京極院 桜花
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【スキル一覧(~PARADISE LOST)】【マップ一覧】
※ここはCHUNITHM PARADISE LOST以前に実装されたキャラクターのページです。
- このページに記載されているすべてのスキルの効果は、CHUNITHM PARADISE LOSTまでのものです(限界突破の証系を除き、NEW以降で入手・使用できません)。
- 専用スキル装備時に名前とグラフィックが変化していたキャラクター(いわゆるトランスフォーム対応キャラ)は、RANK 15にすることで該当グラフィックを自由に選択可能となります。
Illustrator:荊すず
名前 | 京極院 桜花 |
---|---|
年齢 | 18歳 |
職業 | オイラン歌姫 |
特技 | オイランサブミッション、歌唱、舞踊 |
- 2019年9月5日追加
- AMAZON ep.VIIマップ1完走で入手。<終了済>
- 入手方法:2021/7/8~8/4開催の「「夏色恋模様~短冊に願いを込めて~」ガチャ」<終了済>
- 入手方法:2022/3/3~2022/4/13開催の「「可愛さ指数は3000倍!?」ガチャ」<終了済>
- 対応楽曲は「ユメキキョウ」。
伝説のオイランを母に持つ少女。
憧れの母のようなオイランとなるため、欲望渦巻くネオヨシワラへと足を踏み出していく。
スキル
- エヴォリューションスパイク [NORMAL]
- キャラクターのRANKによって効果が変わるスキル。RANK11以上で上昇率が上がる代わりにATTACKにペナルティが付く。
- 240は0本時のMISSの2/3、6本時のMISSの1/3に相当する(HOLD・SLIDEの場合は割合が倍になり、2本未満の場合はATTACKの方がダメージが多くなってしまう)。
- RANK11以上のキャラで使用するのがメインだが、RANK10以下でも同GRADEのゲージブーストと同じ効果なので、全く使えないことはない。
- 新規プレイヤーの場合、PARADISE稼働時点では筐体内マップにゲージブースト系の汎用スキル所有者がほとんどいないため、イングリットを早い段階で入手してRANK10以下のキャラで安定的に4本を確保するスキルとして運用していくことも視野に入れたい。(課題曲等で5本以上が必要な場合、クリアランクS取得を前提にボーダーブースト・Sの入手・使用を検討されたし)
- +8になるとRANK10以下で6本、RANK11以上で7本到達可能になる。ただし、+8時点では理論値必須なので、実用には最大GRADE(+9)がほぼ必須。
- 同じくATTACK判定にリスクを持ち、近いゲージ上昇量を持つアタックブレイクと比較すると、以下の違いがある。
- ATTACK判定で受けるダメージが小さい(アタックブレイクはMISSに書き換えられる=MISSと同値のダメージになる)。
- ATTACK判定を書き換えないので、スコアやフルコンボに影響しない。
- キャラのRANKが11以上でないと効果が落ちるため、低RANKのキャラクターを育成しながら使うのに難がある。
- タイプがNORMALとMANIACで異なる。マップボーナス目当てで使う場合は競合しない。
- 筐体内の入手方法(2021/8/5時点):
- 筐体内では入手できない。
RANK11未満の時 ゲージ上昇UP (130%) RANK11以上の時 ゲージ上昇UP (190%) ATTACKでダメージ -240 |
プレイ環境 | 最大 | |
---|---|---|
開始時期 | ガチャ | |
PARADISE× (2021/8/5~) | 無し | × |
あり | +1 | |
PARADISE (~2021/8/4) | 無し | |
あり | +9 | |
CRYSTAL | 無し | +5 |
あり | +9 | |
AMAZON+以前 |
GRADE | 効果 | |
---|---|---|
RANK11未満の時 | RANK11以上の時 | |
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 | ||
共通 | (なし) | ATTACKでダメージ -240 |
初期値 | ゲージ上昇UP (130%) | ゲージ上昇UP (190%) |
+1 | 〃 (135%) | 〃 (195%) |
▼以降はCARD MAKERで入手するキャラが必要 (2021/8/5以降では未登場) | ||
+2 | 〃 (140%) | 〃 (200%) |
+3 | 〃 (145%) | 〃 (205%) |
+4 | 〃 (150%) | 〃 (206%) |
+5 | 〃 (155%) | 〃 (207%) |
+6 | 〃 (160%) | 〃 (208%) |
+7 | 〃 (165%) | 〃 (209%) |
+8 | 〃 (170%) | 〃 (210%) |
+9 | 〃 (175%) | 〃 (211%) |
理論値1:81000(5本+1000/22k)[RANK10以下/+1] 理論値2:117000(6本+15000/24k)[RANK11以上/+1] | ||
理論値1:93000(5本+13000/22k)[RANK10以下/+5] 理論値2:124200(6本+22200/24k)[RANK11以上/+5] | ||
理論値1:105000(6本+3000/24k)[RANK10以下/+9] 理論値2:126600(7本+600/26k)[RANK11以上/+9] |
所有キャラ【 清瀧 藍(1,5) / エルルーン(10,15) / 京極院 桜花 / イングリット(1,5) 】
ランクテーブル
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | |
スキル | Ep.1 | Ep.2 | Ep.3 | スキル | |
6 | 7 | 8 | 9 | 10 | |
Ep.4 | Ep.5 | Ep.6 | Ep.7 | スキル | |
11 | 12 | 13 | 14 | 15 | |
Ep.8 | Ep.9 | Ep.10 | Ep.11 | スキル | |
16 | 17 | 18 | 19 | 20 | |
21 | 22 | 23 | 24 | 25 | |
スキル | |||||
~50 | |||||
スキル | |||||
~100 | |||||
スキル |
STORY
「ウオォォォォォォ!!」
会場に大歓声が巻き起こる。
四角いステージには華やかな着物を身にまとい、きらびやかな髪飾りを盛りに盛った美女がひとり。
そしてその傍らには、着物も髪も乱れ、力なく横たわるもうひとりの美女。
客席からの歓声が止まない中、会場が暗転し、先程の勝者と思わしき美女にスポットライトが当たる。
そして次の瞬間、会場内に響き渡る音楽と歌声。
華やかに軽やかに、その美女は歌い、そして踊る。
ここはネオヨシワラ――欲望と快楽が渦巻くエド屈指の歓楽街。
その中でもひときわ目を引く大衆娯楽が『オイランバトル』である。
オイランバトルとは、華やかに着飾った女性が正方形のステージで1対1で戦い、勝者のみがその後ステージを独占し、パフォーマンスを披露できるというエクストリームエンターテイメントである。
出場者は『オイラン』と呼ばれ、オイランはステージに上がるとオイランコトバを使い、オイランバトルは関節技のみで行われる。
激しく、華麗に、そして華やかなオイランたちの姿に、見るものは熱狂と興奮に包み込まれていく。
ネオヨシワラの中でも大衆から絶大な人気を誇るこのオイランバトルは、勝利すれば高待遇が約束されるが、対象的に敗者は失うものも大きい。
その過酷な世界の中で、現在No.1歌姫と呼ばれるオイランがいた。
その名は『京極院菊花』。
彼女は京極院桜花の母であった。
京極院桜花の母である京極院菊花は、No.1に君臨する歌姫として高い人気を誇っていた。
常勝無敗で勝ち続けている彼女は豊かな生活を約束され、一人娘の桜花とともにネオヨシワラから離れた場所にある広い屋敷で生活することすら許されていた。
だが一方で、菊花に敗北した数多の女郎たちの多くからは憎しみの目を向けられることもあり、卑怯な手段による戦いや様々な嫌がらせなど、嫉妬や恨みからくる妨害を度々受けていた。
菊花はそれらに屈することなく戦っていたが、ある時、度重なるダーティーファイトの連続による疲れで隙を見せてしまった。
「ううぅっ……」
試合前の控室。
菊花は口にした飲料を床にぶちまけながら倒れ込んだ。
それを影から見ていた女郎たちは薄気味の悪い笑みを浮かべる。
「よし、これならあのあばずれ女を引きずり下ろせる」
影から見ていたのは数人の女郎。彼女たちは菊花に負けて恨みを持っており、菊花の飲料に下剤を仕込んでいたのだ。
そして、彼女たちは救護室へ向かうため、階段を降りる菊花を突き落とし、試合に影響の出る怪我を負わせることに成功した。
それでも菊花はステージに立ったが、相手のオイランの卑劣なファイトによって敗れてしまう。
こうしてNo.1から引きずり下ろされてしまった菊花は、ボロボロの身体で屋敷へ戻る。
「母様! 母様!」
まだ小さい桜花は、菊花の姿を見て泣くことしかできなかった。
しかし、悲劇はまだ終わらない。
今こそ好機と言わんばかりに、過去菊花に引導を渡された女郎たちが、復讐のために屋敷を襲撃してきたのだ。
屋敷では門番が警備をしていたが、曲がりなりにもオイランバトルで菊花と戦った元オイランの女郎たち。
多数で襲われれば撃退できるはずもない。
その物音を聞き、菊花が駆けつける。
「まさか屋敷にまで来るなんて。あんたたち、堕ちるとこまで堕ちたもんだね」
身体はボロボロの菊花だったが、多数の女郎たちを前に、迎え撃つ覚悟だった。
そこへ母親の姿を探して桜花がやってきた。
桜花は目の前の状況が理解できていなかったが、女郎たちは、恨みと憎しみをむき出しにして、菊花とその傍らに立つ桜花を睨みつけた。
「あっ……あっ……」
桜花は暗闇に辛うじて映ったその化物のような女郎たちの形相に、ただただ怯えるしかなかった……。
「覚悟しな菊花! これであんたもお終いだよぉ!」
女郎たちは一斉に菊花へ襲いかかる。
菊花は背後の桜花を守るように立ち塞がり、女郎たちと戦う。
すでに満身創痍であるにも関わらず、菊花は自らの持てる関節技の極意を全て使い、女郎たちを圧倒していく。
それはまるで鬼神が憑依したような、桁違いの強さだった。
桜花は母の戦う姿を目の当たりにし、いつの間にか怯えることもなくなっていた。
そして、母の雄姿を目に焼き付けるように見続けた。
それが、桜花が始めて見る母の戦う姿だった。
菊花は桜花に自分の戦いを見せたことはなかった。
オイランバトルは華やかに見えるものの、戦いは激しく、今のように恨まれることも多い。
だから、桜花に自分の姿は見せまいと、屋敷もネオヨシワラから離れた場所に構え、桜花をオイランバトルから遠ざけていた。
だが、桜花は見てしまった。
「……きれい」
桜花は母が戦う姿を見て美しいと感じ、感動していた。
すると、いつの間にか菊花は立ち向かった腕利きの女郎は、地面を舐めるように力なく突っ伏している。
菊花に勝てぬと思い知らされた女郎たちは蜘蛛の子を散らすように逃げ出した。
最後まで立っていた菊花だったが、戦う前からボロボロだった身体はすでに限界を迎えており、桜花の顔を確認し安堵の笑みを浮かべるとゆっくりと気を失い倒れてしまった。
桜花の熱心な看病もあり、菊花は身体の傷も癒えて普通の生活がおくれるようになっていたが、菊花の身体はもう激しいオイランバトルで戦うことのできない身体になっていた。
「母様、わっちにオイランバトルを教えて!」
桜花は母に対し自分にも技を教えてほしいと頼み込む。
菊花は自分と同じ道は辿ってほしくないと躊躇していたが、自分が居なくなった後、娘がひとりで生きていける強さを身につけられるのならという親心と、桜花のあまりにも強い熱意に根負けし、それを了承した。
それからというもの、菊花は桜花を甘やかすことなく厳しく鍛え上げていく。
そして、桜花はその厳しい修行に弱音を吐くこともなく、めざましい成長を遂げた。
ついには母の得意技のひとつである『高下駄崩し』
(アキレス腱にダメージを与えるオイランサブミッション。アキレス腱を圧迫し、激痛を与えることにより屈伏を強いる慈悲深い技)
を習得するほどに逞しくなったのだった。
あれから数年の時が経った。
ネオヨシワラでは今日もオイランバトルが開催され、大衆の注目を集めている。
かつてNo.1だった京極院菊花の名前も今ではあまり聞くこともなくなっていたが、彼女ほど強いオイランはいまだ現れておらず、その存在は伝説として片隅で語られる程度だった。
現在は西小路牡丹(にしこうじぼたん)という19歳の若いオイランがNo.1歌姫としてその座につき、その若さと美貌で人気を集めている。
「ついに来たわ……ネオヨシワラ……」
桜花は母の厳しい修行を乗り越え、母のようなオイランになるべく、ついにネオヨシワラへ足を踏み入れた。
「母様、見ていてね。わっちは絶対トップになる!」
改めて決意を固める桜花だったが、誰でもすぐにオイランバトルへ参加できるわけではない。
特別なツテもない桜花は、まずいろいろな店へ頼み込み、飛び入りで歌や踊りを披露しながらオイランバトルへ参加する手段を探した。
数日もすると、その整った美しい顔立ちと母の厳しい手ほどきによって身につけた歌や踊りが付近で評判になる。
そして“京極院”という姓によりその出自が明らかになると、桜花の名前は瞬く間に広まっていった。
これでオイランバトルへ参加する道も開けると思っていた桜花だったが、有名になった桜花を親の七光りと囃し立てる女郎や、いまだ菊花に恨みを持つ女郎たちなどから嫌がらせを受け始めてしまう。
しかしながら、菊花からネオヨシワラやオイランバトルについて様々な話を聞いている桜花にとって、それらの嫌がらせは気にするほどのことでもなく、彼女たちへの対応策も用意周到に準備をしており、ことごとく女郎たちの下劣な嫌がらせを躱していった。
だがそんなある夜、桜花は座敷を終えて宿へ戻る途中、数人の女郎に囲まれ闇討ちにあう。
「ちょっと有名になってるからって生意気なんだよ。あんたも母親みたいに再起不能になっちまいな」
一斉に桜花へ襲いかかる女郎たち。けれど、母から数々の技を教え込まれている桜花は、組みついた女郎一人一人の関節を次々と破壊し、圧倒的な強さで彼女たちを返り討ちにする。
うめき声を上げ地面にひれ伏す仲間を見たひとりの女郎が激怒し、ついに桜花に対してオイランバトルを挑んできたのだ。
オイランバトルへ参加する手段を模索していた桜花には願ってもないチャンスとなり、いよいよ桜花はオイランバトルのデビュー戦へ臨む。
「やっとわっちにも好機がきたわ」
ついに桜花がオイランバトルのステージへ立つ時がやってきた。
それぞれの名前が呼ばれ、大きく会場に響き渡る。
相手はもちろん先日桜花に闇討ちを仕掛けてきた女郎のひとり。
桜花も襲われたときはまさかオイランだとは思っていなかったが、ステージに立つとそれなりの人気はあるようだった。
そしてふたりがステージ上に立つと、鐘の音と共に桜花のデビュー戦が始まった。
すでに一度戦っている相手だけに、桜花は軽やかに相手の技を躱しながら、カウンター技を仕掛けていく。
しなやかな身体が流れるように動き、まるで踊っているかのように次々と関節技を極めていく。その美しい舞に観客たちはすぐさま魅了されていった。
結果、試合は終始桜花の一人舞台となり、最後は桜花の得意技『帯天仰固め』
(背骨を中心とした複数の関節にダメージを与えるオイランサブミッション。見た目とは裏腹に極めて実践的な技である。相手を強制的に開脚させるため、かけられると恥ずかしい)
で決着した。
見事デビュー戦を勝利で飾った桜花に対し、会場からは『京極院菊花の再来!』、『新たな歌姫候補の誕生!』などと称賛の声が上がり、割れんばかりの大歓声が鳴り響いていた。
(母様はこんな光景を何度も見ていたんだ……わっちも母様のようになる。なってみせる!)
桜花は試合後、ステージで歌い踊りながら、かつてNo.1だった母に追いつくことを心に誓った。
しかし、沸き立つ客席の影で、ひとりの歌姫が冷ややかな笑みを浮かべて桜花を見つめていた。
デビュー戦を勝利で飾ってからというもの、桜花には矢継ぎ早にオイランバトルの果たし状が届くようになった。
挑んでくるオイランは、一躍人気となった桜花に勝利することで自分の人気を上げようと考える者や単純な妬みや恨みで挑んでくる者など様々だが、桜花はどんなオイランが相手でも危なげない試合で順調に勝利を重ねる。
ネオヨシワラの瓦版では毎度桜花を大きく取り上げ、気付けば人気、実力共に大きな注目を浴びるオイランへとのし上がっていた。
だが、その一方で桜花に敗北したオイランの中から、桜花の活躍を妬むオイランたちも現れ、その数もみるみるうちに増加していく。
一部のオイランは母親である菊花と同じように、悪どい手段で桜花をネオヨシワラから追い出そうとする動きもあった。
そうして桜花への嫌がらせは徐々にエスカレートしていく。
もはや髪飾りや化粧道具の隠蔽などは可愛いものだった。
階段から突き落とされそうになったり、下駄が壊れるように細工してあったり、着物を破られていることもある。
挙げ句、夜道で襲撃される頻度も高くなっていった。
桜花はエスカレートしていく数々の嫌がらせに耐えながら、かつて母も同じような体験をし、そしてそれに耐え続けてきたのだと気付く。
(母様は、こんなことに何年も耐えて……わっちのために頑張っていてくれたんだ……)
そして桜花は、あの日のことを思い出した。
母に復讐するために女郎たちが屋敷へ襲撃してきたあの日のことを……。
「絶対に負けない。あんな魑魅魍魎共にわっちは絶対に負けない!」
桜花は自分を鼓舞した。
自分が尊敬し、目指した母のように強く美しい歌姫になるために、ここで折れるわけにはいかない……と。
決意を新たにした桜花は日々技に磨きをかけ、オイランバトルでも順調に勝利を重ねる。強さと美しさを兼ね備えたパーフェクトファイターとして、目を見張る活躍でランキングを駆け上がっていった。
そんなある日、桜花は上位ランカーである悪梅太夫(おうめだゆう)というオイランからバトルの申込みを受ける。
悪梅太夫はダーティな歌姫でその名が知られており、妖艶な風貌も相まって一部の客からは人気も高く、またその戦い方に賛同する女郎たちも少なからず存在する有名人である。
「アンタはアタイが再起不能にしんす。フフフ……」
ネオヨシワラ中で注目の一戦となった桜花と悪梅太夫のオイランバトルは、試合開始直後から荒れた展開となっていた。
「こんなんはお初かえ?」
悪梅太夫は予め用意していたパイプ椅子を使い、御法度である獲物を使った打撃をいきなり桜花に見舞ってきたのだ。そして、その後もパイプ椅子を利用し、執拗に桜花を攻撃する。
客席からは悪梅太夫への罵詈雑言や立会人に御法度を指摘する声もあがるが、悪梅太夫にそのまま攻撃を煽る声も多く、客席も混沌とした状況になっていた。
「わっちにとってはこそぐったいでありんす」
桜花は対抗するように強気で答えるが、徐々にダメージは蓄積されている。
立会人は悪梅太夫の御法度を止めるどころか見て見ぬふりで流し、よしんば桜花が反撃に出るため、鋭いタックルを仕掛けようとすると、不自然に二人の間に割り込んで試合を止めていた。
「ほんによしゃれ!」
やや苛立ってきている桜花は、立会人を退けようと手を出しそうになるが、立会人への攻撃は即退場となることを寸前で思い出し、グッと堪える。
反撃のチャンスが無いまま桜花の劣勢状態で時間が過ぎていくと、ダメージからくる疲れで桜花に隙が生じてしまった。
「きいした!」
悪梅太夫はそのスキを見逃さず、ここぞとばかりに自らの得意技『旋回番傘絞り』
(テコの要領で膝と足首にダメージを与えるオイランサブミッション。さらに回転し、勢いを増すことで威力があがる驚異の技である)
を仕掛けていった。
「まちなんし!」
そのまま悪梅太夫の『旋回番傘絞り』が極まると思われたが、桜花はギリギリのところで身体を捻って足をずらし、『旋回番傘絞り』は不完全な状態となった。
しかし、不完全とは言えその締め付けは強い。
桜花は歯を食いしばって耐え、回転の隙に蹴りを入れて技を外すことに成功した。そして、即座に距離をとり再び防御の構えを見せる。
着実にダメージは蓄積し、桜花の身体は本来のキレを失い、さらなる劣勢へと追いやられてしまったのだ。
「往生際の悪いこと。はよう地べたに這いつくばってここ(ネオヨシワラ)から出て行きなんせ」
悪梅太夫は勝ち誇ったかのように桜花に言い放つ。
「冗談はよしゃれ。まだ始まったばかりでありんす。ゆっくりしておくんなんし」
対する桜花は呼吸を整えながらそう切り返すが、疲労の蓄積したその身体は思うように攻撃を繰り出せず、焦りの色を隠せない。
(このままでは何もできずに負けてしまう……。でもどうすれば……どうすればいいの……母様)
桜花と悪梅太夫の試合は中盤戦を迎える。
じりじりと詰め寄られる桜花は、反撃のきっかけが見つからないままだった。
「結局これのほうがなぶり甲斐がありんす。さぁ、はよお落ちなんし!」
悪梅太夫がパイプ椅子を大きく振りかぶると、桜花はその動作に隙を見い出した。
(……これなら)
桜花は悪梅太夫の攻撃を避けると、挑発するように話しかけた。
「そんな中途半端な攻撃じゃわっちを倒すことなんてできささんす。もっと激しくしておくんなんし」
悪梅太夫は桜花の発言が苦し紛れだと思い込み、余裕を見せつけるためにも、その挑発の言葉に従うことにした。
「アタイを挑発とはいい度胸でありんす。それならお望み通りそうすべい」
桜花の目論見どおり悪梅太夫は挑発に乗り、パイプ椅子を大きく振りかぶり、桜花へと襲いかかってきた。
桜花はその攻撃を紙一重で避ける。悪梅太夫が咄嗟に二発目を打ち込もうと振りかぶった、その隙を見極めて一気に距離を詰める。
「では、行きなんす!」
桜花の速さはこれまでとは大きく異なり、立会人はその速さに反応できず、二人の間に入ることができなかった。
そこで立会人が思わぬ言葉を口にする。
「うめちゃん!」
その言葉で、桜花と悪梅太夫の二人は動きが止まる。
桜花は悪梅太夫の両腕を掴んでいたが、そのままの状態で立会人の顔を見る。
呼ばれた悪梅太夫はパイプ椅子を思わず落としてしまう。しかし、その視線は落としたパイプ椅子ではなく、立会人の顔へと向けられていた。
その瞳は立会人への怒りを顕にしている。
そして、つい悪梅太夫のことを『うめちゃん』と呼んでしまった立会人は、動揺を隠しきれていない。
「……そうでありんしたか」
桜花はそうつぶやくと、一瞬だけ動きが止まった悪梅太夫の背後へ素早く回り込み、足を取ってうつ伏せに倒す。
一瞬のことに動揺し、声を上げることも叶わない悪梅太夫へ、これまでの残虐ファイトの怒りをぶちまけるかの如く、強烈な必殺技である『蠍錠下駄外し』
(相手の足首、膝、腰を締め上げてダメージを与えるオイランサブミッション。付け加えて横隔膜の動きを制限し、相手を窒息させてしまう恐ろしい技でもある)
を極める。
足首と膝がミシミシと悲鳴を上げる完璧な締め上げに、悪梅太夫は耐えられず、勝負の決着は本当に一瞬の出来事だった。
客は何が起こったのかわからぬまま、桜花の怒りの締め上げにより、気絶するまで技をかけられた悪梅太夫が横たわる光景を目の当たりにし、会場が静まり返る。
桜花はそのまま無言で立会人に近寄り一言。
「ぬしさんら、ぐるでありんすね」
そう言うと立会人を張り倒し、『簪落とし』
(背骨と首の骨にダメージを与えるオイランサブミッション。力加減を間違えると、脊髄損傷など人命に関わる重傷を負わせ、相手の命を奪う可能性がある危険な技である)
を極める。
怒りに打ち震える桜花の力は凄まじく、立会人は泡を吹いて、悪梅太夫の隣に横たわることとなってしまった。
何が起こったのかわからなかった観客たちだったが、桜花の勝利に大歓声をあげた。
桜花はその後、疲れを見せることなく、歌と踊りで集まった観客たちを魅了した。
悪梅太夫との試合から数日後、立会人と悪梅太夫の不正が明らかになった。
それにより、立会人に対する桜花の攻撃は不問とされ、オイランバトル委員会からのお咎めはなしとなっていた。
そしてその通達とほぼ同時に、桜花の次のオイランバトルが決定し、発表された。
その対戦相手は、オイランバトルで現在トップに君臨している『西小路牡丹』だ。
本来であればNo.1歌姫は挑戦を受ける側となり、他のオイランに果たし状を出すことなどありえないのだが、牡丹から届いた果たし状の中身を読んで、桜花は戦慄する。
牡丹の母は、屋敷に乗り込み菊花を襲撃した女郎たちのひとりで、菊花の必殺技によって、膝に再起不能なダメージを受けて引退を余儀なくされた。
「私の母はあなたの母親、京極院菊花によって再起不能になり、オイランの世界から追放された。あの日のことは忘れない……。私があなたを再起不能にして、母の復讐を成し遂げる。あなたの全てを私の手で終わらせてあげるわ」
桜花はあの日のことを、母親に襲いかかる魑魅魍魎のような女郎たちの恐ろしさに怯えることしかできなかった自分の姿を鮮明に思い出し、背筋を凍らせた。
そして思い知った。自分は倒された相手のことなど、全く気にしたことはなかったのだと。
「そ、そんな……」
桜花は強烈に感じた。
これは今までの嫌がらせとは違う。本当の意味での復讐という化物が、自分に襲いかかってくるのだということを……。
オイランバトル当日。牡丹との試合が始まろうとしている。
けれど、桜花は果たし状の内容を忘れることができず、複雑な気持ちを抱えたままだった。
一方、牡丹はこれまでどおりNo.1歌姫である貫禄を見せ、落ち着いた表情で観客にアピールしている。
京極院母娘に対する復讐心を内に秘めたまま――。
相反する二人の気持ちを無視するかのように、無情にも試合開始の鐘の音が響いた。
試合が始まると、牡丹は闘志を剥き出しにして一気に桜花を攻め立てる。
これまで優雅に立ち振る舞っていたNo.1歌姫とは思えない荒々しい動きに観客も思わず目を見張る。
対する桜花はいまだ気持ちが割り切れず防戦一方。それでも時折訪れる攻撃のチャンスには、母直伝の技を次々に繰り出していくのだが、心の迷いが生じているこの状況……、案の定技のキレが甘くなっていた。
それに比べて牡丹は、自身の母から菊花の技の対策を伝授されているが故に、キレの甘い桜花の技を軽々と返していく。
あまりに動きの悪い桜花に対し、牡丹はわざと桜花を組み合いに持ち込み、小声で話しかけた。
「ぬしはそんなに弱かったん? こんなことなら簡単にわちきの復讐も達成できんす。わちきがぬしを思う存分再起不能にしてあげんす」
桜花は牡丹の挑発を受けても、いまだ復讐という言葉に縛られ、悩み、躊躇していた。
母自身と自分を守るためだったとはいえ、結果的に再起不能にしてしまった牡丹の母。
自分が逆の立場ならと考えると、同じように復讐という選択を考えていたに違いない。
そうして桜花は気持ちの整理がつかないまま、試合は牡丹の圧倒的な優勢で進んでいく。
残り時間は徐々に減り、判定による勝敗も見えてきた。
しかし、そんな時だった。業を煮やした牡丹が突然動きを止め、会場に響く程の大声で言い放つ。
「桜花! ぬしはやる気ござんすか!? やる気がありんせんならここから去りなんし! そしてもう、わちきの前に現りせんで! それでもやるなら……No.1歌姫のわっちに負けるなら、本気で戦って! そいで負けなんし!」
オイランバトル史上類を見ない牡丹の行動に、会場の熱気と歓声が困惑とどよめきに変わった。
そんな客をよそに、我慢できなくなった桜花は牡丹に向かって声を張り上げる。
「わっちの母様がぬしさんの母様を傷つけてしまったこと、どうしたらいいの! わっちは復讐なんて考えたことなかった。でも、わっちがまたぬしさんを傷つけてしまいんしたら、わっち……わっちはもう……」
状況がわからない観客は、固唾を飲んで二人の様子を見守るしかなかった。
牡丹は自分の母を再起不能にした、京極院菊花の娘を煽るつもりで果たし状を送っていた。
果たし状を読んだ桜花が、敵意むき出しで自分との戦いに臨むと考えていたからだ。
だが、その目論見が大幅に外れ、目の前の桜花は過去のことを引きずり続けている。
牡丹はどうにか桜花の闘志に火をつけようと考えたが、そこで違和感に気付いた。
そう……“またぬしさんを傷つけてしまいんしたら”という部分だ。
「それは、わちきはぬしに負ける前提での話? 冗談も程々にしておくんなまし。とんだ塩次郎でござりんせん? それなら復讐の話は忘れて、全力でNo.1歌姫の座、わちきから奪ってみなんし!」
実は牡丹は最初から復讐などどうでもよかった。自分がNo.1であり続けるために、過去No.1だった京極院菊花の娘がどれほど強いのか。
ただそれを確かめたかっただけなのだ。
復讐ではない、純粋な強さにより桜花を打ち負かし、真なる頂点を目指す。
牡丹に真っ向から勝負を挑まれた桜花は、その言葉で迷いが消え、表情を一変させた。
「No.1歌姫はわっちがいただきなんすえ!」
そう言うと、示し合わせたかのように両者が同時に動きだし、試合が再開した。
それからの試合展開は見るものを圧倒し、息を呑むのも忘れるほど目まぐるしく攻守が入れ替わる激しい試合になっていた。
牡丹からはそれまでの荒々しさが消え、女王に相応しい華麗な動きが再び舞い戻っていた。
一方、迷いが消えた桜花にも、母から受け継いだ清流の如く隙のない動きが戻っていた。
観客は、あたかも二人でステージの上を踊っているかのような試合に魅了され、瞬く間に時は過ぎていくのだった。
最後お互いに大技を繰り出しあう。牡丹は『大蛇漆固め』
(蛇のように相手に絡みつき、腰にダメージを与えるオイランサブミッション。強力すぎるがゆえに試合を一瞬で終わらせてしまう一撃必殺の威力を秘めている。ただし正確に極めるためには非常に難易度が高い)
を繰り出し、決着を着けようとした。
即座に反応した桜花は、体軸をずらすことにより、最小限のダメージで切り抜けることに成功する。牡丹はバランスを崩し、今度は桜花が逆転の必殺技『萬徳紅固め』
(肩と脇腹に重点的なダメージを与えるオイランサブミッション。天賦の才を持つ桜花が、牡丹の『大蛇漆固め』にヒントを得て、瞬時に編み出した技。完成した際の姿が美しく、かけられた者は徳すら感じてしまう)
を極めにいく。
勝負が決まったと誰もが確信した瞬間――
無情にも試合終了の鐘が鳴り響く。決定的な一撃を極めることはできず、卓越した技術力を持ち合わせた二人の一進一退の勝負は決定打が無いまま終了した。
結果、試合は時間切れとなって判定へ持ち越される。審判たちは熟考し、誰もが苦虫をかみつぶしたような顔で点数をつける。そして開票された結果は、ほんのわずかな差で桜花の勝ちを告げる。
桜花はついにNo.1歌姫となり、ネオヨシワラの頂点に立ったのだ。それを見る牡丹の顔には、不思議と笑みが浮かんでいた。
互いに死力を尽くし、持ちうるすべての技術を注ぎ込み、試合の中ですらその技は磨かれていった。そんな好敵手であればこの結果も受け入れることはできる。……しかし、次は私が勝ってみせる……
そんな決意が目の奥に宿っていた。
かくして、それからもネオヨシワラは、相も変わらず歌姫たちが舞い踊り、華麗に関節技を極め合うオイランバトルで賑わっている。もちろんその中には桜花と牡丹の姿もあった。
桜花はNo.1歌姫の先にある景色を目指し、牡丹は再びNo.1に返り咲くため、きらびやかに着飾り、熱き野望を胸に秘め、今日もステージへと立つのだった。
チュウニズム大戦
レーベル | 難易度 | スコア | |
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スキル名/効果/備考 | |||
◆ジェネ | BASIC | 0 / 160 / 320 | |
テクニカルブレイク(前回難易度ミス) | |||
次のプレイヤーは、前回と同難易度の COMBO/CHAINは、MISSとなる。 |
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
182019年10月04日 23:17 ID:qfoin32y伝説のライオンを母に持つ少女って何だと思ったら普通に花魁だった
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
162019年09月13日 18:18 ID:rrf4zgpl『旋回番傘絞り』
テコの要領で膝と足首にダメージを与えるオイランサブミッション。さらに回転し、勢いを増すことで威力があがる驚異の技であるーー
民明書房刊『オイランバトル大全』より
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チュウニズムな名無し
152019年09月08日 22:04 ID:lgtwpm39娼婦を目指すならバトルより他にもっと練習することがあるんじゃないかな
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チュウニズムな名無し
142019年09月08日 20:39 ID:dnmbedyx+7
推定値通り
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
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チュウニズムな名無し
112019年09月07日 19:05 ID:rg8aqhieオイランバトルがオンラインバトルにしか見えない
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チュウニズムな名無し
102019年09月07日 16:16 ID:gqxeddb118歳だしオイラン目指してるし、えちえちも合法だよね(ニッコリ)