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CHUNITHM【チュウニズム】攻略wiki

ギデオン・ライゼ

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【キャラ一覧(無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN)】
スキル一覧(~PARADISE LOST)】【マップ一覧

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。

  • このページに記載されているすべてのスキルの効果は、CHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです(限界突破の証系を除き、NEW以降で入手・使用できません)。
  • 専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター(いわゆるトランスフォーム対応キャラ)は、RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

通常魔弾の射手

Illustrator:巌井崚


名前ギデオン・ライゼ
年齢素体年齢17歳
職業衛士

イベントinclude:開催日(オリジナルNEW+)

  • 専用スキル「BULLET DRiVE」を装備することで「魔弾の射手 ギデオン」へと名前とグラフィックが変化する。

衛士として働く少年。

とともに帰還種の少女の護衛に就く。

スキル

RANKスキル
1ゲージブースト
5
10BULLET DRiVE
15
25限界突破の証
50真・限界突破の証
100絆・限界突破の証

  • ゲージブースト [NORMAL]
  • ゲージ5本狙いの中では特にシンプルな効果のスキル。ただし筐体内だけでは余裕がそれほどない上に入手まで遠い、あるいはノルマが重いので5本狙いは他のスキルの方が良い。長らく6本には届かない状態が続いていたが、AMAZONで6本も不可能ではなくなった。ただし+9以降における増加分は1%なので、AJレベルの精度が必要。おそらく限界突破の証との兼ね合いだと思われる。このスキルで6本取れるなら、他のスキルで6本以上を狙った方が良い。
  • 筐体内の入手方法(2021/9/16時点):
  • PARADISE ep.IIIマップ6(PARADISE LOST時点で累計1130マス)クリア
  • PARADISE ep.VIマップ2(PARADISE LOST時点で累計350マス)クリア
  • AIRバージョンで仕様変更はされていない。PLUS以前からゲージ5本狙いでよく使われるスキルだった。
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+3
あり+7
PARADISE
(~2021/8/4)
無し+3
あり+13
CRYSTAL無し+5
あり+13
AMAZON無し+5
あり+13
STAR+以前
GRADE効果
初期値ゲージ上昇UP (130%)
+1〃 (135%)
+2〃 (140%)
+3〃 (145%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
+4〃 (150%)
+5〃 (155%)
+6〃 (160%)
+7〃 (165%)
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+8〃 (170%)
+9(171%)
+10(172%)
+11(173%)
+12(174%)
+13(175%)
理論値:87000(5本+7000/22k)[+3]
理論値:93000(5本+13000/22k)[+5]
理論値:99000(5本+19000/22k)[+7]
理論値:103800(6本+1800/24k)[+11]
推定理論値:105000(6本+3000/24k)[+13]

所有キャラ【 シズマ(1,5) / フィーネ(1,5) / ディース / アーリア(1,5) / ヨナ(1,5) / ギデオン(1,5) 】


GRADE効果
初期値125コンボごとにボーナス +5000
MISS判定10回で強制終了
+1〃 +5200
ゲージ10本必要条件:3625ノーツ
GRADE・ゲージ本数ごとの必要ノーツ数(発動回数)
GRADE5本6本7本8本9本10本
初期値500
(4)
1125
(9)
1750
(14)
2375
(19)
3000
(24)
3750
(30)
+1500
(4)
1125
(9)
1625
(13)
2250
(18)
3000
(24)
3625
(29)

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ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 弾かれ者の末裔「俺たちの実力が評価されたんだ。この護衛任務は絶対にやり遂げてみせる」

 ――貫いたその想いは、それを受け継ぐものがいるかぎり、誰かの中で生き続けていく――


 機械種によって生み出され、荒廃した世界を復興させる役目を担った真人たち。

 いつしか彼らは、自らの意思で動けるようになり、初めて「個」と呼べるものを獲得した。

 だが、その中には一部の例外が存在する。

 電子の楽園から己の意思で外の世界へと旅立ったプログラムたち。

 それらが真人の体へと漂着したことで、「個」を得るに至ったのだ。

 個を持つ者は真人たちの中でも特別な形質を持つ者に分類され、以来、連綿とその形質を受け継いでいくこととなる。

 ヨナ・ライゼとギデオン・ライゼの姉弟も、それを継承して来た者の末裔だった。


 二人は、やがて来たるべき人類再生の時に備えて、衛士としての訓練を重ねていく。

 かくして時は流れ、若くして相応の実力を身につけた二人は、帰還種と呼ばれる少女レナ・イシュメイルとの邂逅を果たす。


 楽園から外の世界へと旅立ったプログラムの末裔と楽園の中で誕生した新たな人類種。

 その出逢いがもたらす先に待つものとは、何なのか。

 楽園を巡る物語は、新たな時代の1ページを刻もうとしていた。

EPISODE2 戦火の傷跡「今の俺じゃレナを護れない。そんなのは分かってる。だから俺は強くなりたいんだ。今よりももっと強く」

 連絡艇を使いイオニアコロニーを脱出した俺たちは、エフェスコロニーへ向かっていた。

 強硬派<イノベイター>に不意を打たれた俺たちがこうして脱出できたのは、レナのお陰らしい。

 らしいっていうのは、俺はあの時気絶してたからで……。


 「痛ぇ…………」


 赤毛野郎にブン殴られた顔が痛む。

 情けねえよなぁ……カッコ悪ぃ。


 「……えぅ……ぁ……」


 姉ちゃんは泣き疲れたレナを気遣って、隣でレナを抱きしめている。

 ミリアム……は澄ました顔でコンソールを弄ってた。

 俺もこんな時でも冷静でいられる男になりたい。

 それに、戦う力も……。

 俺の視線の先には、片割れだけになった

『ブリガンダイン』が転がっていた。

 相棒は欠けちまったけど、俺はまだ戦える。

 でも、そんな意志だのなんだので、この争いを生き抜ける程、敵は甘くない。

 その結果がイオニアコロニーの戦いだ。

 街は崩壊して、沢山の仲間が犠牲になった。

 12人いたはずの帰還種は、レナしかいない。

 もう、負けられねぇんだよ。


 ――戦場ではより強いものが勝つ! それが絶対にして唯一の掟だ!


 赤毛野郎の声が、耳からこびりついて離れねえ。

 ああ、分かってるよ。

 今の俺じゃ、レナを護りきれないってことはさ。


 「畜生……もっと、もっと強くなりてぇ」


 俺は、この悔しさを忘れない。

 いつか絶対に、あの赤毛野郎を見返してやる。

EPISODE3 同盟都市エフェス「ったく、お前は俺の姉ちゃんかっての。でもまぁ……思ってたより良い奴かもしれないな」

 「エフェスに着いたよ! 十秒で支度しな!」

 「ん……あぁ……?」


 俺、いつの間にか眠ってたのか……。

 船は結構揺れてたはずなのに、それすら気にならずに眠っちまうなんて、かなり疲れてたんだな。


 「ほれ、十秒経ったよ? いつまで寝ぼけたツラしてんだい」

 「……今起きるって」


 ミリアムは生返事をすると、そのまま抱き合うように眠っているレナたちの方に向かって行った。


 「ほら、アンタたちも起きな」

 「……んぁ……」


 見た感じ、二人の表情は穏やかになったと思う。


 「……あんた、趣味が悪いねぇ。そういうのは、あたしが見てない所でおやり?」

 「ばっ! 別に見てねぇって!」

 「じゃあボサっと突っ立ってないでレナをおぶってやんな。この子はまだ完全に回復しちゃいないからね」


 まだ寝ぼけ眼のレナを背負って、俺たちは連絡艇から下船した。

 ここはエフェスコロニーの中心、同盟都市エフェス。

 イオニアコロニーから最も近く、古くから親交のある都市のひとつ。

 この前のイノベイターの襲撃で、間一髪ミリアムが間に合ったのも、その繋がりがあったからこそだ。

 発着場を出た俺たちは、そのままミリアムに連れられ、休養施設にたどり着いた。


 「やっぱり疲れてるんだねぇ、カプセルに入った途端、あっという間に寝ちゃったよ」

 「なぁミリアム、俺たちこんなところでゆっくりしてる暇あるのか? 俺たちは立ち止まってる場合じゃねぇ、一歩でも先に行くべきなんじゃないのか?」

 「……やれやれ」


 あんたは勘違いしてる、と答えた上でミリアムは続けた。


 「そもそもの問題として。あんたたちが目指さなきゃならないペルセスコロニーは、あたしが知る都市の中でもダントツに遠いのさ。どっかの誰かさんが護りきれなくて傷ついたピーコッド号の補修と整備も、ここでしっかりやっておかないとたどり着けやしない……よッ!」

 「っ痛ぇッ!」


 思いっきりデコピンされた。


 「な、何すんだよ!」

 「ちったぁ、冷静になれたかい? こういう時にどっしり構えるのが男ってもんだろう?」


 ミリアムの言ってることは正しい。

 俺がここで冷静にならなきゃ、元も子もないんだ。


 「それは……そうだけどよ」

 「はん、随分しおらしいねえ。生意気小僧のギデオンはどこに行っちまったのさ?」

 「う、うっせぇ……俺より小さいくせに、ババクセェこと言ってんじゃねえよ」

 「小さいのは余計さね、クソガキ」


 その言葉より早く、ミリアムの拳が俺の腹にめり込んでいた。


 「ぐっ、おま……いきなり……」

 「どうしたんだい、うずくまったまんまでやり返す気力もなくなっちまったのかい?」

 「どうせ俺は、ぶん殴られて気絶しちまうようなクソ雑魚野郎だよ……」

 「やれやれ、情けないねぇ、こりゃ相当に重症だ」

 「……ほっとけ」

 「そういや、これを渡すのを忘れてたよ。ほら」

 「……あ?」


 何かの気配を感じて、それを掴む。

 手の中のそれは、見覚えのある黒い銃で――


 「これは! 『ヴァンブレイズ』! まさか拾って、いや、銃投げてんじゃねぇよ! 危ねぇだろ!」

 「あたしは銃火器のスペシャリストだからね」

 「それ、答えになってんのか?」

 「細かいこたぁいいんだよ。これで少しは元気になれたかい?」

 「あぁ、ああッ! もちろん!」

 「あんたには戦う力があるんだ。だったら、どうするかはもう分かるだろ?」


 ミリアムの手が差し伸べられた。

 そうだ、俺には戦う力がある。

 だったら、今俺にできることは……ひとつしかねぇ!


 「なぁ、ミリアム。頼みがあるんだけどいいか?」

 「へぇ? なんだい?」


 煽るようなその返事は、これから俺が言うことを分かり切ってるとでも言いたげで。


 「俺に、稽古を付けてくれ」

 「あいよ」


 俺は、ミリアムの手を握り締めた。


 「ボッコボコになるまでしごいてやるよ、クソガキ」

 「ッハ、言っとけ、クソババァ!」


 初めて見たミリアムの笑顔は、ちょっとぶっきらぼうで。

 だけど、その距離感が今の俺にはちょうどいい心地良さだった。

EPISODE4 ミリアムお嬢様「あいつがお嬢様ねぇ? 俺たちの前のあいつと今のあいつ、どっちが本当なんだろうな」

 「ハァ……ハァ……もう、動け、ねぇ……」


 訓練室でミリアムの鬼のしごきを受けた俺は、ものの見事にボッコボコにされて、床に沈んでいた。

 ミリアムの奴は未だにピンピンしてやがる。

 正直、もっと戦えると思ったんだけどな。


 「ギデオン、ちょっといいかい?」

 「な、なんだよ……まさかまだやる気なのか?」

 「そうじゃないさね。実は、あんたたちに紹介しておきたい人がいるのさ」

 「紹介したい人?」

 「――失礼するよ」

 「おや、噂をすればって奴かい。ほら、さっさと立ちな」

 「い、痛ぇって! 分かったから、無理に引っ張るのはやめろって!」

 「ハハ、仲良くやっているようだね」


 ゆったりとした足取りで訓練室に入ってきたのは、いかにも高い位に就いていそうな白い身なりの老人だった。


 「紹介するわ、ギデオン。この方はセト、機械種からエフェスコロニーの管理を一任されている領主で、わたくしの義父でもあるの」


 コロニーの管理を一任って……。

 マジで偉い人じゃん。

 しかも父親って……ん?


 「わ、わたくし?」

 「おや、どうかしたのかね?」


 ――ギロリ。


 どうなるか分かってるだろうね?

 とでも言うような、ミリアムの鋭い視線が抉るように飛んできた。


 「い、いえ、なんでもありません」

 「ふむ、そうかね。では続けさせてもらうが、まずはイオニアコロニーの件本当に残念だよ。散って行った彼らへ、哀悼の念を捧げよう」

 「……ありがとうございます」

 「君もよくぞ無事でいてくれた。この街を出るまでの短い間ではあるが、私が君たちを全力でサポートしよう。自由に過ごしてくれて構わない」


 そう言うと、ミリアムの親父さんは穏やかな表情を変え、険しい表情で現状と今後について語り始めた。



 「――では、近く起こる強硬派との戦争に備えねばならぬ。そろそろ戻らせてもらうよ」

 「あ、はい! 色々とありがとうございます!」

 「構わんよ。ミリアム、皆さんのことは任せたぞ」

 「はい、お義父さま。わたくしにお任せください」


 親父さんに撫でられて、ミリアムは朗らかに笑う。

 へぇ……、あいつ、思ってたよりもかわ――

 い、いや、違う! 俺は何を考えてたんだ!?

 これはきっと、俺の身体が疲れてたからで……!


 「あんた、つっ立ったまま何を唸ってるんだい」

 「う、うっせぇ。大体、なんなんだよその言葉使い。随分しおらしいじゃないかよ、えぇ? ミリアムお嬢様ァ~?」


 浮かんできた雑念を追い出したくて、気付いた時にはそう口走ってしまっていた。


 「……おだまりッ!!」


 秒速で返って来たミリアムの強烈な蹴りが、俺の尻に命中。

 俺はまたしても床に沈んでしまった。


 「痛っっってぇ……」

 「さっさと立ちな! 続きをするよ!」

 「はぁ!? もういいだろ!?」

 「そのふざけた口をきけなくしてやらないといけないからねぇ。覚悟はいいかいクソガキ、本気で叩きのめしてやるから、ありがたく思うんだよ?」


 ダメだ……目がマジだ。

 何で俺は余計なことを言っちまうかな……。

EPISODE5 交錯する想い「黙ってらんねぇだろ!? これで親父さんとお別れなんて、お前、納得できんのかよ!」

 セトさんが言っていたように、強硬派との戦争が程なくして始まった。

 けたたましい警報音が鳴り響く中、俺の脳裏にあの時の光景が蘇ってくる。

 また同じようなことになんてしたくねぇ。


 「お義父さま! 状況はどうなっているのですか!?」


 司令室に着いて早々に俺たちを迎えたのは、残酷な事実を伝えるオペレーターの声だった。


 「解析でます! 強硬派――侵略軍の数は……およそ二千!」


 桁が違いすぎる。

 イオニアコロニーの時よりも規模が大きくなってるんじゃないか?

 もしかして、レナのあの銃に対抗するためだったとしたら……。


 「よく来てくれた。君たちに頼みたいことがある」


 いつも以上に険しい表情でセトさんは言った。


 「この都市の防備をもってしても、戦線を押し返すことはできない。今すぐここを離れ、脱出するのだ」

 「だ、だったら! 私たちも戦わなくちゃ! もう街の人たちが傷つくのなんて、見たくない!」


 その言葉に、真っ先に反論したのはヨナだった。

 あいつらと戦う。俺の気持ちもヨナと同じだ。


 「ああ、このまま黙って見てられねぇだろ!」

 「うんっ、わたしたちも戦おう!」

 「ならん。君たちには君たちのなすべきことがあることを分かってほしい」


 どれだけ俺たちが訴えても、その口が再び開かれることはなかった。


 「…………あんたたち、行くよ」


 ミリアムは出口に向かって何事もなかったかのように歩いていく。


 「待てよ! お前の故郷なんだろ!? それでお前は納得できんのかよ!?」


 ミリアムに追いすがり、その肩を掴んだ。

 でも、俺の手はあっさりとふるい落とされ、振り返ったミリアムと視線がぶつかってしまう。


 「……あんたは、黙ってろ」


 その瞳は、憎しみとも悲しみともつかない、激しい感情のうねりに満ちていた。

 それがミリアムの気持ちを代弁しているようで、俺には何も言い返すことができなかった。


 「お義父さま。わたくしたちは参ります」

 「頼んだぞ。たとえ我々が敗れさろうとも、レナ君とお前たちが生き続ける限り、我々の希望が潰えることはないのだ」

 「……はい。それでは」


 二人の間にそれ以上の会話はない。

 交わされた視線が、多くのことを語り合っていた。

EPISODE6 崩れゆく世界「勝手に諦めてるんじゃねぇよ! まだ道はある! 諦めなければ、どこにでも行けるんだよ!」

 夕陽と戦火に照らされた都市の中を、ミリアムに先導されながらギデオン一行はひた走っていた。

 セトから言い渡されたのは、ただひとつ。

 イノベイターとは一切戦闘せずに、この都市から脱出することだった。


 『こちら第14小隊、もう持ちま、せ――』

 『前線決壊! 繰り返す、前線――』


 発着場へ向かう間も、通信機からは戦況報告が流れてくる。


 「クソッ、皆……」


 刻一刻と戦況が悪化していく中。

 共に同じ時を過ごしてきた仲間たちの死にゆく声が、逃げの一手しか取れないミリアムの心を強く蝕む。

 それは内側からじわじわと締め付けるような拷問にも等しいものだった。

 都市の中枢はまだ戦闘の影響を受けてはいない。

 しかし、いつ敵が雪崩れ込んでくるか分からない状況が続いていた。


 「見えた! 発着場だ!」


 発着場の周囲の遥か上空では、エフェス衛士隊率いる船団とイノベイター率いる船団との熾烈な制空権争いが繰り広げられている。

 そこへ、赤く染まった空を一直線に光が駆け抜けていった。

 イノベイターの船団が放った光学兵器が、エフェスの飛行船を焼いたのだ。

 それと同時に、飛行船から発射されていたミサイルがイノベイターの船団に命中。

 直後、夜空に盛大な火華を咲かせていく。


 「急がないと、ここも危ねぇぞ!」

 「あと少しだよレナ、頑張って」

 「うん! ……あっ、ミリアム! 避けて!」

 「――え?」


 レナの声に振り返ったミリアム。

 空を見れば、ミリアムのいる場所に、撃墜された飛行船の残骸が降り注ごうとしていたのだ。


 「ぁ…………」

 「ミリアム――ッ!」


 ギデオンは、咄嗟にミリアムを庇うようにして抱き抱えると、その場から飛び退いた。

 時間にすればほんの一秒にも満たないわずかな時間。それが、押し潰されるかに思われたミリアムの生死を分けた。


 「あ、ありがと……ギデオン……」

 「クソッ! 炎で近づけねぇッ!?」


 発着場に横たわるように転がった残骸。それがギデオンたちの進路を塞いでしまっていたのだ。


 「ミリアム、迂回する方法はないのか? おい、何か返事しろって……ミリアム?」


 ミリアムの名を呼ぶギデオンの腕の中で、少女は目を見開き通信機を固く握りしめていた。


 「……ぉ、お義父、さま……」

 『――繰り返す。エフェスコロニーは今ここに陥落した。しかし、我々は最後までイノベイターに抗う。ここで我らが破れ去ろうとも、我らの意思は、必ず後の代へと受け継がれていく』


 通信機から漏れてきたセトの宣言に、ミリアムはその場から動けずにうずくまってしまう。

 必死にこらえていた、だが幾度となく押し寄せる絶望に打ちのめされて、ミリアムの心は決壊寸前にまで追いやられていた。


 「あ、あぁ……お義父さま……お義父さまぁ……」


 通信機を手に、ただ泣きはらすその姿は、等身大の少女ミリアム。

 小さな身体で必死に戦ってきた少女は、怯えていた。


 「泣いてる場合じゃねぇ、立てよ、ミリアム」

 「……もう、無理よ……イノベイターから逃げることなんて、できないのよ……」

 「知るか、お前は俺たちを東の地に連れて行く義務がある。こんなところで、勝手に終わらせるんじゃねぇ」

 「……状況を見なさいよ! どうやって脱出しろっていうのよ!?」


 顔を合わせようともしないミリアムを前に、ギデオンはやおらしゃがみ込むと、ミリアムの頭を掴んで額を擦り付ける程の距離にまで肉迫した。


 「俺の眼を見ろ、ミリアム!」

 「ギデ、オン……」

 「はなから諦めてるんじゃねえ! 道は、どこまでも続いているんだ! 見つからねえなら探せばいい! 諦めさえしなければ、どこにだって行けるんだよ!」

 「ふ、ふざけないで! 心持ちひとつで解決できるんだったら、今すぐやってみせなさいよ!」


 涙で頬を濡らすミリアムの叫びが、白き少女の心に響く。生きたいと、救いたいと願う気持ちが、彼女の足を動かした。


 「――わたし、できるかもしれない」


 二人に割って入ったレナの手には、小さな黒い銃

「デイブレイカー」が収まっている。

 レナがゆっくりとそれを構えると、その瞳と銃は互いに共鳴するかのように光りを放つ。


 『――レナ・イシュメイルとの同調を確認。40%限定起動を承認』

 「えっ、銃が喋った!?」

 「この子なら、船だけを破壊できるはず!」


 燃え盛る炎の明かりさえも吸収するかのような漆黒の銃に、徐々に真白の光が灯っていく。

 それは、暗く深い絶望に灯された、ほんのひと握りの小さな希望<光>だった。

EPISODE7 明日に繋ぐ、命の軌跡「みんなが繋いでくれた命。俺たちが、絶対に明日に繋げてみせる……!」

 光の奔流が、空を灼く。

 空へと奔った光は、燃え盛る船の残骸を貫き、一本の道を切り拓いていたのだ。


 「まるで流れ星みたい……」

 「ほ、本当に船だけを吹き飛ばすなんて」


 驚きの表情を浮かべるヨナとミリアムをよそに、レナとギデオンはハイタッチを交わす。


 「ねぇレナ……、どうして船だけを破壊できたの? この前はもっと凄い光だったよね……?」


 レナはあの時の情景を思い返すように目を瞑り、自分の中にふと浮かんだ気持ちを口にする。


 「正直に言うとね、わたしにもよく分かってなくて。この状況をなんとかしたいって思ったわたしの気持ちに、この子が応えてくれたのかも」


 レナが切り開いた道を前にして、生き残る希望を見出した一行だったが、残された時間は限られていた。


 「よし……、道はこれで開けたんだ。行こうぜ、ミリアム」


 呆然としていたミリアムに、ギデオンは手を差し伸べた。それに手をかけようとしたミリアムだったが、突如走った痛みでその場にうずくまってしまう。


 「膝を痛めたのか? 悪い、怪我させちまった」

 「……気にすんじゃないよ、別にこれくらい――」


 言うが早いか、ギデオンは即座にミリアムの背中と膝裏に手を回すと、抱き抱えるようにして立ち上がった。


 「ちょ、何すんだい! 恥ずかしいだろ!?」

 「黙ってろクソババァ! 皆、行くぞ!」


 ギデオンを先頭に、一行は発着場に停泊していたピーコッド号へ辿り着く。そして、操舵席に座ったミリアムによって、エンジンが起動する。

 その直後、即座に立ち上がったコンソールから危機を知らせるアラートが鳴り響いた。

 戦場でもはっきりと聞こえる爆音を鳴り響かせた武装二輪が、発着場へと突入してきたのだ。

 それに搭乗していたのは、イオニアコロニーを襲撃した強硬派――イゼヴェルとサウル。


 「あの女ッ!? ったく、しつこいったらないね!」


 戦闘か逃走か。

 判断を迫られるミリアムだったが、一秒の遅れが全滅を招きかねない。

 その状況で、ミリアムは誰かからの通信が入っていることに気がついた。赤く点滅する機器を押して回線を開く。すると、スクリーンには先程エフェスコロニーの陥落を通達していた領主セトが映し出されていた。


 「お義父さま!?」

 『怨念に囚われた者共は、私に任せておけ。お前は唯、東の地を目指すのだ』


 それは、晴天の霹靂だった。

 ブリッジのスクリーンに映し出された戦闘車輌。その車輌に乗り込んでいる人物こそ、領主セトに他ならない。

 セトは、己の身を挺してイノベイターに特攻を仕掛けていたのである。


 『飛び立て! 希望の船よ! この世界を、奴らの思い通りにさせるでないぞ!』

 「……っ……はい! お義父さま!」


 直後、武装二輪を巻き込んで発生した閃光と爆発。

 船を飛ばすミリアムの耳に響く声――


 『ミリアム、私はお前の父であったことを、誇りに――』

 「あ、ぁぁ……ぁぁぁ…………」


 領主セトの最期の想いに応えるように。

 ミリアムたちを乗せた銀の船は、大空へと高く飛翔するのだった。


 「お義父さまァァァァァァァッ!!」


 ミリアムの叫びは戦火など知りもしないような穏やかな空の中へと吸い込まれていった。

EPISODE8 追う者、追われる者「はぁ!? どうなってんだよあいつは……! その執念は、どっから湧いて来るってんだ!」

 戦火に見舞われた同盟都市エフェスを辛くも脱した一行は、遥か東の地ペルセスコロニーへと飛び立った。

 彼らは皆一様にスクリーンに映し出された光景を見つめている。

 燃え盛る都市が見えなくなる最後の最後まで、片時たりとも見逃さないとでもいうように。


 「……ぉ……お義父さま……」

 「ミリアム……」


 慰めるように、すすり泣くミリアムの肩に手を置いてはみたものの、さしものギデオンといえどもいつもの軽口を叩くことははばかられていた。


 (畜生……、俺はまた無力だった……)


 どれくらいそうしていただろうか。

 癒えぬ傷を抱えたまま、重く暗い沈黙が続くかに思われた船内だったが、


 「……ったく、いつまで辛気臭い顔してんのさ。あんたたちが俯いたまんまじゃ、お義父さまも浮かばれないったらありゃしないよ」 


 その雰囲気を一変させたのは、他ならぬミリアムであった。


 「あたしはお義父さまに誓った。レナ、あんたを必ずペルセスコロニーまで送り届けてやるよ」

 「……っ……ミリアム……ありがとう……」

 「おいおい、気をしっかり持ちな? さて、あんたたちも流石に疲れただろう? しばらく休んできたらどうだい?」

 「うん、そうだね……えっ、あれ? これって……」


 仮眠室へ向かおうとしたヨナだったが、その時、レーダーに表示された“何か”に気付く。


 「どうしたんだよ、姉ちゃん……あ? なんだこの白い点……ミリアムッ!」


 ピーコッド号を中心としたレーダーの左下側に点る白い光。識別情報では友軍を知らせる表示であったが、ピーコッド号へと迫る速度は、明らかに常軌を逸している。徐々にではあるが、あと数分もすれば接触は確実であった。


 「な……!? 間違いない、こいつは……敵だ!!」


 船内に走る緊張。

 それを嘲笑うかのように船内が揺れる。

 正体不明機からの攻撃が、ピーコッド号を捉えたのだ。

 後方に搭載されたカメラが捕捉した機影。それをスクリーン上で拡大してみると、小型の高速襲撃艇が映し出される。

 一人での運用を想定して作られた小型の船に乗り込んでいたのは、幾度となく一行の前に立ち塞がってきた青い眼の女――イゼヴェル・ヤグルーシュ。


 「なんてしつっこいんだい、あの女は!」

 「一人で突っ込んでくるなんて、どんな神経してんのよ!?」

 「引き離したいのは山々だけど……速度はあっちの方が上だ、このままじゃあいつをあたしの船に乗せることになっちまう。それだけはご免だよ」

 「ミリアム! ライフルを貸りるぜ! あいつは俺たちで仕留める! 行くぞ、姉ちゃん!」

 「いい加減、引導を渡してやるんだから!」

 「分かったよ。あたしがギリギリまで奴を引きつける。そこで必ず仕留めておくれ!」


 安全帯<ハーネス>をつけて後部甲板に飛び出た二人は、不安定な足場の中で直ぐさま高速襲撃艇を視認する。

 もはや肉眼でも捉えられる程の距離にまで、彼女は接近していたのだ。


 『ギデオン! その距離はもうあたしの「ピースメーカー」の射程圏内だ。やれるかい?』

 「ああ、やってやるよッ!」


 ミリアムからの通信を受け、ギデオンは即座に

「ピースメーカー」を構える。しかし、いくら訓練を積んできたとはいえ、不安定な足場と強風が吹きつける高高度の空で直撃させることは、至難の業であった。


 「クソ……流石にこの気流の中で当てるのは厳しいか」


 攻撃の合間にも高速襲撃艇との距離はみるみる内に縮まっていく。

 その時、何かがチカリと光った。


 「攻撃よ! 伏せて!」


 機銃の砲火が二人を襲う。

 弾薬は二人を逸れてピーコッド号の装甲に傷をつけるだけに留まっていたが、生身で直撃を受ければ真人の身体であってもひとたまりもない。

 ましてや、このままピーコッド号への被弾が積み重なっていけば、墜落は免れられなかった。


 「どうしよう、このままじゃ……!」

 『二人共! 一旦雲の中に隠れるよ! 中に戻っておくれ!』

 「「了解!」」


 二人が船内に戻った矢先、ピーコッド号は船体を下方へと降下させていく。

 手で掴めそうな程の白い雲の波が、瞬く間に船を包み込む。

 雲海の中へと船が消えたのを確認したイゼヴェルも、後を追うように雲海へと突入した。


 『ッチ、しっかり追ってくるかい。分かっちゃいたけど、この程度で諦めるタマじゃないよねぇ』

 「何か手を考えなくちゃ……」

 『あっちの燃料が尽きるかこっちが墜落するか……って、レナ? 何を!?』

 「ん? レナがどうしたって?」


 ミリアムの答えを待っている間に、通路内をカンカンと駆ける足音が響く。

 次第に近づいてきたそれの主は、レナだった。


 「「レナッ!?」」

 「わたしにも手伝わせてっ!」


 二人の心配をよそに、レナは真白に光り輝くデイブレイカーを胸に抱えている。


 「そうか、レナの銃だったらあの襲撃艇を巻き込めるかもしれないな」

 「レナを危険にさらす訳にはいかないけど……今は頼るしかない、もんね」

 『皆! そろそろ雲海を抜けるよ!』


 ミリアムの声にうなずいた一同は、再び甲板へと向かう。ハッチを開いた瞬間、凍える程の冷気と共に強い風が襲った。


 「す、すごい風……」

 「揺れで舌を噛むなよ、レナ!」

 『皆! 奴が出て来るよ!』


 ぼん、と綿の塊に突っ込んだような音が響く。

 月明かりを背に、夜空に白い線を引くようにしてイゼヴェルが乗る高速襲撃艇が姿を現した。


 「今だ! 撃て、レナ!」

 「だ、ダメ……うまく、狙えない……」


 かつていた世界で訓練を受けていたとはいえ、上下左右に細かく揺れる船上で小さな標的を狙うのは困難を極める。


 「ハァ……ハァ……」


 もはや船が揺れているのか、体が揺れているのかの判別もできなくなっていたその時、レナの両手を包み込むようにしてヨナの手が添えられた。


 「あっ……ヨナ?」

 「大丈夫だよレナ。私が貴女の眼になるから」

 「うんっ!」


 レナは、耳元で聞こえたヨナの呼吸に合わせて呼吸を整えていく。自然と体の震えも収まっていた。

 目の前にきらめく砲火、装甲から飛び散る火花はゆっくりと視界の端に消えていく。


 ――射線上で、青い瞳と銀の瞳が交錯する。


 同時に、トリガーを引いた。

 その結果、放たれた光の奔流は高速襲撃艇の放った弾薬を飲み込み、夜空に白銀の軌道を描いていく。

 その衝撃は凄まじく、光の奔流は大きな気流の乱れを生み出し、そのうねりに巻き込まれた高速襲撃艇は、船体から煙を上げ徐々に勢いを失い、やがて見えなくなっていった。


 「やった……やったぜレナ!」

 『皆、気を抜くんじゃないよ! 気流の乱れが直ぐこっちにも来る。早く中に戻りな!』


 急いで船に戻った直後、激しい揺れが三人を襲う。しばらく続いていた揺れも徐々に収まり、ようやく船内に静寂が訪れた。


 「ふぅ……収まったな」

 「ありがとう、レナ。貴女のお陰で助か……えっ、レナ? レナッ!?」


 ヨナの呼びかけも虚しく、レナはヨナにもたれ掛かるようにして、意識を手放していた。

 昏く深い闇の底へと、誘われていくように。

EPISODE9 ギデオンとミリアム「あいつは俺に対等に接してくれた。だったら、今俺がしてやれんのはひとつしかねぇ」

 多くの犠牲を払って都市を脱出した俺たちの前に現れた青い眼の女。

 その戦闘によって生じた船の損傷箇所の補修と整備を行うため、船は大陸中央部を横断するルートを諦めざるを得なかった。

 俺たちは海岸線沿いのルートを通って、補給できる場所を探さなくちゃならない。

 それに、何よりも意識を失ったままのレナの回復を優先させる必要があった。

 青い眼の女を追い払った時点で、周囲は既に夜。

 そんな中を闇雲に飛んでも、他のコロニーを見つけるのは難しい。俺たちはある程度船を隠せる場所に着陸し、朝を待つことにした。


 俺とミリアムとヨナは、襲撃を警戒して持ち回りで哨戒に当たっている。

 交代の時間になっても甲板から戻ってこないから呼びに来てやったってのに、ミリアムは甲板の上でポツンと座り込んでいた。


 「ミリアム、そろそろ交代の時間だぜ?」


 呼び掛けても、ミリアムは一向に見ようともしない。


 「おい、時間だぞ? 疲れて眠ってんのか?」

 「……っ……ぃ、今は、放っといておくれ……」

 「なぁ、お前……まさか……」

 「ち、ちょっと時間をおくれ。……ここはあたし一人で十分さね」


 俺の言葉を遮るように、ミリアムは口早に巻くし立ててくる。

 ――そんなこと言われたら、ほっとけなくなるじゃねぇか。

 俺はミリアムの隣にわざとらしく座り、


 「……ったく」


 そのまま肩を抱き寄せる。

 小さな身体は、小刻みに震えていた。


 「一人で我慢すんじゃねぇよ」

 「……っ、ギ、ギデオンっ……」

 「おう」

 「な、何さ、あたしより、弱い……ガキのくせにっ……」

 「ああ、俺は弱いし、ガキだよ」


 そんなこと言われるまでもない。

 でも、弱いからこそ分かることだってあるんだ。


 「だから放っとけないんだよ」


 そっと手を重ね合わせる。

 震えてるのはどっちだろう。


 「ほら、俺が弱さを見せられるのは、お前だけなんだぜ」

 「……ぁ……」

 「怖ぇよな。俺だって怖ぇよ。だからさ……俺の前でくらい、我慢すんなって」


 一人で堪えるより、二人でなら乗り越えられることだってあるはずだ。

 そうやって、俺が姉ちゃんたちに救われたように。


 「……っ……ずるいよ、あんた……今そんなこと、言われ、たら……」

 「ああ、泣きたい時は泣いていいんだぜ」


 その瞬間、ミリアムの体温を強く感じた。

 胸に感じた熱を通して、感情が伝わってくる。


 「ぅ……あ……ぁぁ――――」


 ――どれくらいそうしていただろう。

 つないだ手の震えは、いつの間にか止まっていた。


 「もうすぐ夜明けだな」

 「そうだねぇ…………ハァ……まさかあんたにこんな恥ずかしいところを見せちゃうなんてね。あたしも焼きが回ったよ」

 「俺だから見せてくれたんだろ?」

 「は、はぁ!? そんな訳ないだろ!?」

 「……なあ、もういいんじゃないか。自分を偽るのは」


 ミリアムは飛び跳ねるように振り返った。


 「……急に何を言い出すんだい、あんたは」

 「お前は、その小さい体を笑われないために虚勢を張り続けてきたんだろ?」

 「それは……」

 「俺は嬉しかったんだぜ、素のお前と向き合えて。あのミリアムを見られるのは嫌なのか?」

 「……嫌じゃ、ない」

 「だったら、俺にだけは見せてくれ。ありのままのお前を」


 ミリアムはそっぽを向いてしまった。

 返事もないまま時間だけが過ぎていく。

 ここら辺が、潮時か。


 「まぁ、仕方ないよな。もう元気も出ただろ? 船に戻って寝てきたらどうだ?」

 「――待って」


 立ち上がろうとした瞬間。

 不意に、視界が塞がれる。

 仄かな熱が、ミリアムから伝わってきた。


 「ん、ッ!?」

 「――ふふ」


 戸惑う俺を見て、ミリアムは涙まじりに微笑んでいた。


 「あなたといる時だけは、ありのままのわたくしでいても、いいのかもしれないわね」


 その笑顔は、少しだけぶっきらぼうで。

 だけど、今までに見たどんなミリアムよりも、綺麗だった。


 「……お、お、おま……」

 「何見惚れてんだい。言葉もないってか?」

 「ふ、不意打ちなんてずりぃぞ、クソババァ!」

 「うっさいねクソガキ。これが歳の功って奴さね」

 「ぃ、言ってろ!」


 ……結局、いつも通りになっちまったけど。

 今この瞬間、俺たちは確かに変わり始めたんだ。

EPISODE10 廃棄された都市「こんな都市の中に、ヘンテコな機械種がいるなんて思わないだろ? 一体、こいつは何者なんだ……」

 夜明けを待って行動を開始した俺たちは、補給できる街がないか確認しながら、海岸線沿いを進んでいた。

 この大陸の中心部は、砂漠化が未だに続いているようで、真人の手が及びきっていない場所があることを俺たちに教えてくれた。

 この世界は広大だ……知識として知っているのと実際にこの眼でみるのとでは、抱く感想が全然違う。


 ……ん? あれ、今何か光ったか?


 「ねえ、ギデオン。今の見た?」

 「ああ。この風景にはそぐわないあの構造体……きっと街に違いねえ!」


 俺たちは早速、ミリアムに連絡した。


 「街があっただって? ふぅむ……船に登録されてる地図には何も表示がないんだけどねぇ」

 「地図にない街……廃棄された都市ってところかしら?」

 「なるほど、廃棄都市か。何が待ち受けてるか分かったもんじゃないけどねぇ。今はそうも言ってらんないさね」


 ミリアムの視線が、簡易ベッドに横たわるレナへ向けられる。


 「よし、物は試しさ。行ってみるよ!」

 「「了解!」」


 それから、俺たちは着陸できるくらいの広さの平地を見つけて、廃棄都市の探索を開始した。


 「――アントゥルーヤ」


 砂に埋もれていた朽ちた看板にはそう書かれていた。

 辺りをざっと見回してみる。

 やっぱり、周辺の建物も同じくらい砂や風に晒されていたせいか、どこもかしこも劣化具合が酷い。

 剥き出しの配管は錆びて接合部を覗かせているし、倒壊した構造体や申し訳程度に生えている草が寂しさを助長させている。

 耳を澄ましても、俺たち以外の物音は風の音がせいぜいといったところだ。


 「物は試しとは言ったけどさ、ここまで何もないと……色々と厳しそうだな」

 「まだ外周部じゃない。中心部まで行けば宝物が見つかるかもよ? なんかこういう所ってさ、ワクワクしてこない?」

 「はは、確かにな」


 レナの件で落ち込んでた姉ちゃんだったけど、この街の探索は、疲れた姉ちゃんの心を癒してくれるのかもしれないな。

 そうこうする内に、俺たちは都市中枢部へ向かった。


 「ここは……広場か何かだったのかしら」


 中枢の開けた場所には、子供が楽しめそうな遊具が設置されている。そして、更にその奥にあるホールのような建物には、石でできた長椅子が等間隔に並んでいた。


 「集会とかお祭りでもやってたんじゃないか?」

 「きっと、みんなが自然と集まって交流できるような……そんな場所だったのね」


 これだけ大きな都市でも、人がいなくなれば死んでしまう。

 そんな寂しさにも似た感情がこみ上げて来た。

 そのまま俺は、何となく目についた、いかにもそれっぽい形の遺構に触れようとして――


 キィ。

 湿り気を帯びた金属音が、背後から響いた。

 その異質な音に、全身が泡立つ。


 「誰だッ!?」


 ソッコーで振り返る。

 いつから座っていたのか分からないが、そこには青い人形、とでもいうような不思議な服装の男がいた。

 俺は「ヴァンブレイズ」に手を忍ばせながら、男に向き合う。


 「お前、何者だ……」

 「驚かせてしまったことは詫びよう。この朽ちていくだけの都市に、久方ぶりの客人が来たせいかな、つい、私の“好奇心”が疼いてしまってね。関わらずにはいられなかったんだ」


 男は帽子を取って軽く会釈した後、妙に体を反らせたままその場に立っている。

 いや、胡散臭すぎるだろ……。

 だってよ、辺りは砂漠、とっくの昔に廃棄された都市の探索中に遭遇した奴が、得体の知れない機械種なんて――どう考えても普通じゃねぇよ。

EPISODE11 『レナ』「レナを見ているようで、見ていない。こいつの目的を見極めないと……」

 「で? 機械種がなんだってこんな街にいるんだよ」


 返答によっては、撃つ。

 青い男は、腰に古ぼけた散弾銃を下げている。

 こいつの戦闘力は未知数だけど、事と次第によっちゃ戦うしかない。

 だが、男はそんなことには全く興味がないのか、両手を広げて戦う意思がないことをアピールしてきた。


 「おっと、君たちと敵対するつもりは更々ないよ。この場で、事を荒立てようとしない限りは、だがね」


 ――すると、男は淡々と語り始める。

 男はどうやら、ここで隠居生活を営んでいるらしい。ただ静かに時を刻むこの街に流れ着いて以来、ずっとその暮らしを維持しているとか。

 その話を完全に信じた訳じゃないが、この街を語るときに端々に感じられた“熱”には、男なりの美学が込められている気がした。


 「ふむ、つい長話をしてしまったようだ。この体のせいかな? 他者と言葉を交わすことに、私は望外の喜びを見出しているのかもしれない」


 男はそう言うと、道案内する使用人のように出口を指差して続ける。


 「時間を取らせた礼、という程ではないが、少しばかりの燃料は分け与えよう。船はどこに泊めてあるのかな?」


 俺たちは男を船まで案内することにした。

 船に到着すると、最初は警戒していたミリアムもヨナの話を受けて納得してくれたようだった。


 「――さて、補給も済んだことだし、出発するとしようかね」


 無事に補給も終わり、この街を発つ時間だ。

 俺たちが後部デッキから船に乗り込もうとした時、不意にハッチの開く音が鳴り響いた。


 「皆……ごめんね……」

 「レナ!? もう大丈夫なのかい!?」

 「うん、ごめんね……迷惑かけてばかりで……」

 「何言ってんだい。何もあんたのせいじゃないさね。むしろあの時レナが……って、あんた、凄い熱だよ?」

 「え、あ、あれ…………?」


 ミリアムに支えられながら、レナはその場にうずくまってしまう。


 「レナ!? こうしちゃいられない、直ぐにレナをベッドに寝かせてやらないと……!」

 「レナ、だと? お前は……まさか……アルテミスの……?」


 さして俺たちに興味も示さなかったはずの男。

 それが、レナの姿を見てから明らかな動揺を見せていた。

 その表情は、好奇心を抑えられない子供じみた純粋な喜びに満ちていて……。

 そして、男は言った。


 「良ければ、彼女を私に診させてはもらえないだろうか? 旧式ではあるが、都市の治療装置まで案内しよう」

 「そう言われて、ホイホイ付いていく程あたしはお人好しじゃないんでね。あんた、一体何者だい?」

 「自己紹介は二度目かな。私の名はブルースタイン。かつて電子の楽園の管理を担っていた神々の、末席に属していた者さ」


 自分を神と自称した機械種。

 この廃棄都市での妙な出会いが、俺たちの旅にどんな変化を与えていくのか、今の俺には分からなかった。

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■ 楽曲
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WORLD'S END
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無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧
コメント (ギデオン・ライゼ)
  • 総コメント数6
  • 最終投稿日時 2022/04/02 00:52
    • チュウニズムな名無し
    6
    2022/04/02 00:52 ID:dcpo14bn

    今更なんだけど、ギデオンのトランスフォームの『魔弾の射手』って、もしかしてオペラの題名が由来になっているのでは……?

    • チュウニズムな名無し
    5
    2021/09/26 14:00 ID:cpyaw0hf

    やっぱフルパワーの方がいいなこりゃ

    • チュウニズムな名無し
    4
    2021/09/23 17:02 ID:ahy1p5lq

    >>1

    ここだと人口少ない、だとよ

    たくさんの人に見て欲しいんなら尚更Twitterでやった方がいいってんにね

    • チュウニズムな名無し
    3
    2021/09/20 11:08 ID:ca9svoi6

    誰も書いてないから書くんだけど、ぶっちゃけずっと待ってたしめちゃくちゃ好き。

    性格も天然なクセに世話焼きで夢女夢男殺しのソレ。

    最初に顔出された頃やお姉さんであるヨナのストーリーで名前出された頃からもうずっと追いかけ続けてたのに、あの結末になったのめちゃくちゃつらすぎた……

    • チュウニズムな名無し
    2
    2021/09/19 19:07 ID:alnaexm5

    >>1

    あそこまで来るとイタいよな

    • チュウニズムな名無し
    1
    2021/09/19 18:45 ID:qsm8yidv

    ここには好きすぎる人(笑)湧いてないのウケるな

    そろそろしつこくなってきたし誰か教えてやってくれ

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