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CHUNITHM攻略wiki

向来 隼

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作成者: ゲストユーザー
最終更新者: ゲストユーザー

【キャラ一覧(無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE / NEW / SUN)】
スキル一覧(~PARADISE LOST)】【マップ一覧

※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。

  • このページに記載されているすべてのスキルの効果は、CHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです(限界突破の証系を除き、NEW以降で入手・使用できません)。
  • 専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター(いわゆるトランスフォーム対応キャラ)は、RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。

通常妖魔退治は終わらない

Illustrator:ふぁすな


名前向来 隼(こうらい はやと)
年齢17歳
職業高校2年生
  • 2021年1月21日追加
  • PARADISE ep.I マップ6クリアで入手。<終了済>
  • 入手方法:2022/10/13~ カードメイカーの「CHUNITHM PARADISE」ガチャで入手。
  • 対応楽曲は「B100d Hunter」。
  • 専用スキル「鮮血と追駆」を装備することで「向来 隼/妖魔退治は終わらない」へと名前とグラフィックが変化する。

日々妖魔退治を続ける高校生。

向来 隼【 通常 / 今日からよろしくね、先輩♪

全ては親友とのある約束のためであった。

スキル

RANKスキル
1二人の誓い
5
10鮮血と追駆
15
25限界突破の証
50真・限界突破の証
100絆・限界突破の証


  • 二人の誓い [MATCHING]
  • 歪んだ絆のノルマと効果を下げて汎用にしたスキル。
  • 近い効果を持ったスキルに夢と夢~あの日のメロディ~がある。こちらはノルマが重く、最大まで育てれば一応7本が可能になると推定されるがそれでも心許ない。とはいえ、向こうは現在入手不可能なうえにこちらは汎用スキルで誰にでも付けられるので使い分けは十分可能。
  • ソロでも効果はあるが、コンボエッジ・ダブルシャープの下位互換に過ぎないので、基本的にはマッチングで使用することを推奨する。
  • 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
  • PARADISE ep.Iマップ6(PARADISE時点で累計830マス)クリア
  • PARADISE ep.IIIマップ3(PARADISE LOST時点で累計295マス)
プレイ環境と最大GRADEの関係
プレイ環境最大
開始時期ガチャ
PARADISE×
(2021/8/5~)
無し+3
あり+5
PARADISE以前
(~2021/8/4)
GRADE効果
初期値800コンボまたは
800チェインを達成した場合
ゲーム終了時にボーナス +42000
+1〃 +47000
+2〃 +52000
+3〃 +57000?
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要
+4〃 +62000?
+5〃 +67000?
推定理論値:117000(6本+15000/24k)[+3]
推定理論値:127000(7本+1000/26k)[+5]

所有キャラ【 御手洗 千里 / 向来 隼 / 御影 昴 (全員1,5) 】


  • 鮮血と追駆 [ABSOLUTE] ※専用スキル
  • 即死スキルになったNext Standard、あるいは破邪の呪符・ピアノ。
  • ボーナス条件が同じスキルで比較すると次のようになる。
  • 初期値だとボーナスがNext Standard+1と変わらず、即死条件がある分こちらが不利。
  • 8本までなら、連鎖する欲動のほうが必要なノーツ数が少ない。
  • 強制終了条件が同じスキルで比較すると次のようになる。
  • 8本までなら、リバーシブルレクイエムのほうがJUSTICEを99回出したとしても必要なノーツ数が少ない。
  • 運次第になるが、ブラック・オア・ホワイトがある。運に左右される分、ボーナスの期待値は若干多い。
GRADE効果
共通ゲージが上昇しない
JUSTICE以下100回で強制終了
初期値100コンボごとにボーナス +7000
+1〃 +8000
ゲージ10本必要条件:2700ノーツ
GRADE・ゲージ本数ごとの必要発動回数
本数4本5本6本7本8本9本10本
初期値9121518222630
+18101316192327

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ランクテーブル

12345
スキルEP.1Ep.2Ep.3スキル
678910
Ep.4Ep.5Ep.6Ep.7スキル
1112131415
Ep.8Ep.9Ep.10Ep.11スキル
1617181920
 
2122232425
スキル
~50
スキル
~100
スキル

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STORY

EPISODE1 相棒「アイツと過ごす時間が、俺にとってかけがえのない日常だった」

 妖魔――。

 人はそれを妖怪、あるいは悪魔と呼ぶこともある。


 俺たちはこの新宿で奴らを狩り続けていた。

 唯一の親友のアイツと。

 そう、いつものようにアイツが鼻歌交じりで俺たちの拠点へ入って来る。


 「ふ~んふんふん~♪あっ、隼、まだ寝てる~。もう現場行くぞ~!」


 昴が俺の身体を揺すってくる。

 こっちはいい気持ちで寝ているというのに、コイツはなんで邪魔をしてくるのか。


 「ほら、起きて。早く行かないと夜が明けちゃう!」

 「昴、もう少し寝かせてくれよ……」


 こっちが眠たいというのに、そんなことは関係ないというような笑顔で昴が覗き込んでくる。


 「ダメだよ、隼。これからおでかけなんだから、早く支度してもらわないとね」

 「お前に必要なのは、俺の死者の声を聞く力? それともコイツの力か?」


 寝床の近くに置いた剣を手に取って見せる。

 ――百鬼。

 妖魔の血を啜る刃、俺の力のひとつ。

 これがなければ妖魔を狩ることはできない。


 「も~、寝てるの邪魔したからっていじけてるの? 力とかじゃなくて、僕には隼の全部が必要なんだよ♪」

 「また調子のいいことを言ってるな」

 「ほら、いいから支度しなって。ちゃんとお礼だってするんだからさ」

 「わかったよ……」

 「それじゃあ、今日はどこを回ろうかな~♪」


 携帯でマップを見ながら、

 昴が今日の行き先を決めようとしている。


 「よし、ここに行ってみよう!」

 「決まったのなら、早く出るぞ。現場で情報を集めてたら、本当に日が昇るからな」


 近場に置いてある適当な上着を羽織り、拠点を出る。


 「あの忌々しい神“アドラス”はまだ眠ってるのか」

 「うん。でも、そろそろ起きそうになってる。早く妖魔を食べさせないと……」


 また暴れられると昴が傷ついてしまうからな。


 「……わかった、急ごう」

 「うん。よろしくね、相棒♪」


 日付はとうに変わっていて、誰もが寝静まりかえってもおかしくない時間。

 だが、立ち並ぶビルの街頭が煌々と今も光る。

 いつもと変わらない風景、この街で妖魔を狩る、それが俺たちにとっての日常だった。

EPISODE2 序開「親友だと呼べるヤツがいるとしたら、ソイツは昴だけだろうな」

 「はあああああッ!」


 斬撃が妖魔の四肢を斬り裂き、力を失った妖魔が地に崩れ落ちる。


 「さすが相棒! いつもながら見事な剣さばきだね」

 「いいから早く喰わないと消えるぞ」

 「わかってるよ」


 昴が妖魔に手をかざすと黒いモヤが現れ、それが身体の中へと吸い込まれていく。


 「よし、これで終わりだね」


 昴――いや、アドラスは妖魔の力を吸い上げ、自身の力へと変える。

 それは自分を封印した陰陽師に復讐するために必要な力だと言っていた。

 本当はアドラスに力を与える危険な行為だが、餌をやらなければアドラスが暴れてしまう。


 「どうしたの、そんなに心配そうな顔して……大丈夫だよ。僕が暴走したら、隼が僕を殺してくれるんでしょ?」

 「さあ、それはどうかな」

 「あ~、またそうやってイジワル言うんだから。2人で約束したことなんだから、ちゃんと守ってくれなくちゃダメだよ」

 「はいはい……」


 コイツはどこまで本気なのかわからないな。


 「おっと――ヌルくなる前に、はいどうぞ。手伝ってくれたお礼だよ。これはなんと~、今日発売の新商品なのだ!」


 ウキウキしながら昴が俺に缶ジュースを渡してくる。


 「別にお礼なんていいのに」

 「いいんだよ、僕がしたいことなんだからね」


 そう言いながら昴がジュースを飲み始める。

 まあ、俺も戦いで喉が乾いていたからちょうどいい。

 俺も昴に続くようジュースを一口飲む、甘ったるい味が口の中に広がった。


 「……隼が飲んでるジュース美味しそうだね。僕に一口ちょうだいよ」

 「だったら、なんで同じものを買わなかったんだ」

 「買った時はそうでもなかったんだけど、隼が飲んでると美味しそうに見えるんだよ」


 美味しそうに見えないものを俺に買ってきたのか、と言い掛けてやめる。


 「わかったよ。ほら、一口だけな」

 「ありがと~、いただきま~す♪」


 御影昴――。

 幼い頃からの友人であり、俺の命の恩人……だが、コイツにはヒミツがある。

 それは太古の神“アドラス”に憑りつかれた半人半妖だということ。

 ソイツの目的のために、今も付き合わされている。

 妖魔を食わなければアドラスが暴れる、それも昴の身体を使ってだ。

 そんなことはさせない、だから俺は昴の力になるため妖魔を狩ると決めた。

 妖魔だろうが、人間だろうが、昴のためなら斬れる。

 この命は昴に救われたものだから――。


 ――あれは、ずっと前のこと。


 「隼くん、こっちこっち~!」

 「待ってよ~!」


 クラスメイトと一緒の登下校。他愛のない会話。

 あの時、俺はどこにでもいる小学生だった。

 ひとつ、違うとすれば――。


 「―す―て―く―しい―いた――」


 毎日のように俺の耳に入ってくるノイズ。

 これは、この世にいない、死んだ人間たちの声。

 俺以外には聞こえない死者からの声。

 いつから聞こえるようになったのか、そんなこと覚えてもいないし、どうでもいいこと。


 「どうかしたの、隼くん?」

 「ううん、なんでもないよ! のんびりしてたら置いてっちゃうからね!」

 「あっ、ずるい!」


 今思えば、俺は環境に恵まれていたのかもしれない。

 だからこそ、その場所を壊したくなくて、嘘がだんだん上手くなっていったのかもな。


 「ど―へいく――とま―」


 また聞こえてくるが、怖くはなかった。

 こんなのは時間が経てば勝手に消えてくれるんだ。


 「そうだ、昨日のテレビだけど――」


 振り返るとさっきまでいたクラスメイトがいない。

 急に辺りの空気が冷え、肌寒さを感じる。


 「ねえ、どこにいるの? あっ、もしかしてかくれんぼか! 鬼はじゃんけんで決めようよ!」


 ……どこからも返事はなく、姿も見えない。

 慌てて走り出すが、もうそこは俺の知っているいつもの帰り道じゃなかった。


 「ど、どうしよう、早く帰らないと!」


 闇雲に走り続けるが、人っ子一人歩いていない。

 怖い、怖い、怖い、怖い――。

 誰でもいいから、出てきてくれ。

 角を曲がった瞬間、壁のようななにかにぶつかる。


 「いったー……なんだよ、これ――」


 顔を上げると俺の前に化け物が立っていた。

 あまりに突然のことで、声すら出ない。

 こんなに気持ち悪く、しっかりと実体のある強い妖魔を見たのは初めてだった。化け物の大きな瞳は俺をしっかりと捉え、そして、咆哮を上げる。


 「だ、れ……たす……」


 俺は泣きじゃくりながら、助けを求めた。

 まともに声も出せない状態で、誰が助けに来てくれるっていうんだろう。

 それでも俺は、必死に声を捻り出そうとした。

 しかし、そんなあがきも虚しく。振り上げられた化け物の腕が俺に振り下ろされ――


 「うわあああ――!」


 最期に絞り出せたのは絶叫だった。

 うずくまり腕で顔を覆う。

 次の瞬間、ビシャッと、生暖かい液体が身体に滴った。


 「あれ……痛く、ない……」


 いったい、なにが起こったのか。

 見上げると、化け物の身体から自分に付着したものと同じ黒い液体が、噴水のように噴き上げていた。


 「あっ、あっ……」


 状況は理解できないが、開きっぱなしの口の中に化け物の液体が入ってくる。

 それを吐き出しながら周りを見ると、同い年くらいの男の子が立っていた。


 「き、きみがやったの……?」

 「ぼ、ぼくは、うわあああん!!!」


 急に泣きじゃくる男の子。

 この子もここに迷い込んでしまったのかな。

 俺もこの状況はわからないし、ただ、すごく怖いけど、泣いている男の子を見て俺は不思議とその手を握っていた。


 「君が助けてくれたんだよね、ありがとう」

 「え? き、きみは……?」

 「俺は向来隼だよ、君の名前は?」


 男の子が俺の手をぎゅっと握り返してくる。


 「御影昴……」

 「そっか、昴くんか! よし! ねえ、一緒にジュース飲もうよ!」


 そう言うと、照れながら頷いた昴の顔を覚えている。

 それが昴との出会いであり、俺たちの始まりだった。

 無事に帰れた後は、昴とよく会うようになる。毎日のように俺と遊んで、気付けば家にも来るようになったんだ。

 俺の両親も、あまり家に帰りたがらない昴をよく可愛がっていて――。


 「まるで本当の兄弟みたい」


 それを言ったのは父さんだったか、母さんだったか。

 確かに俺は昴に友達以上の繋がりを感じていたし、今も強くそう思う。

 だから、俺がアイツの全てを知ってもなお、見捨てるという発想はなかったんだ。


 「あっ! ちょっと飲みすぎちゃった。僕のやつあげるから、これで勘弁して♪」

 「はいはい……」


 だからこそ、今の俺にできることはあの化け物――妖魔を狩り続け、早く昴を解放してやる。

 ただ、それだけだ。

EPISODE3 波紋「戦うのは俺だけでいい。昴には……できるだけ、戦ってほしくないんだ」

 太古の神アドラス――。

 昴に取り憑いた忌々しい神。

 強大な陰陽師に封印されて力を失い、魂だけになったらしい。

 確か、自身の血統に近い子孫を憑代として、生きながらえてきたと話していたな。

 そのおかげで昴が面倒事に巻き込まれている。

 普段は昴の身体の中で眠ってるからいいが、起きた時は本当に厄介だ。

 だから、俺はこいつを引き剥がす方法を探しているのだが――。


 「今日も収穫なしか……」


 完全に手詰まりだった。

 アドラスを封印した陰陽師とやらも、とうの昔に消息は途絶えており、手掛かりがない。


 「ふふ~ん、こんなところで会うなんて奇遇だね。なにをしているのかな?」


 いつの間にか俺の前に昴が立っていた。

 奇遇とか言いながら、こいつのことだから、俺のことを探していたんだろう。


 「ヒミツだよ」

 「なんだよ、それ~。ヒミツにされたらさ、余計に気になるじゃん!」

 「それよりも、死者から情報がもらえたんだ。今日はそこへ行ってみよう」


 俺は昴を置いて足早にその場所を離れる。


 「あっ、ちょっと。置いてかないでよ~!」


 目的の場所に近づくと、物音が響いてくる。

 これは間違いない――。


 「昴、この先で誰かが戦ってるみたいだ。俺がいいと言うまでアドラスの力は使うなよ」

 「うん、わかってる」


 昴に戦闘力はない。

 妖魔と戦う時はアドラスの力を引き出すことになる。

 だが、できればそれは避けたい。



 「俺が様子を見てくるから、ここを動くなよ」


 俺が先行してそっと物陰から様子を伺う。

 1人? いや、あれは3人か。

 子どもを2人連れた男が刀を手に巨大な妖魔と戦っている。


 「うりゃあああ!」


 振り下ろされた刀が妖魔を斬るがまだ浅い。


 「困ってるみたいだね、俺も手を貸すよ!」


 妖魔の不意をうち、百鬼で斬り裂く。


 「お前、誰だ!?」

 「敵じゃないとだけ言っておくよ。今は敵だってわかってるやつを倒すほうを優先したほうがいいんじゃないかな」

 「お、おう、そうだな!」

 「北斗、人が増えたからといって油断するなよ!」

 「わかってるよ、玄武様!」


 俺が先陣を切って、妖魔に百鬼を振るうと北斗と呼ばれた男が続くように妖魔を斬り裂く。

 妖魔の反撃が俺の頬をかすめる。

 相手が大きすぎる上に丈夫、俺たち2人だけではこれを倒すだけの火力がない。

 瞬間、誰かが妖魔を殴り飛ばす。


 「な、なんだよ、今の!?」

 「そうやって1人で頑張ろうとするんだから。戦う時は2人でって決めたじゃないか」

 「昴!?」


 いつの間にか俺たちの後ろに立っていた昴。

 かざされた手は妖魔のほうへと向けられていた。

 昴はアドラスの力を使ったのか。

 倒れていた妖魔がゆっくりと立ち上がる。


 「ソイツはお前のお仲間さんか。だったら、協力してもらうぞ!」


 北斗が倒れている妖魔に斬りかかっていく。


 「無茶だけはするなよ、昴!」

 「はいはい、わかってるって!」


 数分後――。

 妖魔の巨体がゆっくりと地面に倒れる。


 「やっと終わったか。昴、大丈――」


 俺が声を掛けようとするが、昴は倒れた妖魔へと近づいていく。

 その姿を北斗は不思議そうに眺めていた。


 「おい、あれなにやってんだ?」

 「……いいから、黙って見てな」


 昴が妖魔に手をかざすと黒いモヤが現れ、それが身体の中へと吸い込まれていく。


 「どうなってんだ?」

 「妖魔の力を吸い上げているんだよ」


 北斗の隣にいた子ども、玄武と呼ばれてたな。

 見ただけでわかるなんて。


 「うっ……」

 「昴!?」


 倒れそうになる昴を慌てて抱きとめる。


 「アハハ、ちょっと力を使いすぎたみたい……。相棒、あとは任せたよ……」


 そう言って昴は眠ってしまう。

 長時間ではなかったはずだが、俺が思っていた以上にアドラスの力を使いすぎたのか。

 だが、今はまだ昴のままだ。

 あの約束を果たす日はまだまだ遠いだろう。


 「ソイツ、大丈夫なのか?」

 「ちょっと眠ってるだけだから平気だよ。寝かせてやりたいから、帰らせてもらうよ」

 「ああ、今日は助かった、貸し1つだな」

 「俺たちも目的があって戦ったんだから、別に貸しなんて作ったつもりはないよ」

 「俺が勝手にそう思ってるんだからいいんだ。なにか困ったことがあったら頼ってくれよ、俺たちは基本的に中野にいるからさ」


 俺は昴を抱えてその場を立ち去ろうとする。


 「お前たちは面白い組み合わせだね。……まるで呉越同舟だよ」

 「どういう意味?」

 「お前、まさかソイツを救おうとしてるの?」


 その言葉に思わず顔を強張らせてしまう。

 この子どもはどうしてそんなことを言うのか。


 「もしそうなら今すぐ諦めたほうがいいね。これは仕方のないことだから……」

EPISODE4 疑惑「誰になんと言われようが変わらない。俺は昴を救うためなら、どんなことでもやるよ」

 中野のアーケード街――。

 昨日出会った男、北斗はここにいると言っていたな。

 死者たちの声に耳を傾けると彼は有名らしく、数十分とかからずに見つけることができた。


 「相方は一緒じゃないんだな」

 「誘ったんだけど、断られちゃったんだよ」


 珍しく昴に断られたのは気になるが、今はそれよりも確認すべきことがある。


 「それで、俺たちになんか用か?」

 「昨日のことについて聞きたいことがあるんだよ。君じゃなくて、そこの亀にな」


 北斗が連れている玄武を指差すと、玄武が亀の姿から人へと姿を変える。


 「昴を救うのを諦めろって言ったよな。あの言葉はどういう意味なんだ?」

 「そのままの意味だよ。あれを続けたところで、あの男を救うことはできないからね」

 「なら、他に昴を解放する方法があるってことか?」

 「解放する方法? あるわけないよ。それは神様でも無理なんだからさ」


 玄武がなぜそこまで言い切れるのかわからない。

 そんなこと、信じてたまるか。


 「救う方法がなきゃ困るんだよ!」

 「でもねぇー」

 「昴は……昴は俺の親友なんだ……。だから、絶対に救わなきゃいけないんだよ……」

 「なあ、玄武様。本当に方法はないのか?」

 「そんなに諦められないのなら、自分で確かめるといいんじゃない?」

 「確かめる?」


 玄武は紙になにかを書き始め、それを俺に渡す。

 どこかの地図のようだが、これはいったい……。


 「そこにいけば陰陽師に関する書物が見られる。諦めるつもりがないなら確かめてみなよ」

 「だったら確かめてやる!」

 「ま、せいぜい頑張ることだねー」


 絶望の中、微かに見えた一筋の光。

 アドラスを封印した陰陽師のことがわかれば、昴からアイツを引き剥がすことができる。


 地図の場所にあったのは古びた神社だった。

 神主の人へ適当に歴史の勉強だと話し、中にある書物を読ませてもらえることになった。


 「この中に、なにか手がかりが……」


 目の前に積まれた本を、一冊一冊見落としがないように隅々まで読んでいく。

 ふと、その中に見知った単語が目に入ってくる。


 「百鬼……? どうして、陰陽師の文献にこの名前が出てくるんだ」


 改めて他の本も確認していくと、同じように百鬼の記述が残っていた。


 「陰陽師と百鬼に関係があるのか? ……くそ、あまり詳しいことは書いてないな」


 だが、百鬼と陰陽師に関係があることがわかった。

 今までは陰陽師とアドラスについて追ってきていた。

 でもこれからは百鬼について追っていけば新しい手がかりが得られるかもしれない。


 「昴にも協力してもらうか。これだけの数となると1人で読むのは大変だ」


 携帯から昴に連絡を入れる。

 コール音が鳴り続けるが、一向に取る気配がない。


 「いつもなら、すぐに出るのにな。タイミングが悪かったか……」


 改めて掛けようと考え、俺はまた本と向き合う。

 この時に俺はもっと昴に注意しておくべきだったのかもしれない。

 そうすれば、あんなことにはならなかったかもしれないというのに。

EPISODE5 離別「昴はいつだって隣にいてくれた。それは何年経とうが変わらないと信じていた」

 百鬼のことを調べ始めて数日が経った。

 あれから何度か昴を誘ってみたのだが、いつも答えは同じ――。


 「本当は一緒に行きたいんだけどな~。ごめんね、ちょっと用事があるから付き合えないや」


 そう言って俺の誘いを断ってくる。

 いつもの昴なら――


 『隼からデートのお誘いなんて嬉しいな~!』


 そう言ってついてくるはずなんだけど。

 アドラスのこともある、本当に調子が悪いだけなのかもしれない。

 とにかく今は目の前の文献に集中しよう。

 百鬼のこと、あともう少しでわかりそうなんだ。


 「……どういうことだ?」


 文献を読み解く中で俺はある答えに行き着いた。

 どの文献にも書かれていたこと。


 「百鬼は陰陽師にしか扱えない……?」


 俺はその答えに戸惑いと驚きを隠せなかった。

 今まで嫌になるほど探し続けて、やっと見つけた答えがこれだった。

 百鬼を扱えるのが陰陽師だけだとするなら、アドラスが千年もの間、憎んでいた陰陽師の末裔、それが――


 「俺、だったのか……」


 それはつまり、アドラスをどうにかできる人間は俺しかいないということになる。

 俺が仇の陰陽師だと昴が知れば、アイツがどんな行動を取るか、わかったものじゃない。

 アドラスは陰陽師への復讐を果たそうとするだろう。

 アイツが暴走すれば、憑代となっている昴と……戦うことになってしまうかもしれない。


 「ダメだ、そんなことは絶対にさせない」


 それ以前に昴ならそうなる前に行動するだろう。

 アイツは昔から察しがよかった。

 もしも、俺との関係がはっきりした時は――。


 「……まさか!?」


 嫌な予感がして、全速力で走る。昴が待つ拠点へ。

 そんなはずはない、きっと気のせいだと自分自身に言い聞かせながらも、焦る気持ちが止まらない。


 「昴!」


 扉の先に、昴の姿はなかった。

 たまたま出かけているに違いない、そんな思いは小さな紙切れ1つに打ち砕かれる。


 “隼、今までありがとう。元気で”

EPISODE6 選択「俺はなにを選ばなければいけないか、決めていたはずだ。だけど……」

 俺は1人、新宿の街を歩いていた。

 いつも隣りにいた昴は、もういない。

 昴が拠点を出てから、十日は経っただろうか。

 生者、死者問わずに情報を集めているが、昴の消息は未だ掴めていない。


 「神が封印された場所、ここか……」


 これ以上、探すアテはない。

 歩き回ったところで見つからないとわかってはいるがなにかをせずにいられなかった。

 だから、ここへ足を運んだ。

 あの文献で唯一、読み解けていなかった場所。

 まさか、あの神社の裏に大昔、神が封印されたといわれる場所があったとは思わなかった。

 草木に覆われた道を抜け、廃れて骨組みだけになった古い神社へとたどり着く。


 「神主さんが言っていた昔の神社はここか」


 文字が掠れて読めなくなった大きな石のようなものが祭られている神社。

 以前はここが本堂だったらしいが、老朽化で新しくお堂を造ったのだという話だ。

 その石に近づくとキィンと音が響く。


 「これは、いったい?」


 辺りを見回すと腰のあたり、百鬼が光を帯びていることに気付いた。


 「……気持ちよく眠っていたのに、こんな形で起こされるとはなあ」


 不自然に聞こえてきた声に、また死者の声が聞こえたのだろうと頭上へ目を向ける。

 そこにいたのは、狩衣を着た男。


 「お前、陰陽師か……?」

 「なんと、無礼な小童だな。いかにも、我こそがあの忌々しき神を封印した陰陽師だ」


 まさか封印した本人に会えるとは思ってなかった。

 これはチャンスだ。

 この人に聞けば昴を救う方法がわかるかもしれない。


 「単刀直入に聞かせてもらうが、昴から……アドラスを宿した人間から、アイツを解放したい。方法を教えてくれ」

 「本当に情緒のかけらもない奴だな。貴様がアドラスを解放?」


 俺の言葉を聞いて陰陽師が笑い始める。

 なにがおかしいと言うんだ、俺にとっては自分の命よりもずっと大切なことだというのに。


 「そんな方法はない」

 「どいつもこいつも同じことを言うんだな。だったら――」


 それがどうした。

 ないからと言って、諦められるはずがない。

 諦めていいはずがない。


 「俺が見つけてやる!」

 「ハハ、我の末裔がこれほどの阿呆だとはな! まぁ、小童、一旦話を聞きたまへ」


 俺は背を向けたまま陰陽師の話を聞く。


 「いいか、神そのものを封印する方法はない。できるのなら、我がとうの昔にやっておる。我でも力だけで、その魂までは封印できなかった。それだけ神というものは厄介な代物なのだよ」

 「それがどうしたっていうんだ。できないから、俺に諦めろって言うのか?」

 「話を急くな。仮に昴とやらから、神を解放したとしても、解き放たれた神によって人々に災厄が降り注ぐだけだ」

 「だからといって……」


 そう、俺にとって大切なのは大勢の他人じゃない。

 かけがえのない相棒、昴だけだ。


 「だが、お主はやらねばならん。今、かの者の中にいる神の力は封印を施した当時に近い力を取り戻しておる。ならば、力を取り戻す前に、神をその依代と共に封印することだ」

 「なっ!? 昴ごと封印なんて、できるわけがないだろ!」


 そう叫んだ俺に対し、哀れみを持ちつつも淡々とした声で陰陽師は話を続ける。


 「お主、死者の声が聞こえるだけで見えはしないのだろう?」

 「ああ、俺には見えない。お前が見えてるのが不思議なくらいだ」

 「つまり、代を重ねることで陰陽師の血がだいぶ薄まっているわけだ」

 「なら、昔の陰陽師は死者の姿が見えていたのか」

 「そう、陰陽師としてお主ができることなど、知れている――だから、選ばなければならない」

 「選ぶ?」

 「友の命も大切だが、彼の命とその他大勢の罪のない命を天秤にかけなくてはならぬ」


 そんなことは悩むまでもない。

 俺はアイツを――。


 「今一度、自身に問いかけるがいい。お主が救おうとする友は、犠牲の上で成り立つ命に喜びを感じるか否かを」

EPISODE7 異変「最善の答えなんて誰にもわからない。ただ、後悔だけはしたくない」

 陰陽師と別れ、俺は帰路についていた。

 昴の命と大勢の命を天秤にかけなければいけない日が来るとは思っていなかった。

 俺の答えはとうの昔に決まっている。

 だが、昴はどうだ?

 俺が仮に昴の命を救ったとして、アイツはそんな俺をいつものように笑顔で出迎えてくれるだろうか。


 「昴、お前はどうしたい……?」


 無意味な問いかけたをした自分に呆れる。

 選ばなければいけないのは、百鬼を扱える陰陽師。

 俺自身だというのに。

 深い溜め息をつきながら拠点の前につくと、ドアが少しだけ開いていることに気付いた。


 「昴……?」


 返事の代わりに聞こえてきたのは耳に馴染んだ歌――


 「ふ~んふんふん~♪」

 「この歌は!?」


 昴が戻ってきたのかと、慌てて中へ入ろうとするが、ドアノブが壊れてしまっている。

 昴のやつ、鍵を持っていかなかったから、壊して無理やり入ったのか?

 少し開いたドアに手をかけて中に入る。


 「昴、いるのか?」


 部屋の中に入ると見渡すまでもなく、部屋の真ん中にぽつんと1人、昴が佇んでいる。

 近付いて声をかけようとした。

 だが、直感的に昴が纏った雰囲気に違和感を覚え、その場で足を止める。


 「本当に、昴なの――」


 もう一度、昴を呼んでみようとするが、次の瞬間、俺の顔面めがけて昴の拳が飛んできた。


 「な――っ!?」


 突然の攻撃とあまりの速さに驚き、俺はその場で尻餅をついてしまう。

 だが、それがよかった。

 昴の拳は俺の頭上をかすめ、背後の壁に当たる。

 拳が当たった壁は崩れ落ち、そのヒビが床にまで続いていた。

 倒れた俺に向けられたのはいつもの昴の笑顔ではなくひどく歪んだ邪悪な笑顔。


 「クックックッ、運がいい小童だ」

 「まさか……アドラス!?」

EPISODE8 暗転「目の前が黒く塗りつぶされていく。俺は真実から目を背けようとしているのか」

 ここは俺と昴が共に過ごしてきた場所。

 共に笑い、泣き、喧嘩したこともあった。

 誰にも邪魔されることのない。

 俺と昴……2人だけの場所だったのに。


 「逃げるのか? クッ……ハハハハッ! いいぞ、もっと我を楽しませろ!」


 アドラスの高らかな笑い声と共に、俺たちの拠点が破壊されていく。


 「クソッ!」


 アドラスの攻撃でビルが少しずつ崩れていく。

 あの振り下ろされる拳を止めようにも、避けることしかできない。

 今の俺にはこの百鬼を抜くだけの勇気がなかった。

 これ以上、ここに留まれば崩れるビルと心中してしまうことになる。

 だからといって、アドラスを外に出してしまえば被害が大きくなってしまう。

 俺は、どうすればいい……?


 「どうした、その腰の刀は飾りか? ならば、千年分いたぶってやろうぞお!」

 「お前気付いてたのか……俺が陰陽師だと」

 「ああそうさ、お前のオトモダチが教えてくれたのさ!」

 「オトモダチ……? ……お前、昴はどうした!」

 「ククク、今更気付いたのか? 小童は何もかも気付くのが遅いな?」


 アドラスの力は、以前共に戦っていた時と比べ物にならないくらいに強大なものとなっていた。

 そのことが俺に1つのことを思い知らせる。

 そこに“昴”はもういないという事実を。


 「……ッ! 昴を返せ!!」


 その時、ふとあの時の言葉を思い出す。

 “友の命も大切だが、彼の命とその他大勢の罪のない命を天秤にかけなくてはならないのだよ”

 アドラスの振り下ろした拳がとうとう床をぶち抜く。

 崩れていく足場に巻き込まれ、体勢を崩してしまう。


 「しまっ――!?」

 「フハハハッ! まずは一発ゥゥゥ!」


 咄嗟にアドラスの拳を防ぐが、脳天を突き抜けるような痛みが腕を襲う。

 バキッという音が耳に聞こえ、激しい痛みとともに吹き飛ばされた勢いで俺は窓を打ち破る。


 「えっ、なに? 男の子が降ってきたわよ!」

 「おい、大丈夫か?」


 外へと放り出された俺の周りに人が集まってくる。

 まずい――


 「早く逃げろ!」


 おそらく片腕の骨が折れてしまったのだろう、俺は痛みを堪えながらここから離れるように訴えるが周囲は一向に離れようとはしない。


 「まだまだいたぶり足りないんだよおおお!」


 上から降ってくるアドラスが誰を狙っているのかは明らかだ。


 「離れろ!!」


 群がっている人たちを無理やり押し返して、自分から強引に離す。


 「君、なにをする――」


 その言葉もアドラスの脚が地面を砕く音でかき消された。


 「おいおい、避けるんじゃねえよ!」

 「な、な……!?」


 突然の出来事に誰もがそこから動くことができないでいた。


 「逃げろ、殺されるぞ!!」


 俺の叫び声に呼応するように人々が悲鳴を上げながら逃げていく。

 これでいい。逃げてくれれば、巻き込まずに済む。


 「ククク、貴様は本当にお人よしだなあ! だったら、アイツらから始末してやろうか?」


 俺は無意識に百鬼へ手を伸ばしていた。

 これを使えば確かにアドラスを止めることができるかもしれない。

 だが、それが意味するのは……。


 「昴……」


 目の前に立っているのは間違いなくアドラスだ。

 しかし、その見た目は昴そのもの。

 だが、ヤツはもう今まで倒してきた妖魔と同じ。

 討つべき相手だと頭で理解しているつもりでも、身体は言うことを聞いてくれなかった。


 「戦うこともできねえ腰抜けが!」


 その言葉にハッとしたが、時既に遅し。

 アドラスの拳は再び、俺の身体に撃ち込まれていた。


 「ガハ――ッ!?」


 先ほどの音とは違う。

 まるで全身が砕けてしまったかのような音が響く。

 そのまま後ろに吹き飛ばされ、俺の身体は建物の壁に張り付くように打ちつけられる。

 その衝撃で胃の中のものが全て吐き出された。


 「アハハ、ゲロまみれで汚えな! 小童ァ!」


 アドラスの笑い声が遠くに聞こえる。

 身体を動かそうとするが、あまりの痛みに身体がいうことをきかない。

 手足が鉛のように重く、目の前の視界が揺れる。


 「まだまだやりたりねえんだから。これくらいでくたばんじゃねえぞ!」


 ぼやける視界の中でアイツが近付いてくる。

 そして、俺の首を締めようと手を伸ばして……。

 情けない……。

 俺は昴のことも救えず、結局、なにも自分で決めることもできずに終わるのか。

 痛みの中で俺は悔しさに噛みしめる。

 意識を失いそうになりながら、自然と口から溢れ出たのは――


 「――昴」


 ………………。

 アイツの手が俺の目の前で止まっていた。


 「隼……」


 俺のことを優しく呼ぶ、アイツ――

 “昴”がそこにいた。

EPISODE9 決意「もう――迷わない」

 昔からそうだった。

 どこかへ遊びに行こうと提案するのも、新しい遊びを考えるのも、いつも昴。


 「よーし、次はあの森まで探検だ。行くよー、隼!」

 「うん!」


 今思えば、あの頃はアイツの後ろを走って追いかけていたことが多かったかもしれないな。

 いつのことだったか、昴と一緒に川へ飛び込みをしようとなった時、俺は飛び込めなかった。

 その時、昴が掛けてくれた言葉は――。


 手放しかけた意識が戻ってくる。


 「スバ――」


 俺が名前を呼ぶ前に、昴は震えた手で俺の手を取ると百鬼を俺の手に持たせてきた。

 俺は百鬼に触れた昴の手が見る見るうちに酷い火傷に覆われていくのを目にする。

 やめてくれ、と声をあげようとするが、その手から昴の瞳に視線を移した時、今まで見たことの無い真剣な表情の昴がそこにいた。

 掛ける言葉が見つからない。

 もう昴は覚悟を決めている。

 だけど、俺にそんなことできるわけが――。


 「……約束、守ってね」


 聞きたくない、言ってほしくなかった言葉。

 全てを受け入れたお前から、その言葉を聞いてしまったら、もう決めるしかない。

 決断ができない優柔不断な俺の背中を押すのはいつだってお前の言葉だったな。

 そうだ、あの時も昴は……。


 「かっこいい隼を、僕に見せてよ」

 「……うん」


 俺は迷いを捨て、決意を込めて昴に答える。

 しかし、その刹那、昴の身体が俺から離れるように後方へ飛躍した。


 「この小僧、なんと余計な真似をおおお! ああ、クソォ! 我の右手がこんなあああ!」


 昴――アドラスは使いものにならなくなった右手を庇いながら怒りの表情をこちらに向ける。


 「小童、貴様――!?」


 俺は真っ直ぐ、アドラスに視線を向ける。

 もう迷いはない。

 俺は残された腕で百鬼を握りしめた。

EPISODE10 親友「一緒に戦おう、相棒」

 アドラス――。

 俺と昴だけじゃない、これまで大勢の人々を苦しめてきた悪神。

 だが、それも今日で終わりにする。

 俺の、この手で!


 「小童があああああ!!!」


 アドラスは勢いをつけると雄たけびと共に全身全霊でその拳を俺に向けて振りぬく。

 なぜだろう、俺に恐怖はなかった。

 目の前に立ち塞がる大きな脅威を前にして、俺の頭はひどく鮮明で、先ほどまでの痛みも思考を邪魔することはない。


 「左手は俺が斬ってやる」


 まるでスローモーションのようなアドラスの拳。

 翼でも生えたかのように軽い身体を動かし、その拳を避けてアドラスの懐に入る。


 「なに――ッ!?」


 予想外の動きだったのだろう、俺が避けたことに驚いたアドラスは咄嗟に左手を庇おうとする。

 当然だ、左手を斬ると宣言してやったんだ、そういう動きになるだろうな。

 だからこそ、先を読むことができる。

 一閃。

 振り抜いた百鬼がアドラスの両目を斬り裂き、鮮血が飛び散る。


 「ぐあああああ!? 目が、目があああ! 許さん、許さんぞ! 貴様だけは絶対にィィィ!!」


 斬り裂かれた目を左手で抑えながらも、確実にその拳は俺を狙ってきた。

 動きは最小限に、残された体力は少ない。

 だからこそ、最高の一撃を喰らわせる一瞬を待つしかないんだ。


 「無駄だ! 気配を探れば、貴様の居所など手にとるようにわかるからなあ!!」


 目の前に不敵な笑みを浮かべたアドラスが右手を大きく振りかぶる。

 あの一撃でここ一帯を壊すつもりなのか。

 だとすれば、それを振り下ろす瞬間こそが最大の隙を生み、俺にとって最高の機会になる。

 頭だけが異様にクリアになっていく。

 人々の悲鳴も、上空で飛ぶヘリの音も、アドラスの怒号も、何も聞こえないクリアな世界。


 「死ねえええ!!」


 アドラスの拳がストップモーションのように少しずつ俺に近付いてくる。

 避けようと構えるが……その拳が止まる。

 わずかな時間、一秒にも満たない時間ではあるが、アドラスの拳は確かに止まっていた。

 そうか。昴、お前が力を貸してくれたんだな……。

 その時間、今の俺にとっては永遠に近い。

 だからこそ、一撃で仕留めなければならないんだ。

 今出せるありったけの力でアドラスの心臓に――昴の心臓に、この百鬼を!


 「――――ァ?」


 百鬼は真っ直ぐに昴の心臓を貫いていた。

 目の前に鮮血が舞い、全身を業火が包み込む。


 ――終わらせた。


 俺が、昴の命を。

 急に心と身体に重みが戻ってくる。

 この重みが俺の罪悪感なのかわからないが、俺は昴が燃える光景をただただ見つめることしかできなかった。

 ゆっくりと昴を包んでいた炎が消えていく。

 百鬼がアドラスの魂を燃やし尽くしたのだろう。

 倒れた昴の身体を抱き寄せる。


 「終わったよ、全部……」


 そこにはもう返事をすることはない昴がいる、はずだった。


 「隼……」


 かすかに耳に聞こえた昴の声。

 慌ててその顔を見ると、いつもの昴の笑顔がそこにはあった。


 「昴、昴……っ!」


 せきを切ったように涙が溢れてくる。

 もう見れないと思っていたその顔を見れた嬉しさと、別れが迫っているという悲しさ。

 決心したはずなのに、こんなに泣きじゃくって、かっこ悪い俺を見せることになるなんて。

 頬に触れる昴の手を握った。


 「ねえ、隼……。僕たち、ずっと親友(あいぼう)だよね……」

 「あぁ……あぁ、当たり前だろ! 俺たちは、ずっと……おい、昴?」


 眠ったように目を閉じて返事は返ってこない。


 「昴、返事をしてくれよ……。まだお礼をもらってないじゃないか……」


 ヘリが空を飛び、未だに人の悲鳴が聞こえる街の中。

 俺たちの周囲だけは、まるで静寂に包まれたかのようで。

 俺はまた1つの決意をする。


 「絶対、迎えに行く……。それまで、勝手に行くんじゃないぞ……」

EPISODE11 約束「2人の約束……。ちゃんと守らなくちゃダメだよな」

 あの日から俺の“日課”は少しだけ変わった。

 変わらず、夜の街を歩き、死者たちの声に耳を傾け、闇に蔓延る妖魔を狩る。

 大きく変わったのは隣に親友がいないことだ。


 「喉が乾いたな……」


 お礼と言って変わった飲み物を買ってくるやつもいない。

 俺は買っておいた酒を飲みながら、また夜の街を歩いていく。

 あの日から、どれだけ時間が経っただろう。

 幾千の死者の声を聞いてきたが、俺の探しモノにはたどり着かない。

 それでも俺は変わらず探し続ける。

 たとえ、何年、何十年かかろうとも、絶対に迎えに行く、そう決めたのだから。


 「やっとだな……」


 だが、それも今日で終わりだ。

 ようやく、たどり着くことができた。


 「ふ~んふんふん~♪」


 風の音に交じってかすかに聞こえる懐かしい歌。


 「結構、時間かかっちまったな……」


 見ることはできないが、確かにそこにいる。

 話したいことは山ほどあった。


 ――やっと、迎えに来れたよ。


 俺は声を掛けず、ただ目を閉じて、その歌を聞き続ける。

 もう見ることのできない、親友の笑顔を思い描きながら。

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■ 楽曲
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WORLD'S END
■ キャラクター
無印 / AIR / STAR / AMAZON / CRYSTAL / PARADISE
NEW / SUN
マップボーナス・限界突破
■ スキル
スキル比較
■ 称号・マップ
称号 / ネームプレート
マップ一覧
コメント (向来 隼)
  • 総コメント数16
  • 最終投稿日時 2021年03月15日 02:19
    • チュウニズムな名無し
    16
    2021年03月15日 02:19 ID:hfhgi79t

    呪術廻戦で出てきそう。

    • チュウニズムな名無し
    15
    2021年03月14日 22:18 ID:soe0x80c

    >>14

    あの日から、どれだけ時間が経っただろう。

    って言ってるから何年も経って20歳過ぎたんだと思う

    • チュウニズムな名無し
    14
    2021年03月14日 04:45 ID:jv5zuu6z

    未成年で飲酒していいんですかね?

    • チュウニズムな名無し
    13
    2021年02月09日 21:17 ID:fpe33k1x

    >>9

    ボーナスだけをみると神へのギグを100コンボ毎ボーナスにした代わりに即死スキルになったもの(+0、+1共に神へのギグ+0、+1にと同じボーナス)

    …と考えるとあまり弱そうに感じないんだけど即死条件がちょいキツめだからなぁ…

    • チュウニズムな名無し
    12
    2021年02月08日 21:49 ID:a2u5urmy

    二人の誓い

    +2と+3が推定値通りなのを確認しました(画像は撮り忘れたのでありません)

    • チュウニズムな名無し
    11
    2021年02月08日 12:07 ID:oqhlj8yf

    中央線ゴーストバスターズ(仮)がここに来て進展するとは…

    あとは白虎で八王子とか来るかな?

    黒亀北斗(中野)→玄武

    黄金井竜子(武蔵小金井)→黄龍

    清瀧藍(立川)→青龍

    向来隼(新宿)→朱雀

    牧野もこ(日野)→羊

    • チュウニズムな名無し
    10
    2021年02月02日 23:48 ID:npro9yhj

    なんか北斗くん珍しくシリアスしてんな

    • チュウニズムな名無し
    9
    2021年02月02日 04:05 ID:tnox6pwb

    鮮血と追駆+1

    8本までなら連鎖する欲動の下位互換になるし、下振れなければ単純にブラック・オア・ホワイトの方が強い。

    2300ノーツ以上の譜面で確率に左右されないスキルを使いたい場合には有効か。それくらいなら少し猶予狭くなるだけでゲージ上昇デメリットのないドルオタ忍法の方が強い気もするが。

    • チュウニズムな名無し
    8
    2021年01月29日 02:19 ID:b802qo3s

    見た目めっちゃダウナーなのにめっちゃ優しいししかもゴーストバスターで陰陽師の末裔とか言われたら性癖に刺さらないわけないじゃん

    • チュウニズムな名無し
    7
    2021年01月27日 14:28 ID:orhbr5jy

    冷たそうな見た目に反してすごい友達思いの好青年、レベル50にしなきゃ…

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