メイン・ストーリー・81話は戻る〜90されど
81.話は戻る
ペッパーシャコは命令を受け、危険を取り除くことに準備する。しかし目標としてのこちら側は、まだ危険にさらされている。
パラータ北部
王城廃墟
イキとミスラは蜃楼が仕留められたあと、急いで○○たちの元にやってきた。現場には大量の土煙が立ち込めている。
イキ:オリビア、○○は?
オリビア:……
ミスラ:ま、まさか……巻き込まれた?
オリビア:○○はいつだって事件に巻き込まれている。今回だけ無事でいると思ったか?
ミスラ:では……
イキはその言い方に反論しようとしたとき、土煙の中から、翼をはためかせているB-52が現れた。その両手には○○が抱きかかえられている。B-52は懸命に翼をはためかせるが、○○の重さでうまく飛ぶことができない。地面に急降下したそのとき、天ぷらが不意に現れ、○○をがっしりと受け止めた。
イキ:○○!
主人公:うぐぐ……コホコホ!コホコホ!はぁ、はぁ……はぁ!
オリビア:今日はずっと土を食べているな。副菜も注文したほうがよくないか?
主人公:ちょっと……少しは私のこと心配してくれない?
ミスラ:○○、無事でよかった!
イキ:まさか○○が蜃楼をやっつけるとは思わなかったぜ。すげぇな!
主人公:もういいよ。今回の経験はぜんぶ夢みたいだ。自分でも信じられないことばっかだった。
ライス:あの……みんな、御侍さまは疲れているのです。だから休ませてあげてほしいのです……。
主人公:ああ、問題はもう解決したからさ。北荒集落に帰ろう。いい加減、パティにサイモンの行方を教えてもらいたいしね。
82.悪化
苦労をなめ尽くしてようやく蜃楼を解決した。皆も無事に北荒集落に帰り、パティに知らせることに決めた。
○○は無事に仲間と合流し、北荒集落へと戻った。パティはずっと彼らの帰りを待っていた。無表情でも瞳には少しだけ喜びが混じっているように見えた。
パティ:お帰りなさい。
主人公:ただいま。ほら、無事私たちだけで解決できたよ。
イキ:敵わなかったらすぐ逃げるって言ってたけどね?
主人公:………………
ミスラ:今は無駄話をしてる暇はないんじゃない?
主人公:確かに。あのさパティ、サイモンはどこにいる?教えてもらえないかな?
パティ:そうね。お礼にサイモンに関することは全部教えてあげよう。よく聞いて……ああっ!
パティが口を開こうとした瞬間――矢が突然飛んできて、パティの胸元を射抜いた。
主人公:えっ!?パティー!?
オリビア:敵だ!警戒態勢に入る。B-52、上空から様子を見てきてくれ。イキ、ミスラ!おぬしたちは急いで○○とパティを連れて北荒集落に行ってくれ!
主人公:待って。パティだけ連れていってくれ。私はここに残る。
オリビア:○○、おぬしの食霊はもう限界だ。おぬし自身も休息が必要だ。
主人公:大丈夫。それに今回の敵は私を狙ってるんだと思うから。
ペッパーシャコ:目標……外した。
○○の前に怪しげな男が現れる。手には精巧なナイフが握られていた。
オリビア:ペッパーシャコ!?
主人公:オリビア、知り合いなの?
オリビア:……彼は魔導学院の実験室にいた記録がある食霊だ。
オリビア:まだ食霊が誕生したばかりの頃、魔導学院の実験室では多くの食霊が逃げだした。彼も逃げだした多くの『失敗作』のひとりだ。
主人公:失敗作?
オリビア:魔導学院での話だ。彼の腕を見ろ。実験室の人間が改造したんだろう。だが、何故彼がこんなところに……?まさか!!
主人公:まさか……?
ペッパーシャコ:○○――目標、消滅……
主人公:な、何だって……?本当に私がターゲットだったとは!
オリビア:ふざけてる場合か!気をつけろ、また来る!
オリビアは迅速に○○の前に躍り出た。彼女の前に華奢で愛くるしい姿が現れ、握っている巨剣を振るって矢を二段に割った。
ジンジャーブレッド:食霊が人間に手を出すとはな。こいつは殺すしかない。
ペッパーシャコ:邪魔者……殺す。
***
ペッパーシャコ:時間不足……任務……失敗……
ペッパーシャコは、悔しそうにそう呟き、暗闇へと消えていった。
主人公:……えっ?これで終わり?
オリビア:何を残念がっている?おぬしは相変わらずとぼけているな。
ミスラ:○○、オリビア!パティ、パティが……!
主人公:パティ、大丈夫!?
パティ:はい……食霊は私に『致命傷』を与えることができる。でも、神様は死なないから。
主人公:で……でも、今まさに死にそうだけど!?
パティ:違う。これはこの人間の体が……ドゥルガーを抑えられなくなっているだけ……
主人公:ドゥルガー……?
ミスラ:ドゥルガーは四百年以上前にパラータに生まれた女神の名前……ただ、それ以降、姿を見せることはなかった。その名前を出すってこと――もしかしてパティは、ドゥルガーの化身なの?
イキ:へぇー!本当に神様なんだ。だったら無理に抑えつけたりしないで本当の姿になれば?
パティ:ダメです……力が衰えている上に、大怪我をしてしまっているから――今出てくるのはきっと……憤怒相――カーリー。
主人公:そのカーリーが出てきたら暴れるんだよね……でも、パティもこれ以上抑え込むのは厳しそうだ。私たちにできることはある?
パティ:お願いがあります……カーリーが出てきたら、私を倒してください。私は力を使い過ぎて疲弊状態です……
パティ:残りの力を使い果たしたら、また眠りについて回復ができますから……。
主人公:私たちが、神様と戦うってこと?
パティ:ドゥルガーがカーリー化するのは、悪を滅ぼすためです。しかし、悪がいなければ、溢れ出す怒りがすべてを破壊し、パラータの民が……ひどい目に遭う……
主人公:蜃楼が出てきた時にも言ったけど、ここは本当に災害が多いんだね。まあ、でも放ってはおけないよね。
パティ:ありがとう、○○。まだ、私はカーリーを抑えられるから。その間にもうひとつ、やらなくちゃいけないことがあります。
オリビア:北荒集落の住民のことか?こんなときも彼らのことが気になるのか。あの怠け者たちのどこにそんな価値があるのか……。
主人公:そうだね。これからはパティに頼れなくなる。そうしたら彼らは、別の生き方を探さないといけないね。
ミスラ:○○……まさか、手伝うつもりなの?
主人公:闇市港……たぶんあそこが北荒集落の住民たちが生き残る、唯一の道だ。
主人公:市場の建設をここまで拡大するように闇市港を説得できれば、彼らは働かなければならなくなるからね。いい案だと思わない?
83.ゴールデンの誘惑
パティは敵に撃たれ、元々抑えられない力は溢れそうだ。あなたはパティと約束し、後始末を開始した。
これはパティにとって最後の願いだと言う。○○たちは、その願いを叶えてあげることに決めた。北荒集落に残った○○たちがパティの世話をする一方で、オリビアは闇市港に相談をしに行き、重要な情報を持ち帰ってくる。
オリビア:ただいま。パティ、まだ耐えられるか?
パティ:はい。食霊のおかげで、いま体の調子が安定しています。
ティラミス:いえ、わたくしはただ傷を治療しただけ。あとは貴方の自然治癒力次第……。
主人公:それでオリビア。闇市港のほうはどうだった?結果を教えてほしい。
オリビア:ああ、約束を取り付けた。だが彼らは既に北荒集落の土地と人口を吸収して拡充するつもりだった。だが、ちょっと面倒なことになってるな……
オリビア:この件に資金を回すと闇市港の運営に影響が出るから、資金援助がほしいと言われた。
オリビアの言葉にみな口を噤む。しかし、その視線は――○○に向けられていた。
主人公:えっ?なにその目!私に何をさせたいの!?
イキ:○○がぼくたち支部の中で一番お金を持ってるよな。だったら……彼らを助けてあげられるんじゃないか?
主人公:え!?なんで私のお金で助けてあげなきゃいけないの!?
オリビア:おぬしなら可能なのだが……彼らを見殺しにすると?
主人公:いやいやいや!そもそもなんでしがない料理御侍に過ぎない私が闇市港の資金援助なんてしてあげなきゃいけないのさ!他にも方法はある筈だぞ!
パティ:○○……かなり危険ですが、他の方法があります。
パティ:王城廃墟の南には鉱坑があって、そこの金鉱量は採掘を4年に続けられる。闇市港が採掘権を買ったけれど、堕神がいるからずっと放置されています。
オリビア:それなら、堕神の問題を解決すれば、資金不足の心配はなくなるな。
主人公:こ、こんないいところあるか?
イキ:○○、何をするつもりだ?
主人公:コホン、何でもない。ティラミス、ここでパティの世話を頼むね。私たちは急いで鉱鉱に行って堕神退治をしてくる。さぁみんな、行こう!
84.うまいもの
もし闇市港を助け黄金鉱坑奪還すれば、北荒集落の人も相手に受入れる。あなたはこの目的のために行動する。
パラータ
金鉱坑
堕神を倒したあと、○○は鉱坑の入り口でたいまつをつけた。たいまつの灯りで鉱坑の中を照らすと、剥き出しになっていた金鉱がキラキラと輝いている。
主人公:綺麗だなぁ……
オリビア:おぬしにとって高価なものは全部綺麗なのでは?
主人公:そんなわけないでしょ……それとも、私はそういう人に見えると?
イキ:そうだね。だって○○は困っている人がいても、救うのに自分のお金を使わない金の亡者……
主人公:ちょっと!ひどくない!?
そのとき『グー』という音が響いた。○○は己の腹を押さえ、気まずそうに皆の顔を見た。
ライス:御侍さま、今日はまだごはんを食べていないのです。
主人公:えっと、さっきの蜃楼との戦いで緊張しすぎて、すっかり忘れてたよ。どうりで歩くのもつらい訳だ。
オリビア:それは、おぬしだけではないぞ?
イキ:へへ、実はぼくも食べてなくて……お腹が空いてる。
主人公:そうか、じゃあまずはティラミスに連絡だね。私達が鉱坑を取り戻したということを闇市港側に伝えて……そのあと料理を作ろうか。
ミスラ:いいわね!○○の料理は美味しいですから、楽しみだわ!
***
鉱坑の傍での食事であったが、今日初めて食べるご飯なので、○○の手料理をみんな美味しそうに食べている。
主人公:ふぅ〜……あり合わせの食材で作ったわりには、美味しいご飯ができたなー!
主人公:ああ、ありがとう。
オリビア:さて、腹ごしらえが済んだし、次の問題について話そうか。パティが化したあの神様……どう思う?
イキ:……正直、神様と戦うことになるとは思わなかったぜ。
主人公:それはみんなそうでしょ。パラータに来る前は、肇始之神こそ唯一の存在だと思ってたし。
オリビア:確かに肇始之神は唯一の存在だ。忘れないように、私たちも含めてすべてのものは、肇始之神の一部、ましてそれらの神様たちについては言わずもがなだ。
主人公:抽象的なものはわかりにくいな。まあ、なるようになるさ。サイモンにまた、桜の島のような惨劇を作らせないようにしないとね。この道はもう進むしかないんだ。
オリビア:……今の状況がそこまで単純ではないとしたら、おぬしはどうする?
主人公:えっ?
オリビアの言葉に首を傾げたとき、ティラミスが現れた。
ティラミス:オリビア様!
主人公:ティラミス?パティの面倒を見てたんじゃないの?なにかあった?
ティラミス:先ほど連絡を受けたのですが、パティさんは気遣いはいらないと仰りました。そして、怪我することがないように、と伝言を残して既に旅立たれました。王城の廃墟傍の村に彼女を探しに行きましょう。
主人公:だとしたら、彼女はもう準備ができている……ああ、サイモンの行方さえまだ聞いてないのに。
オリビア:だったらすぐ行こう。彼女がドゥルガーかカーリーかに変わる前に、何か聞けるかもしれない。
85.断界姫の言葉
パティの要求を知り、皆は王城廃墟近くの村落に赴く。そこにパティを見つけた。
鉱坑の堕神を片付けた後、ティラミスはパティがまもなく神――ドゥルガーに変貌する情報を持って帰ってきた。
約束どおり、○○たちはドゥルガーを助けるために残りの力をすべて消耗させて眠らせるつもりだ。だがその前に、サイモンの情報を得なければならない。
パティ:ようこそ。
主人公:パティ、大丈夫……?あの、こんなこと聞くの変かもだけど、貴方はまだ私たちの認識してる貴方かな?
パティ:怪我をした後、ドゥルガーの力が一部溢れてしまって……けれどそのおかげで傷は修復し、神の記憶も一部取り戻すことができました。でもご安心を。私はまだ私です。ただパティはもうドゥルガーではありません。
ミスラ:どういう意味だ?
パティ:○○、あなたはサイモンの行方と、彼が一体何をしているのかを知りたいのですよね?
主人公:うん。その話をできるタイミングをずっと探ってた。
パティ:それを教える前に、私たち神と母神である肇始之神についてのことを知ってもらいたいです。
オリビア:………………
イキ:サイモンの行方と肇始之神と関係があるってこと?
パティ:宇宙に存在するすべてのものは、母神による夢想の力で生まれました。この星を含む、山と川、堕神と食霊、人類と精霊、すべて同じ源を発しています。
パティ:その後、人類の願いのもとに、私たちも夢の力から生まれました。
パティ:この世に存在するすべての神様も母神の一部で、私たちはそれぞれは違っていますが、行動の前提はすべて母神の意志のもとに成り立っています。
パティ:母神の意志は彼女を蘇らせることと決めました。その目的のために、この星のすべてのアンバランスを補います。
ミスラ:この星には何か釣り合わないものがあるの?
パティ:人間です。人間は星の均衡を偏んで、516年前に人間は精霊を消滅させ、生命の均衡が崩れ始めた。
パティ:母神は悲しみのあまり、純粋な夢想の力で混沌を星に生み出しました。その結果人間を喰らうなど生命の不均衡を修復する存在が生まれました。
ライス:お、堕神!?
ミスラ:堕神が人間を喰らうのは……まさか創世神として人類に崇められた肇始之神の意志だと言うのですか!?
主人公:ちょっとちょっと……肇始之神は堕神に人間を喰わせたのに、彼女の一部として、逆に人間を助けてるのは、自己矛盾じゃないか?
パティ:この前言ったドゥルガーの憤怒相――カーリー。対するパティは苦行相です。これまでのことは、それぞれの私が、光と闇のように行ってきたことです。母神も同じでしょう……
パティ:彼女は夢想の力から生まれました。そのため、善念と悪念はそれぞれ単独で存在する力です。私たち神は彼女の善念からより多くの源を発しています。また、混沌は純粋な悪念から生まれました。
イキ:キミたちは善念なのか?それならどうして堕神を放っておく?
パティ:人間は心の中に悪念があるからといって、自らその悪を絶とうとはしないでしょう?それと同じ道理です。
主人公:なるほど……でも大丈夫だ、今は食霊がそばにいるから、堕神と対抗できるからね。
パティ:食霊と堕神も混沌から生まれたということを知ってるか?
主人公:ああ。食霊を召喚する資料で読んだことがある。幻晶石で混沌を浄化するから、生まれた霊体は堕神とは違うものになる……
主人公:えっと……まさか実は食霊も、肇始之神の意志に従って、最終的には人間を滅ぼすと……?
ライス:そ、そんなことしませんよ!御侍さま!
イキ:ライス……!
ライス:私は、御侍さまが大好きです。御侍さまを傷つけるようなこと、ライスは絶対にしません!
主人公:ライス、落ち着いて。これは机上の空論だ。明らかに不可能なことだよ。わかってるから。
ミスラ:でも……もし食霊に契約の縛りがなかったら……?
主人公:ミスラ!
ミスラ:ご、ごめんなさい……怖くなってしまって。
パティ:契約は食霊の意志を左右する最も主要な要素ではありません。人間と食霊は契約の上に成り立っている関係で、本来であれば人間と食霊の感情は敵対しています。
オリビア:どういう意味だ?私たち人間は食霊と仲良くするべきではないのか?
パティ:……サイモン、そして彼と密接に関係している人たちは、この事実に辿り着きました。彼らがこれまでにやってきたことは、この関係を塗り替えるためです。
主人公:前にザリガニが言ってたね。人間は食霊を堕神化する研究をして、堕神を消滅させると同時に、食霊も抹殺すると。でも、それで人間が救えるのかな?
ミスラ:これは矛盾です……食霊がいなくなったら、人間は堕神に抵抗できなくなりますよね?これは自滅行為です!
主人公:そうだね、矛盾してる。これは、正しい方法ではないはずだよ。人間を救うためだとしても看過できない。私たちは彼らを阻止しなければならない――パティ、何か手がかりはある?
パティ:あります。貴方たちはそれがなんなのか、十分に理解しているはずです。
オリビア:○○も、そうだと言うのか?
パティ:○○は既に貴方たちと同じように、もっと良い結末を求めることを決めていますよ。あとは時間がすべてを証明してくれるでしょう。
パティ:……サイモンは、久遠海域のソルサビス島に留まっています。貴方たちもその島に行って、答え合わせをしてみましょう。
86.有言実行
パティは自分が知っているすべてを皆に教えた。そのあと、そして最後に、あなたはパティとの約束を果たす。
パティ:今、私が知っていることは全部あなたたちに教えました。約束を守りましょう。
主人公:いろいろと教えてくれてありがとう。パティ、全部終わったらゆっくり休んでね。
○○がそう告げると、パティは軽やかに笑った。そして両手を胸の前で合わせた。すると、その細い体がまぶしい白光に包まれた。
そうしてふたたびパティが姿を現したとき、目の前に立っていたのは、彼女本来の自我である――破壊相ドゥルガー。
断界姫:ふぅー……!ああぁ、ぐずぐずしやがって、やっと終わったか。なにをそんなに話すことがあるんだか。
主人公:………………
断界姫:なんだ、その顔は?
イキ:見た目だけじゃなくて、性格まで変わったみたいだ……
断界姫:あ?必ず見た目と化身の性格は一致しなくちゃいけないのか?
ミスラ:私も……
断界姫:無駄話はいらん。今、お前らと話してやってるのは最大の慈悲だ。お前らと約束があったとはいえ、俺の怒りを静められないなら、お前ら全員死刑だ!
主人公:おい、約束が違うぞ!
87.人間として
怒る断界姫はあなたに撃破されて、眠りに落ちた。しかしこんな時にまだある事にミスラは気にかける。
断界姫:ふん……もし俺の力がもっと満ちていたら、違う結末になっていたはずだ……
主人公:だったら私は絶対に貴方に従わない。他の者を探せ!
断界姫:ハハッ!パティは実はずっとお前を可愛いと思ってるんだ。口にすることはないだろうがな。
主人公:えっ?そ、そうなの?でも、なんで今そんなこと言うのさ?
断界姫:彼女が話したことは、お前らだけが知っていることだからだ。だから、このことのために奔走してるのはお前らだけ……怒りが治まった以上、母神からの力で、もうひとつだけ助言をくれてやろう。――救世主は、お前たちの中にいる。
主人公:は?
断界姫:あー、ホントに疲れたわ。ぐっすり寝るぞー……俺が完全回復して目覚めたときは、既にパラータも平穏になってるだろうしなぁ。
ミスラ:ちょっと待って!そうしたらパティはどうなるの?パティも消えちゃうの?
断界姫:パティ?あいつのことは俺には関係ねえから!じゃあな!
ミスラの質問を無視して、ドゥルガーが四つの腕を振りまわし、あっという間に光の中へと消えた。
ミスラ:ちょっと……!待ちなさいよ……!
オリビア:パティはドゥルガー自身だろう?ドゥルガーは寝たら、パティも寝る。
ミスラ:で、でも……突然いなくなっちゃうなんて。すごく寂しい……
オリビア:ミスラ……パティいなくなるけど、彼女は別の形で生き続けるから。
ライス:ミスラ、悲しまないでほしいの。
ミスラ:あぁ……パティ……
パティ:私を呼びながら泣かないでもらえますか?まるで私が死んじゃったみたいじゃない……
ミスラ:きゃーっ!な、何で!?
イキ:パ、パティ!キ、キミ、どうしてまだいるの!?
パティ:ここにいないでどこにいるの思うの?私は、消えるなんて言ってないわよね?
主人公:もちろん……言ってなかったけど。でも、ドゥルガーが寝たのに、一体どうして?
パティ:『禍を転じて福となす』と言うでしょう?ペッパーシャコの矢に当てられたことで、ドゥルガーの力が一部溢れ出た、って言いましたよね?力はまだ残っていて、命の源に変わったのです。だから私は、ドゥルガーから独立した存在となりました。ただし、これからはもう『神』ではない。あー……たぶん普通の人間のように、一生を過ごすのでしょう。
オリビア:それでは物足りないとでもいうようだな……?
パティ:私の身分は貴方たちと同じになった。かつての私と比べて、身分が低くなったのです。そう思ったら、気持ちは盛り下がりますよね?
主人公:うーむ。それは仕方ない……のかなぁ……?
88.折中の方法
パラータの件は全部解決した。サイモンの行方もよくわかったが、再び出航する時は問題に当たった。
○○一行は破壊相ドゥルガーの怒りを鎮めた。さらにパティが奇跡的に生き延び、パラータの旅は良い結末を迎えた。
ドゥルガーから得た情報で、サイモンの最終的な行き先――ソルサビス島へと船で向かうことになった。これで、彼らを止めることができる。だが……
イキ:え?パラータ東岸に港がないって!?
主人公:地図を見て。一番近い港はグルイラオ皇都のワルキリー港、これでまずグルイラオに帰らなくちゃ。
ミスラ:ここから一番近い黄金楽園はグルイラオ皇都港に行けるわ。そこから行ったらどうかしら?
オリビア:両国は戦争状態を終結させたばかりで、黄金楽園南北入り口には軍隊がいる。しかも皇都に隣接してるために、特別な通行権を持っている私たちでも、勝手な出入りは許されていない。
ライス:御侍さま、だったらまずはおうちに帰りましょう。きちんと旅支度をしたほうがいいと思います。
主人公:うん、そうしようか。急がば回れ、と言うしね。ねぇオリビア、あとワルキリー港は軍用だから、皇都に申請しないと使えないよね?
オリビア:ああ。この件は私からギルドの者を介してなんとかしよう。
主人公:よし、じゃあ一旦帰ろうか。ここのところずっと船上にいて、家の布団が懐かしくなってきたしね。さー、出発、出発っ!
イキ:ちょっと待って!
主人公:どうかした?
イキ:○○、ここに来るとき、船室が熱すぎて溶けそうになったことを覚えてないか?
主人公:それなら大丈夫だ。ダブルアイスを連れて行ったらいいんじゃないかな?
イチゴ&バニラ:溶けるのは嫌だよ。
主人公:うーん――オリビア、なんとかして……
オリビア:それより暑さに対抗できる飲食物を多く用意したほうがいいだろう。今のパラータに脅威は減ったし、食材の入手もそう難しくないはずだ。
ミスラ:賛成!それがいいと思うわ!
主人公:食いしん坊の君に賛成されると、不安になるな……。涼むために用意すること、忘れないでね?
89.解散
皆久しぶりのグルイラオに帰った。次はどうするべきか、全員はあなたの決断を待っている。
碧空二十五日
レストラン
主人公:ただいま!ちょっと休むよ、暫くひとりにしておいて!
ライス:おうちのにおいです~♪とても安心します!
イキ:家に着いた途端、だらだらするとは、まったく○○らしいな。
主人公:なんでそんなこと言うの?
ミスラ:○○がやるべきことを忘れてるからでしょ。
ティラミス:ここまで随分と長旅でしたし、さすがの○○様もお疲れになりましたよね?
ティラミス:今日はみなさん、きちんと休んだほうが良いと思います。このあとまた長い船旅が続きます。ゆっくり休んで、体力回復に努めたほうが良いかと。
イキ:うん、確かにそうだな。
ミスラ:えっと、私はみんなに合わせるわ。
主人公:よし、とりあえず今日はここで解散しよう、何か話があるならまた明日にしよう。
オリビア:うむ、では私もギルドに帰ってワルキリー港の使用権の申し込み手続きをしてこよう。
そうして、みなレストランから出ていった。暫しの休息――○○は久々の我が家に安堵して眠ったのだった。
90.されど
十分な休養を取り、あなたは再び安らかな朝を迎えた。オリビアは訪ねに来て、港の申請に関する消息を伝えた。
碧空二十六日
レストラン
早朝――○○はゆっくりと目を覚ます。窓の外には奇妙な月明かりや砂埃も見えなかった。さらに慣れ親しんだ布団で、十分に休めたようだ。身も心もリラックスしている。今、この瞬間以上に素晴らしい時間はないだろう。
レストランでライスが開店の準備をしている。○○が室内に入ると、それに気づいたライスが甘美な笑みを浮かべて走り寄ってきた。
ライス:御侍さま、おはようございます!
主人公:……元気だね、ライスは。よく眠れた?
ライス:はい。おうちにいて、御侍さまと一緒に朝を迎えられました。ライスはとても嬉しいです~♪
主人公:うん、旅先でいろんなことを経験したもんね。穏やかな生活がどんなに素晴らしいか、こうなってみると実感するな。けど、ここで立ち止まる訳にはいかない……
オリビア:○○。
主人公:おはよう、オリビア。ちょうど良かった。ワルキリー港の方はどうだった?
オリビア:昨日ギルドから話を聞いた。ワルキリー港を利用するには、責任者が直々に出向かなければならないようだ。おぬしが行くしかない。
主人公:へぇ。そういうルールなら行かないとね。イキとミスラは呼ぶ?
オリビア:おぬし一人で良い。
主人公:わ、私だけ?えっと……
オリビア:ん?なにか問題があるか?
ライス:その点…御侍さまは、まだ皇都に行ったことがないはずです……
オリビア:ほう?それは知らなかった……まぁ良い。では、私も一緒についていこう。
主人公:おお、それは有難い。いつ出発する?
オリビア:私はまだ用事がある。昼にヒルナ城の入り口で待ち合わせしよう。
主人公:OK。よろしくね、オリビア!
***
オリビアはレストランを出る。そして、外で待っていたティラミスと合流した。彼女は心配そうな顔でオリビアを見つめる。
ティラミス:オリビア様、本当に……良いのでしょうか?
オリビア:私はティラミスと同じだ。選ぶ権利はない。
ティラミス:わたくしたちなりの方法で向き合うと決めたのに……?
オリビア:今はまだ機が熟していない。
ティラミス:でも……そうなりますと、○○様の命が危ないです。
オリビア:………………
オリビア:ドゥルガーは、救世主は私たちの中にいると言った。だが、彼女の言う救世主が『○○』かどうかはわからない。私たちにできることは、ただ願うことだけ……あとは、そんな己の無力さを呪うくらいだな。
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