Brave The Lion 2｜N-12 Story
12-1 天才の苛立ち
カティア
むっきィ―――！！！
なんなのよォ―――！！！
この研究所はァ―――！！！
ヨシュア
か、カティア様、
気持ちはわかりますけど
落ち着いてください！
カティア
これが落ち着いて
いられるかってのよォー！！！
イライラするわァー！！！
カティア
この天才の科学力で、
扉を開けて入ってもォー！
中が迷路みたいだったら、
意味ないじゃなァーィィィ！
ヨシュア
いえ、それなりに
意味はあると思います……
ミレイユ
ねえ、お兄ちゃん。
もしかすると、カティアさまって、
方向オンチなんじゃない……？
ヨシュア
まさか、天才だぞ！？
カティア
はいここォ！
スイッチはっけェん！
ポチっと押すとォ！
カティア
変化なァ―――し！
むっきィ―――！
どこの何がどうなったのよォー！！
カティア
あァ―――――！！！！
壁ぶち破って、
一直線に進んでやろうかしらァ！？
ヨシュア
方向オンチっていうよりも……
ミレイユ
うん……
こういうことには、
とっても短気なんだね……
カティア
ヨシュア！ ミレイユ！
ヨシュア＆ミレイユ
は、はい！
カティア
あなたたち、左手を壁につけて
ぐるっと進みなさい！
ヨシュア
……え？
カティア
そうすりゃ嫌でも
当たりの道がわかるのよ！
ミレイユ
それはそうですけど……
はぐれますけど？
ヨシュア
それに、肝心のカティア様が
置いてけぼりに……
カティア
心配いらないわよ！
私も同じことするから！
ヨシュア＆ミレイユ
ええっ！？
カティア
はい、よーいドン！
あなたたちは逆っかわね！
ヨシュア
…………
ミレイユ
…………
ヨシュア
１、カティア様に
言われた通りにする。
２、しばらくしてから
後を追う。
ミレイユ
２かなぁ。
ヨシュア
だよね。
12-2 疲弊する獅子
クロエ
ここが――あなたのいた
研究所なのね。
ダグラス
ああ。
クロエ
……不健康なところ。
長くいたら、
絶対に良くないわ。
ダグラス
はは、そうだよなぁ。
キャトラ
ここ滅茶苦茶広いんだけど、
道に迷ったりしないわよね？
ダグラス
おいおい、
オレの特技を忘れたか？
ダグラスの左目が輝く。
ダグラス
……あっちだな。
……たぶん。
クロエ
ミーチャ、あまり
自分を酷使しないで？
ダグラス
このくらいへでもねーって。
アイリス
……なんのソウルを
目指しているんですか？
ダグラス
そりゃあ、邪悪なソウルさ。
だけどよ……
ダグラス
……あ～、調子悪ぃ。
なんだかよ、感じ方が
いつもと違うんだよな……
キャトラ
どーゆーふーに？
ダグラス
うまく言えねーが……
邪悪なような、な～んか
懐かしいような……？
クロエ
ミーチャ……！
こんなところが
懐かしいだなんて……！
ダグラス
おっとと、姉ちゃん、
やめてくれって
そういう感傷は。
ダグラス
いまはとにかく、
先を急ごうぜ。
クロエ
無理はしないでね？
ダグラス
だいじょ～ぶだって。
姉ちゃんと一緒にいると、
底力が湧いてくるんだよ。
なんつってな。
クロエ
ふふ……頼もしいわね……
キャトラ
……とかなんとか言いながら、
やっぱり疲れてるのね。
ずいぶん急いでるわ。
アイリス
うん……
アイリス
……ううん、
なんでもないの。
私たちもいきましょう？
12-3 目に映るもの
ダニエル
セラ、仲間と合流しなくていいの？
セラ
そのうちするから大丈夫よ。
そんなことより……
セラ
ダニエル、どうしてあなたが
ここを目指すの？
ダニエル
ボクには、手がかりが
少ないんだ。
セラ
手がかり？
ダニエル
自分がない。
説明しないんじゃない、
ないから出来ないんだ。
ダニエル
だから、僅かな衝動でも、
大事にしたくなるんだ。
ダニエル
足が向いたところには、
なにかあるんじゃ
ないかって……
セラ
……それって曖昧なことだけど、
実は大事なことかもね……
ダニエル
……セラはどうして
ボクについてくるの？
セラ
方向が一緒なだけよ。
ダニエル
なのにボクを
守ってくれている。
セラ
自分を守るついでにね。
ダニエル
……どうしてそうまで
してくれるんだい？
セラ
あたしは、見たものに、
見た通りの感想を抱くから。
セラ
だから、弱そうなあなたは
守ってあげようと思うし。
セラ
一度間違ってるように
見えた物は、いつまでも
気になってしまうの。
ダニエル
よくわからないけど……
それは別に、悪くないんじゃない？
セラ
どうかしらね……
セラ
頭ではわかるんだけど、
どうしても『目』が良すぎて。
セラ
それに頼っていることが、
逆に何かを曇らせて
いたのよ……
ダニエル
う～ん……
誰かにだまされていたって話？
セラ
そうね。
ダニエル
あっ、悪い男に
だまされたとか？
セラ
そうかもね。
ダニエル
気を落とさないでよ！
セラは美人だしさ、
今度はだます側に
なっちゃえばいいんだよ！
セラ
ふふふ……ありがとう。
そうなっちゃおうかな。
ダニエル
セラにだまされるんなら、
本望だって男、
きっとたくさんいるよ！
セラ
ふふ……ありがと。
12-4 秘密なんかいらない
セラ
＜穿つ＞！
湧いて出た魔獣の群れを、
セラの＜ルーンギムレット＞が
華麗に翻り、蹴散らした！
ダニエル
セラは強いなぁ。
撃破する順序も効率的だしさ。
セラ
……あんまりね。
嬉しくないの。
そこを褒められてもね。
ダニエル
あっ……ごめん……
セラ
ううん、いいの。
……あなたに感謝してる、
と言ったらおかしいと思う？
ダニエル
えぇ！？ そりゃおかしいよ！？
ボクはなんにも
＜できちまわない＞んだぜ！？
セラ
ふふ、そうね。
でも、そんなあなたを見て、
あたしは立ち止まれた。
セラ
より効率的に、より多く――
セラ
兵隊になりきっていたようで、
自分の中で育っていた、
疑問に気づくことが出来た。
ダニエル
疑問？
セラ
……ええ。とても大きな。
存在意義を揺さぶるほどの。
ダニエル
それはなんだい？
セラ
ふふ、心配しないで。
これはあたしの人生の問題。
ちゃんと自分でカタをつけます。
セラ
――でも、だからといって、
後輩に、自分の通った
道しか教えられないのも、
ちょっとそんなに賢くないけどね。
ダニエル
……？
セラ
可愛い子がいるの。
とってもまっすぐな――
ダニエル
…………
セラ
どうしたの……？
ダニエル
……呼んでる……
セラ
え？
ダニエル
ヘンだ……！ 呼ばれて
ないようにみせかけて、
違う、呼ばれてるんだ、
巧妙に隠して……！
セラ
ダニエル！？
ダニエル
感じる……！
これは自分の＜意志＞
じゃない……！
ダニエル
足が……勝手に向かっていく……！
セラ
どうしたのよダニエル！？
セラ
やめてよ……！
変な秘密はいらないわ、
あなたはあなたでいてよ……！
