「跳ねる青御玉」みずみ

＜紹介所＞

みずみ「にいちゃーん！ ねえちゃーん！ おっはよーさぁーん！」

主人公「あ、みずみ。おはよう。」

メルク「今日も元気そうで何よりなので……」

みずみ「くらえ、幸せのおたまちゃん！」

メルク「みゅみゅみゅ！ み、水のオタマジャクシなのです！」

主人公「来たか！ メルク、瓶の中に避難を……！」

主人公「わぶっ！？」

メルク「主人公さんの顔面にオタマジャクシが！」

主人公「……またやられた。」

みずみ「わーい、わーい！ びしょびしょやんなー！ これで今日も１日、にいちゃんたちは幸せやんなー！」

主人公「……あの、みずみ。」

みずみ「んあー？」

主人公「何度めかの確認になるけど……、これって、本当に幸せになれるおまじない……、なんだよな？」

みずみ「けろけろ、とーぜんやんな！ みずみのおたまちゃんを頭からかぶると、幸せになれるってひょーばんやんなー！」

みずみ「なー、ちんわちゃん？」

「げこげこ。」

みずみ「な！ ちんわちゃんもこう言っとる！」

メルク「ち、ちんわちゃんさんの蛙語は、私たちにはわからないのですよ……？」

主人公「ま、まぁ、悪気はないんだよな。むしろ、みずみは善意でやってくれてるわけで……。その気持ちは嬉しいよ。」

主人公「だけど、えーと……、」

みずみ「んあー？」

主人公「今度からは、もう少し小さいオタマジャクシで頼む。」

みずみ「けろろ！ これでもおっきかった？ ごめんごめん、しっぱいやんなー……。」

みずみ「わかった！ 明日はもっとちっさくする！ 楽しみにしててな！」

主人公「あ、ああ。」

主人公（言えばちゃんとやってくれるんだよな）

メルク（オタマジャクシも順調に小さくなっているのです！ びしょ濡れにならずに済む朝も近いのですよ！）

みずみ「なー、なー。」

主人公「うん？ どうした。」

みずみ「今日のごよていは？ どっか行くのかー？」

主人公「いや、特に予定はないな。もう少しこの町にいようと思ってる。」

みずみ「そっか！ なら、みずみはおけいこしててもいいか？」

メルク「みゅ！ 歌舞伎のお稽古なのです？」

みずみ「けろけろ！ 毎日やらないと、なまるから！」

主人公「ああ、もちろん大丈夫だぞ。」

みずみ「けっろろ～！ ありがとやんな！」

主人公「でも、いいか？ 前みたいに、面白そうな人について行っちゃダメだぞ？ この前も探すのに随分苦労して……、」

「おけいこ、おけいこ、たっのしいやんな～！」

メルク「主人公さん！ みずみさん、話を聞いていないのです！」

主人公「みずみー！」

主人公「まずいぞ！ また勝手にどこかに行っちゃうかもしれない！」

メルク「お、追いかけるのですよー！」

＜平原＞

主人公「ぜぇ、ぜぇ！ どこに行ったんだ……！」

メルク「さすが、移動は基本的に駆け足なみずみさんなのです。走り出したら、止まらないのですよ。」

主人公「くっ、なんて手強い相手なんだ……！」

主人公「うう、本当にどこに行ったんだ、みずみ……。まさか、もう知らない人について行っちゃったんじゃ！」

「とざい、とざぁーい！」

主人公「この声……！」

メルク「主人公さん、あそこなのです！」

みずみ「さて、このたび演じまするは、南にすまうカエルの妖怪『青蛙さま』でござりまする！」

みずみ「おたまちゃん……じゃなくて、おたまじゃくしを従えるカエルの大親分は、はてさて、どんな妖怪なのか！」

みずみ「すみからすみまで、ずずずい～っと！ こいねがいあげ、たてまつりまする～！」

「げろろ～！」

メルク＆主人公「……。」

＜時間経過＞

みずみ「かくして！ 青蛙さまは村をすくうため、大洪水に立ち向かいます！ さあさあ、どうなってしまうことかー！」

「げろ！ げろ！ げろげろげろ～！」

みずみ「……う～ん、どうやったかな～？」

主人公「良かったぞ、みずみ。」

メルク「すごい迫力だったのです！ あれが歌舞伎なのですね！」

みずみ「けろっ！ にいちゃんとねえちゃん！ 見ててくれたん？」

主人公「あっ……、ごめん、黙ってて。」

メルク「思わず見入ってしまったのですよ。」

みずみ「ええよええよ、そんなん！ お客さんあっての歌舞伎やんな！」

みずみ「それで……どうやった、みずみの青蛙さま！ おもろかった？」

メルク「はいなのですよ！ 洪水に立ち向かう青蛙さまさんが目に浮かぶようだったのです！」

主人公「一瞬だけど、蛙になって青蛙さまについてきたいと思った……。いいよな、青蛙さま。」

メルク「ちょっとわかってしまう自分がいるのです……。」

みずみ「わはは〜い！ 気に入ってもらえて、うれしいやんなー！」

みずみ「じゃ、じゃ！ 妖怪のことも、好きになってくれた？」

主人公「妖怪？ 別に、元々嫌いじゃないけど……、」

主人公「でも、そうだな。今までよりも、妖怪のことについて知れた気がする。青蛙さまみたいな妖怪もいるんだな。」

みずみ「そうやんなー！」

主人公「うわっ！？ きゅ、急に飛びつくと危ないぞ？」

みずみ「妖怪にも、いろいろおるやんな！ 人間と仲良くしたいと思ってる妖怪やって、い～っぱいおるやんな！」

みずみ「せやから、これから妖怪とあっても、仲良くしてあげてほしいやんな～。」

主人公「ああ、わかった。」

メルク「もしかして、みずみさんはそのことを伝えるために歌舞伎を？」

みずみ「みずみだけやないやんな！ 『化生屋』にいる役者は、みーんなそう！」

みずみ「妖怪と人間が仲良くできる国をつくるために、歌舞伎で妖怪のことを伝えてるやんな！」

主人公「そうだったのか……。えらいな、みずみは。」

みずみ「ほめられるようなことやないやんな。自分たちのためでもあるんやから。」

みずみ「でも、うれしいからもっとほめてー！」

主人公「ははは、はいはい。」

みずみ「あと、このままぐるぐるしてー！」

主人公「ぐっ！ 速さはあんまり期待するなよ……？」

みずみ「けろろん！ わかってくれる人が増えてうれしいやんな！ しっぽもぴょこぴょこするやんな！」

「げろっ！」

みずみ「うん？ なんや、ちんわちゃん？」

メルク「そう言えば、その尻尾……。」

主人公「前からそうかなとは思ってただけど、やっぱり今の話とか、その尻尾からして、みずみって妖怪……、」

みずみ「けろっ！？」

みずみ「ち、ちがう！ みずみは妖怪じゃないやんな！ このしっぽはー、えーっと、……衣装！ そう、歌舞伎のための衣装やんな！」

主人公「お、おお。」

メルク「い、衣装なのですね。」

みずみ「せやせや！ わかってくれてうれしいやんな！」

みずみ「……ふぃー、あぶなかった！」

主人公（隠す気があるのかないのか……）

メルク（多分みずみさんは、そんなに難しくは考えていないのですよ）

主人公（だろうなー……）

みずみ「ともかく！」

主人公「うん？」

みずみ「みずみは、にいちゃんたちを気に入ってるやんな！ だから怖がらせたりはせん！ 約束するやんな！」

主人公「みずみ……。」

みずみ「だから、これからも仲良くしよな！」

主人公「……ああ、そうだな。」

メルク「ずっと友達なのです！ みゅふふ、約束なのですよ。」

みずみ「ずっと……！」

みずみ「……けろろ！ 約束やんな！ 絶対の絶対に、みずみらは友達やんなー！」