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御影 昴

最終更新日時 :
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作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー


通常アドラス

Illustrator:絵西


名前御影 昴(みかげ すばる)
年齢16歳
職業高校1年生 半人半妖

イベントinclude:開催日(オリジナルNEW+)

  • 専用スキル「暴走と孤絶」を装備することで「御影 昴/アドラス/不倶戴天の敵」へと名前とグラフィックが変化する。

親友と共に妖魔退治に明け暮れる少年。

御影 昴【 通常 / 今日からよろしくね、先輩♪

彼の中に眠る何者かが刻々と目を覚まそうとしていた…

スキル

RANKスキル
1二人の誓い
5
10暴走と孤絶
15

include:共通スキル


  • 二人の誓い [MATCHING]
  • 歪んだ絆のノルマと効果を下げて汎用にしたスキル。
  • 近い効果を持ったスキルに夢と夢~あの日のメロディ~がある。こちらはノルマが重く、最大まで育てれば一応7本が可能になると推定されるがそれでも心許ない。とはいえ、向こうは現在入手不可能なうえにこちらは汎用スキルで誰にでも付けられるので使い分けは十分可能。
  • ソロでも効果はあるが、コンボエッジ・ダブルシャープの下位互換に過ぎないので、基本的にはマッチングで使用することを推奨する。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
  • PARADISE ep.Iマップ6(PARADISE時点で累計830マス)クリア
  • PARADISE ep.IIIマップ3(PARADISE LOST時点で累計295マス)
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+3
あり+5
PARADISE以前
(~2021/8/4)
GRADE効果
初期値800コンボまたは
800チェインを達成した場合
ゲーム終了時にボーナス +42000
+1〃 +47000
+2〃 +52000
+3〃 +57000?
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
+4〃 +62000?
+5〃 +67000?
推定理論値:117000(6本+15000/24k)[+3]
推定理論値:127000(7本+1000/26k)[+5]

所有キャラ【 御手洗 千里 / 向来 隼 / 御影 昴 (全員1,5) 】


  • 暴走と孤絶 [ABSOLUTE] ※専用スキル
  • 鮮血と追駆がよりハイリスクハイリターンになったもの。
GRADE効果
共通ゲージが上昇しない
JUSTICE以下50回で強制終了
初期値200コンボごとにボーナス +16000
+1〃 +18000
ゲージ10本必要条件:2400ノーツ
GRADE・ゲージ本数ごとの必要ノーツ数(発動回数)
GRA
DE
4本5本6本7本8本9本10本
初期値800
(4)
1000
(5)
1400
(7)
1600
(8)
2000
(10)
2400
(12)
2800
(14)
+1800
(4)
1000
(5)
1200
(6)
1400
(7)
1800
(9)
2000
(10)
2400
(12)

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ランクテーブル

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Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 親友「僕にとって隼は初めてできた友達――いや、親友かな♪」

 新宿にあるビルの一室。

 ここへ帰ってくる時はいつも心が弾むんだ。

 どんなにボロボロでも、僕たち2人にとってここはどんなお城よりも価値があり、大切な場所なんだ。


 「ふ~んふんふん~♪」


 大好きな鼻歌を唄いながら、部屋のドアを開ける。


 「…………」


 ――いたいた♪

 今日もベッドで静かに寝息を立てている。


 「あっ、隼、まだ寝てる~。もう現場行くぞ~!」


 向来隼――僕の大切な相棒。

 小さい時から死者の声が聞こえる体質だったから、苦労してきたんだよね。


 「ほら、起きて。早く行かないと夜が明けちゃう!」

 「昴、もう少し寝かせてくれよ……」


 そういうわけにはいかないんだよね、僕だって隼の寝顔をいつまでも見ていたいけどさ。


 「ダメだよ、隼。これからおでかけなんだから、早く支度してもらわないとね」

 「お前に必要なのは、俺の死者の声を聞く力? それともコイツの力か?」


 そう言って隼は寝床の近くに置いた剣を手に取る。

 ――百鬼。

 妖魔の血を啜る刀で、隼にしか使えない。

 前に一度、僕にも使えないかなって、隠れて試してみたけど鞘から抜くことすらできなかったな。

 あとでバレて、ケガしたらどうするんだって、めちゃくちゃ怒られたっけ……。

 あの時の隼は怖かったな~。

 あれからもう百鬼は触らないことにしてる。


 「も~、寝てるの邪魔したからっていじけてるの? 力とかじゃなくて、僕には隼の全部が必要なんだよ♪」

 「また調子のいいことを言ってるな」


 別に嘘でもお世辞でもないんだけど。

 本当に思ったことを言ってるのになんで隼は気付いてくれないのかな。


 「ほら、いいから支度しなって。ちゃんとお礼だってするんだからさ」

 「わかったよ……」

 「それじゃあ、今日はどこを回ろうかな~♪」


 携帯でマップを見ながら、まだ行っていない場所にしようか、昨日と同じ場所だとデートとしては物足りないかな。


 「よし、ここに行ってみよう!」

 「決まったのなら、早く出るぞ。現場で情報を集めてたら、本当に日が昇るからな」


 僕はどうってことないんだけど、隼は授業中にすぐ寝ちゃうらしいからな~。

 ちょっともったいないけど、今日くらいは早めに引き上げていいかも。


 「あの忌々しい神“アドラス”はまだ眠ってるのか」

 「うん。でも、そろそろ起きそうになってる。早く妖魔を食べさせないと……」


 僕の中に眠っているのは、太古の神“アドラス”。

 コイツに妖魔の力を食べさせないといけない大切な“理由”がある。


 「……わかった、急ごう」

 「うん。よろしくね、相棒♪」


 日付はとっくに変わっちゃってるけど、新宿の街は相変わらず明るいままだ。

 いつもと変わらない風景、この街で隼と妖魔を狩る。

 それが僕たちにとってかけがえのない日常なんだ。

EPISODE2 孤独「1人でいることをなんとも思わなかったのは一緒にいたい人がいなかっただけなんだ」

 僕はずっと1人だった――。

 ふとした感情の隆起で僕の意識は眠り、入れ換わるように“神”が目覚める。

 そして、神が眠る時、僕は目覚めるんだ。

 僕は、この瞬間が大嫌いだった。

 いつだってそうだ、見知らぬ場所に放り出され、そして、見知らぬ人間が倒れている。

 そう――いつだって目覚める時は、僕の手は赤く染まっていた。


 「はあああああッ!」


 隼の斬撃が妖魔の四肢を斬り裂き、力を失った妖魔が地に崩れ落ちた。


 「さすが相棒! いつもながら見事な剣さばきだね」

 「いいから早く喰わないと消えるぞ」

 「わかってるよ」


 倒れた妖魔に手をかざすと、その身体は四散し、黒いモヤになって僕の身体の中に入り込む。

 これでしばらくアドラスは眠ったままのはずだ。


 「よし、これで終わりだね」


 僕たちが妖魔を狩る理由は僕自身にあった。

 アドラスは自分を封印した陰陽師の存在をこの世から消すため、力を蓄えようとしているんだ。

 僕はその手伝いをさせられている。

 もしも、コイツの意向を無視しようとすると――。

 ふと、隼の顔を見ると心配そうに僕を見つめていた。


 「どうしたの、そんなに心配そうな顔して」

 「大丈夫だよ。僕が暴走したら、隼が僕を殺してくれるんでしょ?」

 「さあ、それはどうかな」

 「あ~、またそうやってイジワル言うんだから。2人で約束したことなんだから、ちゃんと守ってくれなくちゃダメだよ」

 「はいはい……」


 本当に守ってくれなきゃ困るんだよ。

 じゃなきゃ、僕は誰かを傷つけてしまう……。

 あの時のように、また――


 ―数年前―


 「またか、どうにかならないのか、アレは」

 「あんな化け物、私にはどうすることもできません。あなたもきちんと考えてください」


 僕の耳に両親が言い争っている声が聞こえてくる。

 その内容は幼い僕にでもわかった。

 父さんの言うアレと、母さんの言う化け物が、僕だということを。


 ――つまらない。


 誰もいない部屋で1人、ただそこにいるだけ。

 なにもすることもない、なにもさせてもらえない。

 僕の中にある力が暴れちゃったら、誰かを傷つけるから僕はなにもしちゃいけないんだ。

 学校も、友達も、遊びも、なにも……。

 でも――それでも僕は外で遊んでみたかった。


 「ごめんなさい……」


 ――ある日の夕方。

 僕は2人の目を盗んで部屋を抜け出す。

 同じくらいの男の子や女の子がランドセルを背負ってお喋りしながら歩いている。

 その輪の中に入ってみたかった、でも――僕にそんな勇気はなかった。

 ふと、急に目の前が揺らいでいく。


 『ククク、いるじゃあねえか。ちょうどいい飯が!』


 また、この声だ……怖い……。

 僕は……寝ちゃ……ダメなの――


 「き、きみがやったの……?」


 気づくと目の前には大きな化け物と涙で顔がぐしゃぐしゃになった男の子がいた。

 いったい、なにが起きたのか……。

 ただ、1つわかったのは――

 僕の手は夕陽のように赤く染まっているということだけだった。


 「ぼ、ぼくは、うわあああぁぁ!!!」

EPISODE3 恩人「僕が人の温もりや、誰かといる楽しさを知ることができたのは、隼のおかげなんだ」

 ああ、僕はまたやっちゃったんだ。

 また誰かを傷つけちゃった……。

 どうしよう、僕が勝手に抜け出しちゃったから。

 僕の力のせいで、この子も……。


 「君が助けてくれたんだよね、ありがとう」


 男の子から掛けられたのは意外な言葉だった。

 どうして、僕にお礼を言うんだろう。


 「え? き、きみは……?」

 「俺は向来隼だよ、君の名前は?」


 向来隼と名前を言う男の子が僕の手をぎゅっと握り返してくる。

 それが隼との出会いであり、僕たちの始まりだった。

 あの時の僕は、手を握られたこともそうだったけどちゃんと自分の名前を言えるかどうか。

 そのことを気にしちゃってたんだよね。

 どうしよう、ちゃんと言えるかな、しばらく誰かと話してないからって。


 「御影昴……」


 へ、変じゃなかったかな。ちゃんと言えてたかな?


 「そっか、昴くんか! よし! ねえ、一緒にジュース飲もうよ!」


 そういって、隼くんが僕の腕を引っ張って、夕暮れで黄金に染まった道を2人で走り抜けていく。

 こんなふうに誰かと走ったことなんてなかった。

 もしかしたら、隼くんとなら友達になれるかもしれない。

 ――隼くんも僕のことを知ったら逃げちゃうかな。

 なんて、そんなことを考えながら……。


 それから、僕は隼くんとよく会うようになった。

 毎日のように部屋を隠れて抜け出して隼くんと遊んで気付けば家にも遊びに行くようになった。

 隼くんと遊びたいって気持ちはもちろんあったけど、あの家に居たくなかったって気持ちもあった。

 だから、遅くまで隼くんの家にいたこともある。

 隼くんの両親も、あまり家に帰りたがらない僕をよく可愛がってくれて――。


 「まるで本当の兄弟みたい」


 それを言ったのは隼くんの母さんだったな。

 あの言葉はすごく嬉しかったからよく覚えている。

 僕は隼に友達以上の繋がりを感じたからこそあの日、もう隠し事はしないと決めたんだ。


 「あ、あのね、隼くん。きみに言わなきゃいけないことがあるんだ」

 「ん? なあに?」


 隼くんが買ってくれたジュースを飲みながら、僕は自分のことを打ち明けた。

 全部話し終わったあと、怖がられるかなって思ったけど、隼くんの反応は違って――


 「ごめん、俺も昴くんに隠し事してた。実はね、君の力のことは聞いて知ってたんだよ」

 「えっ? ど、どういうこと?」

 「俺もナイショにしてたことがあるんだよ。俺は死んだ人の声が聞こえるんだ」


 その時、初めて知った。

 僕の暴走がアドラスという神様によるもので、妖魔ってやつを食べないと暴れだすってことも。


 「そんな……じゃあ、僕どうすれば……」

 「悩むことなんてないよ、俺が協力するからさ!」

 「……いいの? だって、危ないよ?」

 「君は俺の命の恩人だろ? それよりなにより俺たち友達じゃないか!」


 ――この時、僕は初めて友達と呼べる人に出会えたんだ。


 一仕事終えた僕らはいつものように2人でジュースを分け合う。

 隼にあげたフレーバーは、最初は微妙かな、なんて思ってたけど、なんでかな、隼が飲んでるとどれも美味しそうに見えちゃうんだよね。

 結局、気になってねだっちゃった。

 隼は渋々とジュースを僕に渡してくれた。


 「あっ! ちょっと飲みすぎちゃった。僕のやつあげるから、これで勘弁して♪」

 「はいはい……」


 それから僕と隼は共に妖魔を狩り続けてきた。

 隼は僕からアドラスを解放させる方法をずっと探してくれている。


 「なんだよ、人の顔を見てニヤニヤして」

 「ううん、なんでもないよ♪」


 今はもう隼とは友達じゃない。

 そんな安っぽい言葉で片付くような関係じゃないって僕はそう想ってる。

 そう、隼は――僕の大切な親友だ。

EPISODE4 変調「変わらないと信じてたことは、変わるはずがないと信じたかったことなんだ」

 ある日――。

 拠点に行くと、そこに隼の姿はなかった。

 また1人でどこかに出かけてるのか。

 だとしたら、僕に一言もなしに行っちゃうなんて、きっとなにか隠してるに違いないね。

 隼の行動範囲なんて手に取るようにわかるんだから。


 新宿――。

 僕たちが根城としている街。

 だからこそ、僕にとって隼の行き先を当てるなんてことはとっても簡単なんだからさ。


 「ふふ~ん、こんなところで会うなんて奇遇だね。なにをしているのかな?」


 1人で歩いていた隼に声をかけると、お前か、とちょっとだけうんざりした顔をされる。


 「ヒミツだよ」

 「なんだよ、それ~。ヒミツにされたらさ、余計に気になるじゃん!」

 「それよりも、死者から情報がもらえたんだ。今日はそこへ行ってみよう」


 僕を置いて足早にその場所を離れようとする隼を慌てて追いかける。


 「あっ、ちょっと。置いてかないでよ~!」


 隼が言っていた場所に近付いてくると、なにやら物騒な物音が響いてくる。


 「昴、この先で誰かが戦ってるみたいだ。俺がいいと言うまでアドラスの力は使うなよ」

 「うん、わかってる」


 そう言って隼が百鬼に手をかける。

 残念ながら今の僕に隼のような戦う力はない。

 どうしても戦うとなれば、眠っている神の力――アドラスの力を借りることになる。

 そんなことできれば僕だってやりたくないよ。

 でも、だからといって隼が戦うところを黙って見ていることなんてできない。


 「俺が様子を見てくるから、ここを動くなよ」


 隼が先行して状況を伺っているようだ。


 「うりゃあああ!」


 男の叫び声が聞こえてきた。

 声は若いみたいだけど、戦ってるのは1人なのかな。


 「困ってるみたいだね、俺も手を貸すよ!」


 そう言いながら隼が飛び出していく。


 「お前、誰だ!?」

 「敵じゃないとだけ言っておくよ。今は敵だってわかってるやつを倒すほうを優先したほうがいいんじゃないかな」

 「お、おう、そうだな!」

 「北斗、人が増えたからといって油断するなよ!」

 「わかってるよ、玄武様!」


 物陰から戦いの様子を伺うと、隼が先陣を切って、妖魔に百鬼を振るう。そこへ北斗と呼ばれた男が続くように妖魔を斬り裂く。

 1人? いや、あれは3人かな、子どもを2人連れた男が刀を手に戦っている。


 「なんだよ、アイツ。あれくらいの連携なら僕にだってできるのにさ」


 妖魔の反撃が隼の頬をかすめる。


 「隼!? あの妖魔、よくも隼を!!」


 瞬間、飛び出した僕はアドラスの力を引き出し、妖魔を殴り飛ばす。


 「な、なんだよ、今の!?」

 「そうやって1人で頑張ろうとするんだから。戦う時は2人でって決めたじゃないか」

 「昴!?」


 見ているだけなんてやっぱりダメだよ。

 僕の相棒を傷つける奴は、誰であろうと、この僕がボコボコにしてやるんだ。


 「ソイツはお前のお仲間さんか。だったら、協力してもらうぞ!」


 北斗が倒れている妖魔に斬りかかっていく。


 「無茶だけはするなよ、昴!」

 「はいはい、わかってるって!」


 数分後――。

 妖魔の巨体がゆっくりと地面に倒れる。


 「やっと終わったか。昴、大丈――」


 隼が声を掛けてくれるけど、今は答えるより一刻も早く妖魔を吸収しないと……。

 少しアドラスの力を引き出しすぎたかもしれない。

 眠気が酷くなってきてる。

 今喰わせれば、アドラスは出てこないはず。


 「おい、あれなにやってんだ?」

 「……いいから、黙って見てな」


 妖魔に手をかざすと黒いモヤが現れ、それが僕の身体の中へと吸い込まれていく。

 これで満足だろ、アドラス。


 「どうなってんだ?」

 「妖魔の力を吸い上げているんだよ」

 「うっ……」

 「昴!?」


 目の前がぐらついて倒れそうになったところを隼が優しく抱きしめてくれた。


 「アハハ、ちょっと力を使いすぎたみたい……。相棒、あとは任せたよ……」


 そう言って、目を閉じる。

 本当に眠たいし、力を使って疲れているから、ちょっとくらい甘えてもいいよね。

 あと、ついでにヒミツって僕に意地悪したお返し。


 「ソイツ、大丈夫なのか?」

 「ちょっと眠ってるだけだから平気だよ。寝かせてやりたいから、帰らせてもらうよ」

 「ああ、今日は助かった、貸し1つだな」

 「俺たちも目的があって戦ったんだから、別に貸しなんて作ったつもりはないよ」

 「俺が勝手にそう思ってるんだからいいんだ。なにか困ったことがあったら頼ってくれよ、俺たちは基本的に中野にいるからさ」


 なんて会話を聞いていると、隼が僕をおんぶしてその場を立ち去ろうとする。

 ああ、なんだか本当に眠たくなってきた……。


 「お前たちは――組み合わせ――。――呉越同舟――」

 「どういう――?」

 「――まさか――を救おうと――?」


 なにか隼と誰かが話しているような気がする……。

 呉越同舟……救う……?

 なんだか、気になることを言っているのに……。

 ダメだ、眠くて、意識が……。

EPISODE5 真実「知りたいことはわからないことだらけなのに、知りたくないことはなんですぐにわかるのかな」

 あれから数日が経った。

 最近は前に比べて不意に意識が落ちることが多い気がする。今日も隼がせっかく誘ってくれたデートを断って、拠点でうずくまる。


 気が付くとそこは真っ暗な空間の中――。

 どこを見ても広がっているのは暗闇。

 ここはいったいどこなのかな。


 「クックックッ! なんだ、目が覚めちまったのか」


 何もない空間の中、僕の目の前には自分と背丈が同じくらいの角の生えた白髪の少年が立っていた。その声は人間のものとは思えない悍ましい声をしていた。


 「……もしかしてお前がアドラスなのか!? どうして……」


 だとすれば、ここは意識の中ってことになる。

 でも、僕の意識の中にアドラスが現れることなんて今までなかったのに、どうしてコイツがここにいるのか。


 「ああ、貴様が考えているとおりだ。我が貴様の意識に入り込むことは簡単なことではない」

 「なっ!? 僕の考えてることをどうして……」

 「おおっと、時間切れになっちまったなあ。まあ、今くらいは貴様に身体を譲ってやるか!」

 「譲るって、これは僕の――」


 次の瞬間、目の前には見慣れた天井が広がっていた。

 起き上がり、周囲を確認する。


 「ここは僕たちの拠点、だよね。ただ寝てただけ、なのかな……」


 なにもない、ただの悪い夢だと思っていたけど、自分の身体の異変に気付く。

 手が泥だらけに――手だけじゃない、よく見たら服も泥だらけになっているじゃないか。


 「まさか、アドラスが……」


 そんなはずはない。

 確かにちょっと力は使ったかもしれないけど、今までだって別に大丈夫だった。

 

 「僕が、僕でいられる時間が短くなってる? まさか、力を与えすぎて……」


 だとしたら、あの余裕の態度を取ったアドラスの様子もうなずける。

 “今くらいは貴様に身体を譲ってやる”。

 もしかして、僕の身体はもうアドラスに……。


 「隼……」


 思わず口から出た名前。

 でも答えてくれる人はいない。

 いなくて好都合、なんてことは言いたくないけど、今回は本当にいなくてよかった。

 こんな姿を隼に見られたら、それこそ余計な心配をさせちゃうもんね。

 百鬼も置かれたままだから、なにか危ないことをしにいったわけじゃなさそうだ。


 「まずはこの服をどうにかしないと……」


 洗面所へ向かい手の泥を落とし、顔を洗う。

 少しだけスッキリしたら、前に子どもが気になることを言っていたのを思い出した。


 「確か、呉越同舟だったね」


 僕たちに向けられた言葉。

 これほど僕たちに相応しくない言葉はないよ。


 「アイツら、酷いこと言うよね~。僕と隼は相棒でめっっっちゃくちゃ仲良しだし、敵でもなんでもないんだから~!」


 そりゃ、怒ることだってあるし、言い合いとかケンカだってしたことあるさ。

 でも、すぐに仲直りするもんね。

 だから、隼を憎いとか、敵とか、今まで微塵も考えたことなんてないんだから。


 「隼とアドラスならともかく――」


 何気なく口にした言葉だったが、もしかしたら、あれはそういう意味だったんじゃ……。

 僕の中で恐ろしい仮説が立てられていく。

 玄武が、隼とアドラスのことを言っているとしたらアドラスが憎いと思い、敵だと認識している相手。

 ――そんなのは1人しかいない。


 「隼が……陰陽師……?」


 今思えば隼が持っている百鬼も、どうして隼にしか使えないんだろう。

 そして、死者の声が聞こえ、妖魔が見える。

 もしもそれが陰陽師の力だとしたら……。


 「まさかね……」


 そんなわけない、陰陽師なわけがないよ。

 そう言い聞かせるように呟く――だが、僕の身体はいつの間にか恐怖で震えていた。


 「だったら、試してみればいいんだ……」


 妖魔を斬り裂く刀――百鬼。

 ……これが妖魔を斬るというのなら。

 僕は百鬼に手を伸ばした。

EPISODE6 決別「もっと、ずっと……一緒にいたかったな」

 ――ずっと続くと思っていた。

 拠点に来て、寝ている隼を起こして出かける。

 夜の街を2人で歩きながら、たまにはちょっと危ないこともしたり……。

 肩を並べてジュースを一緒に飲みながら今日のジュースはアタリだね、なんて話をして……。

 僕にとってかけがえのない日常。

 だから、邪魔するやつは許さない。

 たとえそれが――。


 「あの時は使えなかったけど、今の僕なら使えるかもしれないよね」


 隼は僕に比べて昔から強かった。

 だからこそ、百鬼を手に入れた時も簡単に扱えたに違いないんだ。

 僕だってあの頃に比べたらアドラスの力を引き出せるくらいには強くなってるんだ。

 百鬼に手を伸ばし、それを取ろうとする。

 瞬間――手が、焼かれたような激しい痛みに襲われた。


 「うっ!? な、なに今の……?」


 手を見ると軽く火傷のような痕ができている。


 「ハハ、そっか……こんなもの見せられたら認めるしかないじゃん」


 百鬼はただ妖魔を斬るだけの刀じゃなかった。

 これは神すらも斬り裂く。

 もしも、そんなものを使える人がいるとしたら、神を封印するほどの力を持った人だけ。

 陰陽師――隼はその末裔だ。

 このことにアドラスが気づけば、自分の知らない間に隼を……。

 絶対にそんなことさせやしない。


 「アドラスが眠っている今しかチャンスが無い」


 ……遠くに行こう、隼が追い付けないほど遠くに。

 隼が帰ってくる前に行かなきゃ。

 だって、アイツ、もしこのこと言ったら、絶対にお前を助けるとか言っちゃうだろうしね。

 隼は一見クールだけど、優しいから……。

 だから、こういう時は僕がリードしてあげなくちゃいけないんだ。


 「書き置きくらいは残さないとね……」


 一言――別れの言葉を書こうとする。

 ……ただ、その一言を書くだけなのに少しずつ時間が過ぎていく。

 涙で濡れては何度も書き直す。

 できる限り、隼に心配は掛けたくなかったから、

こんな文字が滲んだメモを残していけない。


 「やっと、書けた……」


 痛い――声が出ないほど胸が締め付けられた。

 涙が溢れ、口から嗚咽が漏れる。

 ダメだ、せっかく書けたのに濡らしちゃったら、台無しだよね。

 そのメモをそっとテーブルの上に置くと、改めて僕たちの拠点だった場所を見る。

 ちょっと手狭に感じる場所だったけど、それはきっと隼が一緒にいてくれたからなんだね。

 今はがらんとして広く見えるよ。


 もう二度と、ここに戻ってくることはない。

 僕は無言で拠点から踏み出す。

 掛ける言葉はない、掛けたい言葉もない。

 その思いはメモに綴ったから……。

EPISODE7 憎悪「長い年月を重ねて積もった憎しみはまるで呪いのように僕の身体を蝕んでいく」

 ――目が覚める。

 目の前に広がるのは青い空。

 僕は慌てて、痛む身体をベンチから起こす。


 「そっか、またアドラスが……」


 昨日はホテルに泊まっていたはずなのに、気づいたらこんなところにいるのはそういうこと。

 拠点を出てから十日は経ったかな。

 あれから何度かアドラスと意識が入れ替わっている。

 百鬼が近くにあったからなのか、陰陽師の隼が近くにいたからなのかわからないけど、入れ替わる頻度が高くなっている。

 まるで今まで独立した人格として存在していた2人が1つになっていくような……。


 「ホント、朝から憂鬱だよ……」


 こんなふうに知らない場所で目覚めるのもいい加減に慣れてきちゃったよ、は――


 「危ない、危ない。また呼んじゃうところだった」


 あの日から“アイツ”の名前は口にしていない。

 呼んじゃったら、本当に来そうで怖かったから。


 「今日はどれくらい遠くに行けるかチャレンジだね。美味しいものがあるといいな~♪」


 無理にでもテンションを上げていかないと。

 お金はありったけ引き出してきたし、今日はちょっと贅沢にどこかいい場所で――

 ベンチから立ち上がった瞬間、景色が揺らぐ。


 「こんなとこで寝たからかな……」


 それに酷く喉が渇く。

 ちょうど自販機があるし、なにか飲もう。

 なにか買おうと見ていると、自販機が急に揺れて、手に痛みが走る。


 「アンタ、自販機殴るなよ! 金持ってねえのか」

 「……え?」


 痛む手を見るとその拳が自販機をへこませていた。


 「これ、僕がやったの……?」


 僕はなにかを壊したかったのか……

 そんなはずない、なにかを壊すなんてこと……

 壊したくない、壊さない――


 「お、おい、大丈夫か?」


 僕は人間が憎い? 陰陽師が憎い?

 ボクは――誰も憎んでなんて――


 「だめだ、遠くに、行かなきゃ……」


 何故? ……なぜ? 遠くに行くのはナゼ?

 アイツを殺したくないから?

 なぜ僕が彼を殺す? 憎くないのに?

 いや、憎いはずだ、憎んできたはずだ。

 そんなわけない、アイツは僕の大切な友達だった。

 だった――世界で1番の……


 なのに、なぜ憎い?


 だってアイツは――陰陽師だから。


 アイツは陰陽師――憎い――


 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

 憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い

憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い


 「違う! 僕は――!」


 ハッと我に返った時にはもう手遅れだった。

 目の前が闇で、心が憎しみで埋め尽くされていく。


 「ハハハ! この時をどれだけ待ったことか!」


 僕(アドラス)の声が外から聞こえる――

 なにが起こったのか、すぐにわかった。

 僕の身体はもう、アドラスのものになってしまったんだ。


 「さあ、念願の帰宅といこうか。貴様の帰りを待っている、あの小童の元へな!」


 ダメだ、やめろ!

 声を上げ、叫ぼうとしても、全てが闇に飲み込まれていく。

 僕の声はもう誰にも届かない。

 お願い……僕に近づかないで……。

EPISODE8 帰還「帰ってくるつもりなんてなかった。もう会わないって、そう決めたのに!」

 闇の中を必死にもがき続ける。

 手を伸ばしても掴めるモノはなく、声を上げてもどこにも響かない。


 「クックックッ……久しぶりだよなあ。ここに帰ってくるのは! そうだろう、昴よお」


 その言葉で理解した。

 アドラスは今、あの拠点に戻ってきたんだと。


 「ふ~んふんふん~♪」


 アドラスが楽しそうに鼻歌を歌う。

 僕がいつも奏でていた歌を。

 今の僕には願うことしかできない。

 お願いだから帰ってこないでくれ、と。


 「無駄な願いだ、小童が帰ってきたぞ」


 ――僕(アドラス)に近づかないでくれ!


 「ああ、いいことを思いついたぞ。散々、身体の中に閉じ込めてくれた褒美をやらなければな」


 闇に包まれていた世界が急に鮮明になっていく。目の前には、会いたくてたまらなかったアイツ――隼の姿が映った。


 ――隼!


 「クックックッ! いい眺めだろう? 貴様にはあれが死ぬところを特等席で見せてやらないとなあ!」


 心配そうに僕を見る隼が近づいてくる。

 やめてくれ、来ないでくれ!

 必死に訴えてもそれに隼が答えることはない。


 「本当に、昴なの――」


 次の瞬間、隼の呼びかけを遮るかのように、僕の拳が隼の顔面めがけて振り上げられる。


 「な――っ!?」


 隼は、アドラスの攻撃に尻餅をつきながらも避けてくれた。

 ほっと胸を撫で下ろしたのもつかの間、振るわれたアドラスの拳が壁に当たると、壁は砕かれヒビが床にまで伝う。

 ここまでの力は僕の時に使えなかった。

 本当にこの身体はもう、僕のものじゃなくなってしまったんだ……


 「クックックッ、運がいい小童だ」

 「まさか……アドラス!?」


 そう、これはもうアドラスなんだよ。

 だから――戦ってよ、隼!


 「逃げるのか? クッ……ハハハハッ! いいぞ、もっと我を楽しませろ!」


 アドラスの高らかな笑い声が拠点に響く。

 ここは僕たちにとって大切な場所だったのに、僕(アドラス)の手で壊されていく……。


 「クソッ!」


 この振り下ろされる拳を止めようにも、僕の身体を、僕はもう止めることができない。

 願うのはただ1つ。

 隼が、僕を止めてくれることだけ。


 「どうした、その腰の刀は飾りか? ならば、千年分いたぶってやろうぞ!」

 「お前、気付いてたのか……俺が陰陽師だと」

 「ああそうさ、お前のオトモダチが教えてくれたのさ!」

 「オトモダチ……? ……お前、昴はどうした!」

 「ククク、今更気付いたのか? 小童は何もかも気付くのが遅いなぁ?」

 「……ッ! 昴を返せ!!」


 その目には絶望の色はなく、ただ、困難に立ち向かう心を映したように真っ直ぐと僕を見つめている。

 そこまで僕のことを……

 隼の優しさが嬉しいと思う反面、その思いが隼の手を止めてしまっているんだ。

 もういいよ、僕は隼の傷つく姿なんて見たくない!

 なにかを考えているのか、隼が一瞬目を伏せた隙をつき、アドラスの振り下ろした拳が床をぶち抜く。

 隼は崩れていく足場に巻き込まれ、体勢を崩してしまう。


 「しまっ――!?」

 「フハハハッ! まずは一発ゥゥゥ!」


 咄嗟に隼がアドラスの拳を防いだものの、バキッという音が僕の耳にも聞こえてくる。

 ただ、殴った感覚はなく、戦っているのは僕の身体なのに、僕は何1つ感じられない。


 「クハハハ! いいな、最高じゃあないか! 小童をいたぶる快楽と、貴様の絶望! このまま永遠に味わっていたい気分だあ!」


 どうして――どうして、隼は戦わないんだよ。


 アドラスが隼を追いかけるように、ビルから飛び降りる。

 眼下には隼だけではなく、アイツを囲むように人が集まっていた。


 「まだまだいたぶり足りないんだよおおお!」

 「離れろ!!」


 隼が集まってきていた人たちを無理やり押し返して、自分から強引に離し始める。

 振り上げた脚が隼目掛けて振り下ろされるけど、寸前で避け、地面を砕く。


 「おいおい、避けるんじゃねえよ!」

 「な、な……!?」


 目の前で起きていることがまだ理解できていないのか周りにいた人たちは動けないようだ。


 「逃げろ、殺されるぞ!!」


 隼の叫び声に呼応するように人々が悲鳴を上げながら逃げていく。

 人の心配より、隼は自分の心配をしてよ!

 隼も早く逃げて!


 「ククク、貴様は本当にお人よしだなあ! だったら、アイツらから始末してやろうか?」


 隼が百鬼へ手を伸ばす。

 そう、それでいいんだよ。やっと、僕のことを――


 「昴……」


 しかし、隼は百鬼を抜こうとはしない。

 なんで……約束したじゃないか!

 迷わず、その百鬼で斬ってよ!


 「戦うこともできねえ腰抜けが!」


 隼の動きが止まった隙をアドラスは見逃さず、その拳が再び、隼の身体へ撃ち込まれた。


 「ガハ――ッ!?」


 さっきの音とは全く違っていた。

 まるで隼の全身を砕いたかのような音と共に、隼が建物の壁まで弾き飛ばされ、嘔吐する。


 「アハハ、ゲロまみれで汚えな! 小童ァ!」


 アドラスの笑い声が頭に響く。

 涙を流すこともできず、声は隼に届かない。

 でも、確かなのは、僕の拳が、僕の脚が、隼を傷つけているということ。


 「まだまだやりたりねえんだから。これくらいでくたばんじゃねえぞ!」


 ……許せない。


 「――昴」


 ……許せるはずがない。


 『誰が誰を許せないというんだ? 今の貴様になにができると――』


 ああ、僕は今までなにもできないやつだったよ。

 アンタの力を借りなきゃ、隼と一緒に戦うことすらできなかったんだ。

 隼といられるならアンタの力だろうがなんだろうが別に使ってもいいやって思ってたんだよ。

 だけど、違ったんだ!

 僕にはアンタの力なんて必要ない。

 この身体は僕のものなんだ。

 隼と戦って、傷ついて、泣いて、笑って!

 この身体も、記憶も! 全部、僕のものなんだ!

 だから――


 「お前なんかに渡してたまるかあ!!」

 「なにィ――!?」


 視界が、音が、感覚が鮮明になっていく。

 傷つき今にも倒れそうな隼の姿が目の前にあった。

 やっと取り返せたけど、長くは保たない。

 早く伝えなきゃ……。


 「隼……」

EPISODE9 活路「今、僕にできることをやるしかない。僕の大切な人を護るために!」

 最初に約束をしたのはいつだったかな。

 隼が初めてアドラスになってしまった僕と会った時だった気がする。


 「あれがアドラスだよ、隼。やっぱり、怖かった?」

 「ハハ、全然怖くなかったよ。だって、見た目がまんまお前だったしな」


 そう言いながら、笑って答えてくれた。


 「僕、怖いんだよ。いつか、僕自身がアドラスになっちゃうんじゃないかって。それで隼がケガしちゃったら……」

 「俺は全然、平気なんだけどな……じゃあさ、もし、お前が完璧なアドラスになっちまった時は、俺がぶっ飛ばして止めてやる」

 「本当に?」

 「ああ、約束だ!」


 隼はもう覚えてないかもしれないけど、あの日の約束は僕にとって――。


 「スバ――」


 僕は隼の手を取り、百鬼をその手に持たせる。

 百鬼に触れた右手が見る見るうちに酷い火傷に覆われていく。

 熱い、痛い――。

 でも、隼はもっと痛い思いをしたんだ。

 これくらいなんてことない。

 それに、辛い顔を見せちゃ、隼が決心してくれないから。


 「……約束、守ってね」


 隼が今にも泣き出しそうな顔になる。

 そんな顔しないでよ、僕が知ってる隼はいつだってそうだ。


 「かっこいい隼を、僕に見せてよ」

 「……うん」


 もう隼の瞳に迷いはなかった。


 『いい加減にしやがれえええ!』


 アドラスの咆哮。

 頭に直接響いてきた声に、僕は咄嗟に隼から離れるように後ろへ跳躍した。

 ソレが僕にできた最後の抵抗。

 すぐに手足の一部の感覚は薄れ、声を出すこともできない。

 だが、間に合った。

 隼に伝えたいことは伝えられたんだ。

 僕にできることは全部やれた。


 「この小僧、なんと余計な真似をおおお! ああ、クソォ! 我の右手がこんなあああ!」


 そんなことに気を取られてていいのかな。

 僕の相棒はもう、お前を斬るための刃を抜こうとしているのに。


 「小童、貴様――!?」


 隼が真っ直ぐ、僕(アドラス)に視線を向けている。

 その手にはしっかりと百鬼が握られていた。


 ――そう、そうだよ。

 それこそ僕が見たかった、かっこいい隼なんだ!

EPISODE10 相棒「何年、何百年経っても変わらないものもある。僕の相棒は、この世界でたった1人――隼だけだ!」

 相棒――

 僕は隼のことを相棒と呼び続けてきた。

 でも、今までは本当の相棒じゃなかったんだ。

 戦ってたのは僕じゃなくてアドラスの力。

 だからこそ、今、この戦いが、僕たちにとって、最初で最期の共闘なんだ!


 「小童があああああ!!!」


 アドラスは勢いをつけると雄たけびと共に全身全霊でその拳を隼に向けて振り抜こうとする。


 「左手は俺が斬ってやる」


 次の瞬間、まばたきをする間もなく、隼はアドラスの懐に入り込んでいた。


 「なに――ッ!?」


 アドラスの驚きと恐怖が伝わってくる。

 今までただ一方的になぶっていた相手が牙を剥き、自分の喉元に噛みつこうとしているんだ。

 それはアンタが今まで人々に味わわせていたもの。

 今度はアンタが味わう番だ。

 アドラスは咄嗟に左手を庇おうとするが――

 一閃。

 振り抜いた百鬼がアドラスの両目を斬り裂いた。


 「ぐあああああ!? 目が、目があああ! 許さん、許さんぞ! 貴様だけは絶対にィィィ!!」


 今までの視界はアドラスが見ていたもの。

 目を潰された今、僕の前には暗闇が広がっている。

 ただ、まだ戦いは終わっていない。


 「無駄だ! 気配を探れば、貴様の居所など手にとるようにわかるからなあ!!」


 アドラスが暴れる音が聞こえてくる。

 確実に隼を捉えているようだけど、その拳はまだ当たってはいない。

 隼は満身創痍。

 もう百鬼を振るう力はほとんどないはず。

 下手をすれば、あと一振りが限界。

 なら、隼は最高の一撃をアドラスへ叩き込もうって考えるよね。

 わかるよ、見えなくたって。

 だって、僕たちはずっと一緒に居た“相棒”なんだからさ!


 「死ねえええ!!」


 右手を大きく振りかぶる“感覚”。

 ああ、本当にアンタは愚かな神様だよ。

 忘れたのか、その手は百鬼に浄化されたことを!

 僕は右手に意識を集中させて、動きを止める。


 「なっ!?」


 わずかな時間、一秒にも満たない時間にすぎないけど、アドラスの拳を止めてやった。

 今の僕にできるのはこれがやっとだけど、この時間は隼にとって最高のチャンスになる。

 次の瞬間、胸に焼けるような激しい痛みが襲う。


 「――――ァ?」


 百鬼が、僕の身体を貫いていた。

 さすが隼、タイミングバッチリじゃないか。

 身体を引き裂くような痛みが全身を襲う。

 感覚が戻ってきているのは、アドラスの魂が燃え、僕の身体が戻ってきてるおかげだけど。

 さすがに……少し痛いかな……。

 ゆっくりと全身の痛みが消えていく。

 だけど、貫かれた胸の痛みは消えてくれそうにない。

 意識も遠くなっていく……。

 そっか、僕は死ぬんだな……。


 「終わったよ、全部……」


 遠のく意識の中で隼の声が聞こえてくる。


 「隼……」


 隼に覚えていてほしい。

 僕の顔を。

 泣いたり、苦しんでる顔じゃなくて、僕の最高の笑顔を。


 「昴、昴……っ!」


 頬を冷たいものが伝っていく。

 隼が泣き虫だなんて知らなかったな。

 泣き顔を見れないなんて残念。

 僕のことで泣いてるなら、なおさらだ。


 「ねえ、隼……。僕たち、ずっと親友(あいぼう)だよね……」

 「あぁ……あぁ、当たり前だろ! 俺たちは――」


 最初で最期の親友。

 僕との約束を守ってくれて、ありがとう――

EPISODE11 旅路「うん、行こう――相棒」

 妖魔――。

 人はそれを妖怪、あるいは悪魔と呼ぶこともある。

 誰にでも見えるものではない。

 霊感が強く力のある者には、この異形の怪物の姿が見えることがある。


 「や、やだ、こっちに来ないでー!」


 妖魔に追い詰められた少年が恐怖で悲鳴を上げる。

 振り下ろされた妖魔の脚が少年を引き裂こうとした瞬間――


 「ふ~んふんふん~♪」


 突然に、どこからか鼻歌が響いてきた。


 「消えろ――」


 赤い閃光が妖魔を斬り裂く。

 斬り刻まれた妖魔がその場に崩れ落ち、四散する。


 「あ、あの……」

 「ダメじゃないか、子どもがこんなところに居たら悪~い怪物に食べられちゃうぞ~」

 「ご、ごめんなさい……」

 「気にするな、妖魔を倒すのは俺の仕事だ」

 「ほら、早くお母さんたちのところに帰りな」

 「うん!」


 少年が路地から駆け出していく。


 「あっ、そうだ! 助けてくれてありがとう! おじちゃん、お兄ちゃん!」


 ――妖魔狩り。

 各地で妖魔を狩りながら旅する者。

 彼が携えた刀は妖魔の血を啜って赤く染まり、悪鬼羅刹を赤き閃光のごとく斬り裂く。

 その正体は年老いた男性とも、鼻歌と共に現れる若い男と少年の二人組とも言われた。


 「さあ、次の現場に行こうか――相棒」

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コメント (御影 昴)
  • 総コメント数13
  • 最終投稿日時 2022年10月30日 00:57
    • チュウニズムな名無し
    13
    2022年10月30日 00:57 ID:n9xnbqtq

    >>4

    私も初見でめっちゃオモタ

    • チュウニズムな名無し
    12
    2021年06月20日 07:16 ID:pk9ph51v

    >>8

    狂気未所持または未強化してない人向けのスキルとなりますね。

    コンボそれなりに必要となりますが…。

    • チュウニズムな名無し
    11
    2021年06月19日 17:16 ID:d04kjms4

    >>10

    老けたり若かったりしてて初見分からんかった(今もわからん)

    あの陰陽師関係してるのかな

    • チュウニズムな名無し
    10
    2021年06月19日 01:28 ID:do61le5y

    >>7

    なんか突然老けたな

    • チュウニズムな名無し
    9
    2021年05月27日 00:32 ID:bf8mpqhn

    >>4

    言い方はアレだけど、似てるよね

    • チュウニズムな名無し
    8
    2021年05月24日 03:27 ID:gjq0qhpa

    暴走と孤絶+1

    1~10本に必要な発動回数

    (1/2/3/4)5/6/7/9/10/12(1回200コンボ)

    クリスタルマップで道化師の狂気が+3まで入手・強化可能で5~10本に必要な発動回数は4/7/11/15/20/24(1回100コンボ)と完全に上位互換なので、少なくともそれが廃止されるまではスキルとしての需要無し。

    • チュウニズムな名無し
    7
    2021年05月23日 08:40 ID:ieoccz8z

    10話までは隼のストーリーと時系列全く同じでわかりやすかったけど11話でいきなり変わったな

    いつの話なんだろう

    • チュウニズムな名無し
    6
    2021年05月18日 16:52 ID:k4adv2jd

    2人の誓いって隼と昴のことだったんだ…。

    • チュウニズムな名無し
    5
    2021年05月16日 18:44 ID:flrmhn9h

    なんか雰囲気がラビリスタに似てる

    • チュウニズムな名無し
    4
    2021年05月16日 15:54 ID:ibjkh19w

    屋根ゴミかと思った

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