メイン・ストーリー・111協力~120禁区
111.協力
ペッパーシャコは再び一行の視線から逃れた。しかしこの先には、もっと重要なことがある。
主人公:ペッパーシャコのことはさておき、今回の件は本当に感謝してるよ。ありがとう!
バクテー:いいさいいさ、遠慮すんな。旅は道連れって言葉があるだろ。役に立てて何よりだ。ところで、お前さんたちはなぜ海に出たんだい?
イキ:うん、ぼくたちはソルサヴィス島へ行くつもりだったんだけど、海で迷っちゃって……
ラム酒:ソルサヴィスだって?それは一番東の久遠海域のほうじゃないか、ここは南だぞ。
ライス:えっ……そ、そんなに迷ってたの?
バクテー:別におかしい話でもないさ。俺たちもこの近くを航海していたときに気づいたんだが、あそこの海域は何かに覆われていたな。
主人公:覆われているって?
バクテー:詳しいことは俺にもわからない。けど思い当たる原因はそのくらいだな。
ミスラ:どうりで羅針盤が全然使えなかったのね。でも、私たちはそれでも行かなきゃならないの。
主人公:そうだね。ラム酒、もう一回力を貸してくれないか? 私たちをソルサヴィス島まで送ってほしい。近くまででいいから。そこからは、自力でなんとかする。
ラム酒:送るだけなら問題ないが、君たちはまだ知らないようだな、あの島は今はもう……
バクテー:ラム酒、ちょっと待ってくれ……まだお前さんの名前を聞いてなかったぞ。教えてくれないか?
主人公:あ、ごめん。私は○○、グルイラオの料理御侍だよ。
ラム酒:○○?どこかで聞いたような名前だな……おい、バクテー、この前のクソガキって……
バクテー:シーッ――
バクテーはそのまま話そうとするラム酒を止めた。だが○○はそんなふたりを訝しんで、目を細めた。
主人公:えっと……クソガキって言った?
バクテー:悪い、うちの船長は口が悪くてな。許してやってくれ。とにかく、お前さんたちの事情は大体把握できた。○○、まずは船を海に戻すのを手伝ってくれ。そしたら、ソルサヴィス島まで送ってやるよ。
112.約束を果たす
ベルーガ海賊団との話し合いを経て、一行はようやく目的地へと再出発した。
紆余曲折を経て、○○たちはようやくソルサヴィス島へと出航した。翌日――朝一番の日差しが深い霧へと差し込みはじめた頃、バクテーは帆を下ろして、船を停泊させた。
主人公:今度こそ本当に着いた……?
ライス:す、すごい霧です……
イキ:どこがどこだか、全く見えないぜ。
ラム酒:今は朝だ。霧があって当然だろう。とはいえ、ソルサヴィス島の霧は特に深い。○○、私たちが協力できるのは、ここまでのようだ。
バクテー:これ以上進むと暗礁の群れだ。俺たちの船じゃ渡れない。お前さんたちは、救命ボートに乗って上陸してくれ。
主人公:了解。うーん、色々助けてもらっちゃったし、どうお礼すればいいかな。
バクテー:気にするな、どうってことないさ。
オリビア:毎日こんなワガママな船長に付き合っているなんて、おぬしもご苦労だな。
バクテー:ワガママだからこそ、俺が傍についてるのさ。よっし、救命ボートを下ろしたぞ、全員準備してくれ。
主人公:ありがとう。それじゃ、私たちはここで。
バクテーから渡されたオールを受け取り、一行は島の瀬頭へと前進した。そして食霊海賊であるベルーガ海賊団のふたりは、船頭に立ちながら、彼らの去っていく姿を見送った。
バクテー:…………
ラム酒:行ったか?
バクテー:行った。
ラム酒:あの時はこんなことが起こるなんて信じられなかったが、彼らは本当に現れた。ということは、やはりソルサヴィス島はもう……?
バクテー:本当かどうかは、『あの者』をここに呼んで、直接会えばわかるさ。長年の約束も果たされるだろうよ。
113.上陸、そして
島に入った途端、一行は堕神の襲撃を受け……?!
救命ボードは深い霧を抜け、浜辺へと辿り着いた。○○たちは海に飛び込み、ボートごと海岸まで引っ張っていく。浜辺の奥には、僅かだが家や煙火が見える。一行はひとまず、海岸で見つけた洞窟で休息を兼ねて話をすることにした。
主人公:うん、人間がいるみたいだね……?たぶん、人間だよね?
イキ:なんでそんなに自信がないんだ?
主人公:桜の島で色々あったからね。ここにも堕神がいる可能性はゼロじゃない。うう、杞憂に終わればいいけど。
ミスラ:心配ごとは、先に調べておけばいいわ。ライス、何か見つかった?
ライス:いえ何も。ただ……
ライス:わたし、なんの気配も……感じられないんです……なにも……
イキ:えっ?
主人公:『空っぽ』だから?ここにきたら、力が不安定になっちゃったのかな……?
ティラミス:それは違うかと。わたくしも、何も感じられませんでした。
主人公:ティラミスも?えっと……二人して私をからかってる……とかじゃないよね?
オリビア:この島にはサイモンがいたからな。何か仕掛けがあるのかもしれない。とにかく気を抜くな。
イキ:警戒してばっかでもダメじゃないか?一番手っ取り早いのはーー堕神ーっ!出てきやがれ!ぼくたちと、今すぐ、正々堂々勝負しろ!
ミスラ:イキ、そんなこと言って、堕神が出てくるわけないで……
夢喰い:あら、まさか隠れて様子を窺ってたのがバレてるなんて……そんなに妾に会いたがってくれるとは嬉しいわ。妾は『夢喰い』。以後、御見知りおきを。
ミスラ:………………
イキ:ひゃあっ、お、堕神っ!す、すごい恰好だな!?
主人公:あのー、呼んだのはこいつです。私たちは無関係です。用があるならこいつにどうぞ!
イキ:おい!仲間を売るつもりかよ!
オリビア:おぬしが呼んだのは、まぎれもない事実だな。
夢喰い:フフフ、相手が誰であろうと構わないわよ。この地に足を踏み入れた以上、なすすべもなく夢に包まれて消えるといいわ……!
主人公:イキじゃ人質にならなかったか……仕方ない、全力で戦おうっ!
114.捨てられた子供
なんとか危機は乗り切った、少し休もう!
夢喰り:やだ……人間相手には非力だわ……。
イキ:うーん……力を出し切れてないみたいだな?
主人公:どうあれ、勝負はついた。まだ戦う?
夢喰い:妾は殺し合いは好まぬ。今は一旦身を引かせてもらうわ。次に会えるときを楽しみにしているわ……。
その瞬間、○○たちの前に白い霧が立ち上る。目の前は霧で何も見えない。次に視界が広がったときには、既に堕神の姿はなかった。
オリビア:逃げるのは早いな……!
イキ:どうする?追いかける?
オリビア:いや。さっきの戦いからして、大した堕神じゃなさそうだ。それより情報収集をしよう。みなもお腹が空いているんじゃないか?
ミスラ:そうね、もうお腹ぺこぺこ。
主人公:じゃあ、まずはご飯にしようか。イキ、バクテーからちょっと食料もらってきてたよね?どこか料理が出来る場所を探そう。
イキ:あいよ!
イキと○○は砂浜からほんの少し離れた場所に丁度良いスペースがあるのを発見した。ふたりは石畳の上に火を点け、料理の準備作業を始める。
石畳の上に、川の水と食材と調味料を入れた鍋を置く。煮込まれた美味しそうな料理の香が鍋から匂ってくる。
イキ:そろそろかな?
主人公:そうだね。みんなを呼んでこないと……ん?
シルレス:………………
振り返るとそこには、髪は乱れ、全身が汚れている少年が立っていた。その草臥れた様子に、○○は息を呑んだ。
イキ:どうした、○○?……ん?誰だ?
ライス:あの……この子、お腹が空いているみたいです……かわいそう……
主人公:ええ……そうみたいね。
イキ:なあ、こいつに食べ物を分けてやったらどうだ?
主人公:そうだね……これから私たちご飯にするんだけど、良かったら食べない?
シルレス:ありがとう!お腹空いてたんだ!
イキ:でもそんなにいっぱい作ってないよな……足りるかな?
主人公:だったら追加で作ればいいさ。ライス、また食材の用意をお願い。
ライス:わかったわ!
***
主人公:お待たせ~!ご飯ができたよ~!
ミスラ:もう!本当に待ったわよっ!お腹ぺっこべこ……ん?
シルレス:…………あ……
ミスラ:だ、誰……?
オリビア:○○、この子は何者だ?
主人公:ああ、イキの隠し子だよ。
イキ:違うっ!!!
ライス:この子は……多分、わたしたちの料理の香りに……引きつけられたのです……
ティラミス:へぇ……この子のおうち、ご飯が食べられないほど困窮してるの?
主人公:可哀想だから、少し料理を分けてあげようと思ってさ。いいよね?
オリビア:それは構わないが……いや、むしろこの子から島の情報を聞き出してやろうじゃないか。
主人公:そっか。そう言えば、まだ名前を聞いてなかったな。貴方の名前を教えてくれる?
シルレス:シェ、シェーレ。
オリビア:……シェーレ、サイモンについて、知っている教えてもらえないか?
シルレス:サイモン?誰?そんな人、知らないよ。
主人公:知らない?
ミスラ:もしかしたら……サイモンは密かにこの島へ上陸したのでは?それなら、誰も気づいてなくても、不思議じゃないわ。
オリビア:この辺りには堕神がまだいるんだ。それなのに、ひとりでうろつくとは思えない。きっとどこかに隠れ家があるはずだ。
シルレス:堕神?
イキ:そうだ、この辺りには堕神がいる。さっき一体倒したけど、あまり遠くへ行くとやられちまうぜ!
シルレス:堕神を倒した……もしかして貴方がたは、料理御侍か?
イキ:へへっ、そうだぜ!
シルレス:料理御侍……わお!料理御侍なんだね!
主人公:急にどうしたの?
シルレス:昔、おばあちゃんから色々な話を聞かされたよ。料理御侍は伝説の英雄なんだって……でもまさか、現実にいるとは!
ライス:え、えっと……?もしかしてこの島には……料理御侍が、いないのですか……?
ミスラ:そういえば……ソルサヴィス島は独立したノルス大陸の飛地(とびち)で、料理人ギルドの設立当初から久遠海域は無法地帯だったらしいわ。それで、僅かにいた料理御侍も最終的にはいなくなっちゃったって……昔読んだ本にそう書いてあったわ。
ミスラ:だから、この子が見たことないだけで、伝説の英雄ってことはないんじゃない?とりあえず……その本以外で、この島に関する情報は見たことないわ。私が提供できる情報はこのくらいね。
イキ:それって、もしかしてサイモンの仕業か?!
主人公:かもね。でもそんなことがあれば、シェーレは何か知ってるよね?
そう言って、○○はシェーレを見た。しかしシェーレは首を横に振り、否定する。やはりサイモンについては、知らないようだった。
主人公:こういうことは詳しそうな人を訪ねたほうがいい。ねぇ、シェーレ。貴方のおばあちゃんは料理御侍の話をしてたんだよね。だったら、何か知っているはずだ。紹介してくれない?
シルレス:えっと……おばあちゃんは、294年に亡くなった。
主人公:え?そ、そうなの……?ゴメンね――って、ちょっと待って!今、294年って言った?!
115.混乱の時間
色んな方法を試して、この地の事情を調べよう
ミスラ:確かに言った……けど、この子の記憶違いじゃない?
シルレス:俺の家族はおばあちゃんだけだ。亡くなった時のことは今でもはっきり覚えてる。5年前のことだよ。
オリビア:いや、待ってくれ……そんなことある筈が――もし、おぬしの言うことが正しいなら……今年は、王歴299年ということになるぞ?
シルレス:それがどうかしたか?
主人公:……んんんん?どういうこと……?頭が混乱してきたよ……。
イキ:堕神のせいか?桜の島でも似たようなことを経験したし。
主人公:あのときのこととはまるで違うよ。今回は時空を超えている――そんなバカなことがあるか……!?
ミスラ:でも、もし今年が本当に299年なら、サイモンが現れてないのも納得がいくわ。っていうか、まだ生まれてすらいないでしょうね。
ミスラ:逆に考えてみましょう。もし、もしもよ?私たちが『過去』に来てしまったのなら、タイムパラドックスの点から見ると……これは――
主人公:ミスラ、考えすぎて頭を混乱させないようにね。それより、今はどうしてこんなことになったのかを考えるほうが先決だよ。
オリビア:シェーレ、お主の知っていることを教えてほしい。最近何か妙なことはあった?
シルレス:妙なこと?うーん、そうだな。毎朝、町から失踪者が出てるけど、何か関係あるかな……?
ライス:そ、それはおかしいのです……!その『失踪』って、もしかしてライスたちがここにいるみたいな感じなのでしょうか……?
イキ:えっとそれは……ぼくたちが未来から過去だと思われる今に来ちゃった――その逆バージョン的なことが町民たちに起きてる可能性があるってこと?
主人公:まさか、そんな非現実的なことはないでしょ……。でも、否定できる材料はないね。ひとまず、それを切り口にして、町の人たちから話を聞いてみるのはアリかもしれないな。
116.疑い
空気の重い町からは何の答えも得られず、そして新たな危機が訪れた。
シェーレを連れて街に入ると、妙な違和感を覚えたーー道は広いのに、人影は一切見当たらない。道の両側に立った家から人々の話し声や咳が聞こえなければ、ここは誰も住んでいない廃棄された町だと思っただろう。
主人公:昼間から誰も見かけない。家の中に篭って何かしてるのかな?
イキ:そこも含めて、話を聞いてみようぜ。すみませーん!誰かいますかー!
イキがすぐ傍の家の扉をノックする。その途端、室内から聞こえていた話し声はすぐに止み、慌てた様子の男の叫び声が聞こえてきた。
???:だ、誰だ!外にいるのは!?
イキ:すみません、おじさん。ぼくたちグルイラオから来た料理御侍です。この町について、ちょっと伺いたいことが……
???:俺はなにも知らん!さっさとどっか行け!
イキ:あっ!ちょっと待てよ!まだ話してる途中だろうが!おっさん、人の話は最後まで聞けって、教わらなかったのか!?
ライス:あ、あの……イキさん!そ、そんな風に……刺激するのは……!
シルレス:町の人は、町民が失踪する事件が続いてるから、次は自分たちなんじゃないかって、みんな不安になってるんだ。それに……
???:その声、マリのところのガキだな?
???:こんな昼間によく外でブラブラできるもんだな。やっぱり失踪の件と関係があるのか?マリさんには『お前みたいな成長が止まった子どもは堕神に決まってる』って何度も言ったのに、まるで聞く耳を持ってくれなかった……!
シルレス:………………
主人公:おじさんおじさん。しゃべりすぎると次の失踪者はおじさんになっちゃうかもしれないよ~?
その瞬間、激しい物音が室内から響き渡る。その後、○○は男性の反応を待っていたが、彼は黙り込んでしまい、そこで会話は終了してしまった。
イキ:なんてやつだ!こんな子どもに事件の問題を押しつけるなんて……!
ライス:シェーレ、大丈夫……?
シルレス:うん、大丈夫だ。それに本当のことだ……おばあちゃんに拾われたこの数十年、確かにずっと子どものままなんだ。もしかしたら、本当に俺は堕神なのかもしれない。
主人公:堕神は私の料理を見て、食べたがったりしないよ。それに、本当に成長が止まったの?
ミスラ:人間から見て、『成長が止まっている』かのように見える種族は……アレしか……?
オリビア:ちょっと待て、○○その話は後だ。
主人公:どうしましたか?
オリビア:――堕神だ。いつの間にか、囲まれていたようだな。準備はいいか?……行くぞ!
***
主人公:結構な量の堕神だったな。いったい、どこから出てきたんだ?
オリビア:さて……ただ、今のはさっき追い払った堕神の子分みたいだな。追い払ったことで恨みでも持たれたのか?
ライス:そうかもしれません。『失踪事件』は……もしかしたら……あの堕神と、何か関係が……あるかも……?
主人公:島で唯一出くわした堕神があいつだ。その可能性は高い。でも、今回は表には出てこないで、私たちを追い詰めるつもりみたいだ。なんとかしてあいつを探さないと。
117.決定
御侍さま、シェーレと一緒に、山を調べに行きましょう!ライスも、ついていきます。
シルレス:堕神を探すの?
オリビア:町の失踪の件は、あの堕神と関係があるかもね。けど、どっちにしろ今は、何の手掛かりもない。失踪事件について、もっと検証を重ねる必要がある。シェーレ、失踪事件について、他に知っていることはない?
シルレス:そうだなぁ……町の人たちは、これまでずっと肇始之神に加護を祈ってたんだ。今回の失踪事件が起きたときも、沢山の人が祈るために、山にある聖堂に行った。
主人公:『聖堂』に?
シルレス:ああ。でも、失踪した人も祈りに行った人も、誰ひとり戻ってこなかった……それで聖堂に行ったあと失踪したって話になってさ。みんな怖くなって――家に閉じこもってしまったんだ。
ミスラ:ということは、堕神が聖堂にいる可能性はゼロじゃないわね。夜になってから、町に下りてきて、人々をさらっているのかも。
主人公:じゃあ、山の聖堂に行ってみようか。もしかしたら何かわかるかもしれないし。
ライス:御侍さま、待ってください……危ないです……もし、わたしたちも狙われたら……危険なのです……!
主人公:ライス……それ、ナイスアイデアだよ!よし、みんなその作戦で行こうか……。
***
一行は町を離れ、シェーレの案内で山へと入っていく。ここは島にあるふたつの山の一角である。
ほどなくして眼前に現れた聖堂は、平坦な広い敷地に建てられていた。ここからは山から見下ろす町全体の景色と、隣に立つ山から煙が立ちのぼっている様子が一望できた。
主人公:隣の山は、火山かな?
ミスラ:聖堂があるのがあっちの山じゃなくてよかった……。
オリビア:あんなところに建てていたとしたら、この町の者たちは相当どうかしてるぞ。
イキ:とはいえ、こっちの山も雑草ばっかりだ……見るとこは、特になしって感じ。
主人公:聖堂に祈りに来る以外に、人が来ることがない山なんだよね?廃棄同然の山だよ。
ライス:でも、建物は……新しいです……
シルレス:それに人がいた形跡が……って、あああー!?聖像がない!!
オリビア:聖像?
シェーレが聖堂の真ん中を指さして振り返る。○○はゆっくりと視線を移動させるが、そこには何もなかった。
シルレス:あそこには、肇始之神の聖像が置いてあったはずなのに……無くなってる。
近づいて観察すると、床に損傷した痕跡があった。そして一本の黒い紐状の毛のようなものを見つけた。
ミスラ:これは、あの堕神の髪の毛かしら?
主人公:……ってことは、ここが根城で当たりかな?あいつが現れるのを待ってみようか。
イキ:待っているだけでいいのか?
主人公:イキはどう思う?ここに祈りに来た人はみんな失踪してるんだよ?
ライス:御侍さま、まさか……
オリビア:おぬしが言っていた、『良いアイデア』とはこのことか?
主人公:そうだよ。私たちが囮になってここにいたら、あいつが出てくると思ってる。今は、他に手がかりもないし、あいつがいた痕跡も見つかった。そう悪くない賭けじゃないかな?
118.聖堂に到着
ここにも堕神が隠れていたとは、気をつけて対応しよう。
ミスラ:○○!○○!
主人公:うん……?
ミスラ:早く起きて!
主人公:ミスラ、それとシェーレも……あれ!?私、いつの間に寝てたの?
シルレス:多分……昨日から。
主人公:昨日!?まさかあの堕神の仕業じゃ……ねえライス――って、みんなはどこ!?
ミスラ:私が目覚めた時には、私たち三人しかいなかったわ。もしかしたら、『失踪』したのかも……。
主人公:嘘……!なんで私たちだけ取り残されてるの?
三人は互いの顔を注視するも、まるで原因がわからなかった。そのとき、聖堂の外から音がする。慌てて外に出てみると、イキとオリビアの姿が見えた。
主人公:なんだ、さらわれた訳じゃなかったんだ、良かった。びっくりしたよ。
オリビア:………………
ミスラ:○○。待って、何か変よ。
主人公:うん……?二人とも、どうかしたの?
○○の質問に対して、イキとオリビアは無反応だった。ただじっと、不気味な形相でこちらを見つめていた。○○はもう一度話しかけようとすると、二人は突然、暴飲王子と暴食へと姿を変えた。
シルレス:うわああっ!お、堕神!
ミスラ:きゃああっ!
主人公:ミスラ、シェーレ!早く聖堂に隠れて!ここは私がなんとかするから!!
***
○○は食霊の力を借りて、無事に暴飲王子と暴食を見事に退治した。けれど、一行の疑問は増すばかりである。
ミスラ:どう考えてもおかしいわ。
主人公:確かにおかしいね。今は、とにかくその原因を探さなきゃ……
シルレス:ねぇ、他の人たちは殺されちゃったのかな……?
主人公:大丈夫だよ、心配しなくていいよ。さっきのは堕神だったんだ……まさか、堕神が人間に化けるなんてね……でも狸が人間に化けるのは知ってたけど、今回みたいなケースは初めてだ……。
ミスラ:でも他のみんなはどこへ消えたのかしら?連絡できる手段があれば……
シルレス:○○、○○!腰につけてるやつで、連絡できないの?
主人公:あっ!う……お、ああぁっ!そうだ、通話機!これがあった!
ミスラの開発道具の存在を思い出し、○○はやっと落ち着きを取り戻した。そして通話機を鳴らすと、聴き慣れた声が流れ出した。
ライス:御侍さま!御侍さまですか!?お願いです……なにか、喋ってください……!
主人公:は、はいはいっ!!ライス、無事かい?オリビアとイキはそこにいる?
オリビア:ああ、三人一緒だ。私たちは大丈夫。それより、おぬしたちの居場所を教えてくれ。
主人公:うん、私たちは今……って、それはこっちも聞きたいよ!どこにいるの?いつの間にか寝ちゃってて事情がよくわからないんだ。
イキ:は?○○、まだ寝ぼけてんの?『失踪』したのはキミたち三人だろ。今聖堂にいるのは、ライスとオリビア、そしてぼくだ!
主人公:え?!そっちも聖堂の……近くにいるのか?こっちも聖堂にいるんだけど……。
イキ:ぼくたちは、聖堂の出口に立ってるぞ……なぁ、オリビア。これはどういうことだ?
オリビア:……現状から想定するに……信じられないが、どうやら私たちは今、二つの空間に切り離されたみたいだ。
主人公:オリビアもそう思う?
ミスラ:違うわ、空間じゃない……
主人公:ミスラ?
ミスラ:私、今みたいな状況を知ってる気がするの……けど、どの本で読んだのか、全然思い出せなくて――
オリビア:では、歩きながらゆっくり考えてもらうとしよう。○○、さきほど私たちに化けた堕神と戦わなかったか?
主人公:そうそう……ってことは、そっちも同じ目に遭ったの?
ライス:御侍さま、さっき……堕神を退治した後、ライス……気配を……感じました。もう一つの……山からです!
主人公:もう一つって、あの火山のこと?
○○は目を細めて隣に聳え立つ火山を見た。するとその視線に反応するかのように、火山口からマグマが噴火した。
ミスラ:な、なんであんなところから気配が……?
主人公:あはは、いかにもって感じ。英雄が活躍する物語の大魔王って、ああいう雰囲気のとこ、好きそうじゃない?
オリビア:空間が異なるとはいえ、私たちがいる場所は同じ聖堂だ。今から同時にあの火山へ向けて出発し、その間できるだけ連絡が取れるようにしよう。
主人公:いいね。その作戦、乗った!
119.迷い
こんな時こそ慌ててはいけない。すぐ対策を探すのが、御侍のやるべきことだ。
ライス:御侍さま、聞こえますか?
主人公:聞こえるよ。えっと、今の位置は……そっちも大体同じところにいるのかな。
ライス:はい……そうだと思います!
ライス:姿が見えなくても……こうして御侍さまの声が聞こえれば……ライスは、とっても安心します……!
主人公:あの黒い堕神の件が解決したら、こんな回りくどい連絡はしなくて済むようになるかな。
オリビア:○○、だいぶ歩いた。少し休んで、昼食にしようか。
主人公:うん、そうだね。食事の時間にしよ……ああ!?
イキ:○○、食料はぼくが持ってるぞー。
ミスラ:そ、そんな……なら私たちはどうすれば?!
主人公:ハハッ、ミスラったらそんな絶望した顔して……イキも同じ場所にいるみたいだし、あいつに聞いたら?
ミスラ:冗談言ってる場合じゃないでしょ!お腹すいたわ!!今すぐご飯が食べたいーっ!!!
オリビア:大食いと一緒だと楽しい時間が過ごせそうだな、○○。鍋はそっちにあるんじゃないか?それで何か作ってやったらどうだ。
主人公:作るのは別にいいんだけど……この辺で食材が見つかるかどうかかな。
シルレス:食材の場所なら知ってるよ!
シルレス:この近くに果樹の林があるんだ。昔よくおばあちゃんと一緒に果物や野菜を取りに行ってたんだよ。ここでちょっと待ってて。すぐ採ってくるよ。
ミスラ:シェーレ……!ありがとうっ、任せたわ……!
120.禁区
ソルサヴィス島はやはり思ったよりも遥かに危ないところだ。油断はできない。
主人公:やっと山の麓まで着いた。
ミスラ:こんなところに洞窟があるなんて……あの堕神が、この奥に隠れているのかな。どんな危険があるかわからない以上、○○、万全の準備を整えておいて。
主人公:うん。それとシェーレ……ん?どうかした?
シルレス:……この奥、な、なんか危険な気配を感じる……!
主人公:そっか。堕神がいるのかな?だったら危険なのは道理だ。
シルレス:そ、そうじゃないよ。
オリビア:○○、どうした?
主人公:ああ、シェーレが洞窟の奥から危険な気配を感じるって怖がってるんだよ。
オリビア:ちょうど良かった。この洞窟について、伝えておくべきことがある。
主人公:ん?何か情報がある?
オリビア:危険以前に……何もわからない場所だと言うべきだな。料理御侍ギルド内では、ソルサヴィス島には料理御侍のいないと言われている。だが本当のところは、ここで一度だけ隠密行動をしたことがあるのだ。
主人公:隠密行動って?ねぇオリビア、もう少し詳しく聞かせてくれない?備えあれば憂いなしって言うでしょ……
オリビア:私にも詳しくはわからない。だが、実際にこの行動に参加したのはルクシードのチームだけという話だ。
オリビア:わかっているのは、彼らはこの周辺を禁区と定め、この町の長に堕神の存在を伝え、絶対に入ってはならないと――立ち入り禁止区域だ、とそう警告したということだ。
ミスラ:そ……それはいつ頃の話なの?
オリビア:少なくとも、ルクシードがまだ戦闘部の部長になっていないときのことだろうな……
ミスラ:この件とサイモンが関係あったら、料理人ギルド自体が問題になるわ。
主人公:ギルドはサイモンと協力するような組織じゃないよ。きっと、他になにか理由があるはずだ……真相は中に入って確かめるしかないね。
主人公:ミスラとシェーレはここで待ってて。ここから先は、私一人で行くよ。
ミスラ:そうね、そのほうが……
シルレス:いや、俺も入るよ。
主人公:そうなの?
シルレス:今はもう大丈夫、怖くないよ!俺はお前たちの足を引っ張りたくない!おばあちゃんが言ってたんだ。料理御侍はみんな勇敢で、どんな困難にも立ち向かうんだって……お、俺も、そういう人間になりたいんだ!
ミスラ:シェーレ……
主人公:料理御侍は勇敢かあ……確かにそうかもしれない。でも、ここから先が危険なのは間違いないよ。何が起こるかわからない。それでも君は、一緒に行くの?
シルレス:うん!
少年の揺るぎない答えを前に、○○も知らず知らずのうちに胸が熱くなってきた。そしてニカッと笑い、思いっきりシェーレの頭を掻き撫でた。
主人公:すごいな!いいね、気に入ったよ!
主人公:じゃあ一緒に行こうか。でも、私の言いつけはきちんと守ること。それから何があっても、勝手なマネは厳禁!私の後ろにちゃーんとついてくること……わかった?
シルレス:わかった!
夢喰い:おやおや……誰が来たのかと思えば――あのときの。ふふっ……人の根城まで追いかけてくるなんて、そんなに妾のことが忘れられなくなっちゃった?
ミスラ:○○、来たわよ!
主人公:あのさ、悦に浸って楽しそうだけどさ……状況把握した方がいいんじゃない?悪いけど、今回は容赦しないよ?
夢喰い:フフフフ……!せっかく妾のことを心配してくれたところで悪いけど、今はそなたとその仲間たちの行方を心配してはどうだい?
ミスラ:全部貴方の仕業なんじゃないの!?○○、コテンパンにやっつけちゃって!
オリビア:○○、そっちにも堕神が現れたんだろう?無駄話はここまでにして、戦闘準備に移ろう。そちらも同時に戦闘を開始してくれ!きっと効果があるはずだ。
主人公:え?どういうこと?!
シルレス:○○!
夢喰い:フフフフ……!そなたら、どうかしたのか?
イキ:(○○、変だ……ダメージを与えられない!そっちは……!?)
主人公:こ、こっちもだ。攻撃が効かない……!もしかして、幻と戦ってる?
ミスラ:しっかりしてちょうだい、○○!幻だったら、私たちにダメージがあるのはなんでよ!?
主人公:くっ……その通りだね。食霊は、攻撃されてる……!!
主人公:て、撤退するよっ!まずは一旦ここから離れて、体制の立て直しだ!!
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