御形 アリシアナ／決意の夏合宿編

　イロドリミドリのリードギター担当。

　弛まない努力と練習で磨かれた直感で、みんなの音をバシッとまとめあげる、イロドリミドリの頼れるバンドマスター！

　明るい性格に華やかなルックス、人が良すぎてちょっといじられ過ぎるところもあるけれど、みんなに愛され認められる、このバンドのフロントマン。

　鎌倉の良家の生まれで、たくさん嗜んだ習い事を差し置いて、「本気の」ギターにのめり込む。

　高校で芹菜に誘われバンドに参加してからは、オリジナル曲作りでも作曲として貢献している。

　友達思いで面倒見が良く、撫子の活動を巡って七々瀬と険悪になった時は、真っ先に矢面に立って撫子をかばうようなアツさもあって、メンバーの信頼は特に厚い。

　学園フェスで華々しくデビューを飾ったイロドリミドリに舞い込んできた次の舞台は、一年生の月鈴白奈が主催する、自主企画ライブ。

　「学内の色々な演者に光を当てたい」という思いからなるこの企画には、毎年の優秀生徒に贈られる「学園ＭＶＰ」を２年連続受賞した白奈の姉、那知の名前も。

　この賞を受賞できれば、受験での推薦にも有利では！？と早速会いに行くメンバーだったが、気難しい那知に白奈共々追い払われてしまう。

　聞けば白奈は、学校でのストレスで閉じこもりがちな姉に、昔のような演奏を取り戻してもらいたいのもあって、ライブの企画を思い立ったのだという。

　イロドリミドリはその思いに共感し、凪対那知の将棋決戦を経て、ついにライブ出演の約束を取り付ける。

　このステージを通じて白奈・那知は姉妹の間の溝を埋め、白奈はまた、この縁でイロドリミドリにも正式メンバーとして加入することに。

　白奈の作ったステージを通して、イロドリミドリの世界はまた少し、広がったのだった。

　最初、一年生に向かってなんか突っかかってきたのがきっかけだったじゃない？

　なんなのあの人！プンスカ！って感じだったけど…

　その辺のことは、あとで謝ってくれたし、今は別に気にしてない。

　事情だって、わかるよ！なんて簡単には言えないけどさ、尊重したいって思うのよね。

　辛い時期があったんだな…っていう、想像だけど。

　最近の七々瀬、随分話しやすくなったよね。

　相変わらずいつもローテンションだし、まああたしとは正反対の性格っぽいけど…

　前にちらっと弾いてたギターもすごい上手かったし、いつか一緒に弾いたり、なんなら教えて欲しいくらい！

　後輩たちのことも、あんまりべったりではないけど…

　遠そうな目をして、すごく親身に考えてるように見えたから。

　なんだかあたしも、先輩みたいに思っちゃう。

　や、実際、一コ上なんだけど。

　姉さんみたいじゃない？　今は同学年でもさ！

　気づいたら朝。

　なるには悪いことしたなあ…

　あたしあんまり夜更かしってできないのよね…

　それにお肌にも悪いじゃん？

　いや、おばありんは余計なんだけどね、１００％。

　でも合宿ってなると、やっぱり空気が違うわね！

　ロケーションもそうだし、夜っていうのがいいのかな。

　そういえばあの時もこんな風に、泊まりではなかったけど…昔やったのよねー。

　あの時はなずなの部屋で、Ｃｈａｎｇｅの作詞…。

　なずなはじんわり、じっくーーーり言葉を練ってくって感じなんだけど、なるは口が悪いからなー。

　なんとなく喧嘩腰になるわよね。

　二人とも眠い目をこすりながら…

　こんな風にいくらでも、妥協せずバチバチできるメンバーと音楽やれるって、もしかしたら幸せなのかな。

　もしかしたらじゃないか。

　間違いなく！　あたし幸せもの！！

　ふと思う。

　部活で後輩を迎えたことって、あたしたちにとってもすっごく新鮮で、素敵なことだな、って。

　撫子ちゃんに作詞の話をした時なんかも。

　一年生のみんな、上手くなりたい、もっとできるようになりたい…っていう気持ちがすごく前に出てて。

　あたしたちは一応、教えて下さい！って言われる立場だったけど、本当は教えられることばっかり。

　勉強とかもそうだけど、人に話すと頭の中が整理されるし、すごい自分のためになっちゃうのよね！

　後輩ができて初めて体験することがこんなにたくさんあるって、全然思ってなかった。

　バンド単位では、さすがにメンバーが増え続けることはないからね。

　部活っていう括りになって…なんというか…

　この子達のために何かできることないかな？って、素直に思ったな。

　そういう、唐突な気づき。