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橘 伸吾

最終更新日時 :
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作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


通常明日への希望

Illustrator:さいね


名前橘 伸吾(たちばな しんご)
年齢28歳
職業デザイナー
趣味絵を描くこと、美術館巡り

運命の女(ファム・ファタール)の影を追い続け、囚われている男。

時系列は高橋 早苗のストーリーから13年後となっている。

スキル

RANKスキル
1コンボエッジ
5
10新たなる一歩
15

include:共通スキル


  • コンボエッジ [TECHNICAL]
  • ゲージ5本まで到達可能。MISSが多発する場合、ゲージブーストなどのゲージ上昇率で稼ぐスキルよりも、こちらの方が上回る場合がある。「200コンボはできるがMISSしやすい」という譜面でゲージ4本を狙う時に使えるかもしれない。
  • +9以上であれば、「最大200コンボ以上、ゲージ2本で終了」が達成できればゲージ4本に到達する。
  • +17まで上げると、何と上位版のコンボエッジ・シャープの初期値のボーナス量にまで届いてしまう。
  • 競合相手としては、終了時ボーナスが無条件で貰えボーナス値も近い天使の息吹が存在するが、入手が完全にCARD MAKER頼みであるという大きな問題がある。一方、こちらはコンボ条件こそあるものの所有者が定期的に追加されており、入手に困らない。200コンボ達成できるという前提は必要だが、天使の息吹の所有者を十分に揃えられない場合はこちらの使用を推奨する。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
  • 筐体内では入手できない。
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し×
あり+5
PARADISE
(~2021/8/4)
無し+3
あり+17
CRYSTAL無し+5
あり+17
AMAZON無し+7
あり+17
STAR+以前
GRADE効果
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
初期値200コンボを達成した場合
ゲーム終了時にボーナス +25000
+1〃 +26000
+2〃 +27000
+3〃 +28000
+4〃 +29000
+5〃 +30000
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
(2021/8/5以降では未登場)
+6〃 +31000
+7〃 +32000
+8〃 +33000
+9〃 +34000
+10〃 +35000
+11〃 +36000
+12〃 +37000
+13〃 +38000
+14〃 +39000
+15〃 +40000
+16〃 +41000
+17〃 +42000
理論値:88000(5本+8000/22k)[+3]
理論値:90000(5本+10000/22k)[+5]
理論値:92000(5本+12000/22k)[+7]
理論値:102000(6本+0/24k)[+17]

所有キャラ【 メルヴィア / クレメンス / 星河 うた(1,5) / シロタ(1,5) / 橘 伸吾(1,5) / No.9_ニナ(1,5) / クラウン(1,5)

PLUSまでの旧仕様

AIRバージョンからノルマが軽減され、ボーナス量が増加した。同時に、所有者が増加した。

初期値250コンボを達成した場合ゲーム終了時にボーナス +25000
GRADE UPコンボ達成ボーナス +500増加(最大+28500)
  • 新たなる一歩 [TECHNICAL] ※専用スキル
  • 大好きなあなたへの亜種。救済対象がATTACK判定になり、ボーナスが若干増えている。
  • カウントが共用で、ATTACK1回でゲージ量が大きく減少するのは同様。
  • コンボボーナスを7回発動で5本、+1なら14回発動で6本可能。
  • 逆に言うと、+1でATTACK判定を7回出すと6本不可能、14回(初期値では4回)出すと5本すら不可能になる。
  • 回数を使い切る前のATTACK判定を極力減らすことが重要。場合によっては無理に取るぐらいならMISSした方がトータルでプラスになる。
GRADE効果
共通一定回数50コンボごとに
ボーナス +3000
一定回数ATTACK判定時の
ゲージ上昇UP (500%)
初期値(10回=最大30000)
+1(20回=最大60000)
理論値:120000(6本+18000/24k)

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ランクテーブル

12345
スキルEp.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 28歳の僕は……「僕の名前は橘伸吾。28歳のデザイナーだ。……でも僕の心は15歳のまま止まっている」

 僕の名前は『橘 伸吾(たちばな しんご)』。東京で一人暮らしをしている28歳の男だ。


 人より多少絵を描くのが上手くて、また絵を描くのが好きだった僕は、ありがたいことにデザイナーという職業に就くことができて、忙しいながらも充実した日々を過ごしている。


 仕事は何とかなっているものの、私生活の方はと問われると……実にコメントしにくい。


 僕の心は15歳……中学3年生のままで止まってしまっているのだ。

EPISODE2 僕の心を縛り付ける過去「28歳の僕には、恋人がいた。つい先日振られてしまったけど……それは当然なんだ」

 現在、僕には付き合い始めて半年になる恋人がいる。彼女とは仕事を通じて知り合い、何回か食事を共にした後、光栄なことに彼女の方から告白をしてくれて、付き合うことになったのだ。


 だが、僕たちの関係は順調とは言えなかった。付き合って半年なら、普通何をしていても楽しい時期のはずだ。2人の愛情が最も深まる時期でもあるはずなのだが……僕は2人の関係に身も心ものめり込むことができないでいた。

 そもそも彼女とは、互いに仕事が忙しいこともあり、月に数回しか会えていない。メッセージのやり取りも、そこまで熱心ではなかった。


 (……いや、言い訳かな。仕事が忙しくたって、熱く愛を交わすカップルはたくさんいる)


 もちろん僕は彼女のことが好きだ。好意がない女性と付き合うほど器用ではないし、色男でもない。


 それなのに、いざ彼女との逢瀬を迎えると恐ろしく冷静になってしまう自分がいると自覚していた。


 (……いや、余計なことを考えている暇はない)


 今日は彼女の誕生日で、夜にレストランで食事を共にする約束をしていたのだ。けれどこのままでは約束の時間には間に合いそうもない。

 彼女に謝罪の連絡を入れると、僕は無心で残りの仕事を片付け始めた。


 ……ようやくレストランに到着した時、約束の時間を30分も過ぎてしまっていた。


 「……ごめん。大事な日なのに」

 「いいよ。今日も仕事、忙しかったんでしょう?」

 「……うん」


 お互いを気遣い合うぎこちない会話。豪勢な夕食と比べ、僕らの口からは味気ない言葉しか出てこない。


 食後のコーヒーを頼んだ後、彼女は僕に『別れよう』と言った。


 「……伸君って優しいけど……本当は私のこと見てないでしょう?」

 「えっ?」

 「……浮気してるとか、そういうんじゃなくて……。貴方って、いつも私の後ろに別の人の影を追いかけてる気がするの」

 「それは……」


 僕は彼女の言葉に『そんなことはない』と返すことができなかった。


 結局彼女は僕に別れを告げ、先にレストランから出ていった。


 「……記念日に振られるとか、きついなー……」


 そうは思っても、彼女を追いかける気にはなれない。……追いかける資格が僕にはないのだ。


 彼女の指摘したことは、全て正しいのだから。

 僕は過去の幻影をいつまでも追いかけているのだ。

EPISODE3 ファム・ファタール「僕は過去を振り返る。15歳、中学3年生に出逢った……初めて愛した運命の女性との日々を想う」

 彼女に振られてから一週間、僕のコンディションは最悪だった。

 彼女から言われた言葉を忘れたくて、普段飲み慣れない酒を呷り二日酔いになる毎日。おかげで仕事でもミスを連発してしまうようになっていた。


 ……何より今日見た夢の内容が最も性質が悪かった。あれと比べれば、二日酔いの頭痛の方がまだましかもしれない。


 自席で唸っていると、見かねた上司が僕に声をかけてきた。


 「……橘、最近随分と調子が悪そうだな」

 「す、すみません……」

 「幸い、お前の担当している案件は急ぎじゃないし、今日はもう帰って休め」

 「えっ? でも……」

 「でもじゃない……お前、自分の顔見たか? 酷い顔色だぞ。今日は休むのが仕事だと思え。なんだったら、明日も休んでいい」

 「……分かりました。ご心配をおかけして申し訳ありません」


 上司に気を遣わせてしまった僕は、憂鬱なまま帰宅することにした。途中、コンビニで適当に弁当と缶チューハイとつまみを買うと、そのまま寄り道をすることもなく家に帰る。


 家に帰ったら帰ったで、何もする気力がわかず、僕はベッドに倒れ込んだ。


 しばらくダラダラと寝た後、流石にこのままではまずいという気になってくる。


 (……気分転換に、読書でもするか)


 こういう時は、何も考えずに眺められる画集がいい。僕は本棚に向かうと本の背に目を落とした。すると、ある画集で目が止まる。


 (グスタフ・クリムトか……)


 クリムトは僕が好きな画家の1人だった。だが、ある時期を境に意図的に見ないようにしていた。


(こうなったら、とことん自分を追いつめるのも悪くないかもな……)


 そう思った僕は、クリムトの画集を手に取ると、ベッドに腰を掛けて眺め始めた。


 クリムトの作品は、世間的には『接吻』が有名かもしれないが、僕は『ユディトI』の方が好きだった。琳派の絵のように豊かな装飾性、そしてそれに負けない女性の官能的で甘い微笑みが僕の心を引き付けるのだ。

 またクリムトの作品には『ファム・ファタル』……運命の女がテーマとして多用されているというのも興味深い。


(運命の女……か。僕にとってのファム・ファタールは『彼女』だ)


 僕は、鞄の中からいつも持ち歩いているボロボロのストラップを取り出し、じっと眺めた。

 そして今朝の夢の内容を思い出す。甘く、切なく、幸せで……悪い夢を。

 僕が初めて心から好きになった女性と過ごした思い出の日々を。

EPISODE4 高橋早苗「高橋早苗は大人しい女の子だった。でも彼女は僕の人生を大きく変えた。恋を教えてくれたんだ」

 僕の運命の女(ファム・ファタール)の名前は『高橋 早苗(たかはし さなえ)』という。彼女は僕と同じ中学に通うクラスメイトだった。


 高橋の第一印象は……正直言って覚えていない。彼女はどちらかと言うとクラスでも目立たない層に属する女子だった。


 僕も高橋も自分から積極的に異性に話しかけるタイプではなかったから、高橋と会話をすることはほぼ無かった。でも、授業中に先生から問題を当てられた際、時折見せる少し焦りつつも一生懸命な彼女の顔は『可愛いな』と思っていた。


 ……逆に言えば、同じクラスにいるのに、それぐらいしか僕と高橋の接点は無かったということだ。


 僕たちの関係が大きく動き出したのは、美術の授業で『隣の席の人と肖像画を描き合う』という課題が出た時からだ。


 そこで僕と高橋は色々と世間話をすることになった。そして彼女と僕は趣味がとても似ていることに気がついたのだ。

 それに彼女は出来上がった僕の絵を褒めてくれた。将来絵を描く仕事に就きたいと思っていた僕にとって、彼女のその言葉は大きな支えになった……。


 ……そんなこともあって、僕はもっと高橋と話をしてみたいと思うようになっていた。だが、姉以外の女性とロクに会話をしたこともない僕にとって、女の子を誘うというのは難易度の高い問題だった……。


 (……どうにかしてきっかけを作れないかな?)


 そう悩む日々が続いていたので、高橋の方から『一緒に美術館に行かないか?』と誘ってくれた時は、驚くと共に、非常に嬉しかった。


 当日、高橋に格好悪い姿は見せたくなかったが、女子に好感をもたれる服なんて、僕は今まで考えたこともなかった。

 仕方がなく、恥を忍んで姉に洋服をコーディネートしてもらい、とても緊張しながら待ち合わせ場所へ向かうと予定よりも随分と早くに到着してしまった。


 (……ちょっと浮かれすぎたかな?)


 僕は我ながら自分の気合いの入り具合に呆れてきてしまった。……だけど、約束の場所に向かうとまだ30分前だというのに、なんと高橋が先に待っていた。


 (……もしかして、高橋も僕と出掛けるのを楽しみにしていてくれたのかな?)


 そう思うと、自然と頬が緩んできそうになる。僕は気を引き締めて、高橋と美術館に向かった。


 しかし、いざ美術館で素晴らしい絵画を前にしても、どうしても隣にいる高橋が気になってしまう。


 (せっかく大好きなクリムトの絵があるのに……。僕、どうしちゃったんだろう?)


 少し僕よりも背の低い高橋。背中まで伸びた真っ直ぐな黒髪、小ぶりな鼻と唇が作り出す美しいライン……そんなことばかりが気になって、とてもではないが絵に集中することができなかった。


 ……僕は、この時はまだはっきりと高橋のことを『好きだ』とは認識していなかったと思う。もしかしたら、とうに惚れていたのかもしれないが、それでも自覚はしていなかった。


 でも、美術館の後、動物園でパンダを見て一緒にはしゃいだり、カフェで大して面白くないだろう僕の美術トークを、目を輝かせながら聞いてくれる高橋の笑顔を見つめるうちに、彼女への気持ちがどんどん大きくなっていったのだ。

 そして一日が終わる頃には、僕の心は高橋への熱い想いでいっぱいだった。


 (もっと、高橋と話がしたい。これからもずっと……)


 僕はこの日、生まれて初めて『恋』を知った。

EPISODE5 彼女を傷つけて「友人から高橋とのことを冷やかされ、僕は恥ずかしさから、彼女を傷つける言葉を言ってしまった……」

 高橋と美術館に行ってから、僕たちは学校でも親しく会話をするようになったし、放課後も一緒に下校するようになっていた。


 それでも僕たちの関係は依然として『仲のいい友達』だった。僕はそのことをじれったく思う一方で、今の居心地のいい関係を壊すことを恐ろしくも思っていた。


 (……僕が『好きだ』と言ったら、高橋はどんな顔をするだろう? ……少なくとも好意は持ってくれてはいると思うんだけど……)


 そう思っても、僕はあと一歩のところで勇気を出すことができないでいた。


 そんなある日の放課後、僕たちの関係は急展開を迎える。

 夕日に染まる教室で、僕は高橋を待っていた。彼女は日直だったので、職員室で先生から頼まれた雑用をこなす必要があったのだ。


 (……高橋、早く戻ってこないかなー)


 窓から部活に励む生徒をぼうっと眺めていると、クラスメイトの何人かが僕に声をかけてきた。


 「……なあ、橘って、高橋と付き合ってんの?」

 「えっ!?」

 「……最近、やけに橘と一緒にいるじゃん。知ってるぜ? 放課後も毎日一緒に帰ってるんだろう?」

 「それって、もう付き合ってるってことだよな! 橘、ぼうっとしてるように見えてやるじゃん!」


 突然の質問に僕はびっくりしてしまった。見ると、クラスメイトはニヤニヤと笑っているものの、その笑顔に悪意は感じられない。単純にちょっと僕をからかっているだけなのだろう。

……そうとは分かっているのに、僕の頭は混乱してしまった。


 (僕と高橋が……付き合ってる? 他人から見たら、そう見えるってこと? でも……僕たちは……)


 ここではなんと答えるのが正解なのだろうか?

 僕と高橋は確かに親しい友人だが、別に恋人同士ではない。……いくら僕がそうなりたいと思っていても、現実は違うのだ。

 頭の中では色んな感情がフルスピードで駆け巡り、僕は段々と苛立ってきた。


 (……僕の気持ちも知らないで、僕と高橋の関係を茶化さないで欲しい!)


 ……僕は、クラスメイトに言った。


 「……べ、別に高橋さんとは、そんな関係じゃないよ」

 「えー! 本当かよー!」

 「本当……付き合ってるとか、そんなんじゃない」


 ……僕はこの時、はっきりと『高橋への気持ちがあるのは僕だけだ』と言うか、もしくは『不快だから冷やかしは止してほしい』と言えばよかったのだ。

 それなのに、僕は言い訳めいた最低のコメントを口にしてしまった。この後にどんな展開が待ってるかも知らないで。


 僕の発言の後、クラスの扉の方でガタンと大きな音がした。振り返ってみると、そこには高橋が立っている。そして高橋の大きな目には涙が浮かんでいた。


 「……高橋さん!?」


 僕は慌てて叫んだが、もう遅い。高橋はその場から走り去ってしまった。


 (高橋……泣いていた)


 僕は自分の軽率な言葉が、高橋を深く傷つけてしまったことを激しく後悔した。そして自分の意気地のなさ、不甲斐なさに情けなくなった。


 (……とにかく、高橋に謝らないと!)


 そう思って、高橋に謝罪の連絡を入れるが、彼女からの返信はなかった。


 (……なんて馬鹿なことを言ってしまったんだろう)


 自業自得とはいえ、僕の心は沈み、この世の終わりのような気分を味わった。

 たった一言で僕は初めての恋を失ったばかりか、その相手を傷つけてしまったのだ。

EPISODE6 すれ違いから想いを伝え「高橋とすれ違う日々で僕は改めて強く彼女を想った。そして彼女に告白し恋人になることができたんだ」

 ……高橋を傷つけてしまった僕は、何とか彼女との関係を修復したいと思っていた。

 けれど、彼女は僕のメッセージに返信しなかったし、学校でもあからさまに僕を避けるようになっていた。それでも何度か高橋に直接謝ろうとしたのだが……。


 (これ以上嫌われたらどうしよう……)


 そう思うと、自分から高橋に声をかけることはためらわれた。あるいは、すでに彼女の中で、僕は迷惑な存在になっているのかもしれない……。

 そんな考えが僕の心と身体を重くするのだった。


 そんなある日、事態は意外な展開を迎える。僕は、放課後にクラスメイトの小鳥遊さんから呼び出された。そしてなんと彼女から告白をされたのだ。


 小鳥遊さんはクラスでも1、2を争う美人だ。それに性格も明るく、運動神経も良い、おまけに成績も優秀らしい。まさに僕にとっては高嶺の花過ぎて、遠い存在だった。


 (……まさか、小鳥遊さんが僕を好きだなんて)


 一瞬、何かの冗談ではないかと思ったが、彼女の真剣な表情を見てすぐに自分の失礼な考えを反省した。そして彼女が僕の答えを待っていることも分かった。


 (……今、小鳥遊さんの手を取れば、僕は小鳥遊さんと付き合うことになるのか)


 ……正直に告白すると、僕も男なので、眩しく輝く小鳥遊さんの笑顔に見惚れたことは過去に何度もある。でもそれも高橋と出会う前のことだった。


 今でも小鳥遊さんはとても魅力的だった思う。でも、僕にとっての1番ではなかったのだ。


 「……気持ちは嬉しい。でも、ごめん。僕、前から好きな人がいるんだ」


 僕ははっきりと小鳥遊さんに自分の気持ちを伝えることができた。

 彼女は、一瞬、傷ついた顔をしたが、すぐに笑顔を作ると僕の恋が上手くいくようにと祈りの言葉を返してくれた。


 ……僕は誰かを傷つけてばかりだ。でも、今度は失敗しない。


 (……ちゃんと高橋に謝ろう! そして自分の気持ちを伝えるんだ!)


 高橋を傷つけたのは僕だ。だから彼女から拒絶されるかもしれない。それならそれで仕方がない。

 でもこのままずっと何もしないままで高橋との思い出を悲しいものにするのだけは嫌だった。


 高橋への告白を決めた僕だったが、なんと彼女の方から『放課後の美術室に来てほしい』と連絡が入った。


 僕は覚悟を決めて美術室に入った。すると、すでに高橋は僕のことを待っていた。


 「……高橋さん」

 「橘くん……ごめんね、急に呼び出したりして……」

 「う、ううん。それは良いんだ……僕も高橋さんと会って話がしたいって思ってたし……」

 「そう、だよね……ずっとメッセージに返信しなくて、ごめん」

 「それは! ……気にしないで」


 しばらく他愛もない話が続いたが、やがて彼女は僕に向かって白い封筒を差し出した。


 「……これ、私の気持ちが書いてあるの」

 「高橋さん…… 」

 「……迷惑かもしれないけど、良かったら受け取ってください」


 高橋は、今なんて言ったんだろうか? 僕は一瞬、頭の中が真っ白になった。


 (僕はなんて馬鹿だったんだろう。勝手に恋が終わっただなんて勘違いして、足踏みしてたなんて……!)


 だが幸い僕も、高橋の気持ちが分からないほど、愚かではなかったようだ。ならば、僕は彼女に言わなければいけないことがある。


 「あ、あの……返事とか、そういうのは別に……」

 「……まずは謝らせて」

 「え?」

 「……謝るって?」

 「その……この間、クラスの連中に高橋さんと『付き合ってるのか?』って質問されたとき、高橋さん、聞いてたんでしょう?」

 「あ、うん……」

 「……あの時は本当にごめん。高橋さんとのこと、急にからかわれて驚いたり、僕たちのことにちょっかい出されてムカついたり……色んな感情が一斉に襲ってきて、あんなこと言っちゃったんだ……でも、君を傷つけるなんて。なんて馬鹿なこと言っちゃったんだろうって、ずっと後悔してた」

 「……うん」

 「君に悲しい想いをさせるくらいなら、あいつらにもちゃんと言うべきだったんだ……『僕は高橋さんのこと好きだけど、彼女はどう思ってるのか分からない』って……」

 「……えっ?」


 僕は驚く高橋の目を真っ直ぐ見て告白した。


 「うん……もう、全部言っちゃったみたいなものだけど改めてちゃんと言わせて……高橋さん、好きです。良かったら僕と付き合ってください」

 「……うん!」


 僕の言葉を聞いた高橋は涙を流しながら、笑ってくれた。夕日に染まる高橋の笑顔、そして涙は世界で一番美しい輝きだった。


 こうして僕らは恋人同士になった。

EPISODE7 幸せな日々は突然に……「それから僕たちは薔薇色の日々を過ごした。でも両親の仕事の都合で、僕の引っ越しが決まり……」

 高橋と恋人同士になってから、しばらくはバラ色の日々が続いた。


 僕らは以前と変わらず学校でお喋りをしたり、放課後に一緒に帰宅をしたり、休日に出掛けるぐらいのことしかしていない。それでも高橋と一緒にいるだけで、僕は天に舞い上がるような気持ちになれるのだった。


 高橋の笑顔は毎日見る度に美しくなっていくような気がする。こんな素敵な彼女がいるなんて、きっと僕は世界で一番幸せな男だろう……そんなことすら真剣に考えていた。


 やがて高橋と付き合って3ヶ月が経った頃、僕は彼女にある贈り物をした。それは高橋と最初に出掛けた美術館で買った、ペアストラップだった。

 決して高価な物ではなかったが、僕にとっては思い出の品だ。そして高橋もそう感じてくれるだろうと確信していた。


 「……ありがとう! 嬉しい!」


 僕の予想通り、高橋はストラップを手に満面の笑みを浮かべた。


 「……ずっと大切にするね!」


 ストラップを本当に愛おしそうに握る高橋を見て、僕は心の底から思った。


 (このまま、こんな幸せがずっと続けば……)


 ……だが、そんな僕の願いはあっさりと打ち砕かれてしまう。


 冬も寒さも一層厳しくなる頃、僕は親から4月に北海道へ転勤することになったと告げられた。


 (そんな……高橋と離れ離れになるなんて……しかも、東京と北海道なんて距離……)


 あまりの事態に目の前が暗くなる。それでも現実は無慈悲で、両親は僕と姉に

『それまでに友達とは挨拶をしておくように』と言った。


 (高橋に……なんて言おう)


 僕は引っ越しのことを親友には言うことができたのだが、肝心の高橋には、何も言うことができないままでいた。


 (ちゃんと言わなくちゃ……)


 そう思っていたのだが、いざ高橋の笑顔を前にすると何も言うことができない……。


 「……橘くん、最近なんだか変だよ?」

 「えっ?」

 「時々、すごく辛そうな顔をする」

 「そ、そうかな……そんなこと、ないと思うけど……」

 「……」


 高橋の心配な顔を僕はまともに見ることができなかった。


 そうして悪戯に時間だけが過ぎていったある日のこと僕と高橋は放課後、隅田川沿いの遊歩道を歩いていた。


 「……」

 (高橋、今日は妙に無口だな)


 高橋は元から口数が多い方ではなかったが、それでもこの日の彼女の様子はおかしかった。

 やがて彼女は僕に悲しい眼差しを向けてきた。こんな高橋を見るのは初めてだった。


 「……北海道に転勤するって聞いた……どうして言ってくれなかったの?」

 「えっ! ど、どうしてそのことを!?」


 どうやら高橋は僕の様子がおかしいことを気にして、僕の親友から事情を聞きだしたらしい。


 「……いつ北海道に行くの?」

 「……3学期の終業式が終わったら、すぐに……」

 「そんな! もう来週じゃない!……なんでもっと早くに言ってくれなかったの!? 私、橘くんの彼女なのに!」

 「彼女だからだよ! ……大事だから、傷つけたくないから……なんて言ったらいいか、分からなかったんだ」

 「……でも、結果は変わらないんでしょう!? 橘くんは北海道に行っちゃう! それなら、もっと早くに言って欲しかった……そうしたら、もっと色んなこと、できたのに……」


 僕は肩を震わせて泣く高橋に何も言うことができなかった。


 「……北海道なんて……遠すぎるよ」

 「……僕も行きたくない。ずっと高橋の傍を離れたくないよ……」

 「橘くん……」

 「僕、離れ離れになっても、高橋のことをずっと好きでいるよ」


 ……僕の気持ちに偽りは無かった。でも、北海道と東京という距離は、当時の僕らにとって絶望的に離れていた。その距離を自分たちの想いだけで繋げることができるかは分からなかった。


 ……そんな僕の不安を感じ取ったのか、高橋は泣きながら走り去ってしまった。


 「高橋ッ!」


 僕の言葉にも高橋は振り返ることはなかった。

EPISODE8 旅立ち前夜「旅立ち前日、僕と高橋は夜明けまで共に過ごした。そして僕らは初めて口づけを交わし、離れた」

 ……以前、高橋を傷つけてしまった時も、僕は激しく後悔して、彼女との関係を修復できないかと悩んだ。


 だが今回は以前と状況が違う。僕は彼女の恋人だ。恋人として彼女を裏切ってしまったのは、片思いの頃と比べて、罪の重さがまるで異なった。


 (それに今の僕には時間がない……)


 引っ越しは明日。行動するなら今日しかない。このまま高橋とすれ違ったまま別れたら、きっと一生後悔するだろう。


 僕は高橋に電話をして、彼女の自宅近くの公園まで来て欲しいと告げた。すると彼女は、暗い声だったが僕を拒絶することはなく、すぐに約束の場所まで来てくれると言った。


 僕は公園で高橋を待ちながら、いったい何を彼女に言えばいいのか、ずっと考えていた。しかし、いざ高橋が公園にやってくると、今まで考えていたことなど、あっさりと頭の中から飛んでしまった。


 「高橋!」

 「橘くん……」

 「高橋……ごめん」


 結局、僕の口から出たのは謝罪の言葉だ。


 「……君を傷つけたくなくて、引っ越しのことを黙っていたのは本当だ。でも、何よりも僕は逃げていたんだ。……遠く離れても、君と僕とが今まで通りの関係でいられるのか……遠く離れても君が、僕との関係を望んでくれるのか……確かめるのが怖かった」

 「……」

 「でも、高橋の言う通りだ。もっと僕は早くに本当のことを言うべきだった。そうすれば……」


 言葉を続けていると、涙が出てきそうになる。高橋と過ごす最後の時間になるのかもしれないのに、僕の言葉はちっともまとまってくれない。


 そんな情けない僕に、高橋は白い封筒を差し出した。


 「……これは?」

 「後で読んで……今、読まれると、私、きっと泣いちゃうから……後で1人の時に読んで欲しい」


 以前もらった手紙より、少し厚めの封筒を僕はポケットにしまい込んだ。すると高橋は僕にこう言った。


 「……橘くんが北海道に行って不安なのは私も一緒だよ。正直、これからどうなるのかなんて、分からない……。でも、今この瞬間、私は橘くんのことが好きなの。……それじゃだめ?」

 「……高橋」


 僕は震える高橋の肩を抱いた。彼女の身体は、僕が想像していたよりもずっと儚く今にも壊れてしまいそうだった。


 「……僕も高橋が好きだよ。ずっとずっと!……離れても僕と付き合ってくれる?」

 「……うん」


 それから僕たちは、公園のベンチで身を寄せ合って他愛のない話をずっと続けた。学校の友人のことや、先日発売した漫画のこと……。僕たちは『今』のことばかりを話して、『未来』については語らない。互いに気持ちを確かめ合っても、やはりこれからのことを考えると不安になってしまう。それならば、東京で過ごす最後の思い出は笑顔で終わりたかった。


 ……けれど、そんな僕たちの蜜月は、あっという間に終わりを告げる。夜の静寂は終わり、朝の気配が漂い始めた。飛行機の時間のことを考えると、もう帰らなければならない。

 

 僕と高橋は共に駅に向かい、歩き出した。さっきまでのお喋りが嘘のように2人の間には沈黙が流れる。


 やがて明るすぎる朝の光を切り裂くように、始発の電車がホームに入ってきた。


 「……高橋、北海道に着いたら連絡するね」

 「……うん」

 「休みなったら、必ず東京に戻ってくるから」

 「……うん」


 電車のベルが鳴り、発車のアナウンスが流れる。


 (高橋に何か言わなくちゃ!)


 言葉が詰まって出てこない。


 やがてドアが閉まる瞬間……。


 「……橘くん!」


 高橋の桜色の唇が、僕の唇に軽く触れた。僕は驚いて、何も言えなかった。そんな僕にドア越しの高橋の声は聞こえなかったけれど、彼女が『好きだよ』と伝えたのは口の動きで分かった。


 僕は電車の窓にへばりつき、流れ去る高橋の姿を追いかけた。最後に見た、泣き笑いをしている高橋。朝日の中で輝く彼女の涙は、やっぱり綺麗だった。


 ……やがて、完全に高橋の姿が見えなくなると、僕は彼女からもらった手紙を読み始めた。だけど、最後まで読み切ることができなかった。手紙に綴られた高橋の想い。そして心の底から湧き上がってくる高橋への想い。全部が涙となって溢れてきて手紙の文字をにじませる。


 (……高橋、好きだ……)


 ……こうして僕は高橋への想いを抱いて、東京を去ることになった。

EPISODE9 薄れゆく記憶の中で「それから僕らは自然と疎遠になっていってしまった。でも、僕の心の中にはいつも高橋の笑顔があった」

――甘く切ない15歳の別れ。

高橋との思い出を振り返り、僕は思わず溜息をついた。


 (……結局、あれから高橋と直接会ったのは4回くらいだったな……)


 ……僕が北海道に渡ってすぐの間は、毎日時間を見つけては僕たちはお互いに連絡を取り合った。最初こそ、離れている時間がかえってお互いの仲を燃え上がらせるような、情熱的なやり取りをしていたのだが……やはり物理的な距離はどうしようもなかった。


 僕らの生活は段々とすれ違いだした。高校の勉強の内容が違う。流行りも違う。趣味の読書や絵画鑑賞について話していても、僕らの会話はかみ合わなくなっていった。


 僕らの間に漂う不安は、最初はさざ波程度の揺らぎだったが、もはや嵐の夜の海のように心を乱すものとなっていった。


 そうなると、僕は高橋に連絡を取るのをためらうようになってしまった。東京にいる親友には気安いメッセージを送れるのに、恋人にメッセージを送るのは、酷く悩ましいという不自然な状況。それは僕だけではなく高橋もきっと同じだったはずだ。


 僕と高橋。2人が人生を歩くスピードは決定的に異なってしまい、もう交わらないのだ。そう実感したのは高校三年生になる春だ。僕らの恋は明確な別れの言葉もなく、淡雪のようにいつの間にか消えてしまったのだった。


 そして大学を受験する頃には、高橋は僕の中で誰よりも遠い存在になり、触れることすらできない人に

なっていた。だが、それでも僕の心の片隅には、高橋の笑顔が住みついていた。それは、その後大学生になっても、社会人になっても変わらなかった。

 新たな恋愛をしようとする度に、高橋の笑顔が胸を締め付け上手くいかなかった。


 ……僕らの関係が終わったのは、仕方がないことだ。どちらが悪いとか、そういうものではない。それに、今更高橋と復縁したいなどとは考えてもいなかった。……僕はそこまで身勝手でも夢見がちでもないはずだ。


 でも例えるなら、子どもの頃に見た夕焼けの紅さを忘れられないように、あるいは一面に咲く花畑の美しさを写真のように記憶しているように……。人は己の心を奪った幻影をずっと追いかけるものなのだろう。


 丁度、運命の女(ファム・ファタール)に囚われた、クリムトのように……。


 (……でも、もう僕は疲れた……)


 僕は、高橋との思い出のペアストラップを握り、そのままベッドの中で暗闇へと落ちていった。

EPISODE10 思い出の残香を辿り「僕は高橋と過ごした思い出を辿り、もうあの日々は還らないのだと、ようやく実感することができた」

 翌日、目を覚ますと幾らか体調は回復していたが、僕は完全に寝過ごしていた。


 (やっちゃったな……)


 幸い昨日上司から『休んでも良い』と言われていたし、まだ有給休暇も残っている。僕は会社に休みの連絡を入れた。そして急に降ってわいた休日をどう過ごそうかと思案する。その時、ふとベッドサイドに置かれたペアストラップが目に入った。


 (……今を逃すと、もうチャンスが無いかもしれない)


 僕はペアストラップを鞄に括り付けると、家を出た。向かうのは、かつて僕が住んでいた街だ。……高橋と共に過ごした思い出の場所だ。


 社会人になり、東京に戻って来てから、僕は意図的に中学時代の思い出が残る場所を避けてきた。……だが、いよいよ向き合う時が来た。そう感じたのだ。


 まず僕は自分の通っていた中学校に足を運んだ。すると、絶妙な様変わりをしていたことに驚く。校舎の形は変わっていないが外壁の色が塗り替えられている。また校庭に僕の時代には無かった銅像が立っているなどまるっきり変わっていたわけではなく、所々に変化が見られるところが、かえって僕に時の流れを感じさせた。


 それは街全体に言えることだった。僕が東京を離れている間に建った新たな電波塔は観光名所となっていて、昔とは違い多くの人で賑わっているようだった。そしてかつて高橋と共に過ごした隅田川沿いの公園には新しい遊具が設置されていたりして、あの頃よりも美しく整備されているようだった。


 辛うじて旅立ち前夜、高橋と共に語らったベンチは残っていたので僕はそこで少し休憩をすることにした。


 (ここも随分変わったな……いや、街だけじゃない。僕も変わったんだ……あの頃から)


 自分自身では15歳の頃から大して変わっていないつもりだったが、あの頃と全く変化のないベンチに腰かけて見える景色はまるで違ったものに見えた。それは、僕の心や価値観が自分でも知らぬ間に変化していたということだろう。


 (……こうして変わっていくんだな。人も街も……思い出も)


 ……僕は、もしかしたら心のどこかで、この街にはまだ幸せな記憶が残っているのではないかと期待していたのかもしれない。高橋の残り香を探し、彷徨っていたのかもしれない。


 だけど、今ははっきりと分かる。時間は過ぎていくだけで、決して戻りはしない。高橋と過ごした日々は、もはや僕の記憶の中にしか存在しないのだ。そしてその記憶も、いつかは薄れていく。ならば、いつまでも過去に縋っているだけではいけない。前を向いて、新たな思い出を自分の手で作っていかねば……。


 僕はベンチから立ち上がり、公園を後にした。

EPISODE11 優しい痛みを抱いて「いい加減、僕も前を向いて歩かなければ……でも、今だけは、まだこの胸の優しい痛みを感じていたい」

 ようやく未来に向かって歩こうという決心がついた僕だったが、スイッチを切り返るように想いが変えられるわけではない。


 寂しさ、切なさ、悲しさ、そして少しだけ安心したような複雑な感情のまま、駅に着いた。


 ホームで電車を待っていると、つい『高橋と最初で最後の口づけを交わしたのも、このホームだったな』などと彼女のことを考えてしまう。


 ……そんな風にぼうっとしていたからだろう。僕は、通行人の流れに目が行かず、思い切り肩をぶつけてしまった。


 (あっ……ストラップが!)


 元からボロボロだったこともあり、バッグに括っていた紐が切れて、高橋とペアのストラップが落ちてしまった。


 僕は慌ててしゃがんでストラップを拾った。すると身体を起こそうと顔を上げた瞬間、偶然向かいのホームの様子が目に入る。


 (えっ……?)


 向かいのホームでは僕と同じように電車を待っている母娘がいるようだった。その母親の風に靡く美しい黒髪、幼い娘を抱くたおやかな腕、儚げなラインを緩やかに描く肩……。


 (……あれは)


 だけど、僕の考えが確信に変わることは無かった。向かいのホームに電車が入ってきて、母娘の姿は一瞬のうちに消えてしまったからだ。そして当然だが、電車が発車するとそこには母娘の姿は無かった。


 「……」

 「おい、あんた、大丈夫か?」


 いつまでもしゃがんだまま立ち上がらない僕を心配してくれたのだろう。営業中のサラリーマンらしき男性が、僕に声をかけてくれた。


 「あ、はい……大丈夫です。ありがとうございます」


 僕は男性に礼を言うと、ようやく立ち上がった。手の中にはボロボロのストラップがある。


 (……こんなストラップを持っていても仕方がない。これは僕の独りよがりの思い出……未練以外の何者でもないんだ……ならばいっそ)


 僕はちらっと駅のゴミ箱を見た。しばらく考えた後、結局ストラップをズボンのポケットにしまい込んだ。そして晴れ渡った空を仰ぐ。


 (……高橋だってきっと、この空の下で、自分の幸せを一生懸命掴もうとしているだろう。僕も前を向いて生きていかなくちゃ……でも)


 僕は、そっとポケットに手をやる。


 (……今は、今だけは……まだ、この胸に広がる優しい痛みを感じていたい)


 甘くうずく胸の傷。その痛みを抱いたまま、僕はホームにやってきた電車に独り乗り込んだ。

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チュウニズム大戦

レーベル難易度スコア
スキル名/効果/備考
●リレイADVANCED0 / 260 / 520
リザルトアップ(最終点数計算時+100)
最終点数計算時、上限点数が1150以上の時発動。
自分の点数を+100する。


コメント (橘 伸吾)
  • 総コメント数24
  • 最終投稿日時 2020年10月16日 20:32
    • チュウニズムな名無し
    24
    2020年10月16日 20:32 ID:qu57zx0o

    あおいちゃんと瑞穂ちゃんみたいに、早苗ちゃんと橘くん二人のイラスト出ないかなぁ……幸せになって欲しい……

    • チュウニズムな名無し
    23
    2020年07月18日 11:05 ID:eefk7k7g

    デートの待合せ1時間以上前に到着してる私が通ります←

    そうか、これって『相手を待たせるのは迷惑だ』じゃなくて単に浮かれてるだけだったのか…(笑)

    • チュウニズムな名無し
    22
    2020年03月09日 22:37 ID:pm60jplj

    切ないって言うか何て言うか....

    朝焼けプラットホームに込められてる歌詞の意味が深く感じる

    • チュウニズムな名無し
    21
    2019年10月14日 00:43 ID:csryn3y5

    切ねぇ....

    • チュウニズムな名無し
    20
    2019年03月16日 00:21 ID:qdfz6285

    友達が似たようなエピソード持ってるから余計泣ける

    • チュウニズムな名無し
    19
    2019年01月30日 20:54 ID:r72kgiuy

    ストーリー読んだら胸が締め付けられる…先に早苗のストーリー読んだから尚更…

    • チュウニズムな名無し
    18
    2019年01月07日 16:49 ID:d1qu7iq9

    「新たなる一歩」の+1です

    カウント数 10→20

    カウント数は共用です

    • チュウニズムな名無し
    17
    2019年01月02日 01:55 ID:dlquqe54

    泣いてまうわこんなん

    • チュウニズムな名無し
    16
    2018年11月30日 10:52 ID:n7g26z3q

    コンボエッジ+10と11です

    • チュウニズムな名無し
    15
    2018年11月12日 01:29 ID:c8d2o1x2

    >>14

    画像です

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