【白猫】蒼き炎のテンペスト Story3
目次
登場人物
魔幻獣の巫覡 | エマ・イングラム | |
考古学者 | ロイド・イングラム | |
元・ガリウスの護剣 | グラハム・オウガスタ | |
ウルド国・第三公女 | アンジェラ・ベイリアル | |
ウルド国・公爵 | デクスター・ベイリアル | |
ウルド国・兵士 | ザーラント | |
島長 | エイブラム | |
島民 | グンナル |
story15 将の器
敵艇大破12! 中破6! 小破8! 大戦果です!
まさか奇襲がここまで成功するとはな……戦場を舐めたか、ウルドの姫君よ。
提督! 白旗を掲げた小舟が近づいてきます!!
…………
……
「まさかベイリアル公女殿下が自らやってくるとは……」
「戦は私たちの負けです。この身は、どうぞご自由に。いくらかの金子にはなりましょう。」
「たしかにあなたを人質とすればベイリアル家から多額の身代金をいただけるでしょうな。」
「……そのうえでお願いがございます。兵を帰還させたいのです。
あなたがたの飛行艇の火を消していただけませんか? こちらは、もうまともな武器もなく戦う力はございません。」
「断る。交渉できる立場だと思わないほうがいい。」
「では、この場で舌を噛み切り。自害いたします。ウルド兵は全軍死兵となって最期まで戦うことになるでしょう。
たしかにウルドは負けます。ですが、あなたがたも多くを失いますわ。」
「…………
貴様の兄は謀略家だと聞く。簡単に信じるわけにはいかんな。」
「私はお飾りの将ですわ。お兄様に命じられたから。この場にいるだけです。
兵卒はお兄様のもの。お飾りとはいえ、兵をお兄様に返す義務がございます。
負けたこの身がどうなるかも理解しております。
戦を知らない敗軍の小娘を少しでも憐れだとお思いなら。どうか将としての責務を全うさせてください。」
「……よかろう。飛行艇の火を消せ。」
「よいのですか?」
「なに、この娘がいれば、手出しはできん。それに……いい女だ。
貴様の望みを叶えよう。確認次第、伝達せよ。」
「ありがとうございます! ああ、本当によかった……これで将としての務めを果たせます。」
…………
……
「姫様からの合図があがったか……まったく……」
「本当にいいんですか?」
「安心しろ。責任取らされるのは俺だ。損な役割だぜ……」
…………
……
<アンジェラは船内の艦長室へと通された。>
「約定どおり、貴様の兵卒は、島を発ったそうだ。」
「感謝いたします。」
「貴様の生殺与奪権は俺が持っている。ルバイヤの法では略奪品は略奪者の自由となる。
俺の機嫌を損ねれば、貴様に未来はな――
<――>
なんの騒ぎだ!!」
***
「俺の艦隊が燃え……空爆か!?」
<青い炎が海を焼き、艦隊を飲み込んでいた――>
「ブルーフレア……だと? どういうつもりだ! 貴様ら!!」
「どういうつもりもなにも。目の前のどおりだ。貴様の艦隊が燃えてるだけだよ。」
「主人ごと燃やすなど、ありえん!」
「兵法とは読道だ。相手が『ありえない』と思うことを起こす。多少の犠牲と工夫は必要たがな。」
「多少の犠牲? 貴様はウルドの姫だろう!!」
「ああ、そのとおりだ。だが、私を守って兵を失うわけにはいかない。兄上にとって妹より兵のほうが有用だ。」
「……狂ってる。」
「……つまらんことを言うな。狂気こそ戦場の理。狂奔こそ将の業ではないか。
戦果に浮つき慢心し、色に目がくらんだ時点で貴様の負けだ。俗物め。」
「貴様ぁぁぁぁ!!」
「何度も頭のなかで死んできたが。こんなつまらん男に殺されるとは思わなかったよ……」
story16 友として
エマ、どうするつもりなの?
……わかりません。
でも、私が決めないといけないことですから……
幻獣様に、こんなこと頼むの、本当は嫌だけど……
この島を守れるのも幻獣様だけだから……
本当に大丈夫なの? だって……
私にだって、どうなるかなんてわかりません。
でも、このままじゃあ、みんながひどい目にあいます。
きっと幻獣様なら力を貸してくれるはず……あの時みたいに。
……本当にいいのかね?
……覚悟は決めました。どんな結果になっても、私は幻獣様の巫覡です。
幻獣様……お願い、この島を守って――
<※十●■?▲#◆…………>
<魔幻獣から光線が放たれる――>
動いた……!
<だが――これは――>
主人公? どうしたの?
<――嫌な予感がする。>
<再び光線が放たれた。>
幻獣様!もういいから!!
ぎにゃー!!
エマ!! 下がれっ!!
***
あぶねえとこでしたね、姫様。
ザーラント、貴様、どこから?
決まってますぜ。上からですよ。ウルドの十八番、空挺降下作戦です。
火の海に自ら飛び込むバカがいるか……
生き残ったところで、姫様死なせたら、死罪ですぜ。
それにアンタとの戦は楽しかった。それなら地獄に付き合おうってことになりまして。
……愚かだな。貴様の主人は私ではなく、兄上であろう?
……姫様を守れと言われてるんでアンタより先にくたばるわけにはいかねぇんでさぁ。
(今回の奇襲、兄上が一枚噛んでるかと思ったが、違ったのか……)
!
<一条の閃光が、ルバイヤの艦隊を薙ぎ払った。
そこにあったはずの艦隊が消失し、海が燃え上がっている>
まさか……また起動したのか?
story17 ウルドの将
あれが魔幻獣の真の姿か……
ザーラント、ブルーフレアは、まだ残っているか?
残ってますが……まさか、やりあうつもりですかい?
ハッハッハ! すでに私は死んでいる! 今、この瞬間は余生みたいなものだ!
なんだ、この惨状は! まったくもって、テンション、アガってくるじゃないか!!
***
おい、あれはどういうことだ!? 暴れてるじゃないか!
私の計画が……失敗してしまった。ああ、失敗してしまった!!
ハッハッハ! 騒がしいな、ロイド。お前の計画とはなんだ?
……ルバイヤ軍の艦隊は?
ブルーフレアと魔幻獣によって海の藻屑だ。なるほど、読めたぞ。
ルバイヤを呼んだのは、貴様だな、ロイド。
なんだと!?
魔幻獣を倒すためだ。ウルドの戦力だけでは心配だった。
ウルドと同様にルバイヤでも魔幻獣を餌に焚きつけました。
それで、両軍の前で魔幻獣を起動させ、共闘でもさせるつもりだったか?
ありえんよ! 敵同士で連携など取れるものか。策士、策に溺れたな。
本来ならば、この場で斬り捨てるところだが、貴様が私にとって有用な間は生かしてやる。
魔幻獣について知ってることを全て話せ。全てだ。
私の計算が正しければ、ブルーフレアなら、外殻を破壊できるはず。
ただ、それではダメだ。魔幻獣には動力源があるはずなんだ。それを破壊しなければならない。
ブルーフレアは常に爆発するわけじゃないぜ。その場のソウルの質と量によって偶然起こるもんだ。
まあ、確実に爆破させる方法がないわけじゃないが……
story18 共闘
<――コワス――ハカイ、スル――スベテヲ――ヤミニ――>
この声……
『コワス――ハカイ――
やめて!
エマさん!しっかりしてください、エマさん!
くっ……幻獣様は……
大暴れしてるわ。エマ、どうにかできないの!?
<※十●■?▲%?…………>
そんな……どうして……?
どうして!? 私の声、聞こえてるはずです! 幻獣様っ!!
エマ、やめろ! 狙われるぞ!!
くっ! 無事か?
どうして……そんな……幻獣様……どうして?
エマ、深呼吸するんだ。
……どうしてなの?幻獣様……
エマ、嘆いている暇はないよ。アレをどうにかせねばならん。
……でも、幻獣様は友達で。
アレは語りかける友人を撃った。エマ、受け入れるんだ。
起こさなければよかった。私が起こしたから……こんなことに……
ハッハッハ! どうした友よ! なにを嘆いている!?
アンジェラ……
お前はルバイヤ軍から島の人間を救った。戦場で死ぬはずの友を救った。
嘆くな、誇れ! こういう時こそ運命を笑い飛ばせ!
あなたみたいに笑えないよ……
ならば、お前の代わりに私が笑おう。アーッハッハッハ!
こんな時でもテンション高いわね。
こんな時だからこそだ! エマ、私は戦うぞ。魔幻獣がお前の友ならば尚更だ。
お前の尻拭いは私がしてやる。ハッハッハ! そこで見ていろ!
……待って!
私が止めます! 止めてみせます!! これ以上ひどいことさせたくない……
……破壊することになってもか?
……お願いです。もう一回、話す機会をください。
近くで語りかければ、聞いてくれるかもしれないから。
……好きにしろ。我々は我々の作戦を遂行する。
あれに近づきたいというのならロイドとともに飛行艇に乗れ。
そんなの撃ち落とされちゃうわよ!
そうならんように足掻くのが作戦というものだ。どうする? 私の策に乗るか、エマ。
ええ、乗るわ。
story19 魔幻獣討伐作戦
全軍、配置につきました。
刻限だ! 作戦開始! ブルーフレアで森を焼け!!
思ったとおりだな! アレは動くものを適当に撃っている。炎を撃っても意味がなかろうに!
定刻どおり無人飛行挺も順次、火を入れます。しかし、高いオトリですぜ。
なに、気にするな。ウルドはそれ以上のものを手にいれたのだからな。
なにをですかい?
私という将だ。
姫様! こちらを狙ってますぜ!!
当たらんよ。私が撃たせてるのだからな。
本当に外れやがった……あの化け物を手玉に取るなんて……
こんなもの、戦ではなく調教だ。とはいえ、餌が尽されば、食い破られるが……
あとは、連中に任せるしかありませんぜ……
***
みなさん、本当にいいんですか?
依頼人のロイドも行くんだし、放っておけないわ。
はい、私たちも魔幻獣をこのままにはしておけません。
すまない。感謝する。
飛行艇の操縦なら主人公にまかせなさい!
<――その時、夜空に閃光弾があがった。>
合図だな。行こう。
はい!
<眼下の森は青い炎と、魔幻獣の放つ閃光で焼かれている>
ひどい……
急ぎましょう!
他の飛行艇がどんどん落ちてるわよ!
急ぎたまえ!
<――間に合え!!>
ぎにゃ一!こっち狙ってるわ!!
ハッハッハ! ルバイヤから画獲した艦砲! 役に立ったな!
姫様! 逃げますぜ!!
今です!
いっけ一!!
story20 ロイド・イングラム
ぎにゃ一!!
ぶつかる!
もう少し丁寧に操縦したまえ。ブルーフレアがあるんだぞ。
幻獣様!
<エマが魔幻獣へ手を伸ばす>
幻獣様! お願い、もうやめて!!
<※十●■?▲%?…………>
幻獣様!
『カギ――ヤクメ、オワリ――』
止まってください。どうか!!
『スベテ、コワス――カギ、コワス――』
っ!
『カギ、フヨウ――』
エマ!
くっ! 本当にもう……ダメなんですね……
エマさん! 大丈夫ですか!?
…………
気はすんだかね?
……幻獣様を止めてください。
では、あとは私が一人でやる。
アンタ、なに言ってるの!?
ブルーフレアを爆発させるには、ソウルを流し込まねばならない。
要するに人の手で起爆させる必要がある。爆発後、魔幻獣のソウルに反応したならば、すさまじい威力になるだろう。
待ってください。そんなこと聞いてません!!
言ってなかったからな。
私がやります。
それはダメだよ、エマ。これが私の役割。私の罰なのだ。
二十年前、魔幻獣を起動したのは私なんだよ。
!
あんなことになるなんて、思っていなかった。私は怖くて逃げ出した。
すべての罪を姉にかぶせて私は逃げ出してしまったんだ。
だが、逃げても、あの光景は頭のなかから消えてくれない。
許してくれとは言わない。いや、君や姉の苦労を思えば私を殺したいほど憎いだろう。
……そのうえ、あなたは私から友達まで奪ったんですね。
ああ、それが私の賄罪なんだ。あの時、死んでしまった人々の鎮魂なんだ。
……あなたは本当に勝手な人。
私の死が君にとって慰めとなることを祈る。
あなたのこと、大嫌いです! でも、死んでほしいなんて思わない!
こんなこと、私は望まない!
エマ……落ち着きなさい。
飛行島の友人たちよ、エマを頼む。そして、全ての魔幻獣を破壊してくれ。
四体の魔幻獣。それを破壊しない限り、この世界は破滅する。
こんなのダメよ! 誰かが犠牲になるなんて!
言ったろ? 私は手段を選ばないんだ。さあ、早く行くんだ。ウルド軍も長くはもたない。
ロイドさん……
アイリス、主人公、全てを君たちに託す。これからのことは、きっと君たちにしかできない。
そして、君たちだからこそ、やらねばならないんだ。
おじさん……
私はあなたのこと、許せません。許したくありません。でも、きっと母さんなら許すと思います。
だって、最期まであなたのこと心配してたから……
…………
だから、あなたのやったこと、母さんに代わって許します。
ありがとう、エマ……
<ロイドが魔幻獣の背中へと飛び降りた>
***
…………
……さて、起爆の準備をしなければな。
……楽にはできんか。まあ、やるしかないんだがね……これでも一応、巫覡の血筋だ。
<※十●■!▲%?…………>
***
……急ぎましょう。
おじさん……
なになに、なんなの!?
こっちを狙ってる!
<次の瞬間、魔幻獣の頭部で蒼い爆炎が巻き起こった>
きゃっ!
幻獣様……
ロイドがやったの!?
<魔幻獣の一部が吹き飛んでいた。だが――>
浅かったか……奴め、再生をはじめてるな。
どうしますか?
作戦中止! 残ったブルーフレアをかき集めてこい! なに、あの光線がなければ、ただでかいだけの獣だ!
全軍に通達! 直接攻撃を仕掛ける! 魔幻獣に蒼炎の刃をくれてやれ!!
「「「うおおおおおおっ!!」」」
story21 後悔の覚悟
アンジェラが戦ってるわ!
でも、ダメ。破壊した場所が治っていく……
<このままでは、再び魔幻獣が――>
…………
もうー度、引き返してください。
!
……私が終わりにします。
……エマ、ワシは今のお前さんみたいな表情、たくさん見てきたよ。考えを変えてはくれんかね?
それが私の使命なんです。幻獣様の巫覡として……友達として……
わかった……
<燃え続けるブルーフレアの熱波が飛行艇に襲いかかる>
行きます!
エマ!
ごめんなさいっ!!
<エマの一撃が魔幻獣の動力源を砕いた――
断末魔をあげるようにもがく魔幻獣の反動でエマの体が夜空に放り出された。>
幻獣様……
ごめんなさい。……せめて私が一緒にいきます。今度は私があなたを一人にさせません。
エマさん!
落ちちゃう!!
<間に合わない――
いや、間に合わせる!>
私はー緒に――
『カラダ、コワレル――カギ――エマ――イチブ――』
幻獣様……
『カギ――イチブ――ノコレ――イチブ――ノコレ――ノコレ――エマ。』
っ!!どうしてっ!!
エマぁぁぁぁっ!!
私もお前の友だっ!!私を選べっ!!
<――間に合え!>
うおおおおっ!
<体にロープを巻きつけたグラハムが飛行艇から飛び出し、エマへと手を伸ばした――>
……っ!
『ノコレ――エマ――』
ごめんなさい……幻獣様……
<――エマがグラハムの手をつかむ!>
アイリス! ロープを引っ張れ!!
はい!!
ぎにゃ一! 今度はこっちがぶつかるぅぅぅ!!
<落ちて――
――たまるか!>
幻獣様……ごめんなさい。
最終話 託されたもの
「なるほどな。飛行艇の過半を失い、得たものはナシ。
失態だな、アンジェラ。」
「……反論の余地もございません。罰は受けますわ。」
「…………」
「ですが、私の有用性は示せます。
今回、ウルド軍はルバイヤ海軍、魔幻獣と戦闘になりました。
飛行艇の過半を失ったのは事実。ですが、二つの戦闘に勝利し、すべての兵を帰還させました。
お兄様、私には為政者としての才はございません。謀略も苦手です。
ですが、将としての才はあるかと。私はお兄様の剣になれますわ。」
「…………
ようやく認めたか。」
「?」
「お前が俺を恐れ、その才を隠していたことくらい、すでに承知の上だ。
おおかた将としての才を理由に、家臣がお前を担ぐとでも思っていたのだろう。浅いな。俺が許すとでも思うか?
むしろ、あのまま猫をかぶっていたほうが、よからぬ火種になっていた。斬ろうかとも考えていたが……
俺の剣になるということは俺とともに地獄へ落ちるということだぞ?
救済も平穏もなく、屍山血河を築く悪鬼羅刹。そんなモノになる覚悟はあるのか?」
「はい。ともに乱世を生き抜いてみせましよう。だって、家族なんですから。」
「……わかった。お前はウルドのために生き、ウルドのために死ね。己を捨て、民草の剣となり盾となると誓え。」
「はい。この胸に燃える蒼炎に誓いますわ。」
「その誓いを破った時、俺はお前を斬る。そして俺が道を違えた時、お前が俺を斬れ。」
「……はい。」
「お前を殺すのは俺だ。それまで死ぬことは許さん。……無理はするなよ、アン。」
「お兄様も私の刃下で果てるその時まで、どうか、どうかご自愛ください。」
…………
……
…………
ここがロイドさんと幻獣のお墓なんですか?
はい。墓標だけですけど……
ロイド、なんだかんだで、最後は貴任とったのね。
ハッハッハ! アレには騙されたが、面白い男だったな。
アンジェラ、帰ったんじゃあ?
親愛なる友を迎えに来たぞ! ハッハッハ!
エマよ、私とともにウルドに来い!!
……それもいいですね。
でも、残ります。友達や家族のお墓を守らないといけないので。
……本当に大丈夫か?
はい、大丈夫ですよ。島の人たちとは、うまくやっていきます。グラハムさんもいますから。
わかったよ。後で村の人間を軽く脅しておこう。私の友への嫌がらせはウルドヘの宣戦布告だとな。
あまりやりすぎないようにお願いします。
多少の手心は加えてやろう。エマよ、なにかあれば伝えろ。すぐに馳せ参じるぞ。
ありがとう、アンジェラ。たくさん手紙を書くわ。
私も書くわ!
キャトラちゃんに書けるの?
アイリスや主人公が私の代筆ね。最後に肉球スタンプ、押すから!
そうですね。私も手紙を書きます。
<こうして、魔幻獣をめぐる事件は幕を閉じた――>
…………
……
「しかし、魔幻獣も大暴れしてくれたものだ。
森も荒れて……これでは元の姿に戻るには時間がかかる。かわいそうに。」
魔幻獣の砕けた場所は、開けた空き地となっていた。
「っ!!」
グラハムが空気を掻くようによろけながら駆け出す。
なにかを思い出そうとして痛みを感じた。この胸に奔る痛みの理由はなんだっただろうか――
――脳裏をよぎった疑問は次の瞬間、温かな記憶に塗り替えられていく。
春の庭で彼女は花を摘んでいた。声をかければ振り返り、くったくなく笑いかけてくる。命に代えて守ろうと誓った――
「姫様……
目を開けてくだされ、姫様!」
―― 蒼き炎のテンペスト END ――
冒険家よ、いろいろ捨てて、探検に出よう。 |
開催日: 04/12 ~ 5/14 |