージ本数ごとの必要ノーツ数(発動回数)
GRADE5本6本7本8本9本10本
初期値500
(2)
1000
(4)
1500
(6)
2000
(8)
2500
(10)
3250
(13)
+1500
(2)
1000
(4)
1500
(6)
2000
(8)
2500
(10)
3000
(12)

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ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 いつか現れる救世主「ついに、私たちの前に救世主様が現れた。これで世界は、より良い世界に生まれ変わるんだ」

 ――人から人へと受けつがれる想い。あなたが生きていることが、誰かの存在の証明――


 かつて、この地球を制覇した人類が残したのは、汚染され荒れ果てた大地であった。人類の所業を嘆いた神は、神の尖兵を遣わして人々を罰し、大きすぎる墓標ともいえる煉獄を生み出して、そこに人々を封じたのだ。


 そして、人類なき後、神の手によって造り出された人類の代替物――『真人』。

 彼らは、旧人類種の業によって荒れ果ててしまった大地を癒すために生み出された存在である。

 しかし、汚染された大地での作業はあまりにも過酷であり、多数の真人が耐用年数を迎える前に破棄された。

 彼らの安息の地は、街の中のみ。

 そこだけが耐用年数通りに生きられる場所だった。


 彼らがすがれる希望はひとつだけ。

 いつの日か訪れる、電子の楽園から再生される種。

 その存在が自分たちの望みを叶え、喜びに満ちた世界へと導いてくれるのだと、願っていた。

 その思想を持ったものたちは、穏健派としてイオニアコロニーやエフェスコロニーのような、数々のコロニーを形成した。


 ――それから、幾星霜。


 コロニーの中心にそびえ立つ、苔むした黒い塔。

 それが突如光を放ち、眠りについていた周囲の遺構も呼応するように目覚め始めたのである。

 そして、程なくして、機械種に率いられた12人の少年少女たち――『帰還種』が姿を現したのだ。

 穏健派たちの願いが届いたのかは分からない。

 しかし、その出来事は彼らの想いをより強固なものにするのに十分であった。

EPISODE2 衛士ヨナ「えっ!? 私とギデオンが帰還種様の衛士に? そんな大役、きちんとこなせるかな……」

 帰還種の出現を受け、イオニアコロニーで衛士として働いていたヨナ・ライゼと弟のギデオンは、街を管理する機械種の監督官に呼び出しを受けていた。

 二人に新たな任務が下されるのだ。


 「まさか、私たちが護衛として選ばれるなんて思わなかったね、ギデオン」

 「俺なんてまだ衛士になったばっかだぜ? ただの雑用係に回されるって可能性もあるんじゃないか?」

 「ちょ、ギデオンってば。監督官が聞いたら真に受けちゃうかもしれないでしょ!?」


 そんなやり取りを交わす二人の前に、監督官は一人の少女を連れて姿を現した。

 ヨナは、彼女を一目見て、自分たちとは生まれが違う存在なんだと思い至る。

 真っ白な肌に、銀色の髪。

 心の内側まで見透かすかのような淡い色の瞳。

 それだけではない、言葉にはできない感覚が彼女とは根本的に違うと訴えかけてくるようだった。


 「彼女が12人の帰還種の内の一人、レナ・イシュメイルだ」


 レナはおどおどとした感じで、口を開いた。


 「あ、あの、初めまして。私、レナっていいます。どうぞよろしくお願いしますね」

 「……なんか、思ってたより普通?」

 「な、なんてこと言うのよ!? 怒られても知らないわよっ?」


 レナと呼ばれた少女は、そんな二人のやり取りを、不思議そうに見つめていた。


 「お前たちも知ってることとは思うが、気を引き締めるために、この世界の情勢についてもう一度復習してもらいたい」


 監督官は淡々と語り始める。


 今、この世界を構成しているのは、支配階級である機械種とそれに従う合成人間<真人>だ。

 機械種は彼ら真人を使役し、汚染された大地を癒すために彼らを製造し続けてきたが、その支配力は徐々に失われていった。

 そこで、機械種は個別に行動できるように彼らに自我と感情を与えることとなったが――その結果、機械種を待ち受けていたのは、一部の真人たちによる反抗であった。

 反抗勢力は次第に数を増していき、いつしか自分たちを強硬派<イノベイター>と呼ぶようになる。

 機械種には、もはや強硬派による反抗を穏便に抑え込めるだけの力は残されていなかった。

 各都市の勢力図は、徐々に強硬派によって塗り替えられていく。

 自然発生的に生まれるこの流れを止めるのは難しく、いずれはすべてを呑み込んでしまいかねない状況であった。


 「――そこで、君たちには我々の希望となる彼女を、東の地ペルセスコロニーへと護送し、強硬派の手から護り抜いて欲しいのだ。どうだ、やれるかね?」

 「「はっ! お任せください!」」


 ことが重大であると認識した二人は、緊張の面持ちで監督官からの任務を受託するのであった。

EPISODE3 白き少女「帰還種って、もっと凄い存在なんだと思ってた。でも本当は、私たちと変わらないんだね」

 執務室を出た私たちは、まだ不安そうにしているレナに声をかけた。


 「えっと……私があなたの護衛を担当させてもらう、衛士のヨナです。ヨナって呼んでください」

 「お、俺はギデオン……よろしく頼んます」


 私たちのやり取りを見ていた彼女は、穏やかに微笑んでいる。すると、意を決したように大きく息を吸って、続けた。


 「あ、あのっ。そんなに固くならないでください。もっと気楽だと……嬉しいですっ」


 彼女の真剣な表情がなんだかおかしくて、私は自然と笑いながら彼女の願いに応じていた。


 「そういうの気にするタイプなんだ? じゃあ、レナって呼ばせてもらってもいい?」

 「はいっ!」

 「そんじゃ、俺もそうさせてもらおっかな~」

 「あんたの態度は大して変わってないでしょーが!」

 「あははっ、これからよろしくね、二人共」


 彼女は気恥ずかしそうに挨拶を済ませると、深々と頭を下げた。すると、あまりに深くお辞儀するものだから、白いフードがバフッと頭に覆いかぶさってしまう。


 「あわわっ……?」

 「ぷっ。あははははっ! なんだよそれー」

 「……えへへ」


 レナもそんな自分がおかしかったのか自然と笑い、私もつられて笑いだし、他愛のないことでひとしきり笑い合っていた。


 「はー笑っちゃった。これからよろしくね、レナ」

 「うん、よろしく。ギデオンもよろしくね?」


 そう言って、レナはギデオンに手を差し伸べる。


 「お? おう、よろしくな」

 「ふふ、なーに照れてんのよ」

 「べ! 別に? 照れてねーし!」


 ――新人類って言われるくらいだから、最初は神様みたいな存在だと思っていた。

 だって。

 肌は絹のように美しいし、透き通る瞳を見ているだけで、吸い込まれそうに感じてしまうんだもの。

 でも、実際に言葉を交わしてみると、何も私たちと変わらないんだって、そう思えた。

 それは彼女からしてもそうだったらしい。

 レナ曰く、自分たちは神や救世主ではなく普通の人。

 崇め奉るようなことはしないでほしいそうだ。


 ちょっと拍子抜けしてしまったけど、フランクに接する方が私としてはやりやすい。


 「あ、そうそう。レナ、これから出発するまでの数日間は私たちの家に泊まることになるんだ」

 「そうなの?」

 「うん。それでね、レナには私たちの母さんにも会ってもらいたくて……いいかな?」

 「お母さん……?」


 レナは『お母さん』という単語を何度か呟く。

 そして、言葉の意味をようやく理解したかのようにうなずくと、朗らかに笑って応じてくれた。

EPISODE4 嵐の前のやすらぎ「母さん、私、頑張るね。レナを無事に送り届けてみせるから」

 私たちの家へと向かう道すがら。

 ギデオンはずっと気になっていたことをレナに切り出した。


 「ずっと気になってたんだけどさ、レナはどうやってこの世界にやってきたんだ?」

 「えっと……正直に言うと、あんまり覚えてなくて。気がついたらこの世界で目が覚めてたの」

 「そうだったのか……じゃあさ、レナがいた世界のことを教えてくれよ!」


 レナは「うん」と微笑んで、話を再開する。


 「わたしはエマーグっていう世界で生まれてね。青い空に、どこまでも続く白い雲。そこには空にまで届く光る柱が立ってるんだ」

 「なんだか……お伽話みたいな世界なのね」


 私がそう言うと、レナは首を左右に振った。

 そして、二歩三歩と前に進むと、青い空を見上げて両の手を空へと伸ばす。


 「それはわたしたちの世界だって同じだよ? わたしたちの世界ではこちらの世界のことを、遠い遠い昔の伝承として、語り継いできたの。お伽話に出てきた真実の世界っ! それが今、わたしの目の前に広がっているだなんて……夢のようだよ」


 振り返ったレナは無邪気に笑っていた。


 「わたし、この世界のいろんな景色を、もっともっと見てみたいな!」


 私たちの世界に、こんなにも憧れを抱いている。

 ああ――なんて純粋で美しいのだろう。


 この大地はまだ、清浄なる世界と呼ぶには程遠い。

 大陸には荒廃したままの場所だって沢山ある。

 でも、彼女の笑顔を見ていると、この世界もなんだか素敵なものなのかもしれない、そんな風に思えてきた。

 「……なあ、姉ちゃん」

 「私も、あんたと同じ気持ちよ」


 ――この笑顔を、護りたい。

 私とギデオンはお互いに目配せをすると、力強くうなずいた。


 しばらくして家に着くと、今度は母も交えてお互いの世界について話し合うことになった。

 みんな話に夢中で、時間も忘れてしまう程に。


 「あら、もうこんな時間なのね。今日はもうお終いにして、続きはまた明日にしましょう」

 「そうだね。ギデオン、私は母さんを寝室に連れていくから、レナを私の部屋まで案内してくれる?」

 「オッケー。それじゃレナ、俺についてきて」

 「うん。お母さまもお休みなさい」

 「はい、おやすみなさい」


 私は母さんを寝室にまで連れて行き、母さんの身体をゆっくりとベッドに寝かせた。

 しばらくして寝息を立て始めた母の横顔を撫でる。

 若々しい見た目をしてはいるけど、母さんの身体はもう耐用年数の限界が近い。もって半年にも満たないだろう。

 ふと、母の手を握る。

 感じられるほのかな熱は、生きている証だ。

 それだけで、また明日いつもの笑顔を見せてくれるという希望をくれる。


 「ねえ母さん。私、レナの守護者になれたよ。この世界に流れついてから、ずっと続いてきたライゼ家にこんな大役が回ってくるなんて。これを奇跡っていうのかな?」


 母さんが握り返してくれることはない。

 でもほんの少しだけ、指先が震えていたから――母さんが応えてくれたような、そんな気がした。


 「私とギデオンが、絶対にレナを東の地まで送り届ける。応援しててね、母さん」


 窓から見える月明りを眺めながら、ふと思う。


 「ずっとこのままでいたいよ……母さん……」


 そうしたら、みんなで毎日楽しく過ごせるのに。

 戦争なんてイヤ。イヤだよ……。

EPISODE5 夕暮れよりも、なお朱く「あれ……どうして私の家、こんな……やだよ、母さん……母さん……!」

 レナと一緒に暮らすようになってから数日が経ったある日。

 私たちが護送についての説明を受けに監督官の下を訪れていた時にそれは起こった。


 「ヨナ! お母さまのところに向かおう!」

 「うん、母さんを避難させないと!」


 塔の起動を察知した強硬派が、イオニアコロニーに軍を送り込んできたのだ。


 家が塔から離れていたのは、不幸中の幸い。急いで脱出の準備をして、母さんを護るんだ!


 「ならん。お前たちはすぐにでも連絡艇に乗り込み、このコロニーを脱出するのだ」


 監督官は冷静に、事実を述べる。


 「他の帰還種と衛士たちも、コロニーからの脱出を進めている。お前たちも合流し、急ぎ脱出せよ」


 監督官の分析は正しい。

 比較的平和な営みを続けてきたイオニアコロニーの戦力では、いとも簡単に防衛網を突破されてしまうだろう。

 理屈では分かってる。

 けど!

 そんな、機械みたいに母さんを切り捨てられるわけないじゃない!!


 「レナ! ギデオン! 行くわよ!」

 「はいっ!」

 「おう!」


 私たちは監督官の制止を振り切って、駆けだした。

 今ならまだ間に合うと、そう信じて。

 外に出た時には、戦火は思っていた以上の広がりを見せていた。


 「まさか、もう防衛網が突破されたのか!?」

 「急ぐわよ、みんな!!」


 駆け抜けていく景色は、私たちが知っていた世界は、もうどこにもない。

 遠くからは絶えず発砲音が鳴り響き、その流れ弾を喰らったのか至るところで家屋が燃え盛っている。


 「ひどい……ひどすぎるよ……どうして? どうしてこんなことができるのっ!?」


 涙を隠そうともせず、レナは悲痛な叫び声をあげた。

 レナが泣き崩れてしまうのも無理はない。彼女にはこの光景は辛すぎる。


 「レナ……辛い気持ちは分かるよ。でも今はこらえて私についてきて」

 「ぁ……ヨナ……ヨナ……」

 「ギデオン! レナを背負ってくれる!?」

 「任せろ! ……って、ええぇぇ!?」

 「早くして!」


 ギデオンは少しだけ戸惑った後、


 「わあったよ! レナ、少し我慢しててくれよ!」

 「え? きゃあっ!?」


 レナを背負って立ち上がった。


 「よし! しっかり捕まってろよ、レナ!」 

 「う、うんっ」

 「ギデオン! 駆け抜けるわよ!」

 「ああ!」


 私たちは燃えるイオニアの街をわき目もふらずにひたすら走った。

 焼け焦げたような匂いと、人々の悲鳴が耳に聞こえてくるたびに、胸が締め付けられる。

 ――これが、戦争なんだ……。

 街の中心部を抜けて、ようやく私たちの家がある路地が見えて来た。


 「あと……あと少しよ! ほら! あの角を、曲がれば――」


 母さん、を。

 その言葉を、最後まで言うことはできなかった。


 「あ……ああ……っ」


 目の前に広がる光景は。

 私たちの希望を打ち砕くのに十分だった。

 砲弾の直撃を受けたと思われる私たちの家は、無残に崩れ落ち、夕暮れの空よりも朱く、燃えあがっていた。

 こんな時、私はどうすれば良いの……?


 「かあ、さん……」


 あ……そうだ。

 私、母さんに買物を頼まれてたんだっけ。

 母さんお手製のミートパイを、みんなで食べる約束をしてたもんね。

 うん、そうだよ。

 今行くね、母さん……。


 「――ちゃん! 何やってんだ、姉ちゃんってば!」


 不意に感じた痛み。

 見れば、私の腕をギデオンが必死に引っ張っていた。


 「は、離してよ! ギデオン! 私は、母さんを助けに行かなくちゃいけないの!」

 「絶対に離さねえ! 今行ったら、姉ちゃんまで燃えちまうだろうが!?」


 その時、ふと監督官に渡されていた通信機から、音が響いた。

 銃撃の音。何かが爆ぜる音。

 そして、衛士たちの断末魔の声。


 私は、耳障りな不協和音に反応できないまま、ただ夕闇の空を見つめることしかできなかった。

EPISODE6 混迷の戦場「戦わなくちゃ……戦って、生き残るのよ。私は、この日のために腕を磨いてきたんだから!」

 「姉ちゃん! 姉ちゃんってば!」

 「ギ、ギデオン……?」


 焼け落ちた我が家を茫然と見つめていた私は、ギデオンに体を揺すられて、どうにか正気を取り戻すことができた。


 「ごめん。私、意識がどこかに行っちゃってた」

 「……ったく、しっかりしてくれよな。レナを護るのは姉ちゃんの役目でもあるんだから」


 ギデオンはいつもの調子を装っているけど、その瞳の奥にある「怒り」だけは、隠せていない。


 「そういうあんたは、本当に大丈夫なの?」

 「……大丈夫だよ」


 そう言うと、ギデオンは近くに転がっていた大型バイクへと近づいていく。


 「ギデオン、何するつもり?」

 「姉ちゃん、後のことは頼む」

 「このまま黙って行かすわけないでしょ。あんた、死ぬ気?」

 「俺はッ! 母さんの仇を討ちたい! 少しでも多くあいつらを道連れにしてやるんだッ!」


 このまま放っておいたら、ギデオンは怒りのままに戦って、そして死んでしまう。

 そんなのはイヤだ。


 「離せよ」

 「離さない」

 「姉ちゃんはあいつらが憎くないのか!? 母さんを殺したあいつらが!」

 「憎いわよ! でも、闇雲に突っ込んで死のうとしてるあんたを黙って行かせられない!」

 「じゃあ! 姉ちゃんも――」


 話が過熱しそうになったその時。

 いがみ合っていた私たちを抱きしめるように、レナが飛び込んできた。


 「レ、レナ?」

 「二人とも……落ち着いて……」


 レナは大粒の涙を流しながら、私たちを行かせまいと必死に抱きとめている。


 「今行ったら、絶対に後悔する。二人が永遠に離れ離れになるなんて、わたし、イヤだよ……。お母さまだって、生きていて欲しいって、きっとそう願ってるよ……」


 夢見てきた世界が、レナに牙を剥いて次々に残酷な現実を刻みつけていく。

 だというのに、それでもレナは必死に私たちを説得しようと懸命に訴えかけてくれている。


 「一緒に生きよう? 死ぬなんて……絶対、絶対、許さないから……!」

 「レナ……泣くなって……」

 「もう分かったでしょ、ギデオン。貴方が今すべきことは何なのか」

 「ああ……でも、これだけは言わせてくれ。言わずにはいられねえ」


 ギデオンは小さな声でそうつぶやくと、


 「畜生……畜生畜生畜生ッ! 俺たちだけじゃ何もできない! それが、悔しくて悔しくて堪らねえッ!! 畜生オォォォッ!!」


 夕闇が迫る空に向かって、あらん限りの声で叫んだ。


 「――取り乱して悪かったな」

 「ギデオン、もう、大丈夫?」

 「ああ。ありがとな、レナ。とりあえず……、ここから脱出する方法を考えよう」


 脱出方法を探すといっても、話も聞かずに飛び出してしまった私たちには心当たりがなかった。

 結局、私たちは監督官の指示を仰ごうと通信機から呼びかけてみたんだけど……。


 その直後、ゴアァァァンッ! と地面が揺れるくらいの大きな音が響いた。

 それは、イノベイターが放った砲弾が塔に直撃した音。塔の主柱は破壊され、中腹から真っ二つにへし折れていく。


 「そ、そんな……」

 「どうしよう、ヨナ?」


 頭の中が真っ白で、言葉が出てこない。

 どうしよう。どうすれば、皆を連れてこの危機を脱出できるというの?


 「居たぞ! 帰還種だ!!」


 しまった! もう追いつかれて!?


 「姉ちゃん! もう腹を括って戦うしかない!」

 「でも、私たちじゃどうしようも……」

 「姉ちゃんは優秀だ! じゃなきゃレナの衛士になんて抜擢されない! その銃は飾りかよ!」

 「ヨナなら大丈夫だよ。自分を信じてっ」

 「二人とも……うん、そうだよね」


 腰に背負ったロングバレルの銃「バルディッシュ」を腰溜めに構える。

 腹は決まった。

 私たちは、何がなんでも生き抜いてみせる!


 「ギデオン! 少しの間だけ、耐えられる?」

 「ああ! バリケードなら幾つもあるからな!」


 ――戦う覚悟。

 そうだ。私は、衛士なんだ。

 ライゼの名を継ぐ、誇り高き戦士!


 「さあ、来なさい! イノベイター!」


 引き金に指を掛けたその刹那。

 タンッ! タタンッ!

 遠距離から銃声が響いた。

 すると、こちらに迫っていた敵兵が次々と地面に倒れ伏していく。


 「姉ちゃんすげえ! 一瞬であいつらを仕留めた!」

 「ヨナ凄い!」

 「ち、違うわよ! まだ私は一発も……って、ギデオン! 残りの敵が来てる!」


 ギデオンに指示を飛ばし、私たちは残りの敵兵を次々に撃破していく。


 予想よりも早く、戦いは決着した。

 形勢の不利を察知した敵兵たちは、即座に撤退していく。

 そこへ追い討ちをかけるように、スナイパーが一人、また一人と撃ち落とす。

 でも、その決死圏から運よく逃れた敵兵がいた。


 「クソ! まだ一人生きてやがる!」

 「――無理に追う必要はないよ!」


 澄んだ声が戦場に響いた。


 「姉ちゃん! あの建物の上!」


 ギデオンの指差す方を見る。

 そこには、物々しいスナイパーライフルとは不釣り合いな程の、幼い顔立ちをした少女が立っていた。

EPISODE7 生きた証「私たちは、絶対に生き残るんだ。いつか、みんなとの約束を果たすために!」

 私たちの前に颯爽と現れたのは、私たちと見た目は変わらない少女。

 彼女は端的にこのコロニーの現状を教えてくれた。

 このコロニーは既に包囲されていること。

 帰還種のほとんどが殺されてしまったこと。

 そして、これからレナを殺すために敵兵たちが雪崩れ込んでくることを。


 「貴女は一体何者なの?」

 「あたしはミリアム。ミリアム・べミドバル。エフェスコロニーから救援にやって来た凄腕のスナイパーさね」

 「おいおい、自分で凄腕とか言うのかよ」

 「ギデオンは黙ってて」

 「へいへい」


 彼女は監督官からの要請を受け、先んじて乗り込んで来たらしい。


 「ここに到着する寸前で戦闘に巻き込まれちゃってね。応戦しながらどうにか街の中に入り込めたけど……あんたたちを見つけられたのは、正直言って奇跡に近い」


 ミリアムはレナへと向き直る。


 「あんたがレナ。帰還種だね」

 「はい。あの、助けてくれてありがとうございます! ミリアムさん」

 「敬語で話す必要はないよ。あんたたちも気軽に接してくれるかい」


 私とギデオンは軽く自己紹介を済ませ、脱出方法を相談することにした。


 「ここから脱出する方法がひとつだけある。それはあたしが乗ってきた連絡艇で脱出することさね」


 連絡艇は、東に位置する聖堂の森の中に隠してあるという。


 「姉ちゃん、そこからなら脱出できそうだな」

 「ええ。聖堂の方はまだ火の手も上がってないし、どうにかなりそう」


 私たちが聖堂へ向けて移動を開始すると、聖堂に向かうにつれて、瓦礫を積み重ねてバリケードにする衛士たちが増えてくる。

 彼らはここを最後の防衛陣地としてイノベイターに抵抗するのだろう。

 道中で彼らに話を聞いてみると、帰還種のお付きになった衛士で生き残っているのは私たちだけだと語った。

 みんな腕の立つ衛士だったのに、イノベイターに歯が立たないなんて……。


 「ヨナ、落ち込んでいる場合ではないよ。君たちは我々の最後の希望なのだから」

 「我々はここで時間を稼ぐ。その間に、君たちは逃げるんだ」

 「……そんな! それって、自ら死にに行くようなものじゃないですか! みんなで戦えばきっと……!」


 率直な気持ちを伝えると、衛士の一人が私の手を握りしめて、語りかけてくる。


 「君も、分かっているはずだ。我々とイノベイターとの彼我戦力差を」

 「全滅は必至。だが我々にも意地があるのだよ」

 「意地、ですか……」

 「何世代にも亘ってこの地を癒し、安寧の地を作り上げ、帰還種を迎え入れることができた。それを野蛮なあいつらに黙って奪われる訳にはいかない」


 衛士たちは皆一様にうなずく。


 「レナ殿を……我々が紡ぎ続けてきた希望の光を、どうか頼む」

 「分かり、ました……」

 「行こう、姉ちゃん」


 彼らには彼らの、私たちには私たちの役目がある。

 彼らの死を無駄にしないためにも、私たちは生きてこの街から脱出しなければならない。


 「ご武運を祈ります」

 「そうだ……もし、いつの日かこの地を再び訪れる機会があれば、みんなに頼みたいことがある」

 「頼みですか?」

 「ああ。この地をもう一度緑溢れる街に戻してくれ」

 「っ……はい! 必ず、叶えてみせます!」


 私たちは別れの挨拶を交わし、ミリアムに導かれるままその場を後にした。


 ――絶やさない。

 この想いを、私たちの代で終わらせてなるものか。

EPISODE8 迫りくる魔の手「来なさい、イノベイター! 私は生きて、みんなのところに帰るんだ!」

 衛士たちと別れて、聖堂へと向かった私たち。

 銃声が鳴り響いたのは、その直後のことだった。


 「イノベイターの魔の手が、もうそこまで……」

 「ヨナ! 振り返ってる場合じゃないよ!」

 「ごめん、ミリアム!」


 思っていたよりも敵の進行速度が速い。

 このままじゃ、私たちも戦闘に巻き込まれてしまうのは時間の問題だった。


 私たちが聖堂に辿り着くと、ミリアムは森の中を進んでいく。

 連絡艇は森林地帯の奥にある遺構の前にあるらしい。

 聖堂の後方に広がる森は、ギデオンとよく遊んでいた場所だった。

 つまり、私たちにとっては庭みたいなもの。

 ここでなら、戦闘になったとしてもある程度なら持ち堪えられるだろう。

 そんな考えが頭をよぎった時、通信機から連絡が入った。


 「ヨナ、すまない……防衛網を突破された……。早く、逃げ……」


 通信機がザーザーと鳴る。それ以降、通信機はうんともすんとも言わなくなってしまった。

 このままじゃ、追いつかれちゃう。

 だったら――誰かが、足止めしないと。


 「みんな! 敵は私が食い止めるから! 先に行ってて!」

 「はあ? 何言ってんだよ姉ちゃん! 俺たちはみんなで生き残るんだろ? だったら!」

 「そうだよ、ヨナまでいなくなっちゃったら、わたし……」


 もちろん、私に死ぬつもりはない。

 合理的に考えれば、これが一番の策なんだ。

 レナを戦いには参加させられないし、ミリアムは連絡艇を動かせる人物だ。

 そして、近距離戦が得意なギデオンが残るよりも中距離で戦える私が残る方が、より多くの敵兵を葬れて生存確率も高い。

 ミリアムは、私が残ることを予想していたのか、特に驚いた様子もなく口を開いた。


 「連絡艇の座標を通信機に送っておくよ。言っても無駄だと思うけどさ、無理はすんじゃないよ?」

 「ええ。敵の妨害を済ませたら、私も向かうから」


 ミリアムからの情報は受け取った。

 後は、イノベイター共を迎え撃つだけだ!


 「さぁ行くよ、アンタたち!」

 「ヨナ、約束して。絶対に生きて、ここから脱出するって」

 「もちろん。私は死なない、必ず合流する!」


 レナの柔らかな髪を撫でつけ、私は聖堂に向かって走り出した。


 「わたし、待ってる! 絶対に、待ってるから!」

 「姉ちゃん! 絶対だぞ! 絶対だからな!」


 大丈夫。私は二人から勇気をもらったから。

 絶対に、生きて戻るよ。


 「さて、と……どこまで喰い下がれるかな」


 迫りくる魔の手と、これから命のやり取りをするって言うのに。

 何故か不思議と、心は軽かった。

EPISODE9 嗤う女「なんなの、この女……? どうしてそんなに、嗤っていられるの!?」

 聖堂で敵兵を迎え撃つ。

 そのためには、高い場所を確保する必要があった。

 加えて、退路も確保しなくちゃならない。

 となると、必然的に二階部分に備え付けられた天窓が迎撃ポイントになる。

 私は迎撃ポイントに座り込み、ライフルを構えて敵がやって来るのを待った。

 後は、どれだけ敵を喰い止められるかだけど――


 バンッ! と扉が破られる音がした。

 ついに敵兵がやって来たんだ。

 だというのに、靴音が全然響いてこない。

 もしかしたら罠を警戒して慎重になっているのだろうか。

 それなら、私にとっては好都合。

 できるだけ時間を稼がせてもらうよ。


 ――カツ、カツ。


 その時、ゆったりとした足取りでいて、どこか傲慢さを感じさせる硬い靴音が、聖堂内に響いた。

 これって……ヒールの音?

 戦場だっていうのに、わざわざヒールを履いて来るだなんて……まさか、指揮官クラス!?


 「いつまで逃げおおせるつもりかしらぁ? この私が来たのだから、隠れても無駄よぉ!?」


 高圧的な声の主は、わざとらしく高らかに嗤う。

 嗜虐的な感情を隠そうともしない。

 茨のように纏わりつく。

 なんて、不快な声だ。


 ――カツ、カツ。


 靴音は尚も響いていた。

 後少し進めば、「バルディッシュ」の射線に入る。

 落ちつけ、私。

 まだよ、まだ。

 女が射線上に入るのを待つのよ!

 ああもう、指が重い。

 心臓の音がウルサイ。

 まともに呼吸もできない。

 こんなに時間が経つのが長く感じるなんて。

 喉が、ゴクリと鳴った。


 ――カツ、カツ、カツン。


 射線に、入った!!

 引き金を引け! 当たれえぇぇぇッ!!

 狙いは確実――そのはず、だった。

 私が放った弾は女に届かず、ただ床を穿っただけ。

 女は私の狙撃をいとも簡単に回避してしまった。

 女と、眼が合う。


 「お馬鹿さぁぁん……みぃつけたぁ……ッ!!」


 整った顔立ちに浮かぶ真っ青な瞳。

 女は、命を狙われていたにも関わらず、嗤っていた。


 「殺気がだだ漏れよぉ坊や? お姉さんが優しく殺してあげるからぁ、大人しく降りて来なさぁぁい?」

 「わ、私は女よ! 男じゃない!」

 「あら、そうなの? じゃあ、自分から死にたくなるまで痛めつけてから殺してあげる! アハハッ!」


 どうして……そんな風に嗤えるの?

 沢山の命が消えてしまったのに。

 なんで、嗤っていられるの?

 こんな、こんな奴が!

 私たちの街を燃やしたんだ!!


 「今度こそ、仕留める!」


 続けて放った弾も、女には当たらなかった。

 まるでこちらを挑発するように、ヒラヒラと舞うばかり。


 「なんで!? なんで当たらないの!?」

 「アハハハハッ! 言ったでしょぉ? 殺気が漏れてるって! それじゃ、私は殺せないわよぉ?」


 うるさいうるさい!

 耳障りな声で嗤うな!

 怒りのままにライフルを構え直そうとした刹那、敵兵の銃弾が私の横顔を掠っていった。

 危なかった……戦場での思考停止は死に繋がる。

 冷静に、戦うんだ。

 冷静に対処すれば、数で不利でも負けはしない。


 「これで!」


 私は腰に付けていた発煙筒を階下に放り投げた。

 煙が一瞬で室内に充満する。

 それでも射撃を止めなかった敵兵に向かって、私は場所を移動しながら狙い撃った。


 一人、二人、三人。

 手応えがあった!


 「無闇に撃つな! 位置を特定されるわよ!」


 女の声が響くと同時に、ピタリと銃撃が止む。

 女は身を隠しているのか、位置が特定できなかった。

 でも……これなら戦える!

 私は、絶対に生き延びてやるんだ!

EPISODE10 絶望に抗いたくて「まだ私たちにできることはあるはず! こんなところで終わってなるもんか!」

 女の部下のほとんどを撃破した私は、そのまま窓を破って屋根から外に脱出した。

 そのまま周囲に待機していた敵兵を撃破し、森の方に飛び込むと、わき目もふらず一気に森の奥まで駆け抜ける。

 この森の中なら私に分がある。

 暗い森の中を満足に動けない敵兵たちは、私の銃撃をただ受けることしかできない。

 ただ、無心に引き金を引く。

 一人、二人と倒れていくうちに、あちらも警戒を強めたのか森の中に入るのを躊躇しているようだった。

 これで十分仕事は果たせただろう。

 ミリアムたちがいる遺構まで移動しようとした矢先、後ろから物音がした。


 「誰っ!?」


 慌てて銃を構えると、そこには両手を上げたミリアムが立っていた。


 「ミリアム? どうしてここに!?」

 「悪いね、銃声が気になって様子を見に来たのさ。あんたが無事で良かったよ」


 ミリアムは軽いノリでそう言うと、近くの茂みからスナイパーライフルを構える。


 「敵が近づいてる。少し掃除したら、離脱するよ!」

 「分かったわ!」


 ミリアムの狙撃は私以上に的確で、撃つたびに敵の数が減っていく。凄腕と自称するだけの実力が備わっていた。

 もしかして、このまま二人で敵を撃退できる?

 あの不愉快な女も、私たちが力を合わせれば――

 そんな私の考えを嘲笑うかのように、森全体を震わせる程の爆音が鳴り響いた。


 「何っ!?」


 高速で私たちの横をすり抜けていったのは、武装した大型二輪に跨った大男だった。


 「――しまっ」


 バイクは一直線に、奥にある遺構へと向かっていく。

 「突破された! ミリアムッ!」


 私たちが後方に意識を向けてしまった、そのほんの僅かな時間。

 それを、あの女は見逃さなかった。


 「ッ!!」


 瞬間、怖気が走る。

 不愉快な女が、一気に距離を詰めてきた。

 暗闇の中でさえ、あの氷のような瞳が不気味に輝いているように思えて、一瞬身震いする。


 「……ミリアム! あいつを近づけさせちゃダメ!」

 「あいよ! ヤバい匂いがプンプンするねぇ!」


 沸々と湧き上がってくる不快な悪寒。

 ここであいつを仕留めておかないと、いつか絶対に後悔する日が来る。

 全感覚が、何度も私に警告を発していた。


 「あいつ……どうなってんのよ!」


 ミリアムが焦るのも無理はない。

 二人がかりで攻撃しているのに、その一発さえ当たらないのだから。

 これ以上近寄られれば、まず――


 カチリ。


 しまった! ライフルのエネルギーが!?

 頭が一瞬で真っ白になる。

 そこへ、右肩を唐突な衝撃が襲った。


 「うぐッ!?」


 あまりの激痛に呼吸を忘れる。

 女が放った弾丸が肩を貫いて、とめどなく血が流れている。

 その光景が信じられなくて、思わず目を瞑った。

 奥歯を噛み締めても、痛みは消えない。終わりのない拷問を受けているようで、叫びだしてしまいそうだった。


 「ヨナッ!」


 遠くからのミリアムの声――それが警告だったと気付いた時には、目の前に人の気配があった。


 「あなた……、なめた真似をしてくれたわね……!」

 縋るように顔を上げる。

 そこには、青い瞳の女が目の前に立っていた。

 よく見れば、彼女の頬には銃弾が掠った痕があり、薄っすらと血が流れているのが見える。

 ああ、私よりは痛くなさそうだ――と思って、思わず口元が緩んだ。


 「……ッ!」

 「あぐ……うぅッ!」


 女の爪先に私の鳩尾あたりを蹴り飛ばされ、無様に呻く私。

 痛みと恐怖で頭の中はぐちゃぐちゃで、死へ近付く自分のことすらも、どこか他人事のようにさえ思えた。

EPISODE11 救いの光「霞む意識の中で見えた白い光。私にはそれが、何故か苦しそうに見えたんだ」

 後ろ手に締め上げられた私を盾にして、女はミリアムを挑発する。


 「もう一人のスナイパーさぁん? 大人しく出てこなかったら、この女を殺しちゃうわよぉ?」

 「…………くっ」


 ミリアムも観念し、銃を構えながら茂みから姿を現してしまった。


 「良い子ねぇ。さぁ、どう料理してあげようかしら」


 グリグリと、首筋に銃口が押し当てられる。硝煙の匂いに混じって、舌なめずりするような不快な声が、耳にこだまする。


 「ヨナに当ててる銃を下ろせ……ッ!」


 女はニヤリと気色の悪い笑みを浮かべた。


 「へぇ? あなたたち良いじゃない。どうかしら、確固たる自我があるのなら、私たちの下に来ない? 指導者エイハヴもきっと歓迎してくれるわよ?」

 「だ、誰が……あなたたちなんかに! ミリアム、私ごとこの女を! ……っつ、ぅぅっ!」

 「私が喋っているのよ? 躾のなっていない子ねぇ。このまま攫って、私が教育してあげようかしらぁ」


 勝利の余韻に浸る女は、高笑いを上げ続ける。

 強気に挑発してくるけど、常にミリアムの射線を意識して立ち位置を変更している。

 そのせいで、ミリアムは身動きを取れない。

 レナもギデオンも、今頃はあの男に……。

 この状況を打開できる策なんて、あるわけがない。

 もう、ダメなんだ……。

 やっぱり私には、無理なんだよ。

 ごめんね、母さん。

 私たち役目を果たせなかった――


 その時だった。

 奥から凄まじい光が瞬くのが見えた。

 それに気づいたミリアムは、咄嗟に茂みの中へと飛び込む。

 動けない私はただ、迫り来る光の奔流を見ていることしかできなくて――――次の瞬間。


 私は、激しい台風に呑み込まれたように弾き飛ばされ宙を舞っていた。

 霞む視界の中、私が覚えていたのは、何かが焼け焦げたような匂いと、明滅する光の奔流だけ。


 「レナ、ギデオン……お願い、無事でいて……」


 その時私の口から零れたのは、私が護りたい大切な人たちの、名前だった。

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コメント (ヨナ・ライゼ)
  • 総コメント数13
  • 最終投稿日時 2021年09月13日 00:09
    • チュウニズムな名無し
    13
    2021年09月13日 00:09 ID:d2gkrrps

    >>12

    左上の男性は指導者エイハヴと予想。

    • チュウニズムな名無し
    12
    2021年09月13日 00:07 ID:d2gkrrps

    PARADISE LOSTのポスターの右上の黒い子、

    最初ギデオン君かと思っていたけど、ストーリーを読んでからこの子はミリアムじゃないかと思っている。

    「幼い顔立ちをした少女」っていうのがポスターの子と一致しているような。

    • チュウニズムな名無し
    11
    2021年07月18日 15:23 ID:fsggod38

    恰好が〇ッチすぎるだろ

    • チュウニズムな名無し
    10
    2021年07月18日 00:51 ID:aivdamgg

    女の子だったの?!

    イケメンすぎやろ...

    • チュウニズムな名無し
    9
    2021年05月31日 23:14 ID:q102i2a6

    >>7

    なんかイゼヴェルって打ってもイザヴェルに変えて一番上に候補出てくんだよね。それで間違えてよく押す

    • チュウニズムな名無し
    8
    2021年05月22日 23:35 ID:pjzggplf

    レナが「エマーグから来た(=メタヴァース再起動後)」って言っているけど、

    レナより後に地上に派遣されたはずのメーネのストーリーではメインフレームがまだ機能している…

    いったいどういうことなんだ…?

    • チュウニズムな名無し
    7
    2021年05月22日 00:00 ID:qmnqebiy

    >>4

    そう思うなら名前を覚えてあげなさい

    • チュウニズムな名無し
    6
    2021年05月21日 23:57 ID:gkdx7iqz

    +1

    効果は薄いのでコンボフォルテ未所持向けです。

    paradise始めた人には最適かもしれません。

    • チュウニズムな名無し
    5
    2021年05月21日 15:34 ID:k196u5na

    ゲージブーストが+10から+11に上がった時の画像置いておきます

    • チュウニズムな名無し
    4
    2021年05月18日 18:47 ID:q102i2a6

    かわいい。イザヴェルちゃんの次に

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