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CHUNITHM【チュウニズム】攻略wiki

百鬼 煌星

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【キャラ一覧( 無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN )】【マップ一覧( NEW / SUN )】


通常百鬼 メテオ

Illustrator:釜飯轟々丸


名前百鬼煌星(なきり めてお)
年齢16歳
職業落ちこぼれの女子高生ゲーマー
  • 2021年11月4日追加
  • NEW ep.I - Side.Aマップ9(進行度1/NEW時点で325マス/MAP1から1115マス*1)課題曲「Athlete Killer ”Meteor”」クリアで入手。
  • トランスフォーム*2することにより「百鬼 メテオ」へと名前とグラフィックが変化する。

eスポーツのプロプレイヤーを育成する学園に通う落ちこぼれの女子高生。

ふと立ち寄ったゲームセンターで出会ったのはもう一人の自分であった。

英語で読ませるタイプのキラキラネームである。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1道化師の狂気×5
5×1
10×5
15×1
25限界突破の証×1
50真・限界突破の証×1
100絆・限界突破の証×1

  • 道化師の狂気【NEW】 [ABSOLUTE+]
  • 一定コンボごとにボーナスがある、強制終了のリスクを負うスキル。コンボバースト【NEW】と比べて、コンボノルマが2/3倍になる代わりにJUSTICE以下許容量が-100回となっている。
  • PARADISE LOSTまでの道化師の狂気と同じ。
  • NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したDANGER系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大49個(GRADE50))。
  • GRADE100を超えるとボーナス増加量が鈍化(+10→+5)する。
  • CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「道化師の狂気」から変更された。
効果
100コンボごとにボーナス +????
JUSTICE以下50回で強制終了
GRADEボーナス
1+6000
2+6010
11+6100
21+6200
31+6300
41+6400
50+6490
▲PARADISE LOST引継ぎ上限
61+6600
81+6800
102+7000
142+7200
182+7400
222+7600
262+7800
302+8000
342+8200
362+8300
推定データ
n
(1~100)
+5990
+(n x 10)
シード+1+10
シード+5+50
n
(101~)
+6490
+(n x 5)
シード+1+5
シード+5+25
プレイ環境と最大GRADEの関係
開始時期最大GRADEボーナス
NEW+269+7835
NEW313+8055
~PARADISE×362+8300
2022/8/18時点
GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数

※NEW稼働時点でゲージ5本以降の到達に必要な総ゲージ量が変更。必要なゲージ量を検証する必要があります。

  • ノルマが変わるGRADEのみ抜粋して表記。
GRADE5本6本7本8本9本10本11本12本
136912162025
4136912151924
5636911151923
7636811151823
8736811141822
11436811141722
13136811141721
14235810141721
17935810131721
20235810131620
24535710131620
28135710131619
3023579121519
筐体内で入手できる所有キャラ
  • 登場時に入手期間が指定されていないマップで入手できるキャラ。
CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
Verマップエリア
(マス数)
累計*3
(短縮)
キャラクター
NEWep.Ⅰ
side.A
9
(325マス)
1285マス
(-170マス)
百鬼 煌星
ep.Ⅰ
sideB
9
(325マス)
1285マス
(-170マス)
メギド・ゴグ
ep.Ⅱ1
(105マス)
105
(ー)
原初の巫女アヴェニアス
2
(165マス)
270マス
(-10マス)
原初の巫女テルスウラス
3
(225マス)
495マス
(-20マス)
原初の巫女メーヴェ
4
(285マス)
780マス
(-30マス)
原初の巫女サラキア
NEW+ep.Ⅵ3
(375マス)
875マス
(-50マス)
マードゥク
・アニマート
4
(455マス)
1330マス
(-90マス)
カイナン
・メルヴィアス
ゲキチュウマイマップで入手できるキャラクター
バージョンマップキャラクター
NEWイロドリミドリ
~僕らの学園フェス編
藤堂 陽南袴
/僕らの学園フェス編
※1
桔梗 小夜曲
/僕らの学園フェス編
※1
芒崎 奏
/僕らの学園フェス編
※1
オンゲキ九條 楓※2
逢坂 茜※2
珠洲島 有栖※2
NEW+maimaiでらっくすでらっくま

※1:入手には、同イベント進行度1の全エリアのクリアが必要。

※2:入手には、同イベント進行度2までの全エリアのクリアが必要。

その他の条件を満たすことで入手できるキャラクター
  • 詳しい条件についてはキャラページを参照。

▲ ページトップ

ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

▲ ページトップ

STORY

EPISODE1 最弱ゲーマー煌星「わたしは……プロになんてなれないよ……」

 エレクトロニック・スポーツ、通称eスポーツ。

 コンピュータゲーム、ビデオゲームをスポーツ競技として捉える際の名称である。

 急速に成長を遂げたeスポーツは全世界へと広がり、その競技人口は、世界人口の8割を締めた。


 ――そして、時は西暦2XXX年。

 一世を風靡したeスポーツは、もはやゲームであっても、遊びではない。

 そう、ゲームとはスポーツだ!

 回線を繋げば一瞬で世界中の誰とでも競いあえるeスポーツは、数あるスポーツ界でも頂点というに相応しいほどの競技となった。

 スポンサー企業はこの一大エンターテイメントにこぞって莫大な投資をし、多くの大会を開いている。

 当然、優勝者には多額の賞金を得るチャンスも。

 そこの君も未来のプロゲーマーを目指すなら、Es連盟学園のゲームアスリート育成科はどうかな。

 なんと、本物のプロから指導を受けられるぞ。

 君も一緒にゲーミングドリームを掴み取ろう!

 お問い合わせは――


 「はあ……現実はそんなに……甘くないよお……」


 テレビで流れるCMを見ながら、わたしは今日返された成績表を開いた。

 そこに書かれていたのはFPS、TPS、RTS、MOBA、スポーツゲーム、対戦型格闘ゲーム、パズルゲームなどなど。

 各ゲーム種目の下には最低ランクである『E』の文字がズラッと並んでいた。


 「こんなの……パパとママに見られたら……。わたし……家を追い出されちゃう……」

 『――今回は相手を分析して対策してきましたから。僕自身も実力は発揮できたと思います』


 テレビから流れてきた声に気づいて画面を見ると、そこにはインタビューを受けているパパが映っていた。

 そういえば、大会に出たって言ってたけど、これがそうだったのかな。


 『さすが百鬼選手です。これで大会三連覇となりましたね!』

 『ええ、このまま勝ち続けていきますよ』

 「はあ……パパはすごいな……」


 わたしの家はパパとママもプロのeスポーツ選手で、今も第一線で活躍してる。

 元々ゲームが好きなのもあったけど、戦っているパパとママがかっこよくて、わたしもeスポーツ選手を目指した。

 でも、結果はご覧の有様だ。


 「はあ……飲み物……取ってこよう……」


 部屋を出てリビングへ向かうと、同じ番組を見ていたママがわたしに気づいた。


 「あら、帰ってたのね」

 「う……うん……」


 ママの視線を避けるように冷蔵庫を開けると、ちょうど買っていた飲み物が無くなっている。

 他の飲み物でもよかったんだけど、わたしは外へ出かけることに決めた。


 「ちょっと……出かけてくる……」

 「待ちなさい。成績表、返ってきてるんでしょ。ママ、まだ見せてもらってないんだけど?」

 「あの……ええっと……あとで見せるよお……」

 「……はぁ、わかったわ。もうすぐパパも帰ってくるから、そのときに出しなさい」

 「うん……」

 「あと、出かけるのは構わないけど、ちゃんとゲームもしなさいよ」

 「うん……」


 そう言ってそのまま家を出る。


 「はあ……」


 ようやく息苦しさから解放されて、わたしは大きなため息をついた。


 「あんまり……家にいたくないなあ……」


 本当は飲み物を買うだけのつもりで出てきたけれど、わたしは特にあてもなく街をぶらつく。

 そこで、たまたまクラブSAGEと書かれた看板を見かける。


 「ちょっと……やっていこうかなあ……」


 中に入ってみると最新のアーケードゲームが並んでいて、プレイの順番を待っている人が何人もいた。

 本当はプレイしてみたいゲームもあったけど、人に見られながらだと少し気後れしてしまう。


 「他の場所に行こう……」


 クラブSAGEを出て、他のゲームセンターにも寄ってみたけど、どこも人がいっぱいだった。

 人がいないゲームセンターなんて、今の時代にあるわけないよね。

 そうやって歩き回っているうちに、ポツポツと雨が降り始めてきた。


 「どうしよう……傘……持ってきてない……」


 濡れながら帰るには少し家から離れすぎている。

 どこかで雨宿りできる場所があればいいけど。


 「あれ……? ここにゲームセンターなんて……あったかなあ……?」


 細い路地の奥、チカチカと電球が切れかかった看板に、「ゲームセンター」と書かれていた。

 人の気配がまったくしないゲームセンター。

 潰れているかと思って近くまで行ってみると、電気がついてゲーム音もしていた。


 「誰か……いるのかなあ……」


 地下へと続く階段を降りて、ゲームセンターの中に入ってみる。

 そこにはズラッとアーケードゲームの筐体が並んでいた。

 それも今では見かけることもないような、かなりレトロなものばかり。

 さながら、ゲームの博物館だった。


 「あっ……このゲーム……」


 その中で見つけたのは小さい頃にパパと二人で一緒に遊んだスペースハリアーという体感型ゲーム。

 一人でやろうと思ったけど、筐体が大きくてパパの膝に乗せてもらってやったんだ。


 「懐かしい……」


 あの頃と違って筐体もちょうどいい感じに座れ、試しにわたしはコインを入れてみる。

 すぐに懐かしい音楽と共にゲームが始まった。


 「楽しいなあ……昔はすごく難しかったのに……」


 あんなに手こずっていた敵も難なく倒していける。

 子供の頃に比べたら、ゲームはうまくなっているはずなのに……どうして。


 「ゲームは……好きなのに……」


 パパやママとやるゲームは楽しかった。

 昔は勝ったとか負けたとか、そんなのどうでもよくてみんなで笑いながらゲームしてたのに。

 楽しければ勝敗なんて関係ない、そう言ってたパパはもう……。


 「いつだったかなあ……最後に笑って……ゲームやったの……」


 プロのゲーマーなら勝たなきゃ意味がない。

 そうじゃないとパパもママも喜んでくれない、わたしを褒めてくれない、認めてくれない。

 ゲームをする手は止まり、いつの間にか込み上げてきた涙で画面が歪む。


 ……わたしは楽しくゲームがしたい、競いたくなんかないのに。


 そう思ったとき、筐体がガコンと強く揺れた。

 一瞬、目の前が真っ白になる。

 驚いて画面に目を向けると、そこには真っ暗な画面が映し出されていた。

 故障したのかな……と恐る恐る画面に触れようとすると、黒い画面が鏡のようになって、そこにわたしの顔が映っている。


 『はは……わたし……酷い顔だなあ……』


 映し出された顔は口元だけ笑っていながらも、涙でボロボロになっている。

 なのに、なぜか笑ったはずのわたしの顔は、まったく笑っていなかった。


 『あれ……なんか……変……』

 「なァにが変だァ? こちとら、やァッと出られて、超絶気分サイコォなのによォ!」

 『え……?』


 この瞬間、わたしじゃない、“アタシ”が生まれた。

EPISODE2 舞い降りる流星「クハハ! 天才ゲーマー、メテオ様の登場だァ!」

 突然の出来事で頭の整理が追いつかない。

 わたしは喋っていないのに画面に映ったわたしが喋っている――という意味がわからない状況。


 「クハハ! やァッと出られたなァ! それじャァ早速、ブチのめしに行ってやろうぜェ!」

 『え? あれ……どうなってるの……』


 わたしがいくら喋っても声が出ない。それどころか、身体の自由すら効かない。


 「ッたク、脳みその足りねェヤロウだなァ! アタシはメテオ、もうひとりのお前ダ!」

 『わ……わけがわからないよお……もうひとりのわたしって……どういうこと……』

 「細けェことはどォでもいいんダ! 行くぞォ!」


 そう言うと、わたしの意志に反してわたしの身体は、ゲームセンターを出ていく。


 『ちょっと待って……どこに行くの……?』

 「決まってんだろォガ。出られた景気づけに、アタシをバカにしやがったクラスメイトをボコリに行くんだよォ!」

 『え!? 暴力はダメだよお……!』

 「バカヤロォ! 殴って黙らせても面白くねェだロ。ゲームでブチのめすんだよォ!」


 メテオが向かったのはクラスメイト達がよく通っているゲームセンターだった。

 ゲームセンターに入っていくと運悪く、いつもの筐体にクラスメイトたちが集まっていた。

 ギルティクラインという格闘ゲーム。

 かなりのコンボゲーで、初心者お断りな上級者向けのゲームだけど、クラスメイトは容易く挑戦者を倒していた。


 「なんだよ、今のザコ。マジ弱くね」

 「ハハハ! ホント、クソ弱すぎ。Esのエリートを舐めてんのかって感じだよな!」


 筐体の向こう側で笑い声が聞こえてくる。

 負けた人は悔しそうに舌打ちすると、席を離れて友人とその場をあとにした。


 「あれ、Es連盟の奴らだろ。あんな言い方することないだろうに」

 「でもさ、実際に強いからな。連勝補正入ってるのに全然負ける気配ないぞ」


 負けるとわかっているのか、遠巻きに見ている人は彼らに挑戦しようとしない。

 実際、彼はクラスの中でもこのゲームはトップで強かったはず。

 今使っているキャラも彼の持ちキャラではなく、本当に遊びで使っているのだと思う。


 「おいおイ、誰もやらねェのカ? だったラ、行かせてもらうゼ!」


 そう言ってメテオが席に座って、コインを投入する。


 「このオレ様に挑んでくるザコがまだいたのか。お賽銭にならないといいけどな」

 「クハハ、今のうちに言うだけ言ッとくんだなァ。このメテオ様の前に跪けェ!」


 メテオがキャラを選ぶと対戦が始まった。

 彼女がもうひとりのわたしだって言うのなら、彼にこのゲームで勝てるわけがない。

 ……そう思っていた。


 「な、なんだよ、今のコンボは!? ふざけんな、0フレーム目押しを一回もミスってねえ!」

 「ウソだろ、今の見切るのかよ! 先読みなんてレベルじゃねえぞ!」

 『すごい……』


 まるで相手のクセを知ってるかのように動きを完封しながら、実践で使うのは難しいはずの高火力のコンボを容易く入れていく。

 結果、メテオは体力ゲージを減らすことなく、パーフェクトで2ラウンド先取の勝利を収めた。


 「……俺が負けた? くそ、どこのどいつだ!」


 すると、向かいの筐体からクラスメイトたちが、こちらを確認しようと顔を出してくる。


 「マジか!? 落ちこぼれ煌星じゃねえか!」


 対戦相手がわたしだと知り、驚くクラスメイトたち。

 ただ、今はわたしだけど、わたしじゃない。

 そう伝えたいけど、今のわたしには伝える手段がなかった。


 「おいおイ、オメェらザコすぎんだロ。手加減なんて必要ねェかラ、本気でかかってこいヨ」


 メテオの言葉に冷や汗が出てしまう。

 あんな言い方、普段の自分なら絶対にしない。


 「ああ? 成績最下位がなに言ってやがる! 今のもたまたま勝てただけだろうが!」

 「落ちこぼれのくせに生意気なんだよ!」

 「御託はいらねェ! いいからかかってきナ!」

 「言いやがったな、今度は本気でぶっ潰してやる!」


 クラスメイトがすぐに乱入してきた。

 本気という言葉通り、彼がいつも使っている持ちキャラを選択している。

 彼の言う通り、読みがたまたま甘く当たっただけ。

 今度は負けてしまうに決まってる。


 「クハハ、いいから見とけヨ。アタシがボコってやるからサ!」


 自信満々にそう宣言するメテオ。

 それはなんの根拠もない言葉だったけれど、なぜか不思議と彼女なら勝てる、そんな気がした。

 いざ、クラスメイトとの対戦が始まるとメテオがありえない行動を始める。


 「こいつ、弱パンしかしてねえ!?」


 そう、メテオはレバーと弱パンチのボタンにしか手を置いてなかった。

 こんな方法で勝てるわけがないと思っていたのに、対戦はどんどんメテオが有利に進めていく。

 そして、再び2ラウンド先取で勝利を収めた。


 「あれれェ、おかしいなァ? 本気の相手に弱パンだけで勝ッちャッたぞォ?」

 「あ、ありえねえ……」

 「次はオレだ! そこ変われ!」

 「いくらでも来いよォ。勝ち星をアタシに貢いでくれよなァ!」


 ――数十分は経っただろうか。

 結果的にメテオは宣言通り、クラスメイトたちに全勝し、相手をボコボコにしてしまった。


 「なんだ、これ……」

 「全員、負けたのかよ……」


 クラスメイトたちも何が起こったのか理解できない、したくない状況らしい。


 「敗北ッてのを知りたかったんだけどなァ。あァ、再挑戦なら受けてやるゼ、どんどんお賽銭しナ?」

 「だ、誰がやるか! 帰るぞ、お前ら!」


 そう吐き捨てながら、クラスメイトたちはぞろぞろとゲームセンターから帰っていってしまった。


 「あァ、ホント面白くねェ連中だナ」

 『本当に勝っちゃった……メテオは天才だよ……!』

 「そんなことは最初っからわかってんだヨ! いいかラ、次に行くゾ!」

 『え……? 次って……』

 「まだまだ暴れ足りねェんだヨ! この辺のゲーセンにいる連中、全部ぶっ飛ばすゾ!」

 『ま……待って……!』


 わたしの静止する声も聞かず、メテオは次のゲームセンターへ向かうのだった。

EPISODE3 ゲームに求めるもの「ゲームは……本当に勝つことだけが……大事なのかな……」

 メテオが現れてから数日が経った。

 わたしはわたしとして、ベッドで横になっている。


 「体……返してくれなくても……よかったのに……」

 『はァ? これはお前とアタシの共有物ダ。独り占めにするわけねェだろォ』


 あのあと、メテオはゲームセンターを巡っては、名のある有名なゲーマーを倒してしまった。

 学園でもわたしの代わりにゲームをしてくれて、成績はウソのように急上昇。

 だけど、メテオはひとしきり対戦が終わると――


 「そんじャア、そろそろ返してやるヨ」


 ――と言って、飽きたように体を返してくる。

 メテオがどういう存在なのか、どうして急にわたしの中に生まれたのか。

 それは今でもわからないけど、わたしはこのままでいいと思っている。

 むしろ、すごくゲームが上手だから、このままメテオが表に出ていればいいのに。


 『めんどくせェ日常生活はお前がやレ。アタシはゲームさえできりャそれでいいんだヨ』

 「ゲームか……」

 『なんだァ、あんだけ競いたくないとかほざいといて今更やりたくなったのカ?』

 「う……ううん……そんなことない……」


 わたしはゲームなんてやりたくない。

 だから、このままメテオが戦ってくれるのなら、わたしはそれでいいんだ。


 『……まァ、それならいいんダ。やりたくねェもんをやる必要はねェからナ』

 「うん……」

 「煌星、部屋にいるの? そろそろ夕ご飯だから、こっちに来なさい」

 「はーい……」


 ママに呼ばれてリビングに行くと、家族が勢揃いしていた。

 テーブルには何かお祝い事でもあったのかと思うほど豪華な食事が並んでいる。


 『おッ! 春巻きじャねェか。ちょっと変われ!』

 「えっ……!?」


 そう言うと、メテオは簡単にわたしと入れ替わってしまった。

 わたしと好きなものも同じなのか、春巻きが夕食に出てくるといつもこうなる。


 『わたしも……ママの春巻き……食べたいのに……』

 「いいじャねェカ、ちょっとくらイ!」

 「どうしたんだ、さっきから一人でブツブツと」

 「なんでもね……ないヨ。それよりモ、今日は随分と豪華だナ」


 一応、メテオが気を使ってくれてるのか、クラスメイトの前とは違い、家族の前ではいつものわたしを演じようとしてくれる。


 「今日はね、煌星のために用意したのよ」

 「はァ?」

 「最近、成績すごく伸びてるらしいじゃない。先生から聞いて驚いたのよ」


 そういえば、パパとママが学園に呼ばれていたけど、先生から直接なにか聞いたのかもしれない。


 「じャア、これはそのお祝いカ?」

 「もちろん、それだけじゃないぞ。お前に渡さなきゃいけないものがあるんだ」


 そう言ってパパが隠していた手紙をメテオに手渡す。

 メテオが封を開けて中身を見てみると、そこに書かれていたのはeスポーツの学生日本代表チームの選手として全国大会へ出てもらいたい、という内容のものだった。


 「……マジ?」

 「フフ、ママも学園で話を聞いたときは驚いたわよ」

 「実は煌星の成績が伸びているという話を聞いて俺が運営の方に話をしておいたんだ」

 『え……? でも……それって……』

 「ああ、心配するな。俺は推薦しただけで、実力を見て選んだのは運営だからな」

 『よかった……』

 「……つまリ、この大会に出れバ、もっともっと強い相手と戦えるってことかァ」

 「ハハ、さすが百鬼家の血筋だ。強い相手と戦いたいってのはゲーマーの常だからな!」


 その言葉にわたしは少し考えてしまった。

 もしも、戦いたいって気持ちが血筋だとしたら、わたしはなんだろうと。

 やっぱり、家族のためにも、わたしじゃなくて、メテオがこのまま娘として――


 「……わかッタ。大会に出るヨ。だからサ、もう食べていいカ? せっかくの春巻きが冷めちゃうんだけド」

 「あら、そうだったわね。お喋りは食べながらしましょうか」

 「そうだな。それじゃあ――」

 「いただきます」


 メテオが真っ先に春巻きを取りに行く。

 たくさん食べるのはいいけど、できれば怪しまれないように食べてほしいかな。


 「にしても、いつの間に腕を上げたんだ?」

 「はァ? 最初か――ええット、あれダ。ゲーセンで対戦しまくッたからかナ」

 「なるほど、強者に揉まれたわけか。確かに腕を上げるのはそれが一番だからな」

 「ゲームセンターといえば、知ってる? この近場でゲーセン荒らしが出てるらしいのよ」


 ママからゲーセン荒らしという言葉を聞いて、わたしはドキッとしてしまう。

 少しだけ思い当たる節があったからだ。


 「ゲーセン荒らし?」

 「ここ最近、急に出てきたらしいんだけど、SNSで捨てアカを使って、有名なプレイヤーを挑発してわざわざ呼び寄せて戦ってるらしいのよ」


 ……間違いなくメテオのことだ。

 まさか、ママが知ってるなんて。


 「私も知り合いのゲーマーから聞いた話だから、本当かどうかわからいんだけどね」

 「なかなか挑戦的なゲーマーのようだな。しかし、有名なプレイヤーがそう簡単に負けるのか?」

 「それがすごく強いらしくて、呼んだ全員に勝ったらしいのよ」


 興奮気味に話しているママに対して、メテオは黙々と春巻きを食べ続けていた。

 わたしはメテオのことだとバレてしまわないかヒヤヒヤしっぱなしなのに。


 「どういうプレイヤーなんだ?」

 「調べてみたんだけど、ほとんど情報がないのよ。ただやたら腕が立つことと、口が悪いってことだけは確かなのね」

 「あら、そうなの?」

 「腕がよくても礼儀がなっていなければ、ゲーマーとしては二流だな」

 「そいつはどうかナ」


 黙って話を聞いていたメテオが急に口を開く。


 「ゲームなんだかラ、勝てばいいじャン。礼儀とかよリ、勝敗のほうが大事でしョ」

 「……本気で言ってるのか?」


 パパの低く冷たい言葉に、わたしだけじゃなくメテオからも緊張が伝わってくる。


 「確かに勝つことも大事だが、ゲーマーとして相手に対する礼儀を忘れてはいけない。ただ強ければいいというものではないんだよ」

 「……わかったヨ」

 「試合当日は皆、他の大会で応援には行けないが、頑張るんだぞ」


 メテオの返事に満足したのか、すぐに食事は再開したけど、わたしはパパの言葉が引っかかっている。


 『ゲームは勝つことも大事』


 この言葉がわたしにとって忘れられないものとなってしまった。

EPISODE4 暴虐無人の天才ゲーマー「クハハ! これはゲームなんだよォ! どんな手を使ってでも勝てばいいだろうがァ!」

 「どうして……やってくれないの……?」


 ――大会まで一週間。

 わたしはメテオとちょっとした言い合いになってしまっていた。

 本当は大会に備えて、少しでも練習をしておきたかったんだけど。


 『だかラ、練習なんて必要ねェ。やりたきャお前がひとりでやッてりャいいだロ』


 そう言ってメテオはゲームに触れようとしない。

 このまま当日を迎えてしまったら、同じチームの人たちに迷惑をかけてしまうかも。

 本当は5対5のチーム戦だから、チームでの練習も必要なのにそれも断ってしまった。

 あのときも――


 『チーム練習とかマジ無理だッテ。んなもン、お前がやれヨ』

 「わたしの実力だと……無理だよお……」


 わたしが練習に加わってしまったら、すぐに戦力外通告を受けてしまうに違いない。


 「ええっと、つまりチーム練習はできないってことでいいのかな?」

 「ごめんなさい……わたし……このゲーム初めてで……合わせるのは……足を引っ張ると思います……」

 「そうかい? まあ、僕たちは当日でも問題なく合わせられると思うから、練習頑張って。期待してるからね!」

 「ありがとうございます……」


 同じチームの人たちの厚意で、こうしてひとりでの練習を許してくれた。


 「じゃあ……わたしがやるから……中で……ちゃんとプレイを見ててね……」

 『わかッたかラ、さッさと始めろッテ。メテオ様が見ててやるからよォ』


 大会でプレイするのは有名なFPSゲームのカウンター・オブ・ストライク。

 自分の中でFPSは得意なほうだとは思っているけどやっぱりオンライン対戦ではほとんど勝てない。


 「ちゃんと見てる……?」


 数回戦ったあと、メテオに話しかけてみたけど、反応が返ってこない。

 たまにこんなことがあり、きっと飽きて、中で眠っているのだと思う。


 「本当に……大丈夫かな……」


 わたしは不安を覚えつつ、大会までの一週間、メテオの分まで練習に明け暮れた。

 ――そして、あっという間に一週間が過ぎ、大会当日となった。

 結局、メテオはゲームに触れないまま、この日を迎えてしまう。


 「今日はよろしくね! 君がどれだけ強くなったのか楽しみだよ」

 「あァ、見せてやるヨ! アタシの実力ッてやつをナァ!」

 「えっ? ……う、うん」


 急変したように見えるのか、メテオの受け答えに若干だけどチームの人が引いていた。

 やっぱり、ゲームが始まるまではわたしのままでいたほうがよかったのかもしれない。


 挨拶もそこそこについに大会が始まる。

 大会の第一回戦。

 緊張しているわたしとは違い、メテオはいつもどおり余裕そうにコントローラーをイジっている。

 大会は5対5のバトルロイヤル。

 先に相手チームを全員倒したほうが勝ちになる。


 「それじゃあ、最初は僕たちが前に出て敵を引きつけるから、君たちは援護をよろしく」

 「了解」


 チームリーダーの人がそれぞれ指示を出す。

 メテオは慣れていないだろうということで、後衛を任されることになった。

 リーダーの人はスナイパーポイントも教えてくれる。

 これならメテオも大丈夫、そう思っていた。


 ――だが、ゲーム開始と同時にトラブルは起きる。


 「さァテ、暴れてやるかァ!」

 「お、おい、どこへ行くんだ!?」


 開始と同時に後衛のはずだったメテオは前線へと全力疾走を始める。

 作戦無視どころか、持っていた銃も捨てて、ナイフ一本で敵陣へと向かっていってしまった。


 「なに考えてんだ、あいつ!?」

 「仕方がない、僕たちは作戦通りに行こう!」


 チームの人たちが立て直そうと話し合っている隣でメテオはありえない行動をまた始めた。


 「おッしャ、まずは一人目ェ!!!」


 そう言って敵の背後へと飛び降り、そのままテイクダウンで相手を倒してしまう。

 自分で見ててもなにが起こったのかわからないくらい素早い動きで敵の背後に回っていく。


 「おい、どうしてやられたんだ!?」

 「ウソだろ! 大会でナイファーをやるバカがいるのか!?」


 相手チームの人たちから、悲鳴と怒号のような声が上がる。

 本来なら作戦を立てながら、状況に応じて動き銃で撃ち合うFPS。

 なのにメテオは作戦も、状況も、武器も関係なくナイフ一本で相手を倒している。


 「クハハ! 背中がガラ空きなんだよォ! 気をつけなきャ、ナイフでぶっ刺されるぞォ!」

 「ふざけんな、こんなのゲームじゃねえ!」


 相手チームから罵声が飛んでくる。

 でも、メテオはそんなことは気にせず、次々と相手チームをナイフキルしていき、結果――


 「勝者、日本代表チーム!」


 数分と経たずに試合は終わってしまった。


 「クハハ! 大会に出てるくらいだかラ、強いと思ったらナイフに負けるザコじャねェかヨ。このまマ、アタシが優勝をもらッていくゼ!」

 「ふざけんな、真面目に戦え!」

 「そんなので勝って楽しいのかよ!」


 勝利宣言を高らかに上げるメテオだが、観客席から返ってきたのは罵声の数々だった。

EPISODE5 墜ちた流星「どうして……答えてくれないの……ねえ……メテオ……」

 わたしたち日本チームは大会の控室で、次の対戦を待っている。

 その場の空気は勝ったことへの喜びではなく、ただただ冷たく重いものだった。


 「どうしてあんな戦い方をしたんだい?」

 「はァ?」


 最初に声を掛けてきたのはチームリーダーの人。

 それに連なるように他のチームの人もメテオの周りに集まってくる。


 「勝ッたんだからいいだロ? それとモ、もっと別の勝ち方がよかッたカ?」

 「そういうことを言ってるんじゃない!」


 声を荒げるチームリーダーにわたしのほうが怯え、メテオの中で小さくなっていくのがわかる。


 「チームで戦っているんだから、あんなワンマンプレイは控えてくれ」

 「はいはイ、仲良しこよしで戦えばいいんだナ。わかッたわかッた、次からそうするヨ」

 「……頼むぞ。あんなのは試合じゃない。あれはもうゲームを使った暴力と変わりがないからな」


 リーダーさんの言うこともわかる。

 あんな戦い方はしないほうがいいんだから。


 ――だけど、メテオはその後も変わらずにワンマンプレイを続けていく。

 変わらずナイフ一本で戦ったり、誤情報を流して味方を囮にしたり。

 観客からどれだけの言葉を浴びせられようと、そのプレイを変えようとはしなかった。

 チームとの関係が険悪になり続ける中、とうとう決勝まで来てしまった。


 「クハハ! なんだァ、思ってたより楽勝だなァ。このままサクッと優勝もいただきだゼ」


 休憩時間中の誰もいない控室で、メテオは高らかに笑いながらそう宣言する。

 同じ部屋にいたくないと思われるほど、もうメテオとチームメンバーの溝は深くなっていた。


 「このまま勝てバ、パパやママに褒めてもらえるゾ。そうだロ、アタシ?」

 『……こんなの……」

 「あァ?」

 『こんな勝ち方で褒められたって、ちっとも嬉しくない!』

 「なに言ってんだ、お前」

 『メテオだったらチームで協力して戦えるのにどうしてあんな方法ばっかり! せっかく大会に出れたのに、こんなのないよ!』

 「……バカじャねェノ。お前はなにもしてねェのに、そんなこと言う権利あんのカ?」

 『そ、それは……』

 「忘れたのカ、パパも言ってたじャねェカ。ゲームは勝つことが大事だッテ」


 確かにパパはそう言っていた。

 でも、それはどんな手を使ってでも勝たなきゃいけないって、そういうことなのかな。


 「アタシは勝つためだけに出てきたんダ。お前にとって必要な力だッたんじャねェのかァ?」

 『わたしにとって、ゲームは……』

 「……あァ、なんかもうシラケたワ。別にお前のためにやッてるわけじャねェのにヨ。あとはもう勝手にやレ」

 「え? 待って!」


 その瞬間、わたしがメテオと入れ替わって表に出る。


 「あれ……メテオ……?」


 わたしはメテオに話しかけるが返事はない。

 それどころか、確かに感じていたメテオの気配が全く感じられなくなっていた。


 「そんな……うそ……返事して……ねえ……メテオ……」

 「日本チームの皆さん……あれ、ひとりしかいない? 他の人たちはどうしましたか?」


 メテオが消えて戸惑っていると、控室にスタッフの人が入ってきた。


 「あの……ええっと……外に……」

 「そうでしたか。もうすぐ試合が始まりますから会場に入るように伝えてください!」

 「は……はい……」


 わたしは何度もメテオに声を掛けたけど、返事が返ってくることはなかった。

 まもなく、試合が始まる。

 わたしはこの日、初めて『百鬼煌星』として、大会に望むことになってしまった。

EPISODE6 ゲームは誰のために「お前はなんのためにゲームをやるんだァ? パパやママのためカ? それとも……」

 ――大会の決勝。

 こんな大舞台で、わたしひとりの力で戦うことなんてできるのかな。


 「あの野郎、どの面下げてあそこに座ってんだ」

 「おい、真面目にやらないならとっとと帰れ!」


 観客席から飛んでくる野次に泣きそうになりながら、わたしはコントローラーを手に取る。

 チームメンバーに視線を向けても、こちらを見る人は誰もいない。それどころか――


 「お前は勝手にやってろよ。俺たちは俺たちの戦い方でこの試合に勝つから」


 冷たく突き放すように言われた言葉が心を刺す。

 消えたい、いなくなりたい。

 本当なら迷惑をかけてしまう前に試合を辞退しなきゃいけないのに怖くて、辛くて、声が出せなかった。


 どうすればいいの……。


 そんな心の声に答えてくれる人も、もうわたしの中にはいない。


 「――戦、開始です!」


 考え事をしすぎて試合開始の声を聞き逃してしまう。

 慌てて動こうとするけど、練習したときのような動きが全くできない。

 それどころか、わたしはチームから離れて、孤立してしまっていた。


 早くチームに合流しなきゃ……!


 そう思った瞬間、どこからか飛んできた銃弾が頭に当たり、キャラが倒れてしまう。


 「おっしゃ、ヘッドショット! クソみたいなプレイしてきた野郎にはお似合いだぜ!」


 相手チームから聞こえてくる声で、わたしは敵のスナイパーに撃たれたんだとわかった。

 そのままチームは押されてしまい、結果、相手のチームに全滅させられてしまう。


 「くっ、決勝だけあって強いな」


 もう終わってしまった、そう思っていたのにチームメンバーたちはまた次の打ち合わせを始める。

 わたしは状況がわからず、辺りを見回すと、相手のラウンドに1の文字が入っていた。


 「さあ、三本先取の決勝戦。初戦を取ったのは――」


 司会の言葉でやっとこれが三本先取の試合だと思い出す。

 大会のルールには目を通したはずなのに、そんなことも忘れてしまっていた。


 「次の試合もアイツを狩れば楽勝だぜ」


 相手のチームがわざとこちらに聞こえるように声を上げる。

 最初からわたしのことだけを狙っていたなんて。


 「……おい、あれはわざとか? 三本先取だから、相手に二本やろうとか考えてんだろ」


 そんなことは思ってない。

 チームメンバーの人にそう言い返そうとしても、わたしは声を出すこともできずにいた。


 次の試合。

 わたしはスナイパーに狙われないように、チームメンバーと動こうとする。


 「お前、狙われてるんだから、こっちに来るな!」


 チームメンバーの言葉に動きが止まってしまう。

 もう、彼らと一緒に戦うことすら、わたしには許されなかった。

 だったら、迷惑にならないよう、わたしが囮になってチームの人が動けるようにしよう。

 そう思い、フィールドを四方八方に逃げまくる。


 「おい、なにやってんだ!」

 「ちゃんと戦えよ、バカにしてんのか!」


 どんな野次を受けようと、もう関係ない。

 わたしはわたしにできる戦いをやるしかないんだ。


 「あいつ、どこに逃げやがった!」

 「おい、そっちにいねえのか!」


 相手チームは必死で探し続けている。

 これならチームメンバーの人が動きやすくて、きっと敵を倒してくれるはす。


 「もういい、あんなの放っとけ。先に弱い奴らを始末するぞ!」


 その声が聞こえてきて、わたしは慌てて敵に見つかるように動くけど――


 「バーカ、すぐ出てきやがった!」


 ――瞬間、角で待っていた人にショットガンで撃ち抜かれてしまう。

 わたしを誘い出すために場外戦を仕掛けてくるなんて思ってもみなかった。


 「おい、あれいいのかよ。完全に場外でやってねえか?」

 「聞こえるように声張り上げてるしな」

 「いいんじゃね、相手が相手だしよ」


 観客からの声が少し聞こえてきた気がするけど、もうほとんど耳に入っていなかった。

 次に負けてしまえば、決勝戦で敗北してしまうことになる。

 ……それも、わたしのせいで。


 「さあ、決勝戦も大詰め。日本代表、このまま1ラウンドも取れず負けてしまうのか!?」


 最後の試合が始まってしまう。

 ……わたしはなにもしないほうがいい。

 勝てるわけなかったんだ。

 どれだけ練習したって、努力したって、勝てないものは勝てないんだよ。

 ……もう負けたって構わない。


 「ごめんね……メテオ……みんな……ここまで……戦ってくれたのに……」


 わたしはそっと目を閉じて、最後の瞬間が来るのを待とうとした。


 『……目を閉じてちャ、相手を撃てねェだロ! ちャんと目ェひん剥いて狙いやがレ、陰キャ!!』

 「メテオ……!?」


 言われて目を開けると、自分から狙える位置に敵プレイヤーが見えた。

 咄嗟にトリガーを引くと、その弾はあっさりと相手プレイヤーを撃ち抜く。


 「あ……当たった……」

 『やればできるじャねェカ。その調子でドンドンぶッ倒してやレ!』

 「メテオ……今まで……」


 今まで感じられなかったメテオの存在を、わたしの中にしっかりと感じた。

 また会えたことに嬉しさが込み上げてくる。


 「ごめん……わたし……あんなこと言って……」

 『そんな大昔のことはどうでもいいんだヨォ! 今はやることがあるだろォがァ!』

 「でも……わたしがやっても……負けちゃう……だけだから……」

 『はァ? だからいいんだろォガ』

 「どういうこと……?」

 『どうせ負けるんだッたラ、思いっきり楽しむだけ楽しんで負けてやレ!』

 「メテオ……」

 『でェ? お前はこれからどう楽しむんダ?』


 わたしはマップで味方の位置を確認する。

 もうわたしを含めて3人しか残っていない。

 なのに、相手は4人も残っている。


 「わたしはチームのみんなと……このゲームを最後まで楽しみたい……!」

 『なラ、やることは決まったなァ! アイツらを助けに行くゾ!』

 「でも……わたしじゃ……」

 『うだうだ悩んでるヒマがあッたら動ケ! お前の実力はこのメテオ様のお墨付きダ。アタシがありがたいアドバイスをしてやる。今度は勝つためじャねェ、楽しむためになァ!』

 「うん……!」

EPISODE7 最幸のゲーム「わたしは楽しくゲームがしたい! メテオや、みんなと一緒に!」

 味方を助けるためにわたしはキャラを走らせた。

 チームメンバーはすぐ隣に座っているのに、キャラ同士はすごく遠くに感じる。

 マップを確認しながら味方と合流すると、撃ち合いが始まっていて、味方は動けないでいた。


 「くそ、こっからどうするんだよ!」

 「2人で4人を相手にしなきゃいけないなんて……」

 「あ……あの……」


 せっかく合流できたのに、連携しようと思っても、わたしは声を出せない。


 『腹から声出しやがレ! やるッて決めたことがあるんだろォがァ!』

 「あ……あの……!」

 「うわ!? 急に大きな声出すな、ビックリする!」


 メテオに後押しされたおかげなのか、自分でもビックリするくらい大きな声が出てしまった。


 「わたしが援護しますから、ここは一旦、引いてから立て直しましょう!」

 「急に出てきてなにを偉そうに!」

 「またなにかやるつもりなのか」

 「信じても信じなくても構いません。わたしは、わたしにできることをやります!」

 『クハハ、やッてやるかァ!』


 わたしはメテオの助言を受けながら、味方が逃げられるように牽制射撃を行う。

 断続的にリズムを変えながら、相手が動けないように射撃する。


 「ほ、本当に援護してくれてるのか?」

 「とにかく、逃げられるならここで引くぞ!」


 なんとか敵から距離を置くことができ、体制を立て直すだけの時間を稼ぐことはできそう。


 「どういう風の吹き回しだ?」


 今までわたしがやってきたことを考えると信用されないのは当然だと思う。

 でも、だからこそ言わなきゃいけないことがある。


 「わたしの自分勝手なプレイで皆さんに迷惑を掛けて本当にごめんなさい!」

 「な、なんだ?」

 「謝って済むことじゃないとわかってます。でも、謝らせてください!」


 わたしはコントローラーを置いて、チームメンバーの人たちに頭を下げる。

 今はこれしかできることがないから。


 「もう終わりだからって、今更いい子ちゃんになるつもりか?」

 「待て、ちゃんと最後まで聞いてあげよう」

 「……」

 「これが最後になるかもしれない……だから! わたしはこのゲームを楽しくプレイしたいんです!」


 わたしの言葉を聞いてチームメンバーたちの沈黙が続く。

 そして、最初に口を開いたのはリーダーの人だった。


 「さっきの君の援護は素晴らしかった。あれは自分勝手なワンマンプレイじゃなくて、本当にチームのことを思っての行動だったと思う」

 「ああ、確かにあれがなかったらきつかったな」

 「君の腕は確かだ。だから、今からでもいい、一緒に戦ってくれると心強いよ」

 「いいんですか……?」

 「それに君のゲームを楽しみたいっていう言葉は嘘じゃないと思うしね」

 「……ありがとうございます!」


 まだ全員が全員、わたしのことを許してくれたわけじゃないと思う。

 だから、それはわたしのプレイで示したい。


 『さァ、せっかくのチームプレイだァ! 楽しむだけ楽しんでやろうゼ。それが遊び(ゲーム)ッてもんだろォ!』

 「うん……!」

EPISODE8 選ばれた未来「一緒に行こう……メテオとなら……どこへだって……行ける気がする……!」

 大会が終わって数日が経った。


 『おイ、いつまで支度してんだァ。さッさと行かねェと待ち合わせに遅れるゾ』

 「わかってるよ……でも……忘れ物が……ないようにしないと……」

 『別にゲーム機さえあればいいんだかラ、他はどうでもいいだろォがァ』


 ――大会のあと、わたしは改めてチームメンバーの人たちに謝罪をした。

 どんなことを言われるんだろうと構えていたわたしだったけど、返ってきたのはまた一緒にゲームをしようというお誘い。

 それから何度かオンラインで遊んできたけど、今日はオフラインで遊ぼうということになった。


 『まさかだよなァ。意外とお前に気があるんじャねェカ、あのリーダー』

 「それはないよ……だって……わたし……こんなだし……」

 『かァ、これだから陰キャはよォ!』

 「ほら……そろそろ出かけないと……」

 『今から行くところはちャんと春巻きがメニューにある店なんだろォなァ?』

 「ゲームをするのは……わたしなんだから……また急に……出てきちゃダメだよ……」

 『はいはイ、わかってるッテ!』


 あの日、わたしのゲームへの向き合い方は少し変わった。

 勝っても負けてもいい、そう思ってゲームをプレイすると伸び伸びと戦えて、成績はメテオとほぼ同じ位置につけている。

 だから、わたしは楽しむことを一番にして今もゲームをすることにした。

 それでも、プロのゲーマーを目指すことは諦めていない。

 だって、プロになれば、普段は戦えないような人とゲームを一緒に遊べるんだから。

 パパやママとは違う道を進むことになると思う。

 だけど、それはわたしたちが選んだ道。


 『おイ、忘れてるもんがあるゾ。あいつはお前のお守りじゃなかッたのかァ?』

 「あっ……ありがとう……」


 わたしは机に置いてある写真入れを手に取る。

 そこに映っているのは優勝トロフィーを抱えたわたしとそれを囲むように並んでいるチームメンバー。

 わたしとメテオが初めて手にしたゲーム友達。


 『マジで出ないと遅刻になるゾ!』

 「う……うん……! 行こう、メテオ(わたし)!」

 『あァ、行くぞ、煌星(アタシ)!』

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■ 楽曲
┗ 全曲一覧(1 / 2) / 追加順 / 定数順 / Lv順
WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧

脚注
  • *1 マップ短縮170マスを含む
  • *2 RANK15で解放
  • *3 エリア1から順に進む場合
コメント (百鬼 煌星)
  • 総コメント数21
  • 最終投稿日時 2022/11/01 22:19
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