「怠屈砕く激輪」ジャルキィ

ジャルキィ「フルスロットルだ！」

主人公「ぎゃああああ！」

メルク「速い！速すぎるのですよ！」

ジャルキィ「ペダル式だと侮るなよ！私の『ウルトラハイパーバルカン号』は、その重量もあって下り坂ではドン引きレベルの速度が出る！」

ジャルキィ「ふふふ。とにかく堅く、重く、強くしてくれと発注した甲斐があったな！」

主人公「ドヤ顔での解説中に申し訳ないんですけど、スピード落としてくれませんか！」

ジャルキィ「む、なぜだ。早いほうが楽しいではないか。」

主人公「そう思うのはジャルキィさんと子供だけです！」

メルク「後生なので、ブレーキをかけてほしいのですよ！」

ジャルキィ「ブレーキ……？ないぞ、そんなもの。」

メルク＆主人公「……！？」

ジャルキィ「元々はついていたんだが、使う機会もないし、取った。」

主人公「なんてことを！」

メルク「それでは、どうやって止まるのです？」

ジャルクィ「ふむ。いつもは雪山に突っ込んだりして止めているが、ここにはそんなものはないしな……。」

ジャルキィ「まぁ、そのうち止まるだろう。心配はいらん。」

メルク「おかしいのですよ、主人公さん！心配はいらないという言葉が、恐ろしいほど不安を煽るのです！」

主人公「気が合うな、俺もだ！この人の言葉に乗せられちゃいけないと、俺の中の本能が警告しているのを感じる！」

主人公「ジャルキィさんが、これ以上おかしな行動に出る前に飛び降りよう！怪我をするだろうけど、このまま乗ってるよりはましだ！」

メルク「全面的に同意するのですよ！」

ジャルキィ「おい、ちょっと見ろ！」

主人公「なんですか！今俺たちは忙しい……、」

ジャルキィ「じゃーん、手放し運転。」

主人公「(あっ、終わった)」

「ぎゃああああああ！」

(場面切り替え・紹介所)

ジャルキィ「へっくち！」

ジャルキィ「むぅ、風邪をひいてしまったか？生まれてこの方、風邪なんて引いたことはなかったが……。」

ジャルキィ「まぁ、ひいたならひいたで構わん。看病という名目で色々わがままを聞いてもらおう。」

主人公「うう、湖に突っ込んだのに余裕ですね……。」

ジャルキィ「ああ、宴会の余興で極寒の海に飛び込んだこともあったからな。あれに比べれば大したことはない。」

ジャルキィ「ふふふ、今でもバルトロメイの悔しそうな表情を思い出せる。女装程度で私に勝てるわけがないだろう。」

主人公「……どうして自慢げに語るのかが不明ですけど、平気そうなら何よりです。」

主人公「おーい、メルクは大丈夫か？」

メルク「主人公さんが、咄嗟に蓋をしめてくれたので何とか……。」

ジャルキィ「むぅ……。２人とも、どうも表情が浮かないな。もしかして楽しくなかったか？」

主人公「ええっと……。正直に言うと、楽しいというより怖かったです。」

メルク「『ウルトラハイパーバルカン号』に乗せてもらえると聞いたときは楽しみだったのですが、まさかあんな爆速の乗り物だとは……。」

ジャルキィ「そうか……。故郷の子供たちには大ウケだったから、こちらでも楽しんでもらえると思ったんだが……、」

ジャルキィ「……ごめん。」

主人公「雪の国の子供はタフですね！？」

主人公「ああ、そんなにしゅんとしないでください！ジャルキィさんも悪気があったわけじゃないですし……、」

メルク「今ならジャルキィさんの心遣いもわかるのですよ！」

ジャルキィ「……ありがとう。次は２人も楽しめることをしよう。」

主人公「あっ、そこは諦めてないんですね。」

ジャルキィ「当たり前だ。同じ楽しみを共有した仲間は連帯感が生まれ、連携がとりやすくなる。」

ジャルキィ「これから同じ目的を持って旅をするんだ。そういう繋がりは大切だろう？」

主人公「まぁ、それは一理ありますけど……、」

ジャルキィ「それとも何か？お前も自分の子供以外はどうだっていいというタイプなのか……？」

主人公「なんですかそのタイプ！？そもそも、俺に子供なんいてませんよ！」

ジャルキィ「本当か……？自分の隊に所属していた時はやたらと可愛がるのに、異動になった途端、態度を変えたりしないか……？」

ジャルキィ「奴め……！隊長なんだからいつまでも父親に甘えてちゃ駄目だとぉ？急に子供扱いをやめるとは……鬼か！」

主人公「お、落ち着いてください……。何か嫌なことでもあったんですか？」

ジャルキィ「ふん、別に……。私は気にしていない。そんなに子供でもないからな。」

ジャルキィ「それで、楽しいことはやるのか？それともやらないのか？」

主人公「え、ええっと……、やりたいのは山々なんですが……、」

メルク「またバルカン号のような感じだと、私たちがもたないのですよ……。」

ジャルキィ「むぅ……。」

ジャルキィ「だが次はさっきよりはるかに安全だぞ？部下たちやる前は『絶対にやめといたほうがいい』と、口をそろえて言っていたが……、」

ジャルキィ「いざやってみたら、『思ったよりは危なくなかった』と言っていた。つまり、安全だということだ！」

主人公「(思ったよりは、ということはやっぱり多少は危ないんだな……)」

メルク「(その『多少』が、どの程度のものなのかが問題なのですよ……)」

ジャルキィ「なんだ、こんなに安全性を証明しているのにまだ悩んでいるのか。」

ジャルキィ「いつまでも迷っているようなら、私ひとりでやるぞ？いいのか？後で入れてって言っても知らんぞ？」

ジャルキィ「ほら、楽しいことするもの、この指とーまーれー！」

メルク「(ジャルキィさんが何かを訴えるような目でこっちを見てくるのですよ……)」

主人公「(あれは相手をしろって目だな……。うう、誘ってくる理由も知っているし乗ってあげたい！)」

メルク「(し、しかし、『多少』の危険度がわからない以上、迂闊に乗るわけには……！)」

ジャルキィ「……。」

メルク「(はっ！み、見ている！こっちを見ているのですよ！まるで捨てられた子犬のような目で！)」

主人公「(そ、そんな目で見ないでください！友情と身の安全を天秤にかけている卑怯な俺を見ないでください！)」

ジャルキィ「……あーそーぼ。」

メルク＆主人公「はうっ！」

主人公「あ……遊びましょう！心ゆくまで楽しいことをしましょう！」

メルク「バルカン号でもなんでも、お付き合いするのですよー！」

ジャルキィ「お、おお……！やっぱりお前たちも私と楽しみたかったんだな！」

主人公「(ああ、言ってしまった……)」

メルク「(あそこまで露骨な幼さを出されたら、抗いようがないのですよ……)」

ジャルキィ「ふふふ、しかし２人は焦らし上手だな。まるでうちの部下そっくりだったぞ。」

主人公「あはは、なるほど……。」

メルク「きっと、部下の人もあの最終兵器には敵わなかったのですね……。」

主人公「まだ見ぬ３番隊のみなさん。会ったことはないけど、あなたたちの日々の苦労を理解できた気がします……！」