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リタ・カールステット

最終更新日時 :
1人が閲覧中
作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


Illustrator:色塩


名前リタ・カールステット
年齢15歳
職業錬金術師・発明家

とある街で錬金術師という名の発明家として暮らしている少女。

ある日、お伽話上の存在だと思われた魔女と出会った事がきっかけで彼女の運命が動き出す──。

スキル

RANK獲得スキルシード個数
1ゲージブースト×5
5×1
10×5
15×1

include:共通スキル(NEW)


  • ゲージブースト【NEW】 [BOOST]
  • ゲージ上昇率のみのスキル。
  • PARADISE LOSTまでのゲージブーストと同じ。
  • 初期値からゲージ6本が可能。ゲージ7本に到達するためにはGRADE301以上にする必要がある。
  • NEW初回プレイ時に入手できるスキルシードは、PARADISE LOSTまでに入手したBOOST系スキルの合計所持数と合計GRADEに応じて変化する(推定最大99個(GRADE100))。
  • スキルシードは400個以上入手できるが、GRADE400で上昇率増加が打ち止めとなる。
  • CHUNITHM SUNにて、スキル名称が「ゲージブースト」から変更された。
効果
ゲージ上昇UP (???.??%)
GRADE上昇率
1160.00%
2160.10%
100169.90%
▲PARADISE LOST引継ぎ上限
101170.00%
201180.00%
▼ゲージ7本可能(190%)
301190.00%
400~199.90%
推定データ
n
(1~400)
159.90%
+(n x 0.10%)
シード+1+0.10%
シード+5+0.50%
プレイ環境と最大GRADEの関係
開始時期最大GRADE上昇率
NEW+169176.80% (6本)
NEW337193.60% (7本)
~PARADISE×436199.90% (7本)
2022/9/15時点
NEWでの仕様

NEW PLUS以降、各GRADEの上昇率が10%増加した。これにより、GRADE1からゲージ6本到達が可能になった。

GRADE上昇率
1150.00%
2150.10%
▼ゲージ6本可能(160%)
101160.00%
推定データ
n149.90%
+(n x 0.10%)
筐体内で入手できる所有キャラ
  • 登場時に入手期間が指定されていないマップで入手できるキャラ。
CHUNITHMマップで入手できるキャラクター
Verマップエリア
(マス数)
累計*2
(短縮)
キャラクター
NEWep.Ⅰ
side.A
2
(35マス)
40マス
(-10マス)
メリム
3
(55マス)
95マス
(-20マス)
ep.Ⅰ
sideB
5
(125マス)
315マス
(-60マス)
リタ
・カールステット
NEW+ep.Ⅳ3
(245マス)
525マス
(-10マス)
黒須 紘※1

※1:初期状態ではエリア1以外が全てロックされている。

期間限定で入手できる所有キャラ
  • カードメイカーやEVENTマップといった登場時に期間終了日が告知されているキャラ。また、過去に筐体で入手できたが現在は筐体で入手ができなくなったキャラを含む。

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ランクテーブル

12345
スキルスキル
678910
スキル
1112131415
スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 それはかつてあった文明「すごい……昔はこんなに楽しいものがあったなんて!決めた!いっぱい研究して、みんなを幸せにする!」

 何かを渇望する者がいる。

 それはすなわち、彼らが“持たざる者”だとも言えるだろう。

 富、名声、愛。あるいはそれ以上に高尚な何か。

 彼らはそれを“夢”と呼び、胸に抱き追い続ける。

 ひたすらに、がむしゃらに。

 時に、狂乱の熱量を孕んで。

 だからこそ人間は、時として希望にも絶望にもなりえるのである――。


 山の麓に構える、栄えすぎず、寂れすぎず、この国ではありふれた規模の何の変哲もない街。

 私はそこで生まれ育った。

 遊びや勉強は、特別のめり込むほど興味がなくて、最低限そこそこに。

 私にはもっともっと夢中になれるものがあったから。


 それは、“この手で何かを生み出すこと”。

 積み木でお家を建てる程度から始まったその感覚は、科学を知り、理論を知り、やがて街中の人が驚くような道具を作り出せるまでになっていく。

 いつしか私は、錬金術師――街の人たちからは発明家と呼ばれるようになった。


 商人である父が各地で仕入れてくる素材を組み合わせ、新たな発明を繰り返す。錬金術師としての生業も板についてきて、何の不自由もない暮らしを送る毎日。

 だけど、私は行き詰まっていた。

 発明といっても、どれも生活用品を改良したり進化させたりするものばかりで、頭打ちになる未来は早くも見え始めている。

 私は、もっともっとできるはず。

 その自信だけはあったけど、胸踊るような閃きが降りてこないまま、毎日は過ぎていく。


 父が仕入れてくるのは素材だけじゃない。見知らぬ世界中の本を集めては、書斎と呼ぶには広すぎる部屋にぎゅうぎゅうに詰め込んである。

 ある日、私はその書斎で一冊の書物を手に取った。

 太古の人間の暮らしを研究する、ある考古学者の本。

 衣食住といった生活様式を紹介するその本の中で、私は特に興味深い記述を見つけ、目が釘付けになる。

 それは『演奏』という概念。

 読むに、道具同士を組み合わせ、音を重ねて慣らし、それを楽しむ娯楽という内容だった。


 ――音を重ねて? それを楽しむ?


 そんな娯楽、この世界で聞いたことも見たこともない。

 文章を読んだだけでは想像もつかないその記述に、不思議と私は心を奪われた。

 この日から、私の新しい研究が始まる。

 その研究の先に、幸せな何かが生まれるのだと信じて。


 これは、とある魔女と私が生み出してしまった『音の力』を取り巻く物語――。

EPISODE2 魔女は可愛い女の子「私、本物の魔女に会っちゃった! ちっとも怖くない可愛い魔女。私、友達になりたい!」

 リタにとって研究とは、何も室内に籠もる事だけではない。

 あちこちを探索しながら、日常の中に学びを見つけていく。

 大きな果実の皮、ピンと張った洗濯紐、洞窟内に反響する声。あらゆる物からヒントを得るリタは、その気付きを持ち帰り、実験を繰り返す。

 錬金術師としての仕事を半ばほっぽりだしてまで取り組んだこの研究は、数年の歳月を経て実りを結び始め、やがて『楽器』という道具を生み出す事に成功する。

 だが、研究は終わりではない。『楽器』は、あくまで『演奏』のための道具でしかないからだ。

 音には高低差があり、それを複雑に鳴らす事。

 拍子を刻み、音と一体化する事。

 その速度を調整して、音の意味合いを操る事。

 あの日見つけた書物に僅かに残された記述を頼りに、リタは自身の解釈も交えて試行錯誤する。


 「えーっと、こんな感じ……かな?」


 リタの自宅に併設された工房の中で、お手製の楽器の音を響かせるリタ。

 初めは『ドンシャンドンシャン』という単純で原始的な音の集まりは、いつしか『曲』と呼べるまでに作品として完成されていく。

 その頃になると、不思議な音の正体に興味を持った街の人たちが、工房の周りに集まるようになっていた。


 「おーい、リタちゃん。ここんところずーっとやってるそれ、一体なんなんだい?」

 「あ、もしかして興味ありますー? よかったら聴いていってください!」


 最近完成したばかりの自信作である新しい『楽器』を抱えて、リタは集まった人たちの前に踊り出た。

 紐を編んで作った弦を張った木製の箱に、音を増幅させるための穴が空いたシンプルな楽器。

 リタがそれを弾いたり、叩いたりし始めると、たちまち楽しげな音が響き渡る。

 書物に記されたものと同じではないかもしれない。リタの解釈が正しかったのか間違っていたのかも分からない。

 だがそれは、まごう事なく『演奏』と呼ぶにふさわしいものだった。


 「な、なんだいこりゃ……体が……勝手に動きだしちまう!」

 「ええ、不思議ね! とっても楽しい気持ちになってきたわ!」


 誰もが笑顔になり、思い思い自由に踊り出し、中にはメロディを口ずさむ者まで現れ始めた。

 演奏しながらその光景を見るリタは確信した。

 やはりこれは、人を幸せにするものだった。

 決して誰かを不幸にする事などない、素敵な発明だったのだと――。


 よく晴れた、とある日。

 リタは街から外れた森の中の、そのさらに深くへと足を運んでいた。

 森の奥には危険な動物もいるし、人の常識では説明のつかない魑魅魍魎が潜むとされ、街の者達が近づく事は基本的にない。

 リタも幼少の頃から立ち入る事を禁じられていたが、錬金術師として素材を父に頼るだけでは限界があり、時折こうしてこっそりと訪れては、研究に使えそうなものをあれこれ採集していた。


 この日、思ったより採集が捗らなかったリタは、「これ以上はやめておこう」と自分の中で線引きしたラインを踏み越えた。

 森の奥には今まで見た事がなかった植物などが生えていて、夢中になったリタは気付かぬうちに奥、さらに奥へと進んでいく。

 いつしか森の中というには不自然なほど開けた草原に抜け、そこで我に返った。


 「うわぁ……こんな場所があったんだ……あ、風が気持ち良い……」


 背の低い草が生い茂る、だだっ広い草原。

 その風景を全身で味わっていると、視界の向こうに何かが見えた。


 「うん? あそこに誰かが……寝てる?」


 こんなところに人がいるはずない。

 不審に思いながら、リタはそっと忍び足で近づいていく。

 やがてその姿形がハッキリ見える距離までやってくると、みるみると胸が踊っていくのを感じていた。

 この国の様式ではない装束、小柄な体を覆うほどの大きな帽子、なにより危険な森の中という環境に不釣り合いな幼い容姿。


 (……ま、魔女だ!)


 お伽話の世界の住人である魔女。

 だがリタは、草の上に寝そべる彼女がその魔女だと、不思議と確信できた。

 好奇心に忠実に生きてきたリタは、その瞬間、警戒すべき全ての可能性を忘却の彼方へ捨て去ってしまう。


 「あなた魔女でしょう!? わー! 本物の魔女だ!」


 突然声をかけられ驚き跳ね起きた魔女らしき少女は、興味津々でにじり寄るリタに対して、逆に警戒心を顕わにしながら後ずさる。

 そして、大した会話も交わさぬうちに、森の中へと逃げだしてしまった。


 「待ってよ魔女さーん!」


 怪しげな魔法を使い、人間に仇なす忌むべき存在。それが魔女。

 そう聞かされていたはずのリタだが、彼女は恐怖など微塵も感じていなかった。

 装束や帽子といった特徴はお伽話通りだが、あの魔女にはひとつだけ違うところがある。

 それは、不気味に笑う老婆などではなく、小さな可愛らしい女の子だったから。


 「きっと友達になれる」


 そう呟きながら、リタは魔女のあとを追うのだった。

EPISODE3 ひとりぼっちは、寂しいよ「スープを作ったら、やっと心を開いてくれた。友達になれたけど、なんだか餌付けしたみたい?」

 少女を追いかけてリタがたどり着いた先にあったのは、森の奥深くにあるはずもない、それなりに立派な屋敷だった。

 少女は逃れるように屋敷に飛び込んでしまうが、ドアをコンコンとノックして声をかけてみる。


 「魔女さーん」


 そう声をかけるも、少女は「自分は魔女ではない」と答え、帰って欲しいと拒絶されてしまう。

 だがリタは諦めない。

 いつか心を開いてくれる日が来ると信じて、それから文字通り毎日屋敷へと足を運びはじめた。

 毎日足しげく通い、ドア越しに一方的に話しかける日々。

 少女からの反応はなかったが、屋敷の中からは確かに誰かの気配がする。

 それだけで、あの日草原で出会った魔女の姿は白昼夢などではないと思えるのだった。


 ある日、リタはいつものように少女の屋敷の前までやってくると、扉を開けたまま倒れている少女の姿を見つけた。

 慌てて駆け寄り、少女の身体を抱き抱える。


 「……うん。大丈夫。息はある。熱もない」


 その時、抱えた少女の腹から、ぐうぅぅぅ~という盛大な音が。

 合点がいったとばかりに微笑み頷いたリタは、驚くほど軽い少女を担ぎ上げると、屋敷の中のベッドへと運ぶ。

 少女は空腹で倒れただけのようだ。それならば何かを食べさせなくては。

 そう考えたリタは、キッチンを探そうと初めて足を踏み入れた少女の屋敷内を見回す。

 そして気付く。この屋敷の異様さに。

 小さなキッチンはあったが、調理器具や調味料などは最低限しかなく、使い込んでいるとも言えないものだった。

 その他の生活感を感じられるような品はほとんど見つからず、あとは見慣れぬ機械のようなものや薬品などが無造作に散らばっている。

 とてもではないが、少女が暮らすような環境ではない。


 「ここで……ひとりぼっちでいたの……?」


 リタは思わずこぼす。

 価値観は人それぞれ。それは分かっているが、リタも研究を生業とする者の端くれだ。

 この部屋はどこか薄ら寂しく、“楽しい”という感情が欠片も伝わらなかった。


 そのうち少女が目を覚ますと、リタは眠っている間にこしらえたスープを手渡す。

 訝しげな目をする少女を宥めると、ゆっくりとそれに口をつけた。


 「食べる物、全然見当たらないんだもん。来る途中にたくさん山菜を摘んできておいて正解だったよ! 胃がびっくりしちゃうかもしれないから、ゆっくり飲んでね」


 リタの言葉に、少女は答えない。

 だが、スープを飲む手は止まらず、あっという間に平らげた。

 自分を助けてくれた人間に少しは心を許したのか、少女は初めてリタとまともに会話を交わすようになっていく。

 ここに一人で住んでいる事。

 そして『音の力』の研究をしている事。

 少女の話を聞いたリタは、驚き立ち上がる。


 「音の力! これって素敵な偶然ね!」


 切り口は違えど、音に関する研究をしているという共通点があったとは。

 喜び勇んでバッグからお手製の楽器を取り出すと、リタは一番得意とする曲を演奏した。

 弦を擦り、弾き、音を奏でる。

 演奏しながらちらりと少女の方へ目をやると、先ほどまでの青白い顔が嘘だったかのように、輝く瞳がリタへと向けられていた。


 (やっぱり……! 『楽器』は、『演奏』は……みんなを幸せにしてくれる!)


 錬金術師のリタは、こうして魔女のメリムと“友達”になった。

 それは、世界が生まれ変わるためのピースが揃った瞬間でもあった。

EPISODE4 それは、私だけの秘密「魔女が人を食べる? そんなのただの迷信だよ。私は知ってる。魔女はとっても可愛くて優しいこと」

 音の力を研究するという共通項を持つ二人。

 どちらかが提案したわけでもなく、二人はごくごく自然に共同で研究を進めるようになった。

 リタは毎日メリムの屋敷に通っては、二人以外には理解もできない言葉を交わし合い、実験を繰り返す。

 笑ったり、落ち込んだり、時にケンカをして。そしてまた笑って。

 互いに知識と技術を共有し合いながら切磋琢磨する事で、驚くように研究は捗っていく。

 今のリタが気付くよしもないが、この時の彼女は間違いなく“人生最良の瞬間”であった――。


 この日も楽しく研究を終え、日が暮れる前にリタは屋敷を後にした。


 「B……B……C……そっかぁ、こういう決まりを作れば、私だけじゃなくて街のみんなも演奏ができるようになるかも! やっぱりメリムの発想はすごいなぁ~!」


 鼻歌で作曲しながら家路に着く上機嫌なリタ。だが、そんな彼女を待っていたのは眉間に皺を寄せた家族の姿だった。


 「リタ、ちょっと来なさい」

 「うん? どうしたの、お母さん」

 「あなた……最近毎日森へ行ってるでしょう」

 「えっ!? え~と……なんのことかな~?」

 「とぼけなくてもいいの。練金には色々必要なのは分かってるし、今さらだしね。ただ、すぐに戻れるところまでにして。森の奥へは行っちゃだめよ」

 「……どうして?」

 「あそこには昔から化物だか魔女だかがいて、人を食べてしまうと言われてるの。とにかく危ないから、絶対に行かないように」

 「は~い」


 生返事をして、リタは自室に入る。


 ――森には魔女がいる。それは本当。だって私はもう知ってるもん。

 でも、メリムが人を食べるなんて!

 あ~、おっかしい!


 同年代とは比べものにならないほどの知識を有しているとはいえ、リタも年頃の少女だ。

 自分だけが知っている大切な秘密。それは彼女の心をくすぐって、ソワソワと喜ばせる。

 “森の魔女は恐れるようなものではない”という事。

 それを知っているのも、自分だけだと気付かずに。

EPISODE5 そんな事言っちゃ、やだよ「自分はどうなってもいいなんて……ひどいよ。それじゃあ、私の気持ちはどうなるの……?」

 二人共同で研究をするといっても、目指すべき目標まで同じわけではない。

 リタはメリムの知識と研究結果を参考に、新しい楽器や演奏理論の開発。

 メリムはリタの開発した楽器を借り受け、己の研究に組み込む。

 その過程で互いに足りないものがあれば助け合うという、相互扶助のような形を取っていた。

 二人にとってそのやり方は性に合っていたようで、みるみると成果を残していく。


 中でもメリムの研究は、いよいよひとつの到達点を迎えようとしていた。

 その気配を感じていたリタは、気にはなっていたがあえてこれまで聞いてこなかった質問を投げかけた。


 ――この研究がひと段落したら、何をするつもりなのか、と。


 メリムも感じる部分があったようで、リタに向き合うと、自分の全てを曝け出すように語り始めた。

 自分が長寿種と呼ばれる、人とは違った種族である事。 

 彼らは長く迫害を受け続けていた事。

 その苦しみから解放するには、ここではない別の世界に渡る必要がある事。


 「そのために、時空を超えるほどの大きな音の力の研究を始めた……これが、私が生きる理由の全て」


 問いかけにメリムが真摯に答えてくれた事を嬉しく思いつつ、リタにはひとつ疑問が残る。

 時空を超えて別の世界に行けたとして、そこはメリムが生命活動を送れるような場所なのか。

 当然それは今はまだ誰にも分からない。リタはもちろん、メリムにも。

 だから、あくまでの可能性の話として、リタは再度メリムに尋ねた。

 もしも最悪の事態になったら、貴方はどうするのか、と。

 メリムは答える。


 ――同胞のためなら、自分の命などどうなってもいい。


 リタは顔が熱くなるのを感じていた。

 どうしてそんなひどい言葉を私に言えるのか。

 私はそんな未来のために一緒に研究してきたんじゃない。

 メリムを思うからこその怒りが、非難の言葉となって口から飛び出す。

 メリムもまた、自分の主張を理解して欲しいからこそ、リタに対して強い言葉を使ってしまう。

 言い争いはやがて、いつもの口ゲンカの粋を越えて口論になっていた。

 そんな二人のやりとりを、最悪な結果で終わらせてしまったのは――メリムの方だった。


 「リタには分からないわ! そんな……甘い考えで音の力を研究していたあなたには!」


 本心ではない。だが、リタを失望させるには十分過ぎる言葉。

 何も言わず、リタは屋敷を飛び出していった。


 (甘いだなんて……私のこと、ずっとそんな風に思ってたんだ……一緒に研究しながら、ずっとずっと。友達だと思ってたのは……私だけ?)


 溢れる涙を拭いながら、森の中を駆け抜けていく。

 次第に息は上がるが、足を止める気になれない。

 走って、走って、走って。

 頬はぐずぐずになり、目を真っ赤にしたリタ。

 街に帰ってきた彼女を、今度は以前とは比べものにならないほどの険しい表情をした家族が待ち構えていた。


 「はぁっ……はぁっ……みんな、どうしたの?」

 「リタ……魔女のところへ行っていたのね」


 ドキリと身を震わせる。

 森の奥へ行っていた事が露呈していたどころか、魔女のところへと、リタの母はハッキリと言った。


 「な、なんで……」

 「やはり操られているようだな……」

 「お父さん!? 操られてるって何!?」

 「お前はもう心配しなくていい。しばらく工房に入っていなさい」

 「ち、ちょっと待って! ねえ、どうして? どうして私を閉じ込めるの!?」


 毎日欠かさず足しげく森へと向かっていたリタを、誰よりも心配していた人がいた。

 大人以上に魔女の存在を信じ、お伽話をお伽話として笑う事もできない純粋な、幼いリタの妹――メグ。

 ある日、姉を思うあまり森へ向かうリタの後を尾けた彼女は見てしまう。

 森の奥で魔女と密会する姉の姿を。

 信じたくない。きっと悪い夢だ。

 そう思い込もうとしたが、胸に秘めるには彼女は幼すぎた。

 真実を告げられた両親。両親から街を束ねる顔役に、顔役から街中の人達へ。

 「魔女が子供を狙っている」という情報が広がるのは一瞬の事だった。

 “被害が出る前にこちらから買って出る”

 そう決めた住民及び衛兵達は、着々と準備を進めていくのだった。


 一方、操られていると思い込まれているリタは、時折食事を差し入れされる時以外は扉も開ける事のできない軟禁生活を強いられる事になる。


 「メリムの事が知られているなんて……でも、私が大人しくしていればそのうちみんな忘れるはず……」


 そう自分に言い聞かせながらも何か胸騒ぎがして、リタは天窓から月を見上げた。

 まだ若く、純粋な彼女は知らない。

 大義名分を得た人間が発揮する、過剰なまでの醜い暴力性を。

EPISODE6 間違い続ける私たち「何が起きているのか、よく分からない……でも、私がやるべき事は何か。それだけは分かるから」

 軟禁生活が始まって3日目の朝。

 リタは工房の中にいながら、外がやけに静かな事に気が付いた。

 工房は通りに面しているはずだが、雑踏の音や声がまったく聞こえない。まるで街全体が静まり返っているかのように。

 経験した事のない異常事態にリタは不安になるが、今はただじっと待つくらいしかできない。


 それから数時間が経っただろうか。

 不気味なほどの静けさを破ったのは、激しく取り乱す男達の叫びだった。


 「化物だ! 化物がこっちに向かってくるぞ! みんな逃げろぉぉーー!!」


 報せを受け、家に潜んでいたと思われる女子供たちが騒ぎ出し、先ほどまでの静寂が嘘だったかのように街は大混乱に陥る。

 慌ててリタは工房の扉に駆け寄り、激しく拳を打ち付ける。


 「開けて! 誰か、開けてください!」


 ほどなくしてそれに気付いた男が、外からかけられたかんぬきを開けると、リタに向かって叫ぶように言う。


 「リタちゃんも早く逃げろ! 魔女狩りに行った森の奥で、でっけえ炎の化物が出たんだ! あいつは怒ってる! 俺たちを殺すつもりだ!」

 「魔女狩り!? それはどういうことですか!?」

 「リタちゃんも狙われてたんだろ!? あの魔女は街の子供をさらおうとしてたんだよ!」

 「そんなことするわけない!」

 「えーい、そんなの今はどうでもいい! 追いつかれる前に早く逃げろ!」


 それだけ言うと、男は慌てて走り去っていった。

 リタはその場に立ち尽くしながら考える。


 (巨大な炎の化物? そんなの聞いたことない……)


 これまでメリムとの会話の中で、炎の化物など話題にも上らなかった。それに、メリムに魔法の心得があるのは知っているが、彼女の魔法は主に研究のために使われるような補助的なものがほとんどで、それほどまでに巨大な物を顕現させる力は持っていないはずだ。

 だがそれでも、不思議とリタは確信していた。


 ――メリムだ。


 経緯は分からないが、炎の化物とはきっとメリムの事だろう。

 それはつまり、魔女狩りには遭ったが、まだメリムが生きているという証でもある。


 メリムと仲違いした事がきっかけのように、ほんの数日でリタの日常の全てが狂った。

 ここまでの大混乱だ。街が平穏を取り戻したとしても時間はかかり、そしてそれを元の形に戻す事は叶わないだろう。

 それに――メリム。

 生きてこそいれど、彼女の身に大きな何かが起こったのは間違いない。


 ――私、どこで間違えちゃったのかな。

 ケンカした時? メリムに声をかけた時?

 それとも、もっともっと昔の……私たち人間のせい?


 自問自答するリタだったが、突然かぶりを振ったと思うと、自らの頬を両手で張った。


 「今は考えてる場合じゃないでしょ、リタ・カールステット! メリムを助けに行かなくちゃ!!」


 そう叫び、工房の中の楽器をひとつ手に取ると、リタは走り出した。

 逃げ惑う街の人々とは逆の方向へと。

EPISODE7 遠い世界から、遠い世界へ「大切なもののためならどうなってもいいって気持ち。今なら少し分かるような気がするよ、メリム」

 街を抜け、街道を数分走った頃、リタはメリムの姿を確認した。

 まだここから相当の距離があるにも関わらず、視認できてしまうほどの巨体。

 身を燃やし続ける炎は、周囲の景色を滲ませている。

 その前には、まるで巨体の心臓であるかのように、メリムの身体が中空に浮いていた。


 メリムと一緒に散々常識外れな事をやってきたリタも、眼前の光景には思わず息を呑んだ。

 これは化物なんかじゃない。神の領域だ。

 そう悟ると同時に、リタは自分の言葉を思い出した。


 『別の世界に行けるようになったとして、そこがどんな場所かなんて分からないよね? もしもすっごく危ない場所だとしたら? それこそ、人が生きられないようなところだったら……』


 ――“あれ”は、きっとここじゃない世界から来たんだ。

 すごいよ、メリム。

 実験、成功させたんだ……。


 結果はどうあれ、メリムは夢の第一歩を叶えた。

 危機的状況にあるにも関わらず、リタは感慨に頬を綻ばせる。


 やがて、街道の真ん中に立つリタの眼前に、メリムと炎の巨体が現れた。

 巨体の炎は轟々と燃え盛り、顔の皮膚をジリジリと灼く。

 その勢いに圧倒されながらも、リタはあくまで自然に口を開いた。


 「メリム……」

 「……どいて、リタ。死にたいの?」

 「死なないよ。それに、メリムを取り返す」

 「……ッ!? どの口が……!!」

 

 巨体の身体が一瞬動いたかと思うと、それ以上の認識をする前にリタの身体は後方へと吹き飛んだ。

 胃に違和感を覚えるほど宙を舞い、石が転がる街道の地面へとゴロゴロと叩きつけられる。


 「カハッ……!?」


 肺の中の空気が強制的に押し出され、息ができない。

 だが、リタは数瞬の間だけ痛みに耐えると、己の身体に鞭打って体を起こした。


 ――私がどうこうできる相手じゃない……。

 でも、私は倒れたりしないよ。

 倒れてしまうのは簡単だけど……それじゃ諦めることになっちゃうから……。

 私は……メリムを諦めないから……っ!!


 仲間のために命を捨てても構わないと言ったメリムのように。

 メリムのために命を賭けようと。

 リタはそう覚悟を決めた――その瞬間だった。


 突然目の前で閃光が炸裂したかと思うと、リタは重力の感覚を失くしてしまう。

 恐る恐る目を開けると、そこはどこまでも一面真っ白な風景が広がる、見知らぬ世界だった。

 とまどうリタの耳に、どこからか声が飛び込んでくる。


 『奴の気配を辿っていたはずが……なぜか君に引き寄せられていた……君は……?』

 「わ、私はリタ……リタ・カールステット、です……」

 『ほう、リタというのか。ふむ……なるほど。その楽器……』

 「こ、これですか?」


 姿の見えない相手の声にきょろきょろとしながらも、リタは手に持った物を胸の前に掲げて見せた。

 それは、リタが作った楽器。あの日、メリムの前で初めて演奏を聞かせたときに使った物だった。


 『良い出来だ。心地よい力を感じる。私はその楽器と、作り出したお前の力に引き寄せられたのだろう』

 「引き寄せ……? あ、あの! 私、今大変なんです! 友達を……取り返さなくちゃ!」

 『ああ、状況は把握した。どうやらお前と私の利害は一致しているようだ。力を貸してやりたいのだが、どうやらこちらの世界に顕現するには、私は不安定な存在のようだ』

 「私に何かできる事があるんですか……?」

 『私が顕現するための依代となってほしい。その暁には、あの炎の巨体……オジーと、お前の友人を止める力を与えてやろう』

 「メリムを止める力……分かりました。私の身体、貴方の好きに使ってください」

 『よかろう』


 声の主がそう言ったかと思うと、気付けばリタは光の世界から元の街道へと戻されていた。

 いつの間にか目の前に小さな光の塊が浮いている。

 その光が、先ほどと同じ声を発した。


 『名乗るのを忘れていたな。私の名はトリスメギストス。天界の1柱が祝祭の神、あまねく音場の守護者である』

 「神……」

 『優しき音色を持つ少女、リタよ。依代となる覚悟はよいな?』

 「……はい。私は……メリムを助けます!!」


 瞬間、リタは力の濁流に飲み込まれる。

 その力は、与えられたものではなく、まるで初めから自分の中にあったかのような。

 優しく、だが確実に強大な力。

 “リタ”という意識が、半透明に溶け出していく最中。

 彼女は頭の中で、何度も同じ言葉を呟いていた――。

EPISODE8 魔女の友達「私は神様と旅に出る。国を、世界も飛び越えて。あなたを助け出すまで、絶対に諦めないからね!」

 あの後、私がメリムに触れるよりも先に、オジーとかいう炎の巨体は叫び声をあげた。

 耳にするのも不快な、誰かを憎む怒りの声。

 その声に驚いている間に、巨体はメリムを連れて……消えちゃった。

 一瞬だけ見えた、空に現れた切り傷みたいな大きな穴。

 きっとあれが、メリムが作ろうとした時空の裂け目なんだと思う。


 ねえ、メリム。

 世界を渡る方法……見つけたね。

 でもね、これが本当にメリムが叶えたかった夢の形?

 あの日……きついことも言われちゃったけどさ。

 本当はそうじゃないって、私分かってるから。


 だから、待ってて。

 どこまでも追いかけて、目を覚まさせてあげるから。

 だって私は……メリムの友達だもん――。

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脚注
  • *1 マップ短縮60マスを含む
  • *2 エリア1から順に進む場合
コメント (リタ・カールステット)
  • 総コメント数4
  • 最終投稿日時 2021年11月12日 01:53
    • チュウニズムな名無し
    4
    2021年11月12日 01:53 ID:njws284p

    タックル強そう

    • チュウニズムな名無し
    3
    2021年11月11日 01:44 ID:d55bshzq

    頼むから幸せになってほしい🙏

    ハッピーエンドが見たいんじゃ

    • チュウニズムな名無し
    2
    2021年11月09日 09:48 ID:k1o7kuf5

    >>1

    アニマリアレーベルのミミのエピソード6でG.O.Dが送ったと思わしき手紙が紛れていたのはその可能性が…?

    • チュウニズムな名無し
    1
    2021年11月09日 09:08 ID:h1ahknh1

    メリムちゃんが言及していた『別の世界』が煉獄及びリレイやシビュラの様な別レーベルの世界線を指しているなら、『全てのレーベルは隣り合わせの世界線で存在する』可能性が無きにしもあらず…?

    (例えるならmtgの舞台である多元宇宙に近い感じ)

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