魚香肉糸・エピソード
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魚香肉糸のエピソード
常にチャイナドレスを身にまとっているお姉さま型食霊。大人っぽくて面白い性格が女子の間ではかなり人気のようだ。普段は歴史の研究に浸り、古今東西を知る有名な歴史学者のひとりである。歴史を鑑とし、過去を忘れず未来の戒めにするよう周りに言い聞かせている。
Ⅰ地下室
(※一部誤字と思われる箇所を編集者の判断で変更して記載しています)
「好奇心は猫を殺す。」
これは人類社会で広く知られることわざだ。
そして、御侍様が天寿を全うした時、残してくれた「遺言」だ。
私は目の前に置かれた黒い本を眺め、開こうとしていた手を止めた。
この汚くて暗い地下室は湿気と臭いに満ちている。私が持ってきたランプの光が弱くなり始めた。
そうして自分にためらっている時間はもうない、追手がいつドアを破って飛び入ってもおかしくないと言い聞かせる。長年求めてきた「真相」が、今目の前にある。
触って、開いて、しっかりと覚える。これが歴史学者である私の責任だ。
しかし、私の両手が意思に反して震えている。歴史文書から発見した破綻は私の恐怖心を呼び起こした。熟知しているはずの過去の歴史が、巨大な蛇のように私の全身を取り巻く。
「好奇心は猫を殺す。」
御侍様の警告は再び私の中で響く。御侍様が自分の命が長くないと知ったときの目つきは忘れられない。
私が彼の命令に背き、世界中のすべての歴史文書を読んで覚えていることをとっくに見抜いているような目つきだった。
私は持っている煙管に火をつけ、深呼吸した。煙草の香りは重い湿気を帯びた空気に混ざり始めた。少し緊張がほぐれる。
私は再び黒い歴史書に手をかけ、ゆっくりとカバーをめくった。しかし、その瞬間、ドアが開かれた。
圧迫感が部屋に充満し、私はすぐ煙草を消して近くの本棚の後ろに隠れた。
しばらくすると、ゆっくりとした足音がさっき私がいた木の椅子の前から聞こえた。そして、低い男性の声。
「そこにいるのでしょう?」
Ⅱ裏切り者
この国には膨大な人口も有利な地理条件もないが、驚くべき財産があり、国民はみんな裕福な生活をしている。
そのため、外からは疑いの目で見られている。
しかし、他国が派遣したスパイがこの国に入っても、誰一人帰る者はいなかった。
その「原因」は、多分私がいる地下室に入り、本棚の後ろに隠れている私を見つけたこの男だろう。
「おや?狙いはやはりあの歴史書か。」
彼は余裕の態度で木製椅子に座り、友達とおしゃべりとしているような口調で私に聞きながら、先ほど私がめくらなかった本を開く。
「どうやら、まだ読んでいない様子ですね」
彼はいたずらっぽく言った。適当にめくった後、彼は本を閉じた。私は本棚の隙間から彼の動きを観察しているが、彼はポケットから煙草を取り出して火をつけ、私がいる方向には目も向けない。
私は軽々しく動く勇気もなく、呼吸するのさえ慎重に、彼の急襲に備えている。次の瞬間、ドアの外から足音が伝わってきて、誰かが勢い強くドアを開けた。
「泥棒め、今日という今日は捕まえたぞ!」
追手のリーダーが激怒して怒鳴っている。私が城に潜入したことがばれた後、ずっと追ってきたやつだ。
「どうしてあなたが?」
得意満面の兵士が木造椅子に座っている男を見て、激怒が驚愕へと変わった。室内の煙はますます濃くなり、その後、信じられないことが起きた。
空気中に漂っている煙が飛び込んだ兵士たちを包み始める。
「や、やめ……」
兵士たちは次々と倒れ、リーダーも顔を真っ赤にしている。まるで誰かに首を絞められているようだ。怒った彼は椅子に座っている男をさし、断続的な声で言った。
「貴様のような……裏切り者……王は……許さない!」
次の瞬間、彼の声が途切れ、他の兵士のように倒れた。
この男も食霊だ。しかも霊力は私をはるかに超えている。突然の異変に気を取られていると、彼の声が私の傍から伝わってきた。
「それでは、続けましょうか?」
Ⅲ 破滅者
「好奇心は猫を殺す。」
御侍様が残してくれたこのことわざは正に至言だ。座右の銘として胸に刻みつけておきたい。
しかし、すべてはもう手遅れだ。
私は黒い歴史書を抱いてこの国の真ん中に立っている。目の前に広がるのは大火事で、爆発の音、泣き声、助けを求める声が絶えず聞こえてくる。
「吾がどうやってこの国を葬るのかじっくり見てもらおう」あの食霊が地下室で言った言葉がまた浮かんできた。
「そして、そなたの任務はすべてを記録し、後の時代に残る歴史書を作ることだ」
まるで明日の朝食はなんなのかを喋っているような気楽な態度だった。
私は思わず手の中の黒い歴史書を握りしめた。
あの食霊が地下室から出た後、私は黒い歴史書を最後まで読んだ。
本の記録が残酷なのか、それとも目の前の光景が残酷なのか、今の私にはもはや分からない。
悲劇は深夜から翌日の黎明まで続いた。
朝の最初の一条の光がこの国の土地を照らしたとき、かつての繁栄は跡形もなく、取り繕った表面に封じられていた闇が外へ流れ出し、王国とともに消滅した。
あの食霊は今廃墟の中で横になっている。彼は全身の霊力を使い切った。しかし、彼の表情は相変わらず余裕満々で、初対面の時と同じだった。
今回の激戦により、彼にはもう霊圧だけで人を殺せるほどの力は残っていない。
相討ちだ。
太陽が徐々に昇り、暖かい光が私の中を通り、後ろに影を作る。
私は透明になっていく自分の体を見つめ、解放されたように笑った。
時間だ。
Ⅳ 命令だ
御侍様に召喚されたときから私は強い好奇心を抱いている。
世界の万物はどうやって作られたのか、人類はどういう生き物なのか、食霊は何のために生み出されたかなどなど。
好奇心はとどまることのない探究心を呼び起こし、私は歴史が疑問に答えてくれるということを発見した。
だから、私は御侍様の反対を押し切り、世界各地の歴史書に夢中になった。その後、私はあることに気付く。私が読んだ歴史文書は不完全なのだ。
失われた部分は他の事件で埋められたが、根気よく分析すると、矛盾点がたくさんある。
御侍様が亡くなった後、私はこれらの矛盾点を解明するための鍵を発見した。
「黒い歴史書」
廃墟の中で、徐々に消えてゆく体を見つめながら、死が近づくような感覚を感じたり、自分の長い一生を振り返ってみたりしていた。
最初の何も知らない私から、真相と共に死にゆく今の私まで。あまりにも長い時を歩いてきた。だから是非を問わない。今の私は、ただ目を閉じて静かに寝たい。
「食霊が死ぬとはこういうことなのか?」
動く力もないはずの食霊は突然私の隣に現れた。私はただ黙って彼を見ている。もう喋る力も残っていないから。
「確か、そなたは地下室で、起こった全てのことを記録すると承知したであろう?」
その声は柔らかいが、どうも悪戯のように聞こえる。私の姿を見たら、もう救えないと分かっているはずだ。なぜあの約束のことを今更?
しかし、次の言葉には驚いた。
「だからこのまま死なせはしませぬ。約束してくれた以上、きちんと働かなくてはな」
驚く私に、彼は懐から不思議な光が宿っている石を取り出し、私の目を見つめてゆっくり言った。
「これからは吾のそばにいて、吾のために働いてください」
「これはお願いじゃなくて、命令ですよ」
彼は軽く笑った。
Ⅴ 魚香肉糸(ユーシャンロース)
王暦250年、光耀大陸で最も栄えた国で歴史編纂の役人を務めていた男は、ある夜に遁走し、霧に包まれる竹林に身を隠した。
彼は一生分の心血を注ぎ、ある闇について記録を残し、それをその国の人間に見つからない地下室に残した。
その後、穏やかで寂しい日々が魚香肉糸(ユーシャンロース)の出現まで続いた。
彼は、彼女が歴史に関わる本を読むことを禁じたが、生まれつき強い好奇心の影響で、彼女は自分の探究心を抑制できなかった。かつての彼と同じく、彼女はすべての歴史書を読み尽くした。
そして、歴史書に人為的な改竄があることを、彼女は発見したのだ。
王暦270年、年を取った歴史編纂の役人が亡くなり、契約の縛りから解放された魚香肉糸(ユーシャンロース)はやっと歴史の失われた部分を探す旅に出た。
しかし、契約の力を失ったので、元から他の食霊より貧弱な彼女の霊力は、日々消えようとしている。
王暦300年、魚香肉糸(ユーシャンロース)は細々とした手がかりによって、歴史編纂の役人が生前いた国までたどり着く。運命の結果なのか、役人の一生の記録が封印された地下室を見つけるまでに、それほど時間はかからなかった。そして、「黒い歴史書」が彼女の目の前に現れた。
自分の命はもう長くないと知っている魚香肉糸(ユーシャンロース)は、あの時の役人と同じ選択をした。
彼女はその真の歴史を心の中に葬るのだ。
しかし、彼女が死ぬ寸前、あの食霊が彼女の人生の道を変えた。
あの日以降彼女は歴史編纂役として彼に付くことになった。
「私の許可なく、勝手に私の命を延ばしたから」
なぜずっと彼についているのかと聞かれると、魚香肉糸(ユーシャンロース)はいつもこう答える。
「だから、彼のそばにいて、彼が何をしたいのか見ておかなくちゃ」
しかし、本当の理由はおそらく違うところにあるだろう。
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