Brave The Lion 2|N-1 Story
1-1 不穏な木立
ダグラス
――すまねぇな。
手助けなんか頼んじまって。
アイリス
いいんですよ。
ダグラスさんには
いつもお世話になってますから。
キャトラ
失せ物探しとか。
ダグラス
はは、そのくらい、
世話でもなんでもねぇさ。
キャトラ
アタシってば義に厚いからさ。
ダグラス
けど――おまえらは
やっぱり、よした方がいいかもな。
危険な目にも遭うだろうしよ。
アイリス
そんなこと言わないで、
ダグラスさん。
キャトラ
そうそう、主人公の
言う通りだよ。だからこそ
仲間が必要なんだって!
ダグラス
主人公……
ありがとうよ。
アイリス
ですが、ダグラスさん……
この島からは……
おぞましい何かを感じますね……
ダグラス
トーゼンだろーな。
この島には<施設>があるからな。
ダグラス
……オレの体をオモチャに
してくれた、イカレた
研究施設さ。
ダグラス
――いつまでも、
あっちゃならねぇトコだ。
ケリをつけてやらねぇとな……!
クロエ
だからって、ミーチャ、
どうしてあなたが……?
ダグラス
そりゃこっちのセリフだぜ。
姉ちゃんこそさっさと帰りな。
クロエ
それは聞けないわ。
あなたがこれまで、
どこにいて、何をしていたのか。
――何に苦しんでいたのか。
クロエ
それを知る義務が、
私にはあるから。
ダグラス
そんな義務はねぇさ。
クロエ
あるわ。
ダグラス
……ホント、ガンコな姉ちゃんだ。
キャトラ
ハイハイ、
へーこーせんをたどりそうだから、
キャトラさんがまとめるわよ。
キャトラ
クロエはついてきてもいいけど、
危ない真似はしない。いい?
ダグラス
おいおい……
キャトラ
なにかあったらダグラスが守る。
<できちまう>でしょ?
アンタなら?
ダグラス
ヒトのセリフ取るなよな、
キャトラ……
ダグラス
……わかった。それでいい。
だが、くれぐれも、
無理すんじゃねえぞ、姉ちゃん。
クロエ
ええ。あなたに無用な
心配はさせたくないもの、
ミーチャ。
キャトラ
で、主人公は
アイリスを守る、と。
アイリス
ふふふ……
主人公、
頼りにしてるね?
ダグラス
さて、いつまでも
油を売ってもいられねぇ。
行くとしようぜ!
1-2 もう一人の獅子?
アイリス
この島には……
住民はいないみたいね……
キャトラ
こんなところで、
なんの研究をしてるのかしら?
ダグラス
オレがモルモットにされてたんだ。
なんとなく察しはつくだろ?
キャトラ
つかない。
アイリス
もう、キャトラ……
クロエ
貴族に買われた後、
いろんな魔法の実験台にされた……
そう言っていたわね?
ダグラス
……なんのために、
そんなことされたんだと思う?
ダグラス
造ろうとしていたのさ。
――最強の、合成魔獣を……!
ダグラス
だからよ、オレにも魔獣の
何かが<混ぜ>られてるかも
しれねぇ。
クロエ
そんな……!
ダグラス
悲しまねぇでくれ姉ちゃん。
オレ自身に限って言えば、
利点だってあったさ。
ダグラス
おかげで寿命が延びて、
姉ちゃんにもまた会えたし――
語りながらダグラスは
剣を振りかぶると――
ダグラス
ハァッ!
一直線、近くの茂みへ向かって
投擲した!
ダグラス
――力も得られた。
キャトラ
ちょ、いきなりなんなの!?
ダグラス
そこに隠れてんのは誰だ?
大人しく出てきな!
???
……ひ……!
くすんだ色の
草むらから姿を現したのは――
クロエ
み、ミーチャ……!?
???
隠れていたわけじゃないんだ、
ただ、久しぶりの
生きた人間だったから……
ダグラス
おめぇは……!?
ダニエル
ボクは、ダニエル。
ダニエル
――あれれ? キミは――???
ダグラス
……オレを知っているのか?
ダニエル
ううん、知らないけど……
……なんだかボクたち……
ダグラス
ああ――よく、似ているな――
1-3 へりくつ獅子
ダニエル
ひぃぃっ!?
ダニエルが
魔獣に追いかけられている!
ダグラス
――かぁっ!
気合一閃、ダグラスが
その魔獣を斬り飛ばした!
ダニエル
はぁ……はぁ……
ありがとう、ダグラス……
ダグラス
……剣くらい使えねぇのか?
ダニエル
からっきしなんだ。
ダグラス
魔法は?
ダニエル
もってのほかさ。
ダグラス
…………
キャトラ
アンタ……
そんなんでどうやってこの島で
生きてたのよ……
ダニエル
ただ生きるだけなら、
泥水をすすったり、
落ちてる木の実を食べたり……
キャトラ
アンタ……!
キャトラ
にんげんのそんげんはっ!?
ダニエル
ひぃっ!? 怒られたぁ!?
クロエ
でも、そうよ、ダニエル。
ダニエル
なにがですか?
クロエ
ミーチャそっくりのその姿……
あなたは一体何者なの?
ダニエル
自己って不確かじゃないですか。
キャトラ
……はぁ?
ダニエル
例えば、自分が生まれた瞬間を
記憶してる人なんて
いないでしょう?
ダニエル
結局、最初の手がかりは
他者から与えられた、
『あなたの名前はコレコレよ』
なんですよ。
ダニエル
そもそもがそれで
あるわけだからして、自分が
何者かなんて、正確には
誰にもわからないわけで。
キャトラ
……ナニ? アンタ、
ヘリクツ系のタイプってわけ?
ダニエル
『系』と『タイプ』って
かぶってません?
キャトラ
ぎにゃー! おだまり!
アイリス
それにしたって、ダニエルさん。
どうしてここにいて、
なにをしていたのかくらいは、
自分でわかるのではないですか?
ダニエル
そーゆー常識的なロジック
ボク嫌いだなー。
ダグラス
いい加減にしろよ。
ダニエル
ひぃっ!?
クロエ
ミーチャ?
キャトラ
あ、見た目が似てるから
余計に腹立つってやつだ。
ダグラス
そーだよ。
ダニエル
それは君の感情の話だし、
ボクにぶつけられても。
ダグラス
うるせぇな。
主人公、行こうぜ。
こんなヤツほっといて。
クロエ
だめよ、ミーチャ。
こんなところに
一人にするのは危険だわ。
ダグラス
……姉ちゃんがそう言うんなら……
ダニエル
姉ちゃん?
血はつながってなさそうだけど、
どういう関係?
ダグラス
うるせぇ、ぶちかますぞ!
クロエ
ミーチャ。
ダグラス
……あ~……調子狂うぜ……