御形 アリシアナ／僕らの学園フェス編

　イロドリミドリのリードギター担当。

　努力と練習で磨かれた直感で、みんなの音をバシッとまとめる、イロドリミドリの頼れるバンドマスター！

　華やかなルックスと明るい性格が眩しい、誰もが認めるこのバンドのフロントマン。

　良家の生まれだが、たくさんの習い事を差し置いてギターにのめり込み、修行を積んだ腕前はかなりのもの。

　シンガーソングライター的な感覚に秀でていて、曲作りでは作曲として初稿を作る役回りでもある。

　フランクで壁がなく、誰とでもすぐに仲良くなる性格で、彼女を慕う友人はとても多い…が、あまりに人が良すぎて、ちょっといじられがちなところも？

　音楽はメジャーどころが好きで、若干ミーハーめ。

　イロドリミドリのフロントとして、数々のライブをくぐり抜けてきたあーりん。

　１年生を加え、ちょっとわちゃわちゃとすることもある軽音の中でも、七々瀬と並んで一番のお姉さん、という立ち位置が定着している。

　もともと誰にでも壁のない性格のあーりんだが、なずなはもちろん、七々瀬や華、撫子といった同じギターを弾くメンバーとは、特に仲がいいようだ。

　ちなみに軽音メンバーで、七々瀬を呼び捨てで呼ぶのは、いまのところあーりんのみ。

　体育館ジャックの復活を巡る顛末では、その七々瀬の心痛を深く察し、心から寄り添おうとするところを見せていた。

　春からの付き合いではあるが、もともと同じギタリストでもあり、今は同級生でもある彼女に対し、特別なシンパシーがあったのかもしれない。

　３年生四人でのセッションを経て復帰を決めた七々瀬の帰還を、あーりんは人一倍喜んでいることだろう。

　あーりんの朝は早い。

　鎌倉にある自宅から、少し早めの電車で代々木の舞ヶ原高校へ到着。

　教室に入りクラスメートとのお喋りを楽しんでいると、そこに少し遅めにやってきた芹菜の声が。

芹菜「おっはよーー！！　あーりん聞いて聞いて！！」

あーりん「おはよう芹菜！　どうかしたの？」

芹菜「昨日ね、めっっっっちゃ面白いこと思いついたんだ。今日って放課後、うち来れない？　暇？？」

あーりん「放課後、はね…。ちょっと買い物に出かけるつもりだったけど、それ以外は何もないよ。すぐ終わると思うから、その後でよければ！」

芹菜「やったー！　今日さ、お家じゃなくてあけさかに来て欲しいんだよね！　できればちょっとお腹空いてるくらいが嬉しいんだけど、大丈夫！？」

あーりん「お腹…はわかんないけど、とりあえずオッケー。ふふ、何か新しいメニューでもできたの？」

芹菜「むっふふー！　来てからのお楽しみ！　だよ！」

　放課後。この日は全校で部活がお休みとなる１日だ。

　校舎を出て、外で用事を済ませたあーりんはその後、芹菜の待つカレー喫茶あけさかへと寄り道。

　面白いこと考えたから来て！という芹菜が用意していたものは、その名も…

　「あけさか特製・舞ヶ原学校祭開催記念スペシャルコラボカレー（仮）」だそうだ。

あーりん「名前、長くない？　覚えられる？」

芹菜「えーと、あけさか特製・まいまい学園フェス開催記念…え、違った？　だ、大丈夫だよ～、まだ（仮）がついてるから！」

あーりん「本当は、もうちょっと短い方がいいんだろうけど…じゃ、それはそのうちね。なずなが来てから食べるって感じ？」

芹菜「うん！　もうすぐ着くって！」

　程なく、なずなも合流する。

　こうして、イロドリミドリ３年生チームが集結。

　コラボメニュー試食会は始まったのであった。

あーりん「大粒の舞茸が二つ乗って、まいまいカレー、ね。なんかいい感じじゃない？　レギュラーメニューに欲しいくらい！」

芹菜「舞茸かぁ。レギュラーにするには、仕入れも考えないとだからなー…」

あーりん「なんか芹菜、ちゃんとカレー屋さんしてるわね…初めて来たときは、お手伝いの女の子、って感じだった気がするけど」

芹菜「あはは！　だってそれ、１年生の時でしょ？」

　食後のお茶をすすりながら笑う、二人。

　傍らでは、もう一人がネーミングに頭を捻っている。

なずな「ん～、まいまいカレー…シンプル過ぎるかな？マイまいまいカレー、Ｍｙまいまい…美味い…」

芹菜「なずなちゃんどう？　メニューの名前！」

なずな「うーん…もう少しで…インスピレーション…」

あーりん「勝負所よね。作詞家・天王洲なずなの…！」

　同じクラスになって、かれこれ２年半。その歳月は、そのままのスピードで、三人を今の姿にしていった。

　これはそんな三人が過ごした、他愛もない１日の話。