【黒ウィズ】グレイス・シグラー
風に舞う少女 グレイス・シグラー cv.上田麗奈 もっと私は自由になりたいのです |
全ての大地が海底に沈んだ異界。
その異界の、とある王国の姫君グレイスは鬱屈した気持ちを抱えていた。
グレイスの好奇心の強さや自由を愛する精神にとって、王宮の因習や規律は堅苦しいものだった。
彼女は両親――つまり、この国の王と王妃――への三百四十二回目の懇願を行った。
しかし、ただの懇願なら彼女もこれほどの数をこなす必要はなかったのだ。
「お父様、お母様。私にとって、この王宮は狭すきます。狭すぎるのです」
「なんと! この浮遊島をまるまる一つ使い、作り上げた王宮が狭いとグレイスは感じるのだな。
これはいかん! さっそくグレイス専用の宮殿を作らせるよう手配せねばなるまい」
「あなた、それではこの子を甘やかしすぎですわ。
グレイス、私はあなたをなんでも欲しがる、そんなはしたない子に育てた覚えはありませんよ。
とんだ欲しがり屋さんに成長してしまいましたわね」
「お父様、お母様、違います! 言葉が足りず、申し訳ありません。狭いと言うのは、気持ちとか気分の問題です。
その、なんていうか、もっと私は自由になりたいのです。私の自由を愛する心にとっては、この王国はまるで鳥籠です。
そう、私は籠の中に囚われた鳥なのです」
「ははは。グレイスよ、何を言っているのだ。お前は私と妃の子だ。
まごうことなく我らの子である。鳥の血など一滴も入っておらんぞ」
「……入っているかもしれませんわよ」
「なッ! ……に」
「冗談ですわ」
「……妃よ。いまちょっと国の根幹が揺らいだぞ」
「お父様、お母様。いまのも比喩的な表現です。気持ちとか気分の問題です。
真に受けないでください。というか真面目に私の話を聞いて下さい」
「真面目に聞いているぞ、グレイスよ」
「真面目に聞いているわ、グレイス」
「とてもそうは見えません!」
――もう我慢できない!
グレイスの三百四十三回目の嘆願は行われることはなかった。
三百四十二回目が終わった後、グレイス・シグラーは自室のベランダから飛び降りた。
といっても死のうと思ったのではない。
全ての大地を呑み込んだ海へと吸い込まれていったその華奢な体は、
水面で突如として重力に別れを告げ、くるりと回転し、しぶきをあげて舞い上がった。
彼女の手にしている杖は風を取りこみ、操ることが出来る。
その力を利用して、彼女は自由に大空を舞うことが出来るのだ。
そして彼女はこの悠々たる大空を、どこまでも、どこまでも飛んでいきたいと夢見ていた。
「すごい! すごい! やっぱり私は王国でジッとしているなんて性に合わない。
このまま、どこまでも、どこまでも飛んで行っちゃえ、私!」
彼女はこの逃避行によって世界には果てがないことを知った。
なぜなら彼女は三時間後、
一つながりの空を一周して、自分の部屋に帰ってきてしまったからだ。
「よく帰った、グレイス」
「お帰り、グレイス。丁度、晩餐の時間よ」
――私には、この世界は狭すぎる!
画像 | 説明 | 登場日 |
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リュディガー・シグラー cv.山下誠一郎アルドベリクとルシエラに育てられ、気高く寛容に成長した。しかし、育ての父親同様に苦労性のところまで似てしまった。 | ||
リザ・ロットレンダー cv.富田美憂魔王と天使に育てられ、天使のような性格をしているわ。嘘じゃないわよ? | ||
サクヤ・クランブル cv.黒木ほの香 | ||
グレイス・シグラー cv.上田麗奈――私には、この世界は狭すぎる! | ||
レオナ・ライニール | ||
カリン・トランボ |
ぽっかみ! | |
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