沙海煌音・ストーリー・異国の唄Ⅱ
壁画の天女
力持ちの天女。
八宝飯:猫耳ちゃん、幻境の中の天女様たちを覚えている?
猫耳麺:うぅ……見えませんでしたが、彼女たちの声は聞きました。きっと素敵な容姿をしているだろうと。
八宝飯:まさか……あんな強いなんてな、恐ろしい……
羅布麻茶:二人で何をコソコソ話をしているの?
八宝飯:うわっ!ビックリした、まったく足音がしなかったぞ……
羅布麻茶:天女なんだから、足音がなくて当然じゃない?
八宝飯:きっ、聞こえてたんだ……あれは褒め言葉だよ!あんたが綺麗だって褒めてたところだ!
羅布麻茶:……あたしの耳はちゃんと機能しているわよ。
八宝飯:ゴホンッ、ちょっと質問だけど……壁画の天女って、みんな……あんたみたいに強いのか?
八宝飯:そんなジーっと見つめるなよ、本当にただの好奇心だから。
羅布麻茶:もう一度幻境に送り込んで、じっくり見せて……いや、天女たちの力強さを体験させてやろうか?
八宝飯:いやいやいや!許してください!もう変な事考えません!
動く白骨
白骨に隠されたのは……
少し前
地下道
曲がりくねった地下道は静かで陰湿だ、なんだか寒気がする。
猫耳麺と八宝飯が角を曲がると、隅に骨の山が見えて悪寒を感じた。
八宝飯:大丈夫だ猫耳ちゃん。ただの骨だからな、オイラが守ってやる!
猫耳麺:うぅ……
八宝飯:ちょっと待って……骨が……勝手に動いてるぞ?!
八宝飯:ぎゃあー!こっち来る!助けて!鳳爪たちを呼んでくる!
猫耳麺:あの……八宝飯さま……足が速いです……ネズミが何匹か隠れてただけですよ……
猫耳麺:それに……さっきのも怖がっていた訳じゃ……
白羽花
純白無垢の願い。
八宝飯:この地宮にお宝がこんなにあるなんて……へへへ……
八宝飯は目を輝かせながら、地下室の砂に埋もれながらも、黄金の輝きを見せている器物を見た。
八宝飯:一個でも持ち帰れたら……いった!リュウセイまたオイラを殴ったな!
リュウセイベーコン:何度も言っているけど、そういう考えはやめろ。
八宝飯:言ってみただけだよ……言うのもダメなら、見るくらいはいいだろ……
そう言って、八宝飯は隅にあるボロボロの布袋に目を惹かれた。布袋の割れ目から純白の花びらが見え隠れしている。
八宝飯:花……?とっくに枯れてもいいはずなのに……こんなに完璧に保存されているなんて!
泡椒鳳爪:生花を特殊な方法で乾かせば、標本として本来の色と形を保存できるようです。どうやらこの花の持ち主の管理が素晴らしかったようですね。
猫耳麺:綺麗ですね。うぅ……それにこの花びら、羽みたいです。
羅布麻茶:この花は白羽花って言うのよ。雪のように綺麗で、霜のように強い。砂漠でも長く生きられるの。
八宝飯:この布袋の後ろに記号が……なんだろう……
羅布麻茶:それは記号じゃなくて、古代玉沙の文字よ。そうね……「神女様のご加護あれ、砂嵐や戦争が起こりませんように」って書いてあるわ。
羅布麻茶:白羽花は玉沙語で、希望と平和を象徴しているの。
泡椒鳳爪:なるほど……こんな願掛けをするということは、信心深いのですね。
八宝飯:この花が今日まで完璧に保存されているってことは、願いがきっと叶うってことだな!
羅布麻茶:……
羅布麻茶:なんでもない、行くわよ。
泡椒鳳爪:……
助け合う
優しい拒絶
影の中の過去
映画のように現れる過去。
提灯がゆるりと古びた石壁に光を当て、映像のようなものが徐々に浮かび上がる。
八宝飯:破損した壁画にも、ちゃんと物語があるんだな……
空に浮かぶ映像に広い砂漠が現れ、城が見え隠れしている。しかし、突然の強風で、城は崩壊しそうになっていた。
リュウセイベーコン:これは……砂嵐?
羅布麻茶:砂嵐?何を見ているの?
羅布麻茶が視線を向けると、画面は一瞬のうち風と砂に塗りつぶされ、建物が倒れ、人影も霞んだ。強風と叫び声は映像から飛び出さんばかりの勢いだ。
羅布麻茶:…………
八宝飯:すごい砂嵐だな……
リュウセイベーコン:ここに記録されているのはどこの城だろう。こんな大きな砂嵐なら、無傷じゃいられなかったんじゃないのか。
リュウセイベーコンのため息とともに、映像は暗くなり、物語の終わりを告げるように、古い壁画も薄暗い色に戻った。
八宝飯の言葉を聞いて、羅布麻茶は顔を上げたが、まだ気持ちの整理ができていないのか背を向けた。
羅布麻茶:なんでもないわ……
泡椒鳳爪:リュウセイの提灯投影を初めて見た時、我も驚きで言葉を失いました。
泡椒鳳爪:自分の過去ではないが、やはり感傷的になります、れっきとした歴史だったからですね。
泡椒鳳爪:羅布麻茶さん、辛いでしょうが……今という時間を大切に思って欲しいです。去ったものは戻らないが、新たにやって来るものはありますから。
羅布麻茶:わかっているわ……ありがとう。
八宝飯:えっと……辛いなら見ないのが一番!猫耳ちゃんが呼んでいるみたいだし、早く行こう!
気がかり
もう片方の心掛け。
少し前
機関鳥の上
モフモフ鳥:zz……zzz……チキン野郎……いつか……全員を……焼き鳥にしてやる!zzz……
辣子鶏:…………
よだれがこぼれ落ちる寸前、辣子鶏は自分の肩でぐっすり寝ているモフモフ鳥を追い払った。
ようやく静かになったところで、彼は何か考え事をしているように遠くを見つめた。
東坡肉:ん?珍しいのう、どうしたのじゃ?
辣子鶏:いや、あそこに黒い雲が……まああれくらいは機関鳥の脅威にはならないか。
東坡肉:ほう……砂漠の方か……確かに天気がよろしくないようじゃな、心配しておるのか?
辣子鶏:……地府のやつらはみんな悪運が強い、心配する必要なんてない。
東坡肉:ふふっ、安心しろ。あれは黒い雲ではなく、風が巻き起こした砂じゃ。それに決して強くはない、足止めにはならんじゃろう。
東坡肉:それに鳳爪やリュウセイもおる、上手くやってくれるはずじゃ。
辣子鶏:砂嵐……八宝飯が砂まみれになるところが見れねぇってことか、そいつは残念だ。
東坡肉:そんなに「見たい」なら、風が少し止んでから駆けつけるがよい。
辣子鶏:フンッ、こっちが行かねぇと、あいつらを連れ戻すやつもいねぇだろ。
東坡肉:そうじゃなーそれに約束の時間までまだ少しある。その前に、さっき捨てたあのモフモフ鳥を探したらどうじゃ?後々面倒じゃろう。
辣子鶏:あのデブ鳥、一応翼があるし、自分で帰れるだろ。
災いの元
聖教の争い。
数日前
聖教
聖教本殿内は音楽と舞の祭りの最中だ。
蛇スープ:……
ハイビスカスティー:休憩時間は私と一緒に過ごす約束だろう。
蛇スープ:……そこ、うるさい。
ハイビスカスティー:音を下げるように言っておくから、こっちへ来い。これは君のために取っておいた酒だ。
蛇スープ:うん……
ハイビスカスティー:その顔……誰にやられた?
蛇スープ:違う……昨日……青ちゃんと白ちゃんと遊んで……
ハイビスカスティー:どれ……傷は浅いようだな。
蛇スープ:……人の気配……
チキンスープ:聖主様……!
報告しようと本殿に入ろうとしたチキンスープは、青と白の蛇に止められた。
蛇スープ:……悪い女……嫌い……
ハイビスカスティー:ふっ……聖女がここに来るとは、何か用でも?
チキンスープ:……ご報告があって参りました。
ハイビスカスティー:まあまあ、用は酒を飲んでからだ。
チキンスープ:僭越ながら、事は重大です、聖主様は西域の聖物を覚えてらっしゃいますでしょうか……
惨事を免れる
頼もしい証人。
数日前
ある城の中
羊方蔵魚は腰にあるパンパンになった銭袋を揺らし、鼻歌を歌って町を歩いていた。
角を曲がると、見知った人影が見え、羊方蔵魚は足を止めて静かに去ろうとしたところ、後ろから肩を掴まれた。
彫花蜜煎:コソコソと何をしているの?うちを見てすぐ逃げようとするなんてね。
羊方蔵魚:……あいやー、奇遇ですね!お三方でしたか、これは失敬。
ヤンシェズ:匂いが……ヘン……
蟹醸橙:匂い?確かに。羊方蔵魚、またなんか変な薬草の匂いがするよ?普段は銭の悪臭しかしないのに。
羊方蔵魚:……いやー、薬屋で明の旦那のために薬を買ってきたところでして。
羊方蔵魚:…………あっははは、私の記憶違いでしたか!
彫花蜜煎:ちょっと、なんか落としたよ……あれ……何これ……超大力丸?
彫花蜜煎は落ちた薬匣を拾い、困惑の表情を浮かべ、上の文字を読み上げると、一瞬で警戒する眼差しを後ろめたそうにしている羊方蔵魚に向けた。
彫花蜜煎:おかしい……この包みの中……
蟹醸橙:ちょっと見せて!毛髪育成丸……身長伸び伸び草……視力改善粉……?!
羊方蔵魚:違いますよ。これらは全て私が自ら仕入れてきた霊薬です。薬名通りにいかなくても、七割の効果は保証します、偽物ではないです!
彫花蜜煎:本当に嘘じゃないよね?
羊方蔵魚:私にそんな事はとてもできません!信じられないというのなら、薬屋で鑑定させてもいいんですよ?
ヤンシェズ:これは薬草だ……山で見たことがある……嘘じゃない……
羊方蔵魚:ほら!ヤンの兄ちゃんもそう言ってくれています!
彫花蜜煎:……フンッ、ヤンシェズがそう言うなら、今回は見逃してあげる。次うちに捕まったら、ただじゃおかないから!
蟹醸橙:あのさ……それ、本当に効くなら……試させてくれないか!
彫花蜜煎:……このバカ!なんでも食べようとしないの!
二回目の災い
砂漠の不思議な客人。
数ヶ月前
ある茶屋
通行人甲:最近、変な人が増えた感じしないか?
通行人乙:黒い服のやつらだろう?いつもこの辺でウロウロしてる、何を探してんだか。
通行人丙:ほんと、見るからに怖い奴らばかりだ、関わらない方がいい!
通行人甲:この前、宝を探してるって……盗み聞きしたんだ。
通行人乙:こんな砂漠に金になるものなんてある訳ないだろう。大方、砂金狙いで外から来たんじゃないの。
通行人丙:そういえば……古城の伝説があったな。
通行人丙:数千年前、玉沙という古城があって、宝もたくさんあったんだ。だけどいつしか忽然と消え、今も遺跡が見つかってないんだって。やつらもこの伝説を聞いて来たんじゃない?
通行人甲:はぁ、伝説は所詮伝説だよ。私たちは大人しく商売をすることだな。宝なんてもんに頼っていると、いつ金が入るかわからないからな。
商人たちの話し声は少しずつ茶屋の賑やかさに遮られた。向こうの机に座っていた茶髪の少女は眉をひそめ、目に怒りの炎を灯した。
羅布麻茶:まさか……また連中か……一体……何をするつもりだ……
羅布麻茶:また……気を付けないと……
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